特許第6069735号(P6069735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069735
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】プリント配線板を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20170123BHJP
   C23C 22/52 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H05K3/38 B
   C23C22/52
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-31986(P2015-31986)
(22)【出願日】2015年2月20日
(62)【分割の表示】特願2013-518360(P2013-518360)の分割
【原出願日】2010年7月6日
(65)【公開番号】特開2015-127459(P2015-127459A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジェン−チエ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】チーミン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ゼット・シ
(72)【発明者】
【氏名】ワーナー・ジー・キュール
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−212039(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/029871(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
C23C 22/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅表面と有機基板との間の接着を促進する、プリント配線板を製造する方法であって、
前記銅表面上に銅酸化物層を形成することによって前記銅表面を安定化すると共に、1つ以上の分子を前記銅酸化物層にカップリングするステップであって、前記銅表面が、前記銅表面を50〜80℃の温度で酸化剤と1%未満の表面活性分子(SAM)とに暴露することによって安定化され、前記1つ以上の分子が、前記表面活性分子であり、前記表面活性分子が、式A(4−x)SiBYによって特徴づけられるシランであり、式中、Aは独立に加水分解性基であり、x=1〜3であり、Bは独立にアルキル又はアリール基であり、Yはアリール官能基もしくはアルキル付着基、又はその両方である、ステップと、
前記銅酸化物層を還元剤で還元することによって安定化された前記銅表面を調整するステップであって、安定化された前記銅表面が、pHが10.5〜12.5に調節された10〜40g/Lの前記還元剤の還元浴中において室温〜50℃で調整され、前記還元剤が、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム、ほう化水素酸ナトリウム、一般式BHNHRR’(R及びR’はそれぞれH、CH、CHCHから成る群から選択される)によって表される、ジメチルアミンボラン(DMAB)を含むボラン還元剤、モルホリンボラン、ピリジンボラン、ピペリジンボランを含む環状ボランのうちのいずれか1つ以上から選択される、ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
調整後の前記銅酸化物層は、200ナノメータ以下の厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
調整後の前記銅酸化物層は、実質的にアモルファス構造から成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記銅酸化物層はグレインを有し、調整後には前記グレインは250ナノメータ以下のサイズを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記銅酸化物層はグレインを有し、調整後には前記グレインは200ナノメータ以下のサイズを有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記銅酸化物層はグレインを有し、調整後には前記グレインは実質的に不規則に配向していることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過マンガン酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、オゾン、又はこれら物質の混合物のいずれか1つ以上から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法の全体が2〜20分の時間で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
銅表面をアルカリ溶液及び/又は過酸化物溶液で予備洗浄するステップと、
前記銅表面上に銅酸化物層を形成することによって前記銅表面を安定化すると共に、1つ以上の分子を前記銅酸化物層にカップリングするステップであって、前記銅表面は、前記銅表面を50〜80℃の温度で酸化剤と1%未満の表面活性分子(SAM)とに暴露することによって安定化され、前記1つ以上の分子が、前記表面活性分子であり、前記表面活性分子が、式A(4−x)SiBYによって特徴づけられるシランであり、式中、Aは独立に加水分解性基であり、x=1〜3であり、Bは独立にアルキル又はアリール基であり、Yはアリール官能基もしくはアルキル付着基、又はその両方である、ステップと、
還元剤で前記銅酸化物層を調整するステップであって、前記銅酸化物層が、pHが10.5〜12.5に調節された10〜40g/Lの前記還元剤の還元浴中において室温〜50℃で調整され、前記還元剤が、ホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム、ほう化水素酸ナトリウム、一般式BHNHRR’(R及びR’はそれぞれH、CH、CHCHから成る群から選択される)によって表される、ジメチルアミンボラン(DMAB)を含むボラン還元剤、モルホリンボラン、ピリジンボラン、ピペリジンボランを含む環状ボランのうちのいずれか1つ以上から選択される、ステップと、
処理された前記銅表面を樹脂と接合するステップと、
を含む、プリント配線板を製造する方法。
【請求項10】
前記アリール官能基は、アセタート、アルキルアミノ、アリル、アミン、アミノ、ブロモ、ブロモメチル、カルボニル、カルボキシラート、カルボン酸、ジヒドロキシホスホリル、エポキシド、エステル、エーテル、エチニル、ホルミル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヨード、メルカプト、メルカプトメチル、Se−アセチルセレノ、Se−アセチルセレノメチル、S−アセチルチオ、S−アセチルチオメチル、セレニル、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル、2−(トリメチルシリル)エチニル、ビニル、及びそれらの組み合わせのうち任意の1つ以上から選択される官能基を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アルキル付着基は、アセタート、アルキルアミノ、アリル、アミン、アミノ、ブロモ、ブロモメチル、カルボニル、カルボキシラート、カルボン酸、ジヒドロキシホスホリル、エポキシド、エステル、エーテル、エチニル、ホルミル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヨード、メルカプト、メルカプトメチル、Se−アセチルセレノ、Se−アセチルセレノメチル、S−アセチルチオ、S−アセチルチオメチル、セレニル、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル、2−(トリメチルシリル)エチニル、ビニル、及びそれらの組み合わせのうち任意の1つ以上から選択される官能基を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
は、アルコール又はホスホン酸塩を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
