(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6069988
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びこれを含む液晶表示パネル用シール剤
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20170123BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20170123BHJP
C09J 131/04 20060101ALI20170123BHJP
C09J 129/04 20060101ALI20170123BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
C08F299/00
C09J123/08
C09J131/04
C09J129/04
G02F1/1339 505
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-200169(P2012-200169)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55218(P2014-55218A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹本 有光
【審査官】
藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−092946(JP,A)
【文献】
特開昭48−000689(JP,A)
【文献】
特許第5966735(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/00
C08F 8/30
C09J 123/08
C09J 129/04
C09J 131/04
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン残基単位75.4〜98.3モル%、酢酸ビニル残基単位0.3〜19.6モル%、ビニルアルコール残基単位0〜24.2モル%及び下記一般式(1)で示されるアクリロイル基を有する残基単位0.1〜20.0モル%を含み、JIS K6924−1に準拠し測定したMFRが5〜40000g/10分であるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)、ラジカル重合型光開始剤(B)並びにシランカップリング剤(C)を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【化1】
(ここで、R
1は水素またはメチル基を示し、R
2は炭素数2以上の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A)80.0〜99.8重量部、ラジカル重合型光開始剤(B)0.1〜10.0重量部及びシランカップリング剤(C)0.1〜10.0重量部(但し、該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とラジカル重合型光開始剤とシランカップリング剤の合計は100重量部)を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする接着剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする液晶表示パネル用シール剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関するものである。詳しくは、液晶を封止するシール剤として好適な樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの組み立ては、従来は真空注入法と呼ばれる手法で、熱硬化性樹脂を液晶表示用のガラス基板に塗布した後、対向するガラス基板を貼り合せて加熱圧接させ、2枚のガラス基板で挟まれた空間に液晶封入用セルを形成し、この2枚のガラス基板を真空下に置き、前記液晶封入用セルに液晶を注入していた。しかし、この手法では熱硬化性樹脂組成物は、硬化させるために120℃〜150℃の温度で数時間の時間を要する。さらに、前述の液晶注入工程は長い時間を要することから、従来の液晶表示パネルの製造方法は生産性に問題があった。
【0003】
これに対して、液晶滴下工法と呼ばれる液晶表示パネルの製造方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。この方法は、1)光硬化性のシール剤を液晶表示パネルの基板上に常温下で塗布し、液晶を充填するための枠を形成し、2)前記枠内に液晶の微小滴を滴下し、3)シール剤が未硬化の状態で2枚の基板を高真空下で重ね合わせ、4)紫外線等を照射してシール剤の仮硬化を行い、5)加熱による後硬化を行う方法である。しかし、この工法は、シール剤が液晶に触れた状態で貼り合せてシール剤を硬化する手法であり、シール剤が液晶へ溶出し汚染することにより、表示ムラが発生するなどの様々な問題点がある。
【0004】
そこで、液晶の滴下前に、液晶と接触するシール剤を硬化させる方法(例えば特許文献2を参照)等が提案されている。また、シール剤による液晶への汚染を低減するために、液晶との相溶性が低い特定の分子構造を有するシール剤を使用する方法(例えば特許文献3を参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−214626号公報
【特許文献2】特開平11−109388号公報
【特許文献3】特開2001−133794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の方法は、液晶層を加圧し所望のセルギャップする前にシール剤が硬化してしまうため、シール剤が潰れにくく、所望のセルギャップを確保できないといった問題がある。また、特許文献3に記載の方法は、ある特定の原料を用いて配合技術を駆使したものであり、シール剤による液晶の汚染は低減するものの、必ずしも満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のアクリロイル基を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を使用することにより、液晶への汚染を低減した上で、ガラス基板との接着性及び耐熱接着性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、エチレン残基単位75.4〜98.3モル%、酢酸ビニル残基単位0.3〜19.6モル%、ビニルアルコール残基単位0〜24.2モル%及び所定の一般式で示されるアクリロイル基を有する残基単位0.1〜20.0モル%を含み、JIS K6924−1に準拠し測定したMFRが5〜40000g/10分であるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ラジカル重合型光開始剤並びにシランカップリング剤を含むことを特徴とする樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を含む接着剤及び液晶表示パネル用シール剤である。
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0009】
本発明の樹脂組成物は、エチレン残基単位75.4〜98.3モル%、酢酸ビニル残基単位0.3〜19.6モル%、ビニルアルコール残基単位0〜24.2モル%及び下記一般式(1)で示されるアクリロイル基を有する残基単位0.1〜20.0モル%を含み、JIS K6924−1に準拠し測定したMFRが5〜40000g/10分であるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ラジカル重合型光開始剤並びにシランカップリング剤を含むものである。
【0010】
【化1】
(ここで、R
1は水素またはメチル基を示し、R
