【実施例】
【0074】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、
1H−NMR及び
13C−NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(ECX−500、日本電子(株)製、溶媒CDCl
3、内標TMS)を、
13C−CP/MAS NMRは、核磁気共鳴装置(ECA−400、日本電子(株)製)を、マススペクトルは、ガスクロマトグラフ質量分析計(JMS−GCmateII、日本電子(株)製)、MALDI−TOF質量分析計(autoflex III、Bruker社製)を、元素分析は、元素分析装置(PE2400II、Perkin Elmer社製)を、IRスペクトルは、フーリエ変換赤外分光光度計(FT/IR−6100、日本分光(株)製)を、重量平均分子量(Mw)は、高速GPC装置(HLC−8220、東ソー(株)製、留出溶媒:テトラヒドロフラン(THF))を用いて測定した。
【0075】
[実施例1]
下記スキームに従って、ポリマー(10)を合成した。
【化9】
【0076】
[1]化合物(6)の合成
300mLナスフラスコ中に、3−テノイル酸(5)(東京化成工業(株)製)1.00g(7.80mmol、1eq)、ジメチルアミン塩酸塩765mg(9.36mmol、1.2eq)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン95.3mg(0.780mmol、0.1eq)、及びジクロロメタン78.0mLを加え、氷水で0℃に冷却しながら30分攪拌した。更に、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩1.80g(9.36mmol、1.2eq)を加え、室温下で14時間反応させた。反応後、エバポレーターにてジクロロメタンを減圧留去し、分液ロートを用いて、ジクロロメタンと飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、続いてジクロロメタンと飽和塩化ナトリウム水溶液にて生成した化合物(6)を抽出した。エバポレーターにてジクロロメタンを減圧留去した後、クロロホルム/酢酸エチル(3/2(体積比))を留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留去し、真空乾燥を経て淡黄色液体(化合物(6))1.08g(6.94mmol)を得た(収率89%)。
1H−NMR、
13C−NMR及び質量分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 7.49-7.53 (dd, 1H, Ar-H), 7.28-7.31 (dd, 1H, Ar-H), 7.18-7.22 (dd, 1H, Ar-H), 3.09 (s, 6H, CH
3)
13C-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 167.0, 136.8, 127.2, 126.3, 125.5, 39.6, 35.5
Mass:m/z = 155.8 (found), 155.2 (calcd)
【0077】
[2]化合物(7)の合成
300mLナスフラスコ中に、化合物(6)5.00g(32.2mmol、1eq)、臭素源としてN−ブロモスクシンイミド12.6g(70.9mmol、2.2eq)、及びDMF107mLを加え、アルミホイルで遮光し室温下で20時間反応させた。反応後、分液ロートを用いて生成した化合物(7)を飽和水酸化ナトリウム水溶液とジエチルエーテルにて抽出した。エバポレーターにてジエチルエーテルを減圧留去した後、酢酸エチルを留出溶媒としてシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留出し、黄色液体(化合物(7))8.58g(27.4mmol)を得た(収率85%)。
1H−NMR、
13C−NMR及び質量分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 6.87 (s, 1H, Ar-H), 3.06 (s, 3H, CH
3), 2.95 (s, 3H, CH
3)
13C-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 164.5, 139.0, 129.6, 113.0, 110.1, 38.7, 35.2
Mass:m/z = 313.0 (found), 313.0 (calcd)
【0078】
[3]化合物(8)の合成
窒素雰囲気下、50mL二口ナスフラスコ中で、化合物(7)2.00g(6.39mmol、1eq)に、アルゴンにより溶存酸素を除去したジエチルエーテル21.3mLを加え、0.3M溶液を調製し、攪拌しながらドライアイスで−78℃に冷却した。更に、シリンジを用いてn−ブチルリチウム(1.65mol/Lヘキサン溶液)3.87mL(6.39mmol、1eq)を滴下し、1時間攪拌後、室温下で12時間反応させた。飽和塩化アンモニア水溶液5mLを加え、反応を停止させ、反応液をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄した。エバポレーターにてジエチルエーテルを減圧留去した後、酢酸エチルを留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール(1/1(体積比))を用いた再結晶法により精製を行い、黄色固体(化合物(8))600mg(1.59mmol)を得た(収率50%)。
1H−NMR、
