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前記(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーと、単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーと、をそれぞれ少なくとも一種以上含むことを特徴とする請求項1に記載の光硬化性熱硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の光硬化性熱硬化性組成物は、(メタ)アクリロイル基含有モノマーと、ブロックイソシアネートと、光重合開始剤と、を含む。
【0025】
本発明では、(メタ)アクリロイル基含有モノマーが、イソシアネートと反応しうる官能基を持たないことが好ましい。
【0026】
この場合、(メタ)アクリロイル基含有モノマー((メタ)アクリレートともいう)と、イソシアネートとからなる組成物を所定温度にて所定時間加熱することにより、(メタ)アクリロイル基含有モノマーの単独重合が生じ、ポリ(メタ)アクリレートが製造される。
【0027】
また、(メタ)アクリレートの単独重合は、通常200℃以上の加熱により生ずるが、本発明の光硬化性熱硬化性組成物では、これを140℃〜170℃、好ましくは150℃〜170℃にて5分〜60分加熱することにより、これに含まれる(メタ)アクリレートの重合が生ずる。
【0028】
本発明におけるポリ(メタ)アクリレート生成反応は、イソシアネートと(メタ)アクリレートが共存している状態で加熱をすると、(メタ)アクリロイルの存在がイソシアネートの3量化反応を促進し、イソシアネートの3量化反応が、(メタ)アクリロイル基の活性を高める結果生ずるものと考えられる。
【0029】
また、本発明では、(メタ)アクリロイル基含有モノマーが、イソシアネートと反応しうる官能基を持たなくともよい。一般に、イソシアネートは、OHやNH
2等のイソシアネートに対して活性な水素原子を有する化合物と反応するが、(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基とは反応しない。このため、(メタ)アクリレートとイソシアネートとを反応させる場合には、活性水素元素を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが使用され、イソシアネートの反応で耐薬品性、耐熱性を得る目的では、網目架橋構造の硬化物とするため、分子内に2つ以上の活性水素元素を有するモノマーが好んで使用される。しかしながら、本発明では、ポリアクリレートの生成により目的とする特性を得るため、分子内に活性水素元素が存在しなくともよい。
【0030】
なお、(メタ)アクリレートの重合を優先させるために、本発明の光硬化性熱硬化性組成物には、さらに他の成分としても、イソシアネートと反応しうる官能基を有する化合物が一切含まれないことが好ましい。
【0031】
また、イソシアネートの3量化反応により局所的に発生する熱も、(メタ)アクリレートの重合が進行を助けると考えられる。
【0032】
本発明の反応機構により得られた反応生成物から得られる塗膜は、高い密着性、耐薬品性、耐熱性等の総合的に優れた物理的特性を有するため、種々の用途において極めて有効に使用される。
【0033】
また、イソシアネートの3量化では、トリアジン環構造を有するイソシアヌレートが形成される。トリアジン環構造を含む化合物から構成される塗膜ないし硬化物は、耐熱性と絶縁性に優れるため、耐熱材料、絶縁材料としても有用である。
【0034】
また、三官能性以上のイソシアネートを用いた場合にも、トリアジン骨格を持ったネットワーク構造が形成される。このようなネットワーク構造を有する材料は、これを含む塗膜ないし硬化物の耐熱性や耐薬品などを向上させる効果を有する。
【0035】
このように、本発明の方法によると、ポリ(メタ)アクリレートと、イソシアネートの三量体等のオリゴマーと、を含む反応混合物が生じ、この反応混合物が硬化することにより密着性、硬度、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性に優れた塗膜が構成される。
【0036】
[(メタ)アクリロイル基含有モノマー]
本発明では、(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。また、(メタ)アクリロイル基含有モノマーはイソシアネートと反応しうる官能基を持たない化合物を使用できる。
【0037】
ここで、イソシアネートと反応しうる官能基とは、活性水素原子を有する官能基であり、例えばOH基、NH基、NH
2基、SH基、およびCOOH基が挙げられる。
【0038】
本発明で用いられる(メタ)アクリレートは、例えば、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート、および1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1.6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の四官能以上の(メタ)アクリレートを含む多官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0039】
この他、本発明では、活性水素原子を有する官能基、例えばOH基、NH基、NH
2基、SH基、およびCOOH基を有する(メタ)アクリレートを併用することが可能である。
