特許第6065988号(P6065988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6065988トリス(トリメチルシロキシ)シランビニル系モノマー及びその用途
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  • 特許6065988-トリス(トリメチルシロキシ)シランビニル系モノマー及びその用途 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6065988
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】トリス(トリメチルシロキシ)シランビニル系モノマー及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 30/08 20060101AFI20170116BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20170116BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20170116BHJP
   C08F 220/54 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C08F30/08
   G02C7/04
   C08F290/06
   C08F220/54
【請求項の数】16
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-547975(P2015-547975)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-501948(P2016-501948A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013074921
(87)【国際公開番号】WO2014093772
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年11月16日
(31)【優先権主張番号】61/737,218
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】萩原 守
(72)【発明者】
【氏名】一戸 省二
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04711943(US,A)
【文献】 特開2001−026593(JP,A)
【文献】 特開2014−111744(JP,A)
【文献】 特開平06−116390(JP,A)
【文献】 特開平08−164679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 30/08
C08F130/08
C08F230/08
C08F290/00
C08F299/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式(I)中、q1は6〜20の整数、R1は水素又はメチル、R2は20以下の炭素原子を含むアルカン又はシクロアルカンのジラジカルであるか、それらの主鎖中に1つ以上のエーテル結合、チオ結合、アミン結合、カルボニル結合、又はアミド結合を有している基である。]
で表されるTRIS含有ビニル系モノマー。
【請求項2】
2は炭素数2〜5のアルカンジラジカルである、請求項1記載のTRIS含有ビニル系モノマー。
【請求項3】
水に対して少なくとも約5重量%の溶解度又は分散度を有する、請求項1又は2記載のTRIS含有ビニル系モノマー。
【請求項4】
水に対して少なくとも約5重量%の溶解度又は分散度を有し、請求項1、2又は3記載のTRIS含有ビニル系モノマーから誘導される単量体単位を含む、化学線架橋性シリコーン含有プレポリマー。
【請求項5】
(1)少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤から誘導される架橋性単位及び/又はポリシロキサン含有ビニル系モノマーから誘導されるポリシロキサン単位、(2)少なくとも1つの親水性ビニル系モノマーから誘導される親水性単位、(3)チオール基以外の第1の反応性官能基を有する連鎖移動剤及び/又はエチレン性不飽和基以外の第2の反応性官能基を有するビニル系モノマーから誘導される重合性単位であって、各重合性単位が1つの重合性単位に第1又は第2の反応性官能基を介して共有結合しているエチレン性不飽和基を含む重合性単位を含む請求項4記載のプレポリマー。
【請求項6】
更に(4)少なくとも1つの非シリコーン架橋剤から誘導される非シリコーン架橋性単位を含む請求項5記載のプレポリマー。
【請求項7】
更に(5)紫外線吸収性ビニル系モノマーから誘導される紫外線吸収性単位を含む請求項5記載のプレポリマー。
【請求項8】
親水性ビニル系モノマーから誘導される親水性単量体単位と、請求項1〜3のいずれか1項記載のTRIS含有ビニル系モノマーから誘導される単量体単位と、を含むシリコーンヒドロゲル材料。
【請求項9】
請求項8記載のシリコーンヒドロゲル材料を含むソフトコンタクトレンズであって、完全に水和した状態で約20重量%〜約75重量%の含水率と、少なくとも約40barrerの酸素透過度(Dk)と、約0.1MPa〜約2.0MPaの弾性率と、を有するソフトコンタクトレンズ。
【請求項10】
式(II)のポリオキシエチレン(メタ)アクリレートと式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランとを、溶媒の存在下又は非存在下で且つ触媒の存在下において反応させる工程を含む、請求項1、2又は3記載のシリコーンビニル系モノマーの製造方法。
【化2】

[式中、R1は水素又はメチル基、q1は6〜20の整数、R2は20以下の炭素原子を含むアルカン又はシクロアルカンのジラジカルであるか、それらの主鎖中に1つ以上のエーテル結合、チオ結合、アミン結合、カルボニル結合、又はアミド結合を有している基である。]
【請求項11】
前記反応工程はケトン溶媒の中で行う請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記触媒はアミン触媒、錫触媒、及び/又は鉄触媒である請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
前記触媒は式(II)のポリオキシエチレン(メタ)アクリレート及び式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランの全重量に対して約10〜約1,000ppmの量で存在する請求項10、11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記反応工程は、前記式(II)のポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、前記式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン及び反応溶媒を反応器内に仕込んだ後、これに触媒を加えて反応混合物を形成することによって行う請求項10〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記反応工程は、前記式(II)のポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、反応溶媒及び触媒を反応器内に仕込んだ後、前記式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランを滴下添加して反応混合物を形成することによって行い、該滴下添加は約−10℃〜約30℃の温度で開始し、該滴下添加の間、前記反応混合物の内部温度が50℃より低くなるように調整する請求項10〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランに対する前記式(II)のポリオキシエチレン(メタ)アクリレートのモル比が約1.0〜約1.2である請求項10〜15のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオキシエチレンセグメントを有するトリス(トリメチルシロキシ)シランビニル系モノマーの1つのクラス、及びコンタクトレンズなどの医療器具を製造するその用途に関する。更に、本発明はこのクラスのトリス(トリメチルシロキシ)シランビニル系モノマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル(「TRIS」)基を有するビニル系モノマー、例えば、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピルアクリレート、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピルメタクリレート、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピルアクリルアミド、トリス(トリメチルシリルオキシ)シリルプロピルメタクリルアミド、トリス(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメートなどは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造するのに広く使用されているが、それは、このTRIS含有ビニル系モノマーがレンズに清澄性と優れたレンズ特性を与えながらレンズ材料の酸素透過度を高めることができるからである。とりわけ、TRIS含有ビニル系モノマーの存在は、レンズの取扱いの際のレンズ折れ痕の消失のためにも重要である可能性がある。しかし、コンタクトレンズ業界で使用され、及び/又は市場に出回っているTRIS含有ビニル系モノマーの多くは一般に疎水性であって、シリコーンヒドロゲルレンズ用配合物の親水性成分とは適合性が無く、また、水性シリコーンヒドロゲルレンズ用配合物の製造には適していない。加えて、重合しなかったTRIS含有ビニル系モノマーは、レンズ抽出工程において有機溶媒を用いて成形済みレンズから除去しなければならない。このようなレンズ抽出工程は、生産費を増大させるばかりでなく、環境保護の観点から好ましくない。
【0003】
従って、水に対して十分な可溶性を有すると共に、環境に優しいレンズ製造工程に使用可能なTRIS含有ビニル系モノマーが、なお、求められている。
【発明の概要】
【0004】
一つの態様において、本発明は、ただ1つのエチレン性不飽和基と該エチレン性不飽和基にポリオキシエチレン結合鎖を介して共有結合したトリス(トリメチルシリルオキシ)シリル基とを含むTRIS含有ビニル系モノマーを提供する。
【0005】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のTRIS含有ビニル系モノマーを含む重合性組成物の重合生成物であるポリマーを提供する。
【0006】
更なる態様において、本発明は、本発明のTRIS含有ビニル系モノマーを製造する方法を提供する。この方法は、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレートとイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランとを、溶媒の存在下又は非存在下、且つ、触媒の存在下において反応させる工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】好ましいTRIS含有ビニル系モノマーの1H−NMRスペクトルを示す図である。
【発明の実施態様の詳細な説明】
【0008】
