特許第6065638号(P6065638)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065638
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】信号伝送装置および通信モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   G02B6/42
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-31122(P2013-31122)
(22)【出願日】2013年2月20日
(65)【公開番号】特開2014-160190(P2014-160190A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080001
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100108279
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100113642
【弁理士】
【氏名又は名称】菅田 篤志
(74)【代理人】
【識別番号】100117008
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100147430
【弁理士】
【氏名又は名称】坂次 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正尭
(72)【発明者】
【氏名】須永 義則
(72)【発明者】
【氏名】石神 良明
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 晋路
(72)【発明者】
【氏名】杉山 剛博
(72)【発明者】
【氏名】山▲嵜▼ 欣哉
【審査官】 佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−286225(JP,A)
【文献】 特開2001−068885(JP,A)
【文献】 特開平11−145655(JP,A)
【文献】 特開平01−122195(JP,A)
【文献】 実開平05−038790(JP,U)
【文献】 特開2011−039188(JP,A)
【文献】 特開2009−260188(JP,A)
【文献】 特開平04−322085(JP,A)
【文献】 特開平09−312184(JP,A)
【文献】 特開2008−251600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B6/26−6/27
G02B6/30−6/34
G02B6/42−6/43
H05K7/00−7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却機構を備える基板に通信モジュールが搭載された信号伝送装置であって、
前記基板上の前記冷却機構に隣接し、前記通信モジュールが抜き差しされるスロットと、
前記スロットの内部に設けられた基板側コネクタと、前記通信モジュールに設けられたモジュール側コネクタと、
前記スロットの内側面から突出し、該スロットに挿入された前記通信モジュールに接触して該通信モジュールを前記冷却機構に向けて付勢する弾性片と、を有し、
前記弾性片は、前記スロットに挿入される前記通信モジュールの挿入方向下端が該弾性片を通過した後の前記通信モジュールの前記スロットへの挿入長が所定長に達すると、前記基板側コネクタと前記モジュール側コネクタとの嵌合が開始される前に、前記通信モジュールへの接触を開始する、信号伝送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の信号伝送装置において、
前記通信モジュールに接触した前記弾性片の前記通信モジュールに対する摺動距離が、前記通信モジュールの前記スロットへの挿入方向に沿った全長の1/20以上かつ1/3以下である、信号伝送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の信号伝送装置において、
前記通信モジュールは、前記スロットの前記内側面と対向する第1外側面と、該第1外側面の反対側に位置し、前記冷却機構に密着される第2外側面と、を有し、
前記第1外側面は、前記弾性片と接触する接触面と、該接触面に対して前記第2外側面寄りに後退し、前記弾性片と接触しない逃げ面と、から構成され、
前記通信モジュールが前記スロットに挿入される際、前記弾性片は、前記逃げ面上を通過した後に、前記逃げ面と前記接触面との間の段差を通過して前記接触面上に至る、信号伝送装置。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の信号伝送装置において、
