(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065802
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】研磨布の洗浄方法及びウェーハの研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/017 20120101AFI20170116BHJP
B24B 53/007 20060101ALI20170116BHJP
B24B 37/20 20120101ALI20170116BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
B24B53/017 Z
B24B53/007
B24B37/20
H01L21/304 622M
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-208430(P2013-208430)
(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公開番号】特開2015-71205(P2015-71205A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓也
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−262854(JP,A)
【文献】
特開2002−270555(JP,A)
【文献】
特開2003−229393(JP,A)
【文献】
特開2011−104693(JP,A)
【文献】
米国特許第06155912(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0137191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/017
B24B 37/20
B24B 53/007
H01L 21/304
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを研磨するための研磨布の表面に洗浄液を供給することによって前記研磨布を洗浄する研磨布の洗浄方法であって、
前記洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を前記研磨布の表面に供給しながら、前記研磨布を8時間以上洗浄することを特徴とする研磨布の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液を貯蔵するためのタンクから前記洗浄液を前記研磨布の表面に供給して洗浄した後に洗浄液を前記タンク内に回収することを繰り返して、前記洗浄液を循環させながら前記研磨布を洗浄することを特徴とする請求項1に記載の研磨布の洗浄方法。
【請求項3】
前記水酸化ナトリウム水溶液又は前記水酸化カリウム水溶液の濃度を5〜50%とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨布の洗浄方法。
【請求項4】
ウェーハを研磨布に摺接することで研磨するウェーハの研磨方法であって、
水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を前記研磨布の表面に供給しながら前記研磨布を8時間以上洗浄する洗浄工程と、洗浄後の前記研磨布に前記ウェーハを摺接し研磨する研磨工程を有することを特徴とするウェーハの研磨方法。
【請求項5】
前記洗浄工程において、前記洗浄液を貯蔵するためのタンクから前記洗浄液を前記研磨布の表面に供給して洗浄した後に洗浄液を前記タンク内に回収することを繰り返して、前記洗浄液を循環させながら前記研磨布を洗浄することを特徴とすることを特徴とする請求項4に記載のウェーハの研磨方法。
【請求項6】
前記洗浄工程において使用する前記水酸化ナトリウム水溶液又は前記水酸化カリウム水溶液の濃度を5〜50%とすることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のウェーハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨布の洗浄方法及びその洗浄方法を用いたウェーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、研磨工程において、ウレタン単発泡体研磨布等の研磨布を使用していくと研磨布の発泡内部にスラリー凝集物や、ウェーハから生じる研磨屑が研磨布に蓄積していく。これらの蓄積物が研磨中のウェーハの表面にキズを発生させる要因となっている。
