特許第6068085号(P6068085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6068085エッチングマスク用組成物およびパターン形成方法
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  • 特許6068085-エッチングマスク用組成物およびパターン形成方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068085
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】エッチングマスク用組成物およびパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   H01L31/04 400
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-230129(P2012-230129)
(22)【出願日】2012年10月17日
(65)【公開番号】特開2013-140943(P2013-140943A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2015年8月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-267390(P2011-267390)
(32)【優先日】2011年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】富田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】吉井 靖博
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆昭
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−034543(JP,A)
【文献】 特開2008−291177(JP,A)
【文献】 特開2004−029840(JP,A)
【文献】 特開平01−292080(JP,A)
【文献】 特開2010−254917(JP,A)
【文献】 特開昭63−184338(JP,A)
【文献】 特表2007−505487(JP,A)
【文献】 特開平07−038016(JP,A)
【文献】 特開昭62−196832(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/050889(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0042568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/18−31/20
H01L 31/02−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノボラック樹脂(A)と、
沸点が190℃以上の溶剤(B)と、
シリコン系、アクリル系またはフッ素系の界面活性剤(C)と、
を含む、非感光性の、太陽電池用基板のエッチングマスク用組成物であって、
前記エッチングマスク用組成物は、沸点180℃未満の溶剤(B')を含んでもよく、前記エッチングマスク用組成物が溶剤(B')を含む場合、前記溶剤(B)と前記溶剤(B')の合計に対する前記溶剤(B)の含有量は70質量%以上であり、
前記溶剤(B)および前記溶剤(B’)は前記ノボラック樹脂(A)を溶解する太陽電池用基板のエッチングマスク用組成物。
【請求項2】
前記溶剤(B)が、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリン、ベンジルアルコール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、ジヘキシルエーテル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、テルピネオール、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のマスク用組成物。
【請求項3】
基板上に、請求項1または2に記載の太陽電池用基板のエッチングマスク用組成物を用いて印刷法によりマスクパターンを形成する工程と、
マスクパターンをベークする工程と、
基板をエッチングし、マスクパターンを転写する工程と、
マスクパターンを除去する工程と
を含むパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用基板をエッチングする際のマスク剤として使用されるエッチングマスク用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池製造工程において、基板を部分的にエッチング処理する際にマスク剤が使用されている。従来、この工程には、フォトレジストが使用されていたが、現在、工程数の削減を目的として印刷型レジストの適用が検討されている。太陽電池用基板をエッチング処理する際のエッチング液として、フッ酸、硝酸などの強酸が使用される。このため、印刷型レジストに要求される特性として、エッチング時のエッチング液に対する耐酸性、印刷法によるパターン形成が可能であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−293888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトレジストに使用されているアクリル樹脂は耐酸性の点で十分でなく、太陽電池基板エッチング用のマスク剤として使用することは困難であった。また、フォトレジストで使用されていた低沸点溶剤を用いて作製されたインクは、印刷の安定性が十分でないため、良好なパターンを形成する事が困難であった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エッチングマスク用組成物を太陽電池用基板に印刷した際の耐酸性および印刷安定性を向上させることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、エッチングマスク用組成物である。当該エッチングマスク用組成物は、ノボラック樹脂(A)と、沸点が190℃以上の溶剤(B)と、を含み、溶剤全体に対する前記溶剤(B)の含有量が70質量%以上であり、かつ非感光性であることを特徴とする。
