特許第6064606号(P6064606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064606
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20170116BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01L33/62
   H01L33/48
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-5160(P2013-5160)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2013-179273(P2013-179273A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2012-18763(P2012-18763)
(32)【優先日】2012年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金田 守人
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 健作
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−153610(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0042151(US,A1)
【文献】 特開2011−249807(JP,A)
【文献】 特開2010−074124(JP,A)
【文献】 特表2009−534866(JP,A)
【文献】 特開2006−210909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と、
該発光素子が搭載された複数のリードフレーム及び、
樹脂によって成形され、開口を備え、前記リードフレームの一部がその内部に埋設されかつ他の一部が前記開口の底面で露出するパッケージを含んでなり、
該パッケージの開口の底面に、前記樹脂を露出した樹脂底面が存在し、
前記開口内の発光素子間に、前記開口の底面から突出する壁部を有し、
該壁部は、長手方向に延びるパッケージに配置された開口における長手方向に沿って設けられた一対の長側面に連結され、かつ底面に近づくにつれて、該長手方向に幅広であり、
前記発光素子は、前記壁部を跨いでワイヤが接続されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
複数の発光素子と、
該発光素子が搭載された複数のリードフレーム及び、
樹脂によって成形され、開口を備え、前記リードフレームの一部がその内部に埋設されかつ他の一部が前記開口の底面で露出するパッケージを含んでなり、
該パッケージの開口の底面に、前記樹脂を露出した樹脂底面が存在し、
前記開口内の発光素子間に、前記開口の底面から突出する壁部を有し、
前記発光素子は、前記壁部を跨いでワイヤが接続されており、
前記一方の発光素子は、外周に近接する第1のワイヤボンディング点を有し、他方の発光素子は、発光領域の内側に偏在した第2ワイヤボンディング点を有し、前記第1のワイヤボンディング点が、壁部に隣接し、該壁部を跨いで、前記第2のワイヤボンディング点とボンディングされ、かつ、ワイヤの最高部位が、第1のワイヤボンディング点にボンディングされた発光素子側に偏在している発光装置。
【請求項3】
複数の発光素子と、
該発光素子が搭載された複数のリードフレーム及び、
樹脂によって成形され、開口を備え、前記リードフレームの一部がその内部に埋設されかつ他の一部が前記開口の底面で露出するパッケージを含んでなり、
該パッケージの開口の底面に、前記樹脂を露出した樹脂底面が存在し、
前記開口内の発光素子間に、前記開口の底面から突出する壁部を有し、
前記発光素子は、前記壁部を跨いでワイヤが接続されており、
前記一方の発光素子は、外周に近接する第1のワイヤボンディング点を有し、他方の発光素子は、発光領域の内側に偏在した第2ワイヤボンディング点を有し、前記第1のワイヤボンディング点が、壁部に隣接し、該壁部を跨いで、前記第2のワイヤボンディング点とボンディングされ、かつ、ワイヤの最高部位が、第2のワイヤボンディング点にボンディングされた発光素子側に偏在している発光装置。
【請求項4】
複数の発光素子と、
該発光素子が搭載された複数のリードフレーム及び、
樹脂によって成形され、開口を備え、前記リードフレームの一部がその内部に埋設されかつ他の一部が前記開口の底面で露出するパッケージを含んでなり、
該パッケージは、長手方向に細長く、前記開口内に凸部を与える凹部をその外表面の一部に有し、かつ前記開口の底面に、前記樹脂を露出した樹脂底面が存在し、
前記開口内の発光素子間に、前記開口の底面から突出する壁部を有し、
前記発光素子は、前記壁部を跨いでワイヤが接続されていることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
前記パッケージは長手方向及び短手方向に沿って設けられ、前記樹脂底面は、長手方向で幅が異なる請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記樹脂底面は、壁部に近づくにつれて幅狭となる請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
前記壁部は、搭載された発光素子の高さと同等又はそれよりも低い請求項1〜のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項8】
前記パッケージは長手方向に延びる形状を有し、前記開口は、長手方向に沿って設けられた長側面を有しており、前記樹脂底面は、長側面に隣接して配置されている請求項1〜のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記パッケージの開口の底面であって、前記壁部に隣接する部位は、前記リードフレームの露出面で占められている請求項1〜のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項10】