13C−NMR及び質量分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 7.58 (s, 2H, Ar-H)
13C-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 172.3, 145.0, 142.6, 129.4, 123.9
Mass:m/z = 378.8 (found), 378.1 (calcd)
【0079】
[4]化合物(9)の合成
窒素雰囲気下、30mLナスフラスコ中で、化合物(8)500mg(1.32mmol、1eq)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)12.1mg(0.0132mmol、0.01eq)を、アルゴンにより溶存酸素を除去したトルエン12.2mLに溶解させた後、シリンジを用いてトリ−tert−ブチルホスフィン6.22μL(0.0246mmol、0.022eq)及びトリ−n−ブチルビニルスズ1.17mL(3.97mmol、3eq)を加え、室温下で20時間反応させた。反応後、エバポレーターにてトルエンを減圧留去し、分液ロートを用いて、生成した化合物(9)をジクロロメタンと飽和水酸化ナトリウム水溶液にて抽出した。エバポレーターにてジクロロメタンを減圧留出した後、クロロホルム/ヘキサン(4/1(体積比))を留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール(1/1(体積比))を用いた再結晶法により精製を行い、赤褐色結晶の化合物(9)244mg(0.880mmol)を得た(収率67%)。
1H−NMR、
13C−NMR、質量分析及び元素分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 7.48 (s, 2H, Ar-H), 6.75-6.85 (dd, 2H, vinyl), 5.78-5.86 (d, 2H, vinyl), 5.40-5.46 (d, 2H, vinyl)
13C-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 174.4, 150.1, 143.4, 141.9, 128.1, 124.1, 118.8
Mass:m/z = 273.8 (found), 272.3 (calcd)
元素分析: (found) C 61.3, H 2.8%, (calcd) C 61.7, H 3.0%
【0080】
[5]ポリマー(10)の合成
アンプル瓶に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)9.04mg(55μmol、0.15eq)、化合物(9)100mg(0.367mmol、1eq)、及び1,2−ジクロロエタン3.67mL(0.1M)を加え、凍結脱気により溶存酸素を除きラジカル重合した。反応後、濃縮、メタノールへの沈殿精製、終夜ソックスレーによる精製を経て、薄黄色固体であるポリマー(10)60.6mg(0.223mmol)を得た(収率61%)。
固体NMR、IR及び元素分析による測定結果を以下に示す。
13C-CP/MAS NMR(400MHz, ppm):δ = 174.3, 148.9-166.0, 142.2, 119.8-132.5, 25.5-57.7
IR(cm
-1): 1656(ν
C=O)
元素分析: (found) C 59.2, H 3.7%, (calcd) C 61.7, H 3.0%
【0081】
[実施例2]
下記スキームに従って、ポリマー(11)を合成した。
【化10】
【0082】
アンプル瓶に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)7.12mg(43.4μmol、0.15eq)、化合物(9)70mg(0.257mmol、1eq)、スチレン7.39μL(0.0643mmol、0.25eq)及び1,2−ジクロロエタン8.0mL(0.03M)を加え、凍結脱気により溶存酸素を除き、ラジカル重合した。反応後、濃縮、メタノールへの沈殿精製、ソックスレーによる精製を経て、薄黄色固体であるポリマー(11)52.79mg(0.184mmol)を得た(収率72%)。
固体NMR、IR及び元素分析による測定結果を以下に示す。
13C-CP/MAS NMR(400MHz, ppm):δ = 173.3, 148.0-164.1, 142.6, 117.9-130.8, 20.5-60.0
IR(cm
-1): 1659(ν
C=O)
元素分析: (found) C 57.9, H 3.4%
なお、この結果から、スチレン単位の導入率は、12.3モル%と算出された。
【0083】
[実施例3]
下記スキームに従って、ポリマー(17)を合成した。
【0084】
[1]化合物(12)の合成
窒素雰囲気下、50mLナスフラスコ中で、化合物(6)1.003g(5.456mmol、1eq)に脱水ジエチルエーテル20mLを加え溶解させた。反応系を−78℃まで冷却後、1.07M s−ブチルリチウムのシクロヘキサン−ノルマルヘキサン溶液6.12mL(6.548mmol、1.2eq)を20分かけて滴下した後、室温までゆっくり昇温し、室温で2時間攪拌した。反応系に飽和塩化アンモニウム水溶液20mLを加え、よく攪拌した後濾過し、濾物を水及び冷アセトニトリルで順次洗浄し、真空乾燥して黄色固体(化合物(12))0.463g(2.10mmol)を得た(収率77%)。
1H−NMRによる測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 300MHz, ppm):δ = 7.65 (d, 2H, Ar-H), 7.69 (d, 2H, Ar-H).
