特許第6068122号(P6068122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6068122
(24)【登録日】2017年1月6日
(45)【発行日】2017年1月25日
(54)【発明の名称】分岐継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 41/06 20060101AFI20170116BHJP
【FI】
   F16L41/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-273298(P2012-273298)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-119007(P2014-119007A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晃士
(72)【発明者】
【氏名】蟹澤 裕
(72)【発明者】
【氏名】吉井 崇朗
(72)【発明者】
【氏名】星野 光義
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−139198(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0158393(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0080158(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02264339(GB,A)
【文献】 英国特許出願公開第02216616(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L41/00−41/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流動する本管に装着される鞍形状のスリーブ本体部と、前記スリーブ本体部から外方に向かって突出するように設けられた中空の分岐部とを有し、前記スリーブ本体部の内面には環状溝が形成された分岐スリーブ部材と、
前記分岐スリーブ部材と共に前記本管を挟みこんで前記本管の外面に装着される、前記分岐スリーブ部材と対をなす鞍形状の押しスリーブ部材と、
前記スリーブ本体部の前記環状溝に装着され、前記本管の外面と前記スリーブ本体部の内面をシールするシール部材と、
前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材を締結する締結部材と、を備える分岐継手であって、
前記分岐スリーブ部材は、前記押しスリーブ部材との締結方向に向かって先細りとなるように縮径テーパ部が形成された楔状凸部が、前記スリーブ本体部の周方向の両端部に形成され、
前記押しスリーブ部材は、前記楔状凸部を受け取る凹部が形成され、
前記分岐スリーブ部材は、前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材との締め付けによって前記楔状凸部同士が近づくことで、前記スリーブ本体部が縮径されることを特徴とする分岐継手。
【請求項2】
前記環状溝は、前記分岐部の前記スリーブ本体部へのつなぎ部に対して、前記シール部材が前記本管の軸方向外側に配置されるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の分岐継手。
【請求項3】
前記分岐部の前記スリーブ本体部とのつなぎ部の形状は、前記スリーブ本体部の縮径に伴う応力を分散する形状に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分岐継手。
【請求項4】
前記つなぎ部の形状は、前記スリーブ本体部に向かって拡径するテーパ状に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の分岐継手。
【請求項5】
前記分岐スリーブ部材は、前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材とを本管へ装着したときに、装着方向と同一の方向に本管表面における穿孔穴の近傍の2箇所を押圧する支柱が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の分岐継手。
【請求項6】
