(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
太陽電池用の基板上に導電性ペーストをスクリーン印刷してバスバー電極及びフィンガー電極を形成する太陽電池の製造方法であって、上記バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンを複数の印刷範囲に分割し、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンに対応する開口部を有する印刷版を作製し、この印刷版を用いたスクリーン印刷により上記電極を形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
上記バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンは、バスバー電極の長手方向に直交する方向を印刷方向として配置されており、少なくともこの印刷方向で分割されることを特徴とする請求項1記載の太陽電池の製造方法。
上記バスバー電極を含む分割電極形状パターンに対応する開口部を有する印刷版で印刷するとき、バスバー電極のパターン部分が印刷終端となるように印刷版を配置することを特徴とする請求項4又は5記載の太陽電池の製造方法。
上記バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンは、印刷方向及びこの印刷方向に直交する方向で分割されることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
上記バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンは、印刷方向で2等分されると共に、この印刷方向に直交する方向で2等分されることを特徴とする請求項7記載の太陽電池の製造方法。
分割された印刷範囲における分割電極形状パターンについて更にフィンガー電極のみのパターンとバスバー電極のみのパターンに分離し、分離したそれぞれのパターンごとに印刷版を作製することを特徴とする請求項8記載の太陽電池の製造方法。
2種類の分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を用いたスクリーン印刷により上記電極を形成する際に、上記2種類の分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版のいずれかを固定して配置し、該印刷版で基板に印刷した後、基板を回転及び/又は移動して該基板の別の場所に上記印刷版を用いた印刷を行うことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
上記2種類の分割電極形状パターンは、少なくともバスバー電極を含む分割電極形状パターンと、フィンガー電極のみの分割電極形状パターンであることを特徴とする請求項10記載の太陽電池の製造方法。
上記フィンガー電極のみの分割電極形状パターンに対応する印刷版を用いて基板上の複数個所にフィンガー電極を印刷し、次にバスバー電極を含む分割電極形状パターンに対応する印刷版を用いて残りの印刷範囲にバスバー電極を含む電極を印刷することを特徴とする請求項11記載の太陽電池の製造方法。
上記2種類の分割電極形状パターンは、上記バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンが印刷方向で2等分されると共に、この印刷方向に直交する方向で2等分されたものであることを特徴とする請求項10記載の太陽電池の製造方法。
上記2種類の分割電極形状パターンは、バスバー電極のみの分割電極形状パターンとフィンガー電極のみの分割電極形状パターンであることを特徴とする請求項10記載の太陽電池の製造方法。
上記バスバー電極のみの分割電極形状パターンに対応する印刷版を用いる場合、この印刷版で印刷されるバスバー電極が離間して印刷されたフィンガー電極同士をつなぐ位置となるように基板を回転及び/又は移動することを特徴とする請求項14記載の太陽電池の製造方法。
上記スクリーン印刷は、バスバー電極の長手方向に対して直交する方向にスキージを移動して印刷するものであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
上記印刷版を用いてスクリーン印刷し、乾燥処理して形成した電極上に、更に同じ印刷版を用いてスクリーン印刷、乾燥処理を繰り返して行い、多層印刷を行って電極を形成することを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項記載の太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、太陽電池の一般的な構造を示す断面図である。
図1において、21はp型シリコン基板、22はn型拡散層、23は反射防止膜兼パッシベーション膜、24は表面バスバー電極、25はBSF(Back Surface Field)層、26はアルミニウム電極、27は裏面バスバー電極を示す。
【0014】
ここで、
図1に示す太陽電池を例にとり、その製造工程を説明する。
まず、シリコン基板を用意する。このシリコン基板は、単結晶又は多結晶からなり、p型、n型どちらでも良いがボロンなどのp型の半導体不純物を含み、比抵抗は0.1〜4.0Ω・cmの形状のものが用いられることが多い。以下、p型シリコン基板21を用いた太陽電池の製造方法を例にとって説明する。なお、その大きさは100〜150mm角、厚みは0.05〜0.3mmの板状のものがよく用いられる。
【0015】
p型シリコン基板21は、一定の厚みに切り出す際に受けた機械的ダメージや汚染層を除去するために水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような高濃度のアルカリ、若しくはフッ化水素酸と硝酸の混合液などで10〜20μm程度エッチングして、乾燥することでテクスチャーと呼ばれる凹凸構造を形成する。凹凸構造は、太陽電池の受光面において光の多重反射を生じさせる。そのため、凹凸構造を形成することにより、光が閉じ込められて効率よく半導体内に導かれていき、戻らなくなるので実効的に反射率が低減し、変換効率が向上する。
【0016】
その他として、可視光域の反射率を低減させるために2回以上の反射を受光面で行わせる構造としてもよい。代表的な表面凹凸構造はV溝、U溝が挙げられる。これらは、研削機を利用して形成可能である。水酸化ナトリウムやイソプロピルアルコールを加えた水溶液に浸すウェットエッチング法、酸エッチングなどを用いる。
【0017】
その後、例えばPOCl
3などを含む850〜1,000℃の高温ガス中にp型シリコン基板21を設置し、p型シリコン基板21の全面にリン等のn型不純物元素を拡散させる熱拡散法により、シート抵抗が30〜300Ω/□程度のn型拡散層22を受光面(表面)に形成する。p型シリコン基板21の両面及び端面にもn型拡散層22が形成されることがあるが、この場合には必要なn型拡散層22の表面を耐酸性樹脂で被覆したp型シリコン基板21をフッ硝酸溶液中に浸漬することによって、不要なn型拡散層を除去することが出来る。その後、熱拡散で形成されたリンガラスを数質量%のフッ化水素酸水溶液に数分浸漬して除去し、純水で洗浄する。
【0018】
更に、上記p型シリコン基板21の表面側に反射防止膜兼パッシベーション膜23を形成する。この反射防止膜兼パッシベーション膜23は、例えばSiNなどからなり、例えばSiH
4とNH
4との混合ガスをN
2で希釈し、グロー放電分解でプラズマ化されて堆積させるプラズマCVD法などで形成される。この反射防止膜兼パッシベーション膜23はp型シリコン基板21との屈折率差1.8〜2.3程度になるように形成され、約70〜100nm程度の厚みに形成され、p型シリコン基板21の表面で光が反射するのを防止して、p型シリコン基板21内に光を有効に取り込むために設けられる。また、SiNは、形成の際に、n型拡散層22に対してパッシベーション効果があるパッシベーション膜としても機能し、反射防止の機能と併せて、太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
【0019】
次に、p型シリコン基板21の裏面に、例えばアルミニウムとガラスフリットとワニスなどを含む導電性ペーストを用いて、
図3のように裏面バスバー電極27をスクリーン印刷し、アルミニウム粉末を有機バインダーで混合したペーストをバスバー電極以外の領域にスクリーン印刷する。そして、150〜200℃程度で乾燥させる。
【0020】
続いて、スクリーン印刷機で印刷版を使用して、表面バスバー電極(以下、バスバー電極)24とフィンガー電極28を形成する。即ち、スクリーン印刷機により、銀を含むペーストが印刷版を介して、表面の反射防止膜兼パッシベーション膜23上にバスバー電極24とフィンガー電極28の電極パターンで印刷され、150〜200℃程度で乾燥される。
【0021】
ここで使用する印刷版は、例えばステンレススチールやニッケル、ポリエステルなどのメッシュの裏側に乳剤でコーティングした構造であって、電極形状パターンに乳剤層を除去した開口部を有するスクリーン版が挙げられる。このスクリーン版を用いて、バスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンに銀を含むペーストを膜厚10〜15μmで印刷する。また、例えばフィンガー電極28の線幅は20〜150μm、ピッチは1.5〜2mm、バスバー電極24の線幅は1〜1.5mmである。通常ならば、
図5(a)のように、全体の開口部パターンを有するスクリーン版を用いて、その上で図中左方向から右方向(バスバー電極24の長手方向に対して直交する方向)にスキージで圧力を加えながら、ペーストを押し出して印刷する。しかしながら、一般的にスクリーン版が大型化するにつれて印刷長が長くなり、同じ面圧で版の端から端までの広い範囲を印刷することが困難となる。例えば、