【0085】
[2]化合物(13)の合成
100mLナスフラスコ中、化合物(12)1.00g(4.54mmol、1eq)に、エタノール15mL及び水15mLを加え溶解させた。そこへ水素化ホウ素ナトリウム951mg(25.2mmol、5.5eq)を20分かけて加え、室温下30分反応させた。反応後、5M水酸化カリウム水溶液4mLを加え、70℃で30分還流した。その後、硫酸ジメチル4.0mLを20分かけて加え、70℃で5時間反応させた。反応後、攪拌により室温まで冷却した。エバポレーターにてエタノール、水を減圧留去し、分液ロートを用いて、酢酸エチルと塩化ナトリウム水溶液にて生成した化合物(13)を抽出した。エバポレーターにて酢酸エチルを減圧留去した後、クロロホルム/ヘキサン(9/1(体積比))を留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留去し、真空乾燥して白色固体(化合物(13))1.05g(4.19mmol)を得た(収率92%)。
1H−NMR、
13C−NMR及び質量分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 7.49-7.51 (d, 2H, Ar-H), 7.39-7.40 (d, 2H, Ar-H), 4.13(s, 6H, CH
3)
13C-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 167.0, 136.8, 127.2, 126.3, 125.5, 39.6, 35.5
Mass:m/z = 249.9 (found), 250.3 (calcd)
【0086】
[3]化合物(14)の合成
200mLナスフラスコに、化合物(13)1.00g(3.99mmol、1eq)及びテトラヒドロフラン80mLを加え、−78℃に冷却した。冷却後、n−ブチルリチウム(1.60mol/Lヘキサン溶液)2.00mL(4.49mmol、1.5eq)を滴下し、室温で1時間攪拌後、再び−78℃に冷却した。N−ブロモスクシンイミド1.06g(4.49mmol、1.5eq)を80.0mLのテトラヒドロフランに溶解させたものをフラスコに加え、−78℃で1時間反応させ、冷却を止め室温になるまで攪拌し、水40mLを加え反応を停止させた。エバポレーターにてテトラヒドロフラン及び水を減圧留去し、分液ロートを用いて、ジクロロメタンと塩化ナトリウム水溶液にて生成した化合物(14)を抽出した。エバポレーターにてジクロロメタンを減圧留去した後、クロロホルム/ヘキサン(7/3(体積比))を留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留去し、真空乾燥して淡黄色固体(化合物(14))508mg(1.54mmol)を得(収率57%)、原料である化合物(13)を319mg(1.27mmol)回収した。
1H−NMR及び質量分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 7.47-7.49 (t, 2H, Ar-H), 7.41-7.42 (d, 1H, Ar-H), 4.10 (s, 3H, CH
3), 4.09 (s, 3H, CH
3)
Mass:m/z = 329.9 (found), 329.2 (calcd)
【0087】
[4]化合物(15)の合成
窒素雰囲気下、30mLナスフラスコ中で、化合物(14)500mg(1.52mmol、1eq)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)53.7mg(0.0456mmol、0.01eq)を、アルゴンにより溶存酸素を除去したトルエン7.5mLに溶解させた後、トリ−n−ブチルビニルスズ0.67mL(2.28mmol、1.5eq)を加え、室温下で20時間反応させた。
エバポレーターにてトルエンを減圧留去し、分液ロートを用いて、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液にて生成した化合物(15)を抽出した。エバポレーターにてジクロロメタンを減圧留去した後、クロロホルム/ヘキサン(7/3(体積比))を留出溶媒としたシリカゲルカラムによる精製を行った。精製画分から溶媒を減圧留去し、真空乾燥して淡黄色固体(化合物(15))を295mg(1.07mmol)得た(収率70%)。
1H−NMR、
13C−NMR、質量分析及び元素分析による測定結果を以下に示す。
1H-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 7.46-7.48 (d, H, Ar-H), 7.37-7.38 (d, H, Ar-H),7.33 (s, H, Ar-H), 6.90-6.96 (dd, H, vinyl),5.65-5.69 (d, H, vinyl), 5.34-5.36 (d, H, vinyl),4.11 (s, 6H, CH
