特許第6070336号(P6070336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6070336均一メソ細孔を有するMFI型ゼオライト、及び、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070336
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】均一メソ細孔を有するMFI型ゼオライト、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/40 20060101AFI20170123BHJP
   B01J 29/40 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C01B39/40
   B01J29/40 Z
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-62966(P2013-62966)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2013-227203(P2013-227203A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-69976(P2012-69976)
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−504716(JP,A)
【文献】 特開2000−154019(JP,A)
【文献】 特開平03−285813(JP,A)
【文献】 特開昭53−134798(JP,A)
【文献】 特開平02−097416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 39/54
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記性質を備え、かつ、SiO/Alモル比が20以上200以下(20≦SiO/Alモル比≦200)であるMFI型ゼオライト。
(i) ピークの半値幅(hw)が最大でも20nm(hw≦20nm)であり、最大ピークの中心値(μ)が10nm以上20nm以下(10nm≦μ≦20nm)である細孔分布曲線を有し、細孔容積(pv)が少なくとも0.05ml/g(0.05ml/g≦pv)である均一メソ細孔を有する。
(ii) 回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
(iii) 平均粒子径(PD)が最大でも100nm(PD≦100nm)である。
【請求項2】
前記半値幅(hw)が10nm以下(hw≦10nm)である請求項1に記載のMFI型ゼオライト。
【請求項3】
前記(i)に示した性質を有する均一メソ細孔の細孔容積の割合(pvr)が、メソ細孔の全細孔容積に対して30%以上100%以下(30%≦pvr≦100%)である請求項1又は2に記載のMFI型ゼオライト。
【請求項4】
下記組成を有する原料組成物を水熱合成することを含む請求項1に記載のMFI型ゼオライトの製造方法。
0.03≦テトラプロピルアンモニウムカチオン/Siモル比
OH/Siモル比 ≦0.22
20≦SiO/Alモル比≦300
5≦HO/Siモル比≦20
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔直径の大きさが均一であるメソ細孔を有するMFI型ゼオライト、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MFI型ゼオライトは、ゼオライト構造由来の均一な細孔を利用した高選択性触媒として用いられている。
【0003】
しかしながら、通常のMFI型ゼオライトの細孔の大きさは1nm未満であるため、これを触媒として用いて反応させられる分子の大きさには限界があった。そこで、より大きな分子の反応にも使用できる触媒として、ミクロ細孔(2nm未満)よりも大きな、メソ細孔(2〜50nm)を有するMFI型ゼオライトの研究が行われている(例えば、非特許文献1参照)。なお、要求されるメソ細孔の大きさは反応基質である分子の大きさによって異なるが、従来は主に10nm未満のメソ細孔の形成が試みられており、10nm以上のメソ細孔形成に関わる報告は僅かであった。
【0004】
メソ細孔を有するMFI型ゼオライトの製造にはいくつかの方法が提案されている。
【0005】
例えば、アルカリ処理によってシリカ成分を溶出させ、メソ細孔を形成する方法が開示されている(例えば、非特許文献2参照)。しかし、形成されるメソ細孔は10nm未満の小さいものであった。
【0006】
また、ゼオライトの結晶化時に炭素微粒子を混在させ、それを焼成除去してメソ細孔を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この方法による場合、細孔分布はブロードであった。
【0007】
界面活性剤を用いてメソ細孔を形成する方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、細孔直径2.9nmの小さなメソ細孔が形成できた例しか開示されていない。また、界面活性剤を用いてメソ細孔を形成した場合、隣接する細孔同士が壁で隔離された規則細孔が形成される。この壁が物質移動を妨げ、触媒反応に悪い影響を与える。更には、界面活性剤が高価であること、界面活性剤の除去工程が必要であることも工業化の妨げになる。
【0008】
更に、界面活性剤を用いて規則的なメソ細孔を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。この方法による場合も、得られたゼオライトにおいて特許文献2と同様、隣接する細孔同士を隔離し、物質移動の障害となる壁が存在している。
【0009】
また他の方法として、6nmの微細結晶を集合させ、集合した結晶間にメソ細孔を形成する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、当該方法による場合も、形成されるメソ細孔は10nm未満の小さいものであった。なお、微細なMFI型ゼオライトの結晶を集合させ、結晶間の空隙をメソ細孔として利用する方法としては、他に、特許文献4〜6が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−19161公報
