特許第6065221号(P6065221)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065221
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】合わせガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20170116BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C03C27/12 K
   B32B17/10
【請求項の数】3
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-124542(P2013-124542)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-821(P2015-821A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大道
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石黒 淳
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/043708(WO,A1)
【文献】 特開昭61−247646(JP,A)
【文献】 特表2013−511410(JP,A)
【文献】 特開平1−244843(JP,A)
【文献】 特開2005−306326(JP,A)
【文献】 特開2009−71233(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016494(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/151029(WO,A1)
【文献】 特開平7−81983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/00−29/00
B32B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のガラス板間に、
芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基が導入されてなる、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物からなり、ガラス板の厚さの合計(tg)に対する接着性樹脂組成物層の厚さの合計(tr)の比(tr/tg)が0.1以上4.0以下となる少なくとも一層以上の接着性樹脂組成物層を介在させて貼り合せた合わせガラス板。
【請求項2】
前記接着性樹脂組成物が、変性ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して可塑剤1〜50重量部を配合してなるものである、請求項1記載の合わせガラス板。
【請求項3】
前記可塑剤が、数平均分子量300〜3000の炭化水素系重合体である請求項2記載の合わせガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や線路の遮音壁に用いられる遮音性に優れた合わせガラス板に関する。詳しくは、遮音性、透明性、耐熱性、破損した際のガラス破片の飛散防止性に優れた透明性合わせガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路や高速鉄道の線路に沿って周囲環境への騒音を軽減するために、遮音壁が設置される。遮音壁の中でも採光のためや視界を確保したりするために、ポリカーボネート樹脂板、アクリル樹脂板、ガラス板などからなる透明性遮音壁も使用されている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂板やアクリル樹脂板は、ガラスに比較して軽量で施工し易く、耐衝撃性に優れる利点があるが、遮音性は同厚みのガラスより劣り、耐候性や耐擦傷性にも劣るという問題があった。また熱変形温度や融点が低いため、遮音壁の近くで車両火災が発生した場合、溶融して高架の下方に落下する恐れもある。
【0004】
一方、ガラス板は遮音性に優れ、耐候性、耐擦傷性、不燃性にも優れている。半面、ガラスは重く耐衝撃性に劣り、破損時にはガラス破片で人が負傷する危険があるという問題があり、また、ダンピング性能が小さい材料であり、コインシデンス効果による板厚に応じた特定周波数での遮音性能の低下もある。このため、合わせガラス板では、破損時のガラス破片の飛散防止及び遮音性能を向上させるために、ダンピング性能を有する樹脂中間膜を使用して複数枚のガラス板を積層し、破損時のガラス破片の飛散防止と同時にコインシデンス効果を低減して遮音性能を向上させる方法が開示されている。
【0005】
このような合わせガラス板として、樹脂中間膜に2種のポリビニルアセタールに可塑剤を配合した積層中間膜を使用したもの(例えば、特許文献1〜3); 補強性フィルムの両側に粘着性付与したブチルゴム系あるいは熱可塑性ブロック共重合体ゴム系からなるゴム層を積層した中間膜を使用したもの(例えば、特許文献4); 水添スチレン・ジエンブロック共重合体層の両側にポリビニルアセタール系樹脂などからなる接着性樹脂層を積層した中間膜を使用したもの(例えば、特許文献5、6)などが開示されている。
【0006】
しかし、ガラス板を積層するために中間膜として広く用いられている可塑剤を多く含むポリビニルアセタール系樹脂は、軟化点が比較的低いために、貼合わせた後に熱によりガラス板がずれる、気泡が発生する、吸湿性が高いために、高湿度雰囲気下に長期間に亘り放置しておくと周辺部から次第に白色化すると共にガラスとの接着力の低下が認められる、また、ガラスを貼り合わせる前の状態としてガラスとの接着力コントロールのために厳密に含水率管理を要する(例えば、非特許文献1)、などの問題点を有している。
【0007】
また、中間膜にゴム層を含む場合は、破損時のガラス破片の飛散防止や耐貫通性に優れ、遮音性能も向上するが、透明性や耐熱性が劣るなどの問題点を有している。
【0008】
ところで、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基が導入されてなる、変性ブロック共重合体水素化物[3]が、低吸湿性、耐候性、透明性及び柔軟性を有し、かつ、ガラスとの強固な接着力を有し、太陽電池素子用封止材として用いることができることは特許文献7に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−254444号公報
【特許文献2】特開平6−000926号公報
【特許文献3】特開平9−156967号公報
【特許文献4】特開平1−244843号公報
【特許文献5】特開2007−91491号公報
【特許文献6】特開2009−256128号公報
【特許文献7】国際公開第WO2012/043708号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】藤崎靖之、日化協月報、35(10)、28(1982)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、遮音性、透明性、耐熱性、破損時のガラス破片の飛散防止性に優れた、新規な接着性樹脂組成物からなるシートを使用した合わせガラス板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、遮音性に優れた合わせガラス板の、上記のような状況に鑑み鋭意検討の結果、特定の変性ブロック共重合体水素化物[3]からなる接着性樹脂組成物層を使用して一対のガラス板を貼り合せることにより、良好な合わせガラス板が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
かくして本発明によれば、一対のガラス板間に、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基が導入されてなる、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物からなり、ガラス板の厚さの合計(tg)に対する接着性樹脂組成物層の厚さの合計(tr)の比(tr/tg)が0.1以上4.0以下となる少なくとも一層以上の接着性樹脂組成物層を介在させて貼り合せた合わせガラス板が提供される。