別に定義しない限り、本明細書で使用する技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者に通常理解されているのと同じ意味を持つ。一般に、本明細書で使用する命名法及び実験室手順は公知であり、当技術分野で普通に使用されている。これらの手順のために、当技術分野や様々な一般参考文献において提供されているような従来法が使用される。用語が単数形で使用されている場合、本発明者らはその用語の複数形をも考えている。本明細書で使用する命名法及び以下に説明する実験室手順は、公知であって当技術分野で普通に使用されているものである。
【0009】
本明細書で使用する「約」は「約」と呼称される数が、その数に対してその数の1〜10%をプラス又はマイナスしたものを含む。
【0010】
「医療器具」とはその操作の過程において患者の組織、血液、又はその他の体液に接触する表面を有する器具のことをいう。医療器具の例としては、(1)例えば血液酸素添加器、血液ポンプ、血液センサー、血液輸送用配管などのように血液に接触し、その後にその血液が患者に戻されるもののように、手術に使用される体外器具、(2)血管又は心臓に植え込まれる人工血管、ステント、ペースメーカーリード線、心臓弁などの、人体又は動物の体に植え込まれる人工器官、(3)血管又は心臓にモニタリング又は修復の目的で導入されるカテーテル、ガイドワイヤなどの一時的な血管内使用のための器具、及び(4)眼科用器具が挙げられる。
【0011】
本明細書で使用する「眼科用器具」とは、目に接して、又は目の周りあるいは目の近傍にて使用する、コンタクトレンズ(ハード又はソフト)、眼内レンズ、角膜アンレー、その他の眼科用器具(例えば、ステント、緑内障シャントなど)のことをいう。
「コンタクトレンズ」とは、装着者の目に接して、又は目の中に置くことができる構造物のことをいう。コンタクトレンズは使用者の視力を修正、改善又は変更することができるが、必ずしもそうである必要はない。コンタクトレンズは、当技術分野で知られているか又は後に開発される適当ないかなる材料のものでもよく、ソフトレンズ、ハードレンズ、又はハイブリッドレンズであり得る。「シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ」とは、シリコーンヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズのことをいう。
【0012】
「ヒドロゲル」又は「ヒドロゲル材料」とは、水に不溶であるが完全に水和した時には少なくとも10重量%の水を吸収することのできるポリマー材料のことをいう。
「シリコーンヒドロゲル」とは、少なくとも1つのシリコーン含有モノマー又は少なくとも1つの架橋可能なシリコーン含有プレポリマーを含む重合性組成物の共重合によって得られるシリコーン含有ヒドロゲルのことをいう。
【0013】
本明細書で使用する「親水性」とは、脂質とよりも水とより容易に結びつく材料又はその一部を表す。
【0014】
「ビニル系モノマー」とは、ただ1つのエチレン性不飽和基を有し、溶媒に可溶である化合物のことをいう。
【0015】
溶媒中の化合物又は材料についての「可溶(性)」という用語は、その化合物又は材料が室温(即ち、約20℃〜約30℃の温度)においてその溶媒に溶解して少なくとも約1重量%の濃度の溶液を生じることができることを意味する。
溶媒中の化合物又は材料についての「不溶(性)」という用語は、その化合物又は材料が室温(上記の定義による)においてその溶媒に溶解できた時の溶液の濃度は0.005重量%未満であることを意味する。
【0016】
本出願で使用する「エチレン性不飽和基」という用語は、ここでは広い意味で使われており、少なくとも1つの>C=C<基を含むいかなる基をも包含することを意図している。エチレン性不飽和基の例としては、
【化1】

アリル基、ビニル基、スチレニル基、又はその他のC=C含有基が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0017】
本出願で使用する「(メタ)アクリルアミド」という用語は、メタクリルアミド及び/又はアクリルアミドのことをいい、「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及び/又はアクリレートのことをいう。
【0018】
重合性組成物、プレポリマー又は材料の硬化、架橋又は重合について本明細書で使用する「化学線による」(actinically)は、硬化(例えば、架橋及び/又は重合)が例えば紫外線照射、電離放射線(例えば、γ線又はX線照射)、マイクロ波照射などの化学線照射によって行われることを意味する。熱硬化又は化学線硬化方法は当業者には周知である。
【0019】
本出願で使用する「親水性ビニル系モノマー」という用語は、水溶性であるかあるいは室温で少なくとも10重量%の水を吸収できるホモポリマーを形成することのできるビニル系モノマーのことをいう。
本出願で使用する「疎水性ビニル系モノマー」という用語は、ホモポリマーとして、室温で水に不溶で10重量%未満の水しか吸収できないポリマーを典型的に生じるビニル系モノマーのことをいう。
本出願で使用する「TRIS」とは、−Si−[OSi(CH333という基、即ちトリス(トリメチルシリルオキシ)シリル基のことをいう。
【0020】
「プレポリマー」とは、2つ以上又はそれ以上のエチレン性不飽和基を含む出発ポリマーであって、化学線又は熱によって硬化する(例えば、架橋する)ことができて出発ポリマーよりも大幅に高い分子量を持つ架橋ポリマーを生じる出発ポリマーのことをいう。
【0021】
本出願で使用する「架橋剤」という用語は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有し室温で溶媒に可溶である化合物又はポリマーのことをいう。「架橋剤」とは、約700ダルトン又はそれ以下の分子量を有する架橋剤のことをいう。
【0022】
「ポリシロキサン」とは、
【化2】

[式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は互いに独立にC1−C10アルキル、C1−C4アルキル置換又はC1−C4アルコキシ置換されたフェニル、C1−C10フルオロアルキル、C1−C10フルオロエーテル、C6−C18アリール基、又は−alk−(OCH2CH2n1−OR11(式中、alkはC1−C62価アルキレン基、R11は水素又はC1−C5アルキル、n1は1〜10の整数)、m1及びm2は互いに独立に0〜50の整数であって、(m1+m2)は1〜100である。]というただ1つのポリシロキサンセグメントを含む化合物のことをいう。
「鎖延長したポリシロキサン」とは、結合(linkage)によって分けられた少なくとも2つのポリシロキサンセグメントを含む化合物のことをいう。
「ポリシロキサン含有架橋剤」とは、少なくとも2つのエチレン性不飽和基と少なくとも1つのポリシロキサンセグメントを有する化合物のことをいう。
【0023】
本出願で使用する「ポリマー」という用語は、1つ以上のモノマー又はプレポリマーを重合/架橋することによって生成した材料を意味する。
【0024】
本出願で使用するポリマー材料(モノマー材料又はマクロマー材料を含む)の「分子量」という用語は、別に特に明記するかあるいは試験条件が別の様子を示すのでない限りは、重量平均分子量のことをいう。
【0025】
「アルキル」という用語は、直鎖状又は分岐鎖状アルカン化合物から水素原子を除去することによって得られる1価の基のことをいう。1つのアルキル基は有機化合物内の他の1つの基と1つの結合(bond)を形成する。
【0026】
「アルキレン」又は「アルカンジラジカル」という用語は、アルキルから1つの水素原子を除去することによって得られる2価の基のことをいう。1つのアルキレン基は有機化合物内の他の基と2つの結合を形成する。
【0027】
「シクロアルカンジラジカル」という用語は、置換又は未置換シクロアルカンから2つの水素原子を除去することによって得られる2価の基のことをいう。1つのシクロアルカンジラジカルは有機化合物内の他の基と2つの結合を形成する。
【0028】
本出願で使用する2価アルキレン基又はアルキル基又はシクロアルカンについての「置換(された)」という用語は、該2価アルキレン基又は該アルキル基又は該シクロアルカンジラジカルが、そのアルキレン又はアルキル基又はシクロアルカンジラジカルの1つの水素原子を置換する少なくとも1つの置換基を含むことを意味するのであって、その少なくとも1つの置換基はヒドロキシル基、カルボキシル基、−NH2、スルフヒドリル基、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基、C1−C4アルキルチオ基(アルキルスルフィド)、C1−C4アシルアミノ基、C1−C4アルキルアミノ基、ジ−C1−C4アルキルアミノ基、ハロゲン原子(Br又はCl)、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる。
【0029】
本明細書で使用する「流体」という用語は、材料が液体のように流れることができることを示す。
【0030】
本明細書で使用する「多数の」という用語は、3つ以上のことをいう。
【0031】
遊離基開始剤は光開始剤又は熱開始剤のいずれであることもできる。「光開始剤」は光の使用によって遊離基架橋/重合反応を開始する化学薬品のことをいう。「熱開始剤」とは熱エネルギーの使用によってラジカル架橋/重合反応を開始する化学薬品のことをいう。
【0032】
「紫外線吸収性ビニル系モノマー」とは、当業者に理解されるように、エチレン性不飽和基と、200nm〜400nmの範囲の紫外線を吸収するか又は遮ることのできる紫外線吸収性部分とを含む化合物のことをいう。
【0033】
「化学線の空間的限定(spatial limitation)」とは、線(ray)の形態のエネルギー放射を例えばマスク、スクリーン又はそれらの組み合わせによって方向付けて、空間的に限定するように、よく画定された周辺境界を有する領域に当てる行動又は過程のことをいう。紫外線の空間的限定を得るには、米国特許第6,800,225号(図1図11)、同第6,627,124号(図1図9)、同第7,384,590号(図1図6)、及び同第7,387,759号(図1図6)(これらの文献は全体として参照により本明細書に組み入れられる)の図面に概略的に示されるように、放射線(例えば、紫外線)透過性領域、該放射線透過性領域を取り囲む放射線(例えば、紫外線)不透過性領域、及び該放射線不透過性領域と該放射線透過性領域との境界である投影輪郭を有するマスク又はスクリーンを使用する。マスク又はスクリーンを使用すると、マスク又はスクリーンの投影輪郭で画定された横断面形状を有する放射線(例えば、紫外線)ビームを空間的に投射することができる。こうして投射された放射線(例えば、紫外線)ビームは、型の第1の成型面から第2の成型面までの投射ビームの径路に位置するレンズ形成材料に入射する放射線(例えば、紫外線)を限定する。こうして得られるコンタクトレンズは、第1の成型面により画定された前面と、第2の成型面により画定された後面と、投射された紫外線ビームの断面形(即ち、放射線の空間的限定)により画定されたレンズ縁とを含む。架橋に使用される放射線は放射エネルギー、特に紫外線、γ線、電子線又は熱線であり、該放射エネルギーは、一方では良好な限定を達成するため、他方ではエネルギーの効率的利用のため、実質的に平行なビームの形態であるのが好ましい。
【0034】
材料に固有の「酸素透過度(oxygen permeability)」Dkは、酸素が材料を通過する速度である。本出願でヒドロゲル(シリコーン又は非シリコーン)あるいはコンタクトレンズについて使用する「酸素透過度(Dk)」という用語は、測定された酸素透過度(Dk)を、後述の実施例に示す手順に従って、境界層効果による酸素フラックスに対する表面抵抗に関して補正したものを意味する。酸素透過度は従来、バーラー(barrer)の単位で表示されているが、「バーラー」は[(cm3酸素)(mm)/(cm2)(秒)(mmHg)]×10-10と定義される。
【0035】
レンズ又は材料の「酸素透過率(oxygen transmissibility)」Dk/tは、測定対象領域に亘ってt(mm単位)の平均厚さを有する特定のレンズ又は材料を酸素が通過する速度である。酸素透過率は従来、バーラー/mm(barrer/mm)の単位で表示されているが、「バーラー/mm(barrer/mm)」は[(cm3酸素)/(cm2)(秒)(mmHg)]×10-9と定義される。