前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材とを前記本管に装着したとき、前記本管の外周部を押圧する複数の押圧凸部が前記押しスリーブの両端部の内面に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の分岐継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ガスなどの流体を流動させる鋳鉄製の管を分岐する分岐継手に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスなどの埋設配管には、ねずみ鋳鉄またはダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)からなる鋳鉄製の管が広く使用されている。これらの鋳鉄製の管は、管の材質や接続口形状の違いによって、複数の異なる規格で製造されており、同一の呼び口径(例えば呼び口径100A)であっても管種によって異なる外径を有している。例えば、同じダクタイル鋳鉄製で同一の呼び口径を有する鋳鉄管であっても管外径が若干異なる複数の規格がある。そのために、各管を分岐する場合には管種に応じて対応する分岐継手を使用する必要があった。
鋳鉄管などの埋設ガス管を分岐する継手として、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に記載されている分岐用継手によれば、元管1に第1、第2分割継手4、5を抱合して、ホールソーにより穿孔を行うことで第2分割継手5から分岐をとることができるが、元管の外径に対する許容代はなく管外径の異なる管種毎に対応するためには、各管外径に応じた分岐継手を準備しなければならない。
【0003】
また、分岐しようとする地中に埋設された管がいずれの種類の管であるかは、地面を掘り起こしたときに、はじめてわかるケースも多く、施工者は、どの管種の埋設管にも対応するために、管種ごとに対応する分岐継手をすべて準備しなければならず準備が煩雑であった。そこで、ある程度の外径寸法の違いを許容し、かつ管材質の違い(ねずみ鋳鉄管とダクタイル鋳鉄管)にも対応していずれの管からも分岐することができる分岐継手として、二液性のシール剤とゴム製のシール部材を併用することで管種の違いによる管外径の差を許容する分岐継手があり実用に供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−336783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような汎用型の分岐継手では、ダクタイル鋳鉄管に比して曲げ荷重に対する耐荷重の小さいねずみ鋳鉄管からの分岐をも可能にするために分岐継手自体の剛性を十分確保しなければならず、分岐継手が非常に大きくかつ重いものになり、分岐配管の施工が困難となっている。また、近年においては、曲げ荷重に対する耐荷重の小さなねずみ鋳鉄管からの分岐配管を行わないガス事業者も多く、これらの事業者にとっては前述した分岐継手は過剰に剛性を有するオーバースペックなものとなっている。そのため、分岐作業の施工性が優れた軽量な分岐継手が望まれている。ただし、これら事業者においても若干の管外径の違いに対応可能な許容代は分岐継手に対して要求されている。
【0006】
したがって、本発明は以上の従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、取扱いが容易でありながら、外径の異なる複数の管種の管に装着して分岐を取り出すことができ、且つ剛性の高い鋳鉄管用分岐継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するために、本発明の分岐継手は、
流体が流動する本管に装着される鞍形状のスリーブ本体部と、前記スリーブ本体部から外方に向かって突出するように設けられた中空の分岐部とを有し、前記スリーブ本体部の内面には環状溝が形成された分岐スリーブ部材と、
前記分岐スリーブ部材と共に前記本管を挟みこんで前記本管の外面に装着される、前記分岐スリーブ部材と対をなす鞍形状の押しスリーブ部材と、
前記スリーブ本体部の前記環状溝に装着され、前記本管の外面と前記スリーブ本体部の内面をシールするシール部材と、
前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材を締結する締結部材と、を備える分岐継手であって、
前記分岐スリーブ部材は、前記押しスリーブ部材との締結方向に向かって先細りとなるように縮径テーパ部が形成された楔状凸部が、前記スリーブ本体部の周方向の両端部に形成され、
前記押しスリーブ部材は、前記楔状凸部を受け取る凹部が形成され、
前記分岐スリーブ部材は、前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材との締め付けによって前記楔状凸部同士が近づくことで、前記スリーブ本体部が縮径されることを特徴とするものである。
