特許第6066160号(P6066160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6066160放射能汚染物質洗浄剤および放射能汚染物質の洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066160
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】放射能汚染物質洗浄剤および放射能汚染物質の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/12 20060101AFI20170116BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
   G21F9/12 511A
   G21F9/28 521A
   G21F9/28 525A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-42970(P2012-42970)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-178197(P2013-178197A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 栄一
(72)【発明者】
【氏名】明石 満
(72)【発明者】
【氏名】木田 敏之
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−011580(JP,A)
【文献】 特開2013−137289(JP,A)
【文献】 特開2013−124965(JP,A)
【文献】 特開平07−185513(JP,A)
【文献】 特表平08−511091(JP,A)
【文献】 特開2013−160666(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/065744(WO,A1)
【文献】 特開2013−050313(JP,A)
【文献】 特開2013−088391(JP,A)
【文献】 特開2013−124960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/12
G21F 9/28
B09C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、塩酸、硫酸、硝酸およびこれらの2以上の混合物の水溶液からなる群から選択される酸性溶媒、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウムおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される金属塩化物、およびポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される分散剤を含む、放射能汚染物質洗浄剤。
【請求項2】
放射性物質が放射性セシウムである、請求項に記載の洗浄剤。
【請求項3】
水、塩酸、硫酸、硝酸およびこれらの2以上の混合物の水溶液からなる群から選択される酸性溶媒、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウムおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される金属塩化物、およびポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される分散剤を含む放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌またはゼオライトとを接触させ、土壌またはゼオライトに含有する放射性物質をイオン交換によって除去し、放射性物質を含有しない土壌またはゼオライトを得る、放射性物質を含む土壌またはゼオライトの洗浄方法。
【請求項4】
放射性物質が放射性セシウムである、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射性汚染物質の洗浄剤に関するものである。さらに本発明は、原子力発電所や放射性同位元素取扱等事業所をはじめとする原子力関連施設から放出され、土壌に吸着された放射性物質の除去や、除染作業により発生した放射能汚染物質を浄化するための試剤およびそれを用いた洗浄方法に関する。特に、原子力関連施設の事故に伴い発生した放射性物質を含む土壌やゼオライトから放射性物質を効率よく分離除去し、周辺住民や作業者の被ばくを最小限に抑えることを可能にする試剤およびその洗浄方法に関するものである。より詳細には、本発明は、特に土壌やアスファルト、コンクリート、金属類、無機吸着材に放射性物質が吸着した場合に、これを除去することのできる洗浄剤、および、これを用いて放射性物質を実質的に含有しない土壌やアスファルト、コンクリート、金属類、無機吸着材を得る方法に関する。本発明は、水に酸とアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、界面活性剤、分散剤を溶解させることにより得ることができる洗浄剤を用いて、土壌やアスファルト、コンクリート、金属類、無機吸着材に吸着された放射性物質を選択的に除去する方法に関する。さらに本発明は、放射性物質を選択的に除去できる洗浄剤の配合物や配合量に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に大量に放出された放射性セシウム(Cs134、Cs137)は、人体や動植物に対して強い毒性を示す化合物である。特に放射性セシウム(Cs137)は、生体内での振る舞いがカリウムやルビジウムによく似ているため、体内に吸収され、β、γ線による内部被ばくを引き起こす。また、放射性セシウム(Cs137)は、半減期約30.1年のβ、γ核種であり、有害性が長期間に渡って持続する。このため、放射性セシウム(Cs134、Cs137)が大気中に放出されて、これが土壌等に吸着された場合は、直ちに除去する必要がある。
【0003】