【0036】
本発明のTRIS含有ビニル系モノマーについての「水溶性又は水処理可能な」という用語は、そのビニル系モノマーが室温(約22℃〜約28℃)において水に対して約1重量%〜約70重量%の溶解度又は分散度を有することを意味する。
【0037】
本発明のTRIS含有ビニル系モノマーについての「水に対する溶解度及び/又は分散度」という用語は、室温(約22℃〜約28℃)においてTRIS含有ビニル系モノマーが水に溶解及び/又は分散して透明な水溶液又は400〜700nmの範囲で85%以上の光透過率を有するやや曇った水溶液を形成した時の濃度(重量パーセント)を意味する。
【0038】
本特許出願における「カップリング反応」は、当業者に周知の様々な反応条件下において、カップリング剤の存在下又は非存在下で、一対の相応する官能基が反応して共有結合を形成する際のその任意の反応を表すことを意図している。該様々な反応条件の例としては、酸化還元条件、脱水縮合条件、付加条件、置換条件、ディールス・アルダー反応条件、カチオン架橋条件、開環条件、エポキシ硬化条件、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
アミノ基(−NHR’、但しR’はH又はC1−C4アルキル)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基(−COX、但しXはCl,Br,又はI),酸無水物基、アルデヒド基、アズラクトン基、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、及びチオール基から好ましくは成る群から選んだ一対の相応する共反応性官能基の間の様々な反応条件下でのカップリング反応の非限定的例を、説明の目的で以下に示す。アミノ基はアルデヒド基と反応してシッフ塩基を形成するが、シッフ塩基は更に還元されてもよい。アミノ基−NHR’は酸塩化物又は臭化物基あるいは酸無水物基と反応してアミド結合(−CO−NR’、但しR’は上記の定義の通り)を形成する。アミノ基−NHR’はイソシアネート基と反応して尿素結合(−NR’−C(O)−NH−、但しR’は上記の定義の通り)を形成する。アミノ基−NHR’はエポキシ又はアジリジン基と反応してアミン結合(−C−NR’−、但しR’は上記の定義の通り)を形成する。アミノ基−NHR’はアズラクトン基と反応(開環)してアルキレン−ジアミド結合(−C(O)NH−アルキレン−C(O)NR’−、但しR’は上記の定義の通り)を形成する。アミノ基−NHR’はカップリング剤−カルボジイミド(例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、又はそれらの組み合わせ)の存在下でカルボン酸基と反応してアミド結合を形成する。アミノ基−NHR’はN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基と反応してアミド結合を形成する。ヒドロキシルはイソシアネートと反応してウレタン結合を形成する。ヒドロキシルはエポキシ又はアジリジンと反応してエーテル結合(−O−)を形成する。ヒドロキシルは酸塩化物又は臭化物基あるいは酸無水物基と反応してエステル結合を形成する。ヒドロキシル基は触媒の存在下でアズラクトン基と反応してアミドアルキレンカルボキシ結合(−C(O)NH−アルキレン−C(O)−O−)を形成する。カルボキシル基はエポキシ基と反応してエステル結合を形成する。チオール基(−SH)はイソシアネートと反応してチオカルバメート結合(−N−C(O)−S−)を形成する。チオール基はエポキシ又はアジリジンと反応してチオエーテル結合(−S−)を形成する。チオール基は酸塩化物又は臭化物基あるいは酸無水物基と反応してチオエステル結合を形成する。チオール基は触媒の存在下でアズラクトン基と反応して結合(−C(O)NH−CR34−(CH2)p−C(O)−S−)を形成する。チオール基はチオール−エン反応条件下でチオール−エン反応に基づいてビニル基と反応してチオエーテル結合(−S−)を形成する。チオール基は適当な反応条件下でマイケル付加に基づいてアクリロイル又はメタクリロイル基と反応してチオエーテル結合を形成する。
【0040】
また、前記カップリング反応に、2つの反応性官能基を有するカップリング剤を使用してもよいことも理解される。2つの反応性官能基を有するカップリング剤は、ジイソシアネート、二酸ハロゲン化物、ジカルボン酸化合物、ハロゲン化二酸化合物、ジアズラクトン化合物、ジエポキシ化合物、ジアミン、又はジオールであり得る。カップリング反応(例えば、本出願にて先に説明したいずれか)及びその条件を選択して1つ以上のエチレン性不飽和基を末端に有するポリシロキサンを調製することは、当業者にとって周知である。例えば、2つのヒドロキシル、2つのアミノ基、2つのカルボキシル基、2つのエポキシ基、又はそれらの組み合わせのカップリングに、ジイソシアネート、二酸ハロゲン化物、ジカルボン酸、ジアズラクトン、又はジエポキシ化合物を使用することができる。また、2つのイソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、カルボン酸基、酸ハロゲン化物基、又はアズラクトン基又はそれらの組み合わせのカップリングに、ジアミン又はジヒドロキシル化合物を使用することができる。
【0041】
適切なC4−C24ジイソシアネートを本発明において使用することができる。好ましいジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチル−1,6−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレン4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,3−ビス−(4,4’−イソシアノメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0042】
本発明においては、適切なジアミンはいずれも使用できる。有機ジアミンは、直鎖状又は分岐鎖状C2−C24脂肪族ジアミン、C5−C24環式脂肪族又は脂肪族−環式脂肪族ジアミン、あるいはC6−C24芳香族又はアルキル−芳香族ジアミンであり得る。好ましい有機ジアミンは、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びイソホロンジアミンである。
【0043】
本発明においては、適切な二酸ハロゲン化物はいずれも使用できる。好ましい二酸ハロゲン化物の例としては、フマリルクロリド、スベロイルクロリド、スクシニルクロリド、フタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリド、セバコイルクロリド、アジポイルクロリド、トリメチルアジポイルクロリド、アゼラオイルクロリド、ドデカンジオン酸クロリド、コハク酸クロリド、グルタル酸クロリド、オキサリルクロリド、二量体酸クロリド、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0044】
本発明においては、適切なジエポキシ化合物はいずれも使用できる。好ましいジエポキシ化合物の例は、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、及びそれらの組み合わせである。このようなジエポキシ化合物は市販されていて入手可能である(例えば、ナガセケムテックス社(Nagase ChemteX Corporation)からのDENACOLシリーズのジエポキシ化合物類)。
【0045】
本発明においては、適切なC2−C24ジオール(即ち、2つのヒドロキシル基を有する化合物)はいずれも使用できる。好ましいジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、種々のペンタンジオール類、種々のヘキサンジオール類、種々のシクロヘキサンジオール類、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0046】
本発明においては、適切なC3−C24ジカルボン酸化合物はいずれも使用できる。好ましいジカルボン酸化合物の例としては、直鎖状又は分岐鎖状C3−C24脂肪族ジカルボン酸、C5−C24環式脂肪族又は脂肪族−環式脂肪族ジカルボン酸、C6−C24芳香族又は芳香脂肪族(araliphatic)ジカルボン酸、アミノ又はイミド基あるいはN−複素環を含むジカルボン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。適切な脂肪族ジカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、ジメチルマロン酸、オクタデシルコハク酸、トリメチルアジピン酸、及び二量体酸(オレイン酸のような不飽和脂肪族カルボン酸の二量化生成物)である。適切な環式脂肪族ジカルボン酸の例は、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−及び1,4−ジカルボキシルメチルシクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸である。適切な芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、o−フタル酸、1,3−,1,4−,2,6−又は2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−5−カルボキシル−3−(p−カルボキシフェニル)インダン、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、ビス−p−(カルボキシルフェニル)メタンである。
【0047】
本発明においては適切なC10−C24ジアズラクトン化合物はいずれも使用できる。このようなジアズラクトン化合物の例は、米国特許第4,485,236号(全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているものである。
【0048】
上記カップリング反応の反応条件は教科書類で教示されており、当業者にとって周知である。
【0049】
本出願で1つ以上の反応性官能基(例えば、アミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物基、及び/又はエポキシ基)を有する化合物あるいはポリマー又はコポリマーについて使用する「エチレン性官能化された」(ethylenically functionalized)という用語は、1つ以上のエチレン性不飽和基が、エチレン性官能化性ビニル系モノマーと化合物あるいはポリマー又はコポリマーとをカップリング反応条件下で反応させることによって、該化合物あるいはポリマー又はコポリマーの官能基に共有結合で連結される過程、あるいはその過程の生成物を意味する。
【0050】
