(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記有機無機混成ペロブスカイト化合物AおよびCが、それぞれ一般式(1)、一般式(4)に示す有機無機混成ペロブスカイト化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載した固体接合型光電変換素子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願発明の固体接合型光電変換素子の構造について説明する。
【0020】
1.固体接合型光電変換素子の構造
図1は、本願発明の固体接合型光電変換素子の構造の1例を示す模式図である。固体接合型光電変換素子1は、透明基板21上に透明導電層22を形成した一対の透明電極基板2の間に光電変換層3を有する。光電変換層3は、第1半導体層4と第2層5から構成されている。第1半導体層4は、多孔質半導体微粒子層41表面に有機無機混成ペロブスカイト化合物42が被膜または吸着体として形成されている。第2層5は、有機無機混成ペロブスカイト化合物および/または無機ペロブスカイト化合物を含むカーボンナノチューブ層として形成されている。
図2は、電極基板2と光電変換層3との間にバッファ層6が設けられている場合の本願発明の固体接合型光電変換素子の構造の1例を示す模式図である。
図3は、第1半導体層4が、多孔質半導体微粒子層41表面に有機無機混成ペロブスカイト化合物42の吸着体が形成されている場合の本願発明の固体接合型光電変換素子の構造の1例を示す模式図である。
以下、透明電極基板2、光電変換層3、バッファ層6の順で説明する。
【0021】
[1]透明電極基板
本願発明の透明電極基板は、透明基板上に透明導電層を形成したものである。
(1)透明基板
本願発明に用いる透明基板はガラス及びプラスチック基板が好ましい。プラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性及びガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好適である。好適な材料としては、例えば、ポリエステル類(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、スチレン類(例、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)など)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(商品名アートンなど)及び脂環式ポリオレフィン(商品名ゼオノアなど)などが用いられる。なかでも、化学的安定性とコストの点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、脂環式ポリオレフィンが特に好ましい。なお、これらのプラスチック基板の構造やその組成においては特に限定されず、本願発明の固体接合型光電変換素子を構成するに値するものであれば、利用することができる。また、ガラス基板材料としては、可視光線透過率80%を超えるものであればく、例えば、白板ガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラス等からなる無機質製基板がある。
【0022】
プラスチック基板の耐熱性は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び、線熱膨張係数が40ppm/℃以下の少なくともいずれかの物性を満たすことが好ましい。なお、プラスチック基板のTg及び線膨張係数は、JIS K 7121に記載のプラスチックの転移温度測定方法、及び、JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定する。プラスチックフィルムのTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような耐熱性に優れる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)、ポリイミド等が挙げられ(括弧内はTgを示す)、これらは本願発明における基材として好適である。なかでも、特に透明性が求められる用途には、脂環式ポレオレフィンを使用することが好ましい。
【0023】
(2)透明導電層
本願発明の透明導電層の素材としては、導電性金属類(例、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、チタン)、導電性炭素(カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ)、導電性金属酸化物(例、酸化スズ、酸化亜鉛)または導電性複合金属酸化物(例、インジウム‐スズ酸化物、インジウム−亜鉛酸化物)がある。高い光学的透明性を有するという点で、導電性金属酸化物、導電性複合金属酸化物が好ましく、耐熱性と化学安定性に優れるという点で、インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)やインジウム‐亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。その素材においては、組成内容は他の素材との混合でもよく、また形態なども限定されるものではない。また導電性層の形成においても、その方法は限定されるものではなく、スパッタ法、蒸着法さらには分散物を塗布する方法などが選定できる。透明基板上に透明電極層を設けた電極基板の光透過率(測定波長:500nm)は、60%以上が好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上が最も好ましく、特には85%以上が好ましい。透明電極基板の導電性と透明性は、透明導電層の形成方法を最適化することで、例えば、蒸着時間、分散液塗布量などを最適化することで、両立させることができる。なお、本願発明では、一対の電極基板のいずれか一方を透明電極基板でないものとすることもできる。
【0024】
本願発明においては、低い表面抵抗値を達成するために、導電層に金属を用いることができる。金属メッシュ構造からなる透明導電性層を形成することにより高い透明性も達成できる。低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケルなど)を用いて金属メッシュ構造からなる透明導電性層を形成することが好ましい。この場合には、導電層には集電のための補助リードをパターニングなどにより配置させることができる。補助リードも導電層と同様に低抵抗の金属材料(例、銅、銀、アルミニウム、白金、金、チタン、ニッケルなど)によって形成される。補助リードを含めた表面の抵抗値は本発明の目的に有ったものであれば特に限定されない。ここで補助リードのパターンは透明基板に蒸着、スパッタリングなどにより形成し、さらにその上に酸化スズ、ITO膜、IZO膜などからなる透明導電層を設けることも好ましい。
【0025】
[2]光電変換層
本願発明の光電変換層は、一対の透明電極基板の間に形成されるものであり、本願発明の固体接合型光電変換素子の電荷分離に寄与して、生じた電子および正孔を各々反対方向の電極に向かって輸送する機能を有する。本願発明の光電変換層は、第1半導体層と第2半導体層から構成されている。
【0026】
(A)第1半導体層
本願発明の第1半導体層は、n型半導体特性に近い機能を有するものであり、透明電極基板上に形成した多孔質半導体微粒子層表面に、有機無機混成ペロブスカイト化合物Aを被膜形成または吸着させたものである。
【0027】
(1)多孔質半導体微粒子層