【特許文献2】特開2009−184888公報
【特許文献3】米国特許第6669924号公報
【特許文献4】特公昭61−21985号公報
【特許文献5】特許第3417944号公報
【特許文献6】特許第4707800号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Microporous and Mesoporous Materials 第137巻、92頁(2011年)
【非特許文献2】Microporous and Mesoporous Materials 第43巻、83頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、例えば触媒として使用するときに、より大きな分子を対象とした選択触媒反応にも用いることができる新規MFI型ゼオライト及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
触媒として用いるときに、より大きな分子(例えば、重質油や、蛋白質などの生体分子)を反応基質とする場合に対応するため、MFI型ゼオライトは、細孔直径が10nm以上のメソ細孔を有することが好ましい。一方で、細孔直径を大きくすると細孔直径の分布がブロードになる傾向があるが、ブロードな細孔直径の分布を有するMFI型ゼオライトではメソ細孔の表面を有効に利用することができず、触媒活性の観点から好ましくない。そのため、MFI型ゼオライトが、10nm以上の大きなメソ細孔を有するとともに、よりシャープな細孔直径の分布を有することが好ましい。
【0014】
本発明者は鋭意検討を行い、後述する(i)、(ii)および(iii)の性質を有するMFI型ゼオライトを見出した。本発明者は、更に、当該MFI型ゼオライトがより大きな分子を対象とした反応でも選択触媒反応における触媒として機能することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
本願は以下に記載の態様を包含する。
(1) 下記性質を備えるMFI型ゼオライト。
【0016】
(i) ピークの半値幅(hw)が最大でも20nm(hw≦20nm)であり、最大ピークの中心値(μ)が10nm以上20nm以下(10nm≦μ≦20nm)である細孔分布曲線を有し、細孔容積(pv)が少なくとも0.05ml/g(0.05ml/g≦pv)である均一メソ細孔を有する。
【0017】
(ii) 回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
【0018】
(iii) 平均粒子径(PD)が最大でも100nm(PD≦100nm)である。
(2) 前記半値幅(hw)が10nm以下(hw≦10nm)に記載のMFI型ゼオライト。
(3) 前記(i)に示した性質を有する均一メソ細孔の細孔容積の割合(pvr)が、メソ細孔の全細孔容積に対して30%以上100%以下(30%≦pvr≦100%)である(1)又は(2)に記載のMFI型ゼオライト。
(4) SiO/Alモル比が20以上200以下(20≦SiO/Alモル比≦200)である(1)〜(3)のいずれか1つに記載のMFI型ゼオライト。
(5) 下記組成を有する原料組成物を水熱合成することを含む(1)に記載のMFI型ゼオライトの製造方法。
【0019】
0.03≦テトラプロピルアンモニウムカチオン/Siモル比
OH/Siモル比 ≦0.22
20≦SiO/Alモル比≦300
5≦HO/Siモル比≦20
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、例えば触媒として使用するときに、より大きな分子を対象とした選択触媒反応にも用いることができる新規MFI型ゼオライト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図2】実施例2で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図3】実施例2で得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折である。
図4】実施例3で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図5】実施例3で得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折である。
図6】実施例4で得られたMFI型ゼオライトのTEM観察像である。
図7】実施例6で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図8】比較例1で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図9】比較例3で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図10】比較例4で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図11】比較例5で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図12】比較例6で得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線である。
図13】プロピレン転化率の経時変化である。
図14】C5以上の成分の収率の経時変化である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態のMFI型ゼオライトについて詳細に説明する。
【0023】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、以下の(i)、(ii)および(iii)の性質を有する。
【0024】
(i) ピークの半値幅(hw)が最大でも20nm(hw≦20nm)であり、最大ピークの中心値(μ)が10nm以上20nm以下(10nm≦μ≦20nm)である細孔分布曲線を有し、細孔容積(pv)が少なくとも0.05ml/g(0.05ml/g≦pv)である均一メソ細孔を有する。
