特許第6069836号(P6069836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069836
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】光導波路及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/122 20060101AFI20170123BHJP
   G02B 6/132 20060101ALI20170123BHJP
   G02B 6/138 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G02B6/122
   G02B6/132
   G02B6/138
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-3587(P2012-3587)
(22)【出願日】2012年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-142825(P2013-142825A)
(43)【公開日】2013年7月22日
【審査請求日】2014年12月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大地
(72)【発明者】
【氏名】黒田 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】別井 洋
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 幸太
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−266119(JP,A)
【文献】 特開2006−351718(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105419(WO,A1)
【文献】 特開平09−092871(JP,A)
【文献】 特開2010−085438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12− 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層が順に積層され、かつ、前記コア層にミラー部が形成されてなる光導波路であって、
前記基板に開口部を有し、
前記開口部から基板の裏面方向に向かって突出した柱状透明部材を有し、
前記ミラー部が、前記開口部の直上部に形成されてなり、
前記基板と前記下部クラッド層との間に透明樹脂Aからなる透明樹脂層を有し、
前記透明樹脂Aが前記基板の開口部の少なくとも一部に充填され、
前記開口部内の透明樹脂Aに接して透明樹脂Bからなる前記柱状透明部材が突出し、
前記基板が光導波路と反対の面に電気配線を有し、
前記透明樹脂Bが、さらに前記電気配線を保護する感光性樹脂組成物である、光導波路。
【請求項2】
前記透明樹脂Aが、クラッド層形成用樹脂組成物又はコア層形成用樹脂組成物からなる請求項1に記載の光導波路。
【請求項3】
基板上に、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層が順に積層され、かつ、前記コア層にミラー部が形成されてなる光導波路であって、
前記基板に開口部を有し、
前記開口部から基板の裏面方向に向かって突出した柱状透明部材を有し、
前記ミラー部が、前記開口部の直上部に形成されてなり、
前記下部クラッド層を構成するクラッド層形成用樹脂組成物が前記基板の開口部の少なくとも一部に充填され、
前記開口部内の樹脂組成物に接して透明樹脂Bからなる前記柱状透明部材が突出し、
前記基板が光導波路と反対の面に電気配線を有し、
前記透明樹脂Bが、さらに前記電気配線を保護する感光性樹脂組成物である、光導波路。
【請求項4】
基板上に、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層が順に積層され、かつ、前記コア層にミラー部が形成されてなる光導波路であって、
前記基板に開口部を有し、
前記開口部から基板の裏面方向に向かって突出した柱状透明部材を有し、
前記ミラー部が、前記開口部の直上部に形成されてなり、
前記コア層を構成するコア層形成用樹脂組成物が前記基板の開口部の少なくとも一部に充填され、
前記開口部内の樹脂組成物に接して透明樹脂Bからなる前記柱状透明部材が突出し、
前記基板が光導波路と反対の面に電気配線を有し、
前記透明樹脂Bが、さらに前記電気配線を保護する感光性樹脂組成物である、光導波路。s
【請求項5】
前記透明樹脂Bが、クラッド層形成用樹脂組成物又はコア層形成用樹脂組成物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項6】
前記基板が、前記透明樹脂Bを光硬化するための活性光線を遮光可能な基板である、請求項1からのいずれか1項に記載の光導波路。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の光導波路の製造方法であって、開口部を有する基板の一方の面に透明樹脂Aを積層するとともに、基板の開口部の少なくとも一部に透明樹脂Aを充填し、もう一方の面に透明樹脂Bを積層する工程A、該透明樹脂Aを形成した面側から該開口部を露光し、該開口部内及び該開口部上の前記透明樹脂Bを光硬化する工程Bを有する光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記工程Bの後に未硬化部の前記透明樹脂Bを現像除去し、柱状透明部材を形成する工程Cを有する、請求項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項9】
前記工程Bの後に前記透明樹脂A上に下部クラッド層、コア層、上部クラッド層を形成する工程D1、前記コア層にミラー部を形成する工程Eを有する、請求項又はに記載の光導波路の製造方法。
【請求項10】