分岐スリーブ部材は、そのスリーブ本体部の周方向両端部に形成された楔状凸部を、押しスリーブ部材に形成された凹部によって縮径する方向に荷重を受けて縮径する方向に変形する。
【0008】
また、本発明の分岐継手において、
前記環状溝は、前記分岐部の前記スリーブ本体部へのつなぎ部に対して、前記シール部材が前記本管の軸方向外側に配置されるように設けられることが望ましい。
このように、シール部材が本管の軸方向外側に配置されることで、スリーブ本体の肉厚をほぼ均一にすることができる。それにより、前記スリーブ本体部の縮径に伴う応力が分散されるので、スリーブ本体部の縮径の際にスリーブ本体部の一箇所に集中して応力が発生することが防止され、スリーブ本体部は管外面に沿って全体的に万遍なく変形することにより、管外径が異なる鋳鉄管でもシール性を有することができる。
【0009】
また、本発明の分岐継手において、
前記分岐部の前記スリーブ本体部とのつなぎ部の形状は、前記スリーブ本体部の縮径に伴う応力を分散する形状に設けられていることが望ましい。
このように、分岐部とスリーブ本体部のつなぎ部の形状が、スリーブ本体部の縮径に伴う応力を分散する形状に設けられるので、スリーブ本体部の縮径の際にスリーブ本体部の一箇所に集中して応力が発生することが防止され、スリーブ本体部は管外面に沿って全体的に万遍なく変形することにより、管外径が異なる鋳鉄管でもシール性を有することができる。
【0010】
また、本発明の分岐継手において、
前記つなぎ部の形状は、外側から前記スリーブ本体部に向かって拡径するテーパ状に設けられていることが望ましい。
このように、つなぎ部の形状を外側からスリーブ本体部に向かって拡径するテーパ状に設けられるので、テーパ状の部分全体が変形しながら分岐スリーブ部材を変形させ一箇所に集中して応力が生じない。
【0011】
また、本発明の分岐継手において、
前記分岐スリーブ部材は、前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材とを本管へ装着したときに、装着方向と同一の方向に本管表面における穿孔穴の近傍の2箇所を押圧する支柱が設けられていることが望ましい。
このように、分岐スリーブ部材に本管表面における穿孔穴の近傍の2箇所を押圧する支柱が設けられるので、本管に曲げ荷重が加わり本管の穿孔穴側に引っ張り応力が生じたときにも支柱の押圧よって本管の曲げ力に抗する方向の応力が作用する。
【0012】
また、本発明の分岐継手において、前記分岐スリーブ部材と前記押しスリーブ部材とを前記本管に装着したとき、前記本管の外周部を押圧する複数の押圧凸部が前記押しスリーブ部材の両端部の内面に設けられていることが望ましい。
このように、押しスリーブ部材の両端部の内面に複数の押圧凸部が設けられるので、本管に対する押しスリーブ部材の接触圧力が増す。これにより、本管に曲げ荷重が加わった時の耐曲げ荷重性能の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、分岐スリーブ部材は、押しスリーブ部材との締結方向に向かって先細りとなるようにテーパ部が形成された楔状凸部が円周方向の両端部に形成され、押しスリーブ部材は、楔状凸部を受け取る凹部が形成されており、分岐スリーブと押しスリーブとの締め付けにより楔状凸部同士が近づくことでスリーブ本体が縮径されて、分岐スリーブ部材が装着される管の外周に沿って変形されるので、若干外径が異なる管に対しても同一の分岐継手を本管に装着して分岐を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る分岐継手を本管に装着した状態を示す正面図(半断面図)である。
図2】本発明に係る分岐継手の分岐スリーブ部材の正面図(部分断面図)である。
図3】本発明に係る分岐継手の分岐スリーブ部材の右側面図である。
図4】本発明に係る分岐継手の分岐スリーブ部材の底面図である。
図5】本発明に係る分岐継手の押しスリーブ部材の側面図である。
図6】本発明に係る分岐継手の押しスリーブ部材の平面図である。
図7】本発明に係る分岐継手の部品展開図である。
図8】本発明に係る分岐継手の施工状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る分岐継手について説明する。
本発明の一実施の形態に係る分岐継手1は、図1に示されるように、分岐される管Pに装着される分岐スリーブ部材2と、分岐スリーブ部材2と対をなし本管Pに装着される押しスリーブ部材3と、これらの対をなすスリーブ部材同士を締結するボルト4、ナット5からなる締結部材と、本管Pと分岐スリーブ部材2を密封シールするシール部材6とより構成されている。以下、各部材の詳細についてそれぞれ説明する。