は、アミン、アルコール、エーテル、他の求核試薬、フェニルエチン、フェニルアリル基、ホスホナート、及びそれらの組み合わせのうち任意の1つ以上を備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の分子は、テトラオルガノ‐シラン、アミノエチル‐アミノプロピルートリメトキシシラン、(3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(1‐[3‐(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア)、(3‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3‐クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3‐(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2‐メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチレン‐トリメトキシシラン、又は以上の物質のいずれかの組み合わせの群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、集合的にPCBと参照される、プリント配線板(PCB)又はプリントワイヤリング板(PWB)の製造に関し、特に銅表面を処理して、銅表面と、PCBに使用される有機基板との間の接着力を増加させる方法に関する。本発明のいくつかの実施形態において、滑らかな銅表面のトポグラフィーを粗化することなく改善された接合強度を達成する方法が提供される。この方法によって得られた銅表面は、樹脂層に対する強い接合を提供する。処理された銅とPCBの樹脂層との間の接合界面は、熱、湿度、及び積層プロセスステップの後に含まれる化学薬品に対する耐性を示す。
【背景技術】
【0002】
家庭用電化製品の小型化、携帯性、及び増え続ける機能は、プリント配線基板の製造をより小さく、より高密度に詰め込まれたボードに向かって推進している。増加する配線層数、減少するコア及び積層の厚み、減少する銅配線幅及び配線間隔、より小さい直径のスルーホール、並びにマイクロビアは、高密度相互接続(HDI)パッケージ又は多層PCBの鍵となる特性のうちの一部である。
【0003】
PCBの配線レイアウトを形成する銅配線は、通常はサブトラクティブプロセス、又はアディティブプロセス、又はこれらプロセスの組み合わせのいずれかによって製造される。サブトラクティブプロセスにおいては、所望の回路パターンは、誘電体基板に積層された薄い銅箔から、下方にエッチングすることによって形成され、ここで銅箔はフォトレジストで覆われ、所望の回路の潜像が露光の後にレジストに形成され、レジストの回路の無い領域がレジスト現像液中で洗い流され、下層の銅がエッチング液によってエッチングされる。アディティブプロセスにおいては、銅のパターンは、フォトレジストによって形成された回路パターンのチャネル中において裸の誘電体基板から上方に積みあがる。さらなる複数の銅の回路層が、「プリプレグ」と呼ばれることが多い、部分的に硬化された誘電体樹脂によって接合されて、銅配線導電体層と誘電体樹脂の絶縁層とが交互になった多層アセンブリを形成する。このアセンブリは次いで熱及び圧力をかけられ、それによって部分的に硬化された樹脂を硬化させる。スルーホールは、ドリルで穴開けされ、銅でメッキされて、すべての回路層を電気的に接続し、よって多層PCBを形成する。多層PCBの製造プロセスは周知であり、多くの刊行物、例えば、非特許文献1及び非特許文献2に記載されている。PCBの構造及び製造方法にかかわらず、銅の回路層と樹脂の絶縁層との間の良好な接着を達成することが必要不可欠である。不十分な接着からなる回路基板は、ハンダリフローおよびそれに続くハンダ付けの高温に耐えることができず、結果的に基板の剥離と電気的な機能不良を生じる。
【0004】
パターニングされた状態の銅の表面は滑らかであるが、この滑らかな表面は樹脂層に十分には接着しない。2つの異なる材料間の接触面積を増加させると接着強度が増加するということが理論的に知られている。銅と樹脂との接合を改善するために、最も標準的な方法は、非常に粗い銅表面を生成してその表面積を増加させ、樹脂への接着を促進する機械的な接合アンカーとして作用するマイクロな波型の山と谷を表面に導入することに依っている。
【0005】
最も広く知られているとともに最もよく使用されている方法の1つはいわゆる「黒色酸化物プロセス」であり、このプロセスでは粗い表面を有する黒色の酸化物層が銅表面の頂面に形成される。黒色酸化物は、長さ5ミクロンまでの亜酸化銅及び酸化銅の混合物の針状のデンドライト結晶又はウィスカーから成る。この大きな結晶構造は、大きな表面積と機械的なアンカー効果を提供し、よって良好な接合性を提供する。Meyerによる特許文献1、特許文献2、及び特許文献3は、アルカリ性亜塩素酸塩溶液を用いた銅表面の黒色酸化物層への酸化について最初に開示している。この方法を、PCBにおける銅‐樹脂接合に適用する初期の研究のいくつかの典型的開示は、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9を含む。
【0006】
このような針状の酸化層は、表面積及び接合性を大幅に増加させるが、デンドライト結晶は脆く、積層プロセス中に容易に損傷し、結果として酸化層内での接合破壊を生じる。酸化プロセスへの後続の変形形態は、結晶サイズ、したがって酸化層の厚みを減少させて、薬液濃度および他のプロセスパラメータを最適化することによって機械的安定性を改善することに焦点をおいていた。これに関するいくつかの注目すべき改善は、特許文献10及び特許文献11によって示され、これら文献においては特定の濃度レベルのアルカリ亜塩素酸溶液、及び水酸化物と亜塩素酸塩との比の処方が開示されている。特許文献12は、減少した厚み及び高い均一性を有する黒色酸化物コーティングを生じさせるための、アルカリ亜塩素酸溶液への水溶性又は分散性ポリマー添加剤の添加を開示している。特許文献13は、サルファオキシアシッド還元剤で銅表面を予備処理して銅酸化物の迅速な生成を促進する方法を開示している。黒色酸化物を形成する他の方法は、特許文献14に開示されているような過酸化水素水、特許文献15に開示されているようなアルカリ性過マンガン酸塩、特許文献16に開示されているような熱酸化、及び特許文献17に開示されているような2クロム酸塩溶液による銅表面の酸化を含む。
【0007】
この酸化物粗化方法に関連する1つの残存している問題は、銅酸化物が酸に可溶であり、接合界面の深刻な剥離が、酸の使用を含む後のプロセスステップ中に生じることである。例えば、上述したようにスルーホールは多層板を貫通してドリルで穴をあけられ、銅でメッキされて、回路層の相互接続を提供する。樹脂のスメアがドリリングによって孔の表面に形成されることが多く、過マンガン酸塩エッチングに引き続く酸中和を含むデスメアプロセスによって取り除かれなければならない。酸は、孔の表面から内側に数ミリメータまで銅酸化物を溶解し、これは、下層の銅のピンク色による、スルーホールの周りのピンクリングの形成によって証明される。ピンクリングの形成は局所的な剥離に対応し、PCB中の深刻な欠陥を示している。これら欠陥は多層PCBの生産における重大な障害となり、酸化物層が酸による攻撃とそのような局所的な剥離を受けにくいように、広範囲にわたる努力が酸化物層におけるさらなる改善を求めてなされてきた。
【0008】
ピンクリングの問題を解決する方法は主として銅酸化物の後処理を含んでいた。例えば、特許文献16は、まず銅表面を酸化して酸化層を形成し、次いでリン酸で酸化物層を処理してリン酸銅のガラス様フィルムを形成し、その結果高い接合強度と酸耐性を得る方法を開示している。特許文献18は、銅酸化物を、二酸化セレンのような酸性酸化物を形成する両性元素を含有する溶液に接触させることによって銅酸化物の酸耐性を改善するプロセスを開示している。特許文献19は、まず銅酸化物層を形成し、次いでクロム酸で処理して、銅酸化物を安定化する、及び/又は銅酸化物を酸中の溶解から保護するプロセスを開示している。
【0009】
多くの研究は、酸に対する耐性が、まず酸化銅を銅の表面に形成し、次いでこの酸化銅を亜酸化銅又は銅リッチな表面に還元することによって改善されることを示した。特許文献20は、一般式BHNHRR’によって表されるボラン還元剤を使用して酸化銅を還元する方法を開示しており、ここでRおよびR’はそれぞれH,CH及びCHCHから成る群から選択される。特許文献21は、ジアミン(N)、ホルムアルデヒド(HCHO)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、及びほう化水素酸ナトリウム(NaBH)から成る群から選択された還元剤を開示している。特許文献22、特許文献23、特許文献24、及び特許文献25は、モルホリンボラン、ピリジンボラン、ピペリジンボラン、等のような環状ボラン化合物から成る還元剤を開示している。酸化銅を還元して亜酸化銅を形成する最も一般的に実践されている方法は、ジメチルアミンボラン(DMAB)還元剤の使用による。この方法は、ピンクリングの半径を所定の程度、減少させたが、亜酸化銅が酸中に完全には不溶ではないので、依然として限られたものであるとともに問題を完全に解決するものではなかった。
【0010】
上述した問題を解決するために、特許文献26及び特許文献27は、酸化物の針状構造を維持しつつ銅酸化物を銅に還元する方法を開示している。しかし、このような針状構造は機械的に不安定であるとともに積層プロセス中につぶされてしまう。代替的な酸化物コーティングプロセスがその後に開発された。いくつかの例示プロセスが、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32、特許文献33、及び特許文献34に開示されている。これら代替プロセスは、従来の酸化プロセスを、銅表面を酸化する間に同時に下層の銅表面を粗化する制御されたエッチングと組み合わせることによって、非常に粗化された銅表面を生成する。多くの場合、有機層が同時にコーティングされて腐食抑制剤又は接着促進剤として作用する。特許文献34には、過酸化水素、無機酸、及びトリアゾールのような腐食防止剤を備えるエッチング剤を使用するマイクロ粗化プロセスが開示されている。特許文献35、特許文献29、特許文献36、特許文献37、及び特許文献38は、酸化剤、pH調整剤、トポグラフィーモディファイア、均一性エンハンサー、及びアゾール抑止剤を備える組成を使用して粗化された銅表面を提供する同様の方法を開示している。同じ目的のために、特許文献28、特許文献39、特許文献30、特許文献40、特許文献41、特許文献42、及び特許文献31は、過酸化水素のような酸化剤、酸化銅イオン源、有機酸、ハロゲン化物イオン源、及びアゾールタイプの抑止剤からなるマイクロエッチング組成を開示している。これら方法は酸耐性を増したが、界面接合は機械的アンカーによって主に達成され、接着強度は、処理された銅表面の表面粗さが減少するにつれて急速に減少する。