図4(b)に示すようにフィンガー電極28にかすれが発生してバスバー電極24を中心としてフィンガー電極28が非対象な状態となりやすくなっている。また、太陽電池1枚のサイズが大きくなるにつれて、印刷面積も大きくなり、版が大型化することでスクリーンが伸び、
図4(c)に示すような印刷ズレが発生し易くなっている。スクリーン版が大きい場合、このように印刷がずれると基板から印刷された電極パターンがはみ出るなどの致命的な欠陥となる。
【0022】
本発明はこの問題を解決するものであり、具体的には、バスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターン全体を複数の印刷範囲に分割し、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンごとに該分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を作製し、この複数の印刷版を用いたスクリーン印刷により上記電極を形成することを特徴とする。このとき、上記バスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンは、バスバー電極24の長手方向に直交する方向を印刷方向として配置されており、この印刷方向で分割されることが好ましい。これにより、印刷範囲が狭まることで印刷版の小型化を図ることができ、スクリーンの伸びを減らすことが可能であり、その結果、印刷ズレが最小限に抑えられ、印刷精度が向上する。また、印刷精度の向上による相乗効果として、歩留まりの向上も期待できる。
【0023】
また、
図4(b)に示すようなフィンガー電極28の線幅の太りは、前述したようにバスバー電極24印刷直後のフィンガー電極28の部分で発生していて、バスバー電極24付近に滞留していたペーストがスキージ等の圧力でフィンガー電極28側に流れ込むことがフィンガー電極28の線幅の太りの原因となっている。本発明はこの問題を解決するものであり、具体的には、線幅太りの発生箇所となるバスバー電極24の長手方向に対して垂直な端面であって印刷終端側の端面を印刷範囲の分割境とすることが好ましく、即ちバスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンが少なくともバスバー電極24の印刷終端で分割されることが好ましい。これにより、印刷性が向上し、フィンガー電極28の線幅の太りを防げ、シャドーロスを低減することができる。外観品質も良好となる。
【0024】
ここで、
図5〜
図18を用いて、本発明の実施形態を更に詳しく説明する。なお、
図5〜
図7は、本発明の第1の実施形態を説明するものであり、
図8及び
図9は、本発明の第2の実施形態を説明するものであり、
図10及び
図11は、本発明の第3の実施形態を説明するものであり、
図12は本発明で用いるスクリーン印刷機であり、
図13〜
図16は、本発明の第4の実施形態を説明するものであり、
図17及び
図18は、本発明の第5の実施形態を説明するものである。
【0025】
図5は、本発明における表面電極の印刷範囲の分割例(1)を示す概略図である。
図5(a)は、表面電極の電極形状パターン全体を示しており、
図2と同様に、太い直線状の3本のバスバー電極24が互いに平行に等間隔で配置され、バスバー電極24よりも細い直線状の13本のフィンガー電極28がバスバー電極24と直交すると共に互いに平行に等間隔で配置されている。
【0026】
本発明では、
図5(a)のバスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンを、バスバー電極24の長手方向に直交する方向(印刷方向)であって、少なくともバスバー電極24の印刷終端で分割するものであることが好ましく、あるいは、バスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンは、少なくともフィンガー電極28の印刷開始端で分割されることが好ましい。例えば、
図5(b)に示すように、表面電極の印刷範囲1を1a、1e、1f、1g、1h、1dの6つの印刷範囲に分割する。上記のように分割するとそのままでは印刷版の数が増える問題が生じる。本発明では、印刷パターンの周期性を考慮して印刷版を2種類に絞る。これによれば、印刷範囲1a、1f、1hの分割電極形状パターンと、印刷範囲1e、1g、1dの分割電極形状パターンの2種類の分割電極形状パターンから構成されるものとすることができる。即ち、2種類の分割電極形状パターンは、少なくともバスバー電極24を含む電極形状パターンと、フィンガー電極28のみの電極形状パターンからなる。
【0027】
次いで、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンごとに該分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を作製する。この場合は、
図6に示すように、バスバー電極の形状パターンP
24とフィンガー電極の形状パターンP
28とからなる開口部を有する印刷版2aと、フィンガー電極の形状パターンP
28のみからなる開口部を有する印刷版2bとを作製する。これによれば印刷版を共用することでバスバー電極が2本以上の場合には印刷版数が増えないので製版コストは変わらない。また、最低数の印刷版数に抑えることができるので、製版コストを抑える効果がある。更に、印刷版を共用することで電極パターンを均一な形状で形成でき、段取り替えの時間短縮や印刷機の共用も期待できる。
なお、
図6に示すように、バスバー電極の形状パターンP
24を含む開口部を有する印刷版2aで印刷するとき、印刷方向を印刷終端がバスバー電極の部分となる方向とすることがフィンガー電極28の線幅の太りを抑制でき好ましい。
【0028】
次に、この2種類の印刷版2a、2bを用いたスクリーン印刷により、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。即ち、スクリーン印刷機により、印刷範囲1aにおいて、印刷版2aを介して反射防止膜兼パッシベーション膜23上に、銀を含むペーストでスクリーン印刷を行い、150〜200℃のオーブンで有機溶媒を除去する乾燥を行う。次いで、印刷範囲1eを印刷版2bで同様にスクリーン印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。このように、印刷版2aを、印刷範囲1a、1f、1hの印刷に用い、印刷版2bを、印刷範囲1e、1g、1dの印刷に用いることとして、このような手順で印刷範囲1a、1e、1f、1g、1h、1dをこの順で印刷・乾燥の処理を行う。印刷の順番はこの逆でも構わない。
【0029】
バスバー電極24の長手方向に対して直交する方向の端面を印刷範囲の分割境にすると、そのままでは印刷版の数が増えることになるが、印刷パターンの周期性を考慮して本発明のように印刷範囲の分割を工夫すれば、印刷版を2種類に絞ることができる。これにより、印刷版を共用することでバスバー電極24が2本以上の場合には版数が増えないので印刷版コストは変わることはなく、最低限の版数に抑えることが出来るので、印刷版コストを抑えることができる。また、印刷版を共用することで電極パターンを均一に形成できる。また、段取り替えの時間短縮や印刷機の共用も期待できる。
【0030】
なお、本実施形態では、
図5(b)において、表面電極の印刷範囲1を1a、1b、1c、1dの4つの印刷範囲に分割してもよい。これによれば、印刷範囲1aの分割電極形状パターンと、印刷範囲1b、1cの分割電極形状パターンと、印刷範囲1dの分割電極形状パターンの3種類の分割電極形状パターンとから構成されるものとなる。
【0031】
次いで、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンごとに該分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を作製するが、この場合は、
図7に示すように、バスバー電極の形状パターンP
24と広幅のフィンガー電極の形状パターンP
28とからなる開口部を有する印刷版3aと、バスバー電極の形状パターンP
24と狭幅のフィンガー電極の形状パターンP
28とからなる開口部を有する印刷版3bと、フィンガー電極の形状パターンP
28のみからなる開口部を有する印刷版3cとを作製する。なお、
図7に示すように、バスバー電極の形状パターンP
24を含む開口部を有する印刷版3a、3bで印刷するとき、バスバー電極の形状パターンP
24が印刷終端となるように印刷版3a、3bを配置することがフィンガー電極28の線幅の太りを抑制でき好ましい。
【0032】
次に、この3種類の印刷版3a、3b、3cを用いたスクリーン印刷により、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。即ち、スクリーン印刷機により、印刷範囲1aにおいて、印刷版3aを介して反射防止膜兼パッシベーション膜23上に、銀を含むペーストでスクリーン印刷を行い、150〜200℃のオーブンで有機溶媒を除去する乾燥を行う。次いで、印刷範囲1bを印刷版3bで同様にスクリーン印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。次いで、印刷範囲1cを印刷版3bで同様にスクリーン印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。最後に、印刷範囲1dを印刷版3cで同様にスクリーン印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。印刷の順番はこの逆でも構わない。
【0033】
図8は、本発明における表面電極の印刷範囲の分割例(2)を示す概略図である。
図8(a)は、表面電極の電極形状パターン全体を示しており、
図2や
