(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066411
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
C10J 3/72 20060101AFI20170116BHJP
C10J 3/78 20060101ALI20170116BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20170116BHJP
C02F 11/08 20060101ALI20170116BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20170116BHJP
B01J 21/18 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
C10J3/72 AZAB
C10J3/72 B
C10J3/78
C10J3/00 A
C02F11/08
B09B3/00 304Z
B01J21/18 M
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-64679(P2013-64679)
(22)【出願日】2013年3月26日
(65)【公開番号】特開2014-189590(P2014-189590A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】592148878
【氏名又は名称】株式会社東洋高圧
(73)【特許権者】
【識別番号】596133119
【氏名又は名称】中電プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】和田 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】山村 幸政
(72)【発明者】
【氏名】清水 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】内山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾山 圭二
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】松村 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】美濃輪 智朗
(72)【発明者】
【氏名】野口 琢史
(72)【発明者】
【氏名】川井 良文
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−242697(JP,A)
【文献】
特開2008−246342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
B09B 3/00
C02F 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水性バイオマスに活性炭を懸濁した懸濁液に懸濁させた前記活性炭を触媒として、前記バイオマスを超臨界水でガス化処理するガス化反応器と、
前記ガス化反応器にて生成された生成ガス及び灰分、並びに前記活性炭が水に懸濁された混合物を、生成ガスを含む気体成分と、灰分及び活性炭が水に懸濁された液体成分とに分離する気液分離器と、
前記ガス化反応器から排出される前記混合物の熱を利用して、前記ガス化反応器で超臨界水によりガス化処理される前記懸濁液を予熱する熱交換器と、
前記熱交換器から前記ガス化反応器に供給される前記懸濁液を予熱する予熱器と、
を備える超臨界水ガス化システムにおいて、
前記超臨界水ガス化システムへガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始して、前記懸濁液を前記超臨界水ガス化システムにおける各装置に供給する前に、活性炭を懸濁させた水をあらかじめ供給することを特徴とする超臨界水ガス化システムの運転方法。
【請求項2】
前記活性炭を懸濁させた水の供給を、超臨界水ガス化システムに供給した前記活性炭を懸濁させた水と同程度の濃度の活性炭が懸濁された水が、前記気液分離器によって液体成分として分離され、排出されるまで行うことを特徴とする請求項1に記載の超臨界水ガス化システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化を効率よく行うことができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含水性バイオマス(焼酎残渣、採卵鶏糞等)を超臨界水でガス化する技術において、含水性バイオマスに活性炭を懸濁した懸濁液を前処理装置で熱水処理してバイオマスをスラリー化した後、超臨界水ガス化反応器において、懸濁液を熱水処理することにより得られた液状化物に懸濁させた活性炭を触媒として、該スラリー体を超臨界水で処理し、これにより生成された生成ガス及び灰分、並びに非金属系触媒が水に懸濁された混合物を、生成ガス等の気体成分と、灰分、活性炭及び水等の液体成分に分離するシステムが開発されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−174190号公報
【特許文献2】特開2010−172859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のシステムにおいては、システムの運転、すなわち懸濁液の供給を開始させてからバイオマスが処理されて灰分、活性炭及び水等の液体成分が排出される所定の時間が経過しても、液体成分には活性炭がほとんど懸濁されておらず、数時間が経過してから液体成分に、システムに供給している量と同程度の活性炭が懸濁されているようになるため、システムの運転開始時(システムの運転開始から懸濁液と同程度の量の活性炭を懸濁させた排液が液体成分として排出されるようになるまでの間)は、システムに供給した活性炭、すなわち含水性バイオマスに懸濁させた活性炭を有効に利用できないため、タール等を発生させ、配管閉塞を生じさせる可能性がある。