【0007】
上記態様のエッチングマスク用組成物によれば、太陽電池用基板に印刷した際の耐酸性および印刷安定性を向上させることができる。
【0008】
上記態様のエッチングマスク用組成物において、シリコン系、アクリル系またはフッ素系の界面活性剤(C)をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の他の態様は、パターン形成方法である。当該パターン形成方法は、基板上に、上述したいずれかの態様の太陽電池用基板のエッチングマスク用組成物を用いて印刷法によりマスクパターンを形成する工程と、マスクパターンをベークする工程と、基板をエッチングし、マスクパターンを転写する工程と、マスクパターンを除去する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エッチングマスク用組成物を太陽電池用基板に印刷した際の耐酸性および印刷安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1(A)〜図1(C)は、基板へのパターン形成工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態に係るエッチングマスク用組成物は非感光性であり、太陽電池用基板を部分的にエッチング処理する際に使用されるエッチングマスクとして好適に用いられる。
【0013】
実施の形態に係るエッチングマスク用組成物は、ノボラック樹脂(A)と、沸点が190℃以上の溶剤(B)と、を含む。
【0014】
ノボラック樹脂(A)としては、下記に例示するフェノール類と、下記に例示するアルデヒド類とを塩酸、硫酸、ギ酸、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸等の酸性触媒下で反応させて得られるノボラック樹脂などが挙げられる。
【0015】
フェノール類としては、例えばフェノール;m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール等のクレゾール類;2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、3,4−キシレノール等のキシレノール類;m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2,3,5−トリエチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−5−メチルフェノール等のアルキルフェノール類;p−メトキシフェノール、m−メトキシフェノール、p−エトキシフェノール、m−エトキシフェノール、p−プロポキシフェノール、m−プロポキシフェノール等のアルコキシフェノール類;o−イソプロペニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2−メチル−4−イソプロペニルフェノール、2−エチル−4−イソプロペニルフェノール等のイソプロペニルフェノール類;フェニルフェノール等のアリールフェノール類;4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ビスフェノールA、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール等のポリヒドロキシフェノール類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのフェノール類の中では、特にm−クレゾール、p−クレゾールが好ましい。
【0016】
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、シクロヘキサンアルデヒド、フルフラール、フリルアクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、m−クロロベンズアルデヒド、p−クロロベンズアルデヒド、ケイ皮アルデヒド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのアルデヒド類の中では、入手のしやすさからホルムアルデヒドが好ましい。
【0017】
ノボラック樹脂(A)は、1種のノボラック樹脂からなっていてもよく、2種以上のノボラック樹脂からなっていてもよい。ノボラック樹脂(A)が2種以上のノボラック樹脂からなる場合、それぞれのノボラック樹脂のMwは特に限定されないが、ノボラック樹脂(A)全体としてMwが1000〜100000となるように調製されていることが好ましい。特にインクジェット印刷法を用いる場合は、(A)全体としてMwが1000〜3000となるように調製されていることが好ましい。なお、ノボラック樹脂(A)は、エッチングマスク用組成物中、30〜70質量%含まれていることが好ましい。インクジェット印刷法を用いる場合は、エッチングマスク用組成物中、10〜30質量%含まれていることが好ましい。また、ノボラック樹脂(A)は、エッチングマスク用組成物における固形分中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
【0018】
以上説明したノボラック樹脂(A)に共通する特性として耐酸性に優れていることが挙げられる。
【0019】