【0011】
容易に理解できるように、銅表面とPCBにおいて使用される誘電樹脂との間の接着を改善するために多くの方法が開発されたが、これら方法は非常に粗化された表面を生成し、それによって接着を促進することに依存していた。エポキシ又は誘電樹脂に接合又は接着させるための表面積を増大させるためには銅表面が粗化されなければならない、ということが従来技術における普遍的思想である。しかしこの方法は、銅配線の幅及び/又は間隔が限られ、よってPCBの回路のさらなる微細化を阻んでしまうので、制限を与えてしまう。より細かい配線回路と増加する層数とを有する高密度PCBへ向かう現在のトレンドは、滑らかな表面を維持しつつ誘電樹脂への銅のより高い接着強度に対する必要性を生んでいる。明確に、それに限られるわけではないが、接合強度を増すが、銅表面を粗化することのない、銅表面の処理プロセスのような、PCBの更なる発展及び開発に対する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2,364,993号明細書
【特許文献2】米国特許第2,460,896号明細書
【特許文献3】米国特許第2,460,898号明細書
【特許文献4】米国特許第2,955,974号明細書
【特許文献5】米国特許第3,177,103号明細書
【特許文献6】米国特許第3,198,672号明細書
【特許文献7】米国特許第3,240,662号明細書
【特許文献8】米国特許第3,374,129号明細書
【特許文献9】米国特許第3,481,777号明細書
【特許文献10】米国特許第4,409,037号明細書
【特許文献11】米国特許第4,844,981号明細書
【特許文献12】米国特許第4,512,818号明細書
【特許文献13】米国特許第4,702,793号明細書
【特許文献14】米国特許第3,434,889号明細書
【特許文献15】米国特許第3,544,389号明細書
【特許文献16】米国特許第3,677,828号明細書
【特許文献17】米国特許第3,833,433号明細書
【特許文献18】米国特許第4,717,439号明細書
【特許文献19】米国特許第4,775,444号明細書
【特許文献20】米国特許第4,642,161号明細書
【特許文献21】米国特許第5,006,200号明細書
【特許文献22】米国特許第5,721,014号明細書
【特許文献23】米国特許第5,750,087号明細書
【特許文献24】米国特許第5,753,309号明細書
【特許文献25】国際出願第99/02452号パンフレット
【特許文献26】米国特許第5,492,595号明細書
【特許文献27】米国特許第5,736,065号明細書
【特許文献28】米国特許第5,532,094号明細書
【特許文献29】米国特許第6,946,027号明細書
【特許文献30】米国特許第5,807,493号明細書
【特許文献31】米国特許第6,746,621号明細書
【特許文献32】米国特許第5,869,130号明細書
【特許文献33】米国特許第6,554,948号明細書
【特許文献34】米国特許第5,800,859号明細書
【特許文献35】米国特許第6,716,281号明細書
【特許文献36】米国特許第7,108,795号明細書
【特許文献37】米国特許第7,211,204号明細書
【特許文献38】米国特許第7,351,353号明細書
【特許文献39】米国特許第5,700,389号明細書
【特許文献40】米国特許第5,885,476号明細書
【特許文献41】米国特許第5,965,036号明細書
【特許文献42】米国特許第6,426,020号明細書
【特許文献43】米国特許第6,212,093号明細書
【特許文献44】米国特許第6,451,942号明細書
【特許文献45】米国特許第6,777,516号明細書
【特許文献46】国際出願第2005/086826号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】“Printed Circuits Handbook” Sixth Edition, Edited by C. F. Coombs, Jr., McGraw−Hill Professional,2007
【非特許文献2】“Printed Circuit Board Materials Handbook” Edited by M.W. Jawitz, McGraw−Hill, 1997
【非特許文献3】“Advanced Inorganic Chemistry”、第5版、Cotton & Wilkinson、John Wiley & Sons、1988年、
【非特許文献4】“Organometallics、A Concise Introduction”、Elschenbroichら、第2版、1992年、30 VCH
【非特許文献5】“Comprehensive Organometallic Chemistry II、A Review of the Literature” 1982−1994、Abelら編、Vol.7、7章、8章、10章及び11章、Pergamon Press
【非特許文献6】Robinsら、J. Am. Chem. Soc. 104:1882〜1893(1982)
【非特許文献7】Gassmanら、J. Am. Chem. Soc. 108:4228〜4229(1986)
【非特許文献8】Connellyら、Chem. Rev. 96:877〜910(1996)
【非特許文献9】Geigerら、Advances in Organometallic Chemistry 23:1〜93
【非特許文献10】Geigerら、Advances in Organometallic Chemistry 24:87
【非特許文献11】Ng及びJiang(1997) Chemical Society Reviews 26: 433〜442
【非特許文献12】Cotton及びWilkenson、Advanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons、1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、滑らかな金属表面を処理し、それによって銅表面と有機基板との間の接着力を増加することによってプリント配線板(PCB)を製造する方法を提供する。接合強度を増加させつつ、さらに大幅に銅表面を粗化させることがない、本発明の実施形態によって提供されるような銅表面処理プロセスは、従来技術とは完全に異なっており、反している。
【0015】
本発明のさらなる実施形態において、PCBにおける滑らかな銅表面と樹脂との接合方法が提供され、この方法において接合界面は、熱、湿気、及び積層プロセスステップ後に含まれる薬液に対する望ましい耐性を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、アルカリ溶液及び/又は過酸化物溶液で滑らかな銅表面を予備洗浄するステップと、銅の表面上に銅酸化物を形成することによって表面を安定化するステップと、還元剤及び、任意に結合分子で、酸化物層を調整し、それによって望ましいモルフォロジー、均一性、及び接合位置を得るステップと、処理された銅の表面と樹脂とを、例えば熱及び圧力によって接合するステップと、を備えるPCBを形成する方法が提供される。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子が銅酸化物層に結合することができ、この1つ以上の有機分子は、銅酸化物表面に結合するように構成された1つ以上の結合基(binding group)と、樹脂に付着するように構成された1つ以上の付着基(attachment group)とを担持する熱安定基部(thermally stable base)を備える。
【0017】
別の実施形態において、PCBを製造する方法が提供され、この方法は、銅表面をアルカリ溶液及び/又は過酸化物溶液で予備洗浄するステップと、この銅表面上に銅酸化物層を形成することによって銅表面を安定化するステップと、銅酸化物層の形成を、銅酸化物と1つ以上の抑制化合物との間の自己制御式反応(self limiting reaction)によって停止するステップと、処理された銅表面を樹脂と接合するステップと、を備える。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子は銅酸化物層に結合させることができ、この1つ以上の有機分子は、銅酸化物表面に結合するように構成された1つ以上の結合基と、樹脂に付着するように構成された1つ以上の付着基と、を有する熱安定基材を備える。
【0018】