前記透明樹脂Aが下部クラッド層形成用樹脂組成物であって、前記工程Bの後に、形成された下部クラッド層上にコア層、上部クラッド層を形成する工程D2、該コア層にミラー部を形成する工程Eを有する、請求項又はに記載の光導波路の製造方法。
【請求項11】
前記工程Cの後に前記透明樹脂A上に下部クラッド層、コア層、上部クラッド層を形成する工程D1、前記コア層にミラー部を形成する工程Eを有する、請求項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項12】
前記透明樹脂Aが下部クラッド層形成用樹脂組成物であって、前記工程Cの後に、形成された下部クラッド層上にコア層、上部クラッド層を形成する工程D2、該コア層にミラー部を形成する工程Eを有する、請求項又は11に記載の光導波路の製造方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれか1項に記載の光導波路の製造方法であって、基板の一方の面に、少なくとも基板の開口部の一部が開口された状態を維持するように、基板上に下部クラッド層を形成した後、該下部クラッド層上にコア層形成用樹脂組成物を積層するとともに、基板の開口部の少なくとも一部にコア層形成用樹脂組成物を充填し、もう一方の面に透明樹脂Bを積層する工程A、該コア層側から該開口部を露光し、該開口部内及び該開口部上の前記透明樹脂Bを光硬化する工程B、未硬化部の該透明樹脂Bを現像除去し、柱状透明部材を形成する工程C、該コア層上に上部クラッド層を形成する工程D3、該コア層にミラー部を形成する工程Eを有する光導波路の製造方法。
【請求項14】
前記透明樹脂Bが、電気配線保護用の感光性樹脂組成物であり、かつ基板が少なくとも透明樹脂B形成面側の前記基板表面に電気配線を有する基板であって、前記工程Aの後、又は前記工程Bの後に、前記透明樹脂Bをパターン露光し、前記配線保護用の電気配線保護層を形成する工程Fを有する、請求項から13のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光導波路及び光導波路の製造方法に関し、特に、ミラー部を有する光導波路及びミラー部を有する光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報容量の増大に伴い、幹線やアクセス系といった通信分野のみならず、ルータやサーバ内の情報処理にも光信号を用いる光インターコネクション技術の開発が進められている。特に、ルータやサーバ装置内のボード間あるいはボード内の短距離信号伝送に光を用いるための光伝送路としては、光ファイバに比べ、配線の自由度が高く、かつ高密度化が可能な光導波路を用いることが望ましく、中でも、加工性や経済性に優れたポリマー材料を用いた光導波路が有望である。
【0003】
このような光導波路としては、例えば、特許文献1に記載されているように、まず、下部クラッド層を硬化形成した後に、下部クラッド層上にコアパターンを形成し、上部クラッド層を積層し、光導波路を形成する。その後、切削加工によってミラー部を形成した光導波路が提案されている。
このような光導波路の場合、ミラー部によって光路変換された光信号が、基板を通過するため、該基板は光信号に対して透過率の高い材料である必要がある。さらには、基板と光学素子との間に空間がある場合には、ミラー部によって光路変換された光信号のスポット径が、大きくなり、伝搬損失の悪化につながっていた。
【0004】
また、基板と光学素子との間に空間を低減させた光導波路としては、例えば、特許文献2に記載のように、コアの途上または端部に開口する穴部を設け、該穴部に光路変換部品を挿入したミラー付き光導波路が提案されている。
しかし、このような光導波路の場合、光路変換部品を各光導波路の光路変換部ごとに挿入する必要があるため、作業が煩雑であり、また、基板平面方向及び基板垂直方向の位置合わせをする必要があるため高精度な位置合わせが必要であった。さらに、基板垂直方向の位置合わせをするために開口縁に光変換部品を係止する支持係止部を設けると、光変換部品の占有面積が、開口した穴部よりも大きくなり、例えば、上部クラッド層上に光学素子を実装するための電気配線を備えた場合、支持係止部がかかる上部クラッド層上には電気配線を形成できないため、密な素子実装は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−011210
【特許文献2】特開2005−70142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、基板の種類によらず光信号の伝達が可能で、かつ光学素子と光導波路基板との間の空間ギャップを少なくし、ミラー部から反射された光信号の広がりを押さえ低損失で信号伝搬可能な光導波路、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、基板に、開口部を設け、該開口部から基板の裏面方向に向かって突出した柱状透明部材を設けることで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見にもとづいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基板上に、下部クラッド層、コア層及び上部クラッド層が順に積層され、かつ該コア層にミラー部が形成されてなる光導波路であって、該基板に開口部を有し、該開口部から基板の裏面方向に向かって突出した柱状透明部材を有する光導波路、
(2)前記ミラー部が、前記開口部の直上部に形成されてなる上記(1)に記載の光導波路、
(3)前記基板と前記下部クラッド層の間に透明樹脂Aからなる透明樹脂層を有し、該透明樹脂Aが前記基板の開口部の少なくとも一部に充填され、該開口部内の透明樹脂Aに接して透明樹脂Bからなる前記柱状透明部材が突出する上記(1)又は(2)に記載の光導波路、
(4)前記透明樹脂Aが、クラッド層形成用樹脂組成物又はコア層形成用樹脂組成物からなる上記(3)に記載の光導波路、
(5)前記下部クラッド層を構成するクラッド層形成用樹脂組成物が前記基板の開口部の少なくとも一部に充填され、該開口部内の該樹脂組成物に接して透明樹脂Bからなる前記柱状透明部材が突出する上記(1)又は(2)に記載の光導波路、
