特許第6064908号(P6064908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6064908-静電チャック装置 図000002
  • 特許6064908-静電チャック装置 図000003
  • 特許6064908-静電チャック装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6064908
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20170116BHJP
   B23Q 3/15 20060101ALI20170116BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   B23Q3/15 D
   H02N13/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-536319(P2013-536319)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2012074642
(87)【国際公開番号】WO2013047555
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-212955(P2011-212955)
(32)【優先日】2011年9月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】早原 竜二
(72)【発明者】
【氏名】石村 和典
(72)【発明者】
【氏名】小坂井 守
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−040644(JP,A)
【文献】 特開平08−274147(JP,A)
【文献】 特開平11−220008(JP,A)
【文献】 特開2002−313900(JP,A)
【文献】 特開2010−129766(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0193501(US,A1)
【文献】 特開平07−106317(JP,A)
【文献】 特表平11−502062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 3/15
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵してなる静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却する冷却ベース部とを備え、
前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に所定の形状のヒーターパターンを有する加熱部材を設け、前記ヒーターパターンの隙間部分に、前記ヒーターパターンから電気的に独立しかつ前記ヒーターパターンと同一の材質からなる島状部を1つ以上設けてなることを特徴とする静電チャック装置。
【請求項2】
前記ヒーターパターン及び前記島状部は、非磁性金属材料からなることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項3】
前記ヒーターパターン及び前記島状部は、絶縁性の有機系接着材層により前記静電チャック部及び前記冷却ベース部に接着一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の静電チャック装置。
【請求項4】
一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵してなる静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却する冷却ベース部とを備え、
前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に所定の形状のヒーターパターンを有する加熱部材を設け、前記ヒーターパターンの隙間部分に前記ヒーターパターンと同一の材質からなる島状部を1つ以上設けてなり、
前記ヒーターパターンと前記島状部とは、前記ヒーターパターンの断面積より小さな断面積を有する接続部により接続してなることを特徴とする静電チャック装置。
【請求項5】
前記ヒーターパターン及び前記島状部、または前記接続部は、非磁性金属材料からなることを特徴とする請求項記載の静電チャック装置。
【請求項6】
前記ヒーターパターン及び前記島状部、または前記接続部は、絶縁性の有機系接着材層により前記静電チャック部及び前記冷却ベース部に接着一体化されていることを特徴とする請求項記載の静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック装置に関し、さらに詳しくは、半導体製造プロセスにおけるプラズマエッチング等のプラズマ処理にて、半導体ウエハ等の板状試料を静電気力により吸着固定する際に好適に用いられ、板状試料の載置面における面内温度分布を均一化することが可能であり、さらには板状試料上におけるプラズマ密度を均一化することで板状試料のプラズマエッチングの面内均一性を向上させることが可能な静電チャック装置に関するものである。
本願は、2011年9月28日に、日本に出願された特願2011−212955号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造プロセスにおいては、素子の高集積化や高性能化に伴い、微細加工技術の更なる向上が求められている。この半導体製造プロセスの中でもエッチング技術は、微細加工技術の重要な一つであり、近年では、エッチング技術の内でも、高効率かつ大面積の微細加工が可能な技術として、プラズマから発生するラジカル(フリーラジカル)により固体材料に微細パターンを形成するプラズマエッチング技術が主流となっている。
【0003】