前記壁部は、リードフレーム間に配置されている請求項1〜のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項11】
前記壁部は、リードフレーム間からリードフレーム上に配置されている請求項1〜10のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項12】
前記開口は、透光性樹脂が埋設されており、該透光性樹脂は、弾性率が10MPa以下である請求項1〜11のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項13】
前記ワイヤが、銀又は銀合金からなる請求項1〜12のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高輝度、高出力の発光素子及び小型の発光装置が開発され、種々の分野に利用されている。このような発光装置は、小型、低消費電力や軽量等の特徴を生かして、例えば、携帯電話及び液晶バックライトの光源、各種メーターの光源及び各種読みとりセンサ等に利用され、より小型化及びより高輝度を実現するために、種々の工夫がなされている(例えば、特許文献1及び2等)。
【0003】
その一例として、例えば、リードフレームとして用いられる金属部材又はワイヤボンディングに用いられるワイヤ等として銀又は銀合金製の金属部材又はワイヤが用いられている。これにより、発光素子からの光の吸収をより抑制し、効率的に光を反射させて、取り出す方法が提案されている。
また、これら銀又は銀合金の硫化を防止するために、発光素子を封止するための樹脂及びパッケージ材料について種々提案されている(例えば、特許文献3及び4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−249807号公報
【特許文献2】特開2008−153610号公報
【特許文献3】特開2011−256326号公報
【特許文献4】特開2011−178983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般に、銀及び銀合金を、リードフレーム及びワイヤ等の材料として用いると、それら部材の硫化が生じ、それに伴って、発光素子からの光の吸収が起こり、結局、効率的な光の反射が阻害されるという問題がある。
しかも、銀の硫化を顕著に抑制することができる組成の樹脂を用いても、このような硫化は、樹脂と樹脂又は樹脂とリードフレーム等の極わずかな隙間から侵入する気体又は液体等によって開始され、拡大するため、結局、有効な硫化抑制が実現されていないのが現状である。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、発光装置の小型化、薄型化を実現しながら、発光装置における樹脂と樹脂、樹脂とリードフレーム、ワイヤ等との間の隙間の発生を効果的に防止することができる構造を採用することにより、発光装置に用いられている銀を含有する金属部材の硫化を阻止するとともに、その構造と相まって、より効率的に発光素子から出射された光を取り出すことができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の発明を含む。
〔1〕複数の発光素子と、
該発光素子が搭載された複数のリードフレーム及び、
樹脂によって成形され、開口を備え、前記リードフレームの一部がその内部に埋設されかつ他の一部が前記開口の底面で露出するパッケージを含んでなり、
該パッケージの開口の底面に、前記樹脂を露出した樹脂底面が存在し、
前記開口内の発光素子間に、前記開口の底面から突出する壁部を有し、
前記発光素子は、前記壁部を跨いでワイヤが接続されていることを特徴とする発光装置。
〔2〕前記パッケージは長手方向及び短手方向に沿って設けられ、前記樹脂底面は、長手方向で幅が異なる〔1〕に記載の発光装置。
〔3〕前記樹脂底面は、壁部に近づくにつれて幅狭となる〔1〕又は〔2〕に記載の発光装置。
〔4〕前記壁部は、搭載された発光素子の高さと同等又はそれよりも低い〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔5〕前記パッケージは長手方向に延びる形状を有し、前記開口は、長手方向に沿って設けられた長側面を有しており、前記樹脂底面は、長側面に隣接して配置されている〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔6〕前記壁部は、長手方向に延びるパッケージに配置された開口における長手方向に沿って設けられた一対の長側面に連結され、かつ底面に近づくにつれて、該長手方向に幅広である〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔7〕前記パッケージの開口の底面であって、前記壁部に隣接する部位は、前記リードフレームの露出面で占められている〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔8〕前記壁部は、リードフレーム間に配置されている〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔9〕前記壁部は、リードフレーム間からリードフレーム上に配置されている〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔10〕前記開口は、透光性樹脂が埋設されており、該透光性樹脂は、弾性率が10MPa以下である〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔11〕前記一方の発光素子は、外周に近接する第1のワイヤボンディング点を有し、他方の発光素子は、発光領域の内側に偏在した第2ワイヤボンディング点を有し、前記第1のワイヤボンディング点が、壁部に隣接し、該壁部を跨いで、前記第2のワイヤボンディング点とボンディングされ、かつ、ワイヤの最高部位が、第1のワイヤボンディング点にボンディングされた発光素子側に偏在している〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔12〕前記一方の発光素子は、外周に近接する第1のワイヤボンディング点を有し、他方の発光素子は、発光領域の内側に偏在した第2ワイヤボンディング点を有し、前記第1のワイヤボンディング点が、壁部に隣接し、該壁部を跨いで、前記第2のワイヤボンディング点とボンディングされ、かつ、ワイヤの最高部位が、第2のワイヤボンディング点にボンディングされた発光素子側に偏在している〔1〕〜〔10〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔13〕前記ワイヤが、銀又は銀合金からなる〔1〕〜〔12〕のいずれか1つに記載の発光装置。