放射性セシウムを含む放射能汚染物質の浄化技術としては、超音波、プルシアンブルー、シュウ酸を用いる手法が開発されている。しかしながら超音波を用いる物理的な手法は、大量に存在する放射能汚染物質の浄化処理が困難であり、またプルシアンブルーなどの不燃性の無機物質を用いる手法は、放射能汚染物を吸着させた物質の減容処理が困難であるという問題がある。一方、シュウ酸などの有機溶媒を用いる方法は、有機溶媒自体の毒性の問題があり、これを大量に使用する場合には、別の危険性を伴い得るという問題があった。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2006−78336号)には、原子力施設から発生する除染対象物を、アルカリ除染工程と酸除染工程とに付し、アルカリ除染槽が振動攪拌機及び/又は超音波振動子を有するものである、放射性物質除去方法が開示されている。超音波振動子を用いる方法は、大量に存在する放射能汚染物質や、大型の放射能汚染物質の除染は極めて困難である。
【0005】
特許文献2(特開2011−200856号)には、プルシアンブルー型金属錯体を導電体上に配設した複合材料に所定の陽イオンを含有する溶液を接触させて陽イオンをプルシアンブルー型金属錯体に吸着させることによる、液体に含まれる陽イオンを除去する方法が開示されている。金属錯体を用いる本方法は、確実に放射性物質である陽イオンを除去することができるが、大量に存在する放射性汚染物質を除染することは難しい。
特許文献3(特開平6−59095号)には、放射能汚染物をd−リモネンを用いて除染する方法が開示されている。リモネン自体の毒性が比較的低く、放射能汚染物を除染する方法として有効であると考えられるが、より簡易に入手でき、効率的な除染作業が可能な洗浄剤の開発が望まれる。
【0006】
非特許文献1には、低濃度の酸水溶液を使用してセシウムを水溶液中に抽出した後、プルシアンブルーで放射性セシウムを回収する、放射性セシウム抽出−回収する方法が開示されている。非特許文献1に開示される方法は、セシウムを効率的に回収することができるが、セシウムを吸着後のプルシアンブルーをどのように処理するかについては何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−78336号
【特許文献2】特開2011−200856号
【特許文献3】特開平6−59095号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本経済新聞 2011年8月31日 独立行政法人産業総合研究所プレスリリース
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、土壌やゼオライトに含有される放射性物質、特に放射性セシウムを選択的に除去することにより、土壌やゼオライトの浄化を目的とする放射能汚染物質の洗浄剤を提供することを目的とする。また本発明は、かかる放射能汚染物質の洗浄剤を使用して、土壌やゼオライトに含有される放射性物質を選択的に除去し、以って放射性物質を含有しない土壌やゼオライトを得る方法を提供する。
【0010】
本発明者らは、水、酸性溶媒、塩化物、界面活性剤、および分散剤含む洗浄剤を使用して、土壌やゼオライト中に吸着された放射性物質を除去し、放射性物質を含まない土壌やゼオライトを回収できることを見いだした。この放射能汚染物質洗浄剤を、放射性物質を含む土壌やゼオライトに直接投入し、撹拌する等の手段により効率的に放射性物質を除去できる。
【0011】
本発明の態様は以下の通りである。
1. 水、酸性溶媒、金属塩化物、および分散剤を含む、放射能汚染物質洗浄剤。
2. さらに界面活性剤を含む、上記1に記載の洗浄剤。
3. 酸性溶媒が、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、リン酸およびこれらの2以上の混合物の水溶液からなる群から選択される、上記1または2に記載の洗浄剤。
4. 金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化アンモニウムおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記1〜3のいずれか1項に記載の洗浄剤。
5. 分散剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記1〜4のいずれか1項に記載の洗浄剤。
6. 界面活性剤が、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記2〜5のいずれか1項に記載の洗浄剤。
7. 放射性物質が放射性セシウムである、上記1〜6のいずれか1項に記載の洗浄剤。
8. 水、酸性溶媒、金属塩化物、および分散剤を含む放射能汚染物質洗浄剤と、放射性物質を含む土壌またはゼオライトとを接触させ、土壌またはゼオライトに含有する放射性物質をイオン交換によって除去し、放射性物質を含有しない土壌またはゼオライトを得る、放射性物質を含む土壌またはゼオライトの洗浄方法。
9. 放射能汚染物質洗浄剤がさらに界面活性剤を含む、上記8に記載の方法。
10. 酸性溶媒が、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、リン酸およびこれらの2以上の混合物の水溶液からなる群から選択される、上記8または9に記載の方法。
11. 金属塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化アンモニウムおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記8〜10のいずれか1項に記載の方法。
12. 分散剤が、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記8〜11のいずれか1項に記載の方法。
13. 界面活性剤が、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテルおよびこれらの2以上の混合物からなる群から選択される、上記9〜12のいずれか1項に記載の方法。