図5(a)と同様に、太い直線状の3本のバスバー電極24が互いに平行に等間隔で配置され、バスバー電極24よりも細い直線状の13本のフィンガー電極28がバスバー電極24と直交すると共に互いに平行に等間隔で配置されている。
【0034】
本実施形態は、
図8(a)のバスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンを、バスバー電極24の長手方向に直交する方向(印刷方向)であって、少なくともバスバー電極24の印刷終端で分割するものであり、例えば、
図8(b)に示すように、表面電極の印刷範囲11を11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11m、11nの9つの印刷範囲に分割する。これによれば、印刷範囲11e、11g、11h、11j、11k、11nの分割電極形状パターンと、印刷範囲11f、11i、11mの分割電極形状パターンの2種類の分割電極形状パターンから構成されるものとすることができる。即ち、2種類の分割電極形状パターンは、バスバー電極24のみの電極形状パターンと、フィンガー電極28のみの電極形状パターンからなる。
【0035】
次いで、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンごとに該分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を作製する。この場合は、
図9に示すように、フィンガー電極の形状パターンP
28のみからなる開口部を有する印刷版12aと、バスバー電極の形状パターンP
24のみからなる開口部を有する印刷版12bとを作製する。
【0036】
次に、この2種類の印刷版12a、12bを用いたスクリーン印刷により、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。即ち、スクリーン印刷機により、印刷範囲11eにおいて、印刷版12aを介して反射防止膜兼パッシベーション膜23上に、銀を含むペーストでスクリーン印刷を行い、150〜200℃のオーブンで有機溶媒を除去する乾燥を行う。次いで、印刷範囲11fを印刷版12bで同様にスクリーン印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。このように、印刷版12aを、印刷範囲11e、11g、11h、11j、11k、11nの印刷に用い、印刷版12bを、印刷範囲11f、11i、11mの印刷に用いることとして、このような手順で印刷範囲11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11m、11nをこの順で印刷・乾燥の処理を行う。印刷の順番はこの逆でも構わない。
【0037】
なお、複数の印刷版を用いて印刷する際、複数の印刷版とするために分割された電極同士が接続されないおそれがある。そこで
図8において、用意したフィンガー電極用とバスバー電極用の印刷版を使用し、離間して印刷したフィンガー電極28同士のつなぎ目にバスバー電極24を印刷するようにすると、電極同士の未接続を防止できるので好ましい。その場合、例えば以下のように行うとよい。
即ち、
図8に示すように印刷範囲11を印刷範囲11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11m、11nのように分割し、
図9のようにフィンガー電極印刷版12aとバスバー電極印刷版12bの2種類の印刷版を用意する。そして、まずフィンガー電極印刷版12aを用いて印刷範囲11eを印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。その後、この印刷・乾燥の工程を印刷範囲11g、11h、11j、11k、11nについて順次行う。その際、印刷位置がそれぞれの印刷範囲となるようにスクリーン印刷機のステージ側が移動して基板と印刷版の位置合わせを行う。次に、バスバー電極印刷版12bを用いて印刷範囲11fをフィンガー電極パターンと接続するように印刷をする。印刷した後、150〜200℃のオーブンで乾燥する。その後、この印刷・乾燥の工程を印刷範囲11i、11mについて順次行う。その際も、印刷位置がそれぞれの印刷範囲となるようにスクリーン印刷機のステージ側が移動して基板と印刷版の位置合わせを行う。なお、フィンガー電極印刷の際にはバスバー電極の長手方向に対して直交方向にスキージを動かし、フィンガー電極を印刷する。
【0038】
以上のように、本発明によれば、スクリーン印刷時に、バスバー電極のペーストがフィンガー電極側へ流れ込まなくなるためにフィンガー電極線幅の太りを防げ、印刷の精度が向上、シャドーロスも低減させることができる。また、印刷範囲の分割を工夫して、
図6、
図9に示すように、2種類の印刷版で印刷するようにすれば、バスバー電極24が2本以上の場合には印刷版の数が増えることなく、印刷版を共用することで印刷版コストを下げることができ、更に同じ形状の電極を安定して形成することができる。また、
図9に示すように、フィンガー電極28とバスバー電極24を別々に印刷することによって、更にフィンガー電極28のかすれや線幅の太りは低減される。印刷版の小型化により、印刷版価格を安価にできることやスクリーン印刷機などの製造機器の小型化も期待できる。また、版の小型化によって、銀ペーストの実使用量が減ることも見込める。
【0039】
図10は、本発明における表面電極の印刷範囲の分割例(3)を示す概略図であり、
図5(a)や
図8と同様の表面電極の電極形状パターン全体を示している。
本実施形態は、
図10のバスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンを、バスバー電極24の長手方向に直交する方向(印刷方向)であって、少なくともバスバー電極24の幅方向の中心線で分割するものであり、例えば、
図10に示すように、表面電極の印刷範囲31を31a、31b、31c、31d、31e、31fの6つの印刷範囲に分割する。これによれば、印刷範囲31a、31c、31eの分割電極形状パターンと、印刷範囲31b、31d、31fの分割電極形状パターンの2種類の分割電極形状パターンから構成されるものとすることができる。また、これらの2種類の分割電極形状パターンはいずれもバスバー電極24の幅方向の半分の部分とフィンガー電極28の長さ方向の半分の部分とからなる互いに180°回転させれば同形状となる関係のものであり、実質的に1種類の分割電極形状パターンである。
【0040】
次いで、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を作製する。この場合は、
図11に示すように、1種類の印刷版32、即ちバスバー電極の一部の形状パターンP
24’とフィンガー電極の形状パターンP
28とからなる開口部を有する印刷版32を作製する。
【0041】
次に、この印刷版32を用いたスクリーン印刷により、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。なお、ここで使用するスクリーン印刷機は、
図12に示すように、基板21を保持するステージ101と、基板21上方に該基板21に対してスクリーン面が平行となる状態で固設される印刷版102とからなり、ステージ101が基板21と共に印刷版102に対して水平方向への移動が可能であり、印刷版32のスクリーン面の垂線を回転軸とする回転が可能である構成となっている。
即ち、スクリーン印刷機によりまず印刷位置が印刷範囲31aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101が移動して基板21と印刷版32の位置合わせを行う。次いで、印刷版32を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲31aを印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。その後、この印刷・乾燥の工程を印刷範囲31c、31eについて順次行う。その際、印刷位置がそれぞれの印刷範囲となるようにスクリーン印刷機のステージ101が移動して基板21と印刷版32の位置合わせを行う。次に、同じ印刷版32を用いて印刷範囲31bを印刷をするが、その際、スクリーン印刷機のステージ101が180°回転すると共に移動して印刷位置が印刷範囲31bとなるように基板21と印刷版32の位置合わせを行う。そして、印刷範囲31bについて印刷した後、150〜200℃のオーブンで乾燥する。その後、この印刷・乾燥の工程を印刷範囲31d、31fについて順次行う。その際も、印刷位置がそれぞれの印刷範囲となるようにスクリーン印刷機のステージ101が移動して基板21と印刷版32の位置合わせを行う。なお、印刷の際にはバスバー電極の長手方向に対して直交方向にスキージを動かし、フィンガー電極を印刷する。
以上のように表面電極を印刷した後、最後に焼成炉において500〜900℃で1〜30分間の焼成を行う。
【0042】
これにより、従来ではスクリーン印刷の際にバスバー電極印刷直後のフィンガー電極部分に太りが発生していたが、バスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となるように印刷版を配置したのでフィンガー電極の線幅の太りを防ぐことができシャドーロスを低減することができる。また、分割電極形状パターンをすべて同形状としたので印刷版を1種類とすることができ、該印刷版を用いてスクリーン印刷機において基板(ステージ側)を回転、移動させて基板と印刷版の位置合わせを行いつつ印刷を行うので印刷性も向上する。
【0043】
図14は、本発明における表面電極の印刷範囲の分割例(4)を示す概略図であり、
図5(a)、
図8及び
図10と同様の表面電極の電極形状パターン全体を示している。
本実施形態では、
図13(a)のバスバー電極24及びフィンガー電極28の形状パターンを、バスバー電極24の長手方向に直交する方向(印刷方向)及びこの印刷方向に直交する方向で分割することが好ましい。例えば、