前記接着性樹脂組成物は、変性ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して可塑剤1〜50重量部を配合されたものであることが好ましい。可塑剤は、数平均分子量300〜3000の炭化水素系重合体であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の合わせガラス板は、遮音性、透明性、耐熱性、破損時のガラス破片の飛散防止性に優れた特徴を有するものである。また、本発明に使用する変性ブロック共重合体水素化物[3]は、ガラスとの張り合せ前に含有水分量の調整などの特別な処理は必要とせず、長期間、常温常湿の環境下に保管しておいたものをそのまま使用することができ、保管や取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に使用する変性ブロック共重合体水素化物[3]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする、少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70〜60:40であるブロック共重合体[1]の、全不飽和結合の90%以上を水素化した、変性ブロック共重合体水素化物[3]である。
このような変性ブロック共重合体水素化物[3]は、特定のブロック共重合体[1]の炭素−炭素不飽和結合を水素化したブロック共重合体水素化物[2]をアルコキシシリル化することにより得られる。
【0016】
1.ブロック共重合体[1]
本発明に係る変性ブロック共重合体水素化物[3]の前駆体であるブロック共重合体[1]は、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する。
【0017】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。また、重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができ、その含有量は通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位が少なすぎると、本発明の合わせガラス板の耐熱性が低下する恐れがある。
複数の重合体ブロック[A]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0018】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とするものであり、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位が上記範囲にあると、本発明の合わせガラスの耐熱衝撃性、低温での接着性に優れる。また、重合体ブロック[B]中の鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位を含むことができ、その含有量は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が増加すると、接着性樹脂組成物層の低温での柔軟性が低下し、本発明の合わせガラス板の耐衝撃性が低下する恐れがある。
重合体ブロック[B]が複数有る場合には、重合体ブロック[B]は、上記の範囲を満足すれば互いに同じであっても、異なっていても良い。
【0019】
芳香族ビニル化合物としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さからスチレンが特に好ましい。
【0020】
鎖状共役ジエン系化合物としては、具体的には、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、工業的な入手の容易さから1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0021】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物や環状ビニル化合物が挙げられ、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基を有するビニル化合物及び/又は不飽和の環状酸無水物又は不飽和イミド化合物を含んでも良いが、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテンなどの鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状オレフィンなどの、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましく、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0022】
ブロック共重合体[1]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大と最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)とした時、該Mw(A1)とMw(A2)との比(Mw(A1)/Mw(A2))、及び、該Mw(B1)とMw(B2)との比(Mw(B1)/Mw(B2))は、それぞれ2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。
【0023】
ブロック共重合体[1]のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるものが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[1]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体、及び、重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。
【0024】
ブロック共重合体中[1]の、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとした時に、wAとwBとの比(wA:wB)は、30:70〜60:40、好ましくは35:65〜55:45、より好ましくは40:60〜50:50である。wAが高過ぎる場合は、本発明で使用する変性ブロック共重合体水素化物[3]の耐熱性は高くなるが、柔軟性が低く、合わせガラス板の遮音性が向上されない恐れがあり、wAが低過ぎる場合は、屈折率が汎用のフロートガラスの屈折率に比べて小さくなり過ぎ、斜め方向の入射光に対してガラスと接着性樹脂組成物層の界面での全反射が起き易くなり視認性が低下するため好ましくない。
【0025】
ブロック共重合体[1]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは50,000〜100,000である。また、ブロック共重合体[1]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0026】
ブロック共重合体[1]の製造方法は、例えばリビングアニオン重合などの方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法などがある。
【0027】
2.ブロック共重合体水素化物[2]
本発明に係るブロック共重合体水素化物[2]は、上記のブロック共重合体[1]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化したものであり、その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性が良好である。ブロック共重合体水素化物[2]の水素化率は、H−NMRによる測定において求めることができる。
【0028】
不飽和結合の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、国際公開WO2011/096389号、国際公開WO2012/043708号などに記載された方法を挙げることができる。
【0029】
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物[2]は、水素化触媒及び/又は重合触媒を、ブロック共重合体水素化物[2]を含む反応溶液から除去した後、反応溶液から回収される。回収されたブロック共重合体水素化物[2]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することができる。