前記通信モジュールの、前記スロットへの挿入方向に沿って2つ以上の前記弾性片が設けられる、信号伝送装置。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の信号伝送装置において、
前記冷却機構は、前記通信モジュールが密着されるヒートシンクと、該ヒートシンクとの間で熱交換を行なう冷媒が循環される冷媒通路と、を含む、信号伝送装置。
【請求項6】
冷却機構を備える基板上に設けられたスロットに抜き差しされる通信モジュールであって、
前記スロットの内部に設けられた基板側コネクタと嵌合するモジュール側コネクタを有し、
前記スロットへの挿入方向下端が該スロットの内側面から突出する弾性片を通過した後の該スロットへの挿入長が所定長に達すると、前記モジュール側コネクタが前記基板側コネクタへの嵌合を開始する前に、前記弾性片と接触し、該弾性片による付勢により前記冷却機構に密着される、通信モジュール。
【請求項7】
請求項に記載の通信モジュールにおいて、
当該通信モジュールに接触した前記弾性片の当該通信モジュールに対する摺動距離が、当該通信モジュールの前記スロットへの挿入方向に沿った全長の1/20以上かつ1/3以下である、通信モジュール。
【請求項8】
請求項6または7に記載の通信モジュールにおいて、
前記スロットの前記内側面と対向する第1外側面と、該第1外側面の反対側に位置し、前記冷却機構に密着される第2外側面と、を有し、
前記第1外側面は、前記弾性片と接触する接触面と、該接触面に対して前記第2外側面寄りに後退し、前記弾性片と接触しない逃げ面と、から構成され、
当該通信モジュールが前記スロットに挿入される際、前記弾性片は、前記逃げ面上を通過した後に、前記逃げ面と前記接触面との間の段差を通過して前記接触面上に至る、通信モジュール。
【請求項9】
請求項に記載の通信モジュールにおいて、前記第1外側面および前記第2外側面を構成する板金が部分的に重ね合わされて前記段差が形成されている、通信モジュール。
【請求項10】
請求項に記載の通信モジュールにおいて、前記第1外側面の一部前記段差が形成されている、通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信モジュールおよび通信モジュールを備える信号伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、通信モジュールを備える信号伝送装置には、通信モジュールの動作温度を所定の温度範囲内に維持するための冷却機構が設けられる。かかる冷却機構は、通信モジュールに設けられる場合と、通信モジュールが搭載される基板に設けられる場合と、がある。
【0003】
特許文献1には、基板(マザーボード)に搭載される通信モジュール(光モジュール)であって、冷却機構を備えた光モジュールが記載されている。特許文献1に記載されている光モジュールでは、該光モジュールを構成するリジッド基板の一方の面に光素子や制御ICが実装され、他方の面にヒートシンクが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−128378号公報(段落0018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数の通信モジュールを同一の基板に搭載する場合には、それら通信モジュールに対して共通の冷却機構が基板に設けられていることが望ましい。何故なら、基板に搭載される複数の通信モジュールに対して個別に冷却機構が設けられている場合、それぞれの通信モジュールに設けられている冷却機構同士の干渉を避けるために、隣接する通信モジュール同士の間隔を広げなくてはならない虞がある。すなわち、通信モジュールの高密化が阻害される虞がある。また、冷却機構がそれぞれの通信モジュールごとに設けられていると、液冷式の冷却機構を採用する際に冷媒通路の構造やレイアウトが複雑になったり、冷媒通路の接続箇所が増えて液漏れのリスクが高まったりする虞がある。
【0006】