(6)前記コア層を構成するコア層形成用樹脂組成物が前記基板の開口部の少なくとも一部に充填され、該開口部内の該樹脂組成物に接して透明樹脂Bからなる前記柱状透明部材が突出する上記(1)又は(2)に記載の光導波路、
(7)前記透明樹脂Bが、感光性の樹脂組成物である上記(3)〜(6)のいずれかに記載の光導波路、
(8)前記透明樹脂Bが、クラッド層形成用樹脂組成物又はコア層形成用樹脂組成物である上記(7)に記載の光導波路、
(9)前記透明樹脂Bが、電気配線保護用の感光性樹脂組成物である上記(7)に記載の光導波路、
(10)前記基板が、前記透明樹脂Bを光硬化するための活性光線を遮光可能な基板である上記(3)〜(9)のいずれかに記載の光導波路、
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の光導波路の製造方法であって、開口部を有する基板の一方の面に透明樹脂Aを積層するとともに、基板の開口部の少なくとも一部に透明樹脂Aを充填し、もう一方の面に透明樹脂Bを積層する工程A、該透明樹脂Aを形成した面側から該開口部を露光し、該開口部内及び該開口部上の前記透明樹脂Bを光硬化する工程Bを有する光導波路の製造方法、
(12)前記工程Bの後に未硬化部の前記透明樹脂Bを現像除去し、柱状透明部材を形成する工程Cを有する上記(11)に記載の光導波路の製造方法、
(13)前記工程B又は前記工程Cの後に前記透明樹脂A上に下部クラッド層、コア層、上部クラッド層を形成する工程D1、前記コア層にミラー部を形成する工程Eを有する上記(11)又は(12)に記載の光導波路の製造方法、
(14)前記透明樹脂Aが下部クラッド層形成用樹脂組成物であって、前記工程B又は前記工程Cの後に、形成された下部クラッド層上にコア層、上部クラッド層を形成する工程D2、該コア層にミラー部を形成する工程Eを有する上記(11)又は(12)に記載の光導波路の製造方法、
(15)上記(1)〜(10)に記載の光導波路の製造方法であって、基板の一方の面に、少なくとも基板の開口部の一部が開口された状態を維持するように、基板上に下部クラッド層を形成した後、該下部クラッド層上にコア層形成用樹脂組成物を積層するとともに、基板の開口部の少なくとも一部にコア層形成用樹脂組成物を充填し、もう一方の面に透明樹脂Bを積層する工程A、該コア層側から該開口部を露光し、該開口部内及び該開口部上の前記透明樹脂Bを光硬化する工程B、未硬化部の該透明樹脂Bを現像除去し、柱状透明部材を形成する工程C、該コア層上に上部クラッド層を形成する工程D3、該コア層にミラー部を形成する工程Eを有する光導波路の製造方法、及び
(16)前記透明樹脂Bが、電気配線保護用の感光性樹脂組成物であり、かつ基板が少なくとも透明樹脂B形成面側の前記基板表面に電気配線を有する基板であって、前記工程Aの後、又は前記工程Bの後に、前記透明樹脂Bをパターン露光し、前記配線保護用の電気配線保護層を形成する工程Fを有する上記(11)〜(15)のいずれかに記載の光導波路の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光導波路は、基板の種類によらず光信号の伝達が可能で、かつ光学素子と光導波路基板との間の空間ギャップが小さいため、ミラー部から反射された光信号の広がりを押さえ低損失で信号伝搬が可能である。また、本発明の製造方法によれば、上記優れた機能を有する本発明の光導波路を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の光導波路の製造方法の一例を説明する図である。
図2】本発明の光導波路の一例を説明する図である。
図3】本発明の光導波路の他の一例を説明する図である。
図4】本発明の光導波路の他の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の光導波路は、基板1上に、下部クラッド層6、コア層7及び上部クラッド層8が順に積層され、かつ該コア層にミラー部9が形成されてなる光導波路であって、該基板1に開口部2を有し、該開口部2から基板の裏面方向に向かって突出した柱状透明部材5を有することが特徴である。
その態様としては種々のものがあるが、例えば、図1(e)に示す態様では、基板1の少なくとも一部に開口部2を有し、該基板1の一方の面に透明樹脂Aからなる透明樹脂層3、下部クラッド層6、コア層7、上部クラッド層8が順次形成され、基板1の表面に対して垂直方向であって、開口部2の直上部のコア層7にミラー部9を有する。透明樹脂Aは基板1の開口部2の少なくとも一部に充填され、該開口部内の透明樹脂Aに接して、透明樹脂Bからなる柱状透明部材5が、基板1の裏面方向に向かって突出してなる。
ここで、開口部2の直上部とは、コアパターンからミラーにより基板垂直方向へ光路変換される光信号において、又は、基板垂直方向からミラーによりコアパターンへ光路変換される光信号において、光信号が開口部を通過する際に、開口部周囲の基板が光信号に干渉し光損失として悪影響を与えることのないように、ミラーと開口部のそれぞれの大きさ及び位置関係であることをいう。
なお、本発明において、基板の表面とは、光導波路が形成される基板面を意味し、基板の裏面とは、光導波路を形成する側の反対面を意味する。
【0011】
また、他の態様としては、図2に示すように、図1(e)において、透明樹脂Aからなる透明樹脂層3と下部クラッド層6とが兼用された光導波路が挙げられる。さらに、図3に示すように、開口部2の周囲に下部クラッド層形成用樹脂組成物が配され、開口部2の開口を維持するように、下部クラッド層6を形成しておき、その後にコア層形成用樹脂組成物を積層して、該開口部2をコア層形成用樹脂組成物で充填する態様がある。この場合には、コア層形成用樹脂組成物に接して透明樹脂Bからなる柱状透明部材5が、基板1の裏面側に突出する。この態様では、透明樹脂層3とコア層7とが兼用される。また、図4に示すように、電気配線を備えた電気配線板付き光導波路の態様も考えられ、透明樹脂Bを電気配線保護層として用いることもできる。すなわち、透明樹脂Bからなる透明樹脂層4と電気配線保護層11が兼用される態様である。
【0012】