【0030】
ブロック共重合体水素化物[2]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常35,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは45,000〜100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[2]の分子量分布(Mw/Mn)を、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形体の機械強度や耐熱性が向上する。
【0031】
3.変性ブロック共重合体水素化物[3]
本発明に用いる変性ブロック共重合体水素化物[3]は、上記ブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基が導入されたものである。アルコキシシリル基は、上記ブロック共重合体水素化物[2]に直接結合していても、アルキレン基などの2価の有機基を介して結合していても良い。
【0032】
アルコキシシリル基の導入方法は、通常、上記のブロック共重合体水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法が好ましい。
【0033】
アルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物[2]100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲルが発生したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下するなどの問題を生じる。アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、ガラスとの十分な接着力が得られないという不具合が生じるため好ましくない。アルコキシシリル基の導入はIRスペクトルで確認することができ、導入量はH−NMRによる測定において求めることができる。
【0034】
エチレン性不飽和シラン化合物としては、上記のブロック共重合体水素化物[2]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[2]にアルコキシシリル基を導入するものであれば特に限定されないが、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好適に用いられる。
【0035】
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[2]100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0036】
過酸化物としては、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシドなどが好適に用いられる。
【0037】
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[2]100重量部に対して、通常0.05〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部、より好ましくは0.2〜0.5重量である。
【0038】
上記のブロック共重合体水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は特に限定されないが、例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することによりアルコキシシリル基を導入することができる。本発明のブロック共重合体水素化物[2]では、その温度は、通常180〜220℃、好ましくは185〜210℃、より好ましくは190〜200℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜10分、好ましくは0.2〜5分、より好ましくは0.3〜2分程度である。温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0039】
本発明に係る変性ブロック共重合体水素化物[3]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[2]の分子量と実質的には変わらないが、過酸化物の存在下でエチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常35,000〜200,000、好ましくは40,000〜150,000、より好ましくは45,000〜100,000、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnがこの範囲であると、接着性樹脂組成物層の機械強度や耐熱性が維持される。
【0040】
4.可塑剤
本発明の一対のガラス板間に介在させて合わせガラス板を形成する接着性樹脂組成物には、接着性や遮音性能を向上させるために可塑剤を含有させることができる。可塑剤としては、変性ブロック共重合体水素化物[3]以外の低分子量のポリマー; 一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル系可塑剤; 有機リン酸エステル系、有機亜リン酸エステル系などのリン酸エステル系可塑剤などが好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
低分子量のポリマーは、変性ブロック共重合体水素化物[3]に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量300〜5,000の炭化水素系重合体が透明性を維持し、耐熱性を大きく損なうことがないため、好ましい。炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、脂肪族系炭化水素樹脂及びその水素化物、脂環族炭化水素樹脂及びその水素化物、インデン・スチレン共重合体水素化物、ポリイソプレン及びその水素化物などが挙げられる。これらの中でも、特に透明性に優れた合わせガラス板が得られる点で、ポリイソブチレン、ポリブテンが好ましい。
【0042】
有機酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコールなどのグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)又はデシル酸などの一塩基機酸との反応によって得られるグリコール系エステル; アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸などの多塩基酸と、炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールとの反応によって得られる多塩基酸エステル; などが挙げられる。これらの中でも、接着性樹脂組成物層の屈折率をフロートガラスの屈折率に近づけ、優れた透光性の合わせガラス板が得られる点で、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレートなどが好ましい。
【0043】
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。これらの中でも、接着性樹脂組成物層の屈折率をフロートガラスの屈折率に近づけ、優れた透光性の合わせガラス板が得られる点で、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートなどが好ましい。
【0044】
可塑剤の配合量としては特に限定されないが、変性ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜40重量部である。1重量部未満の場合は、可塑化効果が小さく、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物層を介在させて貼り合せた合わせガラス板に気泡が残り易く、より高温で貼り合せるなどの条件を要する。また、50重量部を超える場合は、可塑剤のブリードアウトにより、ガラスとの接着性が低下し易い。
【0045】
5.その他の配合剤
本発明において、接着性樹脂組成物には、耐光性、遮光性、耐熱性などを向上させるために光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを配合することができる。