本願発明の多孔質半導体微粒子層は、ナノサイズの細孔が内部に網目状に形成されたいわゆるメソポーラスな半導体層からなっている。多孔質半導体微粒子層を形成する半導体微粒子としては、金属の酸化物及び金属カルコゲニドを使用することができる。金属酸化物及び金属カルコゲニドを構成する金属元素としては、例えば、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、アルミニウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、亜鉛、鉛、アンチモン、ビスマス、カドミウム、鉛などが挙げられる。以下に説明する。
【0028】
(2)半導体微粒子
本願発明の半導体微粒子は、公知の方法を用いて製造することができる。製造方法としては、例えば「ゾル−ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)に記載されているゾル−ゲル法や、金属塩化物を無機酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法や、金属化合物を気相中、高温で熱分解して超微粒子とする気相噴霧熱分解法などにより調製できる。これらの方法によって作る二酸化チタン(TiO2)の超微粒子やナノ粒子については、「微粒子工学体系第2巻(応用技術)」柳田博明監修(2002年)に解説されている。金属酸化物半導体材料としては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ストロンチウム、アルミニウム、インジウム、セリウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、カドミウム、鉛、アンチモン、ビスマスの酸化物がある。半導体材料としては、n型の無機半導体材料がある。具体的には、TiO
2、ZnO、Nb
2O
3、SnO
2、WO
3、Al
2O
3、Si、CdS、CdSe、V
2O
5、ZnS、ZnSe、KTaO
3、FeS
2、PbSなどが好ましく、TiO
2、ZnO、Nb
2O
3、SnO
2、WO
3、Al
2O
3がより好ましく、二酸化チタン(TiO
2)が特に好ましい。
【0029】
二酸化チタンの製造方法は、四塩化チタンや硫酸チタニルを加水分解する液相法と四塩化チタンと酸素または酸素含有ガスとを混合燃焼する気相法とがある。液相法はアナターゼを主相として得ることができるが、ゾルまたはスラリー状となり、粉末として使用するためには乾燥が必要であるが、乾燥により凝集(二次粒子化)が進むという問題がある。一方、気相法は、溶媒を使用しないため液相法に比べ分散性に優れ、合成時の温度が高く、結晶性に優れるという特徴がある。
ところで、二酸化チタンナノ粒子の結晶形には、アナターゼ型、ブルッカイト型、ルチル型がある。酸化チタンを気相法により製造するとき、最も低温で生成し安定な酸化チタンはアナターゼ型であり、熱処理を加えるに従い、ブルッカイト型、ルチル型へと変換する。結晶構造はX線回折法による回折パターンの測定や透過型電子顕微鏡観察による結晶格子像の検出により判断できる。また、二酸化チタンナノ粒子の平均粒子径は、レーザー光散乱法による光相関法や走査型電子顕微鏡観察法による粒径分布測定から算出できる。
【0030】
本願発明に用いる一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの結晶性二酸化チタンナノ粒子は、気相法により得られたものであり、ルチル型結晶とアナターゼ型結晶の混合物である。二酸化チタンナノ粒子の形態は、無定形、球形、多面体、繊維状、ナノチューブ状などの種々の形態であってもよいが、多面体またはナノチューブ状の形態が好ましく、多面体の形態がより好ましい。分散安定性の観点から半導体微粒子分散液に含まれる固形分濃度は0.1〜25wt%であり、0.5〜20wt%が好ましく、0.5〜15wt%がより好ましい。
【0031】
一方、本願発明に用いる一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの金属酸化物半導体ナノ粒子は、液相法により得られたブルッカイト型結晶を含む二酸化チタンナノ粒子を分散した酸性ゾル水溶液として調製されている。ブルッカイト型の酸化チタンは、色素との結合性に優れ、ルチル型やアナターゼ型酸化チタンに比べて高い光電変換効率が得られるからである。液相法により製造したブルッカイト型酸化チタン、特に四塩化チタンまたは三塩化チタンの加水分解により製造されたブルッカイト型酸化チタンが好ましい。多孔質半導体微粒子層を形成する半導体ナノ粒子分散液として使用するため分散ゾルの状態で問題がなく、分散状態も安定しており塗膜性に優れるからである。分散性を高めるため水媒体は酸性に調製してあり、pHは1〜6、好ましくは、pHは3〜5である。分散安定性の観点から半導体微粒子分散液に含まれる固形分濃度は1〜15wt%であり、2〜12wt%が好ましく、2〜10wt%がより好ましい。
【0032】
(3)半導体微粒子分散液
本願発明は、半導体微粒子分散液を透明電極基板上に塗布し、加熱処理して多孔質半導体微粒子層を形成する。本願発明においてプラスチック基板を用いる場合は、低温製膜法を採用するため、分散液の製膜性及びレべリング性を高める目的で添加される樹脂やラテックス等のバインダー材料を含まない分散液組成が好ましい。本願発明の半導体微粒子分散液は、半導体微粒子を水と炭素数5以下のアルコールの混合物からなる溶媒に分散させたものであり、粘性のある乳白色の液体である。
【0033】
本願発明の半導体微粒子分散液に使用する溶媒は、エタノールを主成分とする親水性有機溶媒と水との混合溶媒である。親水性溶媒として、他の炭素数3〜5のアルコールを選択することができ、t−ブタノール、2−ブタノールなどを添加することができる。本願発明の半導体微粒子分散液には、前記アルコールに加えて水が分散溶媒として用いられる。これは、半導体微粒子の分散安定性を維持し、分散液の粘度を適性に維持する目的で添加するものである。
【0034】
本願発明では、分散液中に一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの半導体微粒子と一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの半導体微粒子の両方を含ませることができる。一次粒子の平均粒径の範囲が重複しない半導体微粒子を単純に混合することで、比表面積が大きい、多孔質構造の多孔質半導体微粒子層を容易に製造できる。したがって、特開2002−324591号公報に提案されているような金属酸化物半導体ナノ粒子と溶媒を必須成分とする金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を、分散液組成を連続または不連続に変化させつつ噴霧する必要はない。また、平均粒径が大きく異なる粒子の混合により、乾燥時の体積収縮歪を緩和できる。さらに、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの半導体微粒子の脱水縮合により、乾燥後形成される多孔質半導体微粒子層の構造がしっかりしたものになる。
【0035】
本願発明の一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの半導体微粒子を溶媒に分散させる方法には、ペイントコンディショナー、ホモジナイザー、超音波攪拌装置などが用いられ、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーが好適に用いられる。一次粒子の平均粒子径が40〜70nmの半導体微粒子を溶媒に分散させた後、一次粒子の平均粒子径が10〜30nmの半導体微粒子を分散した酸性ゾル水溶液を添加して、半導体微粒子分散液を調製する。分散安定性と塗膜形成性の観点から分散液に含まれる半導体微粒子全体の固形分濃度は5〜30wt%であり、8〜25wt%が好ましく、8〜20wt%がより好ましい。
【0036】