〔14〕前記パッケージは長手方向及び短手方向に延び、前記開口は、短手方向に沿って設けられた短側面を有しており、
前記壁部は、長手方向に延設されたパッケージに配置された開口における長手方向に沿って設けられた一対の長側面に連結され、かつ前記パッケージの短手方向に面する側面を有しており、
前記開口の短側面は、前記壁部の側面よりも大きな傾斜角度で傾斜している〔1〕〜〔13〕のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光装置によれば、発光装置の小型化、薄型化を実現しながら、発光装置における樹脂と樹脂、樹脂とリードフレーム又はワイヤ等との間の隙間の発生を効果的に防止することができ、これによって、パッケージを構成する又はパッケージ内に存在する金属製の部材における腐食及び硫化を確実に防止し、より高輝度を実現した、品質の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の発光装置を説明するための光取出面(光放射面)からみた概略平面図である。
図1B図1の発光装置のA−A’線断面図である。
図2図1の発光装置の側面図A、上面図B、底面図C、側面図Dである。
図3】本発明の壁部と開口短側面との傾斜を説明するための発光装置の概略断面図である。
図4】本発明の発光装置のける発光素子間のワイヤの接続状態を説明するための発光装置の要部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発光装置は、例えば、図1に示したように、主として、複数の発光素子11a、11bと、リードフレーム12a、12bと、パッケージ13とから構成される。このような発光装置は、いわゆるサイドビュー型発光装置であることが好ましい。つまり、実装面と略垂直方向に光放射面(光取り出し面、以下、「上面」ということがある)を有する発光装置として実装し得るものであることが好ましい。
【0011】
<発光素子>
発光素子は、通常、半導体発光素子であり、特に、いわゆる発光ダイオードと呼ばれる素子であればどのようなものでもよい。例えば、基板上に、InN、AlN、GaN、InGaN、AlGaN、InGaAlN等の窒化物半導体、III-V族化合物半導体、II-VI族化合物半導体等、種々の半導体によって、活性層を含む積層構造が形成されたものが挙げられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合、PN接合などのホモ構造、ヘテロ結合あるいはダブルヘテロ結合のものが挙げられる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造、多重量子井戸構造としてもよい。活性層には、Si、Ge等のドナー不純物及び/又はZn、Mg等のアクセプター不純物がドープされる場合もある。得られる発光素子の発光波長は、半導体の材料、混晶比、活性層のInGaNのIn含有量、活性層にドープする不純物の種類を変化させるなどによって、紫外領域から赤色まで変化させることができる。
【0012】
発光素子は、後述するリードフレームに搭載され、そのために、接合部材が用いられる。例えば、青及び緑発光を有し、サファイア基板上に窒化物半導体を成長させて形成された発光素子の場合には、エポキシ樹脂、シリコーン等を用いることができる。また、発光素子からの光や熱による劣化を考慮して、発光素子裏面にAlメッキをしてもよいし、樹脂に代えて、Au−Sn共晶などの半田、低融点金属等のろう材を用いてもよい。さらに、GaAs等からなり、赤色発光を有する発光素子のように、両面に電極が形成された発光素子の場合には、銀、金、パラジウムなどの導電性ペースト等によってダイボンディングしてもよい。
【0013】
本発明の発光装置では、発光素子は、2以上の複数個搭載されていればよい。この場合には、異なる発光色の光を発する発光素子を組み合わせてもよいし、同じ発光色の光を発する発光素子を組み合わせてもよい。例えば、RGBに対応するように、発光色の異なる発光素子を複数個組み合わせることにより、色再現性を向上させることができる。また、発光色の同じ発光素子を複数個組み合わせることにより、光度を向上させることができる。
なお、発光素子は、フェイスアップ実装及びフリップチップ実装等によって発光装置に搭載されるが、フェイスアップ実装、つまり、発光素子の基板(又は半導体層)に対して同じ面側に一対の電極が形成され、その電極が形成された面を、光出射面に向けて実装するタイプのものが好ましい。
この場合、通常、発光素子は、一対の電極にワイヤボンディングするために、これらの電極に対応するパッド電極が形成されている。パッド電極は、一方が発光素子の外周に近接して、他方が発光素子の内側に偏在したものが好ましい。このようなパッド電極の配置により、発光素子から出射される光のワイヤによる吸収を最小限に止めながら、発光素子を構成する半導体層への均一な電力供給を図ることができる。
また、パッド電極は、ワイヤとのボンディング性を考慮して、その最表面を、金、白金、アルミニウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、銀またはこれらの合金などで形成することが好ましく、金、白金、アルミニウムまたはこれらの合金で形成することがさらに好ましい。
【0014】
<リードフレーム>
リードフレームは、発光素子を搭載するための部材である。また、発光素子と電気的に接続される電極及びリード端子としての役割も果たす。そのために、リードフレームは、その一部が後述するパッケージ内部に埋設されて固定され、別の一部が発光素子を載置し、電気的な接続をとるためにパッケージの開口内(その底面)で露出し、さらに他の一部がパッケージ内から外に突出している。リードフレームの開口底面における一部表面の露出により、発光素子からの光を反射させ、効率よく正面方向へと取り出すことができる。