本特許出願の全体を通じて、「エチレン性官能化性ビニル系モノマー」とは、当業者に周知のカップリング(又は架橋)反応に関与することのできる1つの反応性官能基を有するビニル系モノマーのことをいう。エチレン性官能化性ビニル系モノマーの例としては、C2−C6ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリレート、C2−C6ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、アリルアミン、アミノ−C2−C6アルキル(メタ)アクリレート、C1−C6アルキルアミノ−C2−C6アルキル(メタ)アクリレート、ビニルアミン、アミノ−C2−C6アルキル(メタ)アクリルアミド、C1−C3アルキルアミノ−C2−C6アルキル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸、C1−C4アルキルアクリル酸(例えば、メタクリリックエチルアクリル酸、プロピルアクリル酸、ブチルアクリル酸)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)−メチル]アクリルアミド、N,N−2−アクリルアミドグリコール酸、β−メチルアクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、アンゲリカ酸、ケイ皮酸、1−カルボキシ−4−フェニルブタジエン−1,3、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、アジリジニルC1−C12アルキル(メタ)アクリレート(例えば、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、3−(1−アジリジニル)プロピル(メタ)アクリレート、4−(1−アジリジニル)ブチル(メタ)アクリレート、6−(1−アジリジニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、又は8−(1−アジリジニル)オクチル(メタ)アクリレート)、グリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ハロゲン化(メタ)アクリロイル基(CH2=CH−COX又はCH2=CCH3−COX、但しXはCl又はBr)、(メタ)アクリル酸のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル、C1−C6イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、アズラクトン含有ビニル系モノマー類(例えば、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−エチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジブチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ドデシル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ジフェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4,4−テトラメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ジエチル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4−メチル−4−ノニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−フェニル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−イソプロペニル−4−メチル−4−ベンジル−1,3−オキサゾリン−5−オン、2−ビニル−4,4−ペンタメチレン−1,3−オキサゾリン−5−オン、及び2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−6−オンであって、好ましいアズラクトン含有ビニル系モノマーは、2−ビニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン(VDMO)及び2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン−5−オン(IPDMO)である)、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0051】
本発明は、概して、TRIS含有ビニル系モノマーの1つのクラス、及びポリマー(好ましくはシリコーンヒドロゲル材料)を製造する該ビニル系モノマーの用途、並びに医療器具(好ましくはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)に関する。本発明のTRIS含有ビニル系モノマーは、ただ1つの(メタ)アクリロイルオキシ基、ただ1つのトリス(トリメチルシリルオキシ)シリル基、及び該(メタ)アクリロイルオキシ基と該トリス(トリメチルシリルオキシ)シリル基との間の1つのポリオキシエチレン含有結合を含む。本発明のTRIS含有ビニル系モノマーは、ポリオキシエチレンセグメントの分子質量を変えることによって、所望の溶媒、例えば水又は広範囲の溶媒類の任意の溶媒に対して所望の溶解度(又は分散度)を有するように調整することができる。このTRIS含有ビニル系モノマーは、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、環境に対してより優しい態様(例えば、水性レンズ用配合物の使用及び/又はレンズ抽出工程での溶媒としての水の使用)で製作するための製造工程に使用することができる。
【0052】
一つの態様において、本発明は式(I)
【化3】

[式(I)中、q1は6〜20の整数、R1は水素又はメチル、R2は20以下の炭素原子を有すると共に、主鎖中に1つ以上のエーテル結合、チオ結合、アミン結合、カルボニル結合、又はアミド結合を有してもよいアルカン又はシクロアルカンのジラジカル(2価の基)である。]
で表されるTRIS含有ビニル系モノマーを提供する。
【0053】
式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーは、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート及びイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランから調製することができる。後述のように、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート(CH2=CH−CO−(OCH2CH2n−OH又はCH2=CCH3−CO−(OCH2CH2n−OH)のヒドロキシル基は、触媒(例えば、トリエチルアミンなどのアミン触媒、ジブチル錫ジラウレートなどの錫触媒、トリス(2,4−ペンタンジオネート鉄(III)などの鉄触媒など)の存在下において、イソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランのイソシアネート基と反応してウレタン結合を形成することができる。
【0054】
好ましい実施態様においては、式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーは水に対して少なくとも約5重量%、好ましくは少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約20重量%の水への溶解度又は分散度を有する。
【0055】
上記のように定義された式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーは、ポリマー、好ましくはシリコーン含有化学線架橋性プレポリマー又はシリコーンヒドロゲルポリマー材料の製造に使用することができ、それは本発明のもう一つの態様である。
もう一つの態様においては、本発明は上記のように定義された式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーから誘導されたモノマー単位を含むポリマーに関する。
【0056】
本発明のこの態様においては、ポリマーは溶媒に可溶又は不溶なコポリマー、好ましくは化学線架橋性プレポリマー又はシリコーンヒドロゲル材料であり得る。
【0057】
当業者は、いずれかの公知の遊離基重合機構によって重合性組成物からポリマー、化学線架橋性シリコーン含有プレポリマー又はシリコーンヒドロゲル材料を製造する仕方を知っている。本発明のポリマー、化学線架橋性シリコーン含有プレポリマー(即ち、プレポリマーのための中間コポリマー)、又はシリコーンヒドロゲルポリマー材料を製造するための上記重合性組成物は、当業者に周知のように、溶融体、必要な成分を全て混合した無溶剤液体、あるいは必要な成分を全て不活性溶媒、例えば水、有機溶媒、又はその混合物に溶解した溶液であり得る。
【0058】
適切な溶媒の例としては、水、テトラヒドロフラン、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、i−プロピルラクテート、メチレンクロリド、2−ブタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、メントール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール及びエクソノルボルネオール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、3−メチル−2−ブタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノール、3−オクタノール、ノルボルネオール、tert−ブタノール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチル−2−ヘキサノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、1−クロロ−2−メチル−2−プロパノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−2−オクタノール、2,2−メチル−2−ノナノール、2−メチル−2−デカノール、3−メチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−メチル−4−ヘプタノール、3−メチル−3−オクタノール、4−メチル−4−オクタノール、3−メチル−3−ノナノール、4−メチル−4−ノナノール、3−メチル−3−オクタノール、3−エチル−3−ヘキサノール、3−メチル−3−ヘプタノール、4−エチル−4−ヘプタノール、4−プロピル−4−ヘプタノール、4−イソプロピル−4−ヘプタノール、2,4−ジメチル−2−ペンタノール、1−メチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、1−エチルシクロペンタノール、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−4−メチル−1−シクロペンタノール、2−フェニル−2−プロパノール、2−メトキシ−2−メチル−2−プロパノール、2,3,4−トリメチル−3−ペンタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール、2−フェニル−2−ブタノール、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−エチル−3−ペンタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチル−2−プロパノール、t−アミルアルコール、イソプロパノール、1−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルプロピオンアミド、N−メチルピロリジノン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0059】
本発明のポリマー、化学線架橋性シリコーン含有プレポリマー(即ち、該プレポリマーのための中間コポリマー)、又はシリコーンヒドロゲルポリマー材料を製造するための重合性組成物の共重合は光化学的に又は熱的に誘起することができる。
【0060】
