特許第6070088号(P6070088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070088
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】N−アルキルピペラジン類の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 295/03 20060101AFI20170123BHJP
   C07D 295/023 20060101ALI20170123BHJP
   C07D 295/088 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C07D295/03
   C07D295/023
   C07D295/088
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-247768(P2012-247768)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-5267(P2014-5267A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-124778(P2012-124778)
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 学
(72)【発明者】
【氏名】木曾 浩之
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−119183(JP,A)
【文献】 特表平10−513456(JP,A)
【文献】 特開2011−144140(JP,A)
【文献】 特開昭61−280455(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公開第01955558(DE,A)
【文献】 特開昭52−136183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAPLUS/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−n−オクチルピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンN−(2−メトキシエチル)ピペラジン、及びN−ベンジルピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種のN−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物を、プロピレングリコール、エタノールアミン、ジエチレントリアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、及びエチレングリコールからなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物の存在下で蒸留することを特徴とするN−アルキルピペラジン類の精製方法。
【請求項2】
プロピレングリコール、エタノールアミン、ジエチレントリアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、及びエチレングリコールからなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物の使用量が、混合物中のピペラジンの含有量に対し、10〜500重量%の範囲であることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
蒸留を行う際に、ピペラジン留分の蒸留を大気圧で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の精製方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アルキルピペラジン類を精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アルキルピペラジン類は、有機合成用触媒、化学吸着剤、抗菌剤、医農薬中間体等として有用な化合物である。
【0003】
一般的にN−アルキルピペラジン類の合成は、ピペラジンのN原子にアルキル化剤を求電子的に置換反応させる方法で行われる。ピペラジンの一方のアミノ基だけを選択的に反応させることは難しく、ピペラジンとアルキル化剤を当量付近で反応させると、ピペラジン類の両方のアミノ基ともアルキルされたN,N’−ジアルキルピペラジン類が大量に副生するため、通常、この反応はピペラジンがアルキル化剤に対して大過剰の条件で行われる。その結果、反応完結後の反応液には未反応のピペラジンが大量に残存するため、N−アルキルピペラジン類を精製するためには、ピペラジンを取除くことが必要となる。
【0004】
N−アルキルピペラジン類の精製において、ピペラジンを取除く操作は、一般的に、ピペラジンを蒸留により留去することで行われる。しかしながら、ピペラジンはN−アルキルピペラジン類中で安定化されているため、単蒸留では完全に取り除くことは困難であった。例えば、N−アルキルピペラジン類を医農薬中間体原料として使用する場合、不純物であるピペラジンの含量が0.05%以下程度である高純度品が要求されることがある。このような場合、非常に段数の多い蒸留塔を用いるか、非常に時間をかけて蒸留する必要があった。これらのプロセスは装置コスト及びエネルギーコストの点で工業的に不利である。
【0005】
そこで、効率的にピペラジンを取除く方法として、N−モノ置換ピペラジンに鉱酸又は有機酸を添加し、ついで蒸留を行うN−モノ置換ピペラジンの精製方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では鉱酸又は有機酸を0.1〜10%加え単蒸留することにより、高純度のN−モノ置換ピペラジンを得ることができるとしている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、取除かれたピペラジンは塩となっているため、そのままでは原料として再利用できない問題や、ピペラジンだけではなく、N−モノ置換ピペラジンも塩となり、塩となったN−モノ置換ピペラジンは留出しないため、回収率が低下する問題、更には蒸留装置の腐食の問題があった。
【0007】