【0003】
特許文献1には、研磨布にドライアイス粒子等を噴射し、スラリー凝集物や研磨屑を叩き出す研磨布の洗浄方法が記載されている。また、特許文献2には、ドレス用砥石を付けたコンディショナー装置で研磨屑等をウェーハ表面から掻き出す洗浄方法が記載されている。更に、特許文献3には、高圧の洗浄水を研磨布表面に供給することで、研磨布内部に溜まった研磨屑等を取り除く洗浄方法が記載されている。従来では、上記のような方法で研磨布を洗浄していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−354948号公報
【特許文献2】特開2003−181756号公報
【特許文献3】特開2010−228058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、長時間研磨に使用した研磨布に対して上記のような従来の研磨布の洗浄方法を実施するだけでは洗浄効果が薄いため、十分に研磨屑を取り除くことができず、研磨布の使用時間と共に研磨後のウェーハの表面のキズの発生率が増加してしまうという問題がある。
図7に、研磨布の使用時間と研磨後のウェーハの表面のキズの発生率を示す。
図7のグラフの横軸は研磨布のライフに対する研磨布の使用時間の相対値(研磨布の使用時間/研磨布のライフ)である。
図7に示すように、定期的に研磨バッチ間等で従来の洗浄方法を用いて研磨布の洗浄を実施しても、研磨布の使用時間の増加と共に、キズの発生率が高くなっていくことがわかる。このように、キズの発生率が高くなってしまった研磨布は、従来の洗浄方法にて洗浄したとしても、キズの発生率が増加していくため、引き続き研磨に使用することは難しいという問題がある。尚、上記した従来の研磨布の洗浄方法は、研磨装置に新たに研磨布を洗浄するための機構を導入する必要が有るため、コストがかかってしまうという問題もある。
【0006】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、研磨布を効果的に洗浄することで研磨布の使用時間の増加に伴う研磨後のウェーハの表面のキズの発生を抑制し、研磨布をより長時間使用することが可能となる研磨布の洗浄方法及びウェーハの研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ウェーハを研磨するための研磨布の表面に洗浄液を供給することによって前記研磨布を洗浄する研磨布の洗浄方法であって、前記洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を前記研磨布の表面に供給しながら、前記研磨布を8時間以上洗浄することを特徴とする研磨布の洗浄方法を提供する。
【0008】
このようにすれば、長時間使用した研磨布であっても、効果的に研磨屑を除去することができる。その結果、研磨布の使用時間の増加に伴う研磨後のウェーハの表面のキズの発生を抑制することができ、従来と比べてより長時間研磨布を使用することができる。
【0009】
このとき、前記洗浄液を貯蔵するためのタンクから前記洗浄液を前記研磨布の表面に供給して洗浄した後に洗浄液を前記タンク内に回収することを繰り返して、前記洗浄液を循環させながら前記研磨布を洗浄することができる。
このようにすれば、洗浄液の使用量を抑えることができるため、コストを抑えることができる。
【0010】
またこのとき、前記水酸化ナトリウム水溶液又は前記水酸化カリウム水溶液の濃度を5〜50%とすることができる。
このような濃度であれば、洗浄液を安全に取り扱えるとともに、研磨布に残った洗浄液が研磨するウェーハに影響を与えることを抑制することができる。更に、研磨布の洗浄時間が長くなり過ぎないので、生産性の低下を抑制することができる。
【0011】
また、本発明によれば、ウェーハを研磨布に摺接することで研磨するウェーハの研磨方法であって、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を前記研磨布の表面に供給しながら前記研磨布を8時間以上洗浄する洗浄工程と、洗浄後の前記研磨布に前記ウェーハを摺接し研磨する研磨工程を有することを特徴とするウェーハの研磨方法を提供する。
【0012】
このようにすれば、長時間使用した研磨布であっても、効果的に研磨屑を除去することができる。その結果、研磨布の使用時間の増加に伴う研磨後のウェーハの表面のキズの発生を抑制することができ、従来と比べてより長時間研磨布を使用することができる。
【0013】
このとき、前記洗浄工程において、前記洗浄液を貯蔵するためのタンクから前記洗浄液を前記研磨布の表面に供給して洗浄した後に洗浄液を前記タンク内に回収することを繰り返して、前記洗浄液を循環させながら前記研磨布を洗浄することができる。