一方、通信モジュールが搭載される基板に冷却機構が設けられる場合、通信モジュールと冷却機構とは、通信モジュールが基板に搭載されて初めて熱的に接続される。よって、基板に搭載された通信モジュールと、該基板に設けられている冷却機構との熱的接続を確実に実現する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、通信モジュールと、該通信モジュールが搭載される基板に設けられている冷却機構との熱的接続を確実に実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の信号伝送装置は、冷却機構を備える基板に通信モジュールが搭載された信号伝送装置であって、前記基板上の前記冷却機構に隣接し、前記通信モジュールが抜き差しされるスロットと、前記スロットの内側面から突出し、該スロットに挿入された前記通信モジュールに接触して該通信モジュールを前記冷却機構に向けて付勢する弾性片と、を有する。前記弾性片は、前記スロットに挿入される前記通信モジュールの挿入方向下端が該弾性片を通過した後の前記通信モジュールの前記スロットへの挿入長が所定長に達すると、前記通信モジュールへの接触を開始する。
【0009】
本発明の信号伝送装置の一態様では、前記スロットの内部に設けられた基板側コネクタと、前記通信モジュールに設けられたモジュール側コネクタとが設けられ、前記弾性片は、前記基板側コネクタと前記モジュール側コネクタとの嵌合が開始される前に前記通信モジュールへの接触を開始する。
【0010】
本発明の信号伝送装置の他の態様では、前記通信モジュールに接触した前記弾性片の前記通信モジュールに対する摺動距離が、前記通信モジュールの前記スロットへの挿入方向に沿った全長の1/20以上かつ1/3以下である。
【0011】
本発明の信号伝送装置の他の態様では、前記通信モジュールは、前記スロットの前記内側面と対向する第1外側面と、該第1外側面の反対側に位置し、前記冷却機構に密着される第2外側面と、を有する。前記第1外側面は、前記弾性片と接触する接触面と、該接触面に対して前記第2外側面寄りに後退し、前記弾性片と接触しない逃げ面とから構成される。前記通信モジュールが前記スロットに挿入される際、前記弾性片は、前記逃げ面上を通過した後に、前記逃げ面と前記接触面との間の段差を通過して前記接触面上に至る。
【0012】
本発明の他の態様では、前記通信モジュールの、前記スロットへの挿入方向に沿って2つ以上の前記弾性片が設けられる。
【0013】
本発明の信号伝送装置の他の態様では、前記冷却機構は、前記通信モジュールが密着されるヒートシンクと、該ヒートシンクとの間で熱交換を行なう冷媒が循環される冷媒通路と、を含む。
【0014】
本発明の通信モジュールは、冷却機構を備える基板上に設けられたスロットに抜き差しされる通信モジュールであって、前記スロットへの挿入方向下端が該スロットの内側面から突出する弾性片を通過した後の該スロットへの挿入長が所定長に達すると、前記弾性片と接触し、該弾性片による付勢により前記冷却機構に密着される。
【0015】
本発明の通信モジュールの一態様では、前記スロットの内部に設けられた基板側コネクタと嵌合するモジュール側コネクタが設けられ、前記モジュール側コネクタが前記基板側コネクタへの嵌合を開始する前に、前記弾性片との接触を開始する。
【0016】
本発明の通信モジュールの他の態様では、当該通信モジュールに接触した前記弾性片の当該通信モジュールに対する摺動距離が、当該通信モジュールの前記スロットへの挿入方向に沿った全長の1/20以上かつ1/3以下である。
【0017】
本発明の通信モジュールの他の態様では、前記スロットの前記内側面と対向する第1外側面と、該第1外側面の反対側に位置し、前記冷却機構に密着される第2外側面とが設けられる。前記第1外側面は、前記弾性片と接触する接触面と、該接触面に対して前記第2外側面寄りに後退し、前記弾性片と接触しない逃げ面とから構成される。当該通信モジュールが前記スロットに挿入される際、前記弾性片は、前記逃げ面上を通過した後に、前記逃げ面と前記接触面との間の段差を通過して前記接触面上に至る。
【0018】
本発明の通信モジュールの他の態様では、前記第1外側面および前記第2外側面を構成する板金が部分的に重ね合わされて前記段差が形成されている。
【0019】
本発明の通信モジュールの他の態様では、前記第1外側面の一部が削られて前記段差が形成されている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、通信モジュールと、該通信モジュールが搭載される基板に設けられている冷却機構との熱的接続が確実に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】信号伝送装置の斜視図である。
図2】通信モジュールが抜き取られた信号伝送装置の斜視図である。
図3】信号伝送装置の部分拡大図である。
図4】通信モジュールの拡大斜視図である。
図5】スロットに挿入された通信モジュールの拡大断面図である。
図6】通信モジュールのスロットへの挿入工程を示す断面図である。
図7】2以上の板ばねが設けられたスロットに挿入された通信モジュールの拡大断面図である。
図8】通信モジュールの変形例の1つを示す拡大斜視図である。
