特許第6066645号(P6066645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6066645非水電解液用添加剤、非水電解液、及び、蓄電デバイス
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  • 特許6066645-非水電解液用添加剤、非水電解液、及び、蓄電デバイス 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066645
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】非水電解液用添加剤、非水電解液、及び、蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20170116BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20170116BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20170116BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170116BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20170116BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20170116BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M10/052
   H01G11/64
   H01G11/60
   H01G11/62
【請求項の数】9
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2012-212103(P2012-212103)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-67585(P2014-67585A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 智洋
(72)【発明者】
【氏名】藤本 翔平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−31260(JP,A)
【文献】 特開2004−296116(JP,A)
【文献】 特開2012−190791(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110290(WO,A1)
【文献】 特開2003−346899(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/143658(WO,A1)
【文献】 特開2006−172811(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/057311(WO,A1)
【文献】 特表2010−533359(JP,A)
【文献】 特開2006−12806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/0569
H01M 10/052
H01G 11/64
H01G 11/60
H01G 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を有し、かつ、最低空軌道エネルギーが0未満であることを特徴とする非水電解液用添加剤。
【化1】
式(1)中、Arは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。nは0〜6の整数を示す。
【請求項2】
請求項1記載の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有することを特徴とする非水電解液。
【請求項3】
非水溶媒は、非プロトン性溶媒であることを特徴とする請求項2記載の非水電解液。
【請求項4】
非プロトン性溶媒は、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項3記載の非水電解液。
【請求項5】
電解質は、リチウム塩を含有することを特徴とする請求項2、3又は4記載の非水電解液。
【請求項6】
リチウム塩は、LiAlCl、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、及び、LiSbFからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の非水電解液。
【請求項7】
請求項2、3、4、5又は6記載の非水電解液、正極、及び、負極を備えたことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項8】
蓄電デバイスがリチウムイオン電池である、請求項7記載の蓄電デバイス。
【請求項9】
蓄電デバイスがリチウムイオンキャパシタである、請求項7記載の蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、非水電解液二次電池、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定な固体電解質界面を形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤に関する。また、本発明は、該非水電解液用添加剤を含む非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の解決、持続可能な循環型社会の実現に対する関心が高まるにつれ、リチウムイオン電池に代表される非水電解液二次電池や、電気二重層キャパシタ等の蓄電デバイスの研究が広範囲に行われている。なかでもリチウムイオン電池は高い使用電圧とエネルギー密度から、ノート型パソコン、携帯電話等の電源として用いられている。これらリチウムイオン電池は、鉛電池やニッケルカドミウム電池と比較してエネルギー密度が高く、高容量化が実現されるため期待されている。
【0003】
しかしながら、リチウムイオン電池には、充放電サイクルの経過に伴って電池の容量が低下するという問題がある。これは長期間の充放電サイクルの経過に伴い、電極反応による電解液の分解や電極活物質層への電解質の含浸性の低下、更にリチウムイオンのインターカレーション効率の低下が生じること等が要因に挙げられる。
【0004】
充放電サイクルの経過に伴う電池の容量の低下を抑制する方法として、電解液に各種添加剤を加える方法が検討されている。添加剤は、最初の充放電時に分解され、電極表面上に固体電解質界面(SEI)と呼ばれる被膜を形成する。SEIは、充放電サイクルの最初のサイクルにおいて形成するため、電解液中の溶媒等の分解に電気が消費されることはなく、リチウムイオンはSEIを介して電極を行き来することができる。すなわち、SEIの形成は充放電サイクルを繰り返した場合の非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの劣化を防ぎ、電池特性、保存特性又は負荷特性等を向上させることに大きな役割を果たすと考えられている。
【0005】
SEIを形成する電解液用添加剤として、例えば、特許文献1〜3には、環状モノスルホン酸エステルが開示されている。また、特許文献4には、含硫黄芳香族化合物が開示されており、特許文献5にはジスルフィド化合物が開示されている。更に、特許文献6〜9にはジスルホン酸エステルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−102173号公報