適切な光開始剤はベンゾインメチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイルホスフィンオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及びDarocur及びIrgacureタイプのもの、好ましくはDarocur 1173(登録商標)、Irgacure 369(登録商標)、Irgacure 379(登録商標)、及びIrgacure 2959(登録商標)である。ベンゾイルホスフィンオキシド開始剤の例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−プロピルフェニルホスフィンオキシド、及びビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−N−ブチルフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。例えばマクロマーなどに組入れることができるか又は特別なモノマーとして使用できる反応性光開始剤もまた適切である。反応性光開始剤としては例えばEP632329(全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているものである。次いで重合は化学線、例えば光、特に適切な波長の紫外線によって引き起こされる。従って、そのスペクトル要件は、妥当ならば、適切な光増感剤の添加によって調整することができる。
【0061】
適切な熱重合開始剤は当業者にとって周知であり、例えば過酸化物、ヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(アルキル−又はシクロアルキルニトリル)、過硫酸塩、過炭酸塩又はそれらの混合物を含む。例としてはベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシド、ジ−tert−ブチル−ジペルオキシフタレート、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾ−ビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、1,1−アゾジイソブチルアミジン、1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾ−ビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などがある。重合は高温、例えば25〜100℃、好ましくは40〜80℃の温度において上記の溶媒の中で行うのが好都合である。反応時間は広い範囲内で変えてもよいが、例えば1〜24時間、好ましくは2〜12時間とするのが好都合である。重合反応に使用する成分や溶媒を予め脱気しておき、重合反応を不活性雰囲気下、例えば窒素又はアルゴン雰囲気下で行うのが有利である。
【0062】
一般に、本発明のポリマーは、上記の定義による式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーと、親水性ビニル系モノマー、疎水性ビニル系モノマー、ポリシロキサン含有ビニル系モノマー、ポリシロキサン含有架橋剤、非シリコーン架橋剤、親水性プレポリマー、紫外線吸収性ビニル系モノマー、及びそれらの組み合わせから成る群から選んだ1つ以上の重合性成分とを含む重合性組成物を、熱又は化学線を用いて重合することによって得られる。上記の全ての重合性成分の種々の実施態様を以下に論じる。
【0063】
本発明によると、適切な親水性ビニル系モノマーはいずれも本発明のポリマーを製造するための重合性組成物に使用することができる。好ましい親水性ビニル系モノマーの例としては、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシルエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレート(GMA)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,500以下の重量平均分子量を有するポリエチレングリコールC1−C4−アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルイソプロピルアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、1−メチル−5−メチレン−2−ピロリドン、1−エチル−5−メチレン−2−ピロリドン、5−メチル−3−メチレン−2−ピロリドン、5−エチル−3−メチレン−2−ピロリドン、(メタ)アクリル酸、エチルアクリル酸、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0064】
適切な疎水性ビニル系モノマーはいずれも本発明のポリマーを作るための重合性組成物に使用することができる。ある量の疎水性ビニル系モノマーをモノマー混合物に組入れることによって、得られるポリマーの機械的性質(例えば、弾性率)を改善してもよい。好ましい疎水性ビニル系モノマーの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、スチレン、クロロプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、1−ブテン、ブタジエン、メタクリロニトリル、ビニルトルエン、ビニルエチルエーテル、パーフルオロヘキシルエチル−チオ−カルボニル−アミノエチル−メタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロ−イソプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートが挙げられる。
【0065】
適切なポリシロキサン含有ビニル系モノマー(各々少なくとも1つのポリシロキサンセグメントとただ1つのエチレン性不飽和基とを含む)はいずれも本発明のポリマーを製造するための重合性組成物に使用することができる。このようなビニル系モノマーの好ましい例としては、様々な分子量のモノ−(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサン(例えば、モノ−3−メタクリルオキシプロピル基を末端に有する、モノ−C1−C4アルキル基を末端に有するポリジメチルシロキサン、又はモノ−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)プロピル基を末端に有する、モノ−C1−C4アルキル基を末端に有するポリジメチルシロキサン)がある。あるいは、上述のように、モノエチレン性官能化したポリシロキサンは、モノ官能化したポリシロキサン(即ち、例えば−NH2,−OH,−COOH,エポキシ基、ハロゲン化物などのただ1つの末端官能基を有する)のエチレン性官能化によって得ることができる。適切なモノ官能化したポリシロキサン類は市販されており、例えば、アルドリッチ社(Aldrich)、エービーシーアール社(ABCR GmbH&Co.)、フルオロケム社(Fluorochem)、又は米国ペンシルバニア州モリスビル(Morrisville)のゲレスト社(Gelest,Inc.)から入手可能である。
【0066】
適切なポリシロキサン含有架橋剤(各々少なくとも1つのポリシロキサンセグメントと少なくとも2つのエチレン性不飽和基とを有する)はいずれも本発明のポリマーを製造するための重合性組成物に使用することができる。ポリシロキサン含有架橋剤の例としては、ビス−(メタ)アクリレート化ポリジメチルシロキサン、ビスビニルカーボネートを末端に有するポリジメチルシロキサン、ビスビニルカルバメートを末端に有するポリジメチルシロキサン、ビスビニルを末端に有するポリジメチルシロキサン、ビス−(メタ)アクリルアミドを末端に有するポリジメチルシロキサン、ビス−3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルポリジメチルシロキサン、N,N,N’,N’−テトラキス(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−α,ω−ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン、US5,760,100(全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載のマクロマーA、マクロマーB、マクロマーC、及びマクロマーDから成る群から選んだポリシロキサン又は鎖延長ポリシロキサン架橋剤、グリシジル(メタ)アクリレートとビス−アミノアルキルを末端に有するか又はビス−ヒドロキシアルコキシアルキルを末端に有するポリジメチルシロキサンとの反応生成物、ヒドロキシ含有又はアミノ含有ビニル系モノマーとビス−エポキシアルコキシアルキルを末端に有するポリジメチルシロキサンとの反応生成物、米国特許第4,136,250号、第4,153,641号、第4,182,822号、第4,189,546号、第4,259,467号、第4,260,725号、第4,261,875号、第4,343,927号、第4,254,248号、第4,355,147号、第4,276,402号、第4,327,203号、第4,341,889号、第4,486,577号、第4,543,398号、第4,605,712号、第4,661,575号、第4,684,538号、第4,703,097号、第4,833,218号、第4,837,289号、第4,954,586号、第4,954,587号、第5,010,141号、第5,034,461号、第5,070,170号、第5,079,319号、第5,039,761号、第5,346,946号、第5,358,995号、第5,387,632号、第5,416,132号、第5,451,617号、第5,486,579号、第5,962,548号、第5,981,675号、第6,039,913号、第6,762,264号、第7,091,283号、第7,238,750号、第7,268,189号、第7,566,754号、第7,956,135号、第8,071,696号、第8,071,703号、第8,071,658号、第8,048,968号、第8,283,429号、第8,263,679号、第8,044,111号、及び第8,211,955号、並びに公開された米国特許出願公開第2008/0015315 A1号、第2010/0120939 A1号、第2010/0298446 A1号、第2010/0296049 A1号、第2011/0063567 A1号、第2012/0088843 A1号、第2012/0088844 A1号、第2012/0029111 A1号、及び第2012/0088861 A1号(全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載のポリシロキサン含有架橋剤が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0067】
適切な非シリコーン架橋剤はいずれも本発明のポリマーを製造するための重合性組成物に使用することができる。好ましい非シリコーン架橋剤の例としては、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、エチレンジアミンジ(メタ)アクリルアミド、グリセロールジメタクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジアミン(好ましくはN,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、プロパン−1,3−ジアミン、ブタン−1,4−ジアミン、ペンタン−1,5−ジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる)とエポキシ含有ビニル系モノマー(好ましくはグリシジル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる)との生成物、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明のポリマー、化学線架橋性シリコーン含有プレポリマー、又はシリコーンヒドロゲルポリマー材料の製造に使用するより好ましい架橋剤は、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリ(エチレングリコール)ジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、アリル(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジヒドロキシエチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる親水性架橋剤である。