図9】通信モジュールの変形例の他の1つを示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。図1に示される信号伝送装置1は、基板(以下、“マザーボード2”と呼ぶ。)を有する。マザーボード2の搭載面の略中央にはICチップ3が実装されており、ICチップ3の両側には、冷却機構を構成するヒートシンク4,5が配置されている。さらに、それぞれのヒートシンク4,5の両側には、それらヒートシンク4,5に隣接してスロット6a,6bが設けられている。すなわち、1つのヒートシンクに対して2つのスロットが設けられている。各スロット6a,6bには複数の通信モジュール10が抜き差し可能にセットされている。
【0023】
それぞれのスロット6a,6bに挿入されている各通信モジュール10は、マザーボード2に形成されている配線(不図示)を介してICチップ3と電気的に接続され、ICチップ3との間で信号の入出力を行なう。具体的には、各通信モジュール10は、外部から入力される光信号を電気信号に変換してICチップ3へ出力し、ICチップ3から入力される電気信号を光信号に変換して外部へ出力する。以下、上記構成要素のそれぞれについて詳細に説明する。
【0024】
図2を参照する。それぞれのヒートシンク4,5は、熱伝導率の高い金属(例えば、銅やアルミニウム)によって形成された略角柱状のブロックである。ヒートシンク4,5は、ICチップ3を挟んで互いに平行に配置されており、それぞれのヒートシンク4,5の両側面が吸熱面として機能する。そこで、以下の説明では、ヒートシンク4の一方の側面4aを“吸熱面4a”と呼び、他方の側面4bを“吸熱面4b”と呼ぶ場合がある。また、ヒートシンク5の一方の側面5aを“吸熱面5a”と呼び、他方の側面5bを“吸熱面5b”と呼ぶ場合がある。
【0025】
それぞれのヒートシンク4,5の内部には、それらヒートシンク4,5の長手方向に沿って貫通穴が形成されている。さらに、ヒートシンク4に形成されている貫通穴とヒートシンク5に形成されている貫通穴とは、パイプ7を介して繋がっている。なお、図1および図2では、便宜上の理由からパイプ7が途中で破断されているが、実際には、貫通穴およびパイプ7により一連の循環路(冷媒通路)が形成されている。さらに、冷媒通路の途中には不図示のポンプおよびタンクが設けられている。タンク内には所定量の冷媒(例えば、水)が貯留されており、タンク内に貯留されている冷媒はポンプにより冷媒通路に送り出される。冷媒通路に送り出された冷媒は、冷媒通路を一周してタンクに戻り、再び冷媒通路に送り出される。すなわち、冷媒は冷媒通路を循環する。冷媒通路を循環する冷媒は、ヒートシンク4,5の貫通穴を通過する際に、ヒートシンク4,5との間で熱交換を行なう。なお、必要に応じて冷媒通路の途中に放熱器などを設けることもできる。
【0026】
ここで、図2に示されるヒートシンク4の両側に設けられているスロット6a,6bと、ヒートシンク5の両側に設けられているスロット6a,6bとは、同一の形状、構造および寸法を有する。そこで、ヒートシンク4の両側に設けられているスロット6a,6bについてのみ以下に説明し、ヒートシンク5の両側に設けられているスロット6a,6bについての説明は省略する。
【0027】
ヒートシンク4の両側には、該ヒートシンク4を囲うように、金属板からなるカバー部材20a,20bが配置されている。具体的には、ヒートシンク4の吸熱面4aの外側に、該吸熱面4aとの間に通信モジュール10(図1)の厚みと略同一の隙間を隔ててカバー部材20aが配置されている。同様に、ヒートシンク4の吸熱面4bの外側に、該吸熱面4bとの間に通信モジュール10(図1)の厚みと略同一の隙間を隔ててカバー部材20bが配置されている。すなわち、ヒートシンク4の一方の吸熱面4aと該吸熱面4aに対向するカバー部材20aの内面とにより、スロット6aが形成されている。また、ヒートシンク4の他方の吸熱面4bと該吸熱面4bに対向するカバー部材20bの内面とにより、スロット6bが形成されている。換言すれば、ヒートシンク4の吸熱面4a,4bにより、スロット6a,6bの一方の内側面が形成されている。また、カバー部材20a,20bの内面により、スロット6a,6bの他方の内側面が形成されている。以下の説明では、カバー部材20a,20bの内面により形成されるスロット6a,6bの内側面を特に“内側面8”と呼ぶ場合がある。また、スロット6a,6bを“スロット6”と総称する場合がある。
【0028】
