(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蛍光体を含有する層(2)の厚みが20〜100μmであり、白色顔料を含有する層(1)の厚みが20〜300μmである請求項1に係る熱硬化性シリコーン樹脂シート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0019】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂シートは少なくとも層(1)と層(2)とからなり、層(2)は常温で可塑性の固体もしくは半固体である。ここで、「常温」とは通常の状態における周囲温度を意味し、通常15〜30℃の範囲の温度であり、典型的には25℃である。「半固体」とは可塑性を有し、特定の形状に成形されたときに少なくとも1時間、好ましくは8時間以上その形状を保持し得る物質の状態を云う。したがって、例えば、常温で非常に高い粘度を有する流動性物質が本質的には流動性を有するものの、非常に高い粘度のために少なくとも1時間という短時間では付与された形状に変化(即ち、くずれ)を肉眼では認めることができないとき、その物質は半固体の状態にある。固体又は半固体の状態であるので組成物は取り扱い性がよく作業性が高い。また、層(2)では蛍光体の良好な分散状態が経時的に維持される。
【0020】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂シートの層(2)は常温においてそのような可塑性の固体又は半固体の状態であるが、加熱により硬化し始める。その際の硬化過程において、現象としてはまず軟化する。即ち、固体状態の場合は僅かに流動性を示す状態になり、半固体状態の場合は僅かに流動性が高まった状態になる。その後に粘度が再上昇し固体化へ向かう。
【0021】
本発明において、層(2)は蛍光体を含み、LED素子から発光される光の波長を所要の波長に変換する役割を果たすとともに、素子を被覆し保護・封止する。層(1)は層(2)の発光の白色度向上と光の拡散及びLEDの外観を黄色に見せない遮色効果が期待出来るとともに素子の保護を高める働きをする。層(2)は厚みが、良好な波長変換性能が得られる点で、通常、20〜100μmが好ましく、30〜80μmがより好ましい。なお、蛍光体の粒径、分散濃度にもよるのでそれらを考慮した厚みを選択することが望ましい。蛍光体の量が多すぎると、例えば青色LEDから白色光を得ることが困難になる。また、蛍光体が均一に分散した一定の厚さを得るには形成作業上薄すぎない方がよい。層(1)は硬化した樹脂で厚みは素子保護の点で20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。
【0022】
以下の記載において、前記の層(1)に使用される組成物を組成物(1)と称し、層(2)に使用される組成物を組成物(2)と称することがある。Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、そしてViはビニル基を示す。
【0023】
先ず、組成物(1)及び組成物(2)に、上記好適実施形態で使用される成分について説明する。組成物(1)と組成物(2)に共通する成分についての説明は、特記しない限り、組成物(1)及び(2)に当てはまる。
【0024】
−(A)樹脂構造のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン−
本発明組成物の重要な(A)成分である樹脂構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンは、R
1SiO
1.5単位、R
22SiO単位、及びR
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位からなり(ここで、R
1、R
2、及びR
3は炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の一価炭化水素基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル若しくはシクロアルキル基、又はフェニル基を示し、R
4は独立に、炭素数2〜5、好ましくは炭素数2〜3のアルケニル基、例えばビニル基又はアリル基を示し、aは0、1又は2で、bは1又は2で、かつa+bは2又は3である。)、
上記R
22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜300個、好ましくは10〜300個、より好ましくは15〜200個、更に好ましくは20〜100個である構造を部分的に含有する樹脂構造のオルガノポリシロキサンである。
【0025】
なお、上記のR
22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜300個である構造とは、一般式(1):
【0027】
(ここで、mは5〜300の整数)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を意味する。
【0028】
(A)成分のオルガノポリシロキサン中に存在するR
22SiO単位全体の少なくとも一部、好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特には80モル%以上(80〜100モル%)が、分子中でかかる一般式(1)で表される連鎖構造を形成していることが好ましい。
【0029】
(A)成分の分子中においては、R
22SiO単位はポリマー分子を直鎖状に延伸するように働き、R
1SiO
1.5単位はポリマー分子を分岐させ或いは三次元網状化させる。R
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位の中のR
4(ビニル基又はアリル基等のアルケニル基)は、後述する(B)成分が有するR
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)とヒドロシリル化付加反応することにより本発明の組成物を硬化させる役割を果たす。
【0030】
(A)成分を構成する必須の三種のシロキサン単位のモル比、即ち、R
1SiO
1.5単位:R
22SiO単位:R
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位のモル比は、90〜24:75〜9:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、合計で100)であることが得られる硬化物の特性上好ましい。
【0031】
R
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位は、該オルガノポリシロキサン(A)中に、ビニル基又はアリル基等のアルケニル基が合計で0.001mol/100g以上存在することが好ましく、0.025mol/100g以上がより好ましく、0.03〜0.3mol/100gであることがさらに好ましい。
【0032】
また、この(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000、特に10,000〜100,000の範囲にあると、該ポリマーは固体もしくは半固体状であり作業性、硬化性などから好適である。
【0033】
このような樹脂構造のオルガノポリシロキサン(A)は、各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で上記三種のシロキサン単位が所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解縮合を行うことによって合成することができる。
【0034】
ここで、R
1SiO
1.5単位の原料としては、MeSiCl
3、EtSiCl
3、PhSiCl
3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のクロロシラン類、これらそれぞれのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類などを例示できる。
【0035】
R
22SiO単位の原料としては、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
nSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
m(PhMeSiO)
nSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
m(Ph
2SiO)
nSiMe
2Cl、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
nSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(PhMeSiO)
nSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(Ph
2SiO)
nSiMe