【0015】
なお、後述するように、開口の底面に露出するリードフレームは、開口の形状に従って又は開口の形状にかかわらず、その幅が異なっていてもよい。その場合、開口の末端側において幅狭であり、中央部に向かうに従って幅広となっていることが好ましい。ここでの幅の変動は、上述した電極及び電力を供給するリード端子としての機能を確保することができる範囲内であることが必要であり、例えば、最も幅広の幅に対して、30%以内、好ましくは20%以内の幅変動が挙げられる。
【0016】
リードフレームは、通常、1つの発光装置において2つ以上備えられており、さらに発光素子の数+1つ以上、あるいは、発光素子数の2倍以上であってもよい。例えば、発光素子が2つ搭載される場合には、2つのリードフレームの双方に1つずつ発光素子を載置し、一方の発光素子は、それが載置された一方のリードフレームと1つの電極で電気的に接続され、かつ他方の発光素子は、それが載置された他方のリードフレームと1つの電極で電気的に接続され、リードフレームと接続されていない発光素子の電極同士が互いに電気的に接続される。
なお、複数のリードフレームは、上述した発光素子の電極との電気的な接続以外、実質的に電気的に分離されてパッケージ内に配置されている。
【0017】
リードフレームは、実質的に板状であればよく、波形板状、凹凸を有する板状であってもよい。材料は特に限定されず、発光素子に適当な電力を供給することができるような材料等であればよい。また、熱伝導率の比較的大きな材料で形成することが好ましい。このような材料で形成することにより、発光素子で発生する熱を効率的に逃がすことができる。例えば、200W/(m・K)程度以上の熱伝導率を有しているもの、比較的大きい機械的強度を有するもの、あるいは打ち抜きプレス加工又はエッチング加工等が容易な材料が好ましい。具体的には、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄、ニッケル等の金属又は鉄−ニッケル合金、燐青銅等の合金等が挙げられる。また、リードフレームの表面には、搭載される発光素子からの光を効率よく取り出すために反射メッキ(例えば、銀又は銀合金による)が施されていることが好ましい。リードフレームの大きさ、厚み、形状等は、得ようとする発光装置の大きさ、形状等を考慮して適宜調整することができる。
【0018】
リードフレームのパッケージ外におよぶ部位(つまり、リード端子)は、発光装置に搭載される発光素子の放熱性及び発光装置の使用態様(配置空間、配置位置など)を考慮して、その形状、大きさ等を適宜調整することができる。また、リード端子は、他の電子機器との位置関係などの使用態様に応じて、適宜屈曲、変形させることができる。
【0019】
リードフレームは、発光素子と電気的に接続されずに発光素子を載置するのみ、発光素子が載置されない、発光素子と電気的に接続されないものであってもよい。このようなリードフレームは、例えば、その一端が、リード端子として機能する部分よりも表面積が大きいことが好ましい。これにより、パッケージ内で発光素子から生じた熱を外部に導く放熱経路として、また、過電圧対策として機能させることができる。
【0020】
<パッケージ>
パッケージは、発光素子を保護するとともにリードフレームを一体的に固定し、発光素子及びリードフレームに対して絶縁性を確保するための部材である。
そのために、パッケージは、これらの機能を確保することができるものであれば、どのような材料で形成されていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂、セラミックス等が挙げられる。樹脂としては、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ABS樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、PBT樹脂、当該分野でパッケージ材料として利用されている樹脂(例えば、特開2011−256326号、特開2011−178983号等に記載の樹脂)等が挙げられる。また、これらの材料には、着色剤又は光拡散剤として、種々の染料又は顔料等を混合して用いてもよい。これにより、パッケージに吸収される発光素子から出射される光を最小限に止め又は反射率の高い白色パッケージを構成することができる。着色剤としては、Cr23、MnO2、Fe23、カーボンブラック等が挙げられる。光拡散剤としては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。
パッケージには、通常、後述する開口に透光性樹脂が埋め込まれるため、発光素子等から生じた熱の影響を受けた場合のパッケージと透光性樹脂との密着性等を考慮して、これらの熱膨張係数の差の小さいものを選択することが好ましい。
【0021】
パッケージの大きさ及び形状は特に限定されるものではなく、平面視における外形状(平面形状)としては、例えば、円、楕円、三角形、四角形、多角形又はこれらに近似する形状等が挙げられる。なかでも、長手方向に延びる形状が好ましく、特に、長手方向に延び、平面視が四角形又は四角形に近似する形状であることがより好ましい。
【0022】
(開口)
ただし、パッケージの表面には、開口が形成されており、この開口は、発光素子を搭載し、発光素子からの光を取り出すために形成されている。この開口の形状は特に限定されるものではなく、円、楕円、三角形、四角形もしくは多角形柱、ドーム状、碗状等又はこれらに近似する形状等いずれでもよい。なかでも、長手方向に延びる形状が好ましく、特に、長手方向に延長する、平面視が四角形、四角形に近似する多角形又は近似する形状であることがより好ましい。
また、開口が長手方向に沿って設けられている場合、その幅は、長手方向において異なっていてもよいし、略同程度でもよい。
【0023】