本発明の前述の特徴および他の特徴は添付の図面に関連した以下の詳細な説明を考慮して明瞭となり、参照符号は全体を通じて同様の部分を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明による銅‐樹脂接合プロセスの1つの実施形態を、従来の粗化プロセスと比較して図示した図である。
図1B】本発明による金属‐樹脂接合プロセスの1つの実施形態を、従来の粗化プロセスと比較して図示した図である。
図2】本発明の方法の1つの実施形態を図示する実験的プロセスフロー図である。
図3A】処理前の滑らかな銅表面のSEM写真である。
図3B】本発明の実施形態によって処理された銅表面のSEM写真であって、処理された表面の滑らかさを示すSEM写真である。
図3C】従来技術に記載されたような従来の粗い黒色酸化物表面のSEM写真である。
図3D】従来技術に記載されたようなマイクロ粗化された銅表面のSEM写真である。
図4図3A〜3Dに示した銅表面の、Ra及びRzの両方で表現された表面粗さを比較する図である。
図5】処理された銅層が、本発明のいくつかの実施形態にしたがって100nm未満の厚みを有することを示す、オージェによる深さプロファイルである。
図6】エポキシ基板上の銅の試験用ストリップに剥離強度試験を行うために使用されたテストサンプルのレイアウトの例を示す図である。
図7A】テストサンプルの準備を示すとともに、使用された積層プロセスを図示する簡単化された断面図である。
図7B】テストサンプルの準備を示すとともに、使用された積層プロセスを図示する簡単化された断面図である。
図7C】テストサンプルの準備を示すとともに、使用された積層プロセスを図示する簡単化された断面図である。
図7D】テストサンプルの準備を示すとともに、使用された積層プロセスを図示する簡単化された断面図である。
図8A】本発明の実施形態によって処理された、エポキシを積層した滑らかな銅表面に対する剥離強度と表面粗さを、実験参照との比較で図示した図である。
図8B】本発明の実施形態によって処理された、エポキシを積層した滑らかな銅表面に対する剥離強度と表面粗さを、実験参照との比較で図示した図である。
図9A】HASTの前の、本発明の実施形態によって形成された、積層され、処理された銅表面のSEM断面図を示した図である。
図9B】HASTの後の、本発明の実施形態によって形成された、積層され、処理された銅表面のSEM断面図を示した図でものであり、HAST後に剥離がないことを示している。
図10A】滑らかな銅対照では、銅‐樹脂界面がまさに銅表面で破壊していることを示す、剥がされた銅表面のSEM写真である。
図10B】本発明の1つの実施形態による滑らかな処理された銅では、銅‐樹脂界面が樹脂内で破壊していることを示す、剥がされた銅表面のSEM写真である。
図11】積層された、処理された滑らかな銅表面に形成されたレーザビアのSEM断面写真であり、デスメアプロセスおよびメッキの後にアンダーカットがないことを示している。
図12A】本発明の実施形態によって処理された、ソルダーレジストを積層された滑らかな銅表面の剥離強度および表面粗さを、対照の基板との比較で示す図である。
図12B】本発明の実施形態によって処理された、ソルダーレジストを積層された滑らかな銅表面の剥離強度および表面粗さを、対照の基板との比較で示す図である。
図13A】銅配線上のSRパターン及びビアのアレイの写真である。
図13B】BGAパターンの写真である。
図14】本発明の実施形態によって形成された、積層され、処理された銅表面に形成されたSRビアの断面SEM写真であり、デスメアプロセス及びメッキ後に剥離が生じないことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以上の一般的な説明及び以下の説明がともに、単に例示的なものであるとともに説明的なものであって、ここに記載された方法及び装置に限定されないことが理解されるべきである。この出願において、単数形が使用されているものは別様に特に記述されない限り複数の場合を含む。また、別様に特に記述されない限り、「又は」の使用は「及び/又は」を意味する。同様に、「備える」、「含む」、「有する」は、限定を意図するものではない。
【0021】
いくつかの実施形態において、銅表面と有機基板との間の接着又は結合を促進するためのプリント配線板(PCB)を製造する方法が提供されており、この方法は銅表面に銅酸化物層を形成することによって銅表面を安定化するステップと、銅酸化物を還元剤で還元することによって銅酸化物層を調整するステップと、を備える。
【0022】
特に有利なことは、銅酸化物層が、これもまた安定化層と称される場合があるが、独特な特徴を示すということである。いくつかの実施形態において、調整の後の銅酸化物層は約200ナノメータ以下の厚みを有する。いくつかの実施形態において、銅酸化物は実質的にアモルファス構造から成る形態を有する。
【0023】
例示的な実施形態において、銅酸化物層はグレインを有し、調整の後にはこれらグレインは250ナノメータ以下のサイズを有する。別の実施形態において、銅酸化物層はグレインを有し、調整の後にはこれらグレインは200ナノメータ以下のサイズを有する。いくつかの実施形態において、銅酸化物層はグレインを有し、調整の後にはこれらグレインは実質的に不規則に配向している。
【0024】
銅表面は、銅表面を酸化剤に暴露することによって安定化される。例示の実施形態において、酸化剤は亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過マンガン酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、オゾン、又はこれら物質の混合物のうちのいずれか1つ以上から選択される。銅表面を安定化させるステップは、室温〜約80℃の範囲の温度で行うことができる。
【0025】
安定化の後、銅酸化物層は、還元剤で調整される。いくつかの実施形態において、還元剤はホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム、ほう化水素酸ナトリウム、一般式BHNHRR’(R及びR’はそれぞれH、CH、CHCHから成る群から選択される)によって表される、ジメチルアミンボラン(DMAB)のようなボラン還元剤、モルホリンボラン、ピリジウムボラン、ピペリジンボランのような環状ボランのうちのいずれか1つ以上から選択することができる。
【0026】
特に有利なことに、本発明の実施形態は、「滑らかな」銅基板、すなわち前以て粗化されていない銅基板からPCBを製造するための方法を提供する。例えば、本発明の方法に使用するのに好適な銅基板は、それらに限られるわけではないが、電解銅若しくは電気メッキ銅、無電解メッキ銅、及び圧延銅を含み、これら銅基板を準備する方法によって限定されることはない。
【0027】
いくつかの実施形態において、銅基板又は表面は約0.13μm Raの粗さを有する。いくつかの実施形態において、銅酸化物、又は処理された滑らかな銅表面若しくは安定化層とも称されるものは、0.14μm Ra以下の粗さを有する。
【0028】
別の特徴において、本発明はプリント配線板を製造する方法を提供し、この方法は、アルカリ溶液及び/又は過酸化物溶液で銅表面を予備洗浄するステップと、銅酸化物を上に形成することによって銅表面を安定化するステップと、この銅酸化物層を還元剤で調整するステップと、処理された銅表面を樹脂と接合するステップと、を備える。
【0029】
図1A及び1Bには、滑らかな樹脂基板104に接合された滑らかな銅表面102を備える滑らかな銅‐樹脂接合界面100Aの単純化された図から成る1つの例示の実施形態を示されている。密な酸化物層又は有機物層のいずれかの安定化層106が銅の頂面に形成されて、銅表面を界面故障の主な原因である腐食若しくは化学攻撃から保護している。いくつかの実施形態において、必要不可欠なわけではないが、有機分子層によって安定化層106をさらに調整するか又はプライミングして、樹脂104中の官能基グループYと反応させて共有結合を形成する活性結合サイトXを形成することによって化学結合を容易化することが望ましい。例示的な実施形態において、滑らかな銅‐樹脂界面は、主に機械的なアンカーによって界面結合が達成される従来技術において既知である粗化された銅‐樹脂界面100Bと比較して、優れた接着強度、並びに熱、湿気、及び化学攻撃に対する耐性を有している。
【0030】
本発明の特徴をさらに示すための図2を参照すると、例示的な実験プロセスフローが示されており、このフローは4つの主なステップ、すなわち、(1)表面予備処理200、(2)表面安定化及び調整300、(3)真空積層400、及び(4)熱処理500、を備えている。特定のデータ及び結果は図示のためのみのために示されており、本発明の技術的範囲を限定することを意図するものではない。また、図2は剥離強度試験がプロセスのどこで行われるかを示しているが、これは、試験手法を図示するのみのために示されている。本発明の広い方法ステップは、剥離試験のステップを含まない。
【0031】
図2に示された例示的な方法において、表面予備処理は、アルカリ洗浄202、リンス204、ソフトエッチ及び酸洗い206、並びに208における基板のリンス及び乾燥によって行われる。
【0032】
次に、表面は302において表面酸化によって安定化され、304においてリンスされる。次いで、表面は306において還元によって調整され、ステップ306は任意の官能基化と、それに続く308における基板のリンス及び乾燥を含むことができる。
【0033】