2OH、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
nSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(PhMeSiO)
nSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(Ph
2SiO)
nSiMe
2OMe
(ここで、m=5〜150の整数(平均値)、n=5〜300の整数(平均値))
等を例示することができる。
【0036】
また、R
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位は、R
3R
4SiO単位、R
32R
4SiO
0.5単位、R
42SiO単位、及びR
3R
42SiO
0.5単位から選ばれる1種のシロキサン単位又は2種以上のシロキサン単位の組み合わせであることを示す。その原料としては、Me
2ViSiCl、MeViSiCl
2、Ph
2ViSiCl、PhViSiCl
2等のクロロシラン類、これらのクロロシランのそれぞれに対応するメトキシシラン類等のアルコキシシラン類などを例示することができる。
【0037】
なお、本発明において、(A)成分のオルガノポリシロキサンが「実質的にR
1SiO
1.5単位、R
22SiO単位、及びR
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位からなり」とは(A)成分を構成するシロキサン単位の90モル%以上(90〜100モル%)、特には95モル%以上(95〜100モル%)がこれら3種のシロキサン単位であって、0〜10モル%、特には0〜5モル%がその他のシロキサン単位であってもよいことを意味する。具体的には、(A)成分のオルガノポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R
1SiO
1.5単位、R
22SiO単位及び/又はR
3aR
4bSiO
(4-a-b)/2単位の他に、シラノール基を有するシロキサン単位が副生することがある。(A)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して10モル%以下(0〜10モル%)、好ましくは5モル%以下(0〜5モル%)程度含有するものであってもよい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R
1(HO)SiO単位、R
1(HO)
2SiO
0.5単位、R
22(HO)SiO
0.5単位、R
3aR
4b(HO)SiO
(3-a-b)/2単位、R
3aR
4b(HO)
2SiO
(2-a-b)/2単位(ここで、R
1〜R
4、a及びbは前記の通りである)が挙げられる。
【0038】
−(B)樹脂構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン−
本発明組成物の重要な(B)成分である樹脂構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、実質的にR
1SiO
1.5単位、R
22SiO単位、及びR
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位からなり(ここで、R
1、R
2、R
3は上記の通りであり、cは0,1又は2で、dは1又は2で、かつc+dは2又は3である)、
上記R
22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜300個、好ましくは10〜300個、より好ましくは15〜200個、更に好ましくは20〜100個である直鎖状のシロキサン構造を部分的に含有する樹脂構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
【0039】
なお、R
22SiO単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜300個である構造とは、(A)成分に関して上述した通り、(B)成分中に存在するR
22SiO単位の少なくとも一部、好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特には80モル%以上(80〜100モル%)が、(B)成分の分子中で、前記一般式(1)で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を形成していることを意味する。
【0040】
(B)成分の分子中においても、R
22SiO単位はポリマー分子を直鎖状に延伸するように働き、R
1SiO
1.5単位はポリマー分子を分岐させ或いは三次元網状化させる。R
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位の中のケイ素に結合した水素原子は、上述した(A)成分が有するアルケニル基とヒドロシリル化付加反応することにより本発明の組成物を硬化させる役割を果たす。
【0041】
(B)成分を構成する必須の三種のシロキサン単位のモル比、即ち、R
1SiO
1.5単位:R
22SiO単位:R
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位のモル比は、90〜24:75〜9:50〜1、特に70〜28:70〜20:10〜2(但し、合計で100)であることが得られる硬化物の特性上好ましい。
【0042】
また、この(B)成分のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000、特に10,000〜100,000の範囲にあるものが作業性、硬化物の特性などの点から好適である。
【0043】
このような樹脂構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で上記三種のシロキサン単位が所要のモル比となるように組み合わせ、共加水分解を行うことによって合成することができる。
【0044】
ここで、R
1SiO
1.5単位の原料としては、MeSiCl
3、EtSiCl
3、PhSiCl
3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシランや、それぞれのクロロシランに対応するメトキシシランなどのアルコキシシラン等が例示できる。
【0045】
R
22SiO単位の原料としては、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
nSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
m(PhMeSiO)
nSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
m(Ph
2SiO)
nSiMe
2Cl、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
nSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(PhMeSiO)
nSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(Ph
2SiO)
nSiMe
2OH、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
nSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(PhMeSiO)
nSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
m(Ph
2SiO)
nSiMe
2OMe
(ここで、m=5〜150の整数(平均値)、n=5〜300の整数(平均値))
等を例示することができる。
【0046】
また、R
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位は、R
3HSiO単位、R
32HSiO
0.5単位、H
2SiO単位、R
3H
2SiO
0.5単位から選ばれる1種又は2種以上のシロキサン単位の任意の組み合わせであることを示し、その原料としては、Me
2HSiCl、MeHSiCl
2、Ph
2HSiCl、PhHSiCl
2等のクロロシラン類、これらのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類などを例示することができる。
【0047】
なお、本発明において、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが「実質的にR
1SiO
1.5単位、R
22SiO単位、及びR
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位からなり」とは(B)成分を構成するシロキサン単位の90モル%以上(90〜100モル%)、特には95モル%以上(95〜100モル%)がこれら3種のシロキサン単位であって、0〜10モル%、特には0〜5モル%がその他のシロキサン単位であってもよいことを意味する。具体的には、(B)成分のオルガノポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R