【特許文献2】特開2000−003724号公報
【特許文献3】特開平11−339850号公報
【特許文献4】特開平05−258753号公報
【特許文献5】特開2001−052735号公報
【特許文献6】特開2009−038018号公報
【特許文献7】特開2005−203341号公報
【特許文献8】特開2004−281325号公報
【特許文献9】特開2005−228631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非水電解液二次電池の電極における電気化学的還元に対する非水電解液用添加剤の適応性の指標として、例えば、「Geun−Chang,Hyung−Jin kim,Seung−ll Yu,Song−Hui Jun,Jong−Wook Choi,Myung−Hwan Kim.Journal of The Electrochemical Society,147,12,4391(2000)」には、非水電解液用添加剤を構成する化合物のLUMO(最低空分子軌道)エネルギーのエネルギー準位を用いる方法が報告されている。このような文献では、LUMOエネルギーが低い化合物ほど優れた電子受容体であり、非水電解液二次電池等の電極表面上に安定なSEIを形成することができる非水電解液用添加剤になるとされている。従って、化合物のLUMOエネルギーを測定することにより、該化合物が非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電極表面上に安定なSEIを形成する性能を有するかどうかを容易に評価することができ、この方法が現在では非常に有用な手段となっている。
【0008】
一方で、特許文献1〜9に開示されている化合物では、LUMOエネルギーが高く、非水電解液用添加剤としての性能が不充分であったり、LUMOエネルギーが低くても化学的に不安定であったりする等の問題があった。とりわけ、ジスルホン酸エステル化合物は低いLUMOエネルギーを示すものの、水分に対する安定性が低く容易に劣化するため、長期間保管する場合には、厳密な水分含有量及び温度の管理が必要であった。
【0009】
このように、従来の非水電解液用添加剤は充分な性能が得られておらず改善の余地があった。したがって、保存安定性に優れ、電極表面上に安定なSEIを形成し、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電池特性を向上させる新規な電解液用添加剤の開発が望まれていた。
本発明は、保存安定性に優れ、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該非水電解液用添加剤を含む非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記式(1)で表される構造を有し、かつ、最低空軌道エネルギーが0未満であるN−アリールカルボン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤に関する
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、Arは、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基及びハロゲン原子から選択される少なくとも1つの置換基により置換されていてもよいフェニル基又はベンジル基を示す。nは0〜6の整数を示す。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明者らは、前記式(1)で表される構造を有し、かつ、LUMOエネルギーが0未満であるN−アリールカルボン酸アミド化合物(以下、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物ともいう)は、窒素に置換したアリール基の影響で、化学的に安定であることを見出した。そこで本発明者らは、該N−アリールカルボン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を非水電解液に用い、更に該非水電解液を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物が非水電解液用添加剤として、サイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善する理由は詳らかではないが、次のように考えられる。本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は、フェニル基の高いラジカル安定性により電気化学的還元を受けた際にフェニル基が脱離し、N、O等を含む極性基を多数含有するSEIを形成すると考えられる。このようなN、O等を含む極性基を多数含有しているSEIは、優れたイオン伝導度を示すことができることから、非常に高性能なSEIであると考えられる。
なお、一般的にこのような高性能SEIの性能確認は数百回に及ぶサイクル試験を行い、容量の維持率を見ることにより評価する。
【0014】
本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は、前記式(1)で表される構造を有する。
【0015】
前記式(1)中、Arは、置換されていてもよいアリール基を示す。Arの位置にアリール基を有することにより、本発明の非水電解液用添加剤は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すものとなる。
なお、本明細書において、「置換されていてもよいアリール基」とは、フェニル基やベンジル基等のアリール基の有する水素原子の少なくとも一つが置換基により置換されていてもよいことを意味する。このような置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。なかでも、より低いLUMOエネルギーを示すものとなることから、フッ素原子が好ましい。
【0016】
前記式(1)中、Arで示される置換されていてもよいアリール基のうち、置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−(ジメチルアミノ)フェニル基、3−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基であることが好ましい。
また、Arで示される置換されていてもよいアリール基のうち、置換されていてもよいベンジル基としては、例えば、ベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−エチルベンジル基、3−エチルベンジル基、4−エチルベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、3−エトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、2−(ジメチルアミノ)ベンジル基、3−(ジメチルアミノ)フベンジル基、4−(ジメチルアミノ)ベンジル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、ベンジル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基であることが好ましい。
【0017】
前記式(1)中、Rは、水素原子、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換されていてもよいアリール基を示す。