【0068】
多数のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する親水性プレポリマーの例としては、米国特許第5,583,163号及び同第6,303,687号に記載の水溶性で架橋可能なポリ(ビニルアルコール)プレポリマー、米国特許出願公開第2004/0082680号に記載の水溶性でビニル基を末端に有するポリウレタンプレポリマー、米国特許第5,849,841号に記載の、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン又はポリビニルアミンの誘導体、米国特許第6,479,587号及び米国特許出願公開第2005/0113549号に記載の水溶性で架橋可能なポリ尿素プレポリマー、架橋可能なポリアクリルアミド、EP655,470及び米国特許第5,712,356号に開示されている、ビニルラクタム、MMA及びコモノマーの架橋可能なランダムコポリマー、EP712,867及び米国特許第5,665,840号に開示されている、ビニルラクタム、酢酸ビニル及びビニルアルコールの架橋可能なコポリマー、EP932,635及び米国特許第6,492,478号に開示されている、架橋可能な側鎖を有するポリエーテル−ポリエステルコポリマー、EP958,315及び米国特許第6,165,408号に開示されている分岐鎖状ポリアルキレングリコール−ウレタンプレポリマー、EP961,941及び米国特許第6,221,303号に開示されているポリアルキレングリコール−テトラ(メタ)アクリレートプレポリマー、及び国際出願第WO2000/31150号及び米国特許第6,472,489号に開示されている架橋可能なポリアリルアミングルコノラクトンプレポリマーが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0069】
適切な紫外線吸収性ビニル系モノマーはいずれも本発明のポリマーを製造するための重合性組成物に使用することができる。好ましい紫外線吸収性ビニル系モノマーとしては2−(2−ヒドロキシ−5−ビニルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−アクリロイルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルアミドメチル−5−tertオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルアミドフェニル)−5−メトキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピル−3’−t−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシプロピルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−アクリルオキシアルコキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシアルコキシベンゾフェノン、アリル−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリルオキシベンゾフェノンが挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明によれば、上記重合性組成物は約0.2重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.3重量%〜約2.5重量%、より好ましくは約0.5重量%〜約1.8重量%の紫外線吸収剤を含む。
【0070】
好ましい実施態様においては、本発明のポリマーはシリコーン含有化学線架橋性プレポリマーであって、好ましくは、(1)上記の定義による式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーから誘導されるモノマー単位、(2)上記の少なくとも1つのポリシロキサン含有架橋剤から誘導される架橋性単位及び/又は上記のポリシロキサン含有ビニル系モノマーから誘導されるポリシロキサン単位、(3)上記の少なくとも1つの親水性ビニル系モノマーから誘導される親水性単位、(4)チオール基以外の第1の反応性官能基を有する連鎖移動剤及び/又はエチレン性不飽和基以外の第2の反応性官能基を有するビニル系モノマーから誘導される重合性単位であって、各重合性単位が第1又は第2の反応性官能基を介して1つの重合性単位に共有結合したエチレン性不飽和基を含む重合性単位、(5)必要に応じて、上記の少なくとも1つの非シリコーン架橋剤から誘導される非シリコーン架橋性単位、及び(6)必要に応じて、上記の紫外線吸収性ビニル系モノマーから誘導される紫外線吸収性単位、を含む。このようなプレポリマーは、1つ以上のビニル系モノマーの非存在下において化学線で架橋可能であり、その架橋によれば、完全に水和した時の含水量が重量で約20%〜約75%(好ましくは約25%〜約70%、より好ましくは約30%〜約65%)であり、酸素透過度(Dk)が少なくとも約40barrer(好ましくは少なくとも約50barrer、より好ましくは少なくとも約60barrer、更に好ましくは少なくとも約70barrer)であるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成することができる。好ましくは、このようなプレポリマーは水に可溶あるいは水で処理可能であり、水に対して重量で少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約20%の高い溶解度又は分散度を有する。本発明の化学線架橋性シリコーン含有プレポリマーは、シリコーンヒドロゲル眼科用レンズ、特にコンタクトレンズを製作するのに特に有用である。
【0071】
このようなプレポリマーを得るには、まず、上述の重合性成分の全てを含む重合性組成物を重合して中間コポリマーを形成する。次いで、カップリング剤の存在下又は非存在下でのカップリング反応において、前記第1及び/又は第2の反応性官能基と反応して結合を形成することのできる第3の反応性官能基を有するエチレン性官能化性ビニル系モノマーを用いて、中間コポリマーのエチレン性官能化を行うことによって、該プレポリマーを形成する。この際、互いに独立の前記第1、第2及び第3の反応性官能基はアミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、酸ハロゲン化物基、アズラクトン基、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる。両親媒性プレポリマーを製造する一般的方法は米国特許第6,039,913号、第6,043,328号、第7,091,283号、第7,268,189号、第7,238,750号、第7,521,519号、第8,071,703号、第8,044,111号、及び第8,048,968、米国特許出願公開第US 2008−0015315 A1号、第US 2008−0143958 A1号、第US 2008−0143003 A1号、第US 2008−0234457 A1号、第US 2008−0231798 A1号、第2010/0120939 A1号、第2010/0298446 A1号、第2012/0088843 A1号、第2012/0088844 A1号、及び第2012/0088861 A1号に開示されており、これらの全ては全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0072】
本発明によれば、前記重合性単位は各々、プレポリマーのポリマー鎖の一部を成す基本モノマー単位と、それに結合した側鎖基又は末端基としてのエチレン性不飽和基とを有する。各基本モノマー単位は、第2の反応性官能基を有する第1のエチレン性官能化性ビニル系モノマーから誘導される。また、側鎖基又は末端基としてのエチレン性不飽和基は、架橋剤の存在下又は非存在下で1つの第2の反応性官能基と反応して共有結合を形成する第3の反応性官能基を有する第2のエチレン性官能化性ビニル系モノマーから誘導される。第2及び第3の反応性官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アズラクトン基、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、酸塩化物基、及びそれらの組み合わせから成る群から選ばれる。このようなビニル系モノマーの例は、上述のエチレン性官能化性ビニル系モノマーである。好ましくは、第1のエチレン性官能化性ビニル系モノマーは上記のもののいずれかである。
【0073】
本発明によれば、前記重合性単位の含有量は、中間コポリマーを作るための重合性組成物中に存在するエチレン性官能化性ビニル系モノマーの、重合性組成物中の重合性成分の総重量に対する重量パーセントに基づいて決定される。あるいは、該含有量は、本発明のプレポリマーを形成するべく中間コポリマーをエチレン性官能化するのに使用されるエチレン性官能化性ビニル系モノマーの、該プレポリマーの重量に対する重量パーセントに基づいて決定される。
【0074】
得られる中間コポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤(少なくとも1つのチオール基を含む)を使用する。連鎖移動がアミン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、アズラクトン基、又はアジリジン基などの反応性官能基を有する場合は、それは、得られる中間コポリマーのエチレン性官能化のための末端基又は側鎖基官能性(アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、アズラクトン基、又はアジリジン基)を提供する。
【0075】
もう1つの好ましい実施態様においては、本発明のポリマーは、上記の定義による式(I)のTRIS含有ビニル系モノマー及び/又は上述の本発明の化学線架橋性プレポリマーを好ましくは含む重合性組成物を熱又は化学線を用いて重合することによって得られるシリコーンヒドロゲル材料である。本発明のシリコーンヒドロゲル材料は、好ましくは、上記重合性組成物を成形型内で重合することによって得られるソフトコンタクトレンズのバルク材である。このコンタクトレンズは、完全に水和した時の含水率が重量で約20%〜約75%(好ましくは約25%〜約70%、より好ましくは約30%〜約65%)であり、酸素透過度(Dk)が少なくとも約40barrer(好ましくは少なくとも約50barrer、より好ましくは少なくとも約60barrer、更に好ましくは少なくとも約70barrer)であり、弾性率が約0.1MPa〜約2.0MPa、好ましくは約0.2MPa〜約1.5MPa、より好ましくは約0.3MPa〜約1.2MPa、更に好ましくは約0.4MPa〜約1.0MPaである。本発明のソフトコンタクトレンズを得るための重合性組成物は、親水性ビニル系モノマー(上記のもののいずれか)、疎水性ビニル系モノマー(上記のもののいずれか)、ポリシロキサン含有ビニル系モノマー(上記のもののいずれか)、ポリシロキサン含有架橋剤(上記のもののいずれか)、非シリコーン架橋剤(上記のもののいずれか)、光開始剤(上記のもののいずれか)、熱開始剤(上記のもののいずれか)、紫外線吸収性ビニル系モノマー(上記のもののいずれか)、視認性着色剤(例えば、染料、顔料、又はその混合物)、抗菌薬(例えば、好ましくは銀ナノ粒子)、生体活性剤(bioacive)(例えば、レバミピド、ケトチフェン、オラプチジン、クロモグリコレート、シクロスポリン、ネドクロミル、レボカバスチン、ロドキサミド、ケトチフェン、又は薬学的見地から見て受容可能なその塩又はエステル、2−ピロリドン−5−カルボン酸、ビタミン、又はそれらの混合物)、浸出可能な潤滑剤(例えば、ポリグリコール酸、水溶性非架橋性親水性ポリマー)、浸出可能な涙安定化剤(例えば、リン脂質)、及びそれらの混合物から成る群から選ばれる1つ以上の成分を更に含むことができる。
【0076】