図13(b)で示すように、表面電極の印刷範囲41を印刷方向で2等分すると共にこの印刷方向に直交する方向で2等分して、41a、41b、41c、41dの4つの印刷範囲に分割する。このとき、印刷範囲41が印刷方向で2等分されることによってバスバー電極24の幅方向の中心線で分割するものとなっており、印刷方向に直交する方向で2等分することによって2本の平行なフィンガー電極28間の中点を通る線で分割するものとなっている。
これによれば、印刷範囲41a、41dの組、印刷範囲41b、41cの組のそれぞれにおいて互いに180°回転させれば同形状となる関係のものとなり、2種類の分割電極形状パターンから構成されるものとすることができる。
【0044】
次いで、この分割された印刷範囲の分割電極形状パターンごとに該分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版を作製する。この場合は、
図14に示すように、印刷範囲41a、41dの分割電極パターンの開口部を有する印刷版42aと、印刷範囲41b、41cの分割電極形状パターンの開口部を有する印刷版42cとを作製する。印刷版42a、42cのいずれもがバスバー電極の形状パターンP
24とバスバー電極の一部の形状パターンP
24’とフィンガー電極の形状パターンP
28とからなる開口部を有している。
【0045】
次に、この2種類の印刷版42a、42cを用いたスクリーン印刷により、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。
図15にその印刷手順を示す。なお、
図15において印刷部Pa、Pb、Pc、Pdのフィンガー電極部分及びフィンガー電極28の線幅の太りの表示は省略している。
まず、
図12に示すスクリーン印刷機のステージ101に基板21を載置し、印刷版42aをセットし、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42aの位置合わせを行う(
図15(a))。その状態で印刷版42aを介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42aにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。この印刷部分が印刷部Paとなる。
次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41dとなるように基板21と印刷版42aの位置合わせを行う(
図15(b))。その状態で印刷版42aを介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41dを印刷する。このときの印刷方向もバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42aにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。この印刷部分が印刷部Pdとなる。
次に、印刷版42aから印刷版42cに変更し、印刷位置が印刷範囲41bとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42cの位置合わせを行う(
図15(c))。その状態で印刷版42cを介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41bを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42cにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。この印刷部分が印刷部Pbとなる。
次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41cとなるように基板21と印刷版42cの位置合わせを行う(
図15(d))。その状態で印刷版42cを介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41cを印刷する。このときの印刷方向もバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42cにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。この印刷部分が印刷部Pcとなる(
図15(e))。
以上のように表面電極を印刷した後、最後に焼成炉において500〜900℃で1〜30分間の焼成を行い、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する(
図15(f))。
【0046】
これにより、印刷範囲を一方向だけで分割するよりも縦横2方向で分割することで印刷版を縦横2方向それぞれの長さを小さくすることができ、例えば
図14のように小さな正方形とすることができ、印刷版のより小型化が図れるのでスクリーンの伸びを減らし、印刷ズレを抑えて印刷精度を向上させることが可能となる。また、一度の印刷範囲が小さいのでペーストが不足することがなくなり、印刷のかすれがなくなる。
更に、従来ではスクリーン印刷の際にバスバー電極印刷直後のフィンガー電極部分に太りが発生し、バスバー電極が3本ある場合にはバスバー電極に直交する1本のフィンガー電極当たり3箇所に太りが発生していたところ(
図16(a))、バスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となるように印刷版を配置したのでフィンガー電極の線幅の太りの発生を2箇所に減らすことができる(
図16(b))。また、これに伴いシャドーロスを低減することができる。
また、従来では太陽電池セルの生産性を向上させるためにセル1枚の大型化及び印刷面積の大型化がすすめられているが、その反面、印刷精度を維持するために印刷範囲を分割して印刷版の共用や版替えが考えられる。しかしながら、通常では同一形状パターンのものであっても印刷方向が異なったり印刷位置が異なる場合には印刷版の位置を移動する必要があり、段取り替えに時間を要してしまう。これに対して、本発明では分割電極形状パターンを共用できる形状としたので4つの分割した印刷範囲に対して印刷版を2種類で対応可能として製版コストを減らすことができ、該印刷版を用いてスクリーン印刷機において基板(ステージ側)を回転、移動させて基板と印刷版の位置合わせを行いつつ印刷を行うので印刷性及び印刷精度も向上する。
【0047】
また、分割された印刷範囲における分割電極形状パターンについて更にフィンガー電極のみのパターンとバスバー電極のみのパターンに分離し、分離したそれぞれのパターンごとに印刷版を作製することが好ましい。
図17にその例を示す。ここでは、
図14の印刷版42aにおける分割電極形状パターンについてフィンガー電極P
28のみのパターンとバスバー電極P
24,P
24’のパターンに分離し、分離したそれぞれのパターンごとに印刷版42a1、42a2を作製している。また印刷版42cにおける分割電極形状パターンについてもフィンガー電極P
28のみのパターンとバスバー電極P
24,P
24’のパターンに分離し、分離したそれぞれのパターンごとに印刷版42c1、42c2を作製している。なお、印刷版42a2、42c2は同じパターンのバスバー電極用の印刷版であるため、どちらか1つの印刷版(例えば印刷版42a2)で共用するようにしてもよい。
【0048】
次に、上記3種類の印刷版42a1、42a2、42c1を用いたスクリーン印刷により、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。
まず、
図12に示すスクリーン印刷機のステージ101に基板21を載置し、フィンガー電極P
28のみのパターンの印刷版42a1をセットし、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42a1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a1を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものである(
図18(a))。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41dとなるように基板21と印刷版42a1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a1を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41dを上記と同じ印刷方向(
図18(a))で印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、印刷版42a1からフィンガー電極P
28のみのパターンの印刷版42c1に変更し、印刷位置が印刷範囲41bとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42c1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42c1を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41bを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものである(
図18(b))。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41cとなるように基板21と印刷版42c1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42c1を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41cを上記と同じ印刷方向(