一方、原料ガスをプラズマの働きで化合させ、得られた化合物を基板の上に堆積させる薄膜成長技術の一つとしてプラズマCVD法がある。この方法は、原料分子を含むガスに高周波の電界を印加することによりプラズマ放電させ、このプラズマ放電にて加速された電子によって原料分子を分解させ、得られた化合物を堆積させる成膜方法である。低温では熱的励起だけでは起こらなかった反応も、プラズマ中では、系内のガスが相互に衝突し活性化されラジカルとなるので、可能となる。
【0004】
プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等のプラズマを用いた半導体製造装置においては、従来から、試料台に簡単にウエハを取付け、固定するとともに、このウエハを所望の温度に維持する装置として、表面がウエハを載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵してなる静電チャック部と、この静電チャック部を冷却する冷却ベース部とを備えた静電チャック装置が使用されている。
【0005】
ところで、従来のプラズマエッチング装置では、ウエハを加熱して所望の温度に昇温させる必要があるが、この昇温過程でウエハの面内で温度分布が発生する。例えば、ウエハの中心部では温度が高くなり、縁辺部では温度が低くなる。
また、プラズマエッチング装置の構造や方式の違い等により、ウエハの面内温度分布に差が生じる。
そこで、ウエハの面内温度分布を小さくするために、静電チャック部と冷却ベース部との間に形成された渦巻き状または蛇行状のヒーターパターンを、内側ヒーターパターンと外側ヒーターパターンの2ゾーンのヒーターパターンとし、各ゾーンのヒーターパターンを個別に制御したヒータ機能付き静電チャック装置(例えば、特許文献1等参照)、ヒーターパターンを上下方向に複数層形成することにより、ウエハの吸着面の面内温度分布を小さくしたセラミックヒータ(例えば、特許文献2等参照)等が提案されている。
【0006】
このヒータ機能付き静電チャック装置は、セラミック製の静電チャック部にヒータを内蔵する方法、静電チャック部の吸着面の裏側、すなわちセラミック板状体の裏面にスクリーン印刷法にてヒータ材料を所定のパターンにて塗布し加熱硬化させることにより、ヒータを取り付ける方法、あるいは、このセラミック板状体の裏面に金属箔やシート状導電材料を貼着することにより、ヒータを取り付ける方法、等によりヒータ内蔵あるいはヒータを取り付けた静電チャック部を作製し、この静電チャック部と、この静電チャック部を冷却する冷却ベース部とを、有機系接着剤層を介して接着一体化することで得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−297806号公報
【特許文献2】特開2002−373862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来のヒータ機能付き静電チャック装置では、ウエハを載置する載置面における面内温度分布を小さくするために、ヒーターパターンを複数のゾーンに分割して、各ゾーンのヒーターパターンを個別に制御することとしているが、ウエハを載置する載置面における面内温度分布を均一にすることが難しいという問題点があった。
確かに、ヒーターパターンを複数のゾーンに分割し、各ゾーンのヒーターパターンを個別に制御すれば、ウエハの面内温度分布における温度差は小さくなるものの、現在のプラズマエッチング技術が要求するウエハの面内温度分布をさらに均一化することが難しいという問題点があった。より高効率かつより大面積の微細加工が求められている今日では、進歩するプラズマエッチング技術に対応してウエハの面内温度分布をさらに均一化することは現段階では難しいのが現状である。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、ウエハ等の板状試料を載置する載置面における面内温度分布を均一化することができ、さらには板状試料上におけるプラズマ密度を均一化することで板状試料のプラズマエッチングの面内均一性を向上させることができる静電チャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵してなる静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却する冷却ベース部とを備えた静電チャック装置において、静電チャック部と冷却ベース部との間に所定の形状のヒーターパターンを有する加熱部材を設け、ヒーターパターンの隙間部分、ヒーターパターンの内部のいずれか一方または双方に、ヒーターパターンから独立しかつヒーターパターンと同一の材質からなる島状部を1つ以上設けることとすれば、板状試料を載置する載置面における面内温度分布が均一化することを知見し、さらに、ヒーターパターンと島状部とを、ヒーターパターンの断面積より小さな断面積を有する接続部により接続することとすれば、高周波の透過性及び電位差が均一化されることにより、板状試料上におけるプラズマ密度が均一化され、板状試料のプラズマエッチングの面内均一性が向上することを知見し、本発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、本発明の静電チャック装置は、一主面を板状試料を載置する載置面とするとともに静電吸着用内部電極を内蔵してなる静電チャック部と、前記静電チャック部を冷却する冷却ベース部とを備え、前記静電チャック部と前記冷却ベース部との間に所定の形状のヒーターパターンを有する加熱部材を設け、前記ヒーターパターンの隙間部分、前記ヒーターパターンの内部のいずれか一方または双方に、前記ヒーターパターンから独立しかつ前記ヒーターパターンと同一の材質からなる島状部を1つ以上設けてなることを特徴とする。
【0012】
この静電チャック装置では、静電チャック部と冷却ベース部との間に所定の形状のヒーターパターンを有する加熱部材を設け、このヒーターパターンの隙間部分、このヒーターパターンの内部のいずれか一方または双方に、このヒーターパターンから独立しかつヒーターパターンと同一の材質からなる島状部を1つ以上設けたことにより、板状試料を載置する載置面における面内温度分布が均一化される。
【0013】
本発明の静電チャック装置においては、前記ヒーターパターンと前記島状部とは、前記ヒーターパターンの断面積より小さな断面積を有する接続部により接続してなることを特徴とする。