なお、本明細書において、「置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基」とは、該アルキル基の有する水素原子の少なくとも一つが置換基により置換されていてもよいことを意味する。このような置換基としては、例えば、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。なかでも、より低いLUMOエネルギーを示すものとなることから、フッ素原子が好ましい。
前記式(1)中、Rが、置換されていてもよいアルキル基である場合、該アルキル基の炭素数が7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。Rで示されるアルキル基の炭素数の好ましい上限は3である。
【0018】
前記式(1)中、Rで示される、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基であることが好ましい。
【0019】
前記式(1)中、Rで示される置換されていてもよいアリール基のうち、置換されていてもよいフェニル基としては、例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−(ジメチルアミノ)フェニル基、3−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−(ジメチルアミノ)フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基であることが好ましい。
また、Rで示される置換されていてもよいアリール基のうち、置換されていてもよいベンジル基としては、例えば、ベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−エチルベンジル基、3−エチルベンジル基、4−エチルベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、2−エトキシベンジル基、3−エトキシベンジル基、4−エトキシベンジル基、2−(ジメチルアミノ)ベンジル基、3−(ジメチルアミノ)ベンジル基、4−(ジメチルアミノ)ベンジル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基等が挙げられる。なかでも、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すこと等から、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基であることが好ましい。
【0020】
前記式(1)中、nは0〜6の整数を示す。nが7以上であると、非水溶媒への溶解性が低下するおそれがある。nの好ましい上限は3である。
【0021】
本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物としては、例えば、N−メチルアセトアニリド、N−エチルアセトアニリド、N−プロピルアセトアニリド、N−メチル−N−(2−メチルフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(3−メチルフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(4−メチルフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(2−エチルフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(3−エチルフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(4−エチルフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(3−メトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(2−エトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(3−エトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(4−エトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)フェニル]アセトアミド、N−メチル−N−([3−(ジメチルアミノ)フェニル]アセトアミド、N−メチル−N−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]アセトアミド、N−メチル−N−(2−フルオロフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(3−フルオロフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−フェニルプロピオンアミド、N−エチル−N−フェニルプロピオンアミド、N−プロピル−N−フェニルプロピオンアミド、N−メチル−N−(2−メチルフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3−メチルフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(4−メチルフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(2−エチルフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3−エチルフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(4−エチルフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(2−メトキシフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3−メトキシフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アセトアミド、N−メチル−N−(2−エトキシフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3−エトキシフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(4−エトキシフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−[2−(ジメチルアミノ)フェニル]プロピオンアミド、N−メチル−N−([3−(ジメチルアミノ)フェニル]プロピオンアミド、N−メチル−N−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]プロピオンアミド、N−メチル−N−(2−フルオロフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3−フルオロフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(2−フルオロベンジル)アセトアミド、N−メチル−N−(3−フルオロベンジル)アセトアミド、N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アセトアミド、N−エチル−N−(2−フルオロベンジル)アセトアミド、N−エチル−N−(3−フルオロベンジル)アセトアミド、N−エチル−N−(4−フルオロベンジル)アセトアミド、N−メチル−N−(2、4−ジフルオロベンジル)アセトアミド、N−メチル−N−(3、5−ジフルオロベンジル)アセトアミド、N−メチル−N−(2、4、6−トリフルオロベンジル)アセトアミド、N−メチル−N−(2−フルオロベンジル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3−フルオロベンジル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)プロピオンアミド、N−エチル−N−(2−フルオロベンジル)プロピオンアミド、N−エチル−N−(3−フルオロベンジル)プロピオンアミド、N−エチル−N−(4−フルオロベンジル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(2、4−ジフルオロベンジル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(3、5−ジフルオロベンジル)プロピオンアミド、N−メチル−N−(2、4、6−トリフルオロベンジル)プロピオンアミド、N,N−ジフェニルアセトアミド、N,N−ジフェニルプロピオンアミド、N,N−ジベンジルアセトアミド、N,N−ジベンジルプロピオンアミド等が挙げられる。
【0022】
本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物を製造する方法としては、例えば、カルボン酸クロライドに対応するアミンを反応させる方法、カルボン酸に対応するアミンを反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は、LUMOエネルギーが0未満である。本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は、電気化学的還元を受けやすい低いLUMOエネルギーを示すため、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、非水電解液に含有され非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる。本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は、LUMOエネルギーが−0.1未満であることが好ましい。
なお、添加剤のLUMOエネルギーが、共存する電解液成分と比べて同等又は高い場合、電解液より優先して負極上での電気分解を受けることができないため、高性能のSEIが形成されずサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性向上を達成することはできない。例えば、一般的に電解液で用いられる炭酸エチレンのLUMOエネルギーは1.07であり、一般的にSEI形成用添加剤として用いられるビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)のLUMOエネルギーはそれぞれ0.01、0.52である。
また、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は、水分や温度変化に対して安定であるため、該化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤は、長期間、室温で保存することが可能である。したがって、該非水電解液用添加剤を含有する非水電解液も、長期間の保存及び使用に耐えることができる。
本発明の非水電解液用添加剤、非水溶媒、及び、電解質を含有する非水電解液もまた、本発明の1つである。
【0024】
本発明の非水電解液における本発明の非水電解液用添加剤の含有量(即ち、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物の含有量)は特に限定されないが、好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が0.005質量%未満であると、非水電解液二次電池等に用いた場合に電極表面での電気化学反応によって安定なSEIを充分に形成できないおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量が10質量%を超えると、溶解しにくくなるだけでなく非水電解液の粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に充放電特性等に支障をきたすおそれがある。本発明の非水電解液用添加剤の含有量のより好ましい下限は0.01質量%である。なお、本発明の非水電解液用添加剤(即ち、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物)は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明の非水電解液用添加剤として本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物を2種以上併用する場合、本発明の非水電解液用添加剤全体の含有量の好ましい下限は0.005質量%、好ましい上限は10質量%である。
更に、本発明の非水電解液用添加剤と共に、必要に応じて、非水電解液にビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,3−プロパンスルトン(PS)等の一般的な添加剤を混合してもよい。
【0025】
前記非水溶媒としては、得られる非水電解液の粘度を低く抑える等の観点から、非プロトン性溶媒が好適である。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネート、脂肪族カルボン酸エステル、ラクトン、ラクタム、環状エーテル、鎖状エーテル、スルホン、及び、これらのハロゲン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。なかでも、環状カーボネート、鎖状カーボネートがより好ましく用いられる。
【0026】
前記環状カーボネートとしては、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン等が挙げられる。
前記鎖状カーボネートとしては、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル等が挙げられる。
前記脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル等が挙げられる。
前記ラクトンとしては、例えば、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
前記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
前記スルホンとしては、例えば、スルホラン等が挙げられる。
前記ハロゲン誘導体としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン等が挙げられる。
これらの非水溶媒は、単独で用いてもよいし、複数種を混合してもよい。
これらの非水溶媒は、例えば、リチウムイオン電池等の非水電解液二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等の電気二重層キャパシタ等に好ましく用いられる。
【0027】