以上のように従来の精製方法は、いずれも十分なものとは言えず、低コストで高純度のN−アルキルピペラジン類を得ることができ、且つ回収率の高いN−アルキルピペラジン類の精製方法の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−119183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コストで高純度のN−アルキルピペラジン類を得ることができ、且つ回収率の高いN−アルキルピペラジン類を精製する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物を、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の存在下で蒸留すると、本発明の課題を解決できるという新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのN−アルキルピペラジン類の精製方法である。
【0012】
[1]N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物を、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の存在下で蒸留することを特徴とするN−アルキルピペラジン類の精製方法。
【0013】
[2]N−アルキルピペラジン類が、下記一般式(1)で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]に記載の精製方法。
【0014】
【化1】
[上記式中、Rは炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、2−ヒドロキシエチル基、炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、炭素数5〜8のアルコキシエチル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表す。]
[3]N−アルキルピペラジン類が、N−n−プロピルピペラジン、N−n−ブチルピペラジン、N−n−ペンチルピペラジン、N−n−ヘキシルピペラジン、N−n−ヘプチルピペラジン、N−n−オクチルピペラジン、N−i−プロピルピペラジン、N−t−ブチルピペラジン、N−(2−エチルヘキシル)ピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−ヒドロキシメチルピペラジン、N−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチルピペラジン、N−(3−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、N−(2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−メトキシエチルピペラジン、N−エトキシエチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、N−ベンジルピペラジン、及びN−(2−フェニルエチル)ピペラジンからなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の精製方法。
【0015】
[4]ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒が、ピペラジンの沸点以上の沸点を有するアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アミン類、アルカノールアミン類、アルコキシアミン類、アミド類、及びスルホキシド類からなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物であることを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の精製方法。
【0016】
[5]ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒が、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−(2−ヒドロキシエチルオキシ)エチルアミン、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物であることを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の精製方法。
【0017】
[6]ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の使用量が、混合物中のピペラジンの含有量に対し、10〜500重量%の範囲であることを特徴とすることを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載の精製方法。
【0018】
[7]蒸留を行う際に、ピペラジン留分の蒸留を大気圧で行うことを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載の精製方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以下に示す効果を奏する。
【0020】
(1)本発明の精製方法は、多段蒸留塔のような複雑な装置を必要としないため、装置コスト、エネルギーコストを抑えることができ、安全性、操作性にも優れ、工業的に有用な方法である。
【0021】
(2)本発明の精製方法で、使用する極性有機溶媒は低価格で入手又は製造することができるため、コスト性、生産性に優れる。
【0022】
(3)本発明の精製方法は、取除いたピペラジンをN−アルキルピペラジン類の原料として特段の処理を行うことなく再利用でき、コスト性、生産性に優れる。
【0023】
(4)本発明の精製方法は、酸等の腐食性物質を使用せず、安全性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0025】
本発明のN−アルキルピペラジン類の精製方法は、N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物を、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の存在下で蒸留することを特徴とする。本発明の精製方法ではピペラジンが当該極性有機溶媒と同時に留出されるため、N−アルキルピペラジン類中への残留量は極めて少ない。
【0026】
本発明の精製方法において、N−アルキルピペラジン類は、上記一般式(1)で示されるピペラジン類であって、特に限定されない。
【0027】
上記一般式(1)におけるRは、炭素数3〜8の直鎖状、分岐状若しくは環式のアルキル基、2−ヒドロキシエチル基、炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基、炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、炭素数5〜8のアルコキシエチル基、ベンジル基、又は2−フェニルエチル基を表す。
【0028】
