【実施例】
【0069】
以下、本実施形態のMFI型ゼオライトを実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
(細孔分布、細孔直径、及び外表面積の測定)
試料の細孔分布、及び、細孔直径は窒素吸着測定により測定した。
【0071】
窒素吸着測定には一般的な窒素吸着装置(商品名:OMNISORP360CX,BeckmanCoulter社製)を用い、吸脱着とも30torr/stepの条件で測定した。外表面積は、t−plot法により、吸着層の厚み(t=0.6〜1.0nm)の範囲を直線近似して求めた。
【0072】
その窒素吸着測定の脱着過程をBarret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)で解析し、横軸が細孔直径の常数、縦軸が窒素ガスの脱着量の微分値であるメソ細孔の細孔分布曲線を得た。
【0073】
メソ細孔の全細孔容積は、2nm以上50nm以下の範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めた。
【0074】
細孔分布曲線の解析にはHULINKS社のPeakfit(ver.4.12)を用いた。メソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値{d(V/m)/d(D)}のピークの内、最大のピークをガウス関数の強度近似で解析し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(=μ±2σ)内の直径を有するメソ細孔を均一メソ細孔とした。
【0075】
均一メソ細孔の細孔容積は、中心値(μ)を基準として±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算して求めた。
【0076】
(平均粒子径の測定)
外表面積から以下の式(1)を用いて算出し、平均粒子径とした。
【0077】
【数2】
式(1)中、Sは外表面積(m
2/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。
式(1)における外表面積(S(m
2/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
【0078】
(SiO
2/Al
2O
3モル比の測定)
ゼオライトのSiO
2/Al
2O
3モル比は、MFI型ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置(商品名:OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)での測定に供することにより得た。
【0079】
(凝集径の測定)
凝集径として、動的散乱法によって試料の凝集粒子径の体積平均径(D50)を測定した。測定には日機装製のマイクロトラックHRA(Model9320−x100)を用いた。測定において粒子屈折率は1.66、粒子の設定は透明非球状粒子、溶媒の液体屈折率は1.33とした。
【0080】
(粉末X線回折の測定)
スペクトリス社製のX’pert PRO MPDを用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。0.04〜5度の範囲を0.08度/ステップ、200秒/ステップで分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
【0081】
ピークの有無の確認は目視で行うことができるほか、ピークサーチプログラムを利用してもよい。ピークサーチプログラムは、一般的なプログラムが利用できる。例えば、横軸が2θ[度]、縦軸が強度[a.u.]の測定結果をSAVITSKY&GOLAYの式とSliding Polynomialフィルターで平滑化した後、2次微分を行ったときに、3点以上連続する負の値がある場合、ピークが存在すると判断できる。
【0082】
実施例1
テトラプロピルアンモニウム(以降、「TPA」とする)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを混合して懸濁させた。得られた懸濁液に種晶としてMFI型ゼオライト(HSZ860NHA,東ソー製)を加えて原料組成物とした。
【0083】
種晶の添加量は、原料組成物中のAl
2O
3とSiO
2の重量に対して、0.7重量%とした。なお以下の実施例、比較例においても種晶の種類及び添加量は実施例1と同じである。
【0084】
原料組成物において発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0085】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=44、TPA/Siモル比=0.07、Na/Siモル比=0.14、OH/Siモル比=0.21、H
2O/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0086】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0087】
得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は43nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は39であった。得られたMFI型ゼオライトのメソ細孔の全細孔容積は0.19ml/gであった。
【0088】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は5nm、中心値は11nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.08ml/gであった。また、MFI型ゼオライトにおけるメソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は44%であった。
【0089】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0090】
実施例2
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライト(HSZ860NHA,東ソー製)を種晶として加え原料組成物とした。
【0091】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様な方法で反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0092】
得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は27nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。
【0093】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。
【0094】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0095】
また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折図を
図3に示す。0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0096】
実施例3
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0097】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=128、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は47nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は97、凝集径は2μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.21ml/gであった。
【0098】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は13nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.13ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は63%であった。
【0099】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0100】
また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折図を
図5に示す。0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0101】
実施例4
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0102】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=63、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は57nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は62であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.14ml/gであった。
【0103】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は6nm、中心値は10nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.16ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は44%であった。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した粒子径の平均値は37nmであった。
【0104】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0105】
また、得られたMFI型ゼオライトのTEM像を
図6に示す。100nm以下の微細結晶の凝集体であり、メソ細孔を区切る壁やメソ細孔の規則配列は観察されない。
【0106】
実施例5
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え、原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0107】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=113、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は46nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は98、であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.19ml/gであった。
【0108】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は6nm、中心値は11nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.11ml/gであった。メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は56%であった。
【0109】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0110】