このようにすれば、洗浄液の使用量を抑えることができるため、コストを抑えることができる。
【0014】
またこのとき、前記洗浄工程において使用する前記水酸化ナトリウム水溶液又は前記水酸化カリウム水溶液の濃度を5〜50%とすることができる。
このような濃度であれば、洗浄液を安全に取り扱えるとともに、研磨布に残った洗浄液が研磨するウェーハに影響を与えることを抑制することができる。更に、研磨布の洗浄時間が長くなり過ぎないので、生産性の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の研磨布の洗浄方法及びウェーハの研磨方法であれば、研磨布を効果的に洗浄することで研磨布の使用時間の増加に伴う研磨後のウェーハの表面のキズの発生を抑制し、研磨布をより長時間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の研磨布の洗浄方法の一例を示したフロー図である。
【
図3】両面研磨システムの一例を示した概略図である。
【
図4】本発明のウェーハの研磨方法の一例を示したフロー図である。
【
図5】実施例1−3、比較例1、2において検査したキズの発生率を示す棒グラフである。
【
図6】実施例1−3、比較例1、2における洗浄時間とキズの発生率の関係を示すグラフである。
【
図7】従来の洗浄方法を用いた場合のキズの発生率と研磨布の使用時間の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
ウェーハの研磨において、研磨布の使用時間の増加に伴って、研磨布に研磨屑が蓄積していき、研磨後のウェーハの表面にキズが発生してしまう。この蓄積した研磨屑を除去するために研磨布の洗浄を行うが、従来の洗浄方法では使用時間が長くなった研磨布に対しては洗浄効果が薄いという問題があった。
【0018】
そこで、本発明者はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液から成る洗浄液で8時間以上洗浄することに想到し、本発明を完成させた。
【0019】
以下、本発明の研磨布の洗浄方法及びウェーハの研磨方法について説明する。
まず、本発明の洗浄方法について説明する。ここでは、本発明の研磨布の洗浄方法を両面研磨装置の研磨布の洗浄に適用する場合を例に説明する。
【0020】
図2は、
図3のような両面研磨システム11内の両面研磨装置1である。
図2に示すように、両面研磨装置1は上下に相対向して設けられた上定盤2と下定盤3を備えており、上定盤2と下定盤3には、それぞれ上研磨布4a、下研磨布4bが貼付されている。上定盤2と下定盤3の間の中心部にはサンギヤ5が、周縁部にはインターナルギヤ6が設けられている。シリコンウェーハを両面研磨する際には、シリコンウェーハはキャリア7の保持孔に保持され、上定盤2と下定盤3の間に挟まれる。
【0021】
また、サンギヤ5とインターナルギヤ6の各歯部にはキャリア7の外周歯が噛合しており、上定盤2及び下定盤3が不図示の駆動源によって回転されるのに伴い、キャリア7は自転しつつサンギヤ5の周りを公転する。このとき、キャリア7の保持孔で保持されたシリコンウェーハは、上研磨布4aと下研磨布4bにより両面を同時に研磨される。またこのとき、上定盤穴8から研磨液が供給される。以上のような両面研磨を繰り返し行い、バッチ式で複数のシリコンウェーハを両面研磨する。
【0022】
このように複数のシリコンウェーハを繰り返し両面研磨し、上研磨布4aと下研磨布4bを長時間使い込むことで、それぞれの研磨布に研磨屑が蓄積し、両面研磨後のシリコンウェーハの表裏面にキズが発生してしまう。そのため、研磨布の洗浄を実施する。
【0023】
図3に示すように、まず、循環装置10に具備されたタンク12内に研磨布を洗浄するための洗浄液15を入れる(
図1のS101)。ここで、本発明では洗浄液15として、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を使用する。そして、タンク12内の洗浄液15を上定盤穴8から上研磨布4a及び下研磨布4bの表面に供給する(
図1のS102)。このとき、上定盤2に貼られた上研磨布4aに洗浄液を十分に供給するために、下定盤3から上方に数mmの位置まで上定盤2を下げることが望ましい。供給した洗浄液15を、定盤受け9に流れ落ちた後、タンク12内に回収する(
図1のS103)。そして、回収した洗浄液15をポンプ14によってタンク12から送り出し、フィルタ13を通して不純物を除去した後、再び研磨布に供給する。
【0024】