また、システムに供給している量と同程度の活性炭が液体成分に懸濁されている場合には、その液体成分から活性炭及び灰分を取り除いたものは透明であるが、活性炭がほとんど懸濁されていない液体成分から活性炭及び灰分を取り除いたものは白濁又は黄みがかっておりまたタール臭を有し、タール等の閉塞物の生成が確認できることから、システムの運転開始時には、システムに供給した活性炭の量に比べて、超臨界水ガス化反応器に供給される活性炭の量が少なくなり、超臨界水によるガス化反応に影響を及ぼし、タール等の閉塞物が生成されるものと考えられる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システムの運転開始時において、システムに供給した、含水性バイオマスに活性炭を懸濁した懸濁液における活性炭の濃度の低下を抑制して、タール等による装置の閉塞を防ぐとともに、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化を効率よく行うことができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、上記システムへガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始する前に、活性炭を懸濁させた水をあらかじめ供給することにより、活性炭を懸濁させた水をあらかじめ供給しない場合に比べて、システムへガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始してから、上記システムに供給された、バイオマスに活性炭を懸濁させた懸濁液に懸濁させた活性炭と同程度の量が、液体成分として早期に排出されること、すなわち、システムの運転開始時において、システムに供給した懸濁液中の活性炭の濃度が低下するのを抑制して、超臨界水ガス化反応器の上流における装置の、タール等による閉塞を防ぐとともに、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化を安定して効率よく行うことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明に係る超臨界水ガス化システムの運転方法は、含水性バイオマスに活性炭を懸濁した懸濁液に懸濁させた前記活性炭を触媒として、前記バイオマスを超臨界水でガス化処理するガス化反応器と、前記ガス化反応器にて生成された生成ガス及び灰分、並びに前記活性炭が水に懸濁された混合物を、生成ガスを含む気体成分と、灰分及び活性炭が水に懸濁された液体成分とに分離する気液分離器と、前記ガス化反応器から排出される前記混合物の熱を利用して、前記ガス化反応器で超臨界水によりガス化処理される前記懸濁液を予熱する熱交換器と、前記熱交換器から前記ガス化反応器に供給される前記懸濁液を予熱する予熱器と、を備える超臨界水ガス化システムにおいて、前記超臨界水ガス化システムへガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始して、前記懸濁液を前記超臨界水ガス化システムにおける各装置に供給する前に、活性炭を懸濁させた水をあらかじめ供給することを特徴とする。前記活性炭を懸濁させた水の供給は、超臨界水ガス化システムに供給した前記活性炭を懸濁させた水と同程度の濃度の活性炭が懸濁された水が、前記気液分離器によって液体成分として分離され、排出されるまで行ってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システムの運転開始時において、システムに供給した、含水性バイオマスに活性炭を懸濁した懸濁液における活性炭の濃度の低下を抑制して、タール等による装置の閉塞を防ぐとともに、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化を効率よく行うことができる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態において、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び図面等は、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0010】
==活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システムの構成==
図1は、本発明の一実施形態として説明する、活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システム(以下、単に「システム」と称する。)の概略構成を示す図である。
図1に示すように、システム100は、調整タンク1、破砕機2、供給ポンプ3、熱交換器30、予熱器40、ガス化反応器50、冷却器51、減圧器52、気液分離器60、ガスタンク61、加熱器62,63などを備えており、供給ポンプ3とスラリー供給装置21、スラリー供給装置21と熱交換器30、熱交換器30と予熱器40、予熱器40とガス化反応器50、ガス化反応器50と熱交換器30、熱交換器30と冷却器51、冷却器51と減圧器52、及び減圧器52と気液分離器60は、それぞれ配管によって接続されている。
【0011】
調整タンク1は、含水性バイオマス、活性炭、水などを混合するタンクである。システム100へガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始する前には、投入された水及び活性炭を混合して水に活性炭を懸濁し、システム100へガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始すると、投入された含水性バイオマス及び活性炭、並びに必要に応じて投入された水を混合して、含水性バイオマス(あるいはバイオマス溶液)に活性炭を懸濁し、ガス化原料(懸濁液)を調製する。なお、水の投入は、バイオマスの含水率に応じて行われる。上記含水性バイオマスは、例えば、焼酎残渣、採卵鶏糞、汚泥などである。また、上記活性炭としては、平均粒径200μm以下の粒子を用いることが好ましく、平均粒径200μm以下の多孔質の粒子を用いることがより好ましい。
【0012】
破砕機2は、調整タンク1で懸濁した懸濁液中のバイオマスを破砕して、あらかじめ均一な大きさ(好ましくは平均粒径が500μm以下、より好ましくは平均粒径が300μm以下)にするための装置である。
【0013】
ガス化反応器50は、破砕機2でバイオマスを破砕した懸濁液に懸濁させた活性炭を触媒として、懸濁液中のバイオマスを超臨界水でガス化する装置である。超臨界水によるバイオマスのガス化は、前記活性炭を利用して、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下でバイオマスを水熱処理することにより行われる。このようにバイオマスを超臨界水で処理することにより、バイオマスを分解し、水素ガス、メタン、エタン、エチレン等の燃料ガスを生成することができる。