14. 放射性物質が放射性セシウムである、上記8〜13のいずれか1項に記載の方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、放射能汚染物質とは、放射性物質を含み、汚染された状態の全ての物質を指す。例えば、放射性物質であるヨウ素、セシウム、ストロンチウム、プルトニウムなどを含有する水、土、大気のほか、放射性物質と接触した紙類、衣類など、放射性物質で汚染されうる全てのものを意味する。特に本発明の放射能汚染物質洗浄剤は、放射性物質で汚染された土壌またはゼオライトの洗浄に有効である。
【0013】
土壌に含まれている2:1型層状ケイ酸塩鉱物は、ケイ素と酸素とからなるシート(ケイ素四面体シート)アルミニウムと酸素とからなるシート(アルミニウム八面体シート)を挟んだ構造を有する層を一単位として、これらが積み重なってできていることが知られている。このうち、ケイ素四面体シートのケイ素の一部がアルミニウムに置き換わる、あるいはアルミニウム八面体シートのアルミニウムの一部がケイ素に置き換わること(同型置換)で、シート全体が負電荷を有している。この様子を模式的に示した図が図1である。通常、隣接するケイ素四面体シートとケイ素四面体シートとの層間にナトリウムイオン、カルシウムイオン、カリウムイオンなどの陽イオンが入ることにより負電荷が中和された状態になる。
【0014】
ケイ素四面体シートを上から見た模式図(図2)に表されるように、ケイ素四面体シートにはセシウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンとほぼ同じ大きさの穴が空いており、ここにこれらの陽イオンが固定されやすくなっている。これはセシウムイオンが環境中に放出された場合、ケイ素四面体シートの穴に取り込まれ、しっかり固定され易いことを意味する(図3)。このため、セシウムイオンは土壌に取り込まれると、通常の洗浄剤による通常の洗浄方法では除染することが困難であり、長期間にわたり土壌中に残存するおそれがある。したがってセシウムイオンが取り込まれた土壌を洗浄するための洗浄剤は、土壌中からセシウムイオンを「引きはがし」、引きはがしたセシウムイオンを土壌から「追い出す」ことを意図する成分を含有している必要がある。
【0015】
本発明者らは、放射性セシウムを含有する土壌あるいはゼオライトにおいて、より効率的な除染効果が得られる洗浄剤組成物及び浄化方法について鋭意研究した結果、特に酸性溶媒による土壌あるいはゼオライト内のカチオン性低減効果と塩化物の使用による放射性セシウムの置換効果、分散剤の使用による土壌あるいはゼオライトを水中に拡散する効果を知見し、本発明を完成するに至った。
【0016】
本発明の一態様は、水、酸性溶媒、金属塩化物、および分散剤を含む、放射能汚染物質洗浄剤である。
【0017】
本発明の放射能汚染物質洗浄剤に含まれる水は、以下に説明する洗浄成分を溶解するための溶剤のひとつであり、通常洗浄剤に用いられるレベルの純度を有する水であればよい。精製水、純水、脱イオン水などを好適に用いることができる。
【0018】
酸性溶媒は、土壌中に含まれる2:1型層状ケイ酸塩鉱物に存在する負電荷を弱め、これを中和する働きをする。2:1型層状ケイ酸塩鉱物に存在する負電荷を酸性溶媒が弱め、負電荷に強く固定されたセシウムイオンを引きはがしやすくすることができる。水溶液の状態で酸性を示すものであれば、どのような酸性溶媒を用いてもよいが、2:1型層状ケイ酸塩鉱物に存在する負電荷を弱める作用を有する好適な酸性溶媒としては、強酸性を示す塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、またはリン酸の水溶液が挙げられ、これらの2以上の混合物を用いることもできる。酸性溶媒は、水の重量に対して0.05%〜20%、好ましくは0.1%〜10%、さらに好ましくは0.5%〜2%混合することができる。
【0019】
金属塩化物は、金属塩化物中の金属陽イオンが、土壌から引きはがされたセシウムイオンと置換することにより、セシウムイオンを洗浄剤中に追い出す働きをする。金属塩化物であれば如何なる金属塩を用いてもよいが、金属陽イオン部分が比較的セシウムイオンと置き換わりやすい金属塩化物として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、または塩化バリウムが挙げられこれらの2以上の混合物を用いることもできる。例えば金属塩化物として塩化マグネシウムを用いた場合、2価のセシウムイオンが2価のマグネシウムイオンと置換することにより、セシウムイオンが洗浄剤中に放出されることになる。金属塩化物は、水の重量に対して0.05%〜50%、好ましくは0.1%〜40%、さらに好ましくは0.5%〜30%混合することができる。
【0020】
分散剤は、土壌中の土や砂を均一に分散させ、水中に拡散させやすくする働きがある。すなわち分散剤は土壌と本発明の洗浄剤の洗浄成分とをよく接触させるために使用する。分散剤は、土壌に吸着する親油性部位と、水と親和性を有する親水性部位とをあわせもつ化合物であることが好ましい。本発明に用いる分散剤として、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロースが好適である。これらの分散剤の2以上を混合して用いることもできる。分散剤は、水の重量に対して0.1%〜20%、好ましくは0.5%〜10%、さらに好ましくは1%〜5%混合することができる。
【0021】
本発明の放射能汚染物質洗浄剤には、界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、分散剤と同様に、土壌中の土や砂を均一に分散させ、水中に拡散させやすくする働きがある。広く用いられている陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のうち都合のよい界面活性剤を適宜用いることができるが、本発明に用いる界面活性剤として、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム、またはオクタエチレングリコールモノドデシルエーテルが好適である。これらの界面活性剤の2以上を混合して用いることもできる。界面活性剤を添加する場合は、水の重量に対して0.05%〜20%、好ましくは0.5%〜10%、さらに好ましくは1%〜5%混合することができる。