この静電チャック装置では、ヒーターパターンと島状部とを、ヒーターパターンの断面積より小さな断面積を有する接続部で接続したことにより、加熱部材を構成するヒーターパターンと島状部とが等電位となり、ヒーターパターンと島状部と接続部とを含む加熱部材全体の高周波の透過性及び電位差が均一化される。よって、板状試料上におけるプラズマ密度が均一化され、板状試料のプラズマエッチングの面内均一性が向上する。
【0014】
本発明の静電チャック装置においては、前記ヒーターパターン及び前記島状部、または前記接続部は、非磁性金属材料からなることを特徴とする。
この静電チャック装置では、ヒーターパターン及び島状部、または接続部を、非磁性金属材料としたことにより、このヒーターパターン及び島状部、または接続部のパターン形状が板状試料に反映され難くなり、板状試料の面内温度が所望の温度パターンに維持し易くなる。
【0015】
本発明の静電チャック装置においては、前記ヒーターパターン及び前記島状部、または前記接続部は、絶縁性の有機系接着材層により前記静電チャック部及び前記冷却ベース部に接着一体化されていることを特徴とする。
この静電チャック装置では、ヒーターパターン及び島状部、または接続部を、絶縁性の有機系接着材層により静電チャック部及び冷却ベース部に接着一体化したことにより、この絶縁性の有機系接着材層が静電チャック部と冷却ベース部との間の応力及び熱膨張差を緩和する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の静電チャック装置によれば、静電チャック部と冷却ベース部との間に所定の形状のヒーターパターンを有する加熱部材を設け、このヒーターパターンの隙間部分、このヒーターパターンの内部のいずれか一方または双方に、このヒーターパターンから独立しかつこのヒーターパターンと同一の材質からなる島状部を1つ以上設けたので、板状試料を載置する載置面における面内温度分布を均一化することができる。
【0017】
ヒーターパターンと島状部とを、このヒーターパターンの断面積より小さな断面積を有する接続部により接続することにより、ヒーターパターンと島状部とを含む加熱部材全体の高周波の透過性及び電位差を均一化することができる。したがって、板状試料上におけるプラズマ密度を均一化することができ、板状試料のプラズマエッチングの面内均一性を向上させることができる。
【0018】
ヒーターパターン及び島状部、または接続部を、非磁性金属材料とすることにより、このヒーターパターン及び島状部、または接続部のパターン形状を板状試料に反映し難くすることができ、板状試料の面内温度を所望の温度パターンに維持し易くすることができる。
ヒーターパターン及び島状部、または接続部を、絶縁性の有機系接着材層により静電チャック部及び冷却ベース部に接着一体化することにより、この絶縁性の有機系接着材層により静電チャック部と冷却ベース部との間の応力及び熱膨張差を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態の静電チャック装置の領域Aにおけるヒータエレメント(加熱部材)を示す平面図である。
図3】本発明の第2の実施形態の静電チャック装置の領域Aにおけるヒータエレメント(加熱部材)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の静電チャック装置を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の静電チャック装置を示す断面図であり、この静電チャック装置1は、円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2を所望の温度に冷却する厚みのある円板状の冷却ベース部3と、静電チャック部2と冷却ベース部3との間に設けられ所定の形状のヒーターパターンを有するヒータエレメント(加熱部材)4と、このヒータエレメント4の上面を静電チャック部2の下面に接着させた絶縁性の有機系接着材層5及びヒータエレメント4の下面を冷却ベース部3の上面に接着させた絶縁性の有機系接着材層6とにより構成されている。
【0022】
静電チャック部2は、上面(一主面)が半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとされた載置板11と、この載置板11と一体化され載置板11を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用内部電極13と、この静電吸着用内部電極13の周囲に設けられ静電吸着用内部電極13を絶縁する絶縁材層14と、支持板12を貫通するようにして設けられ静電吸着用内部電極13に直流電圧を印加する給電用端子15とにより構成されている。
この載置板11の載置面には、直径が板状試料の厚みより小さい突起部(図示略)が複数個形成されており、これらの突起部が板状試料Wを支える構成になっている。
【0023】
これら載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状が同一形状の円板状のもので、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する絶縁性のセラミックス焼結体からなるものである。
このセラミックス焼結体としては、体積固有抵抗が1013〜 1015Ω・cm程度で機械的な強度を有し、しかも腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、酸化アルミニウム(Al)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)複合焼結体等が好適に用いられる。
【0024】
この載置板11の厚みは0.2mm以上かつ1.5mm以下が好ましく、特に好ましくは0.5mm以上かつ1.0mm以下である。その理由は、載置板11の厚みが0.2mm未満であると、充分な耐電圧を確保することができず、一方、1.5mmを超えると、静電吸着力が低下する他、載置板11の載置面11aに載置される板状試料Wと冷却ベース部3との間の熱伝導性が低下し、処理中の板状試料Wの温度を所望の温度パターンに保つことが困難となるからである。