【0014】
供給ポンプ3は、ガス化反応器50に破砕機2でバイオマスを破砕した懸濁液を供給する装置である。供給ポンプ3は、バイオマスを破砕した懸濁液を供給できる装置であれば特に制限されるものではなく、例えば、高圧ポンプやモーノポンプなどを用いることができる。
【0015】
熱交換器30は、ガス化反応器50において超臨界水によりガス化処理することにより生成された生成ガス及び灰分、並びに活性炭が水に懸濁され、かつ、ガス化反応器50から排出される排出物(混合物)の熱を利用して、ガス化反応器50で超臨界水によりガス化処理されるバイオマスを破砕した懸濁液を予熱する装置である。
【0016】
予熱器40は、熱交換器30からガス化反応器50に供給されるバイオマスを破砕した懸濁液を所定の温度に予熱する装置である。
冷却器51は、ガス化反応器50から排出された排出物(生成ガス、灰分及び活性炭が水に懸濁されたもの)を冷却するための装置である。冷却器51は、例えば、クーラーなどである。
減圧器52は、ガス化反応器50から排出された排出物の圧力を減圧する装置である。
【0017】
気液分離器60は、ガス化反応器50から排出された排出物を、生成ガス(燃料ガス等)を含む気体成分と、灰分及び活性炭が水に懸濁された液体成分とに分離する装置である。
ガスタンク61は、気液分離器60によって分離された気体成分(生成ガス)を貯える容器(好ましくは耐圧容器)である。
【0018】
加熱器62は、ガスタンク61に貯えられた生成ガス(燃料ガス)の一部あるいは燃料ガス(例えば、LPGなど)を燃焼してガス化反応器50を加熱し、バイオマスを粉砕した懸濁液を所定の温度に加熱する装置である。また、加熱器63は、ガスタンク61に貯えられた生成ガス(燃料ガス)の一部あるいは燃料ガス(例えば、LPGなど)を燃焼して予熱器40を加熱し、バイオマスを粉砕した懸濁液を所定の温度に加熱する装置である。
【0019】
なお、本実施の形態においては、加熱器63によりガスタンク61の生成ガスを燃焼することによって得られた排ガスの熱を利用して、バイオマスを粉砕した懸濁液を加熱する熱交換器をガス化反応器50に設けている。
加熱器62,63は、例えば、バーナーなどの、燃料ガスを燃焼して加熱する既存の装置である。
【0020】
また、本実施の形態においては、調整タンク1で、含水性バイオマス(あるいはバイオマスの溶液)に活性炭を懸濁した懸濁液、あるいは、活性炭を懸濁させた水を、供給ポンプ3により熱交換器30に供給しているが、供給ポンプ3で供給する直前に、活性炭を、破砕機2で破砕した含水性バイオマス(あるいはバイオマスの溶液)に懸濁し、あるいは、水に懸濁し、熱交換器30に供給してもよい。
【0021】
さらに、本実施の形態においては、1つの調整タンク1にて、含水性バイオマス(バイオマスの溶液)に活性炭を懸濁した懸濁液、及び、活性炭を懸濁させた水を調製することとしているが、含水性バイオマスに活性炭を懸濁した懸濁液と、活性炭を懸濁させた水を別々に調製する調整タンクをそれぞれ設けてもよい。この場合、調整タンクによって調製された、活性炭を懸濁させた水については、破砕機2を介さず、供給ポンプ3あるいは別の供給ポンプによって、熱交換器30に供給してもよい。
【0022】
==活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システムの運転方法==
次に、システム100の運転方法について以下に例を挙げて説明するが、本発明の方法は以下の方法に限定されるものではない。
システム100へガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始すると、システム100、より具体的には、調整タンク1に、活性炭及びバイオマス、必要に応じて水が投入されて、所定の含水率及び所定の活性炭の濃度(wt%)に調整された懸濁液が作製される。その後、懸濁液のバイオマスは破砕機2で破砕され、バイオマスが破砕された懸濁液は、供給ポンプ3により熱交換器30を介して予熱器40に供給されて予熱され、バイオマスは、ガス化反応器50で、該懸濁液に懸濁された活性炭を触媒として、超臨界水でガス化処理される。ガス化反応器50において生成された生成ガス及び灰分は、活性炭及び水とともに排出物としてガス化反応器50から排出され、熱交換器30に供給されるバイオマスが破砕された懸濁液に熱を提供し、冷却器51及び減圧器52によって冷却・減圧される。冷却・減圧された排出物(混合物)は、気液分離器60によって生成ガスを含む気体成分と、灰分、活性炭が水に懸濁された液体成分とに分離され、生成ガスはガスタンク61に貯えられ、液体成分は排出される。
【0023】
なお、本実施の形態においては、システム100へガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始する前に、活性炭を懸濁させた水(バイオマスを含んでいない。)を、システム100における各装置、より具体的には、供給ポンプ3により、システム100における供給ポンプ3の下流の各装置30,40,50,51,52,60に、あらかじめ供給することとしている。なお、活性炭を懸濁させた水の供給は、供給した活性炭を懸濁させた水と同程度の濃度の活性炭が懸濁された水が、気液分離器によって液体成分として分離され、排出されるまで行うことが好ましい。また、水に懸濁させる活性炭の濃度は、システム100や各装置30,40,50,51,52,60の規模が大きくなれば多量に必要となるが、適宜試験を行って決定することが特に好ましい。このように、システム100へガス化触媒である活性炭を懸濁させたガス化原料の送液を開始する前に、活性炭を懸濁させた水をあらかじめ供給することにより、システム100の運転開始時において、システム100に供給した懸濁液中の活性炭の濃度が低下するのを抑制して、ガス化反応器50の上流における装置の、タール等による閉塞を防ぐことができる。また、活性炭の不足によるタール等の閉塞物の生成を抑制することができるので、ガス化反応器50において活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化反応を効率よく行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0024】
1 調整タンク、2 破砕機、3 供給ポンプ、30 熱交換器、40 予熱器、50 ガス化反応器、51 冷却器、52 減圧器、60 気液分離器、61 ガスタンク、62,63 加熱器、100 活性炭によるバイオマスの超臨界水ガス化システム