【0022】
これらの成分に加えて、ケイ素四面体シート中の陽イオンとセシウムイオンとの交換を促進させるためのイオン交換促進剤を添加することができる。このような機能が期待できる化合物として、例えばシクロデキストリン類が挙げられる。この他、使用の現場の状況に応じて、通常洗浄剤に使用される添加剤を適宜加えることができる。例えば、酸化防止剤、安定剤、発泡剤等を使用することができる。
【0023】
本発明の放射能汚染物質洗浄剤は、各成分を適切な量で混合することにより得られる。例えば、塩酸、塩化マグネシウム、およびヒドロキシエチルセルロースを含む放射能汚染物質洗浄剤は、これらの各成分を水に添加し、よく攪拌して混合水溶液の状態で得ることができる。例えば、水の重量に対して塩酸を0.1%〜10%、塩化マグネシウムを1%〜40%、およびヒドロキシエチルセルロースを0.1%〜10%となるように秤量し、これらを混合することができる。さらに好ましい放射能汚染物質洗浄剤は、水の重量に対して塩酸を0.5%〜2%、塩化マグネシウムを10%〜20%、およびヒドロキシエチルセルロースを0.5%〜2%含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】2:1型層状ケイ酸塩鉱物の構造を模式的に表した図である。
図2】ケイ素四面体シートを上から見たときの構造を模式的に表した図である。
図3】2:1型層状ケイ酸塩鉱物中に、セシウムイオンが固定されている様子を模式的に表した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の放射能汚染物質洗浄剤は、放射能汚染物質と接触させて、放射性物質を除染することができる。例えば本発明の放射能汚染物質洗浄剤を土壌の除染に用いる場合、含有されている放射性物質の量にもよるが、通常は放射性物質を含有する土の体積を基準として1倍〜1000倍、好ましくは5倍〜500倍、さらに好ましくは10倍〜100倍の放射能汚染物質洗浄剤を使用する。除染すべき土を適応な容器に入れ、ここに本発明の汚染物質洗浄剤を添加する。放射性物質を含有する土と洗浄剤とを攪拌してよく混合し、次いで静置して土を沈殿させる。放射性物質は上澄み液に移動するため、これを除くことにより、放射性物質を含有しない土を得ることができる。あるいは、土壌の放射能汚染が広範にわたっている場合、放射性物質を含有する土壌に本発明の放射能汚染物質洗浄剤を直接噴霧して、除染することもできる。この場合、除染対象面積1mに対し、およそ10L〜1000L、好ましくは30L〜500L、さらに好ましくは50L〜100Lの放射能汚染物質洗浄剤を噴射することができる。
【0026】
本発明の放射能汚染物質洗浄剤をゼオライトの除染に用いる場合、含有されている放射性物質の量にもよるが、通常は放射性物質を含有するゼオライトの体積を基準として1倍〜1000倍、好ましくは2倍〜500倍、さらに好ましくは5倍〜100倍の放射能汚染物質洗浄剤を使用する。除染すべきゼオライトを適応な容器に入れ、ここに本発明の汚染物質洗浄剤を添加する。放射性物質を含有するゼオライトと洗浄剤とを攪拌してよく混合し、次いで静置してゼオライトを沈殿させる。放射性物質は上澄み液に移動するため、これを除くことにより、放射性物質を含有しないゼオライトを得ることができる。ゼオライトを除染する場合は、ゼオライトをカラム状容器に詰め、ここに本発明の放射能汚染物質洗浄剤を流通させることにより放射性物質を除去することも可能である。この場合、含有されている放射性物質の量にもよるが、通常は放射性物質を含有するゼオライトの体積を基準として1倍〜100倍、好ましくは2倍〜50倍、さらに好ましくは5倍〜10倍の放射能汚染物質洗浄剤を使用する。
【0027】
本発明の放射能汚染物質洗浄剤は、土、ゼオライトの他、放射能で汚染された物質全般の除染に用いることができる。例えば、放射性物質がかかった書類などの紙類、家屋、屋根、壁、樹木、アスファルトまたはコンクリート、除染作業者の衣類等の除染を行うことができる。本発明の放射能汚染物質洗浄剤は、特に除染し難いと云われているセシウムを効率的に除去することができるため、安全な環境を提供することが可能である。本発明の放射能汚染物質洗浄剤は、市販の試薬レベルの薬品を混合するだけで製造することができるため、使用に際して必要量を製造し、これを簡易に用いることができる。
【実施例】
【0028】
[洗浄剤1]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-01)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化ナトリウム(2 g、東京化成)、塩化カリウム(2 g、東京化成)、塩化セシウム(0.2 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(2 g、東京化成)、塩化カルシウム(2 g、東京化成)、塩化ストロンチウム(0.2 g、Aldrich)、塩化バリウム(2 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0029】
[洗浄剤2]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-02)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化ナトリウム(2 g、東京化成)、塩化カリウム(2 g、東京化成)、塩化セシウム(0.2 g、Aldrich)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)を入れて室温で撹拌した。
【0030】
[洗浄剤3]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-03)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化ナトリウム(2 g、東京化成)、塩化カリウム(2 g、東京化成)、塩化セシウム(0.2 g、Aldrich)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0031】