前記電解質としては、リチウムイオンのイオン源となるリチウム塩が好ましく、LiAlCl、LiBF、LiPF、LiClO、LiAsF、及び、LiSbFからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なかでも、解離度が高く電解液のイオン伝導度を高めることができ、更には耐酸化還元特性により長期間使用による蓄電デバイスの性能劣化を抑制する作用がある等の観点から、LiBF、LiPFであることがより好ましい。これらの電解質は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記電解質として、LiBF、LiPFが用いられる場合、非水溶媒としては、環状カーボネート及び鎖状カーボネートをそれぞれ1種以上混合することが好ましく、炭酸エチレン及び炭酸ジエチルを混合することがより好ましい。
【0028】
本発明の非水電解液における電解質の濃度は特に限定されないが、好ましい下限は0.1mol/L、好ましい上限は2.0mol/Lである。前記電解質の濃度が0.1mol/L未満であると、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度が2.0mol/Lを超えると、粘度が上昇し、イオンの移動度を充分に確保できなくなるため、非水電解液の導電性等を充分に確保することができず、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に放電特性及び充電特性等に支障をきたすおそれがある。前記電解質の濃度のより好ましい下限は0.5mol/L、より好ましい上限は1.5mol/Lである。
【0029】
本発明の非水電解液、正極、及び、負極を備えた蓄電デバイスもまた、本発明の1つである。蓄電デバイスとしては、非水電解液二次電池や電気二重層キャパシタ等がある。これらの中でもリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタが好適である。
【0030】
図1は、本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池の一例を模式的に示した断面図である。
図1において、非水電解液二次電池1は、正極集電体2の一方面側に正極活物質層3が設けられてなる正極板4、及び、負極集電体5の一方面側に負極活物質層6が設けられてなる負極板7を有する。正極板4と負極板7とは、本発明の非水電解液8と非水電解液8中に設けたセパレータ9を介して対向配置されている。
【0031】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、正極集電体2及び負極集電体5としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス等の金属からなる金属箔を用いることができる。
【0032】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、正極活物質層3に用いる正極活物質としては、リチウム含有複合酸化物が好ましく用いられ、例えば、LiMnO、LiFeO、LiCoO、LiMn、LiFeSiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiFePO等のリチウム含有複合酸化物が挙げられる。
【0033】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、負極活物質層6に用いる負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵、放出することができる材料が挙げられる。このような材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料や、酸化インジウム、酸化シリコン、酸化スズ、酸化亜鉛、及び、酸化リチウム等の酸化物材料等が挙げられる。
また、負極活物質として、リチウム金属、及び、リチウムと合金を形成することができる金属材料を用いることもできる。前記リチウムと合金を形成することができる金属としては、例えば、Cu、Sn、Si、Co、Mn、Fe、Sb、Ag等が挙げられ、これらの金属とリチウムを含む2元又は3元からなる合金を用いることもできる。
これらの負極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池において、セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂等からなる多孔質フィルムを用いることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、保存安定性に優れ、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することができる。また、本発明によれば、該非水電解液用添加剤を含む非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の蓄電デバイスにかかる非水電解液二次電池の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0038】
(実施例1)
(N−メチルアセトアニリド(化合物1)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−フェニルアミン10.2g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたアセチルクロライド7.85g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチルアセトアニリド12.7g(0.085モル)を取得した。N−メチルアセトアニリドの収率は、アセチルクロライドに対して85%であった。
なお、得られたN−メチルアセトアニリドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):7.10−7.31(m、5H)、2.78(s、3H)、2.02(s、3H)
【0039】
(実施例2)
(N,N−ジフェニルアセトアミド(化合物2)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N,N−ジフェニルアミン18.6g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたアセチルクロライド7.85g(0.10モル)を、0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を、1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N,N−ジフェニルアセトアミド16.5g(0.078モル)を取得した。N,N−ジフェニルアセトアミドの収率は、アセチルクロライドに対して78%であった。
なお、得られたN,N−ジフェニルアセトアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):7.00−7.64(m、10H)、2.02(s、3H)
【0040】
(実施例3)