本発明における柱状透明部材5の形成方法としては、光硬化性の透明樹脂Bを用いて、基板1の裏面側に透明樹脂層を形成し、コア層形成面側(基板の表面側)から基板1を遮光部代わりにして露光・現像し、パターン化することで得ることができる。すなわち、当該方法により、基板1から裏面側に、開口部2とほぼ同一形状の突出した柱状透明部材5を得ることができる。これにより、柱状透明部材5が突出する側の基板裏面には、透明樹脂層4が存在しないため、電気配線や、素子実装を行う場合、スペースを効率よく確保することができる。さらに、柱状透明部材5が形成された開口部2を光信号が透過するため、基板1の種類(光信号の透過率)によらず良好な光通信が行えるという利点がある。
仮に、基板1の透明性が高い場合であっても、基板は通常、透明樹脂A、透明樹脂B、下部クラッド層、コア層よりも高い屈折率を持つので、光信号が該基板を透過する場合には、空気と基板間の屈折率差によってフレネル損失が発生する。これに対して、本発明の光導波路は、基板1よりも低屈折率の柱状透明樹脂内を光が伝搬していくので、該フレネル損失を低減することができる。
【0013】
さらに、柱状透明部材5により、基板1に設置される光学素子と光導波路との間の空間ギャップを少なくすることができるので、ミラー部から反射された光信号の広がりを押さえ低損失で信号伝搬が可能となる。
なお、透明樹脂層3を構成する透明樹脂Aと、柱状透明部材を構成する透明樹脂Bとは同一の樹脂組成物でも異なる樹脂組成物でもよいが、透明樹脂Aと透明樹脂Bとの高い接着性が得られることから、同一の樹脂組成物を用いることが好ましい。特に、小型の柱状透明部材5を形成する際に有利である。
また、フィルム状の透明樹脂Bを用いると、柱状透明部材5の基板1の裏面からの突出する高さを制御することができより好ましい。
【0014】
(基板)
本発明の光導波路に用い得る基板1の材質としては、特に制限はなく、例えば、ガラスエポキシ樹脂基板、セラミック基板、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板、樹脂層付き基板、金属層付き基板、プラスチックフィルム、樹脂層付きプラスチックフィルム、金属層付きプラスチックフィルム、電気配線板などが挙げられ、特に、透明樹脂Bを光硬化するための活性光線に対して遮光効果があることが好ましい。
例えば、透明樹脂Bを光硬化するための活性光線が紫外光であれば、金属基板や紫外光を透過しないプラスチック基板やガラスエポキシ樹脂基板などが好適に挙げられる。透明樹脂Aや下部クラッド層と接着力が少ない基板を用いる際には、接着層付きの基板を用いても良い。このときの接着層は、開口部にかからないように基板に設置すれば良い。
基板の厚みは、透明樹脂A(下部クラッド層又はコア層を兼用する場合を含む)と透明樹脂Bとで開口部を埋められる厚さであれば特に制限はないが、厚みが薄いほうが、ミラー部にて反射された光信号が広がる前に受光素子や光ファイバ等で受光できるため好ましい。以上の観点から、基板の厚みは5μm〜1mmであることが好ましく、作業性の観点から10μm〜100μmであることがさらに好ましい。
【0015】
(開口部)
開口部2としては、基板1に穴があけられていれば良く、例えば、ドリル加工や、レーザ加工によって好適に形成することができる。また、開口部の側面に各種金属を蒸着、スパッタ、めっき等によって形成した金属層付きスルーホールであっても良い。
開口部2の開口形状としては、特に限定はなく、円状、楕円状、多角形状等の開口部であれば良い。また、側壁は垂直に形成された柱状でも、テーパ状に形成された錐台形状でも良い。
開口部の大きさとしては、光伝搬損失に影響のない範囲であれば良く、基板表面側からミラー部を見たときに、該ミラー部が開口部内に位置される大きさであることが好ましい。具体的には、ミラー部の大きさが50μm×50μmの大きさで、開口部が円状の場合、該開口部にミラー部が内接する大きさの円である直径50√2μm以上であるのが好ましい。
【0016】
(柱状透明部材)
柱状透明部材5としては、上述のように、基板1に形成された開口部2を遮光マスクとしてパターン化して得ることができ、図3に示すように2種類以上の透明部材から柱状透明部材5が形成されていても良い。
該柱状透明部材を構成する材料としては、後述する透明樹脂Bとして例示されるものであることが好ましい。また、基板1の裏面から突出した柱状透明部材5の高さは特に制限はなく、基板1の裏面に形成する透明樹脂層4の厚みによって適宜調整できる。各種光学素子と基板表面との空隙を埋める観点から使用する各種受発光素子の受発光面と基板表面とのギャップ間以下であると良い。
【0017】
(透明樹脂A)
透明樹脂Aとしては、用いる光信号に対して透明であれば特に制限はなく、後述するクラッド層形成用樹脂やコア層形成用樹脂を用いることができる。形状としては、液状でもフィルム状でも良いが、膜厚を制御したい場合にはフィルム状であることが好ましい。
また、透明樹脂Aからなる透明樹脂層3は、下部クラッド層6やコア層7と兼用しても良い。下部クラッド層6を透明樹脂3と兼用する場合には、基板1と接着力のある下部クラッド層6であれば良く、コア層7と透明樹脂3を兼用する場合には、下部クラッド層6をパターン化し、開口部2の少なくとも一部に開口を設けた状態を維持しておき、その後コア層7を形成することで得ることができる。
【0018】
(透明樹脂B)
透明樹脂Bとしては、用いる光信号に対して透明であり、活性光線によりパターンを形成し得るものを用いることが好ましい。形状としては、液状でもフィルム状でも良いが、膜厚を制御したい場合にはフィルム状であることが好ましい。
また、パターン化可能な材料であれば、下部クラッド層6やコア層7を形成するための樹脂組成物、フィルムを用いても良い。
透明樹脂Aと同一の材料を用いると、接着性が高くなり、後の現像工程等にて剥れることがないためさらに好ましい。
【0019】
(下部クラッド層及び上部クラッド層)
本発明で使用される下部クラッド層6及び上部クラッド層8としては、クラッド層形成用樹脂組成物又はクラッド層形成用樹脂フィルムを用いることができる。
