特許第6067989号(P6067989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

特許6067989負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
<>
  • 特許6067989-負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池 図000005
  • 特許6067989-負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池 図000006
  • 特許6067989-負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6067989
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20170116BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170116BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20170116BHJP
【FI】
   H01M4/485
   H01M10/052
   H01M10/0566
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-80293(P2012-80293)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-221953(P2012-221953A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2015年2月24日
(31)【優先権主張番号】61/472,058
(32)【優先日】2011年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/365,184
(32)【優先日】2012年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲宗▼ 熙
(72)【発明者】
【氏名】劉 容 美
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 佐 永
(72)【発明者】
【氏名】金 載 明
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−060764(JP,A)
【文献】 特開平10−251020(JP,A)
【文献】 特開2001−126728(JP,A)
【文献】 特開2009−080979(JP,A)
【文献】 特開2004−235144(JP,A)
【文献】 Byung-hyun Choi, Dae-jin Lee, Young-Jin Kwon, and Sung-Tae Park,Study of the Electrochemical Properties of Li4Ti5O12 Doped with Ba and Sr Anodes for Lithium-Ion Secondary Batteries,Journal of the Korean Ceramic Society,KR,The Korean Ceramic Society,2010年11月30日,Vol.47, No.6,pp.638-642
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/485
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表示されるリチウムチタン酸化物である、負極活物質:
[化1]
Li4−xTi12 (1)
化学式(1)のうち、
xは、0<x<0.12であり、Mは、Sr、Ba、及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上である。
【請求項2】
前記リチウムチタン酸化物は、スピネル状の構造を持つ請求項に記載の負極活物質。
【請求項3】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(111)面のピークの半値幅が0.07゜ないし0.09゜である請求項1または2に記載の負極活物質。
【請求項4】
前記リチウムチタン酸化物の(111)面のピークは、ブラッグ2θ角18.7±0.2゜領域に現れる請求項に記載の負極活物質。
【請求項5】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(311)面のピークの半値幅が0.11゜ないし0.13゜である請求項1〜のいずれか1項に記載の負極活物質。
【請求項6】
前記リチウムチタン酸化物の(311)面のピークは、ブラッグ2θ角35.9±0.2゜領域に現れる請求項に記載の負極活物質。
【請求項7】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(111)面のピークに対する(311)面のピークの強度比I(310)/I(111)が0.35ないし0.60である請求項1〜のいずれか1項に記載の負極活物質。
【請求項8】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(111)面のピークに対する(311)面のピークの強度比I(310)/I(111)が0.40ないし0.55である請求項1〜のいずれか1項に記載の負極活物質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の負極活物質を製造する方法であって、
リチウム化合物、チタン前駆体、及びアルカリ土類金属化合物を用意する段階と、
前記リチウム化合物、チタン前駆体及びアルカリ土類金属化合物を混合して混合物を形成する段階と、
