(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6066673
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20170116BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20170116BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 L
H01L21/78 P
H01L21/78 M
H01L21/304 622J
H01L21/304 631
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-243519(P2012-243519)
(22)【出願日】2012年11月5日
(65)【公開番号】特開2014-93443(P2014-93443A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−152814(JP,A)
【文献】
特開2012−174732(JP,A)
【文献】
特開平08−203987(JP,A)
【文献】
特開平09−148275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された複数の第1の方向の分割予定ラインと該第1の方向と交差する複数の第2の方向の分割予定ラインとによって区画された各領域にデバイスが形成されたウエーハを、個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法であって、
扇状の4個の吸引保持部を有するチャックテーブルでウエーハを直に保持し、ウエーハの表面に形成された全ての第1の方向の分割予定ラインと全ての第2の方向の分割予定ラインとに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの溝を形成する溝形成工程と、
該溝形成工程実施後、扇状の4個の吸引保持部を有するチャックテーブルでウエーハを直に保持したまま、ウエーハの略中央を通る第1の方向の分割予定ラインとウエーハの略中央を通る第2の方向の分割予定ラインとを切断して、扇状の1/4ウエーハ片を生成する1/4ウエーハ片生成工程と、
該1/4ウエーハ片生成工程実施後、1/4ウエーハ片の表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
該保護部材側を研削装置のチャックテーブルで保持し1/4ウエーハ片の裏面を研削してデバイスの仕上がり厚みに1/4ウエーハ片を薄化して該溝を表出させ、1/4ウエーハ片を個々のデバイスに分割する1/4ウエーハ片分割工程と、
を備えたことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
1/4ウエーハ片分割工程実施後、1/4ウエーハ片を収容する大きさの開口部を有する環状フレームの該開口部に1/4ウエーハ片を位置付けて該環状フレームと1/4ウエーハ片の裏面に粘着テープを貼着し、1/4ウエーハ片の表面から該保護部材を剥離して該粘着テープを介して該環状フレームに1/4ウエーハ片を配設するフレーム配設工程を更に備えた請求項1記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大口径ウエーハを既存の設備をできるだけ利用して加工することのできるウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインで区画された各領域にそれぞれIC,LSI等のデバイスが形成された半導体ウエーハ(以下、単にウエーハと略称することがある)は、裏面が研削されて所望の厚さに加工された後、分割予定ラインに沿って個々のデバイスに分割され、分割されたデバイスは携帯電話、パソコン等の各種電気機器に広く利用されている。
【0003】
半導体ウエーハは、ダイシングテープを介して環状フレームで支持され、この状態で切削装置のチャックテーブルに搭載される。ウエーハの切削には、切削ブレードを回転可能に支持する切削手段を備えたダイシング装置と呼ばれる切削装置が広く使用されている。
【0004】
生産性を向上させるために、ウエーハの直径が200mm、300mm、更には450mmと大口径化の傾向にあり、ウエーハの直径に対応したダイシング装置、研削装置等の加工装置の開発が必須となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−26402号公報
【特許文献2】特開2005−153090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、直径450mmのウエーハを加工する場合、300mmウエーハの裏面を研削して個々のデバイスに分割する設備が整っているにも関わらず、450mmウエーハに対応した加工装置によって新たなシステムを構築しなければならず、設備費が膨大になり利益を圧迫するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウエーハが大口径になっても既存の設備を利用できるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、表面に形成された複数の第1の方向の分割予定ラインと該第1の方向と交差する複数の第2の方向の分割予定ラインとによって区画された各領域にデバイスが形成されたウエーハを、個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法であって、