図18(b))で印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、印刷版42c1からバスバー電極P
24,P
24’のパターンの印刷版42a2に変更し、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42a2の位置合わせを行う。なお、この印刷版42a2で印刷されるバスバー電極がすでに離間して印刷されたフィンガー電極同士をつなぐ位置となるように位置合わせをするとよい(これ以降に行う印刷版42a2の位置合わせすべてにおいて同じ)。その状態で印刷版42a2を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものである(
図18(c))。次いで、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、印刷位置が印刷範囲41cとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42a2の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a2を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41cを上記と同じ印刷方向(
図18(c))で印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41bとなるように基板21と印刷版42a2の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a2を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41bを上記と同じ印刷方向(
図18(c))で印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
次に、印刷位置が印刷範囲41dとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42a2の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a2を介して基板21の反射防止膜兼パッシベーション膜23上に銀を含むペーストで印刷範囲41dを上記と同じ印刷方向(
図18(c))で印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。
以上のように表面電極を印刷した後、最後に焼成炉において500〜900℃で1〜30分間の焼成を行い、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成する。
【0049】
これにより、印刷性が向上し、フィンガー電極28とバスバー電極24とを別々に印刷するので、従来のようにバスバー電極用のペーストがフィンガー電極側に流れ込むことがなくなり、フィンガー電極の線幅の太りを防止でき、シャドーロスを低減することができる。また、印刷範囲を一方向だけで分割するよりも縦横2方向で分割することで印刷版を縦横2方向それぞれの長さを小さくすることができ、例えば
図17のように小さな正方形とすることができ、印刷版のより小型化が図れるのでスクリーンの伸びを減らし、印刷ズレを抑えて印刷精度を向上させることが可能となる。また、一度の印刷範囲が小さいのでペーストが不足することがなくなり、印刷のかすれがなくなる。
【0050】
また、本発明で使用する複数の印刷版の少なくとも1つはメタルマスクであることが好ましい。
スクリーン版を用いた電極印刷製法では、スクリーン版の線径と開口の関係から開口幅に限界があるため、細線化が困難である。これに対し、メタルマスクの開口部はスクリーンメッシュのように遮るものがないために、開口幅を小さく設計することができ、また開口幅を狭くすることが可能であるが、セル全面を一度に印刷するには強度が充分でなく、従来の実生産には不向きであった。本発明では、上記のように印刷範囲が分割されて狭くなり、印刷版が小型化したことにより、メタルマスクを用いることが可能である。この結果、メタルマスクの印刷版ではペーストの充填部と吐出部の幅がほぼ同じで塗布量も多いので安定して電極を太りなく形成し易く、メッシュ痕がなくなり、直線性の高い電極ラインを形成することができ、更にバスバー電極の細線化によりシャドーロスを低減でき、太陽光を多く取り込めるので変換効率の向上が期待出来る。
【0051】
メタルマスクは、材質がステンレススチールやニッケルのシートから作製されており、開口部の形成方法によりレーザーマスク、エッチングマスク、アクティブマスクの3種類のものがあるが、いずれを使用しても構わない。また、例えばフィンガー電極用の印刷版をメタルマスク、バスバー電極用の印刷版をスクリーン版とするとよい。この場合、メタルマスクにより、フィンガー電極28の線幅35〜50μm、ピッチ1.5〜2mmで形成する。また、バスバー電極24はスクリーン版で作製し、その膜厚は10〜15μm、線幅は1〜1.5mmで形成する。
【0052】
メタルマスクとスクリーン版を用いた例を
図8と
図9に基づいて説明すると、印刷範囲11eでメタルマスク製版の印刷版12aを用いてスクリーン印刷機(
図12)のステージ101側が移動して基板21と印刷版12aの位置合わせをして印刷し、次いで150〜200℃のオーブンで乾燥する。この印刷・乾燥の工程を印刷範囲11e→11g→11h→11j→11k→11nの順番に行う。その際もステージ側が移動して基板と印刷版の位置合わせを行う。次に、印刷範囲11fでスクリーン製版の印刷版12bを用いて位置合わせをし、ステージ側が移動して基板と印刷版の位置合わせをして印刷し、次いで150〜200℃のオーブンで乾燥する。この印刷・乾燥の工程を印刷範囲11f→11i→11mの順番に行う。その際もステージが移動して基板と印刷版の位置合わせを行う。また、フィンガー電極印刷の際にはバスバー電極の長手方向に対して直交方向にスキージを動かし、フィンガー電極を印刷する。
なお、印刷版が小型化しているのでバスバー電極用印刷版もメタルマスクとしてもよい。
【0053】
また、本発明において、上記印刷版を用いてスクリーン印刷し、乾燥処理して形成した電極上に、更に同じ印刷版を用いてスクリーン印刷、乾燥処理を繰り返して行い、多層印刷を行って電極を形成することが好ましい。
【0054】
変換効率の高い太陽電池を得るためにできるだけ電極の占有面積を少なくする一方で、直列抵抗を小さくするために電極を多層化する方法がある。それには印刷した電極上に繰り返し印刷・乾燥することが必要であるが、現状のスクリーンマスクでは印刷版が大きく、スクリーンの伸びが生じることから、多層印刷を行うとズレが生じるばかりでなくスクリーンメッシュ起因の凹凸が発生し、印刷の平坦度が保てない。本発明によれば、電極形状パターン全体を複数の印刷範囲に分割することで印刷版を小型化し、印刷版ごとに印刷した電極上に重ね合わせて、繰り返し印刷・乾燥するので、印刷性が向上し、多層印刷しても印刷ズレが生じにくく、面内均一に電極の多層化を形成し易くなる。よって、表面電極の直列抵抗が小さくなり、フィルファクターが高いために変換効率が向上する。
【0055】
このような表面多層電極の形成に当たっては、
図5に示す印刷範囲の分割例を例にとると、反射防止膜兼パッシベーション膜23上に上記印刷版、例えば
図6の印刷版2a、2bを用いたスクリーン印刷法により、以下のように導電性銀ペーストを印刷し、150〜200℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行うとよい。即ち、印刷範囲1aについて印刷版2aを用いてスクリーン印刷機のステージ101側が移動して基板21と印刷版2aの位置合わせをした後に印刷し、次いで150〜200℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷範囲1eについて印刷版2bを用いて同様に位置合わせして印刷し、150〜200℃のオーブンで乾燥する。このような手順で印刷範囲1a、1e、1f、1g、1h、1dをこの順で印刷・乾燥の処理を行う。印刷・乾燥の順番は逆でもよい。次いで、印刷範囲1a〜1dの一連の印刷・乾燥の処理を行って形成した電極上に、更に同様の手順で印刷版2a、2bを用いたスクリーン印刷法により、導電性銀ペーストを重ね合わせて印刷・乾燥を行い、多層電極を形成する。また、更に複数回の繰り返し印刷・乾燥処理を同様に行うことも可能である。
図7に示す3種類の印刷版3a、3b、3cを使用して、同様に多層印刷しても同様の効果が得られる。
【0056】
以上のように表面電極(バスバー電極24及びフィンガー電極28)を印刷したp型シリコン基板21は、最後に、焼成炉において500〜900℃で1〜30分の焼成を行う。このとき、反射防止膜兼パッシベーション膜23上に表面電極(バスバー電極24及びフィンガー電極28)を印刷した状態であっても、表面電極は、加熱により表面電極に含まれるガラスフリット成分と反射防止膜兼パッシベーション膜23のSiNが反応して分解するのを利用して、表面電極に含まれるAg粒子が反射防止膜兼パッシベーション膜23を貫通し、n型拡散層22と電気接続してバスバー電極24及びフィンガー電極28となる。
なお、表面電極(バスバー電極24とフィンガー電極28)の形成及び裏面バスバー電極27の形成順序は逆でも構わない。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
本発明の有効性を確認するために、以下の工程をシリコン基板10枚について行い、
図1に示す太陽電池を10枚作製した。
結晶面方位<100>、15.65cm角、200μm厚、アズスライス比抵抗2Ω・cm、ボロンドープp型シリコン基板をフッ硝酸溶液中に15秒間浸漬させてダメージエッチし、更に2質量%の水酸化カリウムと2質量%のイソプロピルアルコールを加えた70℃の溶液で5分浸して、エッチングした後に純水で洗浄し、乾燥させることで、p型シリコン基板表面でテクスチャー構造を形成した。