[洗浄剤4]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-04)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化マグネシウム(2 g、東京化成)、塩化カルシウム(2 g、東京化成)、塩化ストロンチウム(0.2 g、Aldrich)、塩化バリウム(2 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)を入れて室温で撹拌した。
【0032】
[洗浄剤5]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-05)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化マグネシウム(2 g、東京化成)、塩化カルシウム(2 g、東京化成)、塩化ストロンチウム(0.2 g、Aldrich)、塩化バリウム(2 g、東京化成)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0033】
[洗浄剤6]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-06)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化ナトリウム(2 g、東京化成)、塩化カリウム(2 g、東京化成)、塩化セシウム(0.2 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(2 g、東京化成)、塩化カルシウム(2 g、東京化成)、塩化ストロンチウム(0.2 g、Aldrich)、塩化バリウム(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0034】
[洗浄剤7]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-07)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)とヨウ化ナトリウム(2 g、東京化成)、ヨウ化カリウム(2 g、東京化成)、ヨウ化セシウム(0.2 g、Aldrich)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)を入れて室温で撹拌した。
【0035】
[洗浄剤8]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-08)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化ナトリウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0036】
[洗浄剤9]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-09)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0037】
[洗浄剤10]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-10)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化セシウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0038】
[洗浄剤11]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-11)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化マグネシウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0039】
[洗浄剤12]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-12)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カルシウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0040】
[洗浄剤13]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-13)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化バリウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0041】
[洗浄剤14]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-14)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と硫酸バリウム(10 g、東京化成)、α-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、β-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、γ-シクロデキストリン(0.5 g、純正化学)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0042】
[洗浄剤15]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-15)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化セシウム(10 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(10 g、東京化成)、塩化ドデシルメチルアンモニウム(0.5 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0043】