【0025】
(ii) 回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
【0026】
(iii) 平均粒子径(PD)が最大でも100nm(PD≦100nm)である。
【0027】
本明細書において、MFI型ゼオライトとは、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を示す。
【0028】
本明細書におけるメソ細孔とは、IUPACで定義されたメソ細孔であり、これは細孔直径が2〜50nmの細孔を示す。
【0029】
メソ細孔は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法により測定することができる。また、窒素吸着法で得られた測定結果を解析することにより、メソ細孔の細孔容積の値を得ることができる。その解析には、例えば以下の方法を使用することができる。
【0030】
具体的には、Barret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)で脱着過程を解析する。例えば、細孔直径が2nm以上50nm以下に相当する範囲の窒素ガス脱着量を積算するとメソ細孔の全細孔容積の値を得ることができる。
【0031】
また、最初に、縦軸が単位質量当りの窒素脱着量V/m(mL/g)、横軸がメソ細孔直径D(nm)とする累積曲線を得てから、縦軸をメソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値{d(V/m)/d(D)}とすると、メソ細孔直径における単位質量当りの窒素脱着量の増加分のピークを得ることができる。
【0032】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、細孔直径が均一なメソ細孔を有する。本明細書においては、細孔直径が均一であるメソ細孔を均一メソ細孔という。
【0033】
具体的には、均一メソ細孔とは、細孔分布曲線におけるメソ細孔に係るピークの内、最大のピークをガウス関数で近似し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(μ±2σ)内の細孔直径を有するメソ細孔をいう。
【0034】
ここで、本実施形態のMFI型ゼオライトは、以上の定義により特定される均一メソ細孔のうち、所定の条件を満足する均一メソ細孔を有する。具体的には、本実施形態のMFI型ゼオライトは、ピークの半値幅(hw)が最大でも20nmであり、最大ピークの中心値(μ)が10nm以上20nm以下である細孔分布曲線を有し、細孔容積(pv)が少なくとも0.05ml/gである均一メソ細孔を有する。
【0035】
均一メソ細孔の細孔分布曲線におけるピークをガウス関数近似した際の中心値(μ)が10nm以上20nm以下に存在することにより、従来のMFI型ゼオライトと比較して、より大きいサイズの分子も選択的に反応させることができる。
【0036】
また、均一メソ細孔のピークの半値幅(hw)が20nm以下、好ましくは10nm以下(hw≦10nm)であることにより、細孔直径の大きさのバラツキが小さくなる。このようにバラツキの小さな細孔直径を有することが、反応選択性の向上に寄与する。均一メソ細孔のピークの半値幅の下限は特に限定されないが、1nm以上が好ましい。1nm未満では均一メソ細孔の細孔容積や平均粒子径を最適範囲に保つことが難しくなる。
【0037】
また、この均一メソ細孔の細孔容積(pv)が0.05ml/g未満では反応に供せられる空間が少なすぎ、ゼオライトを触媒として使用したときに、細孔内に導入される基質の量が少なくなるため、触媒としての効果が得られない。触媒として反応に供せられる空間を多くする観点から、均一メソ細孔の細孔容積は0.10ml/g以上(0.10ml/g≦pv)であることが好ましく、0.20ml/g以上(0.20ml/g≦pv)であることがより好ましい。均一メソ細孔の細孔容積の上限は特に限定されないが、0.70ml/g以下が好ましく、0.50ml/g以下が更に好ましい。0.70ml/gを超えると物理強度が低下し、扱い難くなる。
【0038】
均一メソ細孔の細孔容積は、μ±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めることができる。
【0039】
(i)に示す性質を有する均一メソ細孔の細孔容積がメソ細孔の全細孔容積に占める割合(pvr)は特に限定されないが、30%以上(30%≦pvr≦100%)であることが好ましく、更に好ましくは40%以上(40%≦pvr≦100%)である。当該割合が30%以上であることにより、より選択的な反応を行なうことができる。
【0040】
本実施形態のMFI型ゼオライトの平均粒子径(PD)は、最大でも100nm(PD≦100nm)である。その理由は、均一メソ細孔は結晶の粒子間隙に形成されるため、粒子径が100nmより大きいと間隙がメソ細孔(2〜50nm)の範囲よりも大きくなってしまい、均一メソ細孔が形成されなくなるためである。粒子径の下限値は特に限定されないが、3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることが更に好ましい。3nmを下回ると耐熱性が低下し、触媒としての性能が低くなる。
【0041】
本実施形態における平均粒子径は、外表面積から以下の式(1)を用いて算出して求めることができる。
【0042】
【数1】
式(1)中、Sは外表面積(m/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。
【0043】
式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
【0044】
なお、MFI型ゼオライトの粒子径を測定する別の方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)の写真から任意の粒子を10個以上選んで、その表面積平均直径を求める方法がある。
【0045】
粒子径の測定方法により、得られる粒子径が異なる場合もある。しかしながら、上記式(1)により求めた平均粒子径が本実施形態のMFI型ゼオライトに係る平均粒子径100nm以下の範囲であると、より大きいサイズの分子を対象とした選択触媒反応に適していると予想される。
