特許第6070883号(P6070883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6070883リチウムイオン二次電池用電極材料、リチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6070883
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用電極材料、リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20170123BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20170123BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/136
   C01B25/45 Z
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-65794(P2016-65794)
(22)【出願日】2016年3月29日
【審査請求日】2016年5月12日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】忍足 暁
(72)【発明者】
【氏名】小山 将隆
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 直幸
(72)【発明者】
【氏名】山屋 竜太
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5928648(JP,B2)
【文献】 特許第5880757(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
C01B 25/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.1968≦x≦0.35、0.01≦y≦0.08、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなり、結晶構造が斜方晶である粒子を含むリチウムイオン二次電池用電極材料であって
前記リチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤とを、質量比で90:5:5の割合で含有するリチウムイオン二次電池用電極を備えるリチウムイオン二次電池において、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g(リチウムイオン二次電池用電極材料、結着剤および導電助剤の合計質量1g当たりの電流容量)以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60以上かつ0.764以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用電極材料。
【請求項2】
前記粒子の比表面積が10m/g以上かつ25m/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用電極材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤とを、質量比で90:5:5の割合で含有するリチウムイオン二次電池用電極を備えることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用電極材料、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
LiMnPOからなる正極材料は、LiFePOからなる正極材料に比べて電池反応電圧が高く、20%程度の高いエネルギー密度を期待できる材料である。そのため、LiMnPOからなる正極材料は、電気自動車向け二次電池への展開が期待される。
【0003】
しかし、LiMnPOからなる正極材料を含む正極を備えたリチウムイオン二次電池では、次のような課題がある。(1)LiMnPOバルクの低電子伝導性、(2)LiMnPOバルクの低Li拡散性、(3)マンガンイオン(Mn2+)のヤーンテラー効果に起因する、電池反応に伴うLiMnPO結晶の異方的かつ大きな体積変化。これらの課題があるため、リチウムイオン二次電池では、正極にリチウムイオンを挿入・脱離するための、活性化エネルギーが高くなる。その結果、このリチウムイオン二次電池は、充分な電池特性が得られておらず、低温における電池特性が著しく低下する。
【0004】
リチウムイオン二次電池の低温における電池特性を改善するために、LiMnPOにおけるMnの一部をFeに置換した、LiFeMn1−xPO(0<x<1)について盛んに検討されている(例えば、特許文献1参照)。LiFeMn1−xPOは、Feが固溶されているため、LiMnPOよりも粒子内の電子伝導性が向上する。その結果、LiFeMn1−xPOからなる正極材料を含む正極を備えたリチウムイオン二次電池は、高速充電性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−101883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1等に記載されている手法を用いて、高速充電特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現できる正極材料が得られた例は報告されていない。低温における電池特性に優れるリチウムイオン二次電池を実現するには、LiMnPOにおけるMnの50%以上をFeに置換する必要があると想定される。Feの置換量が多いLiFeMn1−xPOからなる正極材料を用いたリチウムイオン二次電池(以下、「リチウムイオン二次電池A」と言う。)は、LiMnPOからなる正極材料を用いたリチウムイオン二次電池(以下、「リチウムイオン二次電池B」と言う。)よりも、充放電容量が増加する。ところが、リチウムイオン二次電池Aは、LiMnPOに由来する高電圧における電池反応の割合が低減し、LiFePOに由来する電池反応が増加する。そのため、リチウムイオン二次電池Aは、正極がLiMnPOを含むことによって期待される、エネルギー密度の向上という効果が得られない。一方、リチウムイオン二次電池Bや、Feの置換量が少ないLiFeMn1−xPOからなる正極材料を用いたリチウムイオン二次電池は、上述のLiMnPOバルクの低電子伝導性、LiMnPOバルクの低Li拡散性、および、Mn2+のヤーンテラー効果により、次のような課題があった。すなわち、これらのリチウムイオン二次電池は、特に低温や高速充放電において、良好な放電容量や質量エネルギー密度が得られないという課題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池用電極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる粒子を含むリチウムイオン二次電池用電極材料において、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量を100mAh/g以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAを0.60以上とすることにより、次のようなことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOの結晶格子体積低減および充放電時の遷移金属元素価数変化に伴う格子体積の膨張収縮の抑制かつLi脱離反応面の増大が可能となり、LiFeMn1−aPOの高い材料エネルギー密度を必要以上に損ねることなく、高速充電特性を大幅に改善できることを見出した。