2は炭素数2以上の炭化水素基を示す。)
本発明の樹脂組成物に含まれるアクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、アクリロイル基を含有しているエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物にアクリロイル基を含有させることで得られる。
【0011】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のエチレン残基単位は、接着性に優れることから、75.4〜98.3モル%であり、接着性がさらに優れることから、80.0〜98.0モル%が好ましい。
【0012】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基単位は、接着性に優れることから、0.3〜19.6モル%の範囲であり、接着性がさらに優れることから、0.8〜10.0モル%が好ましい。
【0013】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のビニルアルコール残基単位は、接着性に優れることから、0〜24.2モル%の範囲であり、接着性がさらに優れることから、0.5〜16.0モル%が好ましい。
【0014】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアクリロイル基を有する残基単位は、耐熱性と経済性のバランスに優れることから、0.1〜20.0モル%の範囲であり、耐熱性と経済性のバランスにさらに優れることから、0.5〜15.0モル%が好ましい。
【0015】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の、JIS K6924−1に準拠して測定したメルトマスフローレート(MFR)は、作業性に優れることから、5〜40000g/10分であり、10〜3000g/10分であることが好ましい。5g/10分未満の場合は、溶融混練する際に負荷が高くなり過ぎるおそれがあり、40000g/10分を超える場合は、機械強度が低下するおそれがある。
【0016】
前記一般式(1)で示されるアクリロイル基のR
2は炭素数2以上の炭化水素基を示し、例えば、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、i−ノニル基、デシル基、ラウリル基、トリデシル基、ステアリル基等を挙げることができる。
【0017】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の製造方法としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物をトルエン、キシレン等の溶媒に溶解させ、アクリロイル基含有イソシアネートと反応させることにより、得ることができる。
【0018】
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の製造方法としては、例えば、高圧法、乳化重合法等の公知の製造方法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体をメタノール、エタノールなどの低沸点アルコールと水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートなどのアルカリからなる系で処理するケン化を施すことにより製造することができ、ポリマー鎖中にエチレン残基成分、酢酸ビニル残基成分及びビニルアルコール残基成分を有する。また、該エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は市販品であっても良い。
【0019】
アクリロイル基含有イソシアネート化合物としては、例えば、アクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物等を挙げることができ、市販されているアクリロイルオキシアルキルイソシアネート化合物としては、具体的に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズAOI)、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズBEI)等を挙げることができる。
【0020】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基含量及びビニルアルコール残基含量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基含量及びビニルアルコール残基含量に依存する。エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物の酢酸ビニル残基含量及びビニルアルコール残基含量は、例えば、重合時のガス中の酢酸ビニル濃度及びケン化反応時のアルカリの添加量により調整することが可能である。即ち、重合時のガス中の酢酸ビニル濃度が高ければ、酢酸ビニル残基含量の高いものが得られ、酢酸ビニル濃度が低ければ、酢酸ビニル残基含量の低いものが得られる。また、ケン化反応時のアルカリの添加量が酢酸ビニル残基含量に対して等モル以上のアルカリを添加すれば、ビニルアルコール残基含量の高いものが得られ、アルカリの添加量が少なければ、酢酸ビニル残基含量が高く、ビニルアルコール残基含量の低いものが得られる。
【0021】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のアクリロイル基を有する残基成分は、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とアクリロイル基含有イソシアネート化合物を反応する際のアクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量により調整することが可能である。即ち、反応時のアクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量が多ければ、アクリロイル基含量の高いものが得られ、アクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量が少なければ、アクリロイル基含量の低いものが得られる。
【0022】
該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のMFRは、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のMFRに依存し、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物のMFRは、例えば、重合時のガス中の連鎖移動剤の濃度により調整することが可能であり、連鎖移動剤の濃度が高ければMFRの高いものが得られ、連鎖移動剤の濃度が低ければ、MFRの低いものが得られる。
【0023】
その連鎖移動剤としては、例えば、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどのオレフィン類、エタン、プロパン、ブタンなどのパラフィン類、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチルなどのカルボニル化合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素等を挙げることができる。
【0024】
本発明の樹脂組成物に含まれるラジカル重合型光開始剤とは、可視光線や紫外線などの照射によりラジカル種を発生する化合物であり、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル) ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマーなどのアセトフェノン類; ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない
本発明の樹脂組成物に含まれるシランカップリング剤としては、有機物とケイ素から構成される化合物であり、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。これらの中でも、接着性に優れることから、アクリル、メタクリル、アミド等の官能基を有するアルコキシシラン類が好ましく、メタクリル基を有するアルコキシシラン類がさらに好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、硬化速度と接着性と経済性に優れるため、該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物80.0〜99.8重量部、ラジカル重合型光開始剤0.1〜10.0重量部及びシランカップリング剤0.1〜10.0重量部(但し、該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物とラジカル重合型光開始剤とシランカップリング剤の合計は100重量部)を含むことが好ましい。
【0026】
ラジカル重合型光開始剤は、硬化速度と経済性に優れるため、0.1〜10.0重量部が好ましく、0.3〜5.0重量部がさらに好ましい。
【0027】
シランカップリング剤は、接着性と経済性に優れるため、0.1〜10.0重量部が好ましく、0.3〜5.0重量部がさらに好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、例えば、該アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ラジカル重合型光開始剤及びシランカップリング剤をドライブレンド、溶液混合、溶融混合等の混合方法により製造すること等が挙げることができ、中でも効率よく混合できることから溶融混合が好ましい。
【0029】
溶融混合には、例えば、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、インターナルミキサー、インテンシブミキサー、ロール成形機、単軸押出機、二軸押出機等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用可能である。
【0030】
本発明の樹脂組成物は、接着剤として用いることができ、本発明の効果を損なわない範囲で各種ポリマー、各種添加剤を含有しても良い。添加剤としては、例えば、染料、顔料、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、発泡剤、滑剤、結晶核剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、難燃助剤等を挙げることができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物を含む接着剤は、ガラス、金属、紙、合板、布、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム等の接着等に有用である。
【0032】
本発明の樹脂組成物は、液体、液晶を封止するシール剤、特に液晶表示パネル用シール剤として好ましく用いられるが、封止される化合物又は樹脂組成物の種類に制限されず封止することができる。液晶表示パネル用シール剤として使用する場合、均一なセルギャップを得るためにシール剤にスペーサー材を配合してもよい。スペーサーとしては、例えば、グラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等を挙げることができる。その直径は、目的に応じ異なるが、例えば、2〜10μmが好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物を含む接着剤や液晶表示パネル用シール剤を使用する方法には、例えば、本発明の樹脂組成物をホットメルト塗布して被接着物に融着し、UV照射を行い硬化させる方法等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の樹脂組成物は、優れたガラス基板との接着性や耐熱接着性を示すなどの特長を有し、大型、小型問わず液晶表示パネル用のシール剤として好適である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって、本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。なお、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0036】
<ガラス接着強度(ガラス基板との接着性)の評価方法>
ガラス基板(サイズ25mm×50mm、厚さ0.7mm)上に、ホットメルトガンを用いて樹脂組成物を塗工温度120℃で微少量塗工し、更に対になるガラス基板を貼り合せた後、光量3,000mJ/cm
2の条件で紫外線を照射した。続いて、120℃×1時間の条件でアニールし、接着性評価用の試験片を得た。試験片にアルミニウム製の支持体を取り付け、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロンRTE−1210)を用いて、剥離速度5mm/分で剥離した際の剪断剥離強度をガラス接着強度(ガラス基板との接着性)とした。
【0037】
<耐熱接着性>
ガラス接着強度用の試験片を温度120℃に設定したオーブン内に吊り下げ、3時間放置した後の試験片の状態を確認することにより、耐熱接着性の指標とした。
【0038】
ガラス基板が剥がれ落ちず、形状を保っていたものを○、ガラス基板が剥がれ落ちていたものを×とした。
【0039】
製造例1<アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)の製造>
エチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー株式会社製、ウルトラセン(登録商標)685、酢酸ビニル含量14重量%、MFR=2500g/10分)をメタノール溶媒中、苛性濃度0.2mol/Lの条件下で70℃、6時間反応することによりエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(D1)を得た。得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物100gをトルエン500mLに溶解し、アクリロイル基含有イソシアネート化合物(昭和電工株式会社製、カレンズMOI)を12g添加し、65℃、6時間撹拌した。生成物をメタノール中に沈殿させ、固液分離、洗浄、真空乾燥することにより、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を製造した(エチレン残基単位:95.0モル%、酢酸ビニル残基単位:3.0モル%、ビニルアルコール残基単位:0.5モル%、アクリロイル基を有する残基単位:1.5モル%)。
【0040】
製造例2<アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)の製造>
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社製、ウルトラセン(登録商標)760(酢酸ビニル含量42重量%、MFR=70g/10分)を使用し、ケン化反応条件を苛性濃度1.2mol/Lの条件下で50℃、12時間とし、アクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量を60gとした以外は、製造例1と同様の方法で、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)を製造した(エチレン残基単位:80.9モル%、酢酸ビニル残基単位:1.9モル%、ビニルアルコール残基単位:4.0モル%、アクリロイル基を有する残基単位:13.2モル%)。
【0041】
製造例3<アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)の製造>