【0040】
例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヒドロキシルブチルアクリレート等の単官能アルコール、およびトリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多価フェノールのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物の少なくとも何れか1種のアクリレート類、水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、および、対応するメタクリレート化合物などを用いることができる。また、アクリル酸も使用可能である。
【0041】
(メタ)アクリレート化合物で市販されているものの製品名としては、例えば、ネオマー DA−600(三洋化成工業社製)、アロニックス M−309、M−7100、M−309、(東亞合成社製)、A−DCP(新中村化学工業社製)、1.6HX−A(共栄化学工業社製)、FA−125(日立化成工業社製)、EPTRA、HDDA(ダイセル・サイテック社製)、4HB(大阪有機化学社製)が挙げられる。
【0042】
上記(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
本発明では、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー、特に三官能以上の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを用いることが好ましく、これにより、基板等の基材に対して本発明の光硬化性熱硬化性組成物をパターン印刷し、硬化することにより得られた硬化物(硬化後の塗膜)の耐熱性、硬度、および耐薬品性が極めて良好となる。
【0044】
さらに本発明では、(メタ)アクリロイル基含有モノマーは、前記多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー(多官能(メタ)アクリレート)と、単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー(単官能(メタ)アクリレート)と、をそれぞれ少なくとも一種以上含むことが好ましい。
【0045】
この場合においても、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー、特に三官能以上の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを用いることが好ましく、これにより、前述の通り、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーは光硬化の硬化性および、硬化後の塗膜の耐熱性、硬度、耐薬品性が極めて良好となる。
【0046】
一方、単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーはインクジェットによる印刷を可能とさせるための希釈効果を得、更に硬化後の塗膜の靭性および可とう性を向上させる。単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーの使用量は、求める硬化物の特性と粘度に応じて決定されるが、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して10から400質量部、好ましくは20から300質量部、さらに好ましくは30から200質量部の割合で使用される。
【0047】
単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーの使用量が多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して10質量部未満であると、組成物が高粘度となりインクジェット法による印刷、特にインクの噴噴射が困難となり、プリンターの目詰まり等の原因にもなりかねない。
【0048】
一方、官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーの使用量が多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して400質量部を超えると、組成物の耐熱性、耐薬品性が劣る。
【0049】
[ブロックイソシアネート]
本発明ではイソシアネート化合物は、公知のブロック化剤(封止剤)でブロックされたブロックイソシアネートを使用する。ブロックイソシアネートとして、ブロックを有する脂肪族/脂環式イソシアネート、および芳香族イソシアネートを使用することができる。
【0050】
本発明で使用するブロックイソシアネートは保護基(ブロック)を有するため、加熱によりさらに高温状態になった場合に初めて保護
基が脱離し、イソシアネートとして機能することより、保存安定性に優れる点で有効である。
【0051】
本発明ではブロックされた多官能イソシアネートを用いることが好ましい。ブロックされた多官能イソシアネートを用いると、トリアジン骨格を持ったネットワーク構造をとるため、さらに耐熱性や耐薬品性等が向上するからである。
【0052】