(N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アセトアミド(化合物3)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アミン15.09g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたアセチルクロライド7.85g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アセトアミド15.2g(0.085モル)を取得した。N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アセトアミドの収率は、アセチルクロライドに対して85%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アセトアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):6.82−6.99(m、4H)、3.73(s、3H)、2.78(s、3H)、2.05(s、3H)
【0041】
(実施例4)
(N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アセトアミド(化合物4)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アミン13.8g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたアセチルクロライド7.85g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アセトアミド13.5g(0.081モル)を取得した。N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アセトアミドの収率は、アセチルクロライドに対して81%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アセトアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):7.02−7.08(m、4H)、2.81(s、3H)、2.06(s、3H)
【0042】
(実施例5)
(N,N−ジベンジルアセトアミド(化合物5)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、ジベンジルアミン21.7g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたアセチルクロライド7.85g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N,N−ジベンジルアセトアミド15.3g(0.064モル)を取得した。N,N−ジベンジルアセトアミドの収率は、アセチルクロライドに対して64%であった。
なお、得られたN,N−ジベンジルアセトアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):7.07−7.14(m、10H)、4.46(s、4H)、2.01(s、3H)
【0043】
(実施例6)
(N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アセトアミド(化合物6)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アミン15.3g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたアセチルクロライド7.85g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アセトアミド12.9g(0.071モル)を取得した。N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アセトアミドの収率は、アセチルクロライドに対して71%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アセトアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):6.85−7.04(m、4H)、4.48(s、2H)、2.91(s、3H)、2.03(s、3H)
【0044】
(実施例7)
(N−エチル−N−フェニルプロピオンアミド(化合物7)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−エチル−N−フェニルアミン13.3g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−エチル−N−フェニルプロピオンアミド14.5g(0.082モル)を取得した。N−エチル−N−フェニルプロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して82アミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):7.09−7.32(m、5H)、3.42(q、2H)、2.37(q、2H)、1.15(t、3H)、1.13(t、3H)
【0045】
(実施例8)
(N,N−ジフェニルプロピオンアミド(化合物8)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N,N−ジフェニルアミン18.6g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を、0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を、1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N,N−ジフェニルプロピオンアミド14.9g(0.066モル)を取得した。N,N−ジフェニルプロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して66%であった。
なお、得られたN,N−ジフェニルプロピオンアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
7.00−7.62(m、10H)、2.31(q、2H)、1.15(t、3H)
【0046】
(実施例9)
(N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)プロピオンアミド(化合物9)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)アミン15.09g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)プロピオンアミド15.3g(0.079モル)を取得した。N−メチル−N−(4−メトキシフェニル)プロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して79%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−メトキシフェニル)プロピオンアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):6.80−7.00(m、4H)、3.72(s、3H)、2.82(s、3H)、2.33(q、2H)、1.15(t、3H)
【0047】
(実施例10)