それぞれのカバー部材20a,20bには、弾性片としての板ばね21が一定間隔で複数設けられている。カバー部材20aに設けられている板ばね21を図3に拡大して示す。図3に示されるように、板ばね21は、カバー部材20aの所定位置に切り込みを形成し、形成された切り込みに囲まれた部分をカバー部材20aの内側に向けて折り曲げることにより形成されている。なお、カバー部材20bに設けられている板ばね21(図2)も上記と同様にして形成されている。よって、図5に示されるように、カバー部材20aに設けられている板ばね21は、カバー部材20aの内面によって形成されるスロット6aの内側面8から突出している。また、カバー部材20bに設けられている板ばね21は、カバー部材20bの内面によって形成されるスロット6bの内側面8から突出している。
【0029】
図1,2に示されるように、それぞれのカバー部材20a,20bに設けられている板ばね21は、スロット6a,6bにおける通信モジュール10の挿入位置と対応する位置に形成されている。本実施形態では、それぞれのスロット6a,6bに5つずつ通信モジュール10が挿入される。そこで、それぞれのカバー部材20a,20bにも5つの板ばね21が等間隔で設けられている。さらに、それぞれの板ばね21は、通信モジュール10がスロット6a,6bに挿入された際に、通信モジュール10の略中央と対向する位置に設けられている。なお、スロット6a,6bに挿入された通信モジュール10と板ばね21との位置関係の詳細については後述する。
【0030】
図4,5に示されるように、通信モジュール10は、モジュール基板11と、モジュール基板11に搭載された光パッケージ12と、光パッケージ12から延びる通信ケーブルとしての光ファイバ13と、これらを収容するモジュールケース14とを備えている。なお、図1では、1つの通信モジュール10からのみ光ファイバ13が引き出されているが、実際には全ての通信モジュール10から同様の光ファイバが引き出されている。
【0031】
モジュールケース14の上下はそれぞれ開口しており、上方の開口部はプラスチック製の蓋15によって閉塞されている。一方、モジュールケース14の下方の開口部は、モジュール側コネクタとしての雄型コネクタ16によって閉塞されている。雄型コネクタ16の一部はモジュールケース14の下方に突出し、スロット6a,6bの底部に設けられている基板側コネクタとしての雌型コネクタ17と嵌合する嵌合部16aを形成している。図4に示されるように、雄型コネクタ16の嵌合部16aの表面には、モジュール基板11に形成されている不図示の配線を介して光パッケージ12と電気的に接続された多数の接続端子が形成されている。一方、図5に示される雌型コネクタ17の内面には、雄型コネクタ16に形成されている接続端子と電気的に接続される多数の接続端子が形成されている。雌型コネクタ17に形成されている接続端子は、マザーボード2(図1図2)に形成されている不図示の配線を介してICチップ3と電気的に接続されている。
【0032】
図4,5に示されるように、通信モジュール10(モジュールケース14)は、第1外側面31および第2外側面32を有する。図5に示されるように、スロット6aに挿入される通信モジュール10は、その第1外側面31がスロット6aの内側面8と対向し、第2外側面32がヒートシンク4の吸熱面4aと対向する向きでスロット6aに挿入される。また、スロット6bに挿入される通信モジュール10は、その第1外側面31がスロット6bの内側面8と対向し、第2外側面32がヒートシンク4の吸熱面4bと対向する向きでスロット6bに挿入される。換言すれば、通信モジュール10の2つの外側面のうち、スロット6に挿入された際に該スロット6の内側面8と対向する外側面が第1外側面31であり、第1外側面31の反対側に位置する外側面が第2外側面32である。
【0033】
図5に示されるように、通信モジュール10の第1外側面31は、通信モジュール10がスロット6に挿入される過程および挿入された後において板ばね21と接触する接触面31aと、板ばね21とは終始接触しない逃げ面31bとから構成されている。すなわち、図4に示されるように、通信モジュール10の第1外側面31には、スロット6(図5)への挿入方向に沿って接触面31aと逃げ面31bとがこの順で設けられている。接触面31aと逃げ面31bとは互いに平行であるが、互いの高さが異なる。具体的には、逃げ面31bは接触面31aに対して第2外側面32寄りに後退している。すなわち、逃げ面31bは接触面31aよりも低い。結果、接触面31aと逃げ面31bとの間には両面に対して垂直な段差31cが存在している。
【0034】
図1に示されるスロット6aに挿入される通信モジュール10を例にとって、通信モジュール10がスロット6に挿入される過程について説明する。通信モジュール10のスロット6aへの挿入が開始されると、図6(A)に示されるように、通信モジュール10の挿入方向下端が板ばね21を通過する。換言すると、通信モジュール10に対して相対的に移動する板ばね21が通信モジュール10の挿入方向下端を通過する。さらに、通信モジュール10の挿入方向下端を通過した板ばね21は、通信モジュール10の挿入に伴って、第1外側面31の逃げ面31bの上を通過する。この間、通信モジュール10と板ばね21とは非接触である。