扇状の4個の吸引保持部を有するチャックテーブルでウエーハを直に保持し、ウエーハの表面に形成された全ての第1の方向の分割予定ラインと全ての第2の方向の分割予定ライン
とに沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さの溝を形成する溝形成工程と、該溝形成工程実施後、
扇状の4個の吸引保持部を有するチャックテーブルでウエーハを直に保持したまま、ウエーハの略中央を通る第1の方向の分割予定ラインとウエーハの略中央を通る第2の方向の分割予定ラインとを切断して、扇状の1/4ウエーハ片を生成する1/4ウエーハ片生成工程と、該1/4ウエーハ片生成工程実施後、1/4ウエーハ片の表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、該保護部材側を研削装置のチャックテーブルで保持し1/4ウエーハ片の裏面を研削してデバイスの仕上がり厚みに1/4ウエーハ片を薄化して該溝を表出させ、1/4ウエーハ片を個々のデバイスに分割する1/4ウエーハ片分割工程と、を備えたことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
好ましくは、ウエーハの加工方法は、1/4ウエーハ片分割工程実施後、1/4ウエーハ片を収容する大きさの開口部を有する環状フレームの該開口部に1/4ウエーハ片を位置付けて該環状フレームと1/4ウエーハ片の裏面に粘着テープを貼着し、1/4ウエーハ片の表面から該保護部材を剥離して該粘着テープを介して該環状フレームに1/4ウエーハ片を配設するフレーム配設工程を更に備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法によると、大口径のウエーハの分割予定ラインに沿って溝を形成するとともに大口径のウエーハを1/4ウエーハ片に分割する大口径に対応した切削装置は少なくとも1台必要となるものの、1/4ウエーハ片の裏面を研削する研削装置は既存の装置で対応することができ、既存の設備を利用して設備費を節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】450mmウエーハに対応したチャックテーブルで450mmウエーハを保持する様子を示す分解斜視図である。
【
図3】ウエーハの分割予定ラインに沿って所定深さの溝を形成する溝形成工程を示す斜視図である。
【
図4】4片に分割された1/4ウエーハ片の斜視図である。
【
図5】溝形成工程実施後の1/4ウエーハ片に表面保護テープを貼着する様子を示す分解斜視図である。
【
図6】研削装置のチャックテーブルで表面保護テープを介して1/4ウエーハ片を保持する様子を示す分解斜視図である。
【
図7】1/4ウエーハ片分割工程を示す斜視図である。
【
図8】個々のデバイスに分割された1/4ウエーハ片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1に示す半導体ウエーハ11は、例えば厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面11aに複数の分割予定ライン(ストリート)13が格子状に形成されているとともに、分割予定ライン13によって区画された各領域にデバイス15が形成されている。ウエーハ11は450mmの直径を有している。
【0013】
以下、450mmウエーハ11等の大口径ウエーハを既存の設備をなるべく使用して、個々のデバイスに分割する本発明実施形態に係るウエーハの加工方法について
図2乃至
図9を参照して説明する。
【0014】
図2を参照すると、チャックテーブル10で450mmウエーハ11を吸引保持する様子の分解斜視図が占めされている。チャックテーブル10は450mmウエーハ11に対応したダイシング装置(切削装置)のチャックテーブルであり、450mmウエーハ11を吸引保持できるサイズを有している。
【0015】
チャックテーブル10は、SUS等から形成された枠体12を備えており、枠体12は環状表面12aと、十字形状の表面12bを有している。十字形状の表面12bには所定深さの逃げ溝14が形成されている。
【0016】
チャックテーブル10は枠体12の環状表面12a及び十字形状の表面12bに囲繞された扇形状の4つの吸引保持部16を有している。吸引保持部16は例えばポーラスセラミックス等から形成されている。
【0017】
本実施形態のウエーハの加工方法では、まず、ウエーハ11の分割予定ライン13に沿って所定深さの溝19を形成する溝形成工程を実施する。この溝形成工程では、
図3に示すように、ウエーハ11をチャックテーブル10で吸引保持する。
【0018】
図3で18は切削装置の切削ユニットであり、スピンドルハウジング20中に収容された回転駆動されるスピンドルの先端に切削ブレード22が装着されており、切削ブレード22の上半分はブレードカバー24により覆われている。
【0019】