ブロックイソシアネートの配合量は、多官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーと単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーの合計100質量部に対して2〜200質量部、好ましくは2〜100質量部である。2質量部より少ないと充分な熱硬化性が得られず、密着性、耐薬品性、耐熱性が得られない。200質量部を超えるとアクリロイルモノマーの含有量が少なくなり、紫外線硬化性が劣る。
【0053】
具体的には、以下の脂肪族/脂環式イソシアネート、および芳香族イソシアネートが後述のブロック化剤によりブロックされたイソシアネートを用いることができる。
【0054】
[イソシアネート]
脂肪族/脂環式イソシアネート化合物としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDIまたはHMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチルシクロヘキサン2,4−(2,6)−ジイソシアネート(水素化TDI)、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水素化MDI)、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、N,N’,N’’−トリス(6−イソシアネート、ヘキサメチレン)ビウレットを用いることができる。
【0055】
芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)などをを用いることができる。
【0056】
本発明では、これらのイソシアネートのいずれかを単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。
【0057】
この他、1、6-ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマー、イソホロンジイソシアネートのトリマーを用いてもよい。
【0058】
[ブロック化剤]
ブロック化剤としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類、フェノール、クロルフェノール、クレゾール、キシレノール、p−ニトロフェノールなどのフェノール類、p−t−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−sec−アミノフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノールなどのアルキルフェノール類、3−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン、8−ヒドロキシキナルジンなどの塩基性窒素含有化合物、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン化合物、アセトアミド、アクリルアミド、アセトアニリドなどの酸アミド類、コハク酸イミド、マレイン酸イミドなどの酸イミド類、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等のピラゾール類、2−ピロリドン、ε−カプロラクタムなどのラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトアルドキシムなどのケトンまたはアルデヒドのオキシム類、エチレンイミン、重亜硫酸塩などがあげられる。
【0059】
ブロックイソシアネートとしては、活性メチレン化合物およびピラゾール類の少なくとも何れか1種でブロックされたブロック化イソシアネートが好ましく、マロン酸ジエチルおよび3,5−ジメチルピラゾールの少なくとも何れか1種でブロックされたブロック化イソシアネートがより好ましく、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされたブロック化イソシアネートが特に好ましい。
【0060】
上記ブロック剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、単独または2種類以上のブロック剤でブロックした複数種類のブロックイソシアネートを用いてもよい。ブロックイソシアネートで市販されているものの製品名としては、例えば、BI7982、BI7992(何れもBaxenden社製)等が挙げられる。
【0061】
また、本発明で使用される光硬化性熱硬化性組成物は、更に以下の光重合開始剤を含む。
【0062】
[光重合開始剤]
光重合開始剤としては、エネルギー線の照射により、(メタ)アクリレートを重合させることが可能なものであれば、特に制限はなく、ラジカル重合開始剤が使用できる。
【0063】
光ラジカル重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始する化合物であれば全て用いることができる。当該光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0064】
上記光ラジカル重合開始剤は、単独でまたは複数種を混合して使用することができる。また更に、これらに加え、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を使用することができる。また、可視光領域に吸収のあるCGI−784等(BASFジャパン社製)のチタノセン化合物等も、光反応を促進するために光ラジカル重合開始剤に添加することもできる。尚、光ラジカル重合開始剤に添加する成分はこれらに限られるものではなく、紫外光もしくは可視光領域で光を吸収し、(メタ)アクリロイル基等の不飽和基をラジカル重合させるものであれば、光重合開始剤、光開始助剤に限らず、単独であるいは複数併用して使用できる。