調整ステップ306の後に、真空積層が402における安定化された基板の上への積層フィルム402のアセンブリと、404における真空積層と、任意に406における真空プレスと、によって行われる。
【0034】
次に、熱処理が行われて、502において積層されたアセンブリを硬化又はアニールし、このアセンブリには次いで600における剥離試験が行われる。
【0035】
また、本発明のいくつかの実施形態は、金属表面に結合するように構成された1つ以上の結合基と、有機基板に付着するように構成された1つ以上の付着基と、を担持する熱安定基部を備える1つ以上の有機分子に金属表面を接着させるステップを提供する。1つの例示の実施形態において、1つ以上の改質分子は表面活性分子(SAM)または表面活性部分(surface active moiety)である。
【0036】
特に有利なことにPCBは、安定化層として参照される場合もあるが、独特な特徴を示す銅酸化物層を含む。いくつかの実施形態において、調整後の銅酸化物層は、約200ナノメータ以下の厚みを有する。いくつかの実施形態において、銅酸化物は、実質的にアモルファス構造から成るモルフォロジーを有する。
【0037】
例示の実施形態において、銅酸化物層は非常に分散したグレイン構造を有し、調整の後にはグレインは200ナノメータ以下のサイズを有する。別の実施形態において、銅酸化物層はグレインを有し、調整の後にはこれらグレインは100ナノメータ以下のサイズを有する。いくつかの実施形態において、銅酸化物はグレインを有し、調整の後にはこれらグレインは実質的にランダムに配向している。
【0038】
銅表面は、この銅表面を酸化剤に曝すことによって安定化される。例示の実施形態において、この酸化剤は、亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、過マンガン酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、オゾンうちのいずれか1つ以上、又はこれら物質の混合物から選択される。銅表面を安定化するステップは、室温〜約80℃の範囲の温度において行われる。代替的に、銅表面は熱酸化及び電気化学的陽極酸化によって安定化することができる。
【0039】
安定化の後、銅酸化物層を還元剤によって調整することができる。いくつかの実施形態において、還元剤はホルムアルデヒド、チオ硫酸ナトリウム、ほう化水素酸ナトリウム、一般式BHNHRR’(R及びR’はそれぞれH、CH、CHCHから成る群から選択される)によって表されるジメチルアミンボラン(DMAB)のようなボラン還元剤、モルホリンボラン、ピリジウムボラン、ピペリジンボランのような環状ボランのうちのいずれか1つ以上から選択される。
【0040】
銅酸化物層の調整は、室温〜約50℃の範囲の温度で行うことができる。いくつかの実施形態において、方法全体は、約2〜20分の範囲の時間内に行われる。
【0041】
また、本発明のいくつかの実施形態は、調整の後に、銅酸化物表面に結合するように構成された1つ以上の結合基と、有機基板に付着するように構成された1つ以上の付着基を保持する熱安定基部を備える1つ以上の表面活性分子(SAMs)に銅酸化物表面を接触させるステップを提供する。例示の実施形態において、1つ以上の有機表面活性分子は表面活性部分である。
【0042】
いずれの好適な表面活性分子又は表面活性部分を使用することができる。いくつかの実施形態において、表面改質部分(surface modifier moiety)は、大環状プロリガンド(macrocyclic proligand)、大環状錯体(macrocyclic complex)、サンドイッチ配位錯体(sandwich coordination complex)、及びこれら物質のポリマーから成る群から選択される。代替的に、表面改質化合物はポルフィリンを備えることができる。
【0043】
1つ以上の表面活性分子(SAM)は、ポルフィリン、ポルフィリン大員環、拡張ポルフィリン、環縮小ポルフィリン、直鎖ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリン配列、シラン、テトラオルガノ‐シラン、アミノエチル‐アミノプロピルートリメトキシシラン、(3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(1‐[3‐(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア)((l−[3−(Trimethoxysilyl)propyl]urea))、(3‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、((3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)、(3‐クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3‐(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2‐メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素, テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン‐トリメトキシシラン、アミン、糖、又は以上の物質のいずれかの組み合わせの群から選択することができる。代替的に、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、タンタル酸塩、ニオブ酸塩、バナジウム酸塩、又は、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブ、バナジウムのイソポリ若しくはヘテロポリ酸、及び上述のいずれかの組み合わせから成るグループからの無機分子、及び上述のいずれかの組み合わせを、同じ目的のために使用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、1つ以上の付着基はアリール官能基グループ及び/又はアルキル付着基から成る。付着基がアリールである場合には、アリール官能基グループは、アセテート、アルキルアミノ、アリル、アミン、アミノ、ブロモ、ブロモメチル、カルボニル、カルボキシレート、カルボン酸、ジヒドロキシフォスフォニル、エポキシド、エステル、エーテル、エチニル、ホルミル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヨード、メルカプト、メルカプトメチル、Se−アセチルセレノ、Se−アセチルセレノメチル、S−アセチルチオ、S−アセチルチオメチル、セレニル、4,4,5,5−テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン‐2−イル、2‐(トリメチルシリル)エチニル、ビニル、及びこれら基の組み合わせのうちのいずれか1つ以上から選択された官能基グループを備えることができる。
【0045】
付着基がアルキルから成る場合には、アルキル付着基は、アセテート、アルキルアミノ、アリル、アミン、アミノ、ブロモ、ブロモメチル、カルボニル、カルボキシレート、カルボン酸、ジヒドロキシホスホリル、エポキシド、エステル、エーテル、エチニル、ホルミル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ヨード、メルカプト、メルカプトメチル、Se−アセチルセレノ、Se−アセチルセレノメチル、S−アセチルチオ、S−アセチルチオメチル、セレニル、4,4,5,5−テトラメチル‐1,3,2‐ジオキサボロラン‐2−イル、2‐(トリメチルシリル)エチニル、ビニル、及びこれら基の組み合わせのうちのいずれか1つ以上から選択された官能基グループを備えることができる。
【0046】
代替的実施形態において、少なくとも1つの付着基は、アルコール又はリン酸塩からなる。さらなる実施形態において、少なくとも1つの付着基は、アミン、アルコール、エーテル、求核試薬(nucleophile)、フェニルエチン、フェニルアリリックグループ、リン酸塩、及びこれら物質の組み合わせのいずれ改1つ以上から構成することができる。
【0047】
概して、いくつかの実施形態において有機分子は、1つ以上の結合群Xと1つ以上の付着群Yを有する熱的に安定な単位又は基体を備える。所定の実施形態において、有機分子は耐熱性金属結合性分子であり、1つ以上の、関連する用途においては「酸化還元活性部分」又は「ReAMs」として参照される「表面活性部分」を備えることができる。一般的に、いくつかの実施形態において、本発明においていくつかの有益な表面活性部分があり、これらすべてが大員環及び非大員環構成部分を含む多座プロリガンド(polydentate proligands)に基づいている。多くの好適なプロリガンド及び錯体、並びに好適な置換基は、上述に引いた参照文献に概説されている。
【0048】
好適なプロリガンドは、2つのカテゴリー:(一般的に、文献においてシグマ(a)ドナーと参照される)配位原子としての(金属イオンによって)窒素、酸素、硫黄、炭素、又はリンの原子を使用するリガンドと、メタロセンリガンドのような有機金属リガンドとに分類される。
【0049】
また、単一の表面活性部分は、2つ以上の酸化還元活性なサブユニットを有することができ、ポルフィリン及びフェロセンを使用する。
【0050】