【0046】
[光安定剤]
耐光性を向上させるための光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、構造中に3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、あるいは、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基などを有している化合物が挙げられる。具体例として、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物などが挙げられる。
【0047】
ヒンダードアミン系耐光安定剤の添加量は、変性ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2.5重量部、より好ましくは0.04〜1.0重量部である。ヒンダードアミン系耐光安定剤の量がこれより少ない場合は、合わせガラス板の接着層の耐光性が不十分な場合があり、これより多い場合は、変性ブロック共重合体水素化物[3]をシート状に成形する溶融成形加工時に、押出し機のTダイや冷却ロールの汚れが酷かったりして加工性に劣る場合がある。
【0048】
[紫外線吸収剤]
耐光性を向上させるためのもう一つの手段として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などの紫外線吸収剤を配合することができる。
【0049】
紫外線吸収剤の具体例として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、など; サリチル酸系紫外線吸収剤としては、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど; ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジクミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]などが挙げられる。
【0050】
紫外線吸収剤の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.02〜1重量部、より好ましくは0.04〜0.5重量部である。紫外線吸収剤は、ヒンダードアミン系耐光安定剤と併用することにより、更に耐光性を改善することができるが、上記範囲を超えて過剰に配合しても、更なる改善は認められない。
【0051】
[酸化防止剤]
酸化防止剤を配合することにより、より熱安定性を向上することもできる。添加することができる酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。
【0052】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、2−エチルヘキシルジフェニルホスファイトトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物; 4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物; 6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェピンなどの化合物を挙げることができる。
【0053】
フェノ−ル系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどの化合物を挙げることができる。
【0054】
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどなど化合物を挙げることができる。
【0055】
酸化防止剤の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[3]100重量部に対して、通常0.01〜2重量部、好ましくは0.05〜1重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部である。酸化防止剤は、ヒンダードアミン系光安定剤と併用することにより、更に耐光性を改善することもできるが、上記範囲を超えて過剰に配合しても、更なる改善は認められない。
【0056】
6.接着性樹脂組成物
変性ブロック共重合体水素化物[3]に、上記の配合剤を均一に分散して接着性樹脂組成物を製造する方法は、例えば、配合剤を適当な溶剤に溶解してアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]の前駆体であるブロック共重合体水素化物[2]の溶液に添加した後、溶媒を除去して配合剤を含むブロック共重合体水素化物を回収し、これとエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法; 二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などを使用して変性ブロック共重合体水素化物[3]を溶融状態にして配合剤を混練する方法; ブロック共重合体水素化物[2]とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる際に同時に上記配合剤も混練する方法; ブロック共重合体水素化物[2]に上記配合剤を均一に分散してペレット状にしたものと、変性ブロック共重合体水素化物[3]をペレット状にしたものを混合し、溶融混練して均一に分散する方法などが挙げられる。
【0057】
7.接着性樹脂組成物層
本発明の変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物は、通常、シート状に成形して合わせガラス板を製造する工程に供される。シートは、一対のガラス板の間に少なくとも一枚以上介在させて貼り合せることにより、一対のガラス板間に少なくとも一層以上の接着性樹脂組成物層を形成させて合わせガラス板を製造する。接着性樹脂組成物層の厚さは、一対のガラス板の厚さの合計(tg)に対し、接着性樹脂組成物層の厚さの合計(tr)の比(tr/tg)が0.1以上4.0以下となるものである。接着性樹脂組成物層は一層でも複数層でも良い。複数層の場合、異なる組成の接着性樹脂組成物層が組み合わされても良く、また、複数層の間に他の透明樹脂層が積層されても良い。
【0058】
本発明で使用する変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物からなるシートは、必要に応じて前記配合剤を配合した変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する樹脂組成物からなる単層のシートであっても、また、必要に応じて前記配合剤を配合したブロック共重合体水素化物[2]からなる樹脂組成物のシートの両面に、前記配合剤を配合した変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物層が積層されている多層シートであっても良い。
【0059】
本発明で使用する変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物からなるシートは、長期間常温で高湿環境に暴露された後でもガラスとの強固な接着力を維持し、接着の前に水分含有量などの調整は不溶なため、作業性に優れ、ガラスの貼り合せに好適に使用できる。
【0060】
8.合わせガラス板
本発明の合わせガラス板は、ガラス板の厚さに対応した特定の厚さを有する変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物層をガラス板間に介在させ、該接着性樹脂組成物をガラスに接着させて一体化してなるものである。
【0061】
ガラス板を遮音板に使用する場合、厚さに応じた音の特定周波数域で、コインシデンス効果による透過損失の低下を生じる。例えば、ガラス板の厚さが3〜16mmの場合は、4000〜750Hzの周波数領域で透過損失の低下を生じる。本発明の合わせガラス板は、このようなコインシデンス効果による特定周波数領域での透過損失の低下を抑制して遮音性を向上させるものである。
【0062】