【0065】
光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリロイル基含有モノマー100質量部に対して0.5〜15質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜10質量部である。
【0066】
光重合開始剤で市販されているものの製品名としては、例えば、イルガキュア907、イルガキュア127(何れもBASFジャパン社製)等が挙げられる。
【0067】
[他の添加剤]
本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤、カップリング剤、分散剤、難燃剤等の添加剤を含有させることができる。
【0068】
消泡剤・レベリング剤としてはシリコーン、変性シリコーン、鉱物油、植物油、脂肪族アルコール、脂肪酸、金属石鹸、脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等の化合物等が使用できる。
【0069】
チクソトロピー付与剤・増粘剤としては、カオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、ベントナイト、タルク、マイカ、ゼオライト等の粘度鉱物や微粒子シリカ、シリカゲル、不定形無機粒子、ポリアミド系添加剤、変性ウレア系添加剤、ワックス系添加剤などが使用できる。
【0070】
消泡・レベリング剤、チクソトロピー付与剤・増粘剤を添加することにより、硬化物の表面特性および組成物の性状の調整を行うことができる。
【0071】
カップリング剤としては、アルコキシ基としてメトキシ基、エトキシ基、アセチル等であり、反応性官能基としてビニル、メタクリル、アクリル、エポキシ、環状エポキシ、メルカプト、アミノ、ジアミノ、酸無水物、ウレイド、スルフィド、イソシアネート等である例えば、ビニルエトキシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシラン等のビニル系シラン化合物、γ−アミノプロピルトリメトキシラン、Ν―β―(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン等のアミノ系シラン化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β―(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ系シラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シラン化合物、Ν―フェニル―γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のフェニルアミノ系シラン化合物等のシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイル化チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチルー1−ブチル)ビスー(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等のチタネート系カップリング剤、エチレン性不飽和ジルコネート含有化合物、ネオアルコキシジルコネート含有化合物、ネオアルコキシトリスネオデカノイルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ドデシル)ベンゼンスルホニルジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(ジオクチル)ピロホスフェートジルコネート、ネオアルコキシトリス(エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオアルコキシトリス(m−アミノ)フェニルジルコネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチル,ジ(ジトリデシル)ホスフィトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリネオデカノイルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(ジオクチル)ピロ−ホスファトジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(N−エチレンジアミノ)エチルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリ(m−アミノ)フェニルジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリメタクリルジルコネート(、ネオペンチル(ジアリル)オキシ,トリアクリルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジパラアミノベンゾイルジルコネート、ジネオペンチル(ジアリル)オキシ,ジ(3−メルカプト)プロピオニックジルコネート、ジルコニウム(IV)2,2−ビス(2−プロペノラトメチル)ブタノラト,シクロジ[2,2−(ビス2−プロペノラトメチル)ブタノラト]ピロホスファト−O,O等のジルコネート系カップリング剤、ジイソブチル(オレイル)アセトアセチルアルミネート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミネート系カップリング剤等が使用できる。