【0035】
その後、通信モジュール10の挿入方向下端が板ばね21を通過した後の、通信モジュール10のスロット6aへの挿入長が所定長に達すると、図6(B)に示されるように、板ばね21は逃げ面31bと接触面31aとの間の段差31cにぶつかる。すなわち、板ばね21は接触面31aの角にぶつかる。このとき、通信モジュール10に設けられている雄型コネクタ16は、雌型コネクタ17に極めて接近しているが、雌型コネクタ17に到達はしていない。すなわち、通信モジュール10と板ばね21との接触は、雄型コネクタ16と雌型コネクタ17との嵌合が開始される前に開始される。なお、通信モジュール10の挿入方向下端が板ばね21を通過した後の、通信モジュール10のスロット6aへの挿入長とは、板ばね21の下端から通信モジュール10の下端までの挿入方向に沿った直線距離を意味する。以下の説明では、かかる挿入長(直線距離)を“挿入長(L)”と呼ぶ。
【0036】
逃げ面31bと接触面31aとの間の段差31cにぶつかった板ばね21は、通信モジュール10の挿入に伴って段差31cを通過し(乗り越え)、接触面31a上に至る。接触面31a上に至った板ばね21は、通信モジュール10のさらなる挿入に伴って接触面31a上を摺動する。図6(C)に示されるように、通信モジュール10のスロット6aへの挿入が完了したとき、板ばね21は、第1外側面31の略中央に位置している。よって、通信モジュール10の第2外側面32の全面が略均一にヒートシンク4の吸熱面4a(図5)に押し付けられる。また、通信モジュール10のスロット6aへの挿入が完了すると、雄型コネクタ16と雌型コネクタ17との嵌合も完了する。換言すれば、雄型コネクタ16と雌型コネクタ17との嵌合完了をもって、通信モジュール10のスロット6aへの挿入が完了する。ここで、雄型コネクタ16と雌型コネクタ17の嵌合完了とは、雄型コネクタ16が雌型コネクタ17と電気的に導通するまで雌型コネクタ17に挿入されることを意味する。すなわち、雄型コネクタ16の雌型コネクタ17への挿入長が有効嵌合長に達していることを意味する。なお、本実施形態における雄型コネクタ16と雌型コネクタ17の嵌合長は1.0mm、有効嵌合長は0.7mmである。
【0037】
以上のように、板ばね21は、挿入長(L)が所定長に達すると、通信モジュール10の第1外側面31(接触面31a)に接触する。そして、第1外側面31に接触した板ばね21は、通信モジュール10をヒートシンク4に向けて付勢する。換言すれば、板ばね21は、挿入長(L)が所定長に達するまでは通信モジュール10に接触せず、通信モジュール10は付勢されない。また、板ばね21が通信モジュール10に接触した後の通信モジュール10のスロット6への挿入長は、板ばね21の通信モジュール10に対する摺動距離に相当する。すなわち、図6(B)に示される挿入長(L)と図6(C)に示される挿入長(L)との差が板ばね21の通信モジュール10に対する接触長(摺動距離)に相当する。
【0038】
再び図5を参照する。上記のようにしてスロット6に挿入された通信モジュール10は、その第1外側面31に接触する板ばね21によってヒートシンク4に向けて付勢される。よって、ヒートシンク4に対する通信モジュール10の接圧が増加する。この結果、ヒートシンク4を挟んで対向する2つの通信モジュール10の第2外側面32,32がヒートシンク4の吸熱面4a,4bにそれぞれ密着され、通信モジュール10とヒートシンク4との熱的接続が確実に実現される。しかし、図6に示されるように、板ばね21は、通信モジュール10がスロット6に完全に挿入される前から通信モジュール10に接触している。すなわち、通信モジュール10は、挿入長(L)が所定長に達した時点から板ばね21による付勢を受け始める。ここで、板ばね21による付勢方向は、通信モジュール10のスロット6への挿入方向および引き抜き方向と交差する。よって、通信モジュール10がスロット6に挿入される過程における付勢は、通信モジュール10のスロット6への挿入に対して抵抗となる。これは、通信モジュール10がスロット6から引き抜かれる際にも同様である。すなわち、通信モジュール10がスロット6から引き抜かれる過程における付勢は、スロット6からの通信モジュール10の引き抜きに対して抵抗となる。
【0039】
また、通信モジュール10がスロット6に挿入される際およびスロット6から通信モジュール10が引き抜かれる際に、板ばね21は通信モジュール10上を摺動する。よって、板ばね21によって通信モジュール10の表面(第1外側面31の接触面31a)が傷付けられる虞がある。