【0046】
メソ細孔は結晶の粒子間隙に形成されるため、メソ細孔間の配置には規則性がない。このため、本実施形態のMFI型ゼオライトを粉末X線回折(回折角:2θ)によって0.1〜3度の範囲(低角側)を分析しても、ピークは検出されない。また、本実施形態のMFI型ゼオライトにおいては、メソ細孔間を区切る壁も存在しないため、メソ細孔間の物質移動が容易になる。
【0047】
本実施形態のMFI型ゼオライトのSiO/Alモル比は特に限定されないが、20以上200以下であることが好ましい。その理由は、20未満であると熱安定性が不十分で、また、範囲内と比較して、均一メソ細孔のピークの半値幅が大きくなるためである。また、200を超えると、範囲内と比較して、全メソ細孔に対する均一メソ細孔の割合が小さくなるため、好ましくない。
【0048】
本実施形態のMFI型ゼオライトの凝集径(PS)は特に限定されないが、1μm以上100μm以下(1μm≦PS≦100μm)であることが好ましい。その理由は、範囲内にある場合と比較して小さすぎると結晶化後の固液分離が困難になり、範囲内にある場合と比較して大きすぎると粉体の加工性が悪化するからである。
【0049】
なお、凝集径とは、上記SEM写真で観測される個々の粒子が凝集した凝集体の平均直径を表し、動的散乱法によって測定され、体積平均径として表される。
【0050】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、細孔内にテトラプロピルアンモニウム塩の様な構造指向剤を含んでいてもよい。テトラプロピルアンモニウム塩の様な構造指向剤はミクロ孔内に存在するため、メソ細孔の状態には影響を及ぼさないからである。但し、構造指向剤が存在するとミクロ細孔が利用できないため、ミクロ細孔を利用する反応においても触媒として使用される場合には、構造指向剤を含まないことが好ましい。
【0051】
<本実施形態のMFI型ゼオライトの製造方法>
本実施形態のMFI型ゼオライトは、水、テトラプロピルアンモニウム塩、水酸化物イオン、シリカ源となる化合物(以下、単にシリカ源ともいう)、及びアルミナ源となる化合物(以下、単にアルミナ源ともいう)を含み、以下の組成の原料組成物を水熱合成することにより製造することができる。
【0052】
0.03≦テトラプロピルアンモニウムカチオン/Siモル比、
OH/Siモル比≦0.22、
20≦SiO/Alモル比≦300、
5≦HO/Siモル比≦20
原料組成物にはテトラプロピルアンモニウム塩が含まれる。原料組成物中のテトラプロピルアンモニウム塩の量は、テトラプロピルアンモニウムカチオン/Siモル比で0.03以上である。原料組成物中のテトラプロピルアンモニウム塩の量がこれより少ない場合は均一メソ細孔を有するMFI型ゼオライトが得られない。テトラプロピルアンモニウムカチオン/Siモル比の上限は特に限定されないが、経済的な観点から、原料組成物中のテトラプロピルアンモニウム塩の量は、テトラプロピルアンモニウムカチオン/Siモル比で0.5以下であることが好ましい。
【0053】
原料組成物のOH/Siモル比は0.22以下である。その理由は、OH/Siモル比が0.22を超えると、得られるMFI型ゼオライトのメソ細孔の細孔直径が不均一になるためである。また、OH/Siモル比の下限は特に限定されないが、0.05以上が好ましい。0.05を下回ると結晶化が遅くなり、工業的な生産性が低下する。
【0054】
原料組成物はアルカリ金属を含有していてもよい。アルカリ金属の種類は特に限定されないが、Naが好ましい。また、原料組成物がアルカリ金属を含有する場合、その量はアルカリ金属/Siモル比が0.20以下(アルカリ金属/Siモル比≦0.20)であることが好ましい。その理由は、0.20を超えると結晶化が遅くなり、工業的な生産が難しくなる。
【0055】
原料組成物のSiO/Alモル比は20以上300以下であることが好ましい。原料組成物のSiO/Alモル比がこの範囲であれば、好ましいSiO/Alモル比の範囲を有するMFI型ゼオライトを得ることができる。
【0056】
原料組成物のHO/Siモル比は5以上20以下であり、5以上15以下(5≦HO/Siモル比≦15)であることが好ましい。HO/Siモル比が20を超えると結晶が粗大化し、メソ細孔を有するMFI型ゼオライトが得られない。一方、HO/Siモル比が5未満であると原料組成物の粘度が高くなるために十分な攪拌ができず、原料組成物が均一に反応しなくなる。
【0057】
原料組成物が含有するシリカ源は特に限定されない。シリカ源としては、珪酸ソーダ水溶液、沈降法シリカ、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、アルミノシリケートゲル、及びテトラエトキシシランなどのシリコンアルコキシド、Y型ゼオライトなどを例示することができ、これら1または2以上の化合物が混合して用いられてもよい。
【0058】
原料組成物が含有するアルミナ源は特に限定されない。アルミナ源としては、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウム、Y型ゼオライトなどを例示することができ、これら1または2以上の化合物が混合して用いられてもよい。
【0059】
原料組成物が含有する水酸化物イオンは特に限定されない。好ましい水酸化物イオンとしては、構造指向剤をカウンターカチオンとする水酸化物イオン、例えばテトラプロピルアンモニウム水酸化物等を由来とする水酸化物イオンを例示することができる。
【0060】
また、原料組成物が含有する好ましい水酸化物イオンとして、アルカリ金属カチオンやアルカリ土金属カチオンをカウンターカチオンとする水酸化物イオンを挙げることができる。水酸化物イオンの供給源としては、水溶液などの液体を用いてもよく、水酸化ナトリウムペレット等の固体を用いてもよい。
【0061】
本実施形態の製造方法において、原料組成物はMFI型ゼオライトを種晶として含有していてもよい。
【0062】
種晶は、原料組成物中のSiOとAlの重量に対して、0.5重量%以上含有することが好ましい。種晶の含有量が0.5重量%以上であると反応速度が速くなる。
【0063】