1SiO
1.5単位、R
22SiO単位、及びR
3cH
dSiO
(4-c-d)/2単位の他に、シラノール基を有するシロキサン単位が副生することがある。(B)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して10モル%以下(0〜10モル%)、好ましくは5モル%以下(0〜5モル%)程度含有するものであってもよい。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、R
1(HO)SiO単位、R
1(HO)
2SiO
0.5単位、R
22(HO)SiO
0.5単位、R
3cH
d(HO)SiO
(3-c-d)/2単位、R
3cH
d(HO)
2SiO
(2-c-d)/2単位(ここで、R
1〜R
3、c及びdは前記の通りである)が挙げられる。
【0048】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中のビニル基及びアリル基の合計量に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)のモル比で0.1〜4.0となる量、特に好ましくは0.5〜3.0、更に好ましくは0.8〜2.0となる量であることが好ましい。0.1未満では硬化反応が進行せず、シリコーン硬化物を得ることが困難であり、4.0を超えると未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存するため、硬化物の物性が経時的に変化する原因となる。
【0049】
−(C)白金族金属系触媒−
この触媒成分は、本発明の組成物の付加硬化反応を促進させるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがある。コスト等の見地から白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H
2PtCl
6・mH
2O,K
2PtCl
6,KHPtCl
6・mH
2O,K
2PtCl
4,K
2PtCl
4・mH
2O,PtO
2・mH
2O,(mは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができる。これらの触媒は一種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0050】
(C)成分の配合量は、硬化のための有効量でよく、通常、前記(A)及び(B)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1〜500ppm、特に好ましくは0.5〜100ppmの範囲で使用される。
【0051】
−(D)蛍光体−
(D)成分の蛍光体は、公知の蛍光体であればいずれのものであってもよく、その配合量は蛍光体含有層(2)を構成する組成物(2)中(A)〜(B)成分の合計100質量部に対して通常、0.1〜300質量部が好ましく、1〜300質量部がより好ましく、1〜100質量部の範囲が特に好ましい。(D)成分の蛍光体の平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。通常その平均粒径が10nm以上であればよく、好適には10nm〜10μm、より好適には10nm〜1μm程度のものが使用される。
【0052】
蛍光物質は、例えば、窒化物系半導体を発光層とする半導体発光ダイオードからの光を吸収し異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される、窒化物系蛍光体及び酸窒化物系蛍光体、Eu等のランタノイド系、Mn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体、アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体、アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類金属ケイ酸塩蛍光体、アルカリ土類金属硫化物蛍光体、アルカリ土類金属チオガレート蛍光体、アルカリ土類金属窒化ケイ素蛍光体、ゲルマン酸塩蛍光体、又は、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体、希土類ケイ酸塩蛍光体又はEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機及び有機錯体蛍光体、Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体等から選ばれる少なくともいずれか1以上であることが好ましい。具体例として、下記の蛍光体を使用することができるが、これに限定されない。以下において、MはSr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種の元素であり、XはF、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種であり、RはEu、Mn、又はEuとMnとの組合せのいずれかである。
【0053】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物系蛍光体は、M
2Si
5N
8:Euなどがある。また、M
2Si
5N
8:EuのほかMSi
7N
10:Eu、M
1.8Si
5O
0.2N
8:Eu、M
0.9Si
7O
0.1N
10:Euなどもある。
【0054】
Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される酸窒化物系蛍光体は、MSi
2O
2N
2:Euなどがある。
【0055】
Eu等のランタノイド系もしくはMn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類金属ハロゲンアパタイト蛍光体には、M
5(PO
4)
3X:Rなどがある。
【0056】
アルカリ土類金属ホウ酸ハロゲン蛍光体には、M
2B
5O
9X:R(Mは、Sr、Ca、Ba、Mg、Znから選ばれる少なくとも1種である。Xは、F、Cl、Br、Iから選ばれる少なくとも1種である。Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1以上である。)などがある。
【0057】
アルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体には、SrAl
2O
4:R、Sr
4Al
14O
25:R、CaAl
2O
4:R、BaMg
2Al
16O
27:R、BaMg
2Al
16O
12:R、BaMgAl
10O
17:R(Rは、Eu、Mn、EuとMn、のいずれか1種以上である。)などがある。
【0058】
アルカリ土類金属硫化物蛍光体には、La
2O
2S:Eu、Y
2O
2S:Eu、Gd
2O
2S:Euなどがある。
【0059】
Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩蛍光体には、Y
3Al
5O
12:Ce、(Y
0.8Gd
0.2)
3Al
5O
12:Ce、Y
3(Al
0.8Ga
0.2)
5O
12:Ce、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12の組成式で表されるYAG系蛍光体などがある。また、Yの一部若しくは全部をTb、Lu等で置換したTb
3Al
5O
12:Ce、Lu
3Al
5O
12:Ceなどもある。
【0060】
その他の蛍光体には、ZnS:Eu、Zn
2GeO
4:Mn、MGa
2S
4:Euなどがある。
【0061】
上述の蛍光体は、所望に応じてEuに代えて、又は、Euに加えてTb、Cu、Ag、Au、Cr、Nd、Dy、Co、Ni、Tiから選択される1種以上を含有させることもできる。
【0062】
Ca−Al−Si−O−N系オキシ窒化物ガラス蛍光体とは、モル%表示で、CaCO
3をCaOに換算して20〜50モル%、Al
2O
3を0〜30モル%、SiOを25〜60モル%、AlNを5〜50モル%、希土類酸化物または遷移金属酸化物を0.1〜20モル%とし、5成分の合計が100モル%となるオキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体である。尚、オキシ窒化物ガラスを母体材料とした蛍光体では、窒素含有量が15質量%以下であることが好ましく、希土類酸化物イオンの他に増感剤となる他の希土類元素イオンを希土類酸化物として蛍光ガラス中に0.1〜10モル%の範囲の含有量で共賦活剤として含むことが好ましい。
【0063】
また、上記蛍光体以外の蛍光体であって、同様の性能、効果を有する蛍光体も使用することができる。
【0064】
−(E)ビニル基含有オルガノポリシロキサン−