前記混合物を熱処理する段階と、を含む負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記混合物を形成する段階で、前記混合物は、前記リチウム化合物、チタン前駆体及びアルカリ土類金属化合物を機械的ミキシングにより同時に混合して形成される請求項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記アルカリ土類金属化合物の前記混合物中の含有量は、前記リチウム化合物1モルを基準として0.003モルないし0.17モルである請求項9または10に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記リチウム化合物は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム及び酸化リチウムで構成された群から選択された1種以上を含む請求項9〜11のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記チタン前駆体は、チタン酸化物、水酸化チタン、塩化チタンまたはこれらの組み合わせを含む請求項9〜12のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記アルカリ土類金属化合物は、炭酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、塩化バリウム及び酸化バリウムからなる群から選択された1種以上を含む請求項9〜13のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記混合物を熱処理する段階は、前記混合物を700ないし1000℃の温度で30分ないし10時間熱処理することを含む請求項9〜14のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理する段階の後に粉砕段階をさらに含む請求項9〜15のいずれか1項に記載の負極活物質の製造方法。
【請求項17】
正極と、
請求項1〜のいずれか1項に記載の負極活物質を含む負極と、
前記正極と負極との間に配される電解液と、を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、モバイル機器に対する技術開発及びニーズが増加するにつれて、エネルギー源として二次電池のニーズが急増しており、かかる二次電池のうち高いエネルギー密度及び高い電圧を持つリチウム二次電池が商用化して広く使われている。
【0003】
リチウム二次電池は、一般的にリチウムイオンをインターカレーションまたはデインターカレーションできる物質を正極及び負極として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンが正極及び負極に/から挿入/脱離される時の酸化反応及び還元反応によって電気的エネルギーを生成する。
【0004】
前記リチウム二次電池のアノード活物質としては、黒鉛、高容量シリコン系遷移金属酸化物、スズ系遷移金属酸化物などが使われる。それのうち、最近LiTi12物質がリチウム二次電池の負極材料として注目されている。LiTi12物質は、充放電過程が反復されても構造的な変化が無く、Liイオンの可逆的挿脱が円滑であるので、大型エネルギー保存素子の開発において非常に有用な負極活物質のうち一つである。
【0005】
また、LiTi12物質は格子膨脹がほとんど無視されるほどであるため優秀なサイクル特性を示し、結晶構造学的特徴上リチウムイオンの移動度が非常に優れており、高率放電特性が他の負極活物質に比べて優秀である。
しかし、これまで開発されたLiTi12物質は、高率放電特性が満足すべきレベルに到達できなくて改善の余地が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高率放電特性の改善された負極活物質を提供することである。
本発明の他の目的は、前記負極活物質の製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記負極活物質を含めて高率放電特性が改善されたリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一具現例によって、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部が、Sr、Ba、及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換された負極活物質が提供される。
他の具現例によって、リチウム化合物、チタン前駆体、及びアルカリ土類金属化合物を用意する段階と、前記リチウム化合物、チタン前駆体及びアルカリ土類金属化合物を混合して混合物を形成する段階と、前記混合物を熱処理する段階と、を含む、前記負極活物質を得る負極活物質の製造方法が提供される。
さらに他の具現例によって、正極と、前記負極活物質を含む負極と、前記正極と負極との間に配される電解液と、を含むリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面による負極活物質は、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部が、Sr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換されて導電性が向上されており、リチウム二次電池の高率放電特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一具現例によるリチウム二次電池の分解斜視図である。
図2】実施例1、2及び比較例1による負極活物質のX線回折チャートである。
図3】実施例3、4及び比較例2によるリチウム二次電池の容量維持率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一具現例による負極活物質、その製造方法及びこれを含むリチウム二次電池について詳細に説明する。これは例示として提示されるものであり、これにより本発明が制限されるものではなく、本発明は特許請求の範囲によりのみ定義される。
【0011】
一側面として、負極活物質は、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部が、Sr、Ba、及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換される。前記負極活物質は、リチウムサイトの一部を、熱伝導度が他の金属元素に比べて1/10ほど低いSr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上で置換して、電池内の爆発の危険性を低めると同時に、電気伝導度を向上させて高率放電特性の改善されたリチウム二次電池が提供される。
【0012】