ここで、原料組成物中のSiOとAlの重量とは、原料組成物中のSiをSiOと仮定したときの重量と、原料組成物中のAlをAlと仮定した時の重量の和である。したがって、例えば、シリカ源としてシリカゾルを使用し、アルミナ源として水酸化アルミニウムを使用した場合、シリカゾル中のSi重量をSiO重量として求め、水酸化アルミニウム中のAl重量をAl重量として求め、これらを足し合わせたものが原料組成物中のSiOとAlの重量となる。また、シリカ源及びアルミナ源以外にSi又はAlが含まれているものを使用した場合には、シリカ源及びアルミナ源とシリカ源及びアルミナ源以外のSi又はAlを含む物質とに基づき、原料組成物中のSiOとAlの重量を算出する。
【0064】
このような原料組成物を水熱合成することにより、本実施形態のMFI型ゼオライトを製造することができる。水熱合成には任意の方法を適用することができ、特に限定されない。好ましい水熱合成の方法として、例えば、原料組成物を自生圧力下、50〜200℃の温度に保持する水熱合成法を挙げることができる。保持する際の温度は、50〜150℃であることが好ましく、70〜120℃であることがより好ましい。
【0065】
本実施形態のMFI型ゼオライトの用途は特に限定されないが、例えば、選択触媒反応における触媒として用いることができる。
【0066】
なお、選択触媒反応とは、触媒を用いて特定の化合物を選択的に合成できる、または、触媒を用いて特定の基質のみを選択的に反応させられる反応をいう。
【0067】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、上述の(i)、(ii)、および(iii)の性質を有することにより、従来のMFI型ゼオライトと比較して、より大きい分子を対象とした選択触媒反応にも用いることができるので、有用な触媒となることができる。
【0068】
また、本実施形態のMFI型ゼオライトは、基質のみならず副生物として大きい分子が生成する場合においても有用である。例えば、重合性の低分子を反応させる場合、重合生成物が細孔を閉塞させて触媒が失活する場合があるが、均一メソ細孔を有する場合、重合生成物の拡散が速く、細孔が閉塞しにくいという特徴を有する。
【実施例】
【0069】
以下、本実施形態のMFI型ゼオライトを実施例を用いて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
(細孔分布、細孔直径、及び外表面積の測定)
試料の細孔分布、及び、細孔直径は窒素吸着測定により測定した。
【0071】
窒素吸着測定には一般的な窒素吸着装置(商品名:OMNISORP360CX,BeckmanCoulter社製)を用い、吸脱着とも30torr/stepの条件で測定した。外表面積は、t−plot法により、吸着層の厚み(t=0.6〜1.0nm)の範囲を直線近似して求めた。
【0072】
その窒素吸着測定の脱着過程をBarret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)で解析し、横軸が細孔直径の常数、縦軸が窒素ガスの脱着量の微分値であるメソ細孔の細孔分布曲線を得た。
【0073】
メソ細孔の全細孔容積は、2nm以上50nm以下の範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めた。
【0074】
細孔分布曲線の解析にはHULINKS社のPeakfit(ver.4.12)を用いた。メソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値{d(V/m)/d(D)}のピークの内、最大のピークをガウス関数の強度近似で解析し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(=μ±2σ)内の直径を有するメソ細孔を均一メソ細孔とした。
【0075】
均一メソ細孔の細孔容積は、中心値(μ)を基準として±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算して求めた。
【0076】
(平均粒子径の測定)
外表面積から以下の式(1)を用いて算出し、平均粒子径とした。
【0077】
【数2】
式(1)中、Sは外表面積(m/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。
式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
【0078】
(SiO/Alモル比の測定)
ゼオライトのSiO/Alモル比は、MFI型ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置(商品名:OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)での測定に供することにより得た。
【0079】
(凝集径の測定)
凝集径として、動的散乱法によって試料の凝集粒子径の体積平均径(D50)を測定した。測定には日機装製のマイクロトラックHRA(Model9320−x100)を用いた。測定において粒子屈折率は1.66、粒子の設定は透明非球状粒子、溶媒の液体屈折率は1.33とした。
【0080】
(粉末X線回折の測定)
スペクトリス社製のX’pert PRO MPDを用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。0.04〜5度の範囲を0.08度/ステップ、200秒/ステップで分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
【0081】
ピークの有無の確認は目視で行うことができるほか、ピークサーチプログラムを利用してもよい。ピークサーチプログラムは、一般的なプログラムが利用できる。例えば、横軸が2θ[度]、縦軸が強度[a.u.]の測定結果をSAVITSKY&GOLAYの式とSliding Polynomialフィルターで平滑化した後、2次微分を行ったときに、3点以上連続する負の値がある場合、ピークが存在すると判断できる。
【0082】
実施例1
テトラプロピルアンモニウム(以降、「TPA」とする)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを混合して懸濁させた。得られた懸濁液に種晶としてMFI型ゼオライト(HSZ860NHA,東ソー製)を加えて原料組成物とした。
【0083】