[洗浄剤16]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-16)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化セシウム(10 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(10 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(0.5 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(0.5 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0044】
[洗浄剤17]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-17)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化セシウム(10 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(10 g、東京化成)、ポリエチレングリコール(0.5 g、Aldrich)を入れて室温で撹拌した。
【0045】
[洗浄剤18]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-18)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化セシウム(10 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(10 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(1 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(1 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0046】
[洗浄剤19]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-19)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化マグネシウム(20 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(1 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(1 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0047】
[洗浄剤20]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-20)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化マグネシウム(20 g、東京化成)、塩化アンモニウム(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0048】
[洗浄剤21]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-21)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化マグネシウム(20 g、東京化成)、塩酸(2 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(1 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(1 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0049】
[洗浄剤22]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-22)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化カリウム(10 g、東京化成)、塩化マグネシウム(20 g、東京化成)、塩酸(2 g、東京化成)、塩化アンモニウム(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0050】
[洗浄剤23]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-23)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と硫酸カリウム(10 g、東京化成)、硫酸マグネシウム(20 g、東京化成)、塩酸(2 g、東京化成)、塩化アンモニウム(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0051】
[洗浄剤24]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-24)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化マグネシウム(40 g、東京化成)、塩酸(3 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0052】
[洗浄剤25]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-25)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化マグネシウム(40 g、東京化成)、塩酸(3 g、東京化成)、ヒドロキシプロピルセルロース(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0053】