【0016】
図2図3に示されるように、分岐スリーブ部材2は、本管Pの外周部の半径と同等もしくは若干大きな曲率半径の円弧状の内面を有する鞍形状のスリーブ本体部201と、スリーブ本体部201の中央部から外側に向かって突出する分岐部202とを有する。分岐継手1は外径寸法の仕様の異なる複数種類の本管Pに装着されるので、分岐スリーブ部材2の内面の曲率半径は、大きい側の寸法の本管Pの半径寸法と同等もしくは若干大きく設けられている。スリーブ本体部201と本管Pの寸法関係をこのように設けることで、本管Pの外周部に分岐スリーブ部材2を容易に装着することができる。スリーブ本体部201と分岐部202とは一体に鋳造により成型された鋳物である。材質は球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)である。
【0017】
分岐部202には、図示しない分岐管を接続するための樹脂製の短管203が挿入されて密封接続されている。分岐部202のスリーブ本体部201へのつなぎ部204(付け根部)は、スリーブ本体部201に向かって拡径する略三角錐形状に形成されている。また図2図4に示されるように、分岐部202の付け根部の内径側には端面がスリーブ本体部201の内周面と同一面となるように2本の支柱205が形成されている。また、スリーブ本体部201の内面にはシール部材6が装着されるシール部材収容溝206が形成されている。シール部材収容溝206は、シール部材6が分岐部202の外径よりも外側の位置に配置されるように、略三角錐形状のつなぎ部204よりも外側に設けられている。また、分岐スリーブ部材2には、後述する押しスリーブ部材3と締結するためのフランジ部209が設けられている。フランジ部209の形状は、内側が幅広で端部に行くにつれて幅が狭まるように設けられ、ボルト穴212も同様に内側が幅広で端部が幅狭となるように設けられている。このように、本管の軸方向内側のボルト穴212を管軸に対して外側に設けられ、支点に対する力点(ボルト穴の位置)が遠ざかるので、締結時により大きな曲げモーメントを生じさせることができる。これにより、分岐スリーブ部材2において最も剛性の高い分岐スリーブ本体部201の分岐部付近をより確実に変形させて、スリーブ本体部201の内面を本管Pの外面により確実に密着させることが可能である。スリーブ本体部201の周方向の両端には、フランジ部209から突出するように楔状凸部207が形成されている。楔状凸部207はスリーブ本体部201の周方向の延長線上に、外側に縮径テーパ面208を有する先細り状に設けられている。また、スリーブ本体部201には図1図2の紙面に対して垂直、かつ分岐部202の軸方向と直交する方向に、一方の端部内径にネジ部210を有する有底円筒状の穿孔用の穿孔円筒部211が形成されている。
【0018】
図5図6に示されるように、押しスリーブ部材3は、前述した分岐スリーブ部材2と同様に本管Pの外周部の半径寸法と同等もしくは若干大きな曲率半径の円弧状の内面を有する鞍形状の押しスリーブ本体部301と、分岐スリーブ部材2と締結するためのフランジ部304とからなる。また、装着可能な複数の本管Pの内、外径が大きい側の本管Pの外周部の半径寸法と同等もしくは若干大きな曲率半径の円弧状内面のスリーブ本体部に設けられる点も、前述した分岐スリーブ部材と同様である。押しスリーブ部材3も分岐スリーブ部材2と同様に材質は球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄)である。
【0019】
押しスリーブ部材3には、分岐スリーブ部材2の楔状凸部207を受け取る凹部302が設けられている。凹部302の外側には分岐スリーブ部材2の縮径テーパ面208に対応するテーパ面303が形成されている。フランジ部304には、分岐スリーブ部材2のフランジ部209と同一の投影形状であり、フランジ部209に設けられたボルト穴212に対応するようにボルト穴305が形成されている。また、押しスリーブ本体部301の両端部内径側にはそれぞれ3箇所の押圧凸部306が形成されている。このように押しスリーブ本体部301の両端部内径側に、装着時に本管Pの外周面に接触する箇所(押圧凸部306)と接触しない箇所を設けることで、接触箇所における接触圧力が増大する。また、押圧凸部306の本管Pとの接触面は細かな凹凸が形成されており、分岐スリーブ部材2と押圧スリーブ部材3とを締め付けて本管Pに装着したときに、本管Pの外周面にしっかりと食らいつく。これにより、本管Pに曲げ荷重が加わった時に分岐継手1に対して本管Pが滑ることが防止される。また、押しスリーブ本体部301の外径側には、軸方向に伸びる複数の補強リブ307が形成されている。この補強リブ307によって、分岐継手1は本管P曲げ荷重に対して優れた耐曲げ性能を備える。