【0025】
また、支持板12の厚みは0.5mm以上かつ2.8mm以下が好ましく、特に好ましくは1.0mm以上かつ2.0mm以下である。その理由は、支持板12の厚みが0.5mm未満であると、充分な耐電圧を確保することができず、一方、2.8mmを超えると、載置板11の載置面11aに載置される板状試料Wと冷却ベース部3との間の熱伝導性が低下し、処理中の板状試料Wの温度を所望の温度パターンに保つことが困難となるからである。
【0026】
静電吸着用内部電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
この静電吸着用内部電極13は、その熱膨張係数が載置板11及び支持板12の熱膨張係数に出来るだけ近似していることが好ましく、この様な電極材料としては、例えば、炭化ケイ素(SiC)導電性焼結体、窒化チタン(Ti)導電性焼結体、炭化チタン(TiC)導電性焼結体、酸化アルミニウム−炭化タンタル(Al−Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−タングステン(Al−W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タングステン(AlN−W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム−タンタル(AlN−Ta)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、または、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等の高融点金属、あるいは、グラファイト、カーボン等の炭素材料により形成されている。
【0027】
この静電吸着用内部電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、0.1μm以上かつ100μm以下が好ましく、特に好ましくは5μm以上かつ20μm以下である。
その理由は、厚みが0.1μm未満であると、面積抵抗が大きくなりすぎて充分な導電性を確保することができず、一方、厚みが100μmを越えると、この静電吸着用内部電極13と載置板11及び支持板12との間の熱膨張率差に起因して、この静電吸着用内部電極13と載置板11及び支持板12との接合界面にクラックが入り易くなるからである。
このような厚みの静電吸着用内部電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0028】
絶縁材層14は、静電吸着用内部電極13を囲繞して腐食性ガス及びそのプラズマから静電吸着用内部電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち静電吸着用内部電極13の外側の外周部領域を接合一体化するものであり、載置板11及び支持板12を構成する材料と同一組成または主成分が同一の絶縁材料により構成されている。
【0029】
給電用端子15は、静電吸着用内部電極13に直流電圧を印加するために設けられた棒状のもので、その数及び形状等は、静電吸着用内部電極13の形態、即ち、この静電吸着用内部電極13が単極型か、双極型かにより決定される。
この給電用端子15の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではないが、熱膨張係数が静電吸着用内部電極13及び支持板12の熱膨張係数に近似したものが好ましく、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料、各種の導電性セラミックスが好適に用いられる。
この給電用端子15は、絶縁性の有機系接着材層5、6及び冷却ベース部3を貫通し、外部の電源(図示略)に接続されている。
【0030】
静電チャック部2の厚み、すなわち、これら載置板11、支持板12、静電吸着用内部電極13及び絶縁材層14の合計の厚みは0.7mm以上かつ5.0mm以下が好ましい。その理由は、静電チャック部2の厚みが0.7mm未満であると、静電チャック部2の機械的強度を確保することができず、一方、静電チャック部2の厚みが5.0mmを超えると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり過ぎてしまい、その結果、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化し、さらには、静電チャック部2の横方向の熱伝達の増加により、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になるからである。
【0031】
冷却ベース部3は、静電チャック部2の下側に設けられて、この静電チャック部2を冷却することで載置板11の載置面を所望の温度に制御するとともに、高周波発生用電極を兼ね備えたものである。
この冷却ベース部3内には、水や有機溶媒等の冷却用媒体を循環させる流路18が形成され、上記の載置板11上に載置される板状試料Wの温度を所望の温度に維持することができるようになっている。
【0032】
この冷却ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等が好適に用いられる。
この冷却ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0033】
ヒータエレメント4は、図2に示すように、1本の帯状の金属材料を蛇行させた所定の形状のヒーターパターン21を有するもので、幅が10mm(10000μm)以下、好ましくは3mm(3000μm)以下、厚みが300μm以下、好ましくは100μm以下である。また、この厚みは1μm以上、好ましくは 10μm以上である。このヒーターパターン21の両端部それぞれには給電用端子22が接続されている。
このヒータエレメント4は、非磁性金属薄板、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等を所望の形状のヒーターパターン21にエッチング加工することで形成される。
【0034】