上記p型シリコン基板に対して、POCl
3ガス雰囲気において、850℃の温度で30分間熱処理を行うことでn型拡散層を形成した。その後、n型拡散層上に耐酸性樹脂を形成した後に、p型シリコン基板をフッ硝酸溶液中に10秒間浸漬することによって、耐酸性樹脂が形成されていない部分のn型拡散層を除去した。その後、耐酸性樹脂を除去することによって、p型シリコン基板の表面のみにn型拡散層を形成した。続いて、SiH
4とNH
4、N
2を用いたプラズマCVD法により、p型シリコン基板でn型拡散層を形成している表面上に反射防止膜兼パッシベーション膜となるSiN膜を厚さ80nmで形成した。次に、p型シリコン基板の裏面にスクリーン印刷法を用いて、銀粉末とガラスフリットを有機物バインダーで混合したペーストを用いて、裏面バスバー電極を印刷した後に、アルミニウム粉末を有機バインダーで混合したペーストをバスバー電極以外の領域にスクリーン印刷した。その後、150℃で乾燥させて、裏面電極を形成した。
次に、表面電極パターンのうち、バスバー電極の長手方向に対して垂直な端面であって印刷終端となる端面を印刷範囲の分割境とし、4つの印刷範囲1a〜1d(
図5(b))に分割し、更に電極パターン形状が同じである印刷範囲1b、1cについて、印刷範囲1bを印刷範囲1e、1fに、印刷範囲1cを印刷範囲1g、1hにそれぞれ分割した。この分割した印刷範囲に対応させて表面電極形成用の印刷版として、
図6に示すように、バスバー電極開口部パターンP
24とフィンガー電極開口部パターンP
28を有する印刷版2a、フィンガー電極開口部パターンP
28のみからなる印刷版2bの2種類をスクリーン版で作製し、印刷版2aを、印刷範囲1a、1f、1hの印刷に用い、印刷版2bを、印刷範囲1e、1g、1dの印刷に用いた。なお、ここで使用するスクリーン版はステンレススチールのメッシュの裏側に乳剤でコーティングした構造で、乳剤膜厚を15μmとした。また、フィンガー電極28の線幅は80μm、ピッチは2mm、バスバー電極24の線幅は1.5mmで形成した。
この表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に上記スクリーン版の印刷版2a、2bを用いたスクリーン印刷法により、導電性銀ペーストを印刷し、150℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行った。詳しくは、印刷範囲1aを印刷版2aでスクリーン印刷機のステージ側を移動して基板と印刷版2aとの位置合わせをして印刷し、次いで150℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷範囲1eを印刷版2bでスクリーン印刷機のステージ側を移動して基板と印刷版2bとの位置合わせをして印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。このような手順で印刷範囲1a、1e、1f、1g、1h、1dをこの順で印刷・乾燥の処理を行った。なお、印刷の際にはバスバー電極の長手方向に直交する方向にスキージを移動させて印刷した。
最後に、表面電極及び裏面電極が形成されたp型シリコン基板について、焼成炉において900℃で5分間程度かけて焼成を行い、太陽電池とした。
【0059】
[実施例2]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関しては、
図8(b)に示すように、表面電極をフィンガー電極部とバスバー電極部に印刷範囲を分けた。特に、フィンガー電極部は同じ電極形状パターンとなるように印刷範囲を分割している(印刷範囲11e、11g、11h、11j、11k、11n)。また、フィンガー電極用印刷版12aはメタルマスク(開口部50μm、板厚50μm)、バスバー電極用印刷版12bはスクリーン版(実施例1と同じ)でそれぞれ作製した。なお、フィンガー電極の線幅は50μm、ピッチは2mm、バスバー電極の線幅は1.5mmで形成した。
この表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に、まず印刷範囲11eをメタルマスクの印刷版12aでスクリーン印刷機のステージ側を移動して基板と印刷版12aとの位置合わせをして印刷し、150℃のオーブンで乾燥した。次に、印刷範囲11fをスクリーン版の印刷版12bでスクリーン印刷機のステージ側を移動して基板と印刷版12bとの位置合わせをして印刷し、150℃のオーブンで乾燥した。なお、離間して印刷したフィンガー電極同士をつなぐ位置となるように基板と印刷版12bとの位置合わせを行った。このような手順で印刷範囲11e、11f、11g、11h、11i、11j、11k、11m、11nをこの順で印刷・乾燥の処理を行った。なお、印刷の際にはバスバー電極の長手方向に直交する方向にスキージを移動させて印刷した。
最後に、表面電極及び裏面電極が形成されたp型シリコン基板について、焼成炉において900℃で5分間程度かけて焼成を行い、太陽電池とした。
本実施例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0060】
[実施例3]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関しては、まず実施例1と同様にしてバスバー電極の長手方向に対して垂直な端面であって印刷終端となる端面を印刷範囲の分割境として4つの印刷範囲1a〜1d(
図5(b))に分割し、更に電極パターン形状が同じである印刷範囲1b、1cについて、印刷範囲1bを印刷範囲1e、1fに、印刷範囲1cを印刷範囲1g、1hにそれぞれ分割した。この分割した印刷範囲に対応させて表面電極形成用のスクリーン版として、
図6に示すように、バスバー電極開口部パターンP
24とフィンガー電極開口部パターンP
28を有するスクリーン版2aと、フィンガー電極開口部パターンP
28のみからなるスクリーン版2bの2種類を作製した。
表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に上記スクリーン版の印刷版2a、2bを用いたスクリーン印刷法により、導電性銀ペーストを印刷し、150℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行った。詳しくは、印刷範囲1aを印刷版2aで印刷し、次いで150℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷範囲1eを印刷版2bで印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。このような手順で印刷範囲1a、1e、1f、1g、1h、1dをこの順で印刷・乾燥の処理を行った。次いで、印刷範囲1a〜1dの一連の印刷・乾燥の処理を行って形成した電極上に、更に同様の手順で印刷版2a、2bを用いたスクリーン印刷法により、導電性銀ペーストを重ね合わせて印刷・乾燥を行い、多層電極を形成した。
最後に、表面電極及び裏面電極が形成されたp型シリコン基板について、焼成炉において900℃で5分間程度かけて焼成を行い、太陽電池とした。
本実施例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0061】
[実施例4]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関しては、
図10に示すように印刷範囲31を31a、31b、31c、31d、31e、31fのように分割した。また、
図11に示す印刷版32を実施例1と同じスクリーン製版で用意した。
この表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に、まず印刷範囲31aについて印刷版32を用いてスクリーン印刷機のステージ側を移動して基板と印刷版32との位置合わせをして印刷し、150℃のオーブンで乾燥した。このような手順で印刷範囲31a、31c、31eをこの順で印刷・乾燥の処理を行った。次いで、印刷範囲31fについて印刷版32を用いてスクリーン印刷機のステージ側を180°回転した後、移動して基板と印刷版32との位置合わせをして印刷し、150℃のオーブンで乾燥した。次に、印刷範囲31dについて印刷版32を用いてスクリーン印刷機のステージ側を移動して基板と印刷版32との位置合わせをして印刷し、150℃のオーブンで乾燥し、印刷範囲31bについてもこれと同様な手順で印刷・乾燥の処理を行った。なお、印刷に際してバスバー電極24の長手方向に対して直交する方向にスキージを動かして印刷を行った。
最後にp型シリコン基板は、焼成炉において900℃で5分間程度かけて焼成を行った。
本実施例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0062】
[実施例5]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関しては、バスバー電極24及びフィンガー電極28を含む電極形状パターンについて、印刷方向で2等分すると共にこの印刷方向に直交する方向に2等分して(電極印刷範囲の分割境を縦横方向でそれぞれ基板の中央として)、表面電極の印刷範囲41を
図13(b)に示すように印刷範囲41a、41b、41c、41dの4つに分割した。ここで、印刷範囲41aと41d、印刷範囲41bと41cは同形状であるため、この組み合わせで印刷版を共用するものとして
図14に示す印刷版42a、42cを実施例1と同じスクリーン製版で用意した。
表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に上記印刷版42a、42cを用いたスクリーン印刷法により、導電性銀ペーストを印刷し、150℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行った。詳しくは、まず