開口は、少なくとも、長手方向に沿って設けられた長側面を1つ又は一対有していることが好ましい。また、開口は、短手方向に沿って延びる短側面を1つ又は一対有していることが好ましい。このような長側面及び/又は短側面を含む開口の側面は、垂直であってもよいが、その一部又は全部が、通常、底面に近づくにつれて、開口が幅狭となるように傾斜している。このような傾斜により、発光素子から出射された光を効率的に、取り出し面の方向(上面方向)に反射させることができる。このような側面は、その部位によって、異なる傾斜角度で傾斜していてもよい。例えば、側面の傾斜角度は、長手方向の末端部(例えば、短側面)において最小であることが好ましい。短側面の傾斜角度(図3中、短側面13cの傾斜角度α)が長側面の傾斜角度よりも小さい場合、実装した発光装置において、その高さを最小限に設定しながら、長手方向の末端部において、効率的に光を反射させて、光出射を向上させることができる。例えば、短側面の傾斜角度(図3中、α)は、開口底面に対して、30〜70°程度であることが好ましく、40〜60°程度であることがより好ましい。長側面の傾斜角度は、これよりも大きいことが好ましい。傾斜に伴う発光装置の占有空間の増大を最小限に止めるためである。
【0024】
開口の大きさ及び深さ等は、搭載する発光素子の数、ボンディング方法等によって適宜調整することができる。例えば、深さは、上述した発光素子の厚みの1.5〜10倍程度が好ましく、1.5〜5倍程度、2〜5倍程度がより好ましい。具体的には、深さは、0.1〜1mm程度、0.2〜0.6mm程度、さらに好ましくは0.25〜0.35mm程度が挙げられる。開口の底面及び/又は側面は、エンボス加工又はプラズマ処理などで、接着面積を増加させ、後述する透光性樹脂との密着性を向上させることが好ましい。
【0025】
(開口内壁部)
パッケージは、開口内であって、搭載された発光素子間に、開口の底面から突出する壁部を有している。壁部は、発光素子の数に応じて、1つ又は複数あってもよい。開口が壁部を有することにより、開口を構成する空間が分断されることとなり、後述するように、通常、開口内に埋め込まれる透光性樹脂の熱膨張又は収縮をより狭い空間により効果的に抑えることが可能となる。
壁部は、搭載された発光素子の高さと同等又はそれよりも低いことが好ましい。開口の深さを大きくすることなく、かつワイヤを安定に形成した上で、開口を構成する空間が分断され易くなるためである。
【0026】
壁部は、リードフレーム間において配置されていることが好ましい(図1Bの壁部13b参照)。言い換えると、壁部を利用することによって、リードフレームが実質的に電気的に分離されていることが好ましい。ただし、壁部はリードフレーム間に存在する限り、その一部がリードフレーム上に及んでいてもよい(図1Bの壁部13b参照)。壁部の一部がリードフレーム上に及んでいる場合には、パッケージを構成する樹脂とリードフレームの密着性を向上させ、リードフレームのパッケージへの固定をより強固とすることができる。
【0027】
壁部は、長手方向に延びるパッケージに配置された開口における長手方向に沿って設けられた一対の長側面の双方に連結されていることが好ましい。このように壁部が長側面に連結されることにより、開口を構成する空間が分断されることとなり、通常、開口内に埋め込まれる透光性樹脂の熱膨張又は収縮をより狭い空間により効果的に抑えることが可能となる。
また、壁部は、底面に近づくにつれて幅広であることが好ましい。この場合の幅広とは、上述したように、壁部が長側面に連結されている場合には、長手方向において幅が広くなることが好ましい。なお、壁部は、その高さ方向の全体が長側面に連結されていることが好ましいが、開口の底面及びその近傍において又は壁部高さの下方の一部において、長側面に連結されていてもよい。この場合には、壁部は、底面に近づくにつれて、一対の長側面を連結する方向(例えば、長側面の延長方向に対して交差する方向)に対して幅広となっていてもよい。
【0028】
壁部の長手方向に幅広となる程度は、例えば、壁部側面の傾斜角度(図3中、壁部13bの傾斜角度β)が、開口底面に対して40〜70°程度であることが好ましく、50〜60°程度であることがより好ましい。このような傾斜角度とすることにより、壁部に照射された発光素子からの光を、取り出し方向に効率的に反射させることができる。ただし、壁部側面の傾斜角度(図3中、β)は、長手方向の末端部側面(短側面13c)の傾斜角度(図3中、α)よりも、大きいことが好ましい。
例えば、壁部の大きさは、用いる発光装置の大きさ等によって適宜調整することができるが、上面部において0.05〜0.2mm程度の幅、底面部において0.3〜0.5mm程度の幅、0.1〜0.17mm程度の高さが挙げられる。
【0029】
(開口底面)
開口の底面は、リードフレームの一部表面に加え、樹脂を露出した樹脂底面を有している。樹脂底面は、長側面に隣接して又は長側面に沿って配置されていることが好ましい。樹脂底面は、長側面の長さの30〜100%程度の長さを有していればよく、40〜90%程度が好ましく、50〜80%程度がより好ましい。このような樹脂底面が配置されていることにより、パッケージ樹脂を、後述する透光性樹脂とより密着させることが可能となる。特に、樹脂が開口底面まで露出している場合には、パッケージを構成する樹脂と、リードフレームと後述する透光性樹脂との3つの境界をエッジ部分に存在させることがなくなるために、パッケージを構成する樹脂と透光性樹脂との間の剥がれ又は微細な隙間が生じた場合においても、そのような隙間を通じて侵入し得る湿気、ガス、塵芥の、リードフレームへの接触を有効に防止することが可能となり、極めて有効に銀の硫化問題を回避することができる。
【0030】
樹脂底面の幅は、例えば、開口の最大幅の1〜30%程度が適しており、2〜20%程度が適している。また、樹脂底面は、長手方向で幅が異なることが好ましい。長手方向で異なる幅は、この範囲内での変動が好ましく、特に、最も幅広の樹脂底面の幅に対して、最も幅狭の樹脂底面の幅は、10〜50%程度が好ましく、20〜40%程度がより好ましい。
特に、樹脂底面は、長手方向の末端の部位から、後述する開口の底面から突出する壁部に向かって、幅が異なることが好ましく、幅が、壁部に近づくにつれて幅狭となることがより好ましい。
【0031】