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社製、ウルトラセン(登録商標)7A55A(酢酸ビニル含量14重量%、MFR=30000g/10分)を使用し、ケン化反応条件を苛性濃度0.5mol/Lの条件下で80℃、12時間とし、アクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量を10gとした以外は、製造例1と同様の方法で、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)を製造した(エチレン残基単位:95.0モル%、酢酸ビニル残基単位:0.3モル%、ビニルアルコール残基単位:2.7モル%、アクリロイル基を有する残基単位:2.0モル%)。
【0042】
製造例4<アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)の製造>
エチレン−酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社製、ウルトラセン(登録商標)530(酢酸ビニル含量6重量%、MFR=75g/10分)を使用し、ケン化反応条件を苛性濃度0.2mol/Lの条件下で90℃、6時間とし、アクリロイル基含有イソシアネート化合物の添加量を15gとした以外は、製造例1と同様の方法で、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)を製造した(エチレン残基単位:98.0モル%、酢酸ビニル残基単位:1.2モル%、ビニルアルコール残基単位:0モル%、アクリロイル基を有する残基単位:0.8モル%)。
【0043】
実施例1
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)を98.0重量部、ラジカル重合型光開始剤(B1)としてチバジャパン株式会社製、イルガキュア184を1.0重量部、シランカップリング剤(C1)として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:信越シリコーンKBM−403)を1.0重量部の比率で合計量70gを内容量100ccのミキサー(ラボプラストミル、東洋精機製作所製)に充填し、120℃で10分間溶融混合することにより、樹脂組成物を得た。
【0044】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0045】
【表1】
実施例2
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)98.0重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A2)98.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0046】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0047】
実施例3
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)98.0重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A3)98.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0048】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0049】
実施例4
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)98.0重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)98.5重量部、シランカップリング剤(C1)1.0重量部の代わりにシランカップリング剤(C1)0.5重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0050】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0051】
実施例5
シランカップリング剤(C1)1.0重量部の代わりにシランカップリング剤(C2)として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:信越シリコーンKBM−503)を1.0重量部使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0052】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0053】
実施例6
シランカップリング剤(C1)1.0重量部の代わりにシランカップリング剤(C3)として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名:信越シリコーンKBM−5103)を1.0重量部使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0054】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0055】
実施例7
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)98.0重量部の代わりに、アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A4)98.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0056】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0057】
実施例8
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)85.0重量部、ラジカル重合型光開始剤(B1)5.0重量部、シランカップリング剤(C1)10.0重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0058】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、優れたガラス接着強度及び耐熱接着性を示した。
【0059】
比較例1
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99.0重量部、ラジカル重合型光開始剤(B1)1.0重量部、シランカップリング剤(C1)0重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0060】
得られた樹脂組成物を用いて、ガラス接着強度及び耐熱接着性の評価を行った。その結果を表1に示す。表1から、得られた樹脂組成物は、ガラス接着強度及び耐熱接着性に劣るものであった。
【0061】
比較例2
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)98.0重量部の代わりに、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(D1)98.0重量部を使用した以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0062】
得られた樹脂組成物は、UV照射により硬化せず評価用の試験片を得ることができなかった。
【0063】
比較例3
アクリロイル基含有エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(A1)99.0重量部、シランカップリング剤(C1)1.0重量部とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0064】
得られた樹脂組成物は、UV照射により硬化せず評価用の試験片を得ることができなかった。