このように洗浄液15をタンク12から供給しつつ、タンク12に回収することを繰り返し、洗浄液15をタンク12と上研磨布4a及び下研磨布4bとの間を循環させながら上研磨布4a及び下研磨布4bを8時間以上洗浄する。このように洗浄液15を循環させ繰り返し使用すれば、洗浄液15の使用量を抑えることができるため、洗浄コストを抑えることができる。洗浄時間が長ければ長いほど研磨屑をより効果的に溶解して除去できるが、生産性を損なわない程度の時間を上限とすることができる。また、
図3のような研磨剤を循環させながら研磨を行うことができる研磨装置の研磨布を洗浄するのであれば、研磨剤を洗浄液に交換するだけで、上記のように洗浄液を循環させながら洗浄を実施することができる。そのため、新たに研磨布を洗浄する機構を用いて研磨布を洗浄する必要がほとんどなく安価に本発明を実施することができる。
【0025】
このとき、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液の濃度を5〜50%とすることができる。このような濃度であれば、研磨屑を効率的に溶解して除去することができる。また、濃度が50%以下であれば、洗浄液15を安全に取り扱えるとともに、研磨布に残った洗浄液15が研磨するウェーハに悪影響を与えることを抑制することができる。更に、濃度が5%以上であれば、研磨布の洗浄時間が長くなり過ぎないので、生産性の低下を抑えることができる。
【0026】
以上のようにして、洗浄液15として水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を上研磨布4a及び下研磨布4bの表面に供給しながら8時間以上洗浄する。このような研磨布の洗浄方法であれば、長時間使用した研磨布であっても、機械的な洗浄ではなく、化学的に研磨屑を溶解して除去するものなので、研磨布に浸透し、効果的に研磨屑を除去することができる。その結果、研磨布の使用時間の増加に伴う研磨後のウェーハの表面のキズの発生を抑制することができ、従来と比べてより長時間研磨布を使用することができる。
【0027】
次に、本発明のウェーハの研磨方法について説明する。ここでは本発明のウェーハの研磨方法をシリコンウェーハの両面研磨に適用した場合を例に説明する。
まず、上記したように複数のシリコンウェーハを両面研磨装置1で繰り返し両面研磨する(
図4のS201)。このように、上研磨布4aと下研磨布4bを長時間使い込むことで、それぞれの研磨布に研磨屑が蓄積し、両面研磨後のシリコンウェーハの表裏面にキズが発生してしまう。そこで、研磨屑を除去するために洗浄工程を行う。洗浄工程を実施するタイミングは、例えばバッチ毎の両面研磨後のシリコンウェーハの研磨面のキズを検査することでバッチ内のキズの発生率を求め(
図4のS202)、求めたキズの発生率が予め設定しておいた閾値を超えてしまったとき(
図4のS203)とすることができる。
【0028】
洗浄工程において、まず、タンク12内の洗浄液15を上定盤穴8から上研磨布4a及び下研磨布4bの表面に供給する。このとき、上定盤2に貼られた上研磨布4aに洗浄液を十分に浸す為に、下定盤3から数mmの位置まで上定盤2を下げることが望ましい。ここで、本発明では洗浄液15として、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液を使用する。そして、上記したように洗浄液15をタンク12から供給した後、タンク12に回収することを繰り返し、洗浄液15をタンク12と上研磨布4a及び下研磨布4bとの間を循環させながら上研磨布4a及び下研磨布4bを8時間以上洗浄する(
図4のS204)。
【0029】
このようにすれば、洗浄液15の使用量を抑えることができるため、洗浄コストを抑えることができる。また、
図3のような研磨剤を循環させながら研磨を行うことができる研磨装置の研磨布を洗浄するのであれば、研磨剤を洗浄液に交換するだけで、上記のように洗浄液を循環させながら洗浄を実施することができる。そのため、新たに研磨布を洗浄する機構を用いて研磨布を洗浄する必要がほとんどなく安価に本発明を実施することができる。
【0030】
このとき、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液の濃度を5〜50%とすることができる。このような濃度であれば、研磨屑を効率的に溶解して除去することができる。また、濃度が50%以下であれば、洗浄液15を安全に取り扱えるとともに、研磨布に残った洗浄液15が研磨するウェーハに悪影響を与えることを抑制することができる。更に、濃度が5%以上であれば、研磨布の洗浄時間が長くなり過ぎないので、生産性の低下を抑えることができる。
【0031】
次に、洗浄後の研磨布にシリコンウェーハを摺接し研磨する研磨工程を行う(