ただし、上述したように、パッケージの開口内において、底面から突出する壁部が形成されている場合には、長側面に隣接又は長側面に沿う部位であっても、壁部及びそれに隣接する底面部位において、樹脂底面が存在していなくてもよい。言い換えると、壁部に隣接する開口の底面の部位は、リードフレームの露出面で占められていることが好ましい。
長側面に隣接又は長側面に沿う樹脂底面は、長手方向において、2以上に分断されていてもよい。壁部の存在により、壁部近傍においては、パッケージを構成する樹脂と透光性樹脂との剥がれを有効に防止することができるためである。つまり、透光性樹脂は一般に、後述するように、パッケージを構成する樹脂に比較して熱膨張又は収縮しやすい傾向があるが、壁部近傍では、このような透光性樹脂を三方向から画定することができるために、剥がれを招くほどの熱膨張及び収縮を抑制することができる。
【0032】
(外壁)
パッケージは、その外表面の一部において凹部が形成されていることが好ましい。ここでの凹部は、パッケージの壁の内表面(開口)にまで及んで、内表面(開口)に凸部が形成されるように、形成されていてもよい。このような凹部によって、発光装置内に存在するスペース(例えば、デッドスペース)をより有効に利用することができ、さらなる発光装置の小型化を図ることができる。
【0033】
凹部の大きさ及び形状は特に限定されないが、例えば、パッケージの外部に突出したリードフレームの一部がこの凹部内に収容される程度の空間が確保されていればよい。さらに、リードフレームの一部が凹部内に収容され、その表面の一部が、パッケージの壁の外表面と面一となる程度の空間が確保されていることが好ましい。ここで、面一とは、回路基板などの実装基板上に載置するのみでリード端子と回路基板とが電気的に接触し、安定して固定することができるように平坦であることを意味する。リードフレームの一部が凹部内に収容されるとは、図1A及び図2に示すように、パッケージ13のいわゆるコーナー部で切欠されたような凹部13fが形成され、その凹部13fにリードフレームの一部が配置される形態が挙げられる。
【0034】
本発明の発光装置には、発光素子の他、保護素子が搭載されていてもよい。保護素子は、1つでもよいし、2つ以上の複数個でもよい。ここで、保護素子は、特に限定されるものではなく、発光装置に搭載される公知のもののいずれでもよい。具体的には、過熱、過電圧、過電流、保護回路、静電保護素子等が挙げられる。
【0035】
(透光性樹脂)
本発明の発光装置では、発光素子が載置された開口内に、透光性樹脂が埋め込まれていることが好ましい。
透光性樹脂は、発光素子やワイヤ、導電部材の一部を、封止して、塵芥や水分、外力などから保護する部材である。透光性樹脂の母材は、発光素子から出射される光を透過可能な材料(好ましくは透過率70%以上)で形成されていることが好ましい。
具体的には、付加又は縮合型のシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフタルアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリマー、またはこれらの樹脂を1種以上含むハイブリッド樹脂が挙げられる。
【0036】
この透光性樹脂は、さらに上記母材に、亜鉛を含む金属塩および/または金属錯体を含むことが好ましい。亜鉛を含有することにより、特に硫黄原子を含有するガスを効果的にトラップすることができ、銀の硫化を抑制することが可能となる。
例えば、燐酸エステルまたは燐酸の亜鉛塩、燐酸エステルまたは燐酸の亜鉛塩の酸あるいはエステルを配位子として有する亜鉛錯体を含むものが挙げられる。
具体的には、亜鉛ビスアセチルアセトネート、亜鉛ビス2−エチルヘキサノエート、亜鉛(メタ)アクリレート、亜鉛ネオデカネート等のカルボン酸塩、亜鉛華、スズ酸亜鉛などを含むことが好ましい。
このような透光性樹脂を用いることにより、硫黄含有ガスが、リードフレームまたはリードフレーム表面の鍍金あるいはワイヤとして用いられる銀または銀合金へ到達して、これらが硫化することを劇的に抑制することができる。
透光性樹脂としては、例えば、特開2011−256326、特開2011−137140、特開2011−178983等に記載されたものを利用することができる。
【0037】
透光性樹脂には、拡散剤又は蛍光物質を含有させてもよい。拡散剤は、光を拡散させるものであり、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。蛍光物質は、発光素子からの光を変換させるものであり、発光素子からパッケージの外部へ出射される光の波長を変換することができる。発光素子からの光がエネルギーの高い短波長の可視光の場合、有機蛍光体であるペリレン系誘導体、ZnCdS:Cu、YAG:Ce、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al23−SiO2などの無機蛍光体など、種々好適に用いられる。本発明において、白色光を得る場合、特にYAG:Ce蛍光体を利用すると、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる黄色系が発光可能となり白色系が比較的簡単に信頼性良く形成できる。同様に、Eu及び/又はCrで賦活された窒素含有CaO−Al23−SiO2蛍光体を利用した場合は、その含有量によって青色発光素子からの光と、その光を一部吸収して補色となる赤色系が発光可能であり白色系が比較的簡単に信頼性よく形成できる。また、蛍光体を完全に沈降させ、気泡を除くことで色むらを低減させることができる。
【0038】
特に、透光性樹脂は、弾性率が10MPa以下であることが好ましく、例えば、0.1〜10MPa、0.2〜5MPa等がより好ましい。ここでの弾性率は、JIS K 6911またはJIS K 6249に準じた方法により測定した値を意味する。このような弾性率とすることにより、開口内、特に、開口の長手方向末端部における剥がれを防止することができるとともに、ワイヤ等に負荷される応力を緩和することができる。
【0039】