本発明の合わせガラスの、接着性樹脂組成物層の厚さの合計(tr)が一対のガラス板の厚さの合計(tg)に対し、厚さの合計の比(tr/tg)は、十分な遮音性と光線透過率が確保できることから、0.1以上4.0以下、好ましくは0.2以上3.0以下である。この観点から、本発明に使用するガラス板の1枚の厚さは、遮音板用途に適用できるものであれば特に限定はされないが、通常1.5〜8mmであり、一対のガラス板の厚さの合計は、通常、3.0〜16mmである。これに対し、本発明の接着性樹脂組成物層の厚さの合計は、通常0.3mm以上、好ましくは0.5mm以上である。接着性樹脂組成物層の厚さは厚い方が遮音効果も大きくなり、また耐貫通性や耐衝撃性が高まるため好ましいが、通常、10mm以下、好ましくは8mm以下である。
接着性樹脂層の厚さがこれよりも大きい場合は、接着性樹脂組成物層の光線透過率が低下したり、変性ブロック共重合体水素化物[3]の使用量が多くなり経済性が低下するため好ましくない。
【0063】
本発明に使用するガラス板の種類は特に限定されないが、通常は、ソーダガラスや白板ガラスなどで成形されたフロートガラス板、型板ガラス、強化ガラス板などが使用される。
【0064】
本発明の合わせガラス板を製造するには、一対のガラス板の間に変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物からなる少なくとも1枚以上のシートを介在させ、真空ラミネータや減圧可能な耐熱性のゴム袋などを使用して、加熱加圧下で接着させれば良い。
【0065】
本発明の合わせガラス板は透明性に優れた特徴を有するが、変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物からなる複数のシートの間に、装飾性を付与する物品や、電磁波、放射線、赤外線、熱線などを遮蔽する物品を挟持させたりすることもできる。
【0066】
本発明の合わせガラス板は、透明性、耐熱性、遮音性、ガラスが割れた場合の飛散防止性などに優れており、高速道路や鉄道の遮音壁、建築物の窓ガラスや仕切り板、ガラスドア、サンルーフ材、自動車用窓ガラス、ショウウィンドー用ガラス、意匠性ガラスなどとして有用である。
【実施例】
【0067】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、重量基準である。以下に各種物性の測定法を示す。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として38℃において測定した。測定装置としては、東ソー社製HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[2]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)ガラス板との接着性の評価(剥離強度)
変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物[4]からなるシートを、シート端部に非接着部位を設けて厚さ2mm、幅100mm、長さ75mmのソーダガラス板と重ね合わせ、真空ラミネータにて、150℃の温度で、5分間真空脱気した後、10分間真空加圧接着することにより、剥離試験用試験片を作成した。シート面を15mm幅に切り目を入れ、シートの非接着部位から、剥離速度50mm/分で、JIS K 6854−2に基づいて180度剥離試験を行い、剥離強度を測定した。剥離強度は、真空ラミネート後の初期の値及び85℃、85%RHの高温高湿環境に1000時間暴露した後の値を測定した。剥離強度が大きいほど、ガラスとの接着性が良い。
(4)透明性の評価
変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物[4]からなるシートを、厚さ3mm、幅50mm、長さ50mmの2枚のソーダガラスの間に挟み、真空ラミネータ(製品名「PVL0202S」、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、120〜150℃の温度で、5分間真空脱気した後、10分間真空加圧成形して貼り合せガラス試験片を作成し、JIS K 7375の方法を参照して全光線透過率を測定した。
(5)音響透過損失の評価
変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物[4]からなるシートを1枚もしくは複数枚重ねて、厚さ1.7〜3mm、幅600mm、長さ600mmの2枚のソーダガラス板に挟み、真空プレス機により、1kPa以下の減圧雰囲気下、120〜150℃の温度で、10分間加圧接着することにより、遮音ガラス試験板を作成した。この遮音ガラス試験板を使用して、音響インテンシティ法(JIS A 1441−1)に従って400〜5000Hzの音域で音響透過損失を測定した。
一般的な遮音板は、より高い周波数音域でより大きな音響透過損失であることが求められ、例えば、高速道路用の遮音板は、400Hzで25dB以上、1000Hzで30dB以上の音響透過損失があることを求められている。従って、音響透過損失は、高いほど遮音性に優れていることを示し、より高い周波数で高くなることが求められている。
(6)耐熱性の評価
厚さ3mmのガラスを使用した上記の遮音ガラス試験板を使用して、オーブン中で、架台を用いて片面のガラス板のみ保持し、もう一方のガラス板は保持しないように垂直に立てて、温度100℃で96時間保存した後、遮音ガラス試験板を目視観察し、位置ずれ、変色、気泡、剥離などの外観を評価した。
(7)割れ時の飛散防止性の評価
厚さ3mmのガラスを使用した上記の遮音ガラス試験板を使用し、重さ2kgの鋼球を2mの高さからガラス面に落下させ、貫通の有無と割れたガラスの飛散状況を目視観察した。
【0068】
[参考例1]
変性ブロック共重合体水素化物[3]−1
(ブロック共重合体[1]−1の合成)
充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部及びn−ジブチルエーテル0.475部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.62部を加えて重合を開始した。攪拌しながら60℃で60分反応させた。ガスクロマトグラフィーにより測定した。この時点で重合転化率は99.5%であった。
次に、脱水イソプレン50.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止した。得られたブロック共重合体[1]−1の重量平均分子量(Mw)は78,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=50:50であった。
【0069】
(ブロック共重合体水素化物[2]−1の合成)
次に、上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は78,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0070】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、SONGWON社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット96部を作成した。得られたブロック共重合体水素化物[2]−1の重量平均分子量(Mw)は77,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%であった。
【0071】
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−1の合成)
得られたブロック共重合体水素化物[2]−1のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標) 25B」、日油社製)0.2部を添加し、この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット97部を得た。
【0072】
得られたアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いでアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]−1を凝固させ、濾別した後、25℃で真空乾燥してアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物[3]−1のクラム9.5部を単離した。FT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が、ビニルトリメトキシシランのそれらの1075cm−1、808cm−1、及び766cm−1と異なる位置に観察された。また、H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察され、ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[2]−1の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