前記リチウムチタン酸化物は下記化学式(1)で表示される。
[化1]
Li4−xTi12 (1)

化学式(1)のうち、
xは、0<x<0.6であり、Mは、Sr、Ba、及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上である。
【0013】
前記化学式(1)のうちxは、0<x<0.6であり、好ましくは、0<x<0.5であり、より好ましくは、0<x≦0.12であり、最も好ましくは0.04≦x≦0.12である。
【0014】
前記リチウムチタン酸化物は、スピネル状の構造を持つ、安定性の高い物質であり、これを負極活物質として使用した場合、電位カーブの平坦性、優秀な充放電サイクル及びパワー特性と共に優秀な耐久性を表す。
【0015】
また、前記リチウムチタン酸化物に、前記Mが、前記xの範囲で示されるような微量でのみ含まれていても、高率放電特性の改善されたリチウム二次電池が提供される。
【0016】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(111)面のピークの半値幅が0.07゜ないし0.09゜でありうる。
前記X線回折パターンは、CuK−α特性X線波長1.541Åを利用したX線回折分析によって得ることができる。
前記リチウムチタン酸化物の(111)面のピークは、ブラッグ2θ角18.7±0.2゜領域、例えば、約18.7゜に現れる。
しかし、リチウムの一部が置換されていないリチウムチタン酸化物の(111)面のピークは、ブラッグ2θ角18.3±0.2゜領域、例えば、約18.3゜に現れる。
したがって、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部が、Sr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換された場合、リチウムの一部が、置換されていないリチウムチタン酸化物のピーク位置よりブラッグ2θ角が約0.2゜ないし約0.6゜高い角度に遷移されることが分かる。
【0017】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(311)面のピークの半値幅が0.11゜ないし0.13゜でありうる。
前記チタン酸化物の(311)面のピークは、ブラッグ2θ角35.9±0.2゜領域、例えば、約35.9゜に現れる。
しかし、リチウムの一部が置換されていないリチウムチタン酸化物の(311)面のピークは、ブラッグ2θ角35.5±0.2゜領域、例えば、約35.5゜に現れる。
したがって、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部が、Sr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換された場合、リチウムの一部が置換されていないリチウムチタン酸化物のピーク位置よりブラッグ2θ角が約0.2゜ないし約0.6゜高い角度に遷移されることが分かる。
【0018】
前記リチウムチタン酸化物は、CuK−α特性X線を利用して得られるX線回折パターンにおける(111)面のピークに対する(311)面のピークの強度比I(310)/I(111)が0.35ないし0.60であり、例えば、0.40ないし0.55でありうる。
【0019】
本発明の他の側面による負極活物質の製造方法として、リチウム化合物、チタン前駆体、及びアルカリ土類金属化合物を用意する段階と、前記リチウム化合物、チタン前駆体及びアルカリ土類金属化合物を混合して混合物を形成する段階と、前記混合物を熱処理する段階と、を含む、前記負極活物質を得る。
【0020】
前記混合物を形成する段階で、前記混合物は、前記リチウム化合物、チタン前駆体及びアルカリ土類金属化合物を同時に、機械的ミキシングにより混合をして形成される。
前記機械的ミキシングは、例えば、ボールミル、バンバリーミキサー、ホモジナイザーなどを利用して実施する。
【0021】
前記リチウム化合物、チタン前駆体及びアルカリ土類金属化合物は、リチウムの一部が、Sr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換されるリチウムチタン酸化物を得られるように、その混合比が適宜に制御される。
前記リチウムチタン酸化物が前記化学式(1)で表示されるリチウム酸化物でありうる。
【0022】
例えば、前記アルカリ土類金属化合物の含有量は、リチウム化合物1モルを基準として0.003モルないし0.17モルであり、例えば、0.003モルないし0.14モルであり、例えば、0.003モルをないし0.03モルでありうる。
【0023】
前記リチウム化合物は、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、フッ化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、塩化リチウム及び酸化リチウムで構成された群から選択された1種以上を含むことができる。好ましくは、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酸化リチウムで構成された群から選択された1種以上であり、最も好ましくは炭酸リチウムである。
【0024】
前記チタン前駆体は、チタン酸化物、水酸化チタン、塩化チタンまたはこれらの組み合わせを含むことができる。好ましくはチタン酸化物を含む。
前記チタン酸化物は、例えば、二酸化チタンまたはチタン酸無水物・チタニアと呼ばれるチタン酸化物(IV)、チタン酸化物(II)、チタン酸化物(III)及び過酸化チタンでありうる。前記チタン酸化物(IV)は、その結晶構造によって、例えば、斜方晶系のブルカイト型、正方晶系のアナターゼ型またはルチル型でありうる。
【0025】
前記アルカリ土類金属化合物は、例えば、炭酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、酸化ストロンチウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、硫酸バリウム、塩化バリウム及び酸化バリウムからなる群から選択された1種以上を含むことができる。ストロンチウム又はバリウムの合金であってもよい。好ましくは、炭酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸バリウム、水酸化バリウムからなる群から選択された1種以上を含む。