本発明で用いるクラッド層形成用樹脂組成物としては、コア層7より低屈折率で、光又は熱により硬化する樹脂組成物であれば特に限定されず、熱硬化性樹脂組成物や感光性樹脂組成物を好適に使用することができる。クラッド層形成用樹脂に用いる樹脂組成物は、下部クラッド層6及び上部クラッド層8において、該樹脂組成物に含有する成分が同一であっても異なっていてもよく、該樹脂組成物の屈折率が同一であっても異なっていてもよい。
またクラッド層形成用樹脂組成物を透明樹脂Bとして用いる場合には、感光性樹脂組成物であり、活性光線によりパターンを形成し得るものを用いることが肝要である。
【0020】
本発明においては、クラッド層の形成方法は特に限定されず、例えば、クラッド層形成用樹脂組成物の塗布又はクラッド層形成用樹脂フィルムのラミネートにより形成すれば良い。
塗布による場合には、その方法は限定されず、クラッド層形成用樹脂組成物を常法により塗布すれば良い。
また、ラミネートに用いるクラッド層形成用樹脂フィルムは、例えば、クラッド層形成用樹脂組成物を溶媒に溶解して、キャリアフィルムに塗布し、溶媒を除去することにより容易に製造することができる。
【0021】
下部クラッド層6及び上部クラッド層8の厚さに関しては、特に限定するものではないが、乾燥後の厚さで、5〜500μmの範囲が好ましい。5μm以上であると、光の閉じ込めに必要なクラッド厚さが確保でき、500μm以下であると、膜厚を均一に制御することが容易である。以上の観点から、下部クラッド層6及び上部クラッド層8の厚さは、さらに10〜100μmの範囲であることがより好ましい。
【0022】
(コア層)
コア層7としては、コア層形成用樹脂又はコア層形成用樹脂フィルムを用いることができる。
コア層形成用樹脂は、クラッド層6及び8より高屈折率であるように設計され、活性光線によりコアパターンを形成し得るものを用いることが好ましい。パターン化する前のコア層の形成方法は限定されず、前記コア層形成用樹脂組成物を常法により塗布する方法等が挙げられる。
【0023】
コア層形成用樹脂フィルムの厚さについては特に限定されず、乾燥後のコア層の厚さが、通常は10〜100μmとなるように調整される。該フィルムの仕上がり後のコア層7の厚さが10μm以上であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバとの結合において位置合わせトレランスが拡大できるという利点があり、100μm以下であると、光導波路形成後の受発光素子又は光ファイバとの結合において、結合効率が向上するという利点がある。以上の観点から、該フィルムの厚さは、さらに30〜90μmの範囲であることが好ましく、該厚みを得るために適宜フィルム厚みを調整すれば良い。
【0024】
(ミラー部)
基板平面に対して並行方向に設置したコア層を伝搬した光信号を基板垂直方向に光路変換する構造であれば特に限定はなく、45°に切り欠きを形成した空気反射ミラーであっても良いし、切り欠き部に反射金属層を形成した金属反射ミラーであっても良い。
【0025】
(電気配線)
コア形成面側と反対の面(基板の裏面)に各種光学素子を実装する場合、コア形成面側と反対の基板面に電気配線10を設けても良い。
【0026】
(電気配線保護層)
透明樹脂Bは、用いる光信号に対して透明であり、活性光線によりパターンを形成し得るものであり、電気配線保護層11として使用可能であれば、前述の電気配線10を保護する電気配線保護層11として使用できる(図4参照)。このとき柱状透明部材5と電気配線保護層11をパターン化する工程は別工程で行うことが、電気配線保護層11と電気配線10との位置合わせ精度の観点から好ましい。また、基板1が遮光性のある基板である場合、光導波路形成面側(基板の表面側)から露光し電気配線保護層11をパターン化することはできないため、別工程において光導波路形成面側と反対の面側(基板の裏面側)から露光を行わなければならない。
【0027】
以下、本発明の光導波路の製造方法について説明する。
(工程A)
工程Aは、開口部を有する基板の一方の面に透明樹脂Aを積層するとともに、基板の開口部の少なくとも一部に透明樹脂Aを充填し、もう一方の面に透明樹脂Bを積層する工程である。
透明樹脂A及び透明樹脂Bを基板1に積層する方法については、特に制限はなく、透明樹脂A及び透明樹脂Bが液状の場合は、基板1に常法によって塗布すれば良い。透明樹脂A及び透明樹脂Bがフィルム状の場合は、ロールラミネータ、真空加圧ラミネータ、プレス、真空プレス等の各種方法を用いれば良い。積層する順番については特に限定はなく、(a)透明樹脂Aを基板1の表面に積層して透明樹脂層3を形成した後に、透明樹脂Bを基板1の裏面に積層して透明樹脂層4を形成しても良いし、(b)透明樹脂Bを基板1の裏面に積層して透明樹脂層4を形成した後に、透明樹脂Aを基板1の表面に積層して透明樹脂層3を形成しても良いし、(c)透明樹脂Aと透明樹脂Bを同時に積層して透明樹脂層3及び透明樹脂層4を形成しても良い。
(a)の場合、透明樹脂層3と透明樹脂層4との境界面は、透明樹脂層4形成面側の基板1の裏面付近となり、(b)の場合、透明樹脂層3と透明樹脂層4との境界面は、透明樹脂層3形成面側の基板1表面付近となり、(c)の場合、透明樹脂層3と透明樹脂層4との境界面は、開口部5の基板1の厚み方向の中心付近となる。(c)の場合、透明樹脂層3及び透明樹脂層4のそれぞれの樹脂表面の平坦性を確保しやすいため特に好ましい。
【0028】
(工程B)
工程Bは透明樹脂Bを光硬化する工程である。
透明樹脂Bを光硬化する方法としては、透明樹脂層3側から透明樹脂Bを露光すればよく、基板1を遮光部として開口部5を輪郭とした透明樹脂硬化部401と基板1上の透明樹脂未硬化部402を形成できる。なお、本工程Bは、前述の工程Aの透明樹脂Bを積層した後に行われるが、その後、透明樹脂Aを積層しても良い。
【0029】
(工程C)
工程Cは未硬化部の透明樹脂Bを現像除去し、柱状透明部材5を形成する工程である。
透明樹脂Bをパターン化し、柱状透明部材5を形成する方法は、透明樹脂未硬化部402をエッチング除去すれば良く、透明樹脂未硬化部402を除去し得る現像液を用いてエッチングすれば良い。
【0030】
(工程D)
工程Dは、光導波路を形成する工程である。