ここで、ヒーターパターン21の厚みを300μm以下とした理由は、厚みが300μmを超えると、ヒーターパターン21の線幅が狭くなるために、このヒーターパターン21をエッチング加工する際の線幅の加工精度のばらつきが大きくなり、その結果、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが困難になるからである。また、ヒーターパターン21の厚みを1μm以上とした理由は、ヒーターパターン21の厚みがこの値を下回ると抵抗が著しく高くなり、抵抗を下げるためにはヒーターパターン21の幅を広くしなければならないことから、載置面における面内温度分布を均一にするようにヒーターパターンを設計することが困難となるからである。
【0035】
このヒーターパターン21を非磁性金属薄板で形成すると、静電チャック装置1を高周波雰囲気中で用いてもヒータエレメント4が高周波により自己発熱せず、板状試料Wの面内温度を所望の一定温度または一定の温度パターンに維持することが容易となるので好ましい。
また、一定厚みの非磁性金属薄板でヒーターパターン21を形成すると、ヒーターパターン21の厚みが加熱面全域で一定となり、発熱量も加熱面全域で一定となって温度分布を均一化することができる。
【0036】
このヒーターパターン21には、このヒーターパターン21の平行部分を互いに離間する方向へ移動することで、このヒーターパターン21間に所定形状の隙間部分23(図2では、略三日月形状)が形成され、この隙間部分23には、ヒーターパターン21から独立した所定形状(図2では、略三日月形状)の島状部24が設けられている。
この島状部24は、ヒーターパターン21と同一の非磁性金属薄板、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等を所望の形状の島状パターンにエッチング加工することで形成される。
【0037】
この島状部24は、厚みがヒーターパターン21と同様に300μm以下、好ましくは100μm以下の略三日月形状のものである。
この島状部24の個数及び配置は、板状試料Wを載置する載置面11aにおける面内温度分布が均一化されるように、適宜設定される。
この島状部24とヒーターパターン21との間隔は、島状部24がヒーターパターン21から電気的に独立することができる程度の間隔であればよく、500μm以上かつ3000μm以下、好ましくは1000μm以上かつ2000μm以下である。
【0038】
このヒーターパターン21に、ヒーターパターン21から独立しかつヒーターパターン21と同一材料からなる島状部24を設けたことにより、ヒータエレメント4内に、ヒーターパターン21の部分と、ヒーターパターン21を除く部分との温度差がなくなり、その結果、ヒータエレメント4の上部における面内温度分布が均一化され、よって、板状試料Wを載置する載置面11aにおける面内温度分布が均一化される。
【0039】
このヒーターパターン21は、上記のように1つのヒーターパターンにより構成してもよく、相互に独立した2つ以上のヒーターパターンにより構成してもよい。
このように、ヒーターパターン21を相互に独立した2つ以上のヒーターパターンにより構成すると、これら相互に独立したヒーターパターンを個々に制御することにより、処理中の板状試料Wの温度を自由に制御することができるので、好ましい。
【0040】
絶縁性の有機系接着材層5、6は、ヒータエレメント4を静電チャック部2及び冷却ベース部3それぞれに接着一体化することのできるものであればよく、シート状またはフィルム状の耐熱性及び絶縁性を有する接着性樹脂、例えば、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
これら絶縁性の有機系接着材層5、6の間に、さらに第3の絶縁性の有機系接着材層を設けることにより、これらの絶縁性の有機系接着材層を3層構造とし、この3層構造の絶縁性の有機系接着材層を介して静電チャック部2及び冷却ベース部3を接着一体化してもよい。この第3の絶縁性の有機系接着材層としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0041】
この絶縁性の有機系接着材層5、6の厚みは100μm〜500μmが好ましく、より好ましくは150μm〜300μmである。この絶縁性の有機系接着材層5、6の面内の厚みのバラツキは10μm以内が好ましい。
ここで、絶縁性の有機系接着材層5、6の面内の厚みのバラツキが10μmを超えると、ヒータエレメント4と静電チャック部2との面内間隔、及びヒータエレメント4と冷却ベース部3との面内間隔に10μmを超えるバラツキが生じ、その結果、静電チャック部2と冷却ベース部3との間における熱の面内均一性が低下し、静電チャック部2の載置面11aにおける面内温度が不均一となり、板状試料Wの面内温度の均一性が低下するので、好ましくない。
【0042】
絶縁性の有機系接着材層5、6には、平均粒径が1μm以上かつ10μm以下のフィラー、例えば、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面に酸化ケイ素(SiO)からなる被覆層が形成された表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子が含有されていることが好ましい。
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、有機系接着材層の熱伝導性を改善するために混入されたもので、その混入率を調整することにより、有機系接着剤層5、6各々の熱伝達率を制御することができる。
【0043】
すなわち、表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の混入率を高めることにより、静電チャック部2側の有機系接着剤層5を構成する有機系接着剤の熱伝達率を大きくすることができる。
また、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面に酸化ケイ素(SiO)からなる被覆層が形成されているので、表面被覆が施されていない単なる窒化アルミニウム(AlN)粒子と比較して、優れた耐水性を有している。したがって、有機系接着剤層5、6の耐久性を確保することができ、その結果、静電チャック装置1の耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0044】