金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の塗布方法としては、公知の方法、例えば、スクリーン印刷法、ドロップキャスト法、スピンコート法、エアスプレイ法等を用いることができる。形成される多孔質半導体微粒子層の均一性の観点からは、噴霧装置を用いたエアスプレイ法が好ましい。
【0037】
本願発明の金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の噴霧に用いる噴霧装置は、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を200μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μ以下の霧状にすることができる装置を用いる。例えば、エアスプレイ装置、インクジェット装置、超音波噴霧装置がある。ここで、エアスプレイ装置とは、圧縮空気の膨張で生じる気圧差を利用して、液体を一定方向に飛散させる装置をいう。一定幅の塗膜を均一に形成する観点からは、二流体スリットノズルを用いることが好ましい。インクジェット装置とは、噴霧する液体を満たした微細ノズルを体積収縮または昇温することにより液体を微細な粒として放出する装置をいう。超音波噴霧装置とは、液体に超音波を照射することにより、液体を霧状に飛散させる装置をいう。これらの装置は、製造する多孔質構造の多孔質半導体微粒子層の大きさ、言い換えれば、光電極のサイズ、あるいは、分散液の固形分濃度により任意に選択できる。
【0038】
透明電極基板上に金属酸化物半導体ナノ粒子分散液の噴霧により形成される多孔質半導体微粒子層の厚みは、透過光の吸収損失を考慮して、30μm未満が好ましく、20μ未満がより好ましい。形成される多孔質半導体微粒子層の空孔率(膜内を空孔が占める体積の割合)は、50〜85%であることが好ましく、65〜85%でることがより好ましい。加熱処理温度は、導電性基板の耐熱性の範囲内、例えば、透明導電性基板がプラスチック基板である場合は、低温製膜法(例、200℃以下、好ましくは150℃以下)で多孔質半導体微粒子層を形成することができる。
【0039】
(4)有機無機混成ペロブスカイト化合物A
有機無機混成ペロブスカイト化合物とは、単一の分子スケール・コンポジット内に有機・無機両成分に特徴的な望ましい物理特性を組み合わせた(有機無機混成の)ペロブスカイト化合物をいう。ペロブスカイトの基本的構造形態は、ABX
3構造であり、頂点共有BX
6八面体の三次元ネットワークを有する。ABX
3構造のB成分は、Xアニオンの八面体配位をとることができる金属カチオンである。Aカチオンは、BX
6八面体間の12の配位孔に位置し、一般に無機カチオンである。Aを無機カチオンから有機カチオンに置換することにより、有機無機混成ペロブスカイト化合物を形成する。
【0040】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aは、下記一般式(1)または(2)のいずれかに示す化合物であり、特に、一般式(1)の化合物が好ましい。
CH
3NH
3M
1X
3 (1)
(式中、M
1は、2価の金属イオンであり、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
(R
1NH
3)
2M
1X
4 (2)
(式中、R
1は炭素数2以上のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基であり、M
1は、2価の金属イオンであり、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
【0041】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aにおける無機枠組みは、頂点を共有する金属ハロゲン化物八面体の層を有する。陽イオン性有機層からの正の電荷と平衡をとるため、陰イオン性金属ハロゲン化物層(例えば、M
1X
32-,M
1X
42-)は一般に2価の金属である。本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成する金属は、具体的には、M
1(例、Cu
2+,Ni
2+,Mn
2+,Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Eu
2+)である。
【0042】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成するハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはこれらの組合せである。このハロゲン化物は、臭化物、ヨウ化物が好ましい。
【0043】
本願発明の上記一般式(2)のR
1としては、炭素数2〜40の置換または未置換のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルキル鎖(好ましくは炭素数2〜30であり、より好ましくは炭素数2〜20であり、炭素数2〜18がもっとも好ましい)。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコサニル基、ドコサニル基、トリアコンタニル基、テトラアコンタニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0044】
炭素数2〜40の置換または未置換のアラルキル基としては、アリール基で置換されている低級アルキル基を意味し、アルキル部が直鎖状または分岐鎖状で、好ましい炭素数が1〜5、より好ましくは1であり、アリール部が好ましい炭素数が6〜10、より好ましくは6〜8である。具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0045】
アルケニル基は、好ましくは炭素数3〜30であり、より好ましくは炭素数3〜20であり、炭素数3〜12が最も好ましい。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、オレイル基、アリル基等が挙げられる。アルキニル基としては、アセチレニル、プロパルギル基、3−ペンチニル基、2−ヘキシルニル、2−デカニルを挙げることが出来る。
【0046】
アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20のフェニル基または炭素数10〜24のナフチル基であり、更に好ましくは炭素数6〜12のフェニル基または炭素数10〜16のナフチル基である。例えばフェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。一般式(1)において、複素環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0047】
芳香族複素環基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0048】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの具体例としては、CH
3NH
3PbI
3、CH
3NH
3PbBr
3、(CH
3(CH
2)
nCHCH
3NH
3)
2PbI
4[n=5〜8]、(C
6H
5C
2H
4NH
3)
2PbBr
4がある。
【0049】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aは、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの被膜あるいは吸着体は、ペロブスカイト化合物Aを有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる。
【0050】
(5)有機無機混成ペロブスカイトAの溶液