溶剤(B)の具体例としては、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、プロピレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリン、ベンジルアルコール、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−エチル−3−メトキシブチルアセテート、2−メトキシペンチルアセテート、3−メトキシペンチルアセテート、4−メトキシペンチルアセテート、2−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−3−メトキシペンチルアセテート、3−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、4−メチル−4−メトキシペンチルアセテート、ジヘキシルエーテル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、テルピネオールなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
実施の形態に係るエッチングマスク用組成物は、上述した溶剤(B)以外の溶剤を含んでもよい。ただし、溶剤全体に対する溶剤(B)の含有量は70質量%以上であり、90質量%以上がより好ましい。
【0021】
溶剤(B)以外の溶剤(沸点180℃未満の溶剤(B’))としては、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等の多価アルコール類の誘導体;その他酢酸ブチル、アセト酢酸エチル、乳酸ブチル、シュウ酸ジエチル等のエステル類が挙げられる。これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、酢酸ブチル
が好ましい。溶剤(B’)を含む場合、溶剤全体に対する溶剤(B’)の含有量は1~30質量%であり、1〜20質量%がより好ましい。
【0022】
実施の形態に係るエッチングマスク用組成物は、フッ素系、シリコン系またはアクリル系の界面活性剤(C)をさらに備えてもよい。
【0023】
フッ素系の界面活性剤(C)としては、KL−600(共栄社化学製)などが挙げられる。シリコン系の界面活性剤(C)としては、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを主成分とするBYK−310(ビッグケミ−製)、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサンを主成分とするBYK−323(ビッグケミ−製)、ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサンを主成分とするBYK−SILCLEAN3720(ビッグケミ−製)、ポリエーテル変性メチルポリシロキサンを主成分とするKF−353(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。また、アクリル系の界面活性剤(C)としては、BYK−354(ビッグケミ−製)が挙げられる。これらの中では、シリコン系の界面活性剤が好ましく、ポリジメチルシロキサン系の界面活性剤が好ましい。界面活性剤(C)の添加量は、0.001質量%〜1.0質量%が好ましく、0.01質量%〜0.1質量%がより好ましい。
【0024】
以上、説明したエッチングマスク用組成物は、耐酸性に優れるノボラック樹脂(A)を樹脂成分として含むことにより、印刷により太陽電池用基板にマスクとして形成された状態において、エッチング液に対する耐性を向上させることができる。また、沸点が190℃以上の溶剤(B)を含むことにより、印刷時にエッチングマスク用組成物(インク)が乾燥することを抑制し、再印刷性やインク吐出性を向上させることができる。
【0025】
また、エッチングマスク用組成物が界面活性剤(C)を含むことにより、太陽電池用基板に当該エッチングマスク用組成物を印刷した際に、設定された印刷パターン幅に対して、実際に印刷されたパターンの幅が大きくなること、すなわち、印刷にじみが生じることを抑制することができる。
【0026】
(パターン形成方法)
図1(A)に示すように、シリコン基板や銅、ニッケル、アルミ等の金属基板などの太陽電池用基板10の上に上述のエッチングマスク用組成物を用いて、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、ロールコート印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法などの印刷法を用いてマスクパターン20を形成する。なお、マスクパターン20を形成前に、必要に応じて基板の前処理を行ってもよい。前処理としては溌液性層を形成する工程が挙げられ、例えば特開2009−253145号公報に記載の工程が挙げられる。続いて、マスクパターン20を加熱して、マスクパターン20をベークする。加熱条件は、エッチングマスク用組成物の成分や、マスクパターン20の膜厚等によって適宜設定されるが、たとえば、200℃、3分間である。
【0027】
続いて、図1(B)に示すように、マスクパターン20の開口部に露出した太陽電池用基板をフッ酸と硝酸との混酸などのエッチング液を用いて選択的に除去し、マスクパターン20の開口部(露出部)の太陽電池基盤をエッチングし、マスクパターンを転写する。
【0028】
続いて、図1(C)に示すように、エッチング処理後、マスクパターン20を除去する。除去方法としては、アルカリ水溶液、有機溶剤、市販の剥離液などに室温で5分〜10分程度浸漬して剥離する方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液などがある。有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などがある。市販の剥離液としては、有機溶剤系のハクリ105(東京応化工業社製)等を使用することができる。この結果、太陽電池基板10上にマスクパターン20に応じた凸部が転写されたパターンを得ることができる。なお、太陽電池用基板に形成された凸部の機能としては、電極や拡散層などが挙げられる。
【0029】
以上の工程により、太陽電池用基板に所定パターンの凸部を形成することができる。上述したエッチングマスク用組成物は、耐酸性やパターン形成精度が優れているため、太陽電池用基板に所望のパターンを精度良く形成することができる。また、フォトリソグラフィ法のような複雑な工程を経ることなく、印刷法にて太陽電池用基板にパターンが形成されるため、太陽電池の製造プロセスを簡略化し、ひいては太陽電池の製造コストを低減することができる。