透明樹脂層3を形成した後の工程D1は、透明樹脂層3上に、下部クラッド層6、コア層7、上部クラッド層8を順次形成すればよい。各層の形成方法としては特に限定はなく、液状のクラッド層形成用樹脂組成物又はコア層形成用樹脂組成物をスピンコート等で塗布しても良いし、フィルム形状のクラッド層形成用樹脂組成物又はコア層形成用樹脂組成物を、ロールラミネータ、真空ラミネータ、プレス、真空プレス等の方法でラミネートしても良い。
透明樹脂層3と下部クラッド層6とを兼用する場合は、透明樹脂層3(下部クラッド層6)を形成した後の工程D2は、工程D1と同様に、上述の方法を用いてコア層7及び上部クラッド層8を順次形成すればよい。
また、透明樹脂層3とコア層7とを兼用する場合は、透明樹脂層3(コア層7)を形成した後の工程D3は、工程D1と同様に、上述の方法を用いて上部クラッド層8を形成すればよい。
【0031】
(工程E)
工程Eは、コア層にミラー部を形成する工程である。
ミラー部9の形成方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、コア層7形成面側から、ダイシングソー等を用いて、コア層7を切削することにより形成することができる。形成するミラー部9は、45°であることが好ましい。
また、ミラー部に蒸着装置を用いて、金等の金属を蒸着し、反射金属層を備えたミラー部としても良い。本工程Eは、前述の工程Dのコア層を積層した後の工程D中に行っても良い。
【0032】
(工程F)
工程Fは、配線保護用の電気配線保護層を形成する工程である。
透明樹脂Bが、電気配線保護用の感光性樹脂組成物であり、透明樹脂層4形成面側の基板裏面に電気配線10が設けられている場合、工程Aの後、又は工程Bの後に透明樹脂層4、電気配線の形成面(基材の裏面)側からパターン露光し、透明樹脂Bの硬化部402からなる電気配線保護層11を形成できる。
また、後の工程Cにおいて、透明樹脂B未硬化部401をエッチング除去して、柱状透明部材5を形成する際に、併せて電気配線保護層11を同時に形成することもできる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
実施例1
[クラッド層形成用樹脂フィルムの作製]
[(A)ベースポリマー;(メタ)アクリルポリマー(A−1)の作製]
撹拌機、冷却管、ガス導入管、滴下ろうと、及び温度計を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46質量部及び乳酸メチル23質量部を秤量し、窒素ガスを導入しながら撹拌を行った。液温を65℃に上昇させ、メチルメタクリレート47質量部、ブチルアクリレート33質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート16質量部、メタクリル酸14質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)3質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート46質量部、及び乳酸メチル23質量部の混合物を3時間かけて滴下後、65℃で3時間撹拌し、さらに95℃で1時間撹拌を続けて、(メタ)アクリルポリマー(A−1)溶液(固形分45質量%)を得た。
【0034】
[重量平均分子量の測定]
(A−1)の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)をGPC(東ソー(株)製「SD−8022」、「DP−8020」、及び「RI−8020」)を用いて測定した結果、3.9×104であった。なお、カラムは日立化成工業(株)製「Gelpack GL−A150−S」及び「Gelpack GL−A160−S」を使用した。
[酸価の測定]
A−1の酸価を測定した結果、79mgKOH/gであった。なお、酸価はA−1溶液を中和するのに要した0.1mol/L水酸化カリウム水溶液量から算出した。このとき、指示薬として添加したフェノールフタレインが無色からピンク色に変色した点を中和点とした。
【0035】
[クラッド層形成用樹脂ワニスの調合]
(A)ベースポリマーとして、前記A−1溶液(固形分45質量%)84質量部(固形分38質量部)、(B)光硬化成分として、ポリエステル骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(新中村化学工業(株)製「U−200AX」)33質量部、及びポリプロピレングリコール骨格を有するウレタン(メタ)アクリレート(新中村化学工業(株)製「UA−4200」)15質量部、(C)熱硬化成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型三量体をメチルエチルケトンオキシムで保護した多官能ブロックイソシアネート溶液(固形分75質量%)(住化バイエルウレタン(株)製「スミジュールBL3175」)20質量部(固形分15質量部)、(D)光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア2959」)1質量部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(チバ・ジャパン(株)製「イルガキュア819」)1質量部、及び希釈用有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート23質量部を攪拌しながら混合した。孔径2μmのポリフロンフィルタ(アドバンテック東洋(株)製「PF020」)を用いて加圧濾過後、減圧脱泡し、クラッド層形成用樹脂ワニスを得た。
上記で得られたクラッド層形成用樹脂ワニスを、支持フィルムであるPETフィルム(東洋紡績(株)製「コスモシャインA4100」、厚み50μm)の非処理面上に、塗工機(マルチコーターTM−MC、(株)ヒラノテクシード製)を用いて塗布し、100℃で20分乾燥後、保護フィルムとして表面離型処理PETフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製「ピューレックスA31」、厚み25μm)を貼付け、クラッド層形成用樹脂フィルムを得た。