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、窒化アルミニウム(AlN)粒子の表面が、優れた耐水性を有する酸化ケイ素(SiO)からなる被覆層により被覆されているので、窒化アルミニウム(AlN)が大気中の水により加水分解される虞が無く、窒化アルミニウム(AlN)の熱伝達率が低下する虞もなく、有機系接着剤層5、6の耐久性が向上する。
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子は、半導体ウエハ等の板状試料Wへの汚染源となる虞もない。
【0045】
この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の平均粒径は、1μm以上かつ10μm以下が好ましく、より好ましくは2μm以上かつ5μm以下である。
ここで、この表面被覆窒化アルミニウム(AlN)粒子の平均粒径が1μmを下回ると、粒子同士の接触が不十分となり、結果的に熱伝達率が低下する虞があり、また、粒径が細か過ぎると、取扱等の作業性の低下を招くこととなり、好ましくない。一方、平均粒径が10μmを越えると、局所的には有機系接着剤層内における樹脂組成物の占める割合が減少し、有機系接着剤層の伸び性、接着強度の低下を招く虞がある。
【0046】
次に、この静電チャック装置1の製造方法について説明する。
まず、酸化アルミニウム(Al)焼結体、窒化アルミニウム(AlN)焼結体、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)複合焼結体等により板状の載置板11及び支持板12を作製する。
例えば、酸化アルミニウム−炭化ケイ素(Al−SiC)複合焼結体により載置板11及び支持板12を作製する場合、炭化ケイ素粉体及び酸化アルミニウム粉体を含む混合粉体を所望の形状に成形し、その後、例えば1600℃〜2000℃の温度、非酸化性雰囲気、好ましくは不活性雰囲気下にて所定時間、焼成することにより得ることができる。
【0047】
次いで、支持板12に、給電用端子15を嵌め込み保持するための固定孔を複数個形成する。
次いで、給電用端子15を、支持板12の固定孔に密着固定し得る大きさ、形状となるように作製する。この給電用端子15の作製方法としては、例えば、給電用端子15を導電性複合焼結体とした場合、導電性セラミックス粉体を、所望の形状に成形して加圧焼成する方法等が挙げられる。
この導電性セラミックス粉体としては、静電吸着用内部電極13と同様の材質からなる導電性セラミックス粉体が好ましい。
また、給電用端子15を金属とした場合、高融点金属を用い、研削法、粉体治金等の金属加工法等により形成する方法等が挙げられる。
【0048】
次いで、給電用端子15が嵌め込まれた支持板12の表面の所定領域に、給電用端子15に接触するように、上記の導電性セラミックス粉体等の導電材料を有機溶媒に分散した静電吸着用内部電極形成用塗布液を塗布し、乾燥して、静電吸着用内部電極形成層とする。
この塗布法としては、均一な厚さに塗布することができる点で、スクリーン印刷法、スピンコート法等が望ましい。また、他の方法としては、支持板12の表面の所定領域に、上記の高融点金属薄膜を蒸着法あるいはスパッタリング法により成膜する方法、上記の導電性セラミックスあるいは高融点金属からなる薄板を配設し、エッチング加工により所定形状の静電吸着用内部電極形成層とする方法等がある。
【0049】
また、支持板12上の静電吸着用内部電極形成層を形成した領域以外の領域に、絶縁性、耐腐食性、耐プラズマ性を向上させるために、載置板11及び支持板12と同一組成または主成分が同一の粉体材料を含む絶縁材層を形成する。
この絶縁材層は、例えば、載置板11及び支持板12と同一組成または主成分が同一の絶縁材料粉体を有機溶媒に分散した塗布液を、上記所定領域にスクリーン印刷等で塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0050】
次いで、支持板12上の静電吸着用内部電極形成層及び絶縁材層の上に載置板11を重ね合わせ、次いで、これらを高温、高圧下にてホットプレスして一体化する。このホットプレスにおける雰囲気は、真空、あるいはAr、He、N等の不活性雰囲気が好ましい。また、圧力は5〜10MPaが好ましく、温度は1600℃〜1850℃が好ましい。
【0051】
このホットプレスにより、静電吸着用内部電極形成層は焼成されて導電性複合焼結体からなる静電吸着用内部電極13となる。同時に、支持板12及び載置板11は、絶縁材層14を介して接合一体化される。
また、給電用端子15は、高温、高圧下でのホットプレスで再焼成され、支持板12の固定孔に密着固定される。
そして、これら接合体の上下面、外周およびガス穴等を機械加工し、静電チャック部2とする。
【0052】
次いで、この静電チャック部2の支持板12の表面(下面)の所定の領域に、例えば、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等のシート状またはフィルム状の耐熱性及び絶縁性を有する有機系接着材を貼着し、絶縁性の有機系接着材層5とする。
【0053】
次いで、この絶縁性の有機系接着材層5上に、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等の非磁性金属薄板を貼着し、この非磁性金属薄板をフォトリソグラフィー法により所望のパターンにエッチング加工し、ヒーターパターン21と、このヒーターパターン21から独立した島状部24とからなるヒータエレメント4とする。
これにより、支持板12の表面(下面)に所望のヒーターパターン21と、このヒーターパターン21から独立した島状部24とからなるヒータエレメント4が絶縁性の有機系接着材層5を介して形成されたヒータエレメント付き静電チャック部が得られる。
【0054】
次いで、所定の大きさ及び形状の給電用端子22を作製する。この給電用端子22は、ヒータエレメント4のヒーターパターン21及び島状部24と同質の材料が好ましい。
