特許第6066103号(P6066103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066103
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】多孔質ガラス母材製造用バーナ
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20170116BHJP
   C03B 8/04 20060101ALI20170116BHJP
   F23D 14/22 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   C03B37/018 C
   C03B8/04 G
   F23D14/22 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-36734(P2014-36734)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-160774(P2015-160774A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−187135(JP,A)
【文献】 特開2004−331440(JP,A)
【文献】 特開平05−323130(JP,A)
【文献】 特開平10−167748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B1/00−5/44,
8/00−8/04,
19/12−20/00
G02B6/02−6/036,
6/10,6/44
F23D14/00−14/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心のガラス原料ガス噴出ノズルの外側に、ガラス原料ガス噴出ノズルに対し同心円状に1列または複数列に配置される小口径助燃性ガス噴出ノズルを内包する可燃性ガス噴出ノズルを備えたガラス微粒子合成用バーナにおいて、同一列上に配置された上記小口径助燃性ガス噴出ノズルが、同一焦点を持つノズルの組合せを2組以上含み、かつ、それぞれの組の持つ焦点が異なることを特徴とする多孔質ガラス母材製造用バーナ。
【請求項2】
前記同一列の小口径助燃性ガス噴出ノズルは、同一焦点を持つノズルが互いに隣接していないように配置されている請求項1に記載の多孔質ガラス母材製造用バーナ。
【請求項3】
前記小口径助燃性ガス噴出ノズルの開口径が、焦点によって異なっている請求項1又は2に記載の多孔質ガラス母材製造用バーナ。
【請求項4】
可燃性ガス噴出ノズル内に、複数列の小口径助燃性ガス噴出ノズルを有し、より内側に配列されたノズルほど焦点距離が短くなつている請求項1乃至3のいずかに記載の多孔質ガラス母材製造用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質ガラス母材製造用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ母材を製造するために、各種方法が提案されている。それらの方法の中でも、回転する出発部材にバーナの火炎中で生成したガラス微粒子をバーナもしくは出発部材を相対往復運動させて、付着堆積させてスートを合成し、これを電気炉内で脱水、焼結させる外付け法(OVD法)は、比較的任意の屈折率分布のものが得られ、しかも、大口径の光ファイバ母材を量産できることから汎用されている。
従来、ガラス微粒子堆積体を合成するバーナとしては、同芯多重管バーナが用いられてきたが、このような構造のバーナは、ガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスの混合が充分に行われないため、ガラス微粒子の生成が充分に行われなかった。その結果、収率が伸びずに、高速な合成が困難であった。
【0003】
この問題を解決するために、特許文献1では、可燃性ガス噴出ノズル内に、中心の原料ガス噴出ノズルを取り囲むように小口径助燃性ガス噴出ノズルを配置したマルチノズル型バーナが提案されている。
さらに特許文献2では、小口径助燃性ガス噴出ノズルの焦点距離をLとし、小口径助燃性ガス噴出ノズルの先端と母材堆積面との距離をLとした場合、LをLよりも大きくすることで、原料ガス流が乱れることを防いで堆積効率を向上させる方法が提案されている。
【0004】
逆に、特許文献3では、L1をL2よりも小さくすることで、ガス混合の効率を高め、堆積効率を向上させる方法が提案されている。
また、特許文献4では、小口径ガスノズルを環状に複数列配設し、これらの外側の環状列の焦点距離を内側の環状列の焦点距離よりも長くする多焦点構成とすることにより、堆積効率を向上させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3-9047号公報