図4のS205)。ここでは、洗浄後の上研磨布4a及び下研磨布4bにシリコンウェーハを摺接し両面研磨する。
上記洗浄工程で洗浄した後の研磨布であれば、長時間使用した研磨布であっても、従来の洗浄方法では除去しきれなかった研磨屑を効果的に溶解して除去することができている。そのため、研磨布の使用時間の増加に伴う研磨後のウェーハの表面のキズの発生を抑制することができ、従来と比べてより長時間研磨布を使用することができる。
【0032】
上記した研磨布の洗浄方法及びウェーハの研磨方法の一例ではシリコンウェーハを両面研磨する場合を説明したが、当然この場合に限定されることは無い。研磨するウェーハは、シリコンウェーハ以外のウェーハであっても良い。研磨方法は両面研磨に限らず片面研磨の場合であっても当然本発明を適用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
図3に示すような、両面研磨システムを用いて本発明の研磨布の洗浄方法及びウェーハの研磨方法に従って、研磨布の洗浄及びウェーハの研磨を行った。本実施例で使用した研磨布はウレタン単発泡体研磨布を使用した。
まず、単結晶引上装置により引き上げられたシリコン単結晶インゴットをスライスし、シリコンウェーハのエッジ部を面取りし、ラッピングし、残留ひずみを取り除くためにエッチングした直径300mmのウェーハを用意した。
そして、各バッチで研磨した複数のシリコンウェーハを洗浄・乾燥させ、株式会社RAYTEX社製の自動表裏面検査装置RXWB−1200にてシリコンウェーハの裏面のキズの検査をした。
【0035】
ここでバッチ内でのシリコンウェーハのキズの発生率が所定の閾値を超えた時に本発明の洗浄方法に従って、上研磨布及び下研磨布を洗浄した。洗浄液としては、濃度5%の水酸化カリウム水溶液を使用した。更に、研磨布の洗浄時間は8時間とした。
【0036】
洗浄終了後、研磨布の表面を水で洗い流し、ドレッサーにてシーズニングした。その後この研磨布を用いて両面研磨装置にて、25枚の上記と同様のウェーハをラップ工程起因のひずみを除去するのに十分な研磨代で加工した。研磨剤としてはコロイダルシリカ研磨剤を用いた。その後、研磨したウェーハを洗浄・乾燥させ、株式会社 RAYTEX社製の自動表裏面検査装置RXWB−1200にてウェーハの裏面のキズの検査をした。
図5、6にキズの発生率を示す。
【0037】
その結果、
図5、6に示すように、洗浄後の研磨布で研磨したウェーハの表面のキズ発生率は約20%となり、後述する比較例1、2に比べてキズの発生率が大幅に下がっていることがわかった。
このように、長時間使用しキズの発生率が高くなってしまった研磨布であっても本発明の洗浄方法及び研磨方法を実施すればキズの発生率を低く抑えることができ、従来よりも更に研磨布を長く使用できることが確認できた。
【0038】
(実施例2)
洗浄時間を12時間としたこと以外、実施例1と同様な条件に加え、実施例1と同様な方法で研磨布の洗浄及びウェーハの研磨を行い、キズの発生率を検査した。
その結果、
図5、6に示すようにキズの発生率を14%程度にすることができ、実施例1よりも更にキズの発生率を低く抑えることができた。これは、洗浄時間を実施例1より、長くしたためである。
【0039】
(実施例3)
洗浄時間を24時間としたこと以外、実施例1と同様な条件に加え、実施例1と同様な方法で研磨布の洗浄及びウェーハの研磨を行い、キズの発生率を検査した。
その結果、
図5、6に示すようにキズの発生率を10%にすることができ、実施例1、2よりも更にキズの発生率を低く抑えることができた。
【0040】
(比較例1)
研磨布の洗浄時間を6時間としたこと以外、実施例1と同様な条件に加え、実施例1と同様な方法で研磨布の洗浄及びウェーハの研磨を行い、キズの発生率を検査した。
その結果、
図5、6に示すようにキズの発生率は約40%となり、実施例1、2、3よりも大幅に悪化してしまった。
【0041】
(比較例2)
研磨後のシリコンウェーハの表面のキズの発生率が所定の閾値を超えても本発明の研磨布の洗浄方法を実施しなかったこと以外、実施例1と同様な条件で
ウェーハの研磨を行い、実施例1と同様な方法でキズの発生率を検査した。
その結果、
図5、6に示すようにキズの発生率は約45%となり、実施例1、2、3よりも大幅に悪化してしまった。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0043】
1…両面研磨装置、 2…上定盤、 3…下定盤、
4a…上研磨布、 4b…下研磨布、 5…サンギヤ、 6…インターナルギヤ、
7…キャリア、 8…上定盤穴、 9…定盤受け、 10…循環装置、
11…両面研磨システム、 12…タンク、 13…フィルタ、
14…ポンプ、 15…洗浄液。