【0020】
また、分岐スリーブ部材2と押しスリーブ3を締結するための締結部材であるボルト4、ナット5は十分な強度と耐食性を備えるダクタイル鋳鉄製である。具体的には、JIS規格(JIS G 5502)に規定されたダクタイル鋳鉄品で、FCD400‐15 に耐食性を持たせるためにNiが2%添加された材料が使用されている。本実施の形態では、この材料を使用しているが、強度及び耐食性をあわせ持つ材料であればよく、例えばSUS304などのステンレス製であってもよい。
【0021】
また、本管Pと分岐スリーブ部材2の内面をシールするシール部材6は長期間にわたって良好なシール性能を有するニトリルブタジエンゴム(NBR)が好適である。
【0022】
ついで、本発明の一実施の形態に係る分岐継手の施工手順を説明する。
1.まず、分岐スリーブ部材2と押しスリーブ部材3とを準備し、スリーブ本体部201にシール部材6装着する。そして、分岐スリーブ部材2と押しスリーブ部材3を、各本体部で本管Pを挟むようにして装着する。そして、ボルト4、ナット5によって両スリーブ部材2,3を締結して固定する。このとき、分岐スリーブ部材2の楔状凸部207は、押しスリーブ部材3の凹部302にはまり込み、縮径テーパ面208がテーパ面303に押される。それに伴って、楔状凸部207同士が近づくことで、スリーブ本体部201は縮径され、スリーブ本体部201は、本管Pの外周面に沿うように変形することによりシール性を満足する。この時の分岐スリーブ部材2と押しスリーブ部材3の変形を、より具体的に図8を使って説明する。図8(a)は締結部材の締め付け前、(b)は締め付け後の状態を示す横断面図である。図8(a)に示されるように、締結部材の締め付け前の状態では分岐スリーブ部材2は、楔状凸部207が押しスリーブ部材3の凹部302に形成された縮径テーパ面208に嵌合されて、縮径テーパ面208とテーパ面303とが接触しておりパッキン6を十分に圧縮するに至っていない。図8(b)に示されるように、締結部材の締め付け後は、締結部材の締め付けることによって楔状凸部207は縮径テーパ面208がテーパ面303に沿って移動することによって矢印Aの方向に向かって移動する。これに伴ってスリーブ本体部201も同様に変形(縮径)され、本管Pの外周面に対してパッキン6を十分に圧縮して、本管Pとスリーブ本体部201の内面がシールされる。例えば、呼び口径100Aのダクタイル鋳鉄管用の本発明に係る分岐継手の場合、最大外径123.4mm〜最少外径116.5mmの管に対して、上述のようにしてスリーブ本体部を変形させることによって、一種類の分岐継手で対応することができる。
【0023】
また、本実施の形態に係る分岐継手は、分岐部202のつなぎ部204が、スリーブ本体部201に向かって拡径する中空略三角錐形状を有するので、分岐スリーブ部材が管からの反力を受けず、管からの反力を受ける部位はほぼ均一な肉厚となっているため、本管Pに沿って変形するときに、スリーブ本体部201の一箇所に部分的に応力が集中することが防止され、継手の破壊に対する安全性が向上する。
【0024】
2.次いで、穿孔円筒部211に図示しない穿孔機(ホルソーなど)を装着し、本管Pに穿孔する。
【0025】
3.穿孔後は、穿孔円筒部211から穿孔機を取り外し、ネジ部210にプラグ7を装着して密閉して施工が完了する。
【0026】
ここで、分岐スリーブ部材2のつなぎ部204の内径側には2箇所の支柱205が設けられており、施工完了時には図1の断面に示されるように支柱205の端面で穿孔穴の近傍が押圧されている。これによって、図1の状態で本管Pに曲げが加わり本管Pが上に凸となるような応力が作用したしたときにも、支柱205によって穿孔穴の近傍が押圧されるので曲げ荷重に十分な強度を有する。
【符号の説明】
【0027】
P:本管
1:分岐継手
2:分岐スリーブ部材
201:スリーブ本体部、202:分岐部、203:樹脂製の短管
204:つなぎ部(付け根部)、205:支柱
206:シール部材収容溝、207:楔状凸部、208:縮径テーパ面
209:フランジ部、210:ネジ部、211:穿孔用筒部
212:ボルト穴
3:押しスリーブ部材
301:押しスリーブ本体部、302:凹部
303:テーパ面、304:フランジ部、305:ボルト穴
306:押圧凸部、307:補強用リブ
4:ボルト
5:ナット
6:シール部材
7:プラグ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8