3)
13C-NMR(CDCl
3, 500MHz, ppm):δ = 145.5, 145.1, 142.9, 138.2, 132.0, 131.4, 130.7, 130.1, 126.6, 120.3, 119.5, 116.6, 61.1, 61.0
Mass:m/z = 276.0 (found),276.4(calcd)
元素分析: (found) C 60.3, H 4.1%, (calcd) C 60.8, H 4.4%
【0088】
[5]ポリマー(16)の合成
アンプル瓶に、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.59mg(3.62μmol、0.01eq)、化合物(15)100mg(0.362mmol、1eq)、及び1,2−ジクロロエタン1.20mL(0.3M)を加え、凍結脱気により溶存酸素を除き、ラジカル重合した。反応後、濃縮、メタノールへの沈殿精製を経て、薄黄色固体であるポリマー(16)29.7mg(0.109mmol)を得た(収率30%)。
IR及び元素分析による測定結果を以下に示す。
IR(cm
-1): 1328(ν
C-O-C)
元素分析: (found) C 60.7, H 3.9%, (calcd) C 60.8, H 4.4%
【0089】
[6]ポリマー(17)の合成
20mLナスフラスコ中で、ポリマー(16)40mg(0.145mmol、1eq)をテトラヒドロフラン2.5mL及び水0.5mLの混合溶媒に溶解させ、N−ブロモスクシンイミド30.9mg(0.174mmol、1.2eq)、硫酸4μLを加え、室温で1時間反応させた。水を加え、沈殿物を水、アセトンで洗浄し、ろ過、真空乾燥を経て、黄土色固体(ポリマー(17))22mg(89.3μmol)を得た(収率73%)。
IRによる測定結果を以下に示す。
IR(cm
-1): 1657(ν
C=O)
【0090】
[実施例4]ポリマー(10)を用いた薄膜電極のCV測定
図1で示されるビーカーセルを用いて、CV測定を行った。
実施例1で合成したポリマー(10)5mgに、炭素粉末40mg及びNMPに溶解させたポリテトラフルオロエチレン樹脂バインダー5mgを加え、ボールミルを用いて混練した。50Hzで15分混練して得られた混合体をグラッシーカーボン基板上に塗布し、これを60℃で18時間加熱真空乾燥して薄膜電極を得た。
上記薄膜電極を作用極11に、白金電極を対極12に、Ag/AgCl電極を参照極13に用い、これらをビーカー内に設置し、この中に1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の電解液14を加えて
図1に示すようなビーカーセル1を作製した。
このビーカーセル1を用いてCV測定を行った結果、ポリマー(10)を用いて作製した薄膜電極は、
図2に示すように、E
1/2=−0.76Vに1段階の安定した酸化還元波を示した。
【0091】
[実施例5]ポリマー(11)を用いた薄膜電極のCV測定
実施例1で合成したポリマー(10)の代わりに、実施例2で合成したポリマー(11)を用いた以外は、実施例4と同様の方法で電極及びビーカーセルを作製し、CV測定を行った。
その結果、
図3に示すように、−0.75Vに一段階の安定した酸化還元波を示し、実施例3よりもピークセパレーションが減少した。
【0092】
[実施例6]ポリマー(17)を用いた薄膜電極のCV測定
実施例1で合成したポリマー(10)の代わりに、実施例3で合成したポリマー(17)を用いた以外は、実施例4と同様の方法で電極及びビーカーセルを作製し、CV測定を行った。
その結果、
図4に示すように、−0.51、−0.66Vに2段階の安定した酸化還元波を示した。
【0093】
[実施例7]ポリマー(10)を電極に用いた電池の特性評価
実施例1で合成したポリマー(10)を用い、実施例4に記載の方法によってビーカーセル型の半電池を作製した。
作製した半電池を221μAの定電流で電圧が−1.1Vになるまで充電し、その後、221μAで放電を行った。その結果、電圧が−0.70V付近で220秒間ほぼ一定となった後、急速に低下し、放電容量は138mAh/gとなった。これにより、実施例1のポリマー(10)が電荷貯蔵材料として動作していることを確認した。電圧が−0.2Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに−0.2〜−1.1Vの範囲で充放電を300回繰り返した。充放電量を変化させた場合の基準電極との電位差の測定結果を
図5に示す。また、充放電した時のサイクル特性を
図6に示す。
【0094】
[実施例8]ポリマー(10)を用いた薄膜電極の電荷保持力評価
実施例1で合成したポリマー(10)を用い、実施例7と同様の半電池を作製した。