【0073】
[参考例2]
変性ブロック共重合体水素化物[3]−2
(ブロック共重合体水素化物[2]−2の合成)
重合段階でモノマーとして、スチレン22.5部、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.54部、イソプレン55.0部及びスチレン22.5部をこの順に反応系に添加して重合する以外は参考例1と同様にして、重合し、wA:wB=45:55のブロック共重合体[1]−2を得、これを水素化して、ブロック共重合体水素化物[2]−2のペレット96部を得た。得られたブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は88,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%であった。
【0074】
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−2の合成)
ブロック共重合体水素化物[2]−1に代えてブロック共重合体水素化物[2]−2のペレット100部を使用する以外は参考例1と同様にして、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[3]−2のペレット97部を得た。
【0075】
得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−2は、参考例1と同様に分析した結果、ブロック共重合体水素化物[2]−2の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
【0076】
[参考例3]
変性ブロック共重合体水素化物[3]−3
(ブロック共重合体水素化物[2]−3の合成)
重合段階でモノマーとして、スチレン35.0部、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.61部、イソプレン30.0部及びスチレン35.0部をこの順に反応系に添加して重合し、wA:wB=70:30のブロック共重合体[1]−3を得る以外は参考例1と同様にして、ブロック共重合体水素化物[2]−3のペレット95部を得た。得られたブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は82,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%であった。
【0077】
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−3の合成)
ブロック共重合体水素化物[2]−1に代えてブロック共重合体水素化物[2]−3のペレット100部を使用し、二軸押出機の樹脂温度を210℃、滞留時間30〜40秒とする以外は参考例1と同様にして、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[3]−3のペレット92部を得た。
【0078】
得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−3は、参考例1と同様に分析した結果、ブロック共重合体水素化物[2]−3の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.3部が結合したことが確認された。
【0079】
[参考例4]
変性ブロック共重合体水素化物[3]−4
(ブロック共重合体水素化物[2]−4の合成)
重合段階でモノマーとして、スチレン12.5部、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.49部、イソプレン75.0部及びスチレン12.5部をこの順に反応系に添加して重合し、wA:wB=25:75のブロック共重合体[1]−4を得る以外は参考例1と同様にして、ブロック共重合体水素化物[2]−4のペレット93部を得た。得られたブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は95,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%であった。
【0080】
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−4の合成)
ブロック共重合体水素化物[2]−1に代えてブロック共重合体水素化物[2]−4のペレット100部を使用する以外は参考例1と同様にして、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[3]−4のペレット91部を得た。
【0081】
得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−4は、参考例1と同様に分析した結果、ブロック共重合体水素化物[2]−4の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
【0082】
[実施例1]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−1を含有する接着性樹脂組成物[4]−1のシート)
参考例1で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット100重量部に紫外線吸収剤である2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン(製品名「アデカスタブ(登録商標) 1413」、ADEKA社製)0.5部を添加し、90mmφのスクリューを備えた押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅1200mm)及び梨地パターンのエンボスロールを備えたシート引取機を使用し、溶融樹脂温度190℃、Tダイ温度190℃、ロール温度50℃の成形条件にて、厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−1のシートを押出し成形した。得られたシートはロールに巻き取り回収した。
【0083】
(合わせガラス板の評価)
接着性樹脂組成物[4]−1の厚さ1.2mmのシートを使用し、厚さ3mmのガラス板2枚の間に接着性樹脂組成物[4]−1のシート1枚を配置して、合わせガラス板を作成した。また、同時に前述した各種試験の試験サンプルを作成し、接着性、透明性、音響透過損失、耐熱性、割れ時の飛散防止性の評価を実施した。結果を表1に記載した。
【0084】
[実施例2]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−2を含有する接着性樹脂組成物[4]−2のシート)
参考例2で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−2のペレット100重量部を使用する以外は実施例1と同様にして、厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−2のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた接着性樹脂組成物[4]−2のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0085】
[実施例3]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−1に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物「4」−3のシート)
参考例1で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット100重量部に前記と同じ紫外線吸収剤である2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン0.5部を添加し、液状物を添加できるサイドフィーダーを備えた二軸押出機(製品名「TEM37BS」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度190℃で押し出した。