本願発明に用いる有機無機混成ペロブスカイトAの溶液を調製するための溶剤としては、有機無機混成ペロブスカイトAを溶解できるものであれば特に限定するものではない。エステル類(例、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等)、ケトン類(例、γ-ブチロラクトン、Nメチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(例、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等)、グリコールエーテル(セロソルブ)類(例、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、アミド系溶剤(例、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ニトリル系溶剤(例、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等)、カーボート系剤(例、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ハロゲン化炭化水素(例、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等)、炭化水素(例、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ジメチルスルホキシドがある。これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。エステル類、ケトン類、エーテル類およびアルコール類の官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。エステル類、ケトン類、エーテル類およびアルコール類の炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
【0051】
(B)第2半導体層
本願発明の第2半導体層は、p型半導体特性に近い機能を有するものであり、透明電極基板またはバッファ層を塗布した透明電極基板上に、無機ペロブスカイト化合物Bおよび/または有機無機混成ペロブスカイト化合物Cを被膜形成または吸着させたカーボンナノチューブ層を形成したものである。
【0052】
(1)カーボンナノチューブ層
本願発明のカーボンナノチューブ層は、金属性カーボンナノチューブを50%以上含むカーボンナノチューブにより構成されている。以下、本願発明に用いられるカーボンナノチューブについて説明する。カーボンナノチューブは、マルチウォールカーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ;MWCT)、シングルウォールカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ;SWCT)のいずれであってもよい。各々単独に用いても、混合してもよい。また、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズを用いても良い。
カーボンナノチューブは、その伝導度によって金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブに分類されるが用途に応じて、半導体性と金属性の混合比率を調整することが好ましい。導電性用途としてカーボンナノチューブ層を用いる場合には、金属性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましく、半導体用途としてカーボンナノチューブ層を用いる場合には、半導体性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましい。本願発明では光電変換素子の光電変換率を向上させるため、金属性
カーボンナノチューブ の割合が多い方が好ましい。本願発明のカーボンナノチューブは、さらに金属などが内包されていてもよい。また、フラーレンが内包されたピーポッドナノチューブを用いても良い。カーボンナノチューブは、任意の方法、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法、スーパーグロス法などによって合成することができる。
【0053】
本願発明に用いられるカーボンナノチューブは、表面を官能基で修飾されていてもよい。 官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が好ましい。これらの官能基は、上記易接着層との化学反応により、カーボンナノチューブ層と易接着層との密着性をより高めることに効果がある。これらの官能基は、任意の方法を利用して導入することが可能であり(例えば、特開2005−41835号公報を参照。)、官能基の導入量としては、用途に応じて適宜調整することが好ましい。
【0054】
本願発明に用いられるカーボンナノチューブは、高い機械強度を与えてカーボンナノチューブ層含有構造体の特性を高める観点から、架橋されていることも好ましい。カーボンナノチューブの架橋については、カーボンナノチューブ表面に導入したヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基を利用して架橋剤と反応させる方法が好ましい。架橋反応としては、エステル化、エーテル化、アミド化反応が好適に用いられる(例えば、特開2005−41835号公報を参照。)。架橋密度は、用途に応じて調整することが好ましい。本願発明に用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。より好ましくは、1nm以上30nm以下である。本願発明に用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0055】
本願発明のカーボンナノチューブ層含有構造体の製造方法は、透明支持体上にカーボンナノチューブ層を塗布することで作製することができる。この際に用いる、カーボンナノチューブを含有する塗布液については、用途に応じて、適宜、粘度、表面張力などの物性を調整することが好ましい。カーボンナノチューブを含有する塗布液の塗布に関しては、原崎勇次著、「コーティング方式」、慎書店1979年10月発行に示されているリバースコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、エアドクタコータ、スピンコート、スプレー塗布などをはじめ、任意の塗布装置を用いることができる。カーボンナノチューブ層の厚さは、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましい。
【0056】
なお、本願発明では、カーボンナノチューブ以外の炭素材料、例えば、フラーレン、グラファイト等をカーボンナノチュウブの代わりに使用することもできる。ものである。
【0057】
(2)無機ペロブスカイト化合物B
本願発明の無機ペロブスカイト化合物Bは、下記一般式(3)に示されるものである。
CsM
2X
3 (3)
(式中、M
2は、2価の金属イオンであり、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
【0058】
本願発明の無機ペロブスカイト化合物Bの陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成する金属は、具体的には、M
2(例、Cu2+,Ni2+,Mn2+,Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Eu2+)である。
【0059】
本願発明の無機ペロブスカイト化合物Bの陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成するハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはこれらの組合せである。このハロゲン化物は、臭化物、ヨウ化物が好ましい。