【0030】
参考例1−4および比較例1−5)
表1に、参考例1−4および比較例1−5のエッチングマスク用組成物の成分を示す。参考例1−4および比較例1−5のエッチングマスク用組成物に用いられるノボラック樹脂(A)−1は、質量平均分子量18000(m/p=60/40)のノボラック樹脂である。このノボラック樹脂(A)−1に表1に示す溶剤(B)を溶解して、参考例1−4および比較例1−5のエッチングマスク用組成物からなるインクを作製した。
【表1】
【0031】
(耐酸性評価)
作製した各インクをスクリーン印刷法により、シリコン基板に印刷し、500μm幅および1000μm幅のパターンを形成した。形成したパターンは、200℃のホットプレートにおいて3分間乾燥した。形成したパターンの耐酸性を確認するために、4%フッ酸水溶液あるいは69%硝酸水溶液に浸漬し、パターンの表面状態を光学顕微鏡により観察した。その結果、参考例1−4については、4%フッ酸水溶液においては、10分間、69%硝酸水溶液においては1分間浸漬しても膜状態に変化がないことを確認した。一方、比較例1−5では、印刷擦れにより正常なパターンを形成する事が困難であったため、耐酸性評価には至らなかった。
【0032】
(スクリーン印刷の印刷安定性評価)
上述した参考例1−4および比較例1−5の各インクについて、スクリーン印刷を連続して実施し、印刷安定性を確認した。印刷安定性に関する結果を以下のように分類した。
○:7ショット連続で印刷したときの印刷性が良好(1ショット目から7ショット目まで印刷パターンに変化なし)
△:7ショット連続で印刷したときの印刷性が良好(1ショット目から徐々に印刷パターンの表面粗さが増加、印刷擦れなし)
×:7ショット連続で印刷したときの印刷性が不良(印刷擦れあり)
得られた結果を表1に示す。表1より、沸点が190℃以上の溶剤(B)を含む参考例1−4において印刷安定性が良好となることが確認された。また、溶剤全体に対する溶剤(B)の含有量が66.6%の比較例5では、印刷安定性が不良となることが確認された。これに対して、溶剤全体に対する溶剤(B)の含有量が70%の参考例4では、印刷安定性が良好となることが確認された。
【0033】
(実施例5−11)
表2に、実施例5−11のエッチングマスク用組成物の成分を示す。実施例5−11はいずれも界面活性剤(C)を含む。表3は、実施例5−11に用いられた界面活性剤(C)の詳細を示す。
【表2】
【表3】
【0034】
(スクリーン印刷の印刷にじみ評価)
「耐酸性評価」で説明したパターン形成条件に従い、参考例1、実施例5−11の各インクを用いて500μm幅および1000μm幅のパターンをシリコン基板上に形成し、印刷にじみを評価した。印刷にじみに関する評価を下記のように分類した。
△:実際に形成されたパターンの幅Aと設定された幅Bとの差|A−B|が300μm以上
○:実際に形成されたパターンの幅Aと設定された幅Bとの差|A−B|が60μm以上300μm以下
◎:実際に形成されたパターンの幅Aと設定された幅Bとの差|A−B|が60μm未満
得られた結果を表4に示す。表4に示す印刷にじみの評価結果より、参考例1、実施例5−11のいずれのインクにおいても、印刷にじみを抑制する効果が確認された。特に、界面活性剤(C)としてBYK−SILCLEAN3720(ポリエーテル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン)を用いた実施例9−11(界面活性剤(C)の含有量:0.1、0.01、0.001質量%)において印刷にじみが顕著に抑制されることが確認された。
【表4】
【0035】
(実施例12−14、比較例6)
表5に、実施例12−14、比較例6のエッチングマスク用組成物の成分を示す。各例はいずれも界面活性剤(C)を含む。表5中、(A)−2は質量平均分子量2150、(m/p=60/40)のノボラック樹脂であり、KF−353は信越化学工業(株)社製、シリコン系、主成分:ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、不揮発分100wt%の界面活性剤である。
【表5】
【0036】
(インクジェットの印刷性の評価)
前処理をした幅4μm高さ4μmのテクスチャ表面を有する基板に、各例のエッチングマスク用組成物をインクジェット印刷機(製品名「MID−500C」、武蔵エンジニアリング株式会社製)により、以下の条件で吐出し、200℃で3分間ベーク処理をおこなった。3回または5回重ね塗りを行った際のパターンと膜厚をそれぞれ観測した。いずれも、約30μmのラインパターンを形成することができ、印刷性が良好であることを確認できた。
<吐出条件>
印刷頻度(周波数):3000Hz
印刷ステージの温度:80℃
印刷デザイン:1ピクセル×1ライン
印刷ヘッド:KM512M(14pl)
【0037】
(耐酸性評価)
作製した上記パターンについて、4%フッ酸水溶液あるいは69%硝酸水溶液に浸漬し、パターンの表面状態を光学顕微鏡により観察した。その結果、いずれも膜状態に変化がないことが確認できた。
【0038】
(インクジェットの射出安定性の評価)
前処理をした幅4μm高さ4μmのテクスチャ表面を有する基板に、各例のエッチングマスク用組成物をインクジェット印刷機(製品名「MID−500C」、武蔵エンジニアリング株式会社製)により、以下の条件で吐出し、200℃で3分間ベーク処理をおこなった。初回の吐出を行ったのち、1分間、5分間と間隔をあけた後再度吐出を行い、以下の基準で評価した。得られた結果を表6に示す。
○:印刷デザインどおりのパターンが得られた場合
×:印刷デザインどおりのパターンが得られなかった場合
<吐出条件>
印刷頻度(周波数):4255Hz
印刷ステージの温度:80℃
印刷デザイン:1ピクセル×512ライン
印刷ヘッド:KM512M(14pl)
【表6】
【0039】
以上の結果から、本発明に係る実施例12〜14のエッチングマスク用組成物は、耐酸性に加えてインクジェットによる印刷性も良好であることが確認できた。なお、実施例13については比較例6よりも固形分濃度が低いにもかかわらず、同等以上の厚みの印刷膜を形成されていた。
図1