種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。なお以下の実施例、比較例においても種晶の種類及び添加量は実施例1と同じである。
【0084】
原料組成物において発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0085】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.07、Na/Siモル比=0.14、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0086】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0087】
得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は43nm、SiO/Alモル比は39であった。得られたMFI型ゼオライトのメソ細孔の全細孔容積は0.19ml/gであった。
【0088】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は5nm、中心値は11nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.08ml/gであった。また、MFI型ゼオライトにおけるメソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は44%であった。
【0089】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0090】
実施例2
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライト(HSZ860NHA,東ソー製)を種晶として加え原料組成物とした。
【0091】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様な方法で反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0092】
得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は27nm、SiO/Alモル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。
【0093】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。
【0094】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0095】
また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折図を図3に示す。0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0096】
実施例3
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0097】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=128、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は47nm、SiO/Alモル比は97、凝集径は2μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.21ml/gであった。
【0098】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は13nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.13ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は63%であった。
【0099】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0100】
また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折図を図5に示す。0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0101】
実施例4
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0102】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=63、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は57nm、SiO/Alモル比は62であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.14ml/gであった。
【0103】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は6nm、中心値は10nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.16ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は44%であった。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した粒子径の平均値は37nmであった。
【0104】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0105】
また、得られたMFI型ゼオライトのTEM像を図6に示す。100nm以下の微細結晶の凝集体であり、メソ細孔を区切る壁やメソ細孔の規則配列は観察されない。
【0106】
実施例5