【0060】
本願発明の無機ペロブスカイト化合物Bの具体例としては、CsSnI
3、CsSnBr
3がある。
【0061】
本願発明の無機ペロブスカイト化合物Bは、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の第2半導体層は、ペロブスカイト化合物Bを有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる。
【0062】
(3)有機無機混成ペロブスカイト化合物C
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Cは、下記一般式(4)および/または一般式(5)に示されるものである。
CH
3NH
3SnX
3 (4)
(式中、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
(R
2NH
3)
2SnX
4 (5)
(式中、R
2は炭素数2以上のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基であり、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
【0063】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Cにおける無機枠組みは、頂点を共有する金属ハロゲン化物八面体の層を有する。陽イオン性有機層からの正の電荷と平衡をとるため、陰イオン性金属ハロゲン化物層(例えば、M
1X
32-,M
1X
42-)は2価の金属(Sn
2+)である。
【0064】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Cの陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成するハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはこれらの組合せである。このハロゲン化物は、臭化物、ヨウ化物が好ましい。
【0065】
本願発明の上記一般式(5)のR
2としては、炭素数2〜40の置換または未置換のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルキル鎖(好ましくは炭素数2〜30であり、より好ましくは炭素数2〜20であり、炭素数2〜18がもっとも好ましい)。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコサニル基、ドコサニル基、トリアコンタニル基、テトラアコンタニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0066】
炭素数2〜40の置換または未置換のアラルキル基としては、アリール基で置換されている低級アルキル基を意味し、アルキル部が直鎖状または分岐鎖状で、好ましい炭素数が1〜5、より好ましくは1であり、アリール部が好ましい炭素数が6〜10、より好ましくは6〜8である。具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0067】
アルケニル基は、好ましくは炭素数3〜30であり、より好ましくは炭素数3〜20であり、炭素数3〜12が最も好ましい。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、オレイル基、アリル基等が挙げられる。アルキニル基としては、アセチレニル、プロパルギル基、3−ペンチニル基、2−ヘキシルニル、2−デカニルを挙げることが出来る。
【0068】
アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20のフェニル基または炭素数10〜24のナフチル基であり、更に好ましくは炭素数6〜12のフェニル基または炭素数10〜16のナフチル基である。例えばフェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。一般式(1)において、複素環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0069】
芳香族複素環基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0070】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Cの具体例としては、CH
3NH
3SnI
3がある。
【0071】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Cは、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の第2半導体層は、ペロブスカイト化合物Cを有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって形成できる。
【0072】
(4)無機ペロブスカイトBおよび有機無機混成ペロブスカイトCの溶液
本願発明に用いる有機無機混成ペロブスカイトCの溶液を調製するための溶剤としては、有機無機混成ペロブスカイトCを溶解できるものであり、第1半導体層を溶解し、分解し、あるいは膨潤しない溶剤であれば特に限定するものではない。エステル類(例、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等)、ケトン類(例、γ-ブチロラクトン、Nメチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(例、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等)、グリコールエーテル(セロソルブ)類(例、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、アミド系溶剤(例、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ニトリル系溶剤(例、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等)、カーボート系剤(例、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ハロゲン化炭化水素(例、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等)、炭化水素(例、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ジメチルスルホキシドがある。これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。エステル類、ケトン類、エーテル類およびアルコール類の官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。エステル類、ケトン類、エーテル類およびアルコール類の炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
【0073】
第2半導体層の膜厚は、1〜1000nmが好ましい。
【0074】
[3]バッファ層
バッファ層は、透明電極基板と光電変換層との短絡を防止する役割を持つものである。また、透明電極基板と光電変換層との密着性を向上させる役割も持つものである。
【0075】