[洗浄剤26]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-26)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化セシウム(20 g、Aldrich)、塩化マグネシウム(20 g、東京化成)、塩酸(3 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0054】
[洗浄剤27]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-27)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩化マグネシウム(20 g、東京化成)、塩化アンモニウム(20 g、東京化成)、塩酸(3 g、東京化成)、ヒドロキシエチルセルロース(2 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0055】
[洗浄剤28]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-28)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)と塩酸(3 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
【0056】
[洗浄剤29]放射能汚染物質洗浄剤の調製(DG-29)
500 mLの広口ビンに、水(200 g)とシュウ酸(3 g、東京化成)を入れて室温で撹拌した。
これらの洗浄剤配合例のうち、酸性溶媒、金属塩化物および分散剤を含有する本発明の洗浄剤は、洗浄剤21(DG−21)、24(DG−24)、25(DG−25)、26(DG−26)、および27(DG−27)である。
【0057】
調製した洗浄剤の放射性物質除去性能の評価(1)(洗浄剤DG-01〜DG-17)
300 mLの三角フラスコに、放射能汚染物質(放射能汚染土壌) (福島県西部より採取、20 g、セシウム137:8,808 Bq/kg、セシウム134:7,612 Bq/kg)と各洗浄剤(200 g、DG-01〜DG-17)とを入れ、750rpmで24時間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、放射能汚染土壌を回収した。回収した放射能汚染土壌中の放射性セシウム濃度を線量測定装置(EMF211、EMFジャパン株式会社)で測定し、放射性セシウムの除去率を算出した。
【0058】
調製した洗浄剤の放射性物質除去性能の評価(2)(洗浄剤DG-18〜DG-23)
300 mLの三角フラスコに、放射能汚染土壌(福島県西部より採取、採取場所は上記評価(1)に同じ、3 g、セシウム137:99,508 Bq/kg、セシウム134:88,598 Bq/kg)と各洗浄剤(200 g、DG-18〜DG-23)とを入れ、750 rpmで24時間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、放射能汚染土壌を回収した。回収した放射能汚染土壌中の放射性セシウム濃度を線量測定装置(EMF211、EMFジャパン株式会社)で測定し、放射性セシウムの除去率を算出した。
【0059】
調製した洗浄剤の放射性物質除去性能の評価(3)(洗浄剤DG-24〜DG-29)
300 mLの三角フラスコに、放射能汚染土壌(福島県西部より採取、採取場所は上記評価(1)に同じ、3 g、セシウム137:373,905 Bq/kg、セシウム134:260,268 Bq/kg)と各洗浄剤(200 g、DG-24〜DG-29)とを入れ、750 rpmで3時間撹拌した。撹拌終了後、ろ過を行い、放射能汚染土壌を回収した。回収した放射能汚染土壌中の放射性セシウム濃度を線量測定装置(EMF211、EMFジャパン株式会社)で測定し、放射性セシウムの除去率を算出した。
各洗浄剤のセシウム除去率を表1に示す。
【表1】
【0060】
上記の通り、酸性溶媒、金属塩化物、および分散剤を含む本発明の放射能汚染物質洗浄剤(DG−21、DG−24、DG−25、DG−26、およびDG−27)は、他の洗浄剤と比較してセシウム137およびセシウム134を効率的に除去することができた。これらの洗浄剤はおよそ50%から70%以上のセシウム137およびセシウム134を除去できていることから、例えば本発明の方法を複数回繰り返すなどしてセシウム137およびセシウム134をほぼ100%除去した土を得ることができると考えられる。
次に、本発明の放射能汚染物質洗浄剤を用いて、別の場所より採取した放射能汚染土壌からセシウムイオンを除去することができるかどうかを確認すべく、以下の実験を行った。
【0061】
[洗浄剤A]放射能汚染物質洗浄剤の調製
1 Lのビーカーに水(344 g)を入れた後、ビーカーを氷浴で冷却した。そして冷却下で撹拌しながら35%〜37%塩酸(56 g、関東化学株式会社)をゆっくりと加えた後、さらに塩化マグネシウム(80 g、東京化成工業株式会社)をゆっくりと加えた。添加終了後、ビーカーを氷浴から取り出し室温に戻してから、ヒドロキシプロピルセルロース(6〜10 mPa.s、4 g、東京化成工業株式会社)を加え、完全に溶解するまで撹拌した。
【0062】
調製した洗浄剤Aの放射性物質除去性能の評価(4)
300 mLの三角フラスコに放射能汚染土壌(福島県南相馬市より採取、3 g、セシウム137:470858.4 Bq/kg、セシウム134:325683.9 Bq/kg)と上で製造した洗浄剤A(200 g)を加えた後、80℃で3時間撹拌(500 rpm)した。撹拌終了後、30分静置した。静置後、上澄み液を除去してから濾過を行い、放射能汚染土壌を回収した。回収した放射能汚染土壌中の放射性セシウム濃度を線量測定装置(EMF211、EMFジャパン株式会社)で測定し、放射性セシウムの除去率を算出した。セシウム137の除去率は91%(41824.1 Bq/kgに減少)、セシウム134の除去率は90%(31693.0 Bq/kgに減少)であった。
図1
図2
図3