【特許文献2】特許第3543537号
【特許文献3】特開2003-226544号公報
【特許文献4】特開平5-323130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
焦点を合わせた小口径ガス噴出ノズルから線速の大きい助燃性ガスを供給し、ガスの混合効率を向上させるマルチノズル型バーナは、さらにガス混合を促進させようと、小口径ガス噴出ノズルの数を増やす、もしくは、小口径ガス噴出ノズルに供給するガス量を増やすと、助燃性ガスが1点に集中しすぎて火炎が大きく乱れ、堆積効率が低下する。
他方、集中することを避けて、小口径ガス噴出ノズルの数を抑える、もしくは、小口径ガス噴出ノズルに供給するガス量を減らすと、ガスの混合効率が低下し、マルチノズル型のメリットが薄れ、堆積効率が向上しない。
【0007】
また、特許文献4の様な方法では、複数の列間同士のガス集中は避けられるが、同一列のガスは集中する。そのため、可燃性ガス噴出ノズル内に同じ本数の小口径ガス噴出ノズルを収納する場合、同一列のノズルの本数を減らしてノズル列を増やす必要が有り、その結果、これらを覆う外管の口径が大きくなり、可燃性ガスの使用量が大幅に増えることになる。
このため本発明は、火炎の乱れを抑えて、堆積効率を高めることができる多孔質ガラス母材製造用バーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の多孔質ガラス母材製造用バーナは、中心のガラス原料ガス噴出ノズルの外側に、ガラス原料ガス噴出ノズルに対し同心円状に1列または複数列に配置される小口径助燃性ガス噴出ノズルを内包する可燃性ガス噴出ノズルを備えたガラス微粒子合成用バーナにおいて、同一列上に配置された上記小口径助燃性ガス噴出ノズルが、同一焦点を持つノズルの組合せを2組以上含み、かつ、それぞれの組の持つ焦点が異なることを特徴としている。
なお、前記同一列の小口径助燃性ガス噴出ノズルは、同一焦点を持つノズルが互いに隣接していないように配置されていることが好ましい。また、前記小口径助燃性ガス噴出ノズルの開口径が、焦点によって異なっていることが好ましい。さらに、可燃性ガス噴出ノズル内に、複数列の小口径助燃性ガス噴出ノズルを有し、より内側に配列されたノズルほど焦点距離を短くするのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
このように、同一列の小口径助燃性ガス噴出ノズル(以下、単に小口径ノズルと称する) の焦点距離を変えることで、ガス混合効率を維持しながら、噴出されたガスの焦点を分散させることができ、火炎の乱れを抑えて、堆積効率を高めることができる。さらに、同一列上で同一焦点を持つノズルが互いに隣接していないことで、火炎の直進性を損なうことなく堆積効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】光ファイバ母材の製造装置の一例を示す概略図である。
図2】小口径ノズルを有するガラス微粒子合成用バーナの一例を示す横断面図である。
図3】従来の小口径ノズルを有するバーナの横断面図である。
図4図3に示した小口径ノズルの縦断面である。
図5】本発明の、同一列で焦点の異なる2組の小口径ノズルを有するバーナの一例を示す横断面である。
図6図5に示した小口径ノズルの縦断面である。
図7】本発明の、同一列で焦点の異なる2組の小口径ノズルを有するバーナの他の例を示す横断面であり、各焦点の小口径ノズルの開口サイズが異なるパターンを示す。
図8図7に示した小口径ノズルの縦断面である。
図9】本発明の、焦点距離の異なる3組の小口径ノズルを有する例を示す横断面である。
図10図9に示した小口径ノズルの縦断面である。
図11】本発明の、同一列において焦点距離の異なる3組の小口径ノズルを有する例を示す横断面である。
図12図11に示した小口径ノズルの縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されず、特許請求の範囲内において様々な態様が可能である。
以下、本発明の光ファイバ母材の製造方法及び装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、光ファイバ母材の製造装置の一例を示したものである。
図1において出発部材は、コアロッド1の両端部にダミーロッド2を溶着したもので、この出発部材は不図示の基材支持部材により軸回りに回転自在に支持されている。この出発部材に向かって、左右に移動自在のバーナ3が配置されている。ここで、バーナ3からファイバ用原料、例えばSiCl4 等の蒸気と燃焼用ガス(水素ガスおよび酸素ガス)とを吹き付け、酸水素火炎中で加水分解させて、スート5を合成し、これを出発部材1に堆積させて光ファイバ用多孔質母材を形成する。