溝生成工程では、切削ユニット18の切削ブレード22をチャックテーブル10に保持されたウエーハ11に所定深さ切り込ませ、チャックテーブル12を矢印X1方向に加工送りすることにより、第1の方向の分割予定ライン13に沿って所定深さ(デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の溝19を形成する。
【0020】
第1の方向に伸長する全ての分割予定ライン13に沿って溝19を形成後、チャックテーブル10を90度回転してから、第2の方向に伸長する分割予定ライン13に沿っても同様な溝19を形成する。
【0021】
次いで、ウエーハ11の略中央を通る第2の方向の分割予定ラインの一端に高速回転する切削ブレード22を切り込ませ、チャックテーブル10を矢印X1方向に加工送りすることにより、ウエーハ11を二つに完全切断する。
【0022】
この完全切断の際に、切削ブレード22はウエーハ11の裏面まで貫通するが、チャックテーブル10には逃げ溝14が形成されているため切削ブレード22が破損することはない。
【0023】
次いで、チャックテーブル10を90度回転してから、ウエーハ11の略中央を通る第1の方向の分割予定ラインを同様に切断して、
図4に示すように、扇形状の4個の1/4ウエーハ片11A〜11Dを生成する。
【0024】
1/4ウエーハ片生成工程の変形実施形態として、第1の方向の分割予定ライン13に沿って所定深さの溝19を次々と形成しながら、ウエーハ11の略中央を通る第1の方向の分割予定ライン13に沿っては切削ブレード22の切り込み深さを深くして、ウエーハ11を二つに完全切断する。
【0025】
次いで、チャックテーブル10を90度回転してから、ウエーハ11の第2の方向の分割予定ライン13に沿って所定深さの溝19を形成しながら、ウエーハ11の略中央を通る第2の方向の分割予定ラインについては切り込み深さを深くして、ウエーハ11を完全切断して、ウエーハ11を扇形状の4個の1/4ウエーハ片11A〜11Dに分割するようにしてもよい。
【0026】
次いで、
図5に示すように、溝19の形成された1/4ウエーハ片11Aの表面に保護部材である表面保護テープ21を貼着する。そして、
図6に示すように、表面保護テープ21を介して1/4ウエーハ片11Aを吸引保持し、
図7に示すように、1/4ウエーハ片11Aの裏面11bを露出させる。表面保護テープ21に替えてガラス等の保護部材を1/4ウエーハ片11Aの表面に貼着しても良い。
【0027】
図7において、34は研削装置の研削ユニットであり、回転駆動されるスピンドル36と、スピンドル36の先端に固定されたホイールマウント38と、ホイールマウント38に複数のねじ42により着脱可能に装着された300mmウエーハ対応の研削ホイール40とを含んでいる。研削ホイール40は、環状のホイール基台44と、ホイール基台44の下面外周に固着された複数の研削砥石46とから構成される。
【0028】
1/4ウエーハ片11Aの裏面11bを研削して個々のデバイス15に分割する1/4ウエーハ片分割工程では、チャックテーブル30を矢印aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削ホイール40を矢印bで示す方向に例えば6000rpmで回転して、1/4ウエーハ片11Aの裏面11bに研削砥石46を押し当て、所定の研削送り速度(例えば1μm/s)で研削ホイール40を下方に研削送りすることにより、1/4ウエーハ片11Aの裏面の研削を実施する。この研削は、
図8に示すように、溝19が1/4ウエーハ片11Aの裏面に表出するまで実施する。
【0029】
このように溝19が表出するまで研削することによって、
図8に示すように、1/4ウエーハ片11Aは個々のデバイス15に分割される。尚、分割された複数のデバイス15は、その表面11aに表面保護テープ21が貼着されているので、ばらばらにはならずに1/4ウエーハ片11Aの形状が維持される。
【0030】
1/4ウエーハ片分割工程実施後、
図9に示すように、1/4ウエーハ片11Aを収容する大きさの開口部を有する環状フレームFの該開口部に1/4ウエーハ片11Aを位置付けて、環状フレームFと1/4ウエーハ片11Aの裏面とに粘着テープTを貼着し、1/4ウエーハ片11Aの表面11aから表面保護テープ21を剥離して、粘着テープTを介して環状フレームFに1/4ウエーハ片11Aを配設するフレーム配設工程を実施する。
【0031】
このように1/4ウエーハ片11Aを環状フレームFに配設した後、例えば、ピックアップコレットによりデバイス15をピックアップするピックアップ工程を実施する。
【0032】
本発明のウエーハの加工方法によると、大口径のウエーハの分割予定ラインに所定深さの溝を形成するとともに1/4ウエーハ片に分割する大口径のウエーハに対応した少なくとも1台の切削装置が必要となるものの、1/4ウエーハ片の裏面を研削する研削装置は、既存の小口径(300mm)のウエーハに対応した装置を利用できるため、既存の設備を最大限に利用して設備費を節約することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 半導体ウエーハ
13 分割予定ライン
14 逃げ溝
15 デバイス
16 吸引保持部
17 切断溝
11A〜11B 1/4ウエーハ片
19 溝
21 表面保護テープ
22 切削ブレード
40 研削ホイール
46 研削砥石