ここで、炭素数3〜8の直鎖状アルキル基としては、例えば、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。炭素数3〜8の分岐状アルキル基としては、例えば、i−プロピル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、sec−ペンチル基、t−ペンチル基、neo−ペンチル基、i−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜8の環式のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数3〜6のヒドロキシアルキル基としては、例えば、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、5−ヒドロキシ−n−ペンチル基、6−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、7−ヒドロキシ−n−ヘプチル基、8−ヒドロキシ−n−オクチル基、2−ヒドロキシ−n−ブチル基、2−ヒドロキシ−n−ペンチル基、2−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、2−ヒドロキシ−n−ヘプチル基、2−ヒドロキシ−n−オクチル基等が挙げられる。炭素数3〜6のジヒドロキシアルキル基としては、例えば、2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル基、1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル基、2,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、3,4−ジヒドロキシ−n−ブチル基、2,5−ジヒドロキシ−n−ペンチル基、4,5−ジヒドロキシ−n−ペンチル基、2,6−ジヒドロキシ−n−ヘキシル、5,6−ジヒドロキシ−n−ヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のアルコキシエチル基としては、例えば、n−プロポキシエチル基、i−プロポキシエチル基、n−ブトキシエチル基、n−ペンタノキシエチル基、n−ヘキサノキシエチル基等が挙げられる。
【0029】
上記一般式(1)で示される化合物としては、特に限定するものではないが、具体的には、N−n−プロピルピペラジン、N−n−ブチルピペラジン、N−n−ペンチルピペラジン、N−n−ヘキシルピペラジン、N−n−ヘプチルピペラジン、N−n−オクチルピペラジン、N−i−プロピルピペラジン、N−t−ブチルピペラジン、N−(2−エチルヘキシル)ピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−ヒドロキシメチルピペラジン、N−(1−ヒドロキシエチル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチルピペラジン、N−(3−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(2−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1−ヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)ピペラジン、N−(2,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1,3−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−(1,2−ジヒドロキシ−n−プロピル)ピペラジン、N−メトキシエチルピペラジン、N−エトキシエチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、N−ベンジルピペラジン、又はN−(2−フェニルエチル)ピペラジン等が例示される。
【0030】
本発明の精製方法において、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ピペラジンの沸点以上の沸点を有するアルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、アミン類、アミド類、スルホキシド類等が挙げられ、これらを単独で又は相溶性のある二種以上の混合物として使用することができる。
【0031】
例えば、ピペラジンの沸点以上の沸点を有するアルコール類としては、具体的には、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、ターピネオール等が挙げられる。
【0032】
ピペラジンの沸点以上の沸点を有するグリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0033】
ピペラジンの沸点以上の沸点を有するグリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−i−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール等が挙げられる。
【0034】
ピペラジンの沸点以上の沸点を有するアミン類としては、例えば、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、t−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0035】
ピペラジンの沸点以上の沸点を有するアルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−(2−ヒドロキシエチルオキシ)エチルアミン、N−メチル−2−(2−ヒドロキシエチルオキシ)エチルアミン、N,N−ジメチル−2−(2−ヒドロキシエチルオキシ)エチルアミン、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルアミン、N−メチル−2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルアミン、N,N−ジメチル−2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、N−メチル−3−ヒドロキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0036】
ピペラジンの沸点以上の沸点を有するアルコキシアミン類としては、例えば、2−エトキシエチルアミン、N−メチル−2−エトキシエチルアミン、N,N−ジメチル−2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、3−メトキシプロピルアミン、N−メチル−3−メトキシプロピルアミン、N,N−ジメチル−3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン等が挙げられる。
【0037】
アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、沸点、及び入手時のコスト等を考慮すると、極性有機溶媒としては、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、ジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、エタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−(2−ヒドロキシエチルオキシ)エチルアミン、2−(2−メトキシエチルオキシ)エチルアミン、3−ヒドロキシプロピルアミン、2−エトキシエチルアミン、2−n−プロポキシエチルアミン、2−n−ブトキシエチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−n−プロポキシプロピルアミン、3−n−ブトキシプロピルアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドからなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物であることが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジエチレントリアミン、N,N,N‘,N‘‘,N‘‘−ペンタメチルジエチレントリアミン、エタノールアミン、2−(2−ヒドロキシエチルオキシ)エチルアミン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、ビス(2−エトキシエチル)アミン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群より選ばれる一種又は相溶性のある二種以上の混合物であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の精製方法において、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の選択は、N−アルキルピペラジン類の溶解度や、沸点を基準に適宜選択すればよく、特に限定するものではないが、例えば、N−アルキルピペラジン類の沸点とピペラジンの沸点との間に沸点を有する極性有機溶媒を用いることが好ましい。この範囲を外れた場合には、極性有機溶媒のみが留出したり、ピペラジンとN−アルキルピペラジン類が同時に留出したりするおそれがあり、N−アルキルピペラジン類の純度が低下することがある。
【0040】
本発明の精製方法において、本発明の趣旨に反しない程度であれば、上記した以外の極性有機溶媒を使用しても差し支えない。
【0041】
本発明の精製方法において、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒は市販のものでもよいし、公知の方法により合成したものでも良く、特に限定されない。また、当該極性有機溶媒の純度としては、特に限定するものではないが、N−アルキルピペラジン類の純度に悪影響を及ぼさないようにすることを考慮すると、95%以上が好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0042】
本発明の精製方法において、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の使用量は、N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物中のピペラジンの含有量に対し、10〜500重量%の範囲であることが好ましく、釜効率の観点から、20〜300重量%の範囲であることがさらに好ましく、50〜200重量%の範囲である混合物を蒸留することが特に好ましい。この範囲外の場合、例えば、500重量%よりも多くなると、混合物中のN−アルキルピペラジン類の含有量が低下し、1バッチあたりの処理量が少なくなり、釜効率が低下するおそれがある。一方、10重量%未満になると、ピペラジンがN−アルキルピペラジン類に残存して、N−アルキルピペラジン類の純度が低下するおそれがある。
【0043】
本発明の精製方法において、N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物としては、例えば、ピペラジンとアルキル化剤とを反応させて得られたN−アルキルピペラジン類の反応液が好適に使用できる。
【0044】
本発明の精製方法において、N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含有する混合物を、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒の存在下で蒸留する方法は特に限定するものではないが、例えば、N−アルキルピペラジン類とピペラジンとを含む混合物に当該極性有機溶媒を添加して、蒸留を実施する方法が挙げられる。ここで、当該極性有機溶媒は、混合物に全量一挙に添加しても、蒸留操作の途中に少しずつ添加してもよく、特に限定されない。また、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒が反応液中に所定量含まれている場合はそれをそのまま蒸留することもできる。
【0045】
本発明の精製方法において、ピペラジンの留出機構は必ずしも明らかではないが、N−アルキルピペラジン類中で水素結合等の相互作用により安定化されているピペラジンが極性有機溶媒の添加により、N−アルキルピペラジン類との相互作用が弱められ、さらに、ピペラジンは極性有機溶媒の極性部位との相互作用により極性有機溶媒と同時に揮発し、N−アルキルピペラジン類中から離脱するものと推定される。したがって、ピペラジン類の極性部位と相互作用可能な、ピペラジンの沸点以上の沸点を有する極性有機溶媒であれば、特に制限なく、本発明の精製方法に用いることができるものと推測される。
【0046】
本発明の精製方法において、蒸留方式は、単蒸留方式又は分別蒸留方式を採用でき、特に限定されないが、装置コストが安価な単蒸留方式で何ら問題はない。また、蒸留圧力や温度、還流比等の蒸留条件についても、N−アルキルピペラジン類、及び不純物の種類及び量に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、ピペラジンを留去する際の温度は、通常100〜250℃の範囲であり、好ましくは120℃〜220℃の範囲である。蒸留温度がこの範囲内であれば、留出したピペラジンの固化を抑制することができ、操作性が向上する。
【0047】
本発明の精製方法において、ピペラジン留分の蒸留は、通常、常圧で実施される。また、ピペラジンが留出した後の、N−アルキルピペラジン類の蒸留は、常圧でも、減圧下でも行うことができるが、減圧下で行う場合においては、圧力としては10〜2000Paの範囲が選ばれる。
【0048】
本発明の精製方法においては、気流同伴を伴わない無気条件、又は窒素若しくは空気等の気流同伴を行う有気条件下のいずれで蒸留を実施してもよい。