(E)は一分子中に2個以上の、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基で代表される脂肪族不飽和結合を有し、粘度が25℃で10〜1,000,000mPa・s、特に100〜100,000mPa・sのオルガノポリシロキサンである。なかでも下記一般式(2)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ少なくとも1個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンで、上記でも述べた通り、25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましいものである。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量、例えばビニル基含有オルガノポリシロキサン(E)全体の20モル%以下の量で、分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0066】
(式(2)中、R
1は互いに同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基、R
2は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、k,mは0又は正の整数であり、k+mがこのオルガノポリシロキサンの25℃の粘度を10〜1,000,000mPa・sとする数である。)
【0067】
ここで、R
1の一価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0068】
また、R
2の一価炭化水素基としても、炭素数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。
【0069】
k,mは、一般的には0<k+m≦10,000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k+m≦2,000で、0<k/(k+m)≦0.2を満足する整数である。
【0070】
(E)成分として具体的には、下記のものを例示することができる。
【0072】
(上記式において、t及びmはそれぞれ、8〜2,000の整数である。)
【0074】
(上記式において、k,mは上述した通りである。)
【0075】
具体的には、(E)成分として下記のものを例示することができる。
【化5】
【0076】
レジン構造のオルガノポリシロキサンも上記のオルガノポリシロキサンと併用して使用することが出来る。
該レジン構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンは、SiO
2単位、R
3nR
4pSiO
0.5単位及びR
3qR
4rSiO
0.5単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサン(但し、上記式において、R
3はビニル基又はアリル基、R
4は脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であり、nは2又は3、pは0又は1で、n+p=3、qは0又は1、rは2又は3で、q+r=3である。)である。
【0077】
なお、R
4の一価炭化水素基としては、式(2)中のR
2と同様の、炭素数1〜10、特に1〜6の一価炭化水素基、具体的には上記R
1の具体例(但しアルケニル基を除く)が挙げられる。
【0078】
ここで、SiO
2単位をa単位、R
3nR
4pSiO
0.5単位をb単位、R
3qR
4rSiO
0.5単位をc単位とした場合、モル比として、
(b+c)/a=0.3〜3、特に0.7〜1
c/a=0.01〜1、特に0.07〜0.15
であることが好ましく、またこのオルガノポリシロキサンは、重量平均分子量が500〜10,000の範囲であるものが好適である。
【0079】
なお、このレジン構造のオルガノポリシロキサンは、上記a単位、b単位、c単位に加えて、更に、二官能性シロキサン単位や三官能性シロキサン単位(即ち、オルガノシルセスキオキサン単位)を本発明の目的を損なわない範囲で少量含有するものであってもよい。
【0080】
このようなレジン構造のオルガノポリシロキサンは、各単位源となる化合物を、上記モル割合となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解を行うことによって容易に合成することができる。
【0081】
ここで、前記a単位源としては、ケイ酸ソーダ、アルキルシリケート、ポリアルキルシリケート、四塩化ケイ素等を例示することができる。
【0082】
また、b単位源としては、下記のものを例示することができる。
【0084】
更に、c単位源としては、下記のものを例示することができる。
【0086】
上記レジン構造のオルガノポリシロキサンは、硬化物の物理的強度及び表面のタック性を改善するために配合されるものであり、前記(E)成分の合計量当り、20〜70質量%の量で配合されるのが好ましく、特に30〜60質量%配合されるのが好ましい。レジン構造のオルガノポリシロキサンの配合量が少なすぎると、上記効果が十分達成されず、多すぎると、組成物の粘度が著しく高くなったり、硬化物にクラックが発生し易くなったりするなどの不利が生ずる。
【0087】
−(F)オルガノハイドロジェンポリシロキサン−
(F)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、該成分中のSiH基と(E)成分中のビニル基とが付加反応することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよいが、特に下記平均組成式(3)
H
a(R
5)
bSiO
(4-a-b)/2 (3)
(式中、R
5は脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、a及びbは、0.001≦a<2、0.7≦b≦2、かつ0.8≦a+b≦3を満たす数である。)
で表され、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものが挙げられる。
【0088】
ここで、上記式(3)中のR
5は、脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜10、特に炭素数1〜7の一価炭化水素基であることが好ましく、例えばメチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基、前述の一般式(1)の置換基R
2で例示したものが挙げられる。また、a及びbは、0.001≦a<2、0.7≦b≦2、かつ0.8≦a+b≦3を満たす数であり、好ましくは0.05≦a≦1、0.8≦b≦2、かつ1≦a+b≦2.7となる数である。ケイ素原子に結合した水素原子の位置は特に制約はなく、分子の末端でも途中でもよい。
【0089】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)としては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とから成る共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)
3SiO
3/2単位とから成る共重合体などが挙げられる。
【0090】
また、下記構造で示されるような化合物も使用することができる。
【0092】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)の分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は3〜1,000、特に3〜300程度のものを使用することができる。
【0093】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)は、通常、R
5SiHCl
2、(R
5)
3SiCl、(R
5)
2SiCl
2、(R
5)
2SiHCl(R
5は、前記の通りである)のようなクロロシランを加水分解するか、加水分解して得られたシロキサンを平衡化することにより得ることができる。
【0094】
なお、このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(F)の配合量は、上記(E)、(F)成分の硬化有効量であり、特にそのSiH基が(E)成分中のアルケニル基(例えばビニル基)の合計量当たり0.1〜4.0、特に好ましくは1.0〜3.0、更に好ましくは1.2〜2.8のモル比で使用されることが好ましい。0.1未満では硬化反応が進行せずシリコーンゴム硬化物を得ることが困難であり、4.0を超えると、未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存するため、ゴム物性が経時的に変化する原因となる場合が生じる。
【0095】
−(G)白色顔料−