バッファ層の素材としては、高抵抗な半導体および絶縁物質であれば、特に限定はされない。例えば、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化錫、酸化亜鉛等がある。また、バッファ層を形成する方法としては、上記素材を透明導電層に直接スパッタする方法、Electrochim.Acta 40、643‐652(1995)に記載されているスプレーパイロリシス法などがある。あるいは上記素材を溶媒に溶解した溶液、金属酸化物の前駆体である金属水酸化物を溶解した溶液、または有機金属化合物を、水を含む混合溶媒に溶解した金属水酸化物を含む溶液を、基板と導電層からなる導電性基板上に塗布、乾燥し、必要に応じて焼結する方法がある。バッファ層の好ましい膜厚は5〜100nmである。塗布方法としては、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等が挙げられる。
【0076】
2.固体接合型光電変換素子のセル構造
図4は、本願発明の固体接合型光電変換素子のセル構造の1例を示す断面図である。
図4に基づいて、本願発明の固体接合型光電変換素子のセル構造について説明する。固体接合型光電変換素子のセル10は、透明基板21上に透明導電層22を形成した一対の透明電極基板2の間に光電変換層3を有する。光電変換層3は、第1半導体層4と第2層5から構成されている。第1半導体層4は、多孔質半導体微粒子層41表面に有機無機混成ペロブスカイト化合物42が被膜または吸着体として形成されている。第2層5は、有機無機混成ペロブスカイト化合物および/または無機ペロブスカイト化合物を含むカーボンナノチューブ層がバッファ層6を形成した透明電極基板2上に被膜として形成されている。また、透明電極基板2と光電変換層3との間にはバッファ層6を設けている。光電変換層3は、封止層7により側面を封止されている。一対の透明電極基板には、それぞれ集電性9と取出し電極8が設けられている。
【0077】
図5上段は本願発明のマスクフィルムを貼合した透明導電性基板2の平面図であり、
図5下段は本願発明のマスクフィルムを貼合した透明導電性基板2の断面図である。なお、
図5は、本願発明の固体接合型光電変換素子のセルを6列並べて電池モジュールとする場合の態様である。
図5に示すように、本願発明の固体接合型光電変換素子のセルは、先ず、バッファ層6を形成した透明導電性基板2上に、マスクフィルム11を貼合し、前記貼合したマスクフィルムの開放部分12上に金属酸化物半導体ナノ粒子分散液を塗布乾燥して多孔質半導体微粒子層を形成した後に、有機無機混成ペロブスカイト化合物Aを被覆または吸着させて第1半導体層を形成する。その後、形成した第1半導体層に、バッファ層を形成した透明電極基板上に無機ペロブスカイト化合物Bおよび/又は有機無機混成ペロブスカイト化合物Cを含むカーボンナノチューブ層からなる第2層を被膜面側を合わせて密着させて製作する。前記マスクフィルムの開放部分は、本願発明の固体接合型光電変換素子のセルのひな型としての役割を持つ。マスクフィルムの開放部分12の平面形状は4つの角が丸みを持つ矩形であり、そのサイズは形成する多孔質半導体微粒子層の平面形状により決まる。以下、マスクフィルム、封止層、集電線、取出し電極の順で説明する。
【0078】
[1]マスクフィルム
本願発明のマスクフィルムは、その開放部分が本願発明の光電変換層のひな型としての役割を持つと同時に、透明導電性基板あるいはバッファ層を形成した透明導電性基板に容易に貼りつけることができ、金属酸化物半導体ナノ粒子分散液やペロブスカイト化合物溶液を塗布した後には、容易に剥がすことができる粘着層を有する粘着フィルムであれば、特に限定されるものではない。具体的には、基材フィルムの一方の面に微粘着剤層と剥離フィルム、もう一方の面に帯電防止層、防汚層を設けた積層フィルムであり、液晶表示装置に用いる偏光フィルムや位相差フィルムの表面保護フィルムに用いられている積層粘着フィルムである。使用時に剥離フィルムを剥離して、透明導電性基板あるいはバッファ層を形成した透明導電性基板にマスクフィルムを貼合する。ただし、半導体微粒子層を形成するために加熱・乾燥処理する必要があることから、基材フィルムは、バッファ層を形成した透明導電性基板と同程度の熱収縮率であることが必要である。具体的には、加熱条件(150℃、30min)下での熱収縮率(MD・TD)は、0.5%以下、より好ましくは、0.2%以下である。
【0079】
本願発明のマスクフィルムは、粘着力の異なる複数のマスクフィルムを積層して用いることができる。多孔質半導体微粒子層を形成後に最上層を剥がし、ペロブスカイト化合物溶液塗布時に、透明導電性基板あるいはバッファ層を形成した透明導電性基板を保護した後、マスクフィルムを剥がし取ることができるからである。
【0080】
固体接合型光電変換素子のセルの平面形状は、矩形であって、前記矩形の面積(S)が300mm2〜600mm2である。平面形状をかかる範囲内とすることで、固体接合型光電変換素子の単位面積当たりの内部抵抗が最も小さくすることができ、変換効率を最も高くすることができるからである。
【0081】
[2]封止層
本願発明の封止層は、光電変換層の周囲に設けられ、光電変換層を封止する機能を有する。前記封止層は、基本的には、一対の透明電極基板を接着するシール材と前記一対の透明電極基板との間に必要な隙間を調整し、光電変換層を形成するためのスペーサーにより構成されている。
【0082】
(1)シール材
本願発明のシール材は、一対の透明電極基板を接着し、光電変換層を封止することができるものであれば特に限定されるものではない。基板間の接着性、耐光性、高温高湿耐久性(耐湿熱性)に優れていることが好ましい。光電変換層を持続的に機能させるためには、接着性に加えて、耐光性と耐湿熱性に優れる必要があるからである。
【0083】
接着性、耐薬品性、耐湿熱性に優れたシール材としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性放射線(光、電子線)硬化性樹脂がある。素材としては、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等がある。取扱い性に優れるという観点から、光硬化性アクリル系樹脂が好ましい。
【0084】
(2)スペーサー
本願発明のスペーサーは、一対の透明電極基板間に必要な隙間を所望の範囲に調整できるものであれば特に限定されるものではない。通常、真円球樹脂粒子、無機粒子、ガラスビーズなどを適宜選択することができる。本願発明では、真円樹脂粒子を用いることが好ましい。粒径としては、1μm〜100μmが好ましく、1μm〜50μmがより好ましく、1μm〜20μmが特に好ましい。一対の透明電極基板が接することがなく、かつ、より短い間隙を均一に保つことで、光電変換効率が向上するからである。
【0085】
本願発明の封止層の厚みは、前記光電変換層の厚みと実質的に同一であることが好ましい。一対の透明電極基板との間隙が均一に保つことで、安定した発電効率を示すためである。また、本発明の封止層の幅長は、特に限定されるものではないが、例えば0.5mm〜5mmの範囲内、中でも0.8mm〜3mmの範囲内であることが好ましい。封止層の幅長が狭すぎると、光電変換層の保護機能を十分に発揮できない可能性があり、封止層の幅長が広ろすぎると、光電変換素子において発電に寄与する素子面積が減少するため、モジュール面積に対して有効な面積が低下し、有効発電効率が減少してしまう可能性があるからである。
【0086】
[3]集電線