次いで、この給電用端子22をヒータエレメント4に電気的に接続する。接続方法としては、ネジもしくは溶接による方法が挙げられる。
【0055】
一方、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等からなる金属材料に機械加工を施し、必要に応じて、この金属材料の内部に水を循環させる流路等を形成し、さらに、給電用端子15、22を嵌め込み保持するための固定孔を形成し、冷却ベース部3とする。
この冷却ベース部3の少なくともプラズマに曝される面には、アルマイト処理を施すか、あるいはアルミナ等の絶縁膜を成膜することが好ましい。
【0056】
次いで、冷却ベース部3の静電チャック部2との接合面を、例えばアセトンを用いて脱脂、洗浄し、この接合面上の所定位置に、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等のシート状またはフィルム状の耐熱性及び絶縁性を有する有機系接着材を貼着し、絶縁性の有機系接着材層6とする。
【0057】
次いで、静電チャック部2の絶縁性の有機系接着材層5及びヒーターパターン21と島状部24とからなるヒータエレメント4と、冷却ベース部3の絶縁性の有機系接着材層6とを重ね合わせる。この際、給電用端子15、22を、冷却ベース部3中に穿孔された給電用端子収容孔(図示略)に挿入し嵌め込む。
次いで、静電チャック部2を上方から所定の圧力にて押圧し、静電チャック部2と冷却ベース部3とを、ヒーターパターン21と島状部24とからなるヒータエレメント4及び絶縁性の有機系接着材層5、6を介して接着一体化する。
以上により、静電チャック部2、ヒータエレメント4及び絶縁性の有機系接着材層5と、冷却ベース部3及び絶縁性の有機系接着材層6とは、接合一体化され、本実施形態の静電チャック装置1が得られることとなる。
【0058】
この静電チャック装置1によれば、ヒータエレメント4を、1本の帯状の金属材料を蛇行させた所定の形状のヒーターパターン21と、このヒーターパターン21間に形成された隙間部分23に設けられヒーターパターン21から独立した所定形状の島状部24とにより構成したので、板状試料Wを載置する載置面11aにおける面内温度分布を均一化することができる。
また、静電チャック部2と冷却ベース部3とを、ヒーターパターン21と島状部24とからなるヒータエレメント4及び絶縁性の有機系接着材層5、6を介して接着一体化したので、絶縁性の有機系接着材層5、6により静電チャック部2と冷却ベース部3との間の応力及び熱膨張差を緩和することができる。
【0059】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態の静電チャック装置の第1の実施形態の領域Aに対応する位置におけるヒータエレメント(加熱部材)31を示す平面図であり、本実施形態のヒータエレメント31が図2に示す第1の実施形態のヒータエレメント4と異なる点は、第1の実施形態のヒータエレメント4では、ヒーターパターン21間に形成された隙間部分23に、ヒーターパターン21から電気的に独立した島状部24を設けたのに対し、本実施形態のヒータエレメント31では、ヒーターパターン21と島状部24とを、このヒーターパターン21の断面積より小さな断面積を有しかつヒーターパターン21及び島状部24と同一の材料組成からなる接続部32により接続した点であり、この他の構成要素については、第1の実施形態のヒータエレメント4と全く同様である。
【0060】
この接続部32は、ヒーターパターン21及び島状部24と同一の非磁性金属薄板、例えば、チタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等を所望の形状にエッチング加工することで形成される。このエッチング加工は、ヒーターパターン21及び島状部24のエッチング加工と同時に行うと、精度良く形成することができ、しかも工程を変更することがなく、製造工程が増加する虞もないので、好ましい。
【0061】
この接続部32の形状は、幅が2000μm以下、好ましくは1000μm以下、厚みが300μm以下、好ましくは100μm以下の1本の帯状の金属材料からなるもので、その断面積は600,000μm以下、好ましくは100,000μm以下である。
一方、ヒーターパターン21は、幅が10mm(10000μm)以下、好ましくは3mm(3000μm)以下、厚みが300μm以下、好ましくは100μm以下の1本の帯状の金属材料からなるもので、その断面積は3,000,000μm以下、好ましくは300,000μm以下である。
したがって、この接続部32の断面積は、ヒーターパターン21の断面積より小さいものとなっている。
【0062】
この静電チャック装置によれば、ヒーターパターン21と島状部24とを、ヒーターパターン21の断面積より小さな断面積を有する接続部32により接続したので、ヒーターパターン21と島状部24とを等電位とすることができ、ヒーターパターン21、島状部24及び接続部32を含むヒータエレメント31全体の高周波の透過性及び電位差を均一化することができる。したがって、板状試料上におけるプラズマ密度を均一化することができ、板状試料のプラズマエッチングの面内均一性を向上させることができる。
【0063】
なお、本発明の第1及び第2の実施形態の静電チャック装置では、ヒーターパターン21の平行部分を互いに離間する方向へ移動して形成された隙間部分23に、ヒーターパターン21から独立した島状部24を1つ設けた構成としたが、隙間部分23に島状部24を2つ以上設けた構成としてもよい。
また、ヒーターパターン21の一部を拡張し、この拡張部分に穴を形成して隙間部分とし、この隙間部分に、ヒーターパターン21から独立した島状部24を設けた構成としてもよい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
(静電チャック装置の作製)
公知の方法により、内部に厚み10μmの静電吸着用内部電極13が埋設された静電チャック部2を作製した。
この静電チャック部2の載置板11は、炭化ケイ素を10質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は300mm、厚みは0.5mmの円板状であった。