【0026】
本発明の製造方法は、前記混合物を熱処理する段階を含む。この時、前記熱処理温度が700ないし1000℃であり、例えば、700ないし900℃でありうる。前記熱処理時間が30分ないし10時間であり、例えば、30分ないし5時間でありうる。
前記アルカリ土類金属化合物は、前記熱処理温度及び前記熱処理時間の範囲内で溶融状態を経てリチウムチタン酸化物の構造に影響を及ぼさず、前記リチウムチタン酸化物のうちリチウムサイトの一部に含まれる。
【0027】
前記熱処理する段階の後に粉砕段階をさらに含むことができる。
【0028】
前記負極活物質の製造方法は、固相法、液相法、気相法など特定の方式の製造方法に制限されず、前記負極活物質を製造できる方法いずれも含む。
【0029】
他の側面によるリチウム二次電池として、正極と、前記負極活物質を含む負極と、前記正極と負極との間に配される電解液と、を含む。
図1は、本発明の一具現例によるリチウム二次電池の分解斜視図である。図1では、円筒形電池の構成を図示した図面を提示しているが、本発明の電池がこれに限定されず、角形やポーチ型も可能であるということはいうまでもない。
【0030】
リチウム二次電池は、使用するセパレータ及び電解質の種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池及びリチウムポリマー電池に分類され、形態によって円筒形、角形、コイン型、ポーチ型などに分類され、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに大別できる。本発明の一具現例によるリチウム二次電池は、その形態が特別に制限されず、これら電池の構造及び製造方法は当分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0031】
図1を参照してさらに詳細に説明すれば、リチウム二次電池100は円筒形であり、負極112、正極114、前記負極112と正極114との間に配されたセパレータ113、前記負極112、正極114及びセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)、電池容器120、及び前記電池容器120を封入する封入部材140を主な部分として構成されている。このようなリチウム二次電池100は、負極112、正極114及びセパレータ113を順に積層した後、螺旋状に巻き取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【0032】
前記負極112は、集電体及び前記集電体上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質を含む。
負極に使われる集電体は、電圧の領域によって銅、ニッケル、アルミニウム、またはSUS集電体を使用でき、例えば、アルミニウム集電体を使用できる。
【0033】
前記負極活物質としては、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部がSr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換されたものが使用される。
前記負極活物質を含む負極を含むリチウム二次電池は、高率放電特性が向上され、熱伝導度が低くて安全性が高い。
【0034】
前記負極活物質層はさらにバインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともある。
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を行い、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリル化したスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使われるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさない電子伝導性材料ならば、いかなるものも使用でき、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、または金属繊維などを使用でき、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を混合して使用できる。前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせを使用できる。
【0036】
この時、前記負極活物質、バインダー及び導電材の含有量は、リチウム二次電池で通例的に使用するレベルを使用でき、例えば、前記負極活物質と、前記導電材及びバインダーの混合重量との重量比は98:2ないし92:8であり、前記導電材及びバインダーの混合比は1:1.0ないし3であるが、これらに制限されるものではない。
【0037】
前記正極114は、電流集電体、及び前記電流集電体に形成される正極活物質層を含む。
前記電流集電体としてはAlを使用できるが、これに限定されるものではない。
前記正極活物質としては、当分野で一般的に使われるものであり、特別に限定されるものではないが、さらに具体的に、リチウムの可逆的な挿入及び脱離の可能な化合物を使用できる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、及びこれらの組み合わせで選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用でき、その具体的な例としては、Li1−b(前記式で、0.90≦a≦1.8、及び0≦b≦0.5である);Li1−b2−c(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);Li2−b4−c(前記式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1−b−cCoα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1−b−cCo2−αα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cCo2−α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cMnα