本発明の発光装置では、透光性樹脂で封止する前に、ワイヤ、発光素子、リードフレームの表面に、保護膜が被覆されていてもよい。保護膜は、発光素子から出射される光の吸収を最小限にとどめるために、発光素子から出射される波長の光の吸収性が低い材料、膜厚で形成されていることが好ましい。例えば、酸化物膜としては、Al、SiO、SiN、HfO、TiO、SiOxy等が挙げられ、窒化物膜としては、SiN、TiN等が挙げられ、これらの単層膜又は積層膜であってもよい。なかでも、アルミナ、シリカ又はこれら化合物を含む酸化膜材料等が好ましい。また、膜厚は、3nm程度以上、1μm程度以下であることが好ましい。保護膜は、当該分野で公知の方法によって形成することができるが、例えば、原子層堆積法(ALD:atomic layer deposition)を利用することが好ましい。
【0040】
(ワイヤ)
本発明の発光装置では、発光素子に形成された一対の電極が、発光素子への電力供給のために、ワイヤによって、リードフレーム及び/又は隣接する発光素子の電極と電気的に接続されている。
ワイヤの材料及び直径などは、特に限定されるものではなく、当該分野で通常使用されているものを利用することができる。特に、発光素子の電極とのオーミック性が良好であるか、機械的接続性が良好であるか、電気伝導性及び熱伝導性が良好なものであることが好ましい。
【0041】
ワイヤは、例えば、金、銅、白金、アルミニウム、銀等の金属及びそれらの合金を用いたもの、ワイヤ表面に銀又は銀合金を被覆したもの等を用いることができる。なかでも、反射率が高い材料としては、銀、銅、鉛、アルミニウム、白金又はこれらの合金が好ましく、銀又は銀合金がより好ましい。例えば、市販品として、銀が87.7体積%、金が8.7体積%、パラジウムが3.6体積%のワイヤ(商品名:SEA、田中貴金属社製)が挙げられる。
ワイヤの直径は、特に限定されるものではないが、10μm〜70μm程度が挙げられ、15〜50μm程度が好ましく、18〜30μm程度がより好ましい。
ワイヤの熱伝導率は、0.01cal/S・cm・℃/cm程度以上が好ましく、さらに0.5cal/S・cm・℃/cm程度以上がより好ましい。
【0042】
ワイヤは、通常、そのボンディング方法によって、発光装置において種々の形態を採り得る。本発明においては、発光素子間を接続するワイヤは、上述した開口内に配置された壁部を跨いで接続されていることが好ましい。開口内であって、上述した封止のための透光性樹脂が最も熱膨張又は熱収縮するであろうと考えられる部位において、壁部を跨ぐことにより、壁部の占有によりその熱膨張又は熱収縮を抑制することができるため、ワイヤに対する応力を緩和することができるからである。
【0043】
また、発光素子の電極間又は発光素子の電極とリードフレームとの間、つまり、それらのボンディング点間の接続において、ワイヤの最高部位が一方のボンディング点に偏在していることが好ましい。発光素子の電極間におけるボンディングにおいては、ワイヤの最高部位が一方の発光素子側に偏在していることがより好ましい。
【0044】
例えば、図4Aでは、n側パッド電極2が発光素子11a、11bの外周に近接し、p側パッド電極3が発光素子11a、11bの発光領域上であって発光素子11a、11bの内側に偏在している。そして一方の発光素子11bの外周に近接して設けられたn側パッド電極2(つまり、第1のワイヤボンディング点)が、開口内に形成されている壁部13bに隣接し、この壁部13bを跨いで、他方の発光素子11aの内側に偏在したp側パッド電極3(つまり、第2のワイヤボンディング点)との間でボンディングされている。さらに、ワイヤ14の最高部位は、外周に近接して設けられたn側パッド電極2にボンディングされた一方の発光素子11b側に偏在している。このようなワイヤの形態によって、n側パッド電極2からの立ち上がり部(上方に延びる部位)を安定して形成することができる。この立ち上がり部は断線しやすい部位であるが、この立ち上がり部を壁部13b近傍に配置することにより(図4A中、mの距離が短く配置することにより)、この周辺における透光性樹脂の熱膨張又は収縮を、壁部においてより低減することができ、よって、ワイヤの立ち上がり部の断線を効果的に防止することができる。
【0045】
一方、図4Bでは、図4Aと同様の発光素子及び壁部の配置において、発光素子間を接続するワイヤ14の最高部位が、内側に設けられたp側パッド電極3にボンディングされた一方の発光素子11a側に偏在している。このようなワイヤの形態によって、反射性のワイヤを用いる場合、p側パッド電極3からの立ち上がり部(上方に延びる部位)であって、発光領域の上方に配置するワイヤでは、光の吸収を防止することができ、ワイヤによる反射によって(図4B中q参照)、より光取り出し効率を向上させることができる。また、パッド電極は、通常、光が透過しにくいが、反射性のワイヤをその上方に延ばして(つまり、立ち上がり部をp側パッド電極3側に配置する)、パッド電極上に占めるワイヤの割合を増加させ、ワイヤにおける光の反射によって、パッド電極上の光透過の低減を相殺し、実質的に均一な光分布を実現することができる。
【0046】
以下に、本発明の発光装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
実施形態1
図1A、1B及び図2に示すように、この実施形態の発光装置10は、主として、複数の発光素子11a、11bと、リードフレーム12a、12bと、パッケージ13とから構成され、サイドビュー型に構成されている。
【0047】
発光素子11a、11bは、例えば、基板上に、n型半導体層、発光層及びp型半導体層がこの順に配置され、部分的にn型半導体層の表面が露出し、その表面にn電極が形成されており、その上に配置されたnパッド電極を有している。また、p型半導体層の表面には、p電極が略全面に形成され、その上に配置されたpパッド電極を有しており、リードフレーム12a、12b上にフェイスアップ実装されている。
リードフレーム12a、12bは、発光素子を搭載し、発光素子と電気的に接続される領域と、パッケージ13内に埋設されて固定される領域と、その領域からパッケージの外部に突出してリード端子として機能する領域とを備えている。リードフレーム12a、12bは、鉄入り銅の合金からなる板状体で形成されており、その表面には、搭載される発光素子からの光を効率よく取り出すために、銀メッキが施されている。
リード端子として機能するリードフレーム12a、12bは、パッケージ外部において、パッケージの長手方向の末端に存在する凹部13f内に収容されるように屈曲加工されている。