【0072】
分散剤としては、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子型分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系、高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子型分散剤等が使用できる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコンポリマー等が使用できる。
【0073】
重合速度や重合度を調整するためには、更に、重合禁止剤、重合遅延剤を添加することも可能である。
【0074】
更に、本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、粘度調整のため溶剤を用いてもよいが、硬化後の膜厚低下を防ぐために、添加量は少ないことが好ましい。また、粘度調整のための溶剤は含まないことがより好ましい。
【0075】
本発明の光硬化性熱硬化性樹脂組成物には、着色を目的として、着色顔料や染料等を添加しても良い。着色顔料や染料等としては、ようなカラ−インデックスで表される公知慣用のものが使用可能である。例えば、Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、60、Solvent Blue 35、63、68、70、83、87、94、97、122、136、67、70、Pigment Green 7、 36、3、5、20、28、Solvent Yellow 163、Pigment Yellow 24、108、193、147、199、202、110、109、139 179 185 93、94、95、128、155、166、180、120、151、154、156、175、181、1、2、3、4、5、6、9、10、12、61、62、62:1、65、73、74、75、97、100、104、105、111、116、167、168、169、182、183、12、13、14、16、17、55、63、81、83、87、126、127、152、170、172、174、176、188、 198、Pigment Orange 1、5、13、14、16、17、24、34、36、38、40、43、46、49、51、61、63、64、71、73、Pigment Red 1、2、3、4、5、6、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、112、114、146、147、151、170、184、187、188、193、210、245、253、258、266、267、268、269、37、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53:1、53:2、57:1、58:4、63:1、63:2、64:1、68、171、175、176、185、208、123、149、166、178、179、190、194、224、254、255、264、270、272、220、144、166、214、220、221、242、168、177、216、122、202、206、207、209、Solvent Red 135、179、149、150、52、207、Pigment Violet 19、23、29、32、36、38、42、Solvent Violet 13、36、Pigment Brown 23、25、PigmentBlack 1、7等が挙げられる。これら着色顔料・染料等は、光硬化性熱硬化性組成物100質量部に対して、0.01〜5質量部添加することが好ましい。また、本発明の光硬化性熱硬化性組成物をマーキング用に用いる場合には、視認性を確保するためにルチル型やアナターゼ型の酸化チタンを添加すると好ましい。この場合は、光硬化性熱硬化性組成物100質量部に対して、1〜20質量部添加することが好ましい。これら着色顔料・染料等は単独や2種以上の併用で使用できる。
【0076】
本発明の光硬化性熱硬化性組成物は、インクジェット法による印刷に適用可能である。インクジェット法による印刷に適用可能であることには、インクジェットプリンターにより噴射可能な粘度であることが好ましい。
【0077】
粘度とはJIS K2283に従って測定した粘度を指す。また、上記のインクジェット用光硬化性・熱硬化性組成物の粘度は常温(25℃)で150mPa・s以下である。上述のように、インクジェットプリンターに使用するインクの粘度は塗布時の温度において約20mPa・s以下であることが必要である。しかし、常温で150mPa・s以下の粘度であれば、塗布前、若しくは塗布時の加温によって上記条件を充足することができる。
【0078】
従って、本発明の光硬化性熱硬化性組成物によりプリント配線板用の基板等に、直接パターンを印刷することができる。
【0079】
更に、本発明の光硬化性熱硬化性組成物は、常温では重合反応が生じないため、一液型の硬化性組成物として安定に保存可能である。
【0080】
本発明の光硬化性熱硬化性組成物はインクジェットプリンターにインクとしてされ、基板上への印刷に使用される。本発明の組成物はインク粘度が非常に低いため、インクジェット法による印刷・塗布は、基材に印刷・塗布したパターンや文字は長時間が経過すると濡れ広がり、滲みを生ずる。
【0081】
本発明の光硬化性熱硬化性組成物は光重合開始剤を含むため、印刷直後の組成物層に50mJ/cm