コンタクトレンズを作るためのレンズ型は、当業者にとって周知であり、例えば注型成形又は回転成形において使用される。例えば、(注型成形用)型は一般に、少なくとも2つの型セクション(又は部分)あるいは型半部、即ち第1及び第2の型半部を含む。第1の型半部は第1の成型(又は光学)面を画定し、第2の型半部は第2の成型(又は光学)面を画定する。第1及び第2の型半部は、レンズ形成キャビティが第1の成型面と第2の成型面との間に形成されるように、互いを受け入れるべく構成されている。型半部の成型面は、型のキャビティ形成面であり、レンズ形成材料と直接接触する。
【0077】
コンタクトレンズを注型成形するための型セクションを製造する方法は、一般に、当業者にとって周知である。本発明の方法は、型を形成するいかなる特定の方法にも限定されない。実際、型を形成するいかなる方法も、本発明において使用できる。第1及び第2の型半部は、射出成型や旋盤加工などの様々な技術によって形成することができる。型半部を形成するための適切な方法の例は、シャート(Schad)に付与された米国特許第4,444,711号、ベーム(Boehm)らに付与された同第4,460,534号、モリル(Morrill)に付与された同第5,843,346号、及びボーンベルガー(Boneberger)らに付与された同第5,894,002号(これらも全体として参照により本明細書に組み入れられる)に開示されている。
【0078】
型を製造するための当技術分野において公知の材料は、実質的にその全てが、コンタクトレンズ製作用型の製造に使用することができる。例えば、ポリマー材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PMMA、Topas(登録商標)COCグレード8007−S10(エチレンとノルボルネンの清澄な非晶質コポリマー、ドイツ国フランクフルト及び米国ニュージャージー州サミット(Summit)のティコナ社(Ticona GmbH)から入手)などが使用できる。紫外線の透過を許容する他の材料、例えば石英ガラスやサファイヤなどが使用できよう。
【0079】
本発明によれば、重合性組成物は、任意の公知の方法に従って、型が形成するキャビティ内に導入(計量分配)することができる。
【0080】
重合性組成物は、型内に計量分配された後、コンタクトレンズを生成するために重合される。架橋は熱又は化学線を用いて開始されてよく、好ましくは、型内のレンズ形成組成物を化学線照射の空間的限定に暴露することで開始されてよく、それによって重合性組成物中の重合性成分が架橋される。
【0081】
成型された物品を型から取り除くことができるように型を開放することは、それ自体公知の仕方でなされてよい。
【0082】
成型されたコンタクトレンズは、重合されなかった重合性成分を除去するためにレンズ抽出に供することができる。抽出用溶媒は当業者にとって周知の任意の溶媒とすることができる。適切な抽出用溶媒の例は、前記のものである。好ましくは、水又は水溶液を抽出用溶媒として使用する。抽出の後、レンズは水又は湿潤剤(例えば、親水性ポリマー)の水溶液中で水和することができる。
【0083】
成型したコンタクトレンズは、更なるプロセスに更に供することができる。更なるプロセスとしては、例えば、表面処理、湿潤剤(例えば、上記親水性ポリマー又は当業者にとって周知の同様のものなど)及び/又は粘性増加剤(例えば、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はそれらの混合物)を約0.005重量%〜約5重量%含有するパッケージ溶液と共にレンズパッケージに包装すること、118〜124℃で少なくとも約30分のオートクレーブなどの殺菌、などがある。
【0084】
更なる態様において、本発明は、上記の定義による式(I)のTRIS含有ビニル系モノマーを製造する方法を提供する。本発明の方法は、溶媒の存在下又は非存在下で且つ触媒の存在下において、式(II)のポリオキシエチレン(メタ)アクリレートと式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランとを、溶媒の存在下又は非存在下で且つ触媒の存在下において反応させる工程を含む。
【化4】

[式中、R1は水素又はメチル基、q1は6〜20の整数、R2は20以下の炭素原子を含み、主鎖中に1つ以上のエーテル結合、チオ結合、アミン結合、カルボニル結合、又はアミド結合を有するアルキル、シクロアルキル又はアルキルシクロアルキル(好ましくはアルキル)ジラジカル(好ましくは12以下の炭素原子を含むアルキルジラジカル)である。]
【0085】
イソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランの1つの公知の利用法は、特開平08−134103号(全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているように、それをプルランと反応させることによって得られる化粧用膜形成材料である。しかしながら、イソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランから出発して、水に対する所望の溶解度又は分散度を有すると共にコンタクトレンズを形成するのに適したシリコーンメタクリレートモノマーを製造することは、知られていない。
【0086】
上記の定義による式(II)の化合物に基づいたポリオキシエチレンモノメタクリレート製品は、様々な商品名で市販されていて購入可能である。例えば、BIMAX Chemicals Ltd.からのHEMA−10(q1=10)、NOF Corp.からのBlemmer(登録商標)PE350(m=8)及びBlemmer(登録商標)PE450(q1=10)、そして日本乳化剤株式会社からのMA−80A(q1=8)及びMA−100A(q1=10)が挙げられる。
【0087】
式(II)の化合物に基づいたポリオキシエチレンモノ−(メタ)アクリレート製品は、エポキシ環開環触媒の存在下でのエチレンオキシドとヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(CH2=CHC=OOCH2CH2OH(HEA)又はCH2=CCH3C=OOCH2CH2OH(HEMA))との開環重合反応で製造することができる。この製品は、所望の化合物(II)と、重合反応の際にエステル交換による副生物として生成されるポリエチレングリコール(HO(CH2CH2O)mH)及びポリオキシエチレンジメタクリレート(CH2=CR1C=OO(CH2CH2O)q1O=CCR1=CH2)との混合物である。但し、R1は水素又はメチル基であり、q1は6〜20の整数である。この文脈において、この製品を以下、II’と表記することとする。
【0088】
II’を式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネート)と反応させる工程は、その反応が無溶剤系でも進行するとはいえ、溶媒中で行ってもよい。溶媒を使用する場合は、その溶媒はメチルエチルケトン(MEK)やメチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン溶媒から選ぶことが好ましい。
【0089】
上記反応に使用する触媒は、トリエチルアミンなどのアミン触媒類、ジブチル錫ジラウレートなどの錫触媒類、及びトリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)などの鉄触媒類から選ぶことが好ましい。これらの中で、アミン化合物は触媒活性が低く、錫触媒類は活性は高いが毒性があるので、鉄触媒類が低毒性で最も好ましい。触媒は、II’及び式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランの総重量に対して、約10〜約1,000ppmの量を使用するのが好ましく、より好ましい量は約50〜約500ppmである。
【0090】
上記反応工程を行うには、反応器にII’、式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネート)及び反応溶媒を仕込み、これに触媒を添加する。好ましい手順においては、反応器にII’、溶媒及び触媒を仕込んだ後、式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネートを滴下添加する。好ましくは、滴下添加を約−10℃〜約30℃の温度で開始し、滴下添加の間、反応混合物の内部温度が50℃より低くなるように調整する。反応温度は、約−10℃〜約120℃の範囲内に調整するのが好ましく、より好ましい範囲は20〜50℃である。IR(赤外線)モニタリングを行い、イソシアネート基に割り当てたピークがIRチャートから消えた時点で、反応終了が感知される。例えば、(実施例に示すように)反応は約40℃の反応温度において約3時間以内で終了する。
【0091】
反応のため、II’及び式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネート)は任意のモル比で使用してよい。しかし、式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネート)をII’中のヒドロキシル基のモル数に対して過剰なモル数で使用するのは、好ましくない。このような場合、イソシアネート基が残留するので、残留イソシアネートを排除するためにアルコールなどを加えなければならないからである。このような理由から、II’は式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シラン(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネート)のモル当たり約1.0〜約1.2モルのヒドロキシル基が得られるような量(即ち、式(III)のイソシアナトアルキルトリス(トリメチルシロキシ)シランに対するII’のモル比が約1.0〜約1.2となるような量)で使用するのが好ましい。II’において、q1は6〜20の整数、好ましくは8〜14の整数である。
【0092】
特定の用語、器具(装置)、及び方法を用いて本発明の様々な実施態様を記述してきたが、このような記述はもっぱら説明を目的とするものである。使用した文言は、限定のための文言というよりむしろ説明のための文言である。以下の請求項に記載する本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることが、当業者には可能であることが理解されるべきである。また、様々な実施態様の各面は、全体として又は部分的に交換してもよく、あるいは、任意に組み合わせること及び/又は共に用いることが可能であることが、理解されるべきである。従って、別記請求項の精神及び範囲は、本明細書に含まれる好ましい説明態様に限定されるべきものではない。
【実施例】
【0093】
以上の開示によれば、当業者は本発明を実施することができるであろう。特定の実施態様及びその利益を読む者がよりよく理解できるためには、以下の非限定的実施例を参照することが推奨される。しかしながら、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものと読解されるべきではない。
【0094】
[実施例1]
酸素透過度の測定