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え、原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0107】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=113、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は46nm、SiO/Alモル比は98、であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.19ml/gであった。
【0108】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は6nm、中心値は11nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.11ml/gであった。メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は56%であった。
【0109】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0110】
実施例6
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0111】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は26nm、SiO/Alモル比は26であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.42ml/gであった。
【0112】
得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、中心値は17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。
【0113】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0114】
比較例1
水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0115】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=48、Na/Siモル比=0.18、OH/Siモル比=0.18、HO/Siモル比=18
この原料組成物を、結晶化温度を180℃にした以外は実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は115nm、SiO/Alモル比は42であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.05ml/gであった。
【0116】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.3nm、中心値は4nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.01ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は26%であった。
【0117】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0118】
比較例2
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0119】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.15、Na/Siモル比=0.11、OH/Siモル比=0.26、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は60nm、SiO/Alモル比は48であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.17ml/gであった。
【0120】
また、得られた細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は32nm、中心値は25nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.17ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は100%であった。メソ細孔のピークは非常にブロードであり、半値幅の大きな均一メソ細孔しか形成されなかった。
【0121】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0122】
比較例3
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0123】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.06、OH/Siモル比=0.26、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は42nm、SiO/Alモル比は49であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.20ml/gであった。
【0124】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は3nm、中心値は6nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.04ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は23%であった。
【0125】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0126】
比較例4
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0127】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.11、OH/Siモル比=0.31、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は42nm、SiO/Alモル比は44であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.25ml/gであった。