(N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)プロピオンアミド(化合物10)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)アミン13.8g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)プロピオンアミド14.0g(0.077モル)を取得した。N−メチル−N−(4−フルオロフェニル)プロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して77%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−フルオロフェニル)プロピオンアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):6.80−7.00(m、4H)、2.86(s、3H)、2.35(q、2H)、1.14(t、3H)
【0048】
(実施例11)
(N,N−ジベンジルプロピオンアミド(化合物11)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、ジベンジルアミン21.7g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N,N−ジベンジルプロピオンアミド15.2g(0.060モル)を取得した。N,N−ジベンジルプロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して60%であった。
なお、得られたN,N−ジベンジルプロピオンアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):7.06−7.15(m、10H)、4.49(s、4H)、2.38(q、2H)、1.17(t、3H)
【0049】
(実施例12)
(N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)プロピオンアミド(化合物12)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)アミン15.3g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)プロピオンアミド13.9g(0.071モル)を取得した。N−メチル−N−(4−フルオロベンジル)プロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して71%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−フルオロベンジル)プロピオンアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):6.82−7.02(m、4H)、4.49(s、2H)、2.97(s、3H)、2.30(q、2H)、1.15(t、3H)
【0050】
(比較例1)
(N−メチル−N−(4−メトキシベンジル)プロピオンアミド(化合物13)の作製)
撹拌機、冷却管、温度計及び滴下ロートを備え付けた200mL容の4つ口フラスコに、N−メチル−N−(4−メトキシベンジル)アミン15.3g(0.11モル)及び1,2−ジメトキシエタン70.0gを仕込み、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたプロピオニルクロライド9.25g(0.10モル)を0℃に維持しながら20分間かけて滴下した。引き続き同温度に維持しながら、1,2−ジメトキシエタン20.0gに溶解させたトリエチルアミン10.6g(0.10モル)を1時間かけて滴下し、同温度に維持しながら終夜撹拌した。
反応終了後、反応液をろ過した後、ろ液にトルエン100.0g及び水50.0gを添加して分液した。得られた有機層より溶媒の一部を25℃で減圧留去し、析出した結晶をろ過し、得られた結晶を乾燥することにより、N−メチル−N−(4−メトキシベンジル)プロピオンアミド13.9g(0.071モル)を取得した。N−メチル−N−(4−メトキシベンジル)プロピオンアミドの収率は、プロピオニルクロライドに対して71%であった。
なお、得られたN−メチル−N−(4−メトキシベンジル)プロピオンアミドは、下記の物性を有することから同定することができた。
H−核磁気共鳴スペクトル(溶媒:CDCl)δ(ppm):6.62−6.96(m、4H)、4.46(s、2H)、3.73(s、3H)、2.94(s、3H)、2.24(q、2H)、1.16(t、3H)
【0051】
(比較例2)
N,N−ジメチルアセトアミド(化合物14)は、試薬を購入し、蒸留により精製して用いた。
【0052】
(比較例3)
N,N−ジエチルアセトアミド(化合物15)は、試薬を購入し、蒸留により精製して用いた。
【0053】
(比較例4)
N,N−ジプロピルアセトアミド(化合物16)は、試薬を購入し、蒸留により精製して用いた。
【0054】
(比較例5)
N,N−ジメチルプロピオンアミド(化合物17)は、試薬を購入し、蒸留により精製して用いた。
【0055】
(比較例6)
リチウムイオン電池等の添加剤として一般的に用いられる、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を非水電解液用添加剤として用意した。
【0056】
<評価>
(LUMOエネルギーの測定)
実施例1〜12で得られた化合物1〜12、及び、比較例1〜5で得られた化合物13〜17について、LUMO(最低空分子軌道)エネルギーを測定するため、Gaussian03ソフトウェアにより、半経験的分子軌道計算を行った。軌道計算により得られた化合物1〜12のLUMOエネルギーを表1、化合物13〜17のLUMOエネルギーを表2に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1より、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物である化合物1〜12のLUMOエネルギーは負の値を示す約−0.13eVから約−0.70eVであり、本発明の非水電解液用添加剤にかかるこれらのN−アリールカルボン酸アミド化合物は、低いLUMOエネルギーを有していることがわかる。そのため、化合物1〜12を非水電解液用添加剤として非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合、非水電解液の溶媒(例えば、環状カーボネートや鎖状カーボネート:LUMOエネルギー約1.2eV)よりも先に化合物1〜12の電気化学的還元が起こり、電極上にSEIが形成されるため電解液中の溶媒分子の分解を抑制することができる。その結果、高抵抗性を示す溶媒の分解被膜が電極上に形成されにくくなり電池特性の向上が期待される。
一方、表2より、式(1)で表されるN−アリールカルボン酸アミド化合物でも、化合物13のLUMOエネルギーは、約0.05と0を超える値となっている。式(1)で表されるN−アリールカルボン酸アミド化合物以外のN−アリールカルボン酸アミド化合物である化合物14〜17は約0.87eVから約0.96eVと高いLUMOエネルギーを示すことがわかる。従って、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物以外のN−アリールカルボン酸アミド化合物である化合物13〜17は電気化学的還元に対して比較的安定であり、電極上にSEIが形成され難い。
以上より、本発明にかかるN−アリールカルボン酸アミド化合物は充分に低いLUMOエネルギーを有しており、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電極上に安定なSEIを形成する新規の非水電解液用添加剤として有効であることを示している。
【0060】
(安定性の評価)