いくつかの実施形態において、表面活性部分は大員環リガンドであり、大員環プロリガンド及び大環状錯体の両者を含有する。ここで「大員環プロリガンド」は、金属イオンに結合することができるように配向された(ここで「錯体原子」として参照される場合のある)ドナー原子を含有するとともに、金属原子を取り囲むのに十分大きな環状錯体を意味する。一般的にドナー原子は、それらに限られるわけではないが窒素、酸素、及び硫黄を含有するヘテロ原子であり、窒素を含有するヘテロ原子が特に好ましい。しかし、当業者には理解されるように、異なる金属イオンは異なるヘテロ原子に選択的に結合し、よって使用されるヘテロ原子は望ましい金属イオンに依拠することができる。さらに、いくつかの実施形態において、単一の大員環は異なるタイプのヘテロ原子を含有することができる。
【0051】
「大環状錯体」は、少なくとも1つの金属イオンを有する大員環プロリガンドであり、いくつかの実施形態において大環状錯体は単一の金属イオンを備えるが、後述のように、多核の大環状錯体を含む多核の錯体もまた考えられる。
【0052】
多種多様な大員環リガンドが、電気的に共役した、及び電気的に共役していない大員環リガンドを含んで本発明における使用を見出される。いくつかの実施形態において、電気的に共役された化合物を生じさせるとともに最低でも少なくとも2つの酸化状態を有するように、連鎖、化学結合、及び置換基が選択される。
【0053】
いくつかの実施形態において、本発明の大員環リガンドは、ポルフィリン(特に以下に規定されたようなポルホリン誘導体)及びシクレン誘導体から成る群から選ばれる。本発明に好適な特に好ましい大員環のサブセットは、ポルフィリン誘導体を含むポルフィリンを包含する。このような誘導体は、座核を有するポルフィリンにオルトヒューズされるか、又はオルトペリヒューズされた過剰の連鎖ポルフィリンを有するポルフィリン、ポルフィリン連鎖の1つ以上の炭素原子を別の元素によって交換(骨格交換)されたポルフィリン、ポルフィリン連鎖の窒素原子を別の元素によって交換(窒素の骨格交換)された誘導体、ポルフィリンの周縁のメソ‐、3‐、又はコアの原子に配置された水素以外の置換基を有する誘導体、ポルフィリンの1つ以上の化学結合の飽和を有する誘導体(ハイドロポルフィリン、例えばクローリン、バクテリオクローリン、イソバクテリオクローリン、デカハイドロプロフィリン、コーフィン、パイロコーフィン、等)、ポルフィリン連鎖(拡張ポルフィリン)中に挿入された、ピロリック及びピロメテニルユニットを含む1つ以上の原子を有する誘導体、ポルフィリン連鎖(収縮ポルフィリン、例えばコリン(corrin)、コロール(corrole))から取り除かれた1つ以上の群を有する誘導体、及び以上の誘導体の組み合わせ(例えば、フタロシアニン、塩基性‐フタロシアニン、及びポルフィリン異性体)を包含する。更なる好適なポルフィリン誘導体は、それらに限られるわけではないが、エチオフィリン、ピロポルフィリン、ロドポルフィリン、フィロポルフィリン、フィロエリトリン、クロロフィルa及びbを含むクロロフィリル群、及びデューテロポルフィリン、デューテロヘミン、ヘミン、ヘマチン、プロトポルフィリン、メソヘミン、ヘマトポルフィリン、メソポルフィリン、コプロポルフィリン、ウロポルフィリン、及びツラシン(turacin)を含むヘモグロビン群、並びにテトラアリルアザジピロメチン(tetraarylazadipyrromethine)を包含する。
【0054】
当業者であれば理解するように、炭素又はヘテロ原子であろうとなかろうと不飽和部位それぞれは、ここで規定されたような1つ以上の置換基群を、システムの望ましい価数によって含むことができる。
【0055】
さらに、「ポルフィリン」の定義には、ポルフィリン錯体が含まれ、ポルフィリン錯体はポルフィリンプロリガンド及び少なくとも1つの金属イオンを備える。ポルフィリン化合物のために好適な金属は、配位原子として使用されるヘテロ原子に依拠するが、一般的には遷移金属イオンから選択される。ここで使用される用語「遷移金属」は、周期表の3族〜12族の38元素を参照する。典型的な遷移金属は、これら遷移金属型の元素と結合するために使用する価電子が1つ以上の電子殻に存在し、よっていくつもの共通酸化状態(common oxidation state)を示すことが多い。所定の実施形態において、この発明の遷移金属は、限定されるわけではないが、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクテチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、パラジウム、金、水銀、ラザフォージウム、及び/又は酸化物、及び/又は窒化物、及び/又は合金、及び/又はこれら物質の混合物を包含する。
【0056】
また、概ねシクレン/シクラム誘導体に基づく大環状プロリガンドを含むシクレン誘導体に基づく多くの大員環も存在し、これら大環状プロリガンドは、独立して選択された炭素又はヘテロ原子を取り込むことによる骨格拡張を含むことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのR基は表面活性サブユニットであり、好ましくは金属と電子共役している。いくつかの実施形態において、すくなくとも1つのR基が表面活性サブユニットである場合、2つ以上の隣接するR2基はシクロ又はアリール基を形成する。本発明において、この少なくとも1つのR基は表面活性サブユニット又は表面活性部分である。
【0057】
さらに、いくつかの実施形態において、大環状錯体依存性有機金属配位子が使用される。表面活性部分として使用するための純粋な有機化合物、及び複素環置換基又は環外置換基としてのドナー原子を有する8−結合有機配位子を有する様々な遷移金属配位錯体に加えて、π結合有機配位子を有する利用可能な広範囲の遷移金属有機金属化合物がある(本明細書に参照によって明示的に組み込まれる、非特許文献3、26章、非特許文献4、及び非特許文献5を参照)。そのような有機金属配位子としては、シクロペンタジエニドイオン[C5H5(−1)]などの環状芳香族化合物、及びビス(シクロペンタジエイル)金属化合物(すなわちメタロセン)の部類を生じるインデニリド(−1)イオンなどの様々な環置換誘導体及び縮環誘導体が上げられる。例えば、参照により組み込まれる、非特許文献6及び非特許文献7を参照。これらのうち、フェロセン[(C5H5)2Fe]及びその誘導体は、広範囲の化学反応(参照により組み込まれる、非特許文献8)及び電気化学反応(参照により組み込まれる、非特許文献9;及び非特許文献10)に使用されてきた原型的な例である。他の潜在的に好適な有機金属配位子としては、ビス(アレーン)金属化合物及びそれらの環置換誘導体及び縮環誘導体(それらのうちビス(ベンゼン)クロムは原型的な例である)を生じるベンゼンなどの環状アレーンが挙げられる。アリル(−1)イオンなどの他の非環式n−結合配位子、又はブタジエンは、潜在的に好適な有機金属化合物を生じ、そのようなあらゆる配位子は他の7c−結合及び8−結合配位子と協働して、金属−炭素結合が存在する一般的部類の有機金属化合物を構成する。そのような化合物の様々な二量体及びオリゴマーで、架橋有機配位子及びさらに非架橋配位子を有するもの、並びに金属−金属結合を有するもの及び有していないものの電気化学的研究はすべて有用である。
【0058】
いくつかの実施形態において、表面活性部分はサンドイッチ配位錯体である。用語「サンドイッチ配位化合物」又は「サンドイッチ配位錯体」は式L−Mn−Lの化合物を指し、式中各Lは複素環配位子(下記の通り)であり、各Mは金属であり、nは2又はそれを上回り、最も好ましくは2又は3であり、各金属は1対の配位子の間に位置し、各配位子中の1つ以上のヘテロ原子(典型的には複数、例えば2、3、4、5個のヘテロ原子)に結合している(金属の酸化状態によって決まる)。そのためサンドイッチ配位化合物は、金属が炭素原子に結合しているフェロセンなどの有機金属化合物ではない。サンドイッチ配位化合物中の配位子は一般に積み重なる方向で並んでいる(すなわち、一般に共平面的に配向し互いに軸方向に並んでいるが、それらは互いに軸の周りを回転するか又は回転しなくてもよい)(例えば、参照により組み込まれる、非特許文献11を参照)。サンドイッチ配位錯体としては、限定はされないが、「ダブルデッカー型サンドイッチ配位化合物」及び「トリプルデッカー型サンドイッチ配位化合物」が挙げられる。サンドイッチ配位化合物の合成及び使用は特許文献43、特許文献44、及び特許文献45に詳細に記載されており;これらの分子の重合は特許文献46に記載されており、そのすべて、特にサンドイッチ錯体及び「単一大環状」錯体の両方において利用法を見いだす個々の置換基が本明細書に含まれる。
【0059】
さらに、これらのサンドイッチ化合物のポリマーも有用である;これには、特許文献43、特許文献44、及び特許文献45に記載のような「ダイアド(dyad)」及び「トリアド(triad)」、並びに特許文献46に記載のようなこれらの分子の重合が含まれ、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれ含まれる。
【0060】
非大環状キレート剤を含む表面活性部分は、金属イオンに結合して非大環状キレート化合物を形成するが、なぜならこれは金属の存在によって複数のプロリガンドが互いに結合して複数の酸化状態を生じさせることが可能になるからである。
【0061】