本発明のシリコーン樹脂組成物には、白色顔料を配合する。(G)成分の白色顔料は、光の拡散材として、また白色着色材として白色度を高めるために配合するものであり、白色顔料としては二酸化チタン、アルミナ、酸化イットリウムを代表とする希土類酸化物、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を一種単独であるいは数種を併用して用いることができる。該白色顔料は、樹脂や無機充填材との相溶性、分散性を高めるため、AlやSiなどの含水酸化物等で予め表面処理することができる。白色顔料としては、二酸化チタンを用いることが好ましく、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のいずれを選択しても良い。また、平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は好ましくは50nm〜5.0μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0096】
白色顔料の配合は、白色顔料含有層(1)を構成する成分中(E)成分及び(F)成分の合計100質量部に対し、0.05〜10質量部の範囲が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。少なすぎると十分な光拡散が得られない場合がある。また、10質量部を超えると光が遮蔽される効果が大きくて輝度が低下することがある。
【0097】
蛍光体を含有せず白色顔料を含有し、白色もしくは白色半透明な硬化シリコーン樹脂層は可視光の領域において、具体的には、少なくとも波長400〜500nmの領域、好ましくは400〜600nm、さらに好ましくは400〜800nmの領域において、光透過率が好ましくは50%以下、より好ましくは40〜0.1%であり、さらに好ましくは30〜0.5%である。ここで、光透過率は、厚さ100μmの厚さの試料シートのある特定波長の入射光強度に対する透過光強度の比I/I
0(%)(ここでI
0は入射光の強度、Iは透過光の強度である)により定義される。
【0098】
−その他の配合剤−
本発明においての組成物には、上述した成分以外にも、必要に応じて、それ自体公知の各種の添加剤を配合することができる。
【0099】
・無機充填材:
無機充填材は層(1)及び/又は層(2)の熱膨張係数を低減するためなどの目的で、添加してもよい。例えば、ヒュームドシリカ等の補強性無機充填材、溶融シリカ、ケイ酸カルシウム等の非補強性無機充填材等を挙げることができる。これらの無機充填材は、合計で、(E)及び(F)成分の合計量100質量部当り100質量部以下(0〜100質量部)の範囲で、かつ本発明の目的、効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0100】
・接着助剤:
また、本発明の組成物には、接着性を付与するため、接着助剤を必要に応じて添加できる。接着助剤としては、例えば、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えばSi−CH=CH
2基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基)から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2種又は3種含有する直鎖状又は環状のケイ素原子数4〜50個、好ましくは4〜20個程度のオルガノシロキサンオリゴマー、下記一般式(4)で示されるオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物及び/又はその加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。
【0104】
(ここで、R
20は水素原子又は炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、sは1〜6、特に1〜4の整数である。)
で表される有機基、又は脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基であるが、R
19の少なくとも1個は式(5)の有機基である。〕
【0105】
一般式(4)におけるR
19の脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のアルケニル基、シクロヘキセニル基等の炭素原子数6〜8のシクロアルケニル基などが挙げられる。また、式(5)におけるR
20の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、上記R
19について例示したアルケニル基及びシクロアルケニル基、さらにフェニル基等のアリール基などの、炭素原子数1〜8、特に1〜6の一価炭化水素基が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
【0106】
さらに、接着助剤としては、1,5−グリシドキシプロピル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等、並びに、下記式に示される化合物が例示される。
【0108】
(式中、g及びhは各々0〜50の範囲の正の整数であって、しかもg+hが2〜50、好ましくは4〜20を満足するものである。)
【0111】
上記の有機ケイ素化合物の内、得られる硬化物に特に良好な接着性をもたらす化合物としては、一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基と、アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子(SiH基)とを有する有機ケイ素化合物である。
【0112】
接着助剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.2〜5質量部程度配合することができる。多すぎると硬化物の硬度に悪影響を及ぼしたり表面タック性を高めたりする恐れがある。
【0113】
さらに必要に応じて本発明の熱硬化性シリコーン樹脂シートが常温で固体ないし半固体を維持し液状にならない程度に液状シリコーン成分を添加することができる。このような液状シリコーン成分としては、常温(25℃)で粘度1〜100,000mPa・s程度のものが好ましく、例えばビニルシロキサン、ハイドロジェンシロキサン、アルコキシシロキサン、ハイドロキシシロキサン及びこれらの混合物が挙げられ、添加量はシリコーン組成物シートが常温で固体ないし半固体を維持することが条件であり、通常シリコーン組成物シート全体に対して50質量%以下である。
【0114】
・反応抑制剤:
本発明の組成物には必要に応じて適宜反応抑制剤を配合することができる。反応抑制剤はヒドロシリル化による硬化反応を抑制し、保存性を改善する目的で添加する。該反応抑制剤としては、例えば、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンのようなビニル基高含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン変性物及びシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物等が挙げられる。反応抑制剤は(A)成分100質量部当り通常0.001〜1.0質量部、好ましくは0.005〜0.5質量部添加される。
【0115】
本発明の組成物の一典型例として、実質的に(A)〜(D)成分からなる蛍光体含有シリコーン樹脂シートと実質的に(E)、(F)、(C)及び(G)成分からなる白色顔料含有シリコーン硬化樹脂シートが貼り合わされた二層のシリコーン樹脂シートが挙げられる。
【0116】
−調製及び硬化条件−
本発明のシリコーン樹脂シートの製造に使用される組成物(2)は、(A)〜(D)成分及び必要に応じて配合される任意成分を均一に混合することによって、また、組成物(1)は(E)、(F)、(C)、(G)成分及び必要に応じて配合される任意成分を均一に混合することによって、調製する。通常は、硬化が進行しないように二液に分けて保存され、使用時に二液を混合して次工程に移される。勿論、前述したアセチレンアルコール等の反応抑制剤を少量添加して一液として用いることもできる。
【0117】
本発明の二層積層シリコーン樹脂シートを製造するには、この蛍光体含有シリコーン樹脂組成物(2)を剥離フィルム上にフィルムコータや熱プレス機でシート状に加工する。次に白色顔料を含有した白色の熱硬化性シリコーン樹脂組成物(1)を前記組成物(2)の層(2)の上にフィルムコータや熱プレス機でシート状に加工する。このときの温度は層(2)が硬化しない温度とする。そして、層(2)が硬化しない温度で層(1)が硬化するように層(1)層の低温硬化性を上げておく。
【0118】
通常、蛍光体を含有するシリコーン樹脂組成物はフィルムコータなどで好ましくは20〜100μmのシート厚みでシート状に加工する。
【0119】
一方、白色顔料を含有した白色のシリコーン樹脂組成物(1)は同様な方法でシート状に加工するが、シートの厚みは好ましくは20〜300μmである。薄すぎると外力から素子や素子とリードを電気的に接続する金線を保護することができない。保護層としては300μmの厚みがあれば十分で、厚すぎると、光透過性が低下するため望ましいものではない。