一方、サイドフィーダーから可塑剤としてポリイソブテン(製品名「日石ポリブテン LV−100」、数平均分子量500、JX日鉱日石エネルギー社製)を、変性ブロック共重合体水素化物[3]−1の100重量部に対して10重量部の割合となるように連続的に添加して、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングして変性ブロック共重合体水素化物[3]−1にポリイソブテンを配合してなる接着性樹脂組成物[4]−3のペレット102部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−3のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、実施例1と同様の成形条件にて厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−3のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた接着性樹脂組成物[4]−3のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0086】
[実施例4]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−1に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物「4」−4のシート)
可塑剤として実施例3と同じポリイソブテンを使用し、ポリイソブテンの量を変性ブロック共重合体水素化物[3]−1の100重量部に対して20重量部の割合とする以外は実施例3と同様にして接着性樹脂組成物[4]−4のペレット113部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−4のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、溶融樹脂温度180℃、Tダイ温度180℃、ロール温度40℃とする以外は実施例1と同様の成形条件にて厚さ0.4mm、1.2mm及び3.0mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−4のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた厚さ1.2mmの接着性樹脂組成物[4]−4のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0087】
[実施例5]
(合わせガラス板の評価)
実施例4で作成した接着性樹脂組成物[4]−4の厚さ1.2mmのシートを使用し、厚さ3mmのガラス板2枚の間に接着性樹脂組成物[4]−4のシート2枚を配置して、合わせガラス板を作成した。また、同時に前述した各種試験の試験サンプルを作成し、実施例1と同様に各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0088】
[実施例6]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−2に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物「4」−5のシート)
参考例2で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−2のペレット及び可塑剤として実施例3と同じポリイソブテンを使用し、変性ブロック共重合体水素化物[3]−2の100重量部に対してポリイソブテンの量を10重量部の割合とする以外は実施例3と同様にして接着性樹脂組成物[4]−5のペレット104部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−5のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、溶融樹脂温度180℃、Tダイ温度180℃、ロール温度40℃とする以外は実施例1と同様の成形条件にて厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−5のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた接着性樹脂組成物[4]−5のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0089】
[実施例7]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−1に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物「4」−6のシート)
参考例1で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−1のペレット及び可塑剤としてポリイソブテン(製品名「日石ポリブテン HV−300」、数平均分子量1400、JX日鉱日石エネルギー社製)を使用し、変性ブロック共重合体水素化物[3]−1の100重量部に対してポリイソブテンの量を40重量部の割合とする以外は実施例3と同様にして接着性樹脂組成物[4]−6のペレット132部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−6のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、溶融樹脂温度180℃、Tダイ温度180℃、ロール温度40℃とする以外は実施例1と同様の成形条件にて厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−6のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた接着性樹脂組成物[4]−6のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0090】
[比較例1]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−3に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物「4」−7のシート)
参考例3で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−3のペレット及び可塑剤として実施例3と同じポリイソブテンを使用し、変性ブロック共重合体水素化物[3]−3の100重量部に対してポリイソブテンの量を20重量部の割合とし、二軸押出機の樹脂温度200℃とする以外は実施例3と同様にして接着性樹脂組成物[4]−7のペレット112部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−7のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、溶融樹脂温度195℃、Tダイ温度195℃、ロール温度60℃とする以外は実施例1と同様の成形条件にて厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−7のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた接着性樹脂組成物[4]−7のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0091】
[比較例2]
(変性ブロック共重合体水素化物[3]−4に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物「4」−8のシート)
参考例4で得られた変性ブロック共重合体水素化物[3]−4のペレット及び可塑剤として実施例3と同じポリイソブテンを使用し、変性ブロック共重合体水素化物[3]−3の100重量部に対してポリイソブテンの量を20重量部の割合とする以外は実施例3と同様にして接着性樹脂組成物[4]−8のペレット107部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−8のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、溶融樹脂温度185℃、Tダイ温度185℃、ロール温度45℃とする以外は実施例1と同様の成形条件にて厚さ1.2mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−8のシートを押出し成形した。