2〜1000mJ/cm
2光照射を行うことにより組成物層を光硬化させることができる。光照射は、紫外線、電子線、化学線等の活性エネルギー線の照射により、好ましくは紫外線照射により行われる。
【0082】
例えば、紫外線感光性の光重合開始剤を含む組成物については、紫外線を照射することにより、組成物層を光硬化させることができる。
【0083】
インクジェットプリンターにおける紫外線照射は、例えばプリントヘッドの側面に高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LEDなどの光源を取り付け、プリントヘッドもしくは基材を動かすことによる走査を行うことにより行うことができる。この場合は、印刷と、紫外線照射とをほぼ同時に行なえる。
【0084】
光硬化後の光硬化性熱硬化性組成物は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の加熱炉を用いることにより熱硬化する。
【0085】
一般に、(メタ)アクリレートの単独重合は200℃以上の加熱により生ずるが、本発明の光硬化性熱硬化性組成物では、これを140℃〜170℃、好ましくは150℃〜170℃にて加熱することにより重合するため、この温度範囲にて熱硬化が行われる。これにより、(メタ)アクリレートの重合が生じ、完全な硬化が行われる。
【0086】
140℃未満では、(メタ)アクリレートの重合が不十分となり、170℃を上回ると光硬化性熱硬化性組成物の施与対象である基盤に熱的な悪影響を与える可能性が生ずる。
140℃〜170℃の温度範囲で加熱することによりアクリロイル基のほぼすべての二重結合が開き、(メタ)アクリロイル基含有モノマーが架橋した状態となる。
【0087】
なお、本発明の光硬化性熱硬化性組成物により得られた硬化物が一般的な諸特性の要求を満たすには、150℃〜170℃にて5分〜60分加熱することにより硬化することが好ましい。
【0088】
このように基板等の基材上にパターン印刷した光硬化性熱硬化性組成物を、光照射による光硬化と、次いで加熱による熱硬化による二段階で硬化させることにより、作業性および前記硬化物の一般的な諸特性が向上する。
【0089】
光硬化性熱硬化性組成物は、インクジェット法による印刷に適しており、特にプリント配線板のインクジェット法によるマーキングに好適に用いられる。これにより、本発明の組成物を簡単に基板上で硬化させることが可能とされると同時に、硬化後の組成物は優れた密着性、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等の物理的特性を有する。
【0090】
従って、本発明の硬化物を有するプリント配線板は、製造および使用において上記の優れた物理的特性を示し、製造効率および耐久性に優れる。
【0091】
また、インクジェットプリンターにおける適用では、光硬化性熱硬化性組成物は、硬化剤を後添加する2液性ではなく、1液性とすることが使用性に優れ、好ましい。さらに、印字ヘッドは、例えば30℃〜70℃に加温される場合が多く、インクは長時間にわたり加温されることとなる。このため、インクジェット法での適用においては、保存安定性に優れた1液型の組成物をインクとして用いることが好ましい。
【0092】
本発明の光硬化性熱硬化性組成物は、透明性、可塑性、耐衝撃性、密着性、耐薬品性、耐熱性、および絶縁性等に優れることから種々の用途に適用可能であり、適用対象に特に制限はない。例えばプリント配線板用のソルダーレジスト、およびマーキング等に用いられることが好ましい。
【0093】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成および実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【実施例】
【0094】
[実施例1〜8、および比較例1〜9]
I.組成物の調整
表1に示す割合で各成分を配合し、これをディゾルバーで攪拌した。実施例7および8については、更にビーズミルにて分散を行ない、次いで1μmのディスクフィルターでろ過を行った。これにより、本発明の組成物および比較組成物を得た。
II.特性試験
上記各組成物について以下に示す特性試験を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
<1.即時硬化塗布性>
富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用い、プリントヘッドの横にスポットUV照射機の照射部を粘着テープで固定した。これにより、塗布と同時にUV照射が可能なインクジェットプリンターを構成した。
【0096】
このインクジェットプリンターに、本発明の組成物および比較組成物を装填し、アルミ板(100mm×200mm×1mm)上に、幅が100μmで一辺の長さが20mmのL型ラインを印刷した。
【0097】
印刷が行われるとほぼ同時(約0.5秒後)に、印刷されたL型ラインに対してスポットUV照射機からUV光を照射した。このときのUV照射量は積算光量で300mJ/cm
2となるように調整した。
【0098】
これにより仮硬化したL型ラインについて、ルーペで観察し、ラインの形状とラインを指触により硬化性を以下の基準により評価した。
○:ラインにかすれやよれがなく正しく描画できており、指触でもべたつきがない。
×:ラインにかすれやよれがなく正しく描画できているが、指触では若干のべたつきがある。
【0099】
<2.密着性>