【0120】
また、白色顔料を含有した白色のシリコーン樹脂組成物(1)の硬化物の性状はラバー状であることが望ましく、その硬さはJIS K 6301準拠のA型スプリング試験機を用いて測定した値が10〜90であることが好ましく、20〜80であることがより好ましい。硬さが10以上であればシートの形状保持性などが良好であり、硬さが90以下であれば、素子への追随性、成型性が良好である。
【0121】
さらに他の方法としては蛍光体含有シリコーン樹脂組成物(2)で先にフィルムを作成しその上に再度白色顔料含有熱硬化性シリコーン樹脂組成物(1)をスプレーコートでシート状に加工し作成できる。製造した二層シリコーン樹脂シートは通常冷凍して保存する。
【0122】
ここで得られた二層の熱硬化性シリコーン樹脂シートを用いてLED素子を封止する方法としては下記方法が例示される。
【0123】
例えば、
図2(Aは本発明のシート11を、LED素子3を搭載したセラミックス基板5に貼付しようとしている状態を概念的に示す断面図で、Bは貼付した状態を概念的に示す断面図である)で示されるような外部接続端子(図示略)を有するセラミックス基板5上に青色LED3を樹脂ダイボンド材で接合した後、外部接続端子とLED素子3を、金線4を使用して接続する。この形式のLED装置を封止するには本発明の二層シリコーン樹脂シートを、LED搭載基板全体を被覆できるように貼付し、加熱してLED素子全体を硬化封止する。
【0124】
本発明のシリコーン樹脂シート11は加熱することで硬化するが硬化過程で一旦軟化しその後に粘度の上昇、固体化に向かうので、金線4上に貼付しても金線4にダメージを与えることなく封止することができる。通常、この方式で封止した複数のLED3を搭載した基板5はシリコーン樹脂シートで被覆し、硬化封止したあとダイシングし個片化する。外部端子との接続が金線の変わりに金バンプなどで接合するLED装置においても金線接続の場合同様に封止することができる。
【0125】
また、リフレクター6内に搭載されたLED素子の場合は
図3(Aは本発明のシート11を、LED素子3を搭載した外部リード7に貼付しようとしている状態を概念的に示す断面図で、Bは貼付した状態を概念的に示す断面図である)で示されるように二層からなるシリコーン樹脂シート11をLED素子3と外部リード7とを接続した金線4が被覆されるように貼付し、加熱し硬化封止する。
【0126】
硬化したシリコーン樹脂は高い硬度と表面タックのない可撓性硬化物を形成し、蛍光体を含有するシリコーン樹脂層と白色顔料を含有するシリコーン樹脂層からなるため、LEDから発光する青色を色ずれもなく、均一な白色光に変換することができる上に、白色顔料含有シリコーン樹脂層で白色光を拡散することができるため、目に優しい軟らかい光を発光することができる。また、白色顔料含有シリコーン樹脂層によって蛍光体含有シリコーン樹脂層を隠蔽することができるため、非点灯時も蛍光体含有シリコーン樹脂層の色が視認されず、意匠性の高いLEDを製造することが可能となる。
【0127】
フリップチップ形式で基板とLED素子を接合する場合は、
図4に示されるようにあらかじめLED素子3と外部リード7とを金バンプ9などで接合した後、シリカなどを含有するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂からなるアンダーフィル材8を注入し、硬化させ、バンプ9と素子3の保護を行う。その後、二層からなるシリコーン樹脂シート11を貼付し、加熱することでシートを硬化させる。蛍光体を含有するシリコーン樹脂層2と白色顔料を含有するシリコーン樹脂層1の厚みで色合いや封止形状を制御することができる。
【0128】
なお、二層シリコーン樹脂シートのLED素子上への圧着は、通常、室温〜300℃以下で、10MPa以下(通常0.01〜10MPa)の加圧下で行うことができ、好ましくは5MPa以下(例えば0.1〜5MPa)、特には0.5〜5MPaである。
【0129】
本発明の二層シリコーン樹脂シートは前述したように層(2)はAステージ(未反応)状態のシリコーン樹脂でできているため、上記温度で容易に軟化し、その後固体化する。そのため、金線で接続されているようなLEDも金線を変形させることなく封止することができる。
【0130】
Aステージ(未反応状態)で加熱時の粘度が低くなりすぎる場合、あらかじめ50℃〜100℃の温度雰囲気下で希望する粘度になるまで放置し、反応を進めることができる。これは本発明の範囲内で自由に選択できる内容である。
【0131】
また、二層を形成するシリコーン樹脂組成物(2)が(D)成分(蛍光体)を含み、(1)が(G)成分(白色顔料)を含み、層(1)は硬化したことを特徴とする。ここで、「軟化温度」とは、樹脂が軟化する温度で軟化点であり各種方法があるが、本発明においてはSII社製のSS6100のような装置を用い、サーモメカニカルアナリシス(TMA)でペネトレーション法(針が樹脂に埋まっていく過程を測定し、試料の変形から軟化温度を測定する方法)により測定される軟化温度を意味する。シリコーン樹脂組成物(2)の軟化温度は通常35〜100℃、好ましくは40〜80℃の範囲である。
【0132】
シリコーン樹脂組成物(2)の硬化は、通常80〜200℃、特に90〜180℃で1〜30分、特に2〜10分である。また、100〜200℃、特に110〜180℃で0.1〜10時間、特に1〜8時間のポストキュアを行うことができる。
【実施例】
【0133】
以下、合成例、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で粘度は25℃の値である。また、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である。
【0134】
[合成例1]
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A1)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:27mol、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
33SiMe
2Cl:1mol、MeViSiCl
2:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ビニル基含有樹脂(A1)を合成した。この樹脂は、構成するシロキサン単位及び[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]で表される構造の構成比が式:[PhSiO
3/2]
0.27[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]
0.01[MeViSiO
2/2]
0.03で示される。この樹脂の重量平均分子量は62,000、融点は60℃であった。
【0135】
[合成例2]
−ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(B1)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:27mol、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
33SiMe
2Cl:1mol、MeHSiCl
2:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有樹脂(B1)を合成した。この樹脂は、構成するシロキサン単位及び[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]で表される構造の構成比が式:[PhSiO
3/2]
0.27[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]
0.01[Me
HSiO
2/2]
0.03で示される。この樹脂の重量平均分子量は58,000、融点は58℃であった。
【0136】
[合成例3]
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A2)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:27mol、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
33SiMe
2Cl:1mol、Me
2ViSiCl:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ビニル基含有樹脂(A2)を合成した。この樹脂は、構成するシロキサン単位及び[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]で表される構造の構成比が式:[PhSiO
3/2]
0.27[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]