(合わせガラス板の評価)
得られた接着性樹脂組成物[4]−8のシートを使用して実施例1と同様に試験サンプルを作成し、各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0092】
[比較例3]
(合わせガラス板の評価)
実施例4で作成した厚さ0.4mmの接着性樹脂組成物[4]−4のシートを使用し、厚さ3mmのガラス板2枚の間に接着性樹脂組成物[4]−4のシート1枚を配置して、合わせガラス板を作成した。また、同時に前述した各種試験の試験サンプルを作成し、実施例1と同様に各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0093】
[比較例4]
(ガラス板の評価)
合わせガラス板に代えて、合わせガラス板に使用したガラス板の厚さの合計(6mm)と同じ厚さを有する厚さ6mm、幅600mm、長さ600mmのガラス板のみを使用して、実施例1と同様に各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0094】
[比較例5]
(ポリカーボネート板の評価)
合わせガラス板に代えて、合わせガラス板の総厚さ(7.2〜8.4mm)とほぼ同等の厚さを有する厚さ8mm、幅600mm、長さ600mmのポリカーボネート板のみを使用して、実施例1と同様に各種試験を実施した。結果を表1に合わせて記載した。
【0095】
【表1】
【0096】
[実施例8]
(合わせガラス板の評価)
実施例4で作成した接着性樹脂組成物[4]−4の厚さ1.2mmのシートを使用し、厚さ1.7mmのガラス板2枚の間に接着性樹脂組成物[4]−4のシート2枚を積層配置して、前述した各種試験の試験サンプルを作成し、合わせガラス板を作成した。また、同時に実施例1と同様に各種試験を実施した。結果を表2に記載した。
【0097】
[比較例6]
(ガラス板の評価)
合わせガラス板に代えて、実施例8で使用した合わせガラス板の単位面積当たりの重量1.1g/cmとほぼ同等の単位面積当たりの重量を有する厚さ4mm、幅600mm、長さ600mmのガラス板(単位面積当たりの重量=1.0g/cm)を使用して、実施例1と同様に各種試験を実施した。結果を表2に合わせて記載した。
【0098】
【表2】
【0099】
[実施例9]
(ブロック共重合体水素化物[2]−1に可塑剤を配合してなる接着性樹脂組成物[4]−9のシート)
変性ブロック共重合体水素化物[3]−1に代えてブロック共重合体水素化物[2]−1を使用し、可塑剤として実施例3と同じポリイソブテンを使用し、ブロック共重合体水素化物[2]−1の100重量部に対してポリイソブテンの量を20重量部の割合とする以外は実施例3と同様にして接着性樹脂組成物[4]−9のペレット114部を得た。
得られた接着性樹脂組成物[4]−9のペレットを、実施例1と同様の溶融押出し成形機及びシート引取機を使用し、実施例1と同様の成形条件にて厚さ1.6mm、幅1000mmの接着性樹脂組成物[4]−9のシートを押出し成形した。
【0100】
(合わせガラス板の評価)
接着性樹脂組成物[4]−9のシート及び実施例4で作成した接着性樹脂組成物[4]−4の厚さ0.4mmのシートを使用し、厚さ3mmのガラス板2枚の間に接着性樹脂組成物[4]−4の厚さ0.4mmのシート1枚/接着性樹脂組成物[4]−9の厚さ1.6mmのシート1枚/接着性樹脂組成物[4]−4の厚さ0.4mmのシート1枚をこの順に積層配置して、実施例1と同様に合わせガラス板を作成した。tr/tg=0.4である。また、同時に前述した各種試験の試験サンプルを作成し、実施例1と同様に各種試験を実施した。
その結果、ガラス板との接着性は10N/cm以上、全光線透過率は91%、合わせガラス板の音響透過損失は各周波数で、32dB(500Hz)、36dB(1000Hz)、36dB(2000Hz)、41dB(4000Hz)であった。また、耐熱性試験では異常無く、割れ時の飛散防止性では、貫通は無く、割れたガラスの飛散も無かった。
【0101】
[実施例10]
(合わせガラス板の評価)
実施例4で作成した接着性樹脂組成物[4]−4の厚さ3.0mmのシートを使用し、厚さ1mmのガラス板2枚の間に接着性樹脂組成物[4]−4のシート2枚を配置して、総厚さ8mmの合わせガラス板を作成した。tr/tg=3.0である。
また、同時に前述した各種試験の試験サンプルを作成し、実施例1と同様に各種試験を実施した。
その結果、全光線透過率は91%、合わせガラス板の音響透過損失は各周波数で、28dB(500Hz)、33dB(1000Hz)、37dB(2000Hz)、39dB(4000Hz)であった。また、耐熱性試験では異常無く、割れ時の飛散防止性では、貫通は無く、割れたガラスの飛散も無かった。
【0102】
実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
本発明の特定の変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物層を有する合わせガラス板は、ガラスのコインシデンス効果による特定周波数域での音響透過損失の低下を抑制して遮音性を向上させるのに有利である。実施例では厚さ6mmのガラスに特有の周波数2000Hz付近の音響透過損失の低下が、本発明の接着性樹脂組成物層を導入することにより抑制されている。また、ガラスと接着性樹脂組成物層は十分な接着力を持ち、また優れた透明性を有しており、耐熱性が高く、耐貫通性やガラスが割れた場合の飛散防止効果も高い(実施例1〜7、実施例9)。
【0103】
本発明の特定の変性ブロック共重合体水素化物[3]に対し、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[A]の含有量が多過ぎる場合は、耐熱性は高いが柔軟性に劣り、特定周波数域での音響透過損失の低下を抑制する効果は低い。また、合わせガラス板の耐貫通性やガラスが割れた場合の飛散防止効果も低い(比較例1)。
【0104】
本発明の特定の変性ブロック共重合体水素化物[3]に対し、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[B]の含有量が多過ぎる場合は、柔軟性に優れ、特定周波数域での音響透過損失の低下を抑制するのに有利である。また、耐貫通性やガラスが割れた場合の飛散防止効果も高い。しかし、耐熱性は不十分である(比較例2)。
【0105】
本発明の特定の変性ブロック共重合体水素化物[3]を含有する接着性樹脂組成物を使用した場合でも、接着性樹脂組成物層の厚さが特定範囲より薄い場合、すなわち合わせガラス板に使用するガラス板の厚さの合計(tg)に対する接着性樹脂組成物層の厚さの合計(tr)の比(tr/tg)が0.1を下回る場合は、特定周波数域での音響透過損失の低下を抑制するのに不十分である(比較例3)。
【0106】
本発明の合わせガラス板は、総厚さがほぼ同等のポリカーボネート板を使用した場合に比べ、透明性に優れ、低周波域(1000Hz以下)での音響透過損失が高く、ガラス板でコインシデンス効果の生じる2000Hz付近での音響透過損失もポリカーボネートと同等あるいはそれ以上の値も得られ、遮音性に優れている。(実施例1〜7、実施例9、比較例5)
【0107】
本発明の合わせガラス板は、ガラス板単独に比べて、単位面積当たりの重量をほぼ同じにした場合、ガラス板でコインシデンス効果の生じる周波数領域での音響透過損失の低下を抑制し、遮音性を向上できる。(実施例8、比較例6)
【0108】
本発明の合わせガラス板は、単位面積当たりの重量をポリカーボネート板の単位面積当たりの重量とほぼ同等にした場合(実施例10:総厚さ8mm、単位面積当たりの重量1.05g/cm)は、ポリカーボネート板(比較例5:厚さ8mm、単位面積当たりの重量0.96g/cm)と同等の音響透過損失を示す。表面層はガラスのため、耐傷性や耐汚染性はガラス同様に優れており、同厚さのガラス板に比較しては約50%の軽量化となっている。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の合わせガラス板は、高速道路や鉄道の遮音壁、建築物の窓ガラスや仕切り板、ガラスドア、屋根用ガラス、自動車用フロントガラスやサンルーフ用ガラス、ショウウィンドー用ガラス、意匠性ガラスなどとして有用である。