【0049】
本発明の精製方法において、留出したピペラジンは極性有機溶媒と分離して、若しくはそのまま再度、N−アルキルピペラジン類の原料に使用することができる。ピペラジンと極性有機溶媒を分離して再利用する場合、その分離方法としては、再結晶や蒸留する方法等があるが、どの方法を使用しても一向に差し支えない。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0051】
なお、本実施例における生成物の収率、選択率は、ガスクロマトグラフィーで確認した。
【0052】
ガスクロマトグラフィーには、ガスクロマトグラフ(島津製作所製 GC−2014)、キャピラリーカラム(J&W Scientific社製 DB−5)、及び検出器(FID)を使用した。
【0053】
[参考例1] N−n−オクチルピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン25.7g(0.3モル)、メタノール25.7gを仕込み、内温を80℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、1−クロロオクタン14.9g(0.1モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続した。室温まで放冷した後、反応液に25%NaOH水溶液16.0gを加え、pHを11.8とし、淡黄色透明の反応液81.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−n−オクチルピペラジンの収率は84.6%であり、反応液中には、ピペラジンが20.9重量%、N−n−オクチルピペラジンが19.8重量%含まれていた。
【0054】
[参考例2] N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン25.7g(0.3モル)、メタノール25.7gを仕込み、内温を60℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、2−ブロモエタノール12.4g(0.1モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続した。室温まで放冷した後、反応液に25%NaOH水溶液16.0gを加え、pHを11.9とし、黄色透明の反応液79.5gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの収率は74.2%であり、反応液中には、ピペラジンが22.4重量%、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンが12.2重量%含まれていた。
【0055】
[参考例3] N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン25.7g(0.3モル)、メタノール25.7gを仕込み、内温を60℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、3−クロロ−1,2−プロパンジオール11.2g(0.1モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続した。室温まで放冷した後、反応液に25%NaOH水溶液16.0gを加え、pHを11.9とし、淡黄色透明の反応液78.1gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの収率は85.7%であり、反応液中には、ピペラジンが24.8重量%、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンが17.5重量%含まれていた。
【0056】
[参考例4] N−(2−メトキシエチル)ピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン25.7g(0.3モル)、メタノール25.7gを仕込み、内温を60℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、2−メトキシエチルクロライド9.5g(0.1モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続した。室温まで放冷した後、反応液に25%NaOH水溶液16.0gを加え、pHを12.0とし、淡黄色透明の反応液74.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−(2−メトキシエチル)ピペラジンの収率は78.2%であり、反応液中には、ピペラジンが24.2重量%、N−(2−メトキシエチル)ピペラジンが15.1重量%含まれていた。
【0057】
[参考例5] N−ベンジルピペラジンの合成.
窒素雰囲気下、100mlの反応器に、ピペラジン25.7g(0.3モル)、メタノール25.7gを仕込み、内温を60℃とした。そこに、内温を80℃以下に保ちながら、ベンジルクロライド12.7g(0.1モル)を0.5時間かけて滴下し、更に同温度条件のまま撹拌を8時間継続した。室温まで放冷した後、反応液に25%NaOH水溶液16.0gを加え、pHを12.0とし、淡黄色透明の反応液76.9gを得た。生成物をガスクロマトグラフィーで分析した結果、N−ベンジルピペラジンの収率は86.2%であり、反応液中には、ピペラジンが23.9重量%、N−ベンジルピペラジンが19.3重量%含まれていた。
【0058】
参考例6] エチレングリコールモノブチルエーテルを添加してのN−n−オクチルピペラジンの蒸留精製.
コンデンサー、温度計を備えた容量200mlのガラス製単蒸留装置を用い、参考例1で調製したN−n−オクチルピペラジン反応液に、エチレングリコールモノブチルエーテル20gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、200℃以下において、42.4gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、エチレングリコールモノブチルエーテル、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、80℃未満において、1.9gのエチレングリコールモノブチルエーテル留分をカットし、液温80℃以上、120℃以下において、15.1gのN−n−オクチルピペラジン留分を得た。N−n−オクチルピペラジンの回収率は93.2%であった。蒸留残渣は8.4gであった。GC分析の結果、N−n−オクチルピペラジン留分の純度はは99.91%であった。他の例と共に参考例6の結果を表1に示す。
【0059】
実施例1] プロピレングリコールを添加してのN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの蒸留精製.