いくつかの実施形態において、窒素供与性プロリガンドが使用される。好適な窒素供与性プロリガンドは当技術分野において良く知られており、限定はされないが、NH;NFIR;NRR’;ピリジン;ピラジン;イソニコンチンアミド;イミダゾール;ビピリジン及びビピリジンの置換誘導体;ターピリジン(terpyridine)及び置換誘導体;フェナントロリン、特に1,10−フェナントロリン(phenと略する)及びフェナントロリンの置換誘導体、例えば4,7−ジメチルフェナントロリン及びジピリドール[3,2−a:2’,3’−c]フェナジン(dppzと略する)など;ジピリドフェナジン;1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(hatと略する);9,10−フェナントレンキノンジイミン(phiと略する);1,4,5,8−テトラアザフェナントレン(tapと略する);1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(シクラムと略する)及びイソシアン化物が挙げられる。縮合誘導体を含めた置換誘導体も使用してもよい。金属イオンを配位的に飽和させず、別のプロリガンドの追加を要する大環状配位子は、この目的において非大環状であると見なされることに留意すべきである。当業者によって認識されることになるように、いくつかの「非大環状」配位子を共有付着させて配位的に飽和した化合物を得ることが可能であるが、これは環状骨格を持たない。
【0062】
炭素、酸素、硫黄、及びリンを用いた好適なシグマ供与性配位子は、当技術分野において既知である。例えば好適なシグマ炭素ドナーは、参照により本明細書に組み込まれる、非特許文献12において見いだされる(例えば38頁を参照)。同様に、好適な酸素配位子としては、クラウンエーテル、水、及び他の当技術分野において既知のものが挙げられる。ホスフィン及び置換ホスフィンも好適である。非特許文献12の38頁を参照。
【0063】
酸素、硫黄、リン、及び窒素供与性配位子は、ヘテロ原子が配位原子として機能するのを可能にするように付着する。
【0064】
さらに、いくつかの実施形態は多核形成性(polynucleating)配位子である多座配位子を使用し、例えばそれらは1つを超える金属イオンに結合することが可能である。これらは大環状又は非大環状であってもよい。本明細書において分子要素は上記の概要のような表面活性部分のポリマーも含んでいてもよい。 例えば、ポルフィリンポリマー(ポルフィリン錯体のポリマーを含める)、大環状錯体ポリマー、2つの表面活性サブユニットを含む表面活性部分などを使用できる。ポリマーはホモポリマー又はヘテロポリマーであってもよく、モノマー表面活性部分の様々な混合物(混和物)をいくつでも含んでいてもよく、ここで「モノマー」は2つ又はそれを超えるサブユニットを含む表面活性部分も含んでいてもよい(例えばサンドイッチ配位化合物、1つ以上のフェロセンで置換されたポルフィリン誘導体など)。表面活性部分ポリマーは特許文献46に記載されており、その全体が参照により明示的に組み込まれる。
【0065】
特定の実施形態において、付着基Yはアリール官能基及び/又はアルキル付着基を含む。特定の実施形態において、アリール官能基は、アミノ、アルキルアミノ、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、ホルミル、ブロモメチル、ビニル、アリル、S−アセチルチオメチル、Se−アセチルセレノメチル、エチルニル、2−(トリメチルシリル)エチニル、メルカプト、メルカプトメチル、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル、及びジヒドロキシホスホリルから成る群から選択される官能基を含む。特定の実施形態において、アルキル付着基は、ブロモ、ヨード、ヒドロキシ、ホルミル、ビニル、メルカプト、セレニル、S−アセチルチオ、Se−アセチルセレノ、エチニル、2−(トリメチルシリル)エチニル、4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル、及びジヒドロキシホスホリルから成る群から選択される官能基を含む。特定の実施形態において、付着基はアルコール又はホスホナートを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、表面活性部分は式A(4−x)SiBYによって特徴づけられるシランであり、式中、各Aは独立に加水分解性基、例えばヒドロキシル又はアルコキシ基であり、式中、x=1〜3であり、Bは独立にアルキル又はアリール基であり、上記のような付着基Yを含有するか又は含有しなくてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明は、滑らかな銅基板、すなわち前以て粗化されていない銅基板を使用してPCBを製造する方法を提供する。例えば、本発明の方法に使用するために好適な銅基板は、限定するわけではないが、電解銅若しくは電気めっきされた銅、無電解銅、及び圧延銅を含み、これらを生成する方法によって限定されるわけではない。
【0068】
さらなる特徴において、プリント配線板はエポキシのようなポリマー材料を備えて提供され、このポリマー材料は相当量のガラス、シリカ、若しくは他の材料のようなフィラー材料を含み、限定されるわけではないが、表面を、この表面の金属に対する化学的相性を実質的に変更するポリフィリンのような化学的接着性材料によって改質されて、それによってポリマー複合体と金属層との間の強固な接着を容易にする。化学的接着層の第2の層を金属表面に適用することができ、金属表面とそれに続くポリマー(エポキシ/ガラス)層との間の接着を促進する。いくつかの実施形態において、PCBは多層の導電体構造である。
【0069】
別の特徴において、本発明は、アルカリ溶液及び/又は過酸化物溶液で銅表面を予備洗浄するステップと、予備洗浄された銅表面上に銅酸化物を形成することによって銅表面を安定化するステップと、この銅酸化物と、1つ以上の抑制剤化合物と、の間の自己制御式反応によって銅酸化物の形成を停止するステップと、処理された銅表面を樹脂と接合するステップと、を備える、プリント配線板を製造する方法を提供する。いくつかの実施形態において、1つ以上の分子は銅酸化物層に結合することができ、この1つ以上の有機分子は、銅酸化物表面に結合するように構成された1つ以上の結合基と、樹脂に付着するように構成された1つ以上の付着基と、を担持する熱安定性基部を備える。
【0070】
[実験]
多くの実験が後述するように行われた。これら例は説明目的のためのみに示されており、多少なりとも本発明を限定しようとするものではない。
【0071】
<実施例1: 滑らかな銅基板の処理>
この実施例は、本発明のいくつかの実施形態に従って滑らかな銅基板を処理する1つの例示的方法を示す。上述したように、本発明の方法は、処理された滑らかな銅基板、すなわち前以て粗化されていない銅基板の使用を可能にする。そのような銅基板は、様々な源から形成することができる。例えば、本発明の方法に使用するために好適な銅基板は、限定するわけではないが、電解銅若しくは電気メッキ銅、無電解銅、及び圧延銅を含み、これらを準備する方法に限定されることはない。この実施例1において、電解銅基板がまず、20〜40g/Lの水酸化ナトリウム溶液によって40〜60℃で2〜5分洗浄され、次いで水でリンスされた。銅基板は、1〜3重量%の過酸化水素溶液+2〜5重量%の硫酸によって室温で1〜5分さらに洗浄され、5〜20重量%の硫酸溶液によって室温で1分洗浄され、次いで水によってリンスされた。基板は次いで、1%未満のSAMを含む10〜50g/Lの水酸化ナトリウムを有する140〜200g/Lの亜塩素酸塩中において、50〜80℃で2〜8分間、酸化することによって安定化され、次いで水によってリンスされた。サンプルは次いで、10.5〜12.5に調節されたpHを有するジメチルアミンボラン(DMAB)10〜40g/Lの還元浴中において、室温〜40℃で2〜5分、処理することができる。サンプルは次いで、リンスされ、熱風によって乾燥される。安定化層の表面モルフォロジーおよび厚みは、処理溶液の濃度、温度、及び処理時間を変化させることによって調節することができ、SEM、XRD、及びオージェ深さプロファイルによって明らかにすることができる。
【0072】
図3Aは、ノジュール状グレイン及び長距離秩序の結晶構造を反映する方向性グレイン成長を有する、従来の電解銅表面(すなわち、滑らかな銅表面、若しくは言い換えると粗化されていない銅表面)の典型的なモルフォロジーを示す、50,000倍の例示的SEM写真である。比較として、本発明の方法に従って処理された電解銅表面のモルフォロジーが、図3Bに示されている。非常に明確であるように、図3Bに示された、処理された銅表面上の安定化層は、グレインがより細かく、グレイン成長が一方向性であり、均一性がより高いモルフォロジーを示している。対照的に、図3Cは既存の黒色酸化物表面を示し、この表面は非常に厚く、壊れやすい繊維状構造を示している。図3Dは、既存のマイクロエッチされた銅表面の例示的SEM写真であり、この表面は非常に不均一なマイクロな畝状モルフォロジーを示している。
【0073】
図4の表データは、Ra及びRzの両方で示された表面粗さを比較しており、本発明の処理が、銅表面を粗化していないことを証明している。
【0074】