本願発明では、透明導電膜上に金属(良導体)からなる集電線を配設することにより、透明導電膜からなる透明透電極の表面抵抗率を下げている。集電線は、封止層により区分された光電変換層の外部に設けられることが好ましい。集電線の材料は、導電性を有していれば特に制限はないが、抵抗率が比較的低い金属材料、例えば、銀、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロムのうちから選ばれる少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましく、抵抗率が低く、線として形成し易いという観点からは、銀がより好ましい。集電線は、透明導電層上に格子状に形成することもできる。集電線の形成方法としては、スパッタ法、蒸着法、メッキ法あるいはスクリーン印刷法などが用いられる。集電線の幅は、0.5mm〜5mm、より好ましくは、0.7mm〜3mmであり、集電線の厚さは、5μm〜50μm、より好ましくは、6μm〜20μmである。十分な線断面積当たりの電気伝導度を確保すると共に、後述する導電性微粒子と相俟って、一対の透明電極基板との間に必要な間隙を確保するために適切な幅と厚みを必要とするからである。
【0087】
[4]取出し電極
本願発明では、光電変換素子は一対の取出し電極を備えている。後述する外装、バリアー包装体で光電変換素子を被覆するときは、前記取出し電極にリード材を取り付けることができる。取出し電極の材料としては、導電性を有していれば特に制限はない。抵抗率が比較的低い金属材料、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、チタン、クロムのうちから選ばれる少なくとも1つ以上の金属あるいはこれらの合金からなることが好ましい。取出し電極の厚さは、50nm〜100μmであることが好ましい。取出し電極の厚さは、断線により光電変換素子の歩留まりが低下しない程度に薄すぎないことが必要であり、コスト面から過度に厚くする必要なないからである。また、取出し電極の形状は、特に制限はない。例えば、金属箔、金属テープ、板状、紐状のいずれであってもよい。加工性の観点から金属テープが好ましい。
【0088】
[5]外装およびバリアー包装体
本願発明では、その基板が水蒸気やガスに対してその透過性を低減するように設計されているが、過酷な環境条件により出力の劣化が見られる可能性があり、特に高温度で高湿度での環境条件で耐久性付与が重要である。これらの改良方法としては、基板にガスや水蒸気に対するバリアー特性を有する基板にするか、あるいはバリアー性のある包装体で、本願発明の固体接合型光電変換素子を包み込むことで達成できる。以下に、本願発明で好ましく用いられるバリアフィルム、特に水蒸気バリアー性について以下に記述する。
【0089】
前述したように、本願発明の固体接合型光電変換素子は、基板の外部にガスや水蒸気に対するバリアー性を有する層を有することも好ましい。さらに、水蒸気バリアー性のある包装材料で包装あるいは包み込まれていても好ましい。その際に、本願発明の固体接合型光電変換素子とハイバリア包装材料に間に空間があってもよく、また接着剤で本願発明の固体接合型光電変換素子を接着させてもよい。更には、水蒸気やガスを通しにくい液体や固体(例えば、液状またはゲル状のパラフィン、シリコン、リン酸エステル、脂肪族エステルなど)を用いて、本願発明の固体接合型光電変換素子を包装材料に包装してもよい。
【0090】
本願発明で好ましく用いられるバリアー性のある基板あるいは包装材料の好ましい水蒸気透過度は、40℃、相対湿度90%(90%RH)の環境下で0.1g/m2/日以下であり、より好ましくは0.01g/m2/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m2/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m2/日以下である。また、環境温度が60℃、90%RHでのより過酷な場合でも、バリアー性のある基板あるいは包装材料の水蒸気透過度は、より好ましくは0.01g/m2/日以下であり、更に好ましくは0.0005g/m2/日以下であり、特に好ましくは0.00001g/m2/日以下である。またバリアー性のある基板あるいは包装材料の酸素透過率は25℃、0%RHの環境下において、好ましくは約0.001g/m2/日以下であり、より好ましくは0.00001g/m2/日が好ましい。
【0091】
これらの本願発明の固体接合型光電変換素子用バリアー性のある基板あるいは包装材料に、水蒸気やガスに対するバイア性付与は、特に限定されないが、本願発明の固体接合型光電変換素子に必要な光量を妨げないことが必要であるために透過性のあるバリアー性のある基板あるいは包装材料であり、その透過率は好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。上記の特性を有するバリアー性のある基板あるいは包装材料は、その構成や材料において特に限定されることはなく、該特性を有するものであれば特に限定されない。
【0092】
本願発明の好ましいバリアフィルムのある基板あるいは包装材料は、プラスチック支持体上に水蒸気やガスの透過性が低いバリアー層を設置したフィルムであることが好ましい。ガスバリアフィルムの例としては、酸化ケイ素や酸化アルミニウムを蒸着したもの(特公昭53−12953、特開昭58−217344)、有機無機ハイブリッドコーティング層を有するもの(特開2000−323273、特開2004−25732)、無機層状化合物を有するもの(特開2001−205743)、無機材料を積層したもの(特開2003−206361、特開2006−263989)、有機層と無機層を交互に積層したもの(特開2007−30387、米国特許6413645、Affinitoら著
Thin Solid Films 1996年 290−291頁)、有機層と無機層を連続的に積層したもの(米国特許2004−46497)などが挙げられる。
【実施例】
【0093】
次に本願発明の効果を奏する実施態様を実施例として示す。
[1]
参考例1(1)有機無機混成ペロブスカイト化合物A〔CH
3NH
3PbBr
3〕の合成
三口フラスコ内に、メチルアミン〔CH
3NH
2〕1gとメタノール〔CH
3OH〕100mlを入れ、窒素バブリングを行いながら臭化水素酸〔HBr〕を加えてpHを3〜4程度に調整した後、マグネッチックスターラーにより1時間撹拌した。この溶液をエバポレーターで蒸留した後、40℃で乾燥し、再精製することにより臭化メチルアミン〔CH
3NH
3Br〕を合成した。次に合成した臭化メチルアミン〔CH
3NH
3Br〕と臭化鉛〔PbBr
2〕をモル比1:1の割合で、ジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕に10重量%濃度となるように混合して溶解し、有機無機混成ペロブスカイト化合物〔CH
3NH
3PbBr
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液を調製した。
【0094】
(2)無機ペロブスカイト化合物B〔CsSnI
3〕の合成
ヨウ化セシウム〔CsI〕とヨウ化錫〔SnI
2〕をモル比1:1の割合で、ジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕に10重量%濃度となるように溶解し、無機ペロブスカイト化合物〔CsSnI
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液を調製した。
【0095】
(3)有機無機ペロブスカイト化合物C〔CH
3NH
3SnI
3〕の合成
三口フラスコ内に、メチルアミン〔CH
3NH
2〕1gとメタノール〔CH
3OH〕100mlを入れ、窒素バブリングを行いながらヨウ化水素酸〔HI〕を加えてpHを3〜4程度に調整した後、マグネッチックスターラーにより1時間撹拌した。この溶液をエバポレーターで蒸留した後、40℃で乾燥し、再精製することによりヨウ化メチルアミン〔CH
3NH
3I〕を合成した。次に合成したヨウ化メチルアミン〔CH
3NH
3I〕とヨウ化錫(SnI
2)をモル比1:1の割合で、アセトニトリル〔CH
3CN〕に10重量%濃度となるように溶解し、有機無機混成ペロブスカイト化合物〔CH
3NH
3SnI
3〕のアセトニトリル〔CH
3CN〕溶液を調製した。
【0096】
(4)カーボンナノチューブ分散液1の調製