【0066】
また、支持板12も載置板11と同様、炭化ケイ素を10質量%含有する酸化アルミニウム−炭化ケイ素複合焼結体であり、直径は300mm、厚みは3mmの円板状であった。
これら載置板11及び支持板12を静電吸着用内部電極13及び絶縁材層14を介して接合一体化した後に機械加工を施し、さらに載置板11の静電吸着面を、高さが40μmの多数の突起部を形成することで凹凸面とすることにより、全体の直径が300mm、厚みが4mmの静電チャック部2を作製した。
【0067】
一方、直径350mm、高さ30mmのアルミニウム製の冷却ベース部3を、機械加工により作製した。この冷却ベース部3の内部には冷媒を循環させる流路18を形成した。
【0068】
次いで、この静電チャック部2の支持板12の表面(下面)に、絶縁性の有機系接着材シートを貼着し、絶縁性の有機系接着材層5とした。
次いで、この絶縁性の有機系接着材層5上に、厚みが100μmのチタン(Ti)薄板を貼着し、静電チャック部2とチタン(Ti)薄板とを接着固定した。
【0069】
次いで、チタン(Ti)薄板をフォトリソグラフィー法により、所定のヒーターパターン21及び島状部24にエッチング加工し、ヒータエレメント4とした。また、このヒータエレメント4に、チタン製の給電用端子22を溶接法を用いて立設し、静電チャック部2の固定孔に給電用端子15を嵌め込み固定した。
これにより、ヒータエレメント付き静電チャック部が得られた。
【0070】
次いで、冷却ベース部3の静電チャック部2との接合面の所定位置に、絶縁性の有機系接着材シートを貼着し、絶縁性の有機系接着材層6とした。
これにより、絶縁性の有機系接着材層付き冷却ベース部が得られた。
【0071】
次いで、ヒータエレメント付き静電チャック部のヒータエレメント側と、絶縁性の有機系接着材層付き冷却ベース部の有機系接着材層側とを、シリコーン接着剤からなる絶縁性の有機系接着材層を介して重ね合わせることにより、静電チャック部2と冷却ベース部3とを3層構造の絶縁性の有機系接着材層を介して接着・固定させ、実施例1の静電チャック装置を作製した。
【0072】
(評価)
この静電チャック装置の載置面における面内温度分布を測定し、評価した。評価方法及び評価結果は下記のとおりである。
「面内温度分布」
静電チャック部2の載置面11aに直径300mmのシリコンウエハを静電吸着させ、冷却ベース部3の流路18に20℃の冷却水を循環させながら、シリコンウエハの中心温度が60℃となるようにヒータエレメント4に通電し、このときのシリコンウエハの面内温度分布をサーモグラフィTVS−200EX(日本アビオニクス社製)を用いて測定した。その結果、シリコンウエハの一直径方向の中心温度と周縁部の温度との差は1℃であり、±1℃以内であった。
【0073】
[実施例2]
チタン(Ti)薄板を、フォトリソグラフィー法により所定のヒーターパターン21、島状部24及び接続部32にエッチング加工し、ヒータエレメント31とした他は、実施例1と同様にして、実施例2の静電チャック装置を作製した。
次いで、この静電チャック装置の載置面における面内温度分布を実施例1に準じて測定し、評価した。その結果、シリコンウエハの一直径方向の中心温度と周縁部の温度との差は1℃であり、±1℃以内であった。
【0074】
「比較例」
チタン(Ti)薄板をフォトリソグラフィー法により、渦巻き状のヒーターパターンにエッチング加工してヒータエレメントとした他は、実施例1と同様にして、比較例の静電チャック装置を作製した。
次いで、この静電チャック装置の載置面における面内温度分布を実施例1に準じて測定し、評価した。その結果、シリコンウエハの一直径方向の中心温度と周縁部の温度との差は2℃であり、±2℃の範囲を超えていた。
【0075】
「プラズマ均一性の評価」
実施例1〜2及び比較例各々の静電チャック装置におけるプラズマ均一性の評価を行った。
ここでは、上記の静電チャック装置をプラズマエッチング装置の処理容器内に搭載し、この静電チャック装置の載置面に板状試料を載置した。この板状試料としては、表面にレジスト膜が成膜された直径300mm(12インチ)のウエハを用いた。
そして、このウエハを直流2500V印加による静電吸着により載置面に固定しつつ、プラズマを発生させ、レジスト膜のアッシング処理を行った。この処理容器内は0.7Pa(5mTorr)のOガス(100sccmにて供給)雰囲気とし、プラズマ発生用の高周波電力は周波数100MHz、2kW とし、また、冷却ガス導入孔より静電チャック装置の載置板11とウエハとの隙間に所定の圧力(15Torr)のHeガスを流し、冷却ベース部3の流路18に20℃の冷却水を流した。
【0076】
アッシング処理終了後、上記ウエハの中心部から外周部にかけてヒータの島状構造部分を通過するようにレジスト膜の膜厚の変化を測定し、エッチング量の面内均一性を観察した。
これらの評価結果によれば、実施例1の静電チャック装置では、エッチング量がウエハの中心部から外周部までほぼ同一であったが、島状部上でわずかに増加していた。また、実施例2の静電チャック装置では、エッチング量がウエハの中心部から外周部までほぼ同一であり、最もプラズマ均一性に優れていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、ウエハ等の板状試料を載置する載置面における面内温度分布を均一化することが求められ、さらには板状試料上におけるプラズマ密度を均一化することで板状試料のプラズマエッチングの面内均一性を向上させることが求められる静電チャック装置に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 静電チャック装置
2 静電チャック部
3 冷却ベース部
4 ヒータエレメント(加熱部材)
5、6 絶縁性の有機系接着材層
11 載置板
11a 載置面
12 支持板
13 静電吸着用内部電極
14 絶縁材層
15 給電用端子
18 流路
21 ヒーターパターン
22 給電用端子
23 隙間部分
24 島状部
31 ヒータエレメント(加熱部材)
32 接続部
A 領域
W 板状試料
図1
図2
図3