実施例1に従って準備された、処理された滑らかな銅表面の安定化層は、表面成分及び層の厚み分布を測定するためのオージェ電子光度計(AES)によってさらに明らかにされた。図5を参照すると、処理された滑らかな銅表面に対するAES深さプロファイルは、安定化層が銅と銅酸化物、おそらく酸化第一銅との混合物を含み、その厚みは約100nmであることを示している。対照的に、既存の黒色酸化物層は約1000nm以上の距離に延在している。安定化層の厚みは、良好な接合強度を保証するために、100〜200nmの範囲内にあることが望ましい。
【0075】
<実施例2:滑らかな銅表面上の樹脂接合の強化の証明>
この実施例は、滑らかな銅表面へのエポキシの接着強度を強化する1つの例示の方法を示す。上述の処理されたCu試験ストリップが、図6に示された一時的な裏打ち上に載置された。周囲条件において少なくとも3時間、安定化された大量生産されている35μm厚みのビルドアップ(BU)エポキシ(又は誘電性)積層フィルムが、図7A〜7Dに示された銅ストリップの頂面に載置された。このアセンブリが次いで、100℃で、30秒間、真空積層され、3Kg/cmで30秒間プレスされた。この積層ステップが2回繰り返されて、合計で3プライのBUフィルムが形成された。
【0076】
銅表面が、赤みがかった色から表面処理の後に薄茶色又は緑色に、次いで積層の後に黒色に変化することは注意するに値し、科学的結合反応が行われたことを示唆する。樹脂表面は、ヒドロキシル、アミン、エポキシ、及びその他の化学反応基を含むことが多く、これら反応基は化学結合を形成することによって酸素が多い銅表面と反応することができる。
【0077】
接着強度を定量化するために、剛性を有する裏打ち基板(スティフナー)が、図7Bに示されたようにBUフィルムの頂面に積層された。このアセンブリは次いで、滞留式オーブン中において、180℃で90分、熱処理されるか、又は硬化された。
【0078】
次に、アセンブリは細片に切り離されて、一時的な裏打ち基板を除去し、剥離強度試験及び高度加速ストレステスト(HAST)を使用した試験のための個々のテストクーポンに分離された。結果的に得られた積層体の接着強度は、10mm幅の剥離ストリップについて剥離試験機のフォースゲージによって90℃の剥離角度及び50mm/minの剥離速度で定量された。特に、剥離強度は当初形成されたままの基板で試験され、次いで前処理及びリフローの後に試験された。前処理は、125℃で25時間、次いで30℃及び相対湿度(RH)60%で192時間行われた。リフローは260℃で3回行われた。その後、HAST試験が130℃及び相対湿度85%で96時間行われた。図8A及び8Bは、HAST試験後の剥離強度維持率への処理の影響を示している。(本発明による安定化層を有しない)滑らかな試験対照ではHAST後の剥離強度が88%低下し、従来の粗化された試験対照は40%の低下を示した。非常に対照的に、処理された滑らかな銅基板(すなわち、本発明によって形成された安定化層を有する)は、当初の高い剥離強度だけでなく、11%の低下しかしないという高い維持率を示した。また、図8Bの表データは、剥離強度の安定性の増大が表面粗度の変化なしに達成されたということを示している。この結果は優れたものであり、従来技術の示唆によっては予想できるものではなかった。
【0079】
安定化層を有する、積層され、かつ処理された滑らかな銅表面のSEM断面写真が標準的な粗化された表面と比較して撮られ、本発明の方法が銅表面をほとんど粗さないことが示された。
【0080】
図9A及び9Bは、リフロー及びHAST信頼性試験後に剥離がないことを示す、本発明の実施形態に従って形成された安定化層を有する、積層され、処理された滑らかな銅表面のHAST前後のSEM断面写真を示している。
【0081】
図10A及び10Bは、剥離された銅表面の典型的なSEM写真であり、銅‐樹脂界面が、滑らかな銅の試験対照ではまさに銅表面において破壊している(図10A)のに対し、安定化層を有する処理された滑らかな銅では樹脂内で破壊している(図10B)ことを示している。この驚くべき結果は、本発明の、樹脂と処理された銅表面との間の接合強度が、バルクの樹脂材料そのものの結合強度より強いことを示している。
【0082】
<実施例3:微細配線パターニング及び電気的絶縁信頼性>
微細配線のパターニングが本発明の実施形態によって可能であることを示すためにデバイスが形成された。特に、同一の寸法を有する配線及びスペース(50/50、30/30、20/20、10/10、及び8/8μm)の櫛状パターンが実施例1及び実施例2に記載されたのと同じ手法に従って処理され、積層された。SEM断面図はこの場合もまた、本発明の方法が銅配線を粗化することがなかったこと、及びリフロー及びHAST試験の後に剥離がなかったことを確認した。電気的絶縁抵抗は、リフロー及びHASTの後において、2Vで1012Ω以上に維持され、この値は、PCB製造仕様の値より5オーダー高い。以下の表1はこの結果を要約したものである。これら構造のすべてに、従来技術への大きな発展である、本発明の処理が微細なスペースで銅配線をパターニングする能力を大幅に改善することを示す良好な結果が得られた。
【0083】
【表1】
【0084】
<実施例4:エポキシ積層されたCu表面のレーザドリリング及びビアの洗浄/メッキの互換性>
レーザビアを有するデバイスが形成され、プロセス互換性を示すためにさらにプロセスされた。特に、滑らかな銅基板が、実施例1及び実施例2に記載されたのと同じ手法に従って処理され、積層された。30、40、50、75、100、150、及び200μmの直径のビア列が、COレーザ及びUVレーザのドリリングによって準備された。ビア構造は次いで、ソフトエッチ及び酸洗い、又はデスメアプロセスにかけられ、次いで無電解銅メッキ、次いで電解メッキにかけられた。図11は、本発明の実施形態に従って形成された、積層された滑らかな処理された銅表面に形成されたレーザビアのSEM断面を示し、デスメア及びメッキプロセス後にアンダーカット及び剥離が無いことを示している。
【0085】
<実施例5:滑らかな銅表面上へのソルダーレジストの接合の強化の実証>
この実施例は、滑らかな銅基板上へのソルダーレジストの接着を強化するための1つの例示的方法を示している。滑らかな銅の試験ストリップが、実施例1に記載されたのと同じ手法に従って処理され、図6に示されたような一時的な裏打ち上に載置された。環境条件で3時間、安定された30μmの厚みの商業的に入手可能なソルダーレジスト(SR)積層フィルムが、図7Aによって示されているように銅のストリップの頂面上に載置された。このアセンブリが次いで、75℃において30秒間、真空積層され、60秒間、1Kg/cmでプレスされた。このアセンブリは次いで、400mJ/cmのUV露光にかけられ、その後、滞留式オーブン中において150℃で60分間硬化され、1000mJ/cmで事後UV硬化された。
【0086】
接着強度を定量化するために、堅固な裏打ち基板(スティフナー)が図7Bによって示されたようなSRフィルムの頂面上に積層された。このアセンブリが次いで、ダイシングされて一時的な裏打ち基板を除去され、その後、剥離強度試験及び高度加速ストレス試験(HAST)のための個々の試験片に分離された。特に、剥離強度は形成された当初の基板に対して試験され、次いで、前処理、リフロー、及びHASTの後に試験された。図12A及び12Bは、HAST試験後の剥離強度の保持率への本発明の処理方法の影響を図示している。処理をしなかった滑らかな試験対照ではHAST後の剥離強度が87%低下し、従来の粗化された試験対照では69%の低下がみられた。非常に対照的に、本発明の実施形態に従って形成された、処理された滑らかな銅表面は、より高い当初の剥離強度だけでなく22%の低下しかないという剥離強度の高い保持率を示した。また、図12Bの表データは、剥離強度の安定性の増大が表面粗化度の変化無しに達成されたことを示している。
【0087】
<実施例6: SRを積層されたCu表面のUVパターニングおよびビアの洗浄/メッキの両立性の証明>
ビア列及び銅配線から成るデバイスが形成され、次いでプロセスの両立性を証明するためにさらにプロセスされた。特に、滑らかな銅基板が、実施例5に記載されたのと同じ手法に従って処理され、積層された。80〜440μmに亘る底部径及び62〜500μm幅の銅配線から成るビア列がUV露光及び現像を介して形成された。図13Aは銅配線パターン及びビア列を示し、図13Bはボールグリッドアレイ(BGA)パターンを示している。パターニングされた構造は次いでソフトエッチ及び酸洗い、又はデスメアプロセスにかけられ、続いて無電解Niメッキが行われ、次いでAuエマージョンデポジション(emersion deposition)が行われた。図14は、デスメアおよびメッキプロセス後に剥離がないことを証明する、積層された滑らかな銅上に形成されたSRビアのSEM断面像である。これらすべての構造において、本発明の処理方法が、当業における大きな進歩である、微細スペースのSRをパターニングする能力を大幅に改善することを示唆する良好な結果が得られた。
【0088】
上述の方法、装置、及び記載は、説明に役立つことを意図されている。ここに提供された教唆を考慮すると、別の方法が当業者には明白であり、そのような方法が本発明の技術的範囲に入ることを意図されている。
図1A
図1B
図2
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図12A
図12B
図3A
図3B
図3C
図3D
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図13A
図13B
図14