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1−b−cMn2−αα(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1−b−cMn2−α(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMnGeO(前記式で、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);Li(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);Li(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);Li2GbO4(前記式で、0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1である);LiQO;LiQS;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3−f)(PO(0≦f≦2);Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用できる。
具体的な代表的な正極活物質の例として、LiMn、LiNi、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMnO、LiFePO、LiNiCo(0<x≦0.15,0<y≦0.85)などを挙げられる。
【0038】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Fは、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0039】
もちろん、この化合物の表面にコーティング層を持つものを使用してもよく、前記化合物とコーティング層を持つ化合物とを混合して使用してもよい。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートなどのコーティング元素化合物を含む。これらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でありうる。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用できる。コーティング層形成工程は、前記化合物にこれらの元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングできれば、いかなるコーティング方法を使用してもよく、これについては、当業者ならばよく理解できる内容であるため、詳細な説明は省略する。
【0040】
前記正極活物質層はまた、バインダー及び導電材を含む。
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を行い、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化したポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンラバー、アクリル化したスチレン−ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0041】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使われるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさない電子伝導性材料ならば、いかなるものも使用でき、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末、金属繊維などを使用でき、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用できる。
【0042】
この時、前記正極活物質、バインダー及び導電材の含有量は、リチウム電池で通例的に使用するレベルを使用でき、例えば、前記正極活物質と、前記導電材及びバインダーの混合重量との重量比は98:2ないし92:8であり、前記導電材及びバインダーの混合比は1:1.0ないし3であるが、これらに制限されるものではない。
【0043】
前記負極112及び正極114は、活物質、バインダー及び導電材を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は当該分野で周知の内容であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0044】
リチウム二次電池の種類によって、正極と負極との間にセパレータをさらに配置できる。かかるセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜が使われ、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどの混合多層膜が使われうるということはいうまでもない。
【0045】
以下では、本発明の具体的な実施形態を提示する。ただし、下記に記載された実施形態は本発明を具体的に例示または説明するためのものに過ぎず、これにより本発明が制限されてはならない。
また、ここに記載されていない内容は、当業者ならば十分に技術的に類推できるため、その説明を省略する。
[実施例]
(負極活物質の製造)
【実施例1】
【0046】
159.3重量部の炭酸リチウム、406.4重量部のチタン酸化物(IV)及び6.5重量部の炭酸バリウムを10分間パウダーミキサーで混合して混合物を形成した。前記混合物を酸素雰囲気下で分当り5℃で850℃まで昇温させ、前記温度で5時間熱処理して結果物を形成した。前記結果物を粉末粉砕機(powder crusher)を利用して粉砕し、Li3.92Ba0.08Ti12の負極活物質を製造した。
【実施例2】
【0047】
6.5重量部の炭酸バリウムの代わりに7.0重量部の炭酸ストロンチウムを、10分間パウダーミキサーで混合して混合物を形成したことを除いては、実施例1と同様に行ってLi3.92Sr0.08Ti12の負極活物質を製造した。
【0048】
比較例1
炭酸バリウムを添加していないことを除いては、実施例1と同様に行ってLiTi12の負極活物質を製造した。
【実施例3】
【0049】
(リチウム二次電池の製造)