Aldrich製のカーボンナノチューブCG200(製品願号724777)を0.2重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.05重量%になるようにエタノールを20%含む水溶液に添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の超音波ホモジナイザーNR−300Mを用い低温保存下20kHzで1時間分散し、カーボンナノチューブの均一分散液を調整した。
【0097】
(5)カーボンナノチューブ分散液2の調製
上記で調整した10重量%濃度の無機ペロブスカイト化合物〔CsSnI
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液中に、Aldrich製のカーボンナノチューブCG200(製品願号724777)を0.5重量%添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の超音波ホモジナイザーNR−300Mを用い低温保存下20kHzで1時間分散してカーボンナノチューブの均一分散液を調整した。
【0098】
(4)第1半導体層の作製
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム,厚み200μm)上に透明導電層〔インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)〕をコートした透明導電性基板(シート抵抗13ohm/sq)上に、スクリーン印刷法により導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して集電線を形成した。バッファ層は、上記透明導電性基板の集電線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC−600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布し、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して形成した。バッファ層を形成した透明導電性基板のバッファ層形成面に、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
ポリエステルフィルムに粘着層を塗工した保護フィルムを2段重ねしたマスクフィルム(下段:PC−542PA 藤森工業製、上段:NBO−0424 藤森工業製)を、多孔質半導体微粒子層を形成するための開口部(長さ:60mm、幅5mm)を打ち抜き加工した。打ち抜き加工したマスクフィルムを、バッファ層を形成した透明導電性基板の集電線形成面に気泡が入らないようにして貼合した。高圧水銀ランプ(定格ランプ電力 400W)光源をマスク貼合面から10cmの距離に置き、電磁波を1分間照射後直ちに、ポリマー成分を含まないバインダーフリー酸化チタンペースト(PECC−C01−06,ペクセル・テクノロジーズ(株)製)をベーカー式アプリケータにより塗布した。ペーストを常温で10分間乾燥させた後、マスクフィルムの上側の保護フィルム(NBO−0424 藤森工業製)を剥離除去し、150度の熱風循環式オーブン中でさらに5分間加熱乾燥し、多孔質半導体微粒子層(長さ:60mm、幅5mm)を形成した。多孔質半導体層を形成した透明導電性基板上に、有機無機混成ペロブスカイト化合物A〔CH
3NH
3PbBr
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液を0.2μmフィルター付きのシリンジで所定量滴下し、60度の熱風循環式オーブン中で10分間加熱乾燥して、第1半導体層を作製した。
【0099】
(5)第2層の作製
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム,厚み200μm)上に透明導電層〔インジウム‐スズ複合酸化物(ITO)〕をコートした透明導電性基板(シート抵抗13ohm/sq)上に、スクリーン印刷法により導電性銀ペースト(K3105、ペルノックス(株)製)を光電極セル幅に応じた間隔で印刷塗布し、150度の熱風循環型オーブン中で15分間加熱乾燥して集電線を形成した。バッファ層は、上記透明導電性基板の集電線形成面を上にして塗布コーターにセットし、1.6%に希釈したオルガチックPC−600溶液(マツモトファインケミカル製)をワイヤーバーにより掃引速度(10mm/秒)で塗布し、10分間室温乾燥した後、さらに10分間150℃で加熱乾燥して形成した。バッファ層を形成した透明導電性基板のバッファ層形成面に、光電極セル幅に応じた間隔でレーザー処理を行い、絶縁線を形成した。
バッファ層を形成した透明電極基板上に、前記で調整したカーボンナノチューブ分散液1を約20ml/m
2でワイヤーバーにより塗布し、80℃で30分間乾燥させ、カーボンナノチューブからなる第2層を作製した。
【0100】
(6)光電変換素子の作製
上記第1半導体層の塗膜層形成面を上面として、アルミ製吸着板上に真空ポンプを使って固定し、液状の光硬化型封止剤((株)スリーボンド製)を自動塗布ロボットにより塗膜パターンの外周部分に塗布した。自動貼り合せ装置を用いて、第2層の塗膜形成面を第1半導体層の塗膜形成面に密着させて減圧環境中で重ね合せて貼合した。透明基板側からメタルハライドランプにより光照射を行って、封止剤を固化して封止層を形成した。取出し電極部分に導電性銅泊テープ(CU7636D、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス(株)製)を貼ることで固体接合型光電変換素子を作製した。
【0101】
(7)固体接合型光電変換素子の評価
光源として、150Wキセノンランプ光源装置にAM1.5Gフィルターを装着した擬似太陽光源(PEC−L11型、ペクセル・テクノロジーズ(株)製)を用いた。光量は、1sun(約10万lux AM1.5G、100mWcm−2(JIS C 8912のクラスA))に調整した。作製した固体接合型光電変換素子をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続した。電流電圧特性は、1sunの光照射下、バイアス電圧を、0Vから0.8Vまで、0.01V単位で変化させながら出力電流を測定した。同様にバイアス電圧を、逆方向に0.8Vから0Vまでステップさせる測定も行い、順方向と逆方向の測定の平均値を光電流データとして、変換効率を求めた。固体接合型光電変換素子の変換効率は3.6%であった。得られた変換効率は、従来知られている色素増感太陽電池と同等の変換効率であり、本願発明の光電変換素子は良好な光電変換能を有することがわかる。
【0102】
[2]実施例2
第2層を形成するカーボンナノチューブとしてバッファ層を形成した透明電極基板上に、前
記カーボンナノチューブ分散液2を約20ml/m
2でワイヤーバーにより塗布し、80℃で30分間乾燥させ、カーボンナノチューブからなる第2層を作製した以外、
参考例1と同様とした。
【0103】
(1)固体接合型光電変換素子の評価
参考例1と同様とした。変換効率は4.1%であった。第2層として、無機ペロブスカイト化合物〔CsSnI
3〕を吸着させたカーボンナノチューブを用いても、得られた変換効率は、従来知られている色素増感太陽電池と同等の変換効率であり、本願発明の光電変換素子は良好な光電変換能を有することがわかる。
【0104】
[3]
参考例3
第1半導体層および第2層と透明電極基板との間にバッファ層を形成しない点を除き、
参考例1と同様とした。
【0105】
(1)固体接合型光電変換素子の評価
参考例1と同様とした。変換効率は3.0%であった。第1半導体層にバッファ層を形成しない場合でも、得られた変換効率は、従来知られている色素増感太陽電池と同等の変換効率であり、本願発明の光電変換素子は良好な光電変換能を有することがわかる。