参考例6と同じ装置を用い、参考例2で調製したN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンに、プロピレングリコール30gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、210℃以下において、49.1gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、プロピレングリコール、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、80℃未満において、2.1gのプロピレングリコール留分をカットし、液温80℃以上、110℃以下において、8.2gのN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン留分を得た。N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの回収率は84.5%であった。蒸留残渣は13.9gであった。GC分析の結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン留分の純度は99.89%であった。他の例と共に実施例1の結果を表1に示す。
【0060】
実施例2] エタノールアミンを添加してのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの蒸留精製.
参考例6と同じ装置を用い、参考例3で調製したN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンに、エタノールアミン40gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、190℃以下において、55.7gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、エタノールアミン、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、150℃未満において、3.1gのエタノールアミン留分をカットし、液温150℃以上、220℃以下において、12.2gのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分を得た。N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの回収率は89.2%であった。蒸留残渣は9.2gであった。GC分析の結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分の純度は99.93%であった。他の例と共に実施例2の結果を表1に示す。
【0061】
実施例3] ジエチレントリアミンを添加してのN−n−オクチルピペラジンの蒸留精製.
参考例6と同じ装置を用い、参考例1で調製したN−n−オクチルピペラジン反応液に、ジエチレントリアミン10gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、220℃以下において、30.9gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、ジエチレントリアミン、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、90℃未満において、1.2gのジエチレントリアミン留分をカットし、液温90℃以上、120℃以下において、13.9gのN−n−オクチルピペラジン留分を得た。N−n−オクチルピペラジンの回収率は85.8%であった。蒸留残渣は7.4gであった。GC分析の結果、N−n−オクチルピペラジン留分の純度は99.74%であった。他の例と共に実施例3の結果を表1に示す。
【0062】
実施例4] ビス(2−メトキシエチル)アミンを添加してのN−(2−メトキシエチル)ピペラジンの蒸留精製.
参考例6と同じ装置を用い、参考例4で調製したN−(2−メトキシエチル)ピペラジンに、ビス(2−メトキシエチル)アミン40gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、180℃未満において、61.5gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、ビス(2−メトキシエチル)アミン、水以外の成分は含まれていなかった。次に、180℃以上、195℃未満において、1.2gのビス(2−メトキシエチル)アミン留分をカットし、液温195℃以上、220℃以下において、10.1gのN−(2−メトキシエチル)ピペラジン留分を得た。N−(2−メトキシエチル)ピペラジンの回収率は89.3%であった。蒸留残渣は6.9gであった。GC分析の結果、N−(2−メトキシエチル)ピペラジン留分の純度は99.81%であった。他の例と共に実施例4の結果を表1に示す。
【0063】
参考例7] ジメチルアセトアミドを添加してのN−ベンジルピペラジンの蒸留精製.
参考例6と同じ装置を用い、参考例5で調製したN−ベンジルピペラジン反応液に、ジメチルアセトアミド30gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、180℃以下において、51.2gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、ジメチルアセトアミド、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、90℃未満において、0.8gのジメチルアセトアミド留分をカットし、液温90℃以上、150℃以下において、16.9gのN−ベンジルピペラジン留分を得た。N−ベンジルピペラジンの回収率は91.8%であった。蒸留残渣は8.9gであった。GC分析の結果、N−ベンジルピペラジン留分の純度は99.71%であった。他の例と共に参考例7の結果を表1に示す。
【0064】
実施例5] エチレングリコールを添加してのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの蒸留精製.
実施例1と同じ装置を用い、参考例3で調製したN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンに、エチレングリコール40gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、205℃以下において、52.9gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、エチレングリコール、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、150℃未満において、2.9gのエチレングリコール留分をカットし、液温150℃以上、230℃以下において、11.8gのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分を得た。N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの回収率は86.3%であった。蒸留残渣は10.8gであった。GC分析の結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分の純度は99.84%であった。他の例と共に実施例5の結果を表1に示す。
【0065】
参考例8] ジエチレングリコールモノメチルエーテルを添加してのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの蒸留精製.