【0013】
次に、このような外付け法(OVD法)による光ファイバ母材の製造方法について説明する。まず、不図示の基材支持部により支持された出発部材を軸回りに回転モータ4で回転させながら、この出発部材に向けてバーナ3から火炎を噴射して、出発部材上にスートを堆積させる。そして、バーナ3を不図示のバーナガイド機構により、長手方向に往復移動させて堆積層を形成し、光ファイバ用多孔質母材を製造する。堆積しなかったガラス微粒子(スート)は、排気口6から排出される。
得られた光ファイバ用多孔質ガラス母材をヒータと断熱材からなる加熱炉内を通過させ、脱水・透明ガラス化することで、光ファイバ母材が得られる。
【0014】
バーナは、図2に示すような同芯5重管構造を有するマルチノズル型のバーナが使用される。バーナは、第3管内に、中心管に対し同心円状一列に小口径ノズルが8本配置されている。なお、各ノズルには、図3に示すように、0時位置のノズルAから時計回りに順にHまで記号が付されている。
この小口径ノズルには、図3,4に示すように、同一列8本の焦点距離を同一にした従来型バーナと、図5、6に示すように、2種類の焦点距離を互い違いに計4本ずつ配置した本発明型バーナの2種類を用意し、表1に示すように焦点距離を変えた各3種類計6種類のバーナを用意した。
【0015】
バーナに導入するガスは、第一ガス噴出ノズル7にガラス原料ガスSiClと助燃性ガスO、第二ガス噴出ノズル8にシールガスN、第三ガス噴出ノズル10に可燃性ガスH、第四ガス噴出ノズル11にシールガスN、第五ガス噴出ノズル12に助燃性ガスO、小口径ノズル9に助燃性ガスOを供給した。
ここで、同一種類のバーナを3本並べて配置し、外径60mm、長さ1500mmのコアロッドの両端部に外径60mmのダミーロッドを溶着した出発部材上に、多孔質ガラス微粒子を100kg堆積させた。
この結果、各バーナの堆積効率は、表1に示すような結果が得られた。
【0016】
【表1】
【0017】
表1より、従来型では、焦点距離を150mmに設定した従来型2の堆積効率が63.7%で、最も高かった。
他方、2種類の焦点距離を交互に配置した本発明型バーナは、高いガス混合効率と安定した火炎の効果で堆積効率が67.4〜68.3%となり、3種類とも従来型よりも堆積効率が極めて向上した。特に、従来型で最も堆積効率の良かった焦点距離150mmを中心に焦点距離を設定した本発明3のバーナの堆積効率が最も高くなった。
【0018】
さらに、本発明の多孔質ガラス母材製造用バーナは、様々な態様が可能であり、例えば、以下のような例が挙げられる。
図7、8は、焦点の異なる2組の小口径ノズルを有するバーナの他の例を示す横断面であり、各焦点の小口径ノズルの開口サイズが異なるパターンを示している。図において、小口径ノズルは、開口径が大きく、焦点距離Lを有するA,C,E,Gの群と、より開口径が小さく、焦点距離Lを有するB,D,F,Hの群からなっている。
【0019】
図9、10は、焦点距離の異なる3組の小口径ノズルを有する例を示している。小口径ノズルの外側の列は、焦点距離Lを有するA,C,E,Gの群と、焦点距離Lを有するB,D,F,Hの群からなり、小口径ノズルの内側の列は、最も短い焦点距離Lを有している。
【0020】
図11、12に示す例は、同一列において、焦点距離の異なる3組の小口径ノズルを有する例を示している。本例の小口径ノズル群は、焦点距離Lを有するA,D,G,Jの群と、焦点距離Lを有するB,E,H,Kの群と、焦点距離Lを有するC,F,I,Lの群からなっている。
【0021】
以上、説明したように本実施例に示したバーナは、同一列上に配置された小口径ノズルが、同一焦点を持つノズルの組合せを2組以上備え、かつ、それぞれの組の持つ焦点が異なっていることにより、ガス混合効率を維持しながら、噴射されたガスの焦点を分散させることで、火炎の乱れを抑えることができ、さらに、同一列上で同一焦点を持つノズルが互いに隣接していないことで、火炎の直進性を損なうことなく、堆積効率を向上させることができた。
【0022】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲に限定されず、上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることもできることは明白である。
【符号の説明】
【0023】
1 コアロッド、
2 ダミーロッド、
3 バーナ、
4 回転モータ、
5 スート、
6 排気口、
7 第一ガス噴出ノズル、
8 第二ガス噴出ノズル、
9 小口径ノズル、
10 第三ガス噴出ノズル、
11 第四ガス噴出ノズル、
12 第五ガス噴出ノズル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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