図12に示すスクリーン印刷機のステージ101に基板21を載置し、印刷版42aをセットし、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42aの位置合わせを行う(
図15(a))。その状態で印刷版42aを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42aにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41dとなるように基板21と印刷版42aの位置合わせを行う(
図15(b))。その状態で印刷版42aを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41dを印刷する。このときの印刷方向もバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42aにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷版42aから印刷版42cに変更し、印刷位置が印刷範囲41bとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42cの位置合わせを行う(
図15(c))。その状態で印刷版42cを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41bを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42cにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。次に、ステージ101により基板21を180°回転及び移動させ、基板21上の印刷位置が印刷範囲41cとなるように基板21と印刷版42cの位置合わせを行う(
図15(d))。その状態で印刷版42cを介して基板21上に銀を含むペーストで印刷範囲41cを印刷する。このときの印刷方向もバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42cにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。以上のように表面電極を印刷した後、最後に焼成炉において900℃で5分間程度の焼成を行い、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成した(
図15(f))。
本実施例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0063】
[実施例6]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関して、印刷範囲の分割については実施例5と同様にして表面電極の印刷範囲41を
図13(b)に示すように印刷範囲41a、41b、41c、41dの4つに分割した。次いで、印刷範囲41a、41b、41c、41dを更にフィンガー電極用パターンとバスバー電極用パターンに分離し、
図17に示すように、フィンガー電極用の印刷版42a1、42c1とバスバー電極用の印刷版42a2を実施例1と同じスクリーン製版で用意した。
表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に上記印刷版42a1、42c1、42a2を用いたスクリーン印刷法により、導電性銀ペーストを印刷し、150℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行った。詳しくは、まず
図12に示すスクリーン印刷機のステージ101に基板21を載置し、印刷版42a1をセットし、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにステージ101を移動して基板と印刷版42a1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a1を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものである(
図18(a))。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。次に、ステージ101により基板を180°回転及び移動させ、基板上の印刷位置が印刷範囲41dとなるように基板と印刷版42a1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a1を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41dを上記と同じ印刷方向(
図18(a))で印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷版42a1から印刷版42c1に変更し、印刷位置が印刷範囲41bとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板と印刷版42c1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42c1を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41bを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものである(
図18(b))。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。次に、ステージ101により基板を180°回転及び移動させ、基板上の印刷位置が印刷範囲41cとなるように基板と印刷版42c1の位置合わせを行う。その状態で印刷版42c1を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41cを上記と同じ印刷方向(
図18(b))で印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。
次に、印刷版42c1から印刷版42a2に変更し、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板と印刷版42a2の位置合わせを行う。なお、この印刷版42a2で印刷されるバスバー電極がすでに離間して印刷されたフィンガー電極同士をつなぐ位置となるように位置合わせをした(これ以降に行う印刷版42a2の位置合わせすべてにおいて同じ)。その状態で印刷版42a2を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものである(
図18(c))。次いで、150℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷位置が印刷範囲41cとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板と印刷版42a2の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a2を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41cを上記と同じ印刷方向(
図18(c))で印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。次に、ステージ101により基板を180°回転及び移動させ、基板上の印刷位置が印刷範囲41bとなるように基板と印刷版42a2の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a2を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41bを上記と同じ印刷方向(
図18(c))で印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。次に、印刷位置が印刷範囲41dとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板と印刷版42a2の位置合わせを行う。その状態で印刷版42a2を介して基板上に銀ペーストで印刷範囲41dを上記と同じ印刷方向(
図18(c))で印刷し、150℃のオーブンで乾燥する。
以上のように表面電極を印刷した後、最後に焼成炉において900℃で5分間程度の焼成を行い、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成した。
本実施例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0064】
[比較例1]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関しては、反射防止膜兼パッシベーション膜上にスクリーン印刷法を用いて、導電性銀ペーストを印刷し、150℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行ったが、その際に印刷範囲を分割していない1枚のスクリーン版を用いて印刷を行った。
最後に、表面電極及び裏面電極が形成されたp型シリコン基板について、焼成炉において900℃で5分間程度かけて焼成を行い、太陽電池とした。
本比較例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0065】
[比較例2]
裏面電極形成以前は実施例1と同様とした。表面電極形成に関しては、反射防止膜兼パッシベーション膜上にスクリーン印刷法を用いて、導電性銀ペーストを印刷し、150℃のオーブンで有機溶媒の乾燥を行い、更に印刷した電極上に重ね合わせて、繰り返し印刷・乾燥を行う多層印刷を行ったが、その際に印刷範囲を分割していない1枚のスクリーン版を用いて印刷を行った。