0.01[Me
2ViSiO
1/2]
0.03で示される。この樹脂の重量平均分子量は63,000、融点は63℃であった。
【0137】
[合成例4]
−ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(B2)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:27mol、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
33SiMe
2Cl:1mol、Me
2HSiCl:3molをトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有樹脂(B2)を合成した。この樹脂は、構成するシロキサン単位及び[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]で表される構造の構成比が式:[PhSiO
3/2]
0.27[-SiMe
2O-(Me
2SiO)
33-SiMe
2O
2/2]
0.01[Me
2HSiO
1/2]
0.03で示される。この樹脂の重量平均分子量は57,000、融点は56℃であった。
【0138】
[調製例1]
(蛍光体含有シリコーン樹脂組成物(2)の調製例)
合成例1のビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A1):189g、合成例2のヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(B1):189g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルシクロヘキサノール:0.2g、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液:0.1gを加えたベース組成物90質量部に対して、さらに粒径5μm(平均粒径)の蛍光体(YAG)を10質量部加え60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく撹拌し、シリコーン樹脂組成物(2)を調製した。この組成物(2)は、25℃において可塑性の固体であった。得られた組成物の軟化点をTMAによるペネトレーション法[使用装置:SII社製SS6100]で測定したところ、60℃であった。また、該組成物を150℃/5分で硬化した硬化物の硬さはタイプDで20であった。なお、80℃/30分では硬化しなかった。
【0139】
[調製例2]
(白色顔料含有シリコーン樹脂組成物(1)の調製)
下記式(i)で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO
2単位50モル%、(CH
3)
3SiO
0.5単位42.5モル%及びVi
3SiO
0.5単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の下記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、これをプラネタリーミキサーでよく撹拌し、さらに3本ロールにて分散させたシリコーン樹脂組成物を調製した。この組成物を、150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、JIS K 6301に準拠して、A型スプリング試験機を用いた硬さを測定したところ、タイプAで60であった。この組成物100質量部に対して酸化チタン(石原産業製 PF−691)を1質量部添加し、プラネタリーミキサーでよく撹拌し、さらに3本ロールにて分散させたシリコーン樹脂組成物(1)を調製した。この組成物は、80℃/3分で硬化しラバー状であった。
【0140】
【化14】
【0141】
【化15】
【0142】
[調製例3(比較調製例)]
(蛍光体非含有・白色顔料非含有のシリコーン樹脂組成物(1’)の調製)
下記式(i)で示されるポリシロキサン(VF)50部に、SiO
2単位50モル%、(CH
3)
3SiO
0.5単位42.5モル%及びVi
3SiO
0.5単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)50部、SiH基量が前記VF及びVMQ成分中のビニル基の合計量当り1.5倍モルとなる量の下記式(ii)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.05部を加え、これをプラネタリーミキサーでよく撹拌し、さらに3本ロールにて分散させたシリコーン樹脂組成物(1’)を調製した。この組成物を、150℃/4hrにて加熱成型して硬化物を形成し、JIS K 6301に準拠して、A型スプリング試験機を用いた硬さを測定したところ、タイプAで60であった。この組成物は、80℃/3分で硬化した場合はラバー状であった。
【0143】
【化16】
【0144】
【化17】
【0145】
[調製例4(比較調製例)]
(蛍光体含有シリコーン樹脂組成物(2’)の調製)
合成例1で調製したビニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)に代えて、繰り返し単位数5〜300個の直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を含有せず常温で液体のビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂を主剤とする市販の付加反応硬化型シリコーンワニスであるKJR−632L−1(商品名、信越化学工業(株)製)70質量部に対して、実施例1と同じ粒径5μm(平均粒径)の蛍光体(YAG)30質量部を加えた後、60℃に加温したプラネタリーミキサーでよく攪拌したシリコーン樹脂組成物(2’)を製造した。
【0146】
[実施例1]
(1)白色顔料含有シリコーン樹脂シートの作製
調製例2のシリコーン樹脂組成物(1)を、2枚のETFEフィルム(旭硝子製、商品名:アフレックス)の間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、二つの面に剥離フィルムが付着した厚さ100μmのシート状硬化物を成形した。
(2)蛍光体含有シリコーン樹脂シートの作製
調製例1のシリコーン樹脂組成物(2)を、2枚のETFEフィルム(アサヒガラス製、商品名:アフレックス)(以下、「剥離フィルム」という)の間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、両面に剥離フィルムが付着した厚さ50μmのシート状に成形した。
【0147】
(3)二層シリコーン樹脂シートの作製
(2)で作製した蛍光体含有シリコーン樹脂シートの片方の剥離フィルムを剥がし、(1)で作製した硬化した白色顔料含有シリコーン樹脂シートの片方の剥離フィルムを剥がし、それぞれのシートの樹脂露出面を合わせて、貼り合わせ装置を使用して、40℃の温度で加圧しボイドや隙間もない状態で貼り合わせた。得られた二層シリコーン樹脂シートは、
図1に示すように、蛍光体含有シリコーン樹脂層(2)と、熱硬化した白色顔料含有シリコーン樹脂層(1)の両方の外側に剥離フィルム10a、10bが貼付された、シート11である。
【0148】
[実施例2]
(セラミックス基板LED素子の封止)
実施例1で得られた二層熱硬化性シリコーン樹脂シートを
図4のAで示されるように剥離フィルムごとチップサイズに切断して小片化した。得られたシート片の片面から剥離フィルム10bを剥がした後、露出した蛍光体含有シリコーン樹脂面がLEDチップに接触するようにGaN系LED素子3上に載せた後、他方の片面から剥離フィルム10aを除去した。次に、150℃で5分間加熱したところ、LED素子3上でシリコーン樹脂シートの蛍光体含有樹脂層2が一旦軟化して素子全体を被覆した後、硬化した。これにより、
図4のBで示されるようにLED素子3を被覆した蛍光体含有樹脂層2と白色顔料含有シリコーン樹脂層1が形成された。なお、白色顔料含有シリコーン樹脂層1は軟化しないが、ラバー状であるので容易に変形可能であり、蛍光体含有樹脂層2の変形に追随して変形した。更にこれを150℃で60分間加熱して2次硬化させた。この様にして得られた蛍光体含有シリコーン樹脂層2と白色顔料含有シリコーン樹脂層1で被覆されたフリップチップ構造の発光半導体(LED)装置を作製した(
図4のB)。図中、9は金バンプ、8はシリカを60質量%含有するシリコーンアンダーフィル材である。試料のLEDを3個用意し、それぞれ発光させて色度座標を大塚電子製LED光学特性モニタ(LE-3400)により測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
【0149】
[実施例3]
(リフレクター内に搭載したLED素子の封止)
実施例1で得られた二層熱硬化性シリコーン樹脂シートを用いて、
図3で示されるリフレクター6に搭載したGaN系LED素子3の封止を行うため、
図3のAで示されるように剥離フィルムごとチップサイズに切断して小片化した。LED素子3はリフレクター6内にシリコーン樹脂ダイボンド材で接着、搭載し、LED素子3と外部電極(図示略)とは金線4で接続した。