富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用い、プリント配線板用銅張積層板(FR−4、150mm×95mm×1.6mm)に、上記各組成物で10mm×20mmの長方形のパターンを膜厚が15μmで印刷した。
【0100】
印刷直後(約0.5秒後)の積層板に対して、高圧水銀灯を用いて300mJ/cm
2の積算光量でUV照射した。次いで、このUV照射済の積層板を熱風循環式乾燥炉にて150℃30分加熱し、上記パターンを加熱硬化させ、試験片とした。
【0101】
各試験片の長方形パターンにカッターナイフで縦横に1本ずつ切り込みを入れ、これについてセロハンテープでピーリングを行い、そのはがれについて以下のとおり評価を行った。
○:ほとんどはがれが見られない。
×:セロテープ(登録商標)に大きく転写するはがれがある。
【0102】
<3.耐薬品性>
上記各組成物について、上記密着性試験に記載した方法と同様の方法で各試験片を作製した。得られた試験片の状態を観察した(未処理状態)。
【0103】
各試験片を、10%の硫酸水溶液に室温で30分浸漬させ、これを取り出した後、水洗・乾燥した。各試験片について、硫酸水溶液浸漬・乾燥後未処理の塗膜の状態(薬品試験後)と、セロテープ(登録商標)でピーリングを行った後の状態(ピーリング後)とを以下の基準により目視にて評価した。
○:未処理状態に対して、薬品試験後も、ピーリング後も、いずれも塗膜の状態に全く変化がない。
△:未処理状態に対して、薬品試験後では変化が無いが、ピーリング後では若干のはがれが観察された。
×:未処理状態に対して、薬品試験後に塗膜に浮き、はがれがが観察され、或いは、ピーリング後にセロテープ(登録商標)に大きく転写するはがれが観察された。
【0104】
<4.耐熱性>
上記各組成物について、上記密着性試験に記載した方法と同様の方法で各試験片を作製した。各サンプルにロジン系フラックス(サンワ化学社製SF−270)を塗布して、260℃のはんだ槽に10秒間浸漬した。各サンプルをはんだ層から取り出して自然冷却した後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで洗浄し、乾燥した。この試験を3回繰返した後、各試験片の塗膜の状態を目視評価後、セロテープ(登録商標)でピーリングを行い、以下のとおり評価した。
○:塗膜の状態に全く変化がない。
△:目視では変化が無いが、セロテープ(登録商標)ピーリングでは若干のはがれがある。
×:塗膜に浮き、はがれがある。または、セロテープ(登録商標)に大きく転写するはがれがある。
【0105】
<5.絶縁性>
IPC B−25テストパターンのクシ型電極Bクーポン(基板)に対し、上記各組成物で10mm×20mmの長方形のパターンを膜厚40μmで印刷した。
印刷直後(約0.5秒後)の積層板に対して、高圧水銀灯を用いて300mJ/cm
2の積算光量でUV照射した。次いで、このUV照射済の積層板を熱風循環式乾燥炉にて150℃30分加熱し、上記パターンを加熱硬化させ、試験片とした。
得られた試験片に、DC500Vのバイアスを印加し、絶縁抵抗値を測定した。以下のとおり評価した。
○:絶縁抵抗値≧100GΩ
×:絶縁抵抗値<100GΩ
【0106】
<6.保存安定性1>
各組成物について、粘度を測定した(初期粘度)。
その後、各組成物を密閉した容器中で50℃にて2週間保存し、再度粘度を測定し、増粘率(%)を求めた。
【0107】
ここで、増粘率=2週間保存後の粘度/初期粘度×100%とする。
増粘率を以下のように評価した。
○: 増粘率10%以内
△: 10%以上20%未満
×: 20%以上または固化して測定不能
<7.保存安定性2>
各組成物について、粘度を測定した(初期粘度)。
【0108】
その後、各組成物を蓋を開放した容器中で気温25℃湿度70%の環境下で12時間保存し、再度粘度を測定し、増粘率(%)を求めた。
【0109】
ここで、増粘率=12時間保存後の粘度/初期粘度×100%とする。
増粘率を以下のように評価した。
○: 増粘率1%以内
△: 1%以上10%未満
×: 10%以上
【0110】
<8.視認性試験>
プリント配線板用銅張積層板(FR−4、150mm×95mm×1.6mm)に対し、太陽インキ製造社製ソルダーレジストPSR−4000 G24を、乾燥塗膜が20μmになるようにスクリーン印刷にてベタ印刷した。
【0111】
得られた塗膜を80℃で30分乾燥し、塗膜を上記積層板に全面残すパターンで300mJ/cm
2で露光した。露光後の積層板を30℃1wt%Na
2CO
3で現像して水洗した。更にこれを150℃で30分間硬化させて、試験用基板を作製した。
【0112】
富士フィルム製インクジェットプリンターDimatix Materials Printer DMP−2831を用い、プリントヘッドの横にスポットUV照射機の照射部を粘着テープで固定した。これにより、塗布と同時にUV照射が可能なインクジェットプリンターを構成した。
【0113】
このインクジェットプリンターに、本発明の実施例2,7,8の組成物を装填し、上記試験用基板上に、アルファベットのA〜Eを3mm角の大きさで印刷した。
目視で下地とのコントラストについて以下の基準により評価した。
○:印刷箇所と試験用基板とのコントラストが良く、視認性に優れる。
△:印刷箇所と試験用基板とのコントラストが明確ではなく、視認性に劣る。
【0114】
【表1】
【0115】
評価結果の「−」:未評価
表中の各材料の配合量は質量部を単位とする。
【0116】
なお、表1に記載の材料の詳細は以下の通りである。