最後に、表面電極及び裏面電極が形成されたp型シリコン基板について、焼成炉において900℃で5分間程度かけて焼成を行い、太陽電池とした。
本比較例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0066】
[比較例3]
実施例5において、表面電極の形成に当たっては、反射防止膜兼パッシベーション膜上に上記印刷版42a、42cを用いたスクリーン印刷法により導電性銀ペーストを印刷したが、以下のように変更した(
図19参照)。即ち、まず
図12に示すスクリーン印刷機のステージ101に基板を載置し、印刷版42aをセットし、印刷位置が印刷範囲41aとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42aの位置合わせを行う(
図19(a))。その状態で印刷版42aを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41aを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42aにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する(印刷部Pa形成)。次に、印刷版42aを180°回転させた上でステージ101を移動して、基板21上の印刷位置が印刷範囲41dとなるように基板21と印刷版42aの位置合わせを行う(
図19(b))。その状態で印刷版42aを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41dを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の内側から外端に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42aにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷開始端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する(印刷部Pdの形成)。次に、印刷版42aから印刷版42cに変更し、印刷位置が印刷範囲41cとなるようにスクリーン印刷機のステージ101を移動して基板21と印刷版42cの位置合わせを行う(
図19(c))。その状態で印刷版42cを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41cを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の外端から内側に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42cにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷終端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する(印刷部Pcの形成)。次に、印刷版42cを180°回転させた上でステージ101を移動して、基板21上の印刷位置が印刷範囲41bとなるように基板21と印刷版42cの位置合わせを行う(
図19(d))。その状態で印刷版42cを介して基板21上に銀ペーストで印刷範囲41bを印刷する。このときの印刷方向はバスバー電極の長手方向に対して直交する方向で基板21の内側から外端に向かう方向にスキージを動かすものであって、印刷版42cにおいてバスバー電極の一部の形状パターンP
24’が印刷開始端となる。次いで、150℃のオーブンで乾燥する(印刷部Pbの形成)。以上のように表面電極を印刷した後、最後に焼成炉において900℃で5分間程度の焼成を行い、バスバー電極24及びフィンガー電極28を形成した(
図19(f))。
本実施例でも上記工程をシリコン基板10枚で行い、太陽電池を10枚作製した。
【0067】
以上のように、実施例及び比較例で得られた太陽電池を25℃の雰囲気中でソーラーシミュレーター(光強度:1kW/m
2、スペクトル:AM1.5グローバル)の下で電流電圧特性を測定した。上記実施例1〜6と比較例1〜3それぞれの10枚作製した時の短絡電流密度、曲線因子(フィルファクター(FF))、変換効率、直列抵抗を表1に示す。表中の数値は実施例及び比較例で試作したセル10枚の平均値である。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示すように、比較例1と実施例1を比較すると、印刷範囲を分割することで直列抵抗を低減し、曲線因子(フィルファクター)を向上させ、変換効率を高めることができた。これは、電極全体を複数の印刷範囲に分割することで印刷範囲が狭まり、印刷版を小型化することで印刷ズレが抑えられたことによる。また、フィンガー電極の線幅の太りはバスバー電極印刷直後のフィンガー電極で発生していたが、バスバー電極の境を分割境とすることで印刷性が向上しフィンガー電極線幅の太りを防げ、フィルファクターや変換効率を高めたと考えられる。また、印刷版の共用及びスクリーン印刷機のステージの回転、移動による基板と印刷版との位置合わせにより、安定して同じような電極を形成できることで印刷性と印刷精度が向上し、変換効率を高めたと考えられる。
また、実施例1と実施例2を比較すると、実施例2の短絡電流密度と曲線因子(フィルファクター)が実施例1よりも増加している。印刷範囲を分割して、印刷版を小型化することにより、メタルマスクを用いることができ、印刷版における充填部と吐出部の幅がほぼ同じで塗布量も多いので安定した電極を形成し易く、メッシュ痕がなくなり、直線性の高いラインが形成出来ることで短絡電流密度を高めた。また、バスバー電極の細線化が可能となり、シャドーロスが減り、変換効率を高めることになった。更に、フィンガー電極とバスバー電極を別々に印刷することにより、フィンガー電極のかすれや線幅の太りは低減されたことも変換効率を高めた要因である。
また、実施例1と実施例3を比較すると、実施例1よりも実施例3の直列抵抗が低減し、曲線因子(フィルファクター)が向上し、変換効率が高くなった。これは、変換効率の高い太陽電池を得るためにできるだけ電極の占有面積を少なくする一方で直列抵抗を小さくするために電極を多層化したことに起因する。これもまた、小型化した印刷版の共用により印刷性が向上し、多層印刷しても印刷ズレが生じにくく、面内均一に電極の多層化を形成し易くなった。よって、表面電極の直列抵抗が小さくなり、曲線因子(フィルファクター)が高められ、変換効率が高まった結果である。ちなみに、比較例1と比較例2との間でも多層化による効果が見られるが、実施例1〜3の方が優れている。
【0070】
実施例4と比較例1を比較すると、実施例4によれば印刷範囲を分割することで直列抵抗を低減し、曲線因子(フィルファクター)を向上させ、変換効率を高めることができた。これは、電極全体を複数の印刷範囲に分割することで印刷範囲が狭まり、印刷版を小型化することで大きな印刷ズレがなくなったためである。また、従来ではバスバー電極印刷直後でフィンガー電極の線幅太りは発生していたが、バスバー電極の幅方向の中心線を分割境とし、バスバー電極の幅方向の半分の部分とフィンガー電極の長さ方向の半分の部分とからなる印刷版を用意して、基板(ステージ側)を回転させて常にバスバー電極の部分が印刷終端となるように配置して印刷したので、フィンガー電極の線幅太りの発生を防止できた。これにより、曲線因子(フィルファクター)や変換効率を高めることができたと考えられる。また、印刷版の共用やステージ側が回転及び移動して印刷版と基板との位置合わせを行うことで作業性と印刷精度が向上し、安定して同じ形状の電極を形成できるようになった。
実施例5と比較例3を比較すると、実施例5によれば直列抵抗を低減し、曲線因子(フィルファクター)を向上させ、変換効率を高めることができた。これは、バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンを印刷方向だけで分割するよりも印刷方向及び印刷方向に直交する方向で分割して印刷版をより小さな正方形にすることで、印刷版をより小型化することができ、スクリーンの伸びを減らすことができたことによる。また、印刷範囲が小さいのでペーストが不足することが少なくなり、かすれがなくなり、その結果直列抵抗は下がり、変換効率が向上した。また、印刷範囲を分割し、印刷方向を工夫することによって印刷性が向上すると共に、バスバー電極からフィンガー電極へのペースト流入によって発生していたバスバー電極付近のフィンガー電極の線幅の太りを従来の3箇所から2箇所へと減らすことが可能となり、シャドーロスが低減できた。
実施例6と比較例1を比較すると、実施例6によれば実施例5と同様に直列抵抗を低減し、曲線因子(フィルファクター)を向上させ、変換効率を高めることができた。更に、フィンガー電極とバスバー電極のパターンを分離した印刷版とすることによってフィンガー電極の線幅太りを防止することができた。また、印刷版の共用によって全体として広い印刷範囲で均一で印刷精度がよく電極を形成することができた。これらがフィルファクターと変換効率を高めた要因である。
また、実施例6と実施例1を比較すると、実施例6によれば上記比較例1と比較した場合と同様に曲線因子(フィルファクター)を向上させ、変換効率を高めることができた。この結果は、バスバー電極及びフィンガー電極の形状パターンを印刷方向だけで分割するよりも印刷方向及び印刷方向に直交する方向で分割した方が印刷版をより小さな正方形にしてより小型化が図れ、スクリーンの伸びを減らしたことで印刷性及び印刷精度を改善することができ、曲線因子(フィルファクター)及び変換効率を高めるには有効的であることを示している。
【0071】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。