このとき樹脂層の厚みは、塗工機のギャップを調節することで任意に調整可能であり、本実施例では使用した下部クラッド層6、透明樹脂層3、透明樹脂層4の厚みについては、実施例中に記載する。また、下部クラッド層6、透明樹脂層3、透明樹脂層4の硬化後の膜厚と塗工後の膜厚は同一であった。本実施例で用いた上部クラッド層形成用樹脂フィルムの膜厚についても実施例中に記載する。実施例中に記載する上部クラッド層形成用樹脂フィルムの膜厚は塗工後の膜厚とする。
【0036】
[コア層形成用樹脂フィルムの作製]
(A)ベースポリマーとして、フェノキシ樹脂(商品名:フェノトートYP−70、東都化成(株)製)26質量部、(B)光重合性化合物として、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(商品名:A−BPEF、新中村化学工業(株)製)36質量部、及びビスフェノールA型エポキシアクリレート(商品名:EA−1020、新中村化学工業(株)製)36質量部、(C)光重合開始剤として、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:イルガキュア819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、及び1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名:イルガキュア2959、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)1質量部、有機溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40質量部を用いたこと以外は上記製造例と同様の方法及び条件でコア層形成用樹脂ワニスBを調合した。その後、上記製造例と同様の方法及び条件で加圧濾過さらに減圧脱泡した。
上記で得られたコア層形成用樹脂ワニスBを、支持フィルムであるPETフィルム(商品名:コスモシャインA1517、東洋紡績(株)製、厚さ:16μm)の非処理面上に、上記製造例と同様な方法で塗布乾燥し、次いで保護フィルムとして離型PETフィルム(商品名:ピューレックスA31、帝人デュポンフィルム(株)、厚さ:25μm)を離型面が樹脂側になるように貼り付け、コア層形成用樹脂フィルムを得た。このとき樹脂層の厚みは、塗工機のギャップを調節することで任意に調整可能であり、本実施例では使用したコア層形成用樹脂フィルム厚みに付いては、実施例中に記載する。実施例中に記載するコア層形成用樹脂フィルムの膜厚は塗工後の膜厚とする。
【0037】
[開口部付き基板の作製]
基板1として150mm×150mmのポリイミドフィルム((ポリイミド;ユーピレックスRN(宇部日東化成製)、厚み;25μmに、ドリル加工にて直径150μmの開口部を2箇所(開口部中心間距離;100mm)形成し、開口部2付き基板1を得た。
【0038】
[柱状透明部材の形成]
上記で得られた25μm厚みのクラッド層形成用樹脂フィルムを透明樹脂A及び透明樹脂Bとして、それぞれ保護フィルムを剥離後、上記で得られた開口部2付き基板1の両面に、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度110℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、ラミネートした(図1(a)参照)。
【0039】
次いで、紫外線露光機((株)オーク製作所製、EXM−1172)にて透明樹脂層3側から、支持フィルムを通して紫外線(波長365nm)を300mJ/cm2照射し、透明樹脂硬化部402と透明樹脂未硬化部401を形成した。なお、このとき、透明樹脂Aは光硬化していた。
その後、両面の支持フィルムを剥離し、現像液(1%炭酸カリウム水溶液)を用いて、透明樹脂未硬化部401をエッチングした。続いて、水洗浄し、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化し、柱状透明部材5を形成した(図1(b)参照)。
【0040】
上記で得られた基板の透明樹脂層3上に、上記で得られた15μm厚みのクラッド層形成用樹脂フィルムを下部クラッド層6として、保護フィルムを剥離後、上記で得られた開口部2付き基板1の両面に、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度110℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、ラミネートした。続いて、上記紫外線露光機を用いて、下部クラッド層6の支持フィルム側から紫外線(波長365nm)を3.0J/cm2照射し、支持フィルムを剥離後、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化し、下部クラッド層6を形成した。
【0041】
次いで、上記で形成した下部クラッド層6上に、上記で得られた50μm厚みのコア層形成用樹脂フィルムをコア層7として、保護フィルを剥離した後に、ロールラミネータ(日立化成テクノプラント(株)製、HLM−1500)を用い圧力0.4MPa、温度50℃、ラミネート速度0.2m/minの条件をラミネートし、次いで上記の真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度70℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着した。
【0042】
続いて、その後、コアパターン幅50μmの開口部を有するネガ型フォトマスクを、該コアパターンが、開口部上に形成されるように位置合わせし、上記紫外線露光機を用いて、支持フィルム側から紫外線(波長365nm)を0.8J/cm2照射し、次いで80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、支持フィルムであるPETフィルムを剥離し、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=8/2、質量比)を用いて、コアパターンをエッチングした。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥し、コアパターンを形成した。