実施例1と同じ装置を用い、参考例3で調製したN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンに、ジエチレングリコールモノメチルエーテル40gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、190℃以下において、49.5gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、140℃未満において、3.6gのジエチレングリコールモノメチルエーテル留分をカットし、液温150℃以上、230℃以下において、12.4gのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分を得た。N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの回収率は90.6%であった。蒸留残渣は8.8gであった。GC分析の結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分の純度は99.42%であった。他の例と共に参考例8の結果を表1に示す。
【0066】
参考例9] 3−メトキシ−3−メチルブタノールを添加してのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの蒸留精製.
参考例6と同じ装置を用い、参考例3で調製したN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンに、3−メトキシ−3−メチルブタノー40gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、180℃以下において、50.1gのピペラジン留分を得た。このピペラジン留分にはピペラジン、3−メトキシ−3−メチルブタノー、水以外の成分は含まれていなかった。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、140℃未満において、4.2gの3−メトキシ−3−メチルブタノー留分をカットし、液温150℃以上、230℃以下において、11.9gのN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分を得た。N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジンの回収率は87.0%であった。蒸留残渣は10.4gであった。GC分析の結果、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)ピペラジン留分の純度は99.39%であった。他の例と共に参考例9の結果を表1に示す。
【0067】
[比較例1] N−n−オクチルピペラジンの蒸留精製(極性有機溶媒無添加).
参考例6と同じ装置を用い、参考例1で調製したN−n−オクチルピペラジン反応液を、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、270℃以下において、39.1gのピペラジン留分を得た。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、80℃未満において、2.9gのピペラジン留分を更にカットし、液温80℃以上、120℃以下において、16.1gのN−n−オクチルピペラジン留分を得た。N−n−オクチルピペラジン留分を得た。N−n−オクチルピペラジンの回収率は56.8%であった。蒸留残渣は9.2gであった。GC分析の結果、N−n−オクチルピペラジン留分の純度は94.18%であった。他の例と共に比較例1の結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2] N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの蒸留精製(塩酸添加).
参考例6と同じ装置を用い、参考例2で調製したN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン反応液に、35%塩酸を5gを入れ、常圧で蒸留した。液温120℃未満においてメタノール、水等の軽沸分をカットし、次いで液温120℃以上、250℃以下において、26.4gのピペラジン留分を得た。次に、減圧度を5mmHgとし、液温50℃以上、80℃未満において、4.1gのピペラジン留分を更にカットし、液温80℃以上、110℃以下において、4.2gのN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン留分を得た。N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの回収率は43.3%であった。蒸留残渣は25.4gであった。蒸留残渣にはピペラジン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンの塩酸塩が含まれていた。GC分析の結果、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン留分の純度は97.69%であった。他の例と共に比較例2の結果を表1に示す。
【0069】
なお、表記を簡潔にするため、蒸留前の反応液に添加した成分を以下の様に称した。
【0070】
EGBE:エチレングリコールモノブチルエーテル,
PG:プロピレングリコール,
MEA:エタノールアミン,
DETA:ジエチレントリアミン,
BMEA:ビス(2−メトキシエチル)アミン,
DMAc:ジメチルアセトアミド,
EG:エチレングリコール,
DEGMM:ジエチレングリコールモノメチルエーテル,
3−MMB:3−メトキシ−3−メチルブタノール,
35%塩酸:35%HCl。
【0071】
【表1】
表1から明らかなとおり、実施例1〜実施例5と比較例1とを比較すると、極性有機溶媒を添加した場合、N−アルキルピペラジン類の純度、回収率が共に向上した。
【0072】
また、比較例2において、塩酸を添加した場合、比較例1の何も添加しない場合に比べN−アルキルピペラジン類の純度は向上するものの、実施例1〜実施例9と比べ回収率は低下した。