レンズの見掛けの酸素透過度(oxygen permeability)及びレンズ材料の酸素透過率(oxygen transmissibility)を、米国特許第5,760,100号及びウィンタートン(Winterton)らの論文(角膜−国際角膜学会議事録111、H.D.カバナー編、レーブン出版、ニューヨーク、1998年、pp273−280(The Cornea:Transactions of the World Congress on the Cornea 111,H.D.Cavanagh Ed.,Raven Press: New York 1988, pp273−280))(両文献は全体として参照により本明細書に組み入れられる)に記載の技法と類似の技法により測定する。酸素フラックス(J)はDk1000装置(米国ジョージア州ノークロス(Norcross)のアプライド・デザイン・アンド・ディベロップメント社(Applied Design and Development Co.)から入手可能)又は類似の分析装置を用いて、湿潤セル内において(即ち、気流を相対湿度約100%に維持して)34℃で測定する。既知の酸素含有率(例えば21%)を有する空気流を約10〜20cm3/分の流量でレンズの一方側を横切って通し、窒素ガス流を10〜20cm3/分の流量でレンズの反対側を通す。測定に先立って、試料を所定の試験温度において30分以上45分以下の間、試験媒体(即ち食塩水又は蒸留水)中で平衡させる。被覆層として使用される試験媒体を、いずれも測定に先立って、所定の温度において30分以上45分以下の間、平衡させる。撹拌モータの速度は1,200±50rpmに設定するが、これはステッパモータコントローラの指示設定の400±15に相当する。系を取り囲む大気圧Pmeasuredを測定する。試験のために露出している領域におけるレンズの厚さ(t)は、ミトトヤ社(Mitotoya)のマイクロメーターVL−50又は類似の装置によって約10か所で測定し、測定値の平均をとることによって決定する。窒素ガス流中の酸素濃度(即ち、レンズを貫いて拡散する酸素)は、Dk1000測定装置を用いて測定する。レンズ材料の見掛けの酸素透過度Dkappは、次式により決まる。
【0095】
Dkapp=Jt/(Poxygen
式中、J=酸素フラックス[マイクロリットルO2/cm2・分]
oxygen=(Pmeasured−Pwater蒸気)
=(空気流中の%O2)[mmHg]
= 空気流中の酸素分圧
measured=大気圧(mmHg)
water蒸気=0mmHg(34℃)(乾燥セル中)(mmHg)
water蒸気=40mmHg(34℃)(湿潤セル中)(mmHg)
t=露出した試験領域に亘るレンズの平均厚さ(mm)
Dkappはバーラー(barrer)の単位で表す。
【0096】
材料の見掛けの酸素透過率(Dk/t)は見掛けの酸素透過度(Dkapp)をレンズの平均厚さ(t)で除すことによって算出してもよい。
【0097】
上記の測定値は、いわゆる境界層効果について補正していない。境界層効果は酸素フラックスの測定の際にコンタクトレンズ上に水浴又は食塩水浴を使用することに起因する。この境界層効果があると、シリコーンヒドロゲル材料の見掛けのDkの報告値は実際の固有のDk値よりも低くなる。更に、境界層効果の相対的影響は、厚いレンズの場合よりも薄いレンズの場合の方が大きい。その正味の影響は、一定であるべきDk報告値がレンズの厚さの関数として変化するように見えることである。
【0098】
レンズの固有のDk値は、境界層効果による酸素フラックスに対する表面抵抗に関して補正したDk値に基づいて、次のように推定することができる。
【0099】
参照用のロトラフィルコンA(lotrafilconA)(Focus(登録商標)N&D(登録商標):チバビジョン社(CIBA VISION CORPORATION)から入手可能)又はロトラフィルコンB(AirOptix(登録商標):チバビジョン社から入手可能)レンズの見掛けの酸素透過度の値(単一点)を同じ装置を使って測定する。参照用レンズは供試レンズと同程度の度のもので、供試レンズと同時に測定に供される。
【0100】
上述の見掛けのDkの測定手順に従って、同じ装置を使って、ロトラフィルコンA又はロトラフィルコンB(参照用)レンズの一連の厚さのものを貫く酸素フラックスを測定して、参照用レンズの固有のDk値(Dki)を求める。一連の厚さはおよそ100μm以上の厚さの範囲をカバーする必要がある。好ましくは、参照用レンズの厚さの範囲は供試レンズの厚さの限界を確定する。これら参照用レンズのDkappは、供試レンズに用いたものと同じ装置で測定しなければならず、また、供試レンズと同時に測定することが理想的である。装置の構成と測定パラメーターは、実験の全体を通して一定に維持しなければならない。各試料の測定は、必要ならば複数回行ってもよい。
【0101】
参照用レンズの測定結果から、式1を用いて、残留酸素抵抗値Rrを算出する。
【数1】
式1中、tは供試レンズの厚さ(つまり、参照用レンズの厚さでもある)であり、nは測定に供した参照用レンズの数である。残留酸素抵抗値Rrをtデータに対してプロットし、Y=a+bX[式中、j番目のレンズについて、Yj=(ΔP/J)j且つX=tjである。]の形の曲線をあてはめる。残留酸素抵抗値Rrはaに等しい。
以上のようにして求めた残留酸素抵抗値を用い、式2に基づいて、供試レンズの正しい酸素透過度Dkc(推定固有Dk)を算出する。
Dkc=t/[(t/Dka)−Rr] (2)
こうして推定した供試レンズの固有Dkを用いて、同じ試験環境において標準厚さのレンズの見掛けのDk(Dka_std)はどうなっていたかを、式3に基づいて算出することができる。ロトラフィルコンAの標準厚さ(tstd)は85μmである。ロトラフィルコンBの標準厚さは60μmである。
Dka_std=tstd/[(tstd/Dkc)+Rr_std] (3)
【0102】
イオン透過度の測定
レンズのイオン透過度は、米国特許第5,760,100号(全体として参照して本明細書に包含する)に記載の手順に従って測定される。以下の実施例において報告されるイオン透過度の値は、参照用材料としてのレンズ材料アルサコン(Alsacon)についての相対的イオノフラックス拡散係数(D/Dref)である。アルサコンは0.314×10-3mm2/分のイオノフラックス拡散係数を有する。
【0103】
[実施例2]
モノマー(1A)の合成
ジムロート冷却器、温度計及び滴下漏斗を備えた2Lフラスコに、MA−80A(q1=8、日本乳化剤社製、ヒドロキシル価131mgKOH/g、ポリエチレングリコール/ポリエチレンジメタクリレート/II=5/10/85)471g(1.1モル)、ウレタン形成触媒としてのトリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄(III)0.09g(反応物に対して100ppm)、及び溶媒としてのメチルエチルケトン800gを仕込む。フラスコを30℃に加熱した後、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルイソシアネート379g(1モル)を滴下漏斗から1時間かけて滴下添加する。この時点で、系内温度は40℃に上昇する。35〜45℃の系内温度で反応を3時間続ける。IR分析によってイソシアネート基の消費を確認する。シリカゲル170gを反応溶液に添加し、1時間撹拌して脱色する。シリカゲルを濾過で除去し、溶媒MEKを60℃の系内温度において真空で蒸留して除去して、モノマー(1A)を578g得る。(式(II)のポリオキシエチレンメタクリレートにおいて、q1は8、R1はメチルであり、R2は−CH2CH2CH2−である。)
【0104】
モノマー(1B)の合成
MA−80Aの代わりにMA−100A(q1=10、日本乳化剤社製、ポリエチレングリコール/ポリオキシエチレンジメタクリレート/II=6/14/80)556g(1.1モル)を用いた以外は上記のモノマー(1A)の合成と同様にして、反応を行う。脱色の後、溶媒MEKを60℃において真空で蒸留して除去して、モノマー(1B)を665g得た。(式(II)のポリオキシエチレンメタクリレートにおいて、q1は10、R1はメチルであり、R2は−CH2CH2CH2−である。)
【0105】
TRIS含有ビニル系モノマーのキャラクタリゼーション
モノマー(1A)は、25℃で123mm2/秒の粘度、25℃で1.4477の屈折率、及び液体クロマトグラフィーで測定して94%の純度を有する無色透明な液体である。
【0106】
モノマー(1B)は、25℃で119mm2/秒の粘度、25℃で1.4493の屈折率、及び液体クロマトグラフィーで測定して89%の純度を有する無色透明な液体である。図1はモノマー(1B)の1H−NMRスペクトルを示す図である。
【0107】
[実施例3]
マクロマーの合成
マクロマーの合成は、米国特許第5,849,811号の実施例B−1〜B−4に教示されていることにほぼ沿う以下の手順に従って行う。
【0108】
1,030g/molの平均分子量を有し、末端基滴定で測定して1.96meq/gのヒドロキシル基を含むパーフルオロポリエーテルFomblin(登録商標)ZDOL(ミラノのアウシモント社(Ausimont S.p.A)から入手)51.5g(50mmol)をジブチル錫ジラウレート50mgと共に三つ口フラスコに導入する。フラスコ内容物を撹拌しつつ約20mbarまで真空引きし、その後、アルゴンを用いて戻す。この操作を2回繰り返す。次いで、アルゴン下に保持した蒸留したてのイソホロンジイソシアネート22.2g(0.1mol)をアルゴンの対向流を通して添加する。水浴で冷却することにより、フラスコ内温度を30℃より低い温度に保持する。室温で一晩撹拌して、反応を終了する。イソシアネート滴定によると、NCO含有量は1.40meq/g(理論値:1.35meq/g)である。
【0109】
2,000g/mol(滴定によると1.00meq/gのヒドロキシル基)の平均分子量を有し、α,ω−ヒドロキシプロピル基を末端基とするポリジメチルシロキサンKF−6001(信越化学工業社製)202gをフラスコに導入する。フラスコ内容物を約0.1mbarまで真空引きし、アルゴンを用いて戻す。この操作を2回繰り返す。脱気したシロキサンを、アルゴン下に保持した蒸留したてのトルエン202mlに溶解し、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)100mgを添加する。この溶液を完全に均質化した後、イソホロンジイソシアネート(IPDI)と反応させたパーフルオロエーテルの全てをアルゴン下で添加する。室温で一晩撹拌して、反応を終了する。室温において高真空下で溶媒を留去する。ミクロ滴定によると、ヒドロキシル基は0.36meq/g(理論値:0.37meq/g)である。
【0110】
2−イソシアナトエチルメタクリレート(IEM)13.78g(88.9mmol)をアルゴン下においてα,σ−ヒドロキシプロピルを末端に有するポリシロキサン−パーフルオロポリエーテル−ポリシロキサン三ブロック共重合体(化学量論的平均では三ブロック共重合体であるが、他のブロック長部分も存在する)247gに添加する。この混合物を3日間、室温で撹拌する。この後、ミクロ滴定によると、イソシアネート基はもはや全く見られない(検出限界:0.01meq/g)。メタクリル基は0.34meq/g見られる(理論値:0.34meq/g)。
【0111】
このようにして製造したマクロマーは完全に無色で清澄である。これを光の非存在下において空気中室温で数か月保存しても、分子量は全く変化しない。
【0112】
[実施例4]
実施例3で調製したマクロマー、実施例2で調製したモノマー(1A)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)、溶媒(1−プロパノール(1−PrOH)又はエタノール(Et−OH))、光開始剤(Darocur(登録商標)1173、チバケミカルズ社(Ciba Chemicals)製)から表1に示す組成を有するレンズ用配合物を調製する。成分の濃度は全て重量パーセント(%w/w)である。
【0113】
製造したレンズ用配合物のフォトレオロジーを調べ、結果を表1に記載する。
【0114】
レンズを形成するため、以上のように調製したレンズ用配合物を、ほこりを除去したポリプロピレン製のコンタクトレンズ用型にピペットで仕込む。型を閉じ、紫外線照射(50mW/cm2,30分)によって重合反応と架橋を同時に行う。次いで型を開き、イソプロパノールの中に入れて、形成されたレンズが型から膨れ出るようにする。レンズを100%イソプロピルアルコールで少なくとも4時間抽出した後、水の中に入れる。レンズを被覆し、特別設計のホイルパッケージ内でリン酸緩衝生理食塩水溶液中で最終的に平衡させた後、120℃で30分オートクレーブ処理をする。こうして得られたレンズをキャリクタリゼーションし、その物理的並びに機械的性質(酸素透過度−Dkc、イオン透過度−IP、平衡含水量−%w/w、弾性率E’−MPa、破断伸び−EtB%)を表1に記載する。
【0115】
【表1】
図1