実施例1〜12で得られた化合物1〜12、比較例1〜5で得られた化合物13〜17、及び比較例6のフルオロエチレンカーボネート(FEC)について、温度40±2℃、湿度75±5%の恒温恒湿下で90日間の保存試験を行い、各化合物の分解をH−核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)で測定し、評価した。結果を表3に示した。
〇:保存前後でH−NMRのピークに変化なし
△:保存前後でH−NMRのわずかなピーク変化を確認
×:保存前後でH−NMRの明らかなピーク変化を確認
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示したように、比較例6として用いたフルオロエチレンカーボネート(FEC)は、一部加水分解されていると考えられ、安定性に劣るものであった。また、比較例2〜5で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物14〜17)も、保存時の劣化が確認された。
一方、実施例1〜12で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物1〜12)及び比較例1で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物13)は、H−NMRのピークにほとんど変化が見られず、安定性に優れるものであった。
【0063】
(LSV(リニアスウィープボルタンメトリー)の測定)
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として各実施例及び各比較例で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。得られた非水電解液、及び、電極としてグラッシーカーボンからなるディスク電極、対極として白金を用い、5mV/secの走査電位速度で分極測定を行った。参照電極として銀電極を用い、100μAの電流が流れる時の参照電極に対する電位を酸化電位、−100μAの電流が流れる時の参照電極に対する電位を還元電位とし、還元開始電圧を算出した。また、参考例1として、非水電解液用添加剤を添加せずに得られた非水電解液についても同様にして還元開始電圧を算出した。結果を表4に示した。
【0064】
【表4】
【0065】
表4から、実施例1〜12で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物1〜12)を含む非水電解液は、非水電解液用添加剤を含まない参考例1の非水電解液や、比較例1〜5で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物13〜17)を含む非水電解液と比較して還元開始電圧が高いことがわかる。従って、実施例1〜12で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を含む非水電解液を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合、比較例1〜5で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を含む非水電解液より先にN−アリールカルボン酸アミド化合物の電気化学的還元が起こり、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電極表面上に安定なSEIを形成し易いことがわかる。
【0066】
(電池の作製)
表5〜8に記載の正極活物質、及び、導電性付与剤としてカーボンブラックを乾式混合し、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に均一に分散させ、スラリーを作製した。得られたスラリーを正極集電体となるアルミ金属箔(角型、厚さ20μm)上に塗布後、NMPを蒸発させることにより正極シートを作製した。得られた正極シート中の固形分比率は、質量比で、正極活物質:導電性付与剤:PVDF=80:10:10とした。
一方、負極シートとして、市販の黒鉛塗布電極シート(宝泉社製)を用いた。
炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、EC:DEC=30:70の体積組成比で混合して得られた混合非水溶媒に、電解質としてLiPFを1.0mol/Lの濃度となるように溶解し、該混合非水溶媒と該電解質とからなる溶液全重量に対し、非水電解液用添加剤として各実施例及び各比較例で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物を、含有割合が1.0質量%となるように添加し、非水電解液を調製した。
得られた非水電解液中にて、負極シートと正極シートとを、ポリエチレンからなるセパレータを介して積層し、円筒型二次電池を作製した。また、参考例1として、非水電解液用添加剤を添加せずに得られた非水電解液についても同様にして円筒型二次電池を作製した。
【0067】
(サイクル特性の評価)
得られた各円筒型二次電池に対して、25℃において、充電レートを0.3C、放電レートを0.3C、充電終止電圧を4.2V、及び、放電終止電圧を2.5Vとして充放電サイクル試験を行った。200サイクル後の容量維持率(%)を表5〜8に示した。
なお、「200サイクル後の容量維持率(%)」とは、200サイクル試験後の放電容量(mAh)を、10サイクル試験後の放電容量(mAh)で割った値に100をかけたものである。
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
表5〜8から、実施例1〜12で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物1〜12)を含む非水電解液を用いた円筒型二次電池は、非水電解液用添加剤を含まない参考例1の非水電解液や、比較例1〜5で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物(化合物13〜17)を含む非水電解液を用いた円筒型二次電池と比較してサイクル試験時における容量維持率が高いことが分かる。従って、実施例で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物からなる非水電解液用添加剤を含む非水電解液を非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合、参考例1の非水電解液及び比較例1〜5で得られたN−アリールカルボン酸アミド化合物を含む非水電解液を用いた場合と比較して、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスの電極表面上に充放電サイクルに対する安定性の高いSEIが形成していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、保存安定性に優れ、非水電解液二次電池等の蓄電デバイスに用いた場合に、電極表面上に安定なSEIを形成してサイクル特性、充放電容量、内部抵抗等の電池特性を改善することができる非水電解液用添加剤を提供することができる。また、本発明によれば、該非水電解液用添加剤を含む非水電解液、及び、該非水電解液を用いた蓄電デバイスを提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 非水電解液二次電池
2 正極集電体
3 正極活物質層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極活物質層
7 負極板
8 非水電解液
9 セパレータ
図1