リードフレーム12a、12bは、それぞれ、パッケージを構成する樹脂を介して互いに、後述する壁部によって分離されている。
【0048】
パッケージ13は、略直方体形状となるように長手方向に延びており、その光取出面(つまり、上面)に長手方向に延長する開口13aと、長手方向に延びる一対の長側面13dと、短手方向に伸びる一対の短側面13cとを有している。
また、開口13cは、その底面から突出した壁部13bを備えている。
開口13cの深さは、例えば、0.32〜0.35mm程度であり、壁部13bの高さは0.12〜0.15mm程度である。
壁部13bは、開口13cの長側面13dの略中央付近で、一対の長側面13dに連結されている。壁部13bは、長手方向において、底面に近づくにつれて幅広となっている(図1B及び図3の13b参照)。例えば、壁部13bの上面は0.1mm程度の幅、底面で0.4mm程度の幅に設定されている。
【0049】
開口13cの底面には、リードフレーム12a、12bが露出するとともに、開口13cの長手方向の長側面13dに隣接して、長手方向に延在する樹脂底面13eが配置されている。
リードフレーム12a、12bは、壁部13bに隣接する部位においては、開口13aの底面の幅と同じ幅で露出しており、壁部13bから長手方向の末端部に向かって2段階でその幅を異ならせており、つまり、長手方向の末端部に向かって、幅狭になっている。例えば、0.4mm程度から、0.37mm程度、さらに0.3mm程度に幅狭になっている。
一方、樹脂底面13eは、長手方向の末端部から壁部13bに向かってその幅を異ならせており、つまり、壁部13bに向かって、幅狭になっており、壁部13bに近接する開口13cの底面では、樹脂底面13eは存在せず、リードフレーム12a、12bのみが露出している。例えば、0.05mm程度から0.015mm程度に幅狭になっている。
【0050】
開口13cでは、その底面で露出したリードフレーム12a、12b上に、それぞれ発光素子11a、11bが載置され、リードフレーム12a、12bが、電極として発光素子の一方の電極にワイヤによって接続されている。また、発光素子11a、11bは、壁部13bを跨いでワイヤ14によって電気的に接続されている。
【0051】
ワイヤ14は、直径18〜30μm程度の銀合金製のワイヤであって、特に、発光素子11a、11bの電極間におけるボンディングでは、ワイヤ14の最高部位が一方の発光素子側に偏在している(図4A及び図4Bの14参照)。特に、ここで用いる発光素子は、ボンディング点となるパッド電極の一方が、発光素子の外周に近接して設けられ、他方のパッド電極は、発光素子の内側に偏在しているために、発光素子11bの外周に近接したパッド電極と、発光素子11aの内側に偏在したパッド電極との間でワイヤボンディングされている。よって、ワイヤ14の形状は三角形の2辺に相当する形状にワイヤボンディングされており、ワイヤ14の最高部位が、外周に近接して設けられたパッド電極にボンディングされた発光素子11b側に偏在している(図1B及び図4Aの14参照)。
【0052】
また、図示していないが、この発光装置10には、パッケージ13の内部でのリードフレーム12a、12bに電気的に接続された保護素子を有している。保護素子は、例えばツェナーダイオードとすることができ、発光素子が載置されるリードフレーム12a、12bとは反対側の面に配置することができる。また、保護素子は、それに接続されるワイヤがリードフレーム12aとリードフレーム12bとの間のパッケージ内部に配置されていることが好ましい。特に、壁部がリードフレーム間から、リードフレーム上に配置されている場合には、このような配置によって、ツェナーダイオードに接続されるワイヤを短くすることができ、ワイヤの断線を抑制することができる。また、透光性樹脂の熱膨張を受けにくくなり、ツェナーダイオードの剥がれや弾性をより防止することができる。
【0053】
この発光装置は、パッケージの開口底面において、リードフレームの露出部位と樹脂の露出部位とが、特定の位置に特定の幅で配置されており、上述したように、開口側面においてパッケージ樹脂と透光性樹脂との間で剥がれまたは隙間が生じても、それらの界面に銀を含有した金属の部材が存在しない。そのために、その隙間から侵入する外気、水分等に金属の部材がさらされることなく、効果的に硫化を防止することができる。従って、金属部材の硫化による発光素子からの光の吸収を回避することができ、高輝度の発光装置を提供することができる。
また、開口内に壁部を設けることにより、開口内の空間を分断することができるために、開口内に埋め込まれる透光性樹脂の熱膨張又は収縮等に起因するワイヤ又は発光素子等に対する応力を効果的に緩和することができる。
【0054】
言い換えると、この発光装置は、樹脂と樹脂、樹脂とリードフレーム、ワイヤ等との間の隙間の発生を効果的に防止することができる構造を有する。これによって、発光装置に用いられている銀を含有する金属部材の硫化を阻止することが可能となり、その構造及び作用と相まって、より効率的に発光素子から出射された光を取り出すことができる高輝度の発光装置を得ることができる。また、この発光装置は、小型化及び薄型化を実現するために、他の電子機器との組み合わせの自由度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の発光装置は、発光素子として、例えば、発光ダイオードチップを搭載することにより、パッケージの側面から側面方向に光を放出するタイプの表面実装型発光装置として、ファクシミリ、コピー機、ハンドスキャナ等における画像読取装置に利用される照明装置のみならず、照明用光源、LEDディスプレイ、携帯電話機等のバックライト光源、信号機、照明式スイッチ、車載用ストップランプ、各種センサおよび各種インジケータ等の種々の照明装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
2 n側パッド電極
3 p側パッド電極
10 発光装置
11a、11b 発光素子
12a、12b リードフレーム
13 パッケージ
13a 開口
13b 壁部
13c 短側面
13d 長側面
13e 樹脂底面
13f 凹部
14 ワイヤ
図1A
図1B
図2
図3
図4