実施例6
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0111】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は26nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は26であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.42ml/gであった。
【0112】
得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、中心値は17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。
【0113】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0114】
比較例1
水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0115】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=48、Na/Siモル比=0.18、OH/Siモル比=0.18、H
2O/Siモル比=18
この原料組成物を、結晶化温度を180℃にした以外は実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は115nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は42であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.05ml/gであった。
【0116】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.3nm、中心値は4nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.01ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は26%であった。
【0117】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0118】
比較例2
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0119】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=59、TPA/Siモル比=0.15、Na/Siモル比=0.11、OH/Siモル比=0.26、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は60nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は48であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.17ml/gであった。
【0120】
また、得られた細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は32nm、中心値は25nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.17ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は100%であった。メソ細孔のピークは非常にブロードであり、半値幅の大きな均一メソ細孔しか形成されなかった。
【0121】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0122】
比較例3
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0123】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.06、OH/Siモル比=0.26、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は42nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は49であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.20ml/gであった。
【0124】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は3nm、中心値は6nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.04ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は23%であった。
【0125】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0126】
比較例4
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0127】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.11、OH/Siモル比=0.31、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は42nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は44であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.25ml/gであった。
【0128】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は40nm、中心値は13nmであった。また、均一メソ細孔容積は0.23ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は93%であった。メソ細孔のピークは非常にブロードであり、半値幅の大きな均一メソ細孔しか形成されなかった。
【0129】
比較例5
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0130】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=285、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は46nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は217、凝集径は7μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.04ml/gであった。また、そのメソ細孔全体の内、均一メソ細孔は確認されなかった。
【0131】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0132】
比較例6
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液に沈降法シリカ(東ソーシリカ製NIPSIL VM3)を添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。
【0133】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=88、TPA/Siモル比=0.10、Na/Siモル比=0.10、OH/Siモル比=0.10、H
2O/Siモル比=40
この原料組成物を、結晶化温度を160℃にしたこと以外は実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は182nm、SiO
2/Al
2O
3モル比は71であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.04ml/gであった。
【0134】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.2nm、中心値は4nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.02ml/gであり、メソ細孔全体の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は48%であった。
【0135】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0136】
比較例7
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0137】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO
2/Al
2O
3モル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.25、OH/Siモル比=0.30、H
2O/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応させたが、非晶質固体のみが得られ、結晶化しなかった。
【0138】
【表1】
表1に示すように、構造指向剤として作用するテトラプロピルアンモニウムカチオンを用いない場合、結晶のSiO
2/Al
2O
3モル比が200を超えた場合、平均粒子径が100nmを超えた場合には、実施例のMFI型ゼオライトが有するような細孔直径が均一でかつ細孔容積の大きいメソ細孔を得ることができない。
【0139】
(触媒反応)
重合性のプロピレンを基質として、触媒反応を行った。反応条件は下記のように設定した。
【0140】
触媒温度:400℃
流通ガス:プロピレン15mol%+窒素85mol%の混合ガス、474ml/分
触媒重量に対する導入プロピレン重量の比:4/時間
触媒重量:2g
触媒形状:MFI型ゼオライト粉末を400kgf/cm
2で1分間成型した後に粉砕した約1mmのペレット
反応管:内径1.7cmの石英反応管
検出器:島津製作所製GC−14A、水素炎イオン検出器(FID)
カラム:キャピラリーカラム(InterCap1,30m)
ガスクロマトグラフィー条件:窒素キャリア50ml/分、スプリット比1:50
触媒性能の指標として、プロピレン転化率とC5以上の成分の収率を比較した。本明細書において、C5以上の成分とは、炭素数が5以上の炭化水素のことを意味する。それぞれの数値は下記のように計算する。
【0141】
【数3】
式(2)中、PCはプロピレン転化率(%)であり、IPは触媒出口のプロピレン量(mol/分)であり、EPは触媒入口のプロピレン量(mol/分)である。
【0142】
【数4】
式(3)中、CYはC5以上の成分の収率であり、ECは触媒出口のC5以上の成分の炭素数(mol/分)であり、ICは触媒入口のプロピレン炭素数(mol/分)である。
【0143】
なお、C5以上の成分の炭素数は、ガスクロマトグラフィーで検出される全面積から、炭素数1〜4の成分に相当する部分の面積を引くことにより求めた。また、C5以上の成分のFID感度(炭素数あたりの面積)は、メタンと同じとして計算した。
【0144】
実施例4のMFI型ゼオライトと比較例6のMFI型ゼオライトを用いて反応を行った。
【0145】
図13にプロピレン転化率(%)の経時変化、
図14にC5以上の成分の収率(%)の経時変化を示す。
図13、14から、実施例4のMFI型ゼオライトでは、プロピレン転化率及びC5以上の成分の収率とも長時間安定していた。一方、比較例6のMFI型ゼオライトでは、プロピレン転化率及びC5以上の成分の収率ともに急激に低下した。比較例6のMFI型ゼオライトでは生成したプロピレン重合体が細孔を閉塞させたものと理解される。