【0040】
よって、通信モジュール10がスロット6に挿入される際およびスロット6から通信モジュール10が引き抜かれる際における通信モジュール10と板ばね21との動摩擦距離はなるべく短い方が好ましい。すなわち、通信モジュール10に対する板ばね21の接触長(摺動距離)はなるべく短い方が好ましい。かかる観点からは、上記接触長が通信モジュール10のスロット6への挿入方向に沿った全長の1/20以上かつ1/3以下の範囲内であることが好ましく、1/10前後であることがさらに好ましい。そして、上記接触長は、通信モジュール10の第1外側面31に設けられる段差31cと、スロット6に設けられる板ばね21との相対的位置関係によって決定される。よって、段差31cと板ばね21との相対的位置関係を適宜変更することにより、所望の接触長を得ることができる。なお、本実施形態における通信モジュール10のモジュールケース14(図4)は、折り曲げられた板金によって形成されており、板金を部分的に重ね合わせることで段差31cが形成されている。この場合、段差31cの高さは板金の厚みと一致する。また、板金の互いに重ね合わされる部分の形状、位置、大きさなど変更することにより、段差31cと板ばね21との相対的位置関係を変更することができる。もっとも、モジュールケース14の表面を部分的に削って段差31cを形成してもよい。また、モジュールケース14の表面に板金などを重ねて段差31cを形成してもよい。すなわち、モジュールケース14の表面に凸部を形成して段差31cを形成してもよく、凹部を形成して段差31cを形成してもよい。
【0041】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、1つの通信モジュールに対して2つ以上の弾性片が設けられた実施形態も本発明に含まれる。この場合、図7に示されるように、通信モジュール10の挿入方向に沿って2つ以上の板ばね21を一列に配置してもよく、千鳥状に配置してもよい。1つの通信モジュールに対して2つ以上の弾性片を設ける場合には、通信モジュールがなるべく均一に付勢されるように弾性片の配置を工夫することが好ましい。例えば、1つの通信モジュールに対して2つの弾性片を設ける場合には、それら弾性片を通信モジュールの中心から等距離の位置に配置することが好ましい。
【0042】
また、通信モジュール上を摺動する弾性片によって通信モジュールの表面が傷付けられないように、弾性片の形状などを工夫することが好ましい。例えば、図5図7に示される実施形態では、板ばね21の、通信モジュール10と接触する部分が曲面とされている。
【0043】
通信モジュールの第1外側面を構成する接触面および逃げ面の形状や配置などは、スロットに設けられる弾性片の数や配置に応じて適宜変更される。そこで、図8図9に接触面31aおよび逃げ面31bの変形例を示す。もっとも、接触面および逃げ面の形状や配置などが図示されている形状や配置などに限定されないことは勿論である。
【0044】
また、図4などに示される光ファイバ13がモジュールケース14の側面から引き出される実施形態も本発明に含まれる。
【0045】
通信モジュールが熱伝導シートや熱伝導ゴムなどを介して冷却機構に密着する実施形態も本発明に含まれる。例えば、図5に示されるヒートシンク4の吸熱面4aと、これに密着される通信モジュール10の第2外側面32との間に熱伝導シートや熱伝導ゴムなどが配置された実施形態も本発明に含まれる。
【0046】
図1に示されるICチップ3と通信モジュール10との間で光信号が入出力される実施形態も本発明に含まれる。また、外部から通信モジュール10に入力される信号および通信モジュール10が外部へ出力する信号が電気信号である実施形態も本発明に含まれる。また、通信モジュール10がマザーボード2に対して平行に抜き差しされる実施形態も本発明に含まれる。
【0047】
空冷式の冷却機構を有する実施形態も本発明に含まれる。例えば、図2などに示されるヒートシンク4,5に一体または別体の放熱フィンが設けられた実施形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 信号伝送装置
2 マザーボード
3 ICチップ
4,5 ヒートシンク
4a,4b,5a,5b 吸熱面
6,6a,6b スロット
8 (スロットの)内側面
10 通信モジュール
16 雄型コネクタ
17 雌型コネクタ
20a,20b カバー部材
21 板ばね
31 第1外側面
31a 接触面
31b 逃げ面
31c 段差
32 第2外側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9