前記実施例1で製造されたLi3.92Ba0.08Ti12の負極活物質、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、デンカブラック(denka black)を89:6:5の割合で、NMPを溶媒と共に混合してスラリーを製造した。
前記スラリーをアルミニウムホイール上に68μm厚さに塗布した後で圧延し、130℃で12時間真空乾燥して負極を製造した。
次いで、前記負極を直径14φの円形に巻き取りした後、リチウム金属を相対電極とし、ポリプロピレンを隔離膜(セパレータ)とし、1.0MLiPFがEC(エチレンカーボネート):EMC(エチルメチルカーボネート)(3:7体積比)に溶解された溶液を電解液として使用して、CR−2032規格のコインセルを製造した。
【実施例4】
【0050】
前記実施例1で製造されたLi3.92Ba0.08Ti12の負極活物質の代わりに、前記実施例2で製造されたLi3.92Sr0.08Ti12の負極活物質を使用したことを除いては、実施例3と同様に行ってコインセルを製造した。
【0051】
比較例2
前記比較例1で製造されたLiTi12の負極活物質を使用したことを除いては、実施例3と同様に行ってコインセルを製造した。
【0052】
(負極活物質のX線回折分析)
前記実施例1、2で製造されたLi3.92Ba0.08Ti12及びLi3.92Sr0.08Ti12それぞれに対して、X線回折分析(XRD、フィリップス社製のモデルX’pert Pro)を行った。得られたX線回折チャートを図2に示した。
図2を参照すれば、前記実施例1で製造されたLi3.92Ba0.08Ti12のX線回折ピークが、ブラッグ2θ角、約18.7゜、35.9゜、43.6゜、47.7゜、57.6゜、63.1゜、66.3゜、74.6゜、75.6゜及び79.7゜で観察された。
前記実施例2で製造されたLi3.92Sr0.08Ti12のX線回折ピークが、ブラッグ2θ角約18.5゜、35.7゜、43.4゜、47.5゜、57.4゜、62.9゜、66.1゜、74.4゜、75.4゜及び79.5゜で観察された。
前記比較例1で製造されたLiTi12のX線回折ピークが、ブラッグ2θ角約18.3゜、35.5゜、43.2゜、47.3゜、57.2゜、62.7゜、65.9゜、74.2゜、75.2゜及び79.3゜で観察された。
すなわち、前記実施例1で製造されたLi3.92Ba0.08Ti12、及び前記実施例2で製造されたLi3.92Sr0.08Ti12のX線回折ピーク位置が、比較例1で製造されたLiTi12のX線回折ピーク位置より、それぞれ約0.4゜及び約0.2゜高い角度に遷移されることが確認できた。
また、前記実施例1で製造されたLi3.92Ba0.08Ti12に対するX線回折ピークのうち、2θ約18.7゜で(111)面のピークが観察され、約35.9゜で(311)面のピークが観察された。
前記(111)面のピークの半値幅は0.07゜ないし0.09゜であり、(311)面のピークの半値幅は0.11゜ないし0.13゜であることが確認できた。
【0053】
(リチウム二次電池の高率放電特性評価)
実施例3、4、及び比較例2によって製造されたCR−2032規格のコインセルを、静電流(0.2C)及び静電圧(0.9V、0.01Cカットオフ)条件で充電させた後、10分間休止(rest)し、静電流(0.2C、0.5C、1C、2C、5Cまたは10C)条件下で3.0Vになるまで放電させた。すなわち、充放電速度をそれぞれ0.2C、0.5C、1C、2C、5C及び10Cに変化させることで前記各コインセルの充電容量及び放電容量を評価した。
その結果を、図3及び下記の表1ないし表3に示した。これらの図及び表において「FM」はフォーメーション(formation)後の状態を意味する。
図3で‘C−RATE’とは、セルの放電速度であり、セルの総容量を総放電時間で割って得た値を意味する。下記の表1は、実施例3のリチウム二次電池の特性を評価したものであり、下記の表2は、実施例4のリチウム二次電池の特性を評価したものであり、下記の表3は、比較例2のリチウム二次電池の特性を評価したものである。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
前記図3、表1ないし表3を参照すれば、実施例3の0.2C〜5C容量維持率及び充放電効率がそれぞれ92.49%及び93.05%であり、実施例4の0.2C〜5C容量維持率及び充放電効率がそれぞれ90.77%及び92.23%であり、比較例2に比べて、それぞれ約8%以上及び約6%以上向上したセル性能を示した。
また、実施例3の0.2C〜10C容量維持率及び充放電効率がそれぞれ89.96%及び90.63%であり、実施例4の0.2C〜10C容量維持率及び充放電効率がそれぞれ87.09%及び89.05%であり、比較例2に比べて、それぞれ約10%以上及び約9%以上向上したセル性能を示した。
【0058】
高率放電特性を、下記数式(1)及び下記数式(2)によって計算した。

高率放電特性(1)(%)=(セルを5C放電させる時の放電容量)/(セルを0.2Cの速度で放電させる時の放電容量)×100 (1)

高率放電特性(2)(%)=(セルを10C放電させる時の放電容量)/(セルを0.2Cの速度で放電させる時の放電容量)×100 (2)
【0059】
前記数式(1)から計算された実施例3、実施例4、及び比較例2の高率放電特性(1)は、それぞれ92.97%、91.68%及び85.03%であり、実施例3及び実施例4の高率放電特性1が比較例2に比べて向上されていることを示した。
また、前記数式(2)から計算された実施例3、実施例4及び比較例2の高率放電特性(2)は、それぞれ90.43%、87.96%及び78.69%であり、実施例3及び実施例4の高率放電特性が比較例2に比べてさらに向上されていることを示した。
ここから、リチウム二次電池が、リチウムチタン酸化物のリチウムの一部がSr、Ba、これらの混合物及びこれらの合金からなる群から選択された1種以上に置換された負極活物質を備えることによって、高率放電特性が改善されることが分かる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付した図面の範囲内で多様に変形して実施でき、これも本発明の範囲に属するということはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、リチウム二次電池関連の技術分野に好適に用いられる。
図1
図2
図3