【0128】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は40nm、中心値は13nmであった。また、均一メソ細孔容積は0.23ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は93%であった。メソ細孔のピークは非常にブロードであり、半値幅の大きな均一メソ細孔しか形成されなかった。
【0129】
比較例5
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0130】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=285、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は46nm、SiO/Alモル比は217、凝集径は7μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.04ml/gであった。また、そのメソ細孔全体の内、均一メソ細孔は確認されなかった。
【0131】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0132】
比較例6
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液に沈降法シリカ(東ソーシリカ製NIPSIL VM3)を添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。
【0133】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=88、TPA/Siモル比=0.10、Na/Siモル比=0.10、OH/Siモル比=0.10、HO/Siモル比=40
この原料組成物を、結晶化温度を160℃にしたこと以外は実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は182nm、SiO/Alモル比は71であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.04ml/gであった。
【0134】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.2nm、中心値は4nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.02ml/gであり、メソ細孔全体の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は48%であった。
【0135】
原料組成物の組成、及び、MFI型ゼオライトの評価結果を表1に示す。
【0136】
比較例7
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0137】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.25、OH/Siモル比=0.30、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例1と同様に反応させたが、非晶質固体のみが得られ、結晶化しなかった。
【0138】
【表1】
表1に示すように、構造指向剤として作用するテトラプロピルアンモニウムカチオンを用いない場合、結晶のSiO/Alモル比が200を超えた場合、平均粒子径が100nmを超えた場合には、実施例のMFI型ゼオライトが有するような細孔直径が均一でかつ細孔容積の大きいメソ細孔を得ることができない。
【0139】
(触媒反応)
重合性のプロピレンを基質として、触媒反応を行った。反応条件は下記のように設定した。
【0140】
触媒温度:400℃
流通ガス:プロピレン15mol%+窒素85mol%の混合ガス、474ml/分
触媒重量に対する導入プロピレン重量の比:4/時間
触媒重量:2g
触媒形状:MFI型ゼオライト粉末を400kgf/cmで1分間成型した後に粉砕した約1mmのペレット
反応管:内径1.7cmの石英反応管
検出器:島津製作所製GC−14A、水素炎イオン検出器(FID)
カラム:キャピラリーカラム(InterCap1,30m)
ガスクロマトグラフィー条件:窒素キャリア50ml/分、スプリット比1:50
触媒性能の指標として、プロピレン転化率とC5以上の成分の収率を比較した。本明細書において、C5以上の成分とは、炭素数が5以上の炭化水素のことを意味する。それぞれの数値は下記のように計算する。
【0141】
【数3】
式(2)中、PCはプロピレン転化率(%)であり、IPは触媒出口のプロピレン量(mol/分)であり、EPは触媒入口のプロピレン量(mol/分)である。
【0142】
【数4】
式(3)中、CYはC5以上の成分の収率であり、ECは触媒出口のC5以上の成分の炭素数(mol/分)であり、ICは触媒入口のプロピレン炭素数(mol/分)である。
【0143】
なお、C5以上の成分の炭素数は、ガスクロマトグラフィーで検出される全面積から、炭素数1〜4の成分に相当する部分の面積を引くことにより求めた。また、C5以上の成分のFID感度(炭素数あたりの面積)は、メタンと同じとして計算した。
【0144】
実施例4のMFI型ゼオライトと比較例6のMFI型ゼオライトを用いて反応を行った。
【0145】
図13にプロピレン転化率(%)の経時変化、図14にC5以上の成分の収率(%)の経時変化を示す。図13、14から、実施例4のMFI型ゼオライトでは、プロピレン転化率及びC5以上の成分の収率とも長時間安定していた。一方、比較例6のMFI型ゼオライトでは、プロピレン転化率及びC5以上の成分の収率ともに急激に低下した。比較例6のMFI型ゼオライトでは生成したプロピレン重合体が細孔を閉塞させたものと理解される。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本実施形態のMFI型ゼオライトは、細孔直径が均一かつ細孔容積の大きいメソ細孔を有するため、例えば、より大きい分子を対象とした選択触媒反応に適している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14