以上のように作製した半電池を1.0mAの定電流で電圧が−1.0Vになるまで充電を行った。その後、大気下で一定時間放置後、1.0mAで放電を行った。その結果、充電容量と放電容量の比率(放電容量/充電容量)は10分後の放置時間においても44%を維持していた。これより、実施例1のポリマーは高い電荷保持力を持っていることを確認した。放置時間と充放電比の測定結果を
図7に示す。
【0095】
[実施例9]ポリマー(11)を電極に用いた電池の特性評価
実施例2で合成したポリマー(11)を用い、実施例4に記載の方法によってビーカーセル型の半電池を作製した。
作製した半電池を300μAの定電流で電圧が−1.1Vになるまで充電し、その後、221μAで放電を行った。その結果、電圧が−0.70V付近で160秒間ほぼ一定となった後、急速に低下し、放電容量は140mAh/gとなった。これにより、実施例2のポリマーが電荷貯蔵材料として動作していることを確認した。電圧が−0.2Vまで低下したところで再び充電を行い、更に−0.2〜−0.70Vの範囲で充放電を150回繰り返した。充放電量を変化させた場合の基準電極との電位差の測定結果を
図8に示す。また、充放電した時のサイクル特性を
図9に示す。
また、
図10にポリマー(10)を電極に用いた電池、ポリマー(11)を電極に用いた電池の放電容量のサイクル特性を示す。これにより、スチレン単位を導入することで放電容量比が向上し、膨潤しやすくなったことが示された。
【0096】
[比較例1]ポリビニルアントラキノンを用いた薄膜電極の電荷保持力評価
ポリビニルアントラキノン5mgに、炭素粉末40mg及びNMPに溶解させたポリテトラフルオロエチレン樹脂バインダー5mgを加え、メノウ乳鉢を用いて混練した。得られた混合体をグラッシーカーボン基板上に塗布し、これを60℃で18時間加熱真空乾燥して薄膜電極を得た。なお、ポリビニルアントラキノンは、Choi, W., Harada, D., Oyaizu, K., Nishide, H. J. Am. Chem. Soc., vol. 133, pp. 19839-43 (2011)にしたがって合成した。
作用極として上記薄膜電極、対極として白金電極、参照極としてAg/AgCl電極、電解液として1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて、実施例7と同様の半電池を作製した。
以上のように作製した半電池を1.0mAの定電流で電圧−1.3Vになるまで充電を行った。その後、大気下で一定時間放置後、1.0mAで放電を行った。その結果、充電容量と放電容量の比率(放電容量/充電容量)は10分後の放置時間において0.38%に低下した。放置時間と充放電比の測定結果を
図11に示す。これにより、本発明のベンゾジチオフェンキノンポリマーはポリビニルアントラキノンと比較して電荷保持力が高いことが確認された。
【0097】
[実施例10]ポリマー(10)の薄膜電極を用いた空気電池コインセルの特性評価
実施例1で合成したポリマー(10)5mgに、炭素粉末40mg及びNMPに溶解させたポリテトラフルオロエチレン樹脂バインダー5mgを加え、ボールミルを用いて混練した。50Hzで15分混練して得られた混合体をディスク電極に塗布し、これを60℃で18時間加熱真空乾燥して薄膜電極を得た。
次に、上記薄膜電極を用いて、以下の手順にしたがって
図12に示すコイン電池を作製した。まず、負極ケース26内に設置した集電体24上に上記薄膜電極23を設置し、更に1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液を含浸させたセルガードからなる厚さ25μmのセパレータ22を上記薄膜電極23の上方に設置した。その後、ステンレス製の重りをセパレータ22に積層し、更に酸素還元触媒21を積層した後、内部空間に電解液25として1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液を注入し、その後酸素還元触媒上に金属製ばねを載置するとともに、周縁にガスケットを配置した状態で負極ケース26を正極ケース27に接合し、これにより正極活物質として酸素還元触媒21、負極活物質として上記薄膜電極23を有する開放型のコイン電池2を作製した。
作製したコイン電池を作用極として薄膜電極側、対極として酸素還元触媒側を用いて500μAの定電流で、電圧が−1.1Vになるまで、充電、その後、500μAで放電を行った。その結果、電圧−0.70V付近で80秒間ほぼ一定となった後、急速に低下し、放電容量は145mAh/gとなった。これにより、実施例1のポリマーが電荷貯蔵材料として動作していることを確認した。電圧が0Vまで低下したところで再び充電を行い、更に0〜−1.1Vの範囲で充放電を200回繰り返した。充放電量を変化させた場合の基準電極との電位差の測定結果を
図13に示す。また、充放電した時のサイクル特性を
図14に示す。