【0117】
アクリレート1:トリメチロールプロパントリアクリレート
東亞合成社製 M-309
【化1】
【0118】
アクリレート2:ペンタエリスリトールトリアクリレート
ダイセル・サイテック社製 PETRA
【化2】
【0119】
アクリレート3:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート
ダイセル・サイテック社製 HDDA
【化3】
【0120】
アクリレート4:アクリル酸ブチル
昭和化学社製 アクリル酸n−ブチル
【化4】
【0121】
アクリレート5:4−ヒドロキシブチルアクリレート
大阪有機化学社製 4−HBA
【化5】
【0122】
光重合開始剤1:BASFジャパン社製 イルガキュア907
光重合開始剤2:BASFジャパン社製 イルガキュア127
【0123】
イソシアネート1:Baxenden社製 BI7982
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーをジメチルピラゾールでブロックしたもの
【化6】
【0124】
【化7】
【0125】
イソシアネート2:Baxenden社製 BI7992
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーをジメチルピラゾールとジエチルマロネート(活性メチレン化合物)でブロックしたもの
【化8】
【0126】
イソシアネート3 :m−キシリレンジイソシアネート
【化9】
【0127】
エポキシ樹脂1: アリルグリシジルエーテル ナガセケムテックス社製 EX−111
エポキシ樹脂2: 1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル ナガセケムテックス社製 EX−212
エポキシ硬化剤1:2 - エチル - 4 - メチルイミダゾール 四国化成工業社製 2E4MZ
エポキシ硬化剤2:2 - フェニル - 4,5 - ジヒドロキシメチルイミダゾール 四国化成工業社製 2PHZ−PW
レベリング剤:ビックケミー・ジャパン社製 BYK-307
分散剤:ビックケミー・ジャパン社製 DISPERBYK-111
酸化チタン:石原産業社製 CR−95
【0128】
[評価]
本発明の組成物は、いずれも即時硬化塗布性、密着性、耐薬品性、耐熱性、絶縁性、保存安定性に優れている。これらの特性を必要とするプリント配線板への適用には極めてに好ましいといえる。
【0129】
また、視認性においては、酸化チタンを配合した実施例7は、印刷箇所と試験用基板とのコントラストが良く、視認性に優れたが、酸化チタンを配合していない実施例2、8は印刷箇所と試験用基板とのコントラストが明確ではなく、視認性に劣る結果となった。但し、酸化チタンの配合を行わない場合にも、視認性を必要としない適用、例えばソルダーレジストとしての適用等には本発明の組成物は好ましく用いられる。
【0130】
なお、インクジェットプリンターを用いた本発明の組成物による印刷は、順次円滑に行われ、プリンター加温後にも組成物に変化がみられることはなかった。
【0131】
III.イソシアネートによる(メタ)アクリレートへの効果
[DSCデータの測定]
アクリレート1のトリメチロールプロパンおよび比較例9の組成物について、セイコーインスツル社製EXSTARを用い、示差走査熱量測定(DSC)を行った。得られたDSC曲線を
図1に示す。
【0132】
この結果、比較例9によるトリメチロールプロパントリアクリレートとイソシアネート(m-キシリレンジイソシアネートとの組成物の発熱ピークは、トリメチロールプロパントリアクリレートのみの発熱ピークよりも、低温側にシフトしており、低温での硬化が可能とされることがわかる。
【0133】
[赤外分光光度の測定]
比較例9の組成物について、パーキンエルマージャパン社製Spectrum100を用い、赤外分光法(IR Spectroscopy)による吸光度(absorption)を測定した。なお、マクロATRユニットとして、smiths Dura Sampl IRIIを用いた。
【0134】
この測定は、まず、比較例9の組成物を2枚のKBr板にスパチュラにより塗布し、一方を空気中80℃にて30分間加熱し(サンプル1)、他方を空気中150℃30分間加熱したもの(サンプル2)について行われた。
【0135】
サンプル1について得られたIRチャートを
図2の上段に、サンプル2について得られたIRチャートを
図2の下段に示す。
【0136】
サンプル1および2のIRチャートを比較すると、イソシアネート基を示す2260cm
−1付近のピークが、サンプル1(80℃加熱)では顕著であるが、サンプル2(150℃加熱)では大幅に減少している。
【0137】
更に、アクリロイル基を示す1406cm
−1付近のピークも、サンプル1(80℃加熱)では顕著であるが、サンプル2(150℃加熱)では大幅に減少している。
【0138】
これによりイソシアネートとアクリル基は加熱で消費されていることがわかる。
【0139】
また、1721cm
−1付近のカルボニルのピークは、サンプル1(80℃加熱)よりも、サンプル2(150℃加熱)では増大していることが観察される。
【0140】
これはイソシアネート基が3量体化してカルボニル基を生成したことを示唆している。
図1と
図2に示した測定結果を併せて考察すると、イソシアネートとアクリレートが共存している状態で加熱することにより、イソシアネートの3量化が起こり、その3量化の反応に伴い、アクリレートの重合が生じていると言える。