【0150】
得られたシート片11の片面から剥離フィルムを剥がし、露出した蛍光体含有シリコーン樹脂層2の表面がLEDチップ3に接触するようにGaN系LED素子3上に載せた後、他方の片面側の剥離フィルムを除去した。次に、150℃で5分間加熱したところ、LED素子3上でシリコーン樹脂シートの蛍光体含有樹脂層2が一旦軟化して素子全体を被覆した後、硬化した。これにより、
図3のBで示されるようにLED素子3を被覆した蛍光体含有樹脂層2と白色顔料含有シリコーン樹脂層1が形成された。なお、白色顔料含有シリコーン樹脂層1は軟化しないが、ラバー状であるので容易に変形可能であり、蛍光体含有樹脂層2の変形に追随して変形した。更にこれを150℃で60分間加熱して2次硬化させた。この様にして得られた蛍光体含有シリコーン樹脂層2と白色顔料含有シリコーン樹脂層1で被覆されたリフレクター搭載の発光半導体(LED)装置を作製した(
図3のB)。試料のLEDを3個用意し、それぞれを発光させて色度座標を大塚電子製LED光学特性モニタ(LE-3400)により測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
【0151】
[比較例1]
(1)蛍光体含有シリコーン樹脂シートの作製
調製例1の組成物を、2枚の剥離フィルムの間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、両面に剥離フィルムが付着した厚さ50μmのシート状に成形した。
【0152】
(2)セラミックス基板LED素子の封止
(1)で得られた蛍光体含有熱硬化性シリコーン樹脂シートを剥離フィルムごとチップサイズに切断して小片化した。得られたシート片の片面から剥離フィルムを剥がし、シート片の露出した蛍光体含有シリコーン樹脂面がLEDチップに接触するようにGaN系LED素子3上に載せた後、他方の片面側の剥離フィルムを除去した。次に、150℃で5分間加熱したところ、LED素子上でシリコーン樹脂シートが一旦軟化し素子全体を被覆、硬化して蛍光体含有樹脂層を形成した。更にこれを150℃で60分間加熱して2次硬化させた。この様にして得られた蛍光体含有シリコーン樹脂層だけで被覆されたフリップチップ構造の発光半導体(LED)装置を作製した。試料のLEDを3個用意し、それぞれを発光させて色度座標を大塚電子製LED光学特性モニタ(LE-3400)により測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
【0153】
[比較例2]
(1)蛍光体含有シリコーン樹脂シートの作製
調製例1の組成物(2)を、2枚の剥離フィルムの間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、両面にPETフィルムが付着した厚さ50μmのシート状に成形した。
【0154】
(2)透明シリコーン樹脂シートの作製
調製例3の組成物(1’)を、2枚の剥離フィルムの間に挟み、熱プレス機を用いて80℃で5tの圧力下で5分間圧縮成型を行い、二つの面にそれぞれのフィルムが付着した厚さ50μmのシート状硬化物に成形した。
【0155】
(3)二層シリコーン樹脂シートの作製
(1)で作製した蛍光体含有シリコーン樹脂シートの片方の剥離フィルムを剥がし、(2)で作製した透明シリコーン樹脂シートの片面の剥離フィルムを剥がし、それぞれのシートの樹脂露出面を合わせて、貼り合わせ装置を使用して、40℃の温度で加圧しボイドや隙間もない状態で貼り合わせた。得られた二層シリコーン樹脂シートは、
図1に示すように、蛍光体含有シリコーン樹脂層2と透明シリコーン樹脂層1’の両方の外側に剥離フィルム10a,10bが貼付された、シート11である。
【0156】
(4)セラミックス基板LED素子の封止
(3)で得られた二層熱硬化性シリコーン樹脂シートを
図4のAで示されるように剥離フィルムごとチップサイズに切断して小片化した。得られたシート片の片面の剥離フィルムを剥がし、露出した蛍光体含有シリコーン樹脂層2の面がLEDチップに接触するようにGaN系LED素子3上に載せた後、他方の片面から剥離フィルムを除去した。次に、150℃で5分間加熱したところ、LED素子上でシリコーン樹脂シートが一旦軟化し素子全体を被覆、硬化して蛍光体含有樹脂層2と透明シリコーン樹脂層1’を形成した。更にこれを150℃で60分間加熱して2次硬化させた。この様にして得られた蛍光体含有シリコーン樹脂層2と透明シリコーン樹脂層1’で被覆されたフリップチップ構造の発光半導体(LED)装置を作製した。
図4中、9は金バンプ、8はシリカを60質量%含有するシリコーンアンダーフィル材である。試料のLEDを3個用意し、それぞれを発光させて色度座標を大塚電子製LED光学特性モニタ(LE-3400)により測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
【0157】
[比較例3]
GaN系LED素子をリフレクター6内にシリコーン樹脂ダイボンド材で接着、搭載し、LED素子3と外部電極とは金線4で接合した。次に調製例4で製造したシリコーン樹脂組成物(2’)を、リフレクター内全体を被覆できる量注入し、60℃で30分、120℃で1時間、更に150℃で1時間硬化させることで発光半導体装置を作製した。試料のLEDを3個用意し、それぞれを発光させて色度座標を大塚電子製LED光学特性モニタ(LE-3400)により測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
【0158】
<特性評価>
・二層シリコーンシート内での蛍光体の分散性
実施例1で製造した10cm角の二層シリコーンシートを120℃で30分、150℃で1時間硬化させた後、1cm角に切り出した100個の小片の切断面の蛍光体層の厚みと白色顔料層の厚みを顕微鏡で測定した。その結果、蛍光体層の厚みは48〜51μm、白色顔料層の厚みは98〜102μmの範囲に制御されていた。
【0159】
・二層シリコーンシート間の接着力
蛍光体層と白色顔料層をそれぞれ形成する、蛍光体含有シリコーン樹脂シートと蛍光体非含有で白色顔料含有シリコーン樹脂シートとの接着力を測定するために、実施例1の2層から成るシリコーン樹脂シートを120℃で30分、150℃で1時間硬化させた。その後、蛍光体層と白色顔料層とを引き剥がそうとしたが完全に接着しており、蛍光体層及び白色顔料層において凝集破壊した。
【0160】
・発光半導体装置内の蛍光体の分散性
蛍光体の発光半導体装置内での分散性を確認するため、実施例3と比較例3で作製したリフレクター内に搭載した発光半導体装置をそれぞれ10個切断し、断面の蛍光体のLED素子上の厚みを顕微鏡で測定した。その結果、二層シリコーンシートを使用した実施例3の場合は素子上に蛍光体層がLED素子面から48〜51μmの厚さで均一に分散していたのに対し、比較例3の場合はLED素子面から該素子上部100μm程度のところに蛍光体が存在し、素子に近づくほど蛍光体の密度が高くなっていた。蛍光体の分散状態としては不均一な状態であった。
【0161】
・色度座標の測定
実施例2と3で作製した発光半導体装置を各々3個用意し、それぞれを発光させて大塚電子製LED光学特性モニタ(LE-3400)により色度座標を測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
(注:u’、v’:CIE1976色度座標。JIS Z8726に記載の求め方による。)
【0162】
【表1】
【0163】
実施例2、3と比較例1のv’の値を比較すると、実施例2、3の測定された光のv’の値が大きくなっている。また実施例2、3と比較例2のv’の値を比較すると実施例2、3の測定された光のv’の値が大きくなっている。このことから白色層を貼り合わせることによりv’の値を大きくすることができる。このことは少量の蛍光体量でより目的とする白色の光に近づけることができることを意味する。
【0164】
また、実施例2、3のv’の値を比較すると実施例3の方が測定された光のv’の値が大きくなっている。このことから白色層の載置条件を変えることで、v’の値を調節することができる。
【0165】
通常v’の値を大きくするためには蛍光体の充填量を大きくする必要がある。しかし、上記の結果から白色顔料層を貼り合わせることにより、より少ない量の蛍光体で同じv’の値を出すことができることが示された。
【0166】
・色度座標のバラツキ
実施例2,3と比較例1〜3で作製した発光半導体装置を各々3個用意し、それぞれを発光させて大塚電子製(LE-3400)により色度座標のバラツキを測定した。3個についての測定値の平均値を得た。
【0167】
【表2】
【0168】
実施例2、3の結果と比較例1の結果とを比べると、白色顔料含有層を貼り合わせても色度座標のバラツキはほとんど変わらないことが分かった。
【0169】
また、実施例2、3の結果と比較例3の結果とを比べると実施例2、3の方がバラツキが小さい。したがって、本発明の二層シリコーン樹脂シートを用いることにより、均一で色ずれのない発光半導体装置を得ることができることが分かった。