【0043】
得られたコアパターン上から、上記で得られた55μm厚みのクラッド層形成用樹脂フィルムを上部クラッド層8として、保護フィルムを剥離後、真空加圧式ラミネータ((株)名機製作所製、MVLP−500)を用い、500Pa以下に真空引きした後、圧力0.4MPa、温度110℃、加圧時間30秒の条件にて加熱圧着して、ラミネートした。続いて、上記紫外線露光機を用いて、上部クラッド層8の支持フィルム側から紫外線(波長365nm)を3.0J/cm2照射し、支持フィルムを剥離後、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化し、光導波路を形成した(図1(d)参照)。
【0044】
(ミラー部の形成)
得られた光導波路の上部クラッド層8側からダイシングソー(DAC552、(株)ディスコ社製)を用いて45°のミラー部9を開口部2の直上部に形成した(図1(e)参照)。これにより、基板1表面から25μm突出した柱状透明部材5を有するミラー付き光導波路を得た。
【0045】
(ミラー部の光損失の測定)
光導波路のミラー部から光ファイバA(GI50、NA=0.2)を用いて850nmの光信号を入射し、コアパターンを透過して別のミラー部から出力された光信号を、光ファイバB(GI50、NA=0.2)を用いて受光した時の光損失(A)を測定した。このとき、基板1表面と光ファイバA及び光ファイバBとの距離は30μm(柱状透明部材5と光ファイバA及びBとの距離;5μm)とした。次いで、2箇所のミラー部を上記のダイシングソーを用いて切断し、ミラーなしの光導波路を得た。次いで、上記の光ファイバA及び光ファイバBを用い、コアパターンと同軸方向に入射部側に光ファイバAを、出射部側に光ファイバBを調芯し、光損失(B)を測定した。
2箇所のミラー部の合計光損失(C)を以下の式に従って算出した。
(式)(C)=(A)−(B)
得られたミラー付き光導波路の2箇所のミラー部の合計光損失は、2.10dBであった。
【0046】
実施例2
実施例1において、透明樹脂層3を25μmとし、下部クラッド層6として用いた以外は同様の方法で、ミラー付き光導波路を作製した(図2参照)。
得られたミラー付き光導波路の2箇所のミラー部の合計光損失は、2.00dBであった。
【0047】
実施例3
実施例2において、透明樹脂層4として、厚さ15μmのクラッド層形成用樹脂フィルムを用い、下部クラッド層6と兼用した透明樹脂層3及び透明樹脂層4とを露光する際に、開口部の中心(80μm)を遮光部としたネガ型フォトマスクを介して紫外線(波長365nm)を0.3J/cm2照射し、開口部の中心をエッチング除去した後、水洗し、さらに、上記の露光機を用いて下部クラッド層6側から、3.0J/cm2照射し、170℃で1時間加熱乾燥及び硬化した。
次いで下部クラッド層上に保護フィルムを剥離したコア層形成用樹脂フィルムをラミネートし、透明樹脂層4として、基板1の裏面側に上記と同様の25μm厚のコア層形成用樹脂フィルムを、保護フィルムを剥離した後ラミネートした。2箇所の直径200μmの開口部と、該開口部同士を結ぶ50μmの開口部を有するネガ型フォトマスクを介し、直径200μmの開口部と、基板1の開口部2とを位置合わせした後、上記紫外線露光機を用いて、支持フィルム側から紫外線(波長365nm)を0.8J/cm2照射し、次いで80℃で5分間露光後加熱を行った。その後、支持フィルムであるPETフィルムを剥離し、現像液(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/N,N−ジメチルアセトアミド=8/2、質量比)を用いて、コアパターンをエッチングした。続いて、洗浄液(イソプロパノール)を用いて洗浄し、100℃で10分間加熱乾燥し、コアパターンを形成した。
その後の工程は、実施例2と同様に行い、ミラー付き光導波路を得た(図3参照)。
得られたミラー付き光導波路の2箇所のミラー部の合計光損失は、1.90dBであった。
【0048】
実施例4
裏面側に電気配線を有する基板1を用い、実施例2と同様に、透明樹脂Bを露光した後に、透明樹脂B側から、該電気配線保護層パターンを有したネガ型フォトマスクを介して、紫外線(波長365nm)を0.3J/cm2照射し、透明樹脂Bを再度パターン露光した以外は同様の方法で、ミラー付き光導波路を作製した(図4参照)。
得られたミラー付き光導波路の2箇所のミラー部の合計光損失は、2.10dBであった。
【0049】
比較例1
実施例1において、基板1の開口部2を形成せず、透明樹脂層4を形成しなかった以外は同様の方法でミラー付き光導波路を作製した。
得られたミラー付き光導波路の2箇所のミラー部の合計光損失は、2.89dBであった。なお、このときの光ファイバA及び光ファイバBと基板1表面との距離は30μmであった。
【0050】
比較例2
実施例2において、基板1の開口部2を形成せず、透明樹脂層4を形成しなかった以外は同様の方法でミラー付き光導波路を作製した。
得られたミラー付き光導波路の2箇所のミラー部の合計光損失は、2.85dBであった。なお、このときの光ファイバA及び光ファイバBと基板1表面との距離は30μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の光導波路は、基板の種類によらず光信号の伝達が可能で、かつ光学素子と光導波路基板との間の空間ギャップが小さいため、ミラー部から反射された光信号の広がりを押さえ低損失で信号伝搬が可能である。したがって、本発明の光導波路は、各種光学装置、光インタコネクション等の幅広い分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1.基板
2.開口部
3.透明樹脂層
4.透明樹脂層
401.透明樹脂未硬化部
402.透明樹脂硬化部
5.柱状透明部材
6.下部クラッド層
7.コア層
8.上部クラッド層
9.ミラー部
10.電気配線
11.電気配線保護層
図1
図2
図3
図4