【0009】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.1968≦x≦0.35、0.01≦y≦0.08、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなり、結晶構造が斜方晶である粒子を含むリチウムイオン二次電池用電極材料であって前記リチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤とを、質量比で90:5:5の割合で含有するリチウムイオン二次電池用電極を備えるリチウムイオン二次電池において、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g(リチウムイオン二次電池用電極材料、結着剤および導電助剤の合計質量1g当たりの電流容量)以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60以上かつ0.764以下であることを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤とを、質量比で90:5:5の割合で含有するリチウムイオン二次電池用電極を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料によれば、高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
[リチウムイオン二次電池用電極材料]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.08、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなり、結晶構造が斜方晶である粒子を含む。また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60以上である。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、主に、リチウムイオン二次電池用正極材料として用いられる。
【0013】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる電極活物質の一次粒子の表面が炭素質被膜によって被覆されてなることが好ましい。
【0014】
LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径は、40nm以上かつ500nm以下であることが好ましく、70nm以上かつ400nm以下であることがより好ましい。
ここで、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、次の通りである。LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子の平均一次粒子径が40nm以上であれば、微細になり過ぎることがなく、結晶性を良好に保つことができる。その結果、LiFeMn1−xMgPO粒子の結晶格子のa軸方向およびc軸方向の長さを大きく保ったままで、b軸方向の長さを特異的に短縮したLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子が得られる。一方、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子の平均一次粒子径が500nm以下であれば、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子が充分に微細化し、その結果、非常に微細かつ結晶性の良好な粒子が得られる。
【0015】
炭素質被膜の厚みは、1nm以上かつ5nm以下であることが好ましい。
炭素質被膜の厚みを上記の範囲とした理由は、次の通りである。炭素質被膜の厚みが1nm以上であれば、炭素質被膜の厚みが充分であり、所望の抵抗値を有する膜を形成することができる。その結果、導電性が低下することなく、電極材料としての導電性を確保することができる。一方、炭素質被膜の厚みが5nm以下であれば、電池活性、例えば、電極材料の単位質量あたりの電池容量が低下することがない。
【0016】
炭素質被膜によって被覆されたLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径は、60nm以上かつ550nm以下であることが好ましく、70nm以上かつ430nm以下であることがより好ましい。
ここで、炭素質被膜によって被覆されたLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる電極活物質の一次粒子の平均一次粒子径を上記の範囲とした理由は、次の通りである。平均一次粒子径が60nm以上であれば、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることに起因して必要になる炭素の質量が増加することがないため、充放電容量が低減することもない。さらに、炭素被覆が容易であるため、充分な被覆率の一次粒子が得られ、特に低温や高速充放電において良好な質量エネルギー密度が得られる。一方、平均一次粒子径が550nm以下であれば、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動がスムーズであるため、内部抵抗が増加することなく、出力特性が悪化することもない。
【0017】
炭素質被膜によって被覆されたLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる電極活物質の一次粒子の形状は特に限定されないが、球状、特に真球状の粒子からなる電極材料を生成し易いことから、その形状も球状であることが好ましい。
ここで、球状が好ましい理由は、次の通りである。炭素質被膜で被覆されている、電極活物質の一次粒子と、結着剤と、溶媒とを混合して、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができる。さらに、このリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストの集電体への塗工も容易となる。また、形状が球状であれば、電極活物質の一次粒子の表面積が最小となり、ひいては、添加する結着剤の混合量を最小限にすることができ、得られる電極の内部抵抗を小さくすることができる。
さらに、電極活物質の一次粒子の形状を球状、特に真球状とすることで最密充填し易くなる。これにより、単位体積あたりのリチウムイオン二次電池用電極材料の充填量が多くなり、その結果、電極密度を高くすることができ、リチウムイオン二次電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
【0018】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料に含まれる炭素量は、0.5質量%以上かつ3.5質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以上かつ2.5質量%以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料に含まれる炭素量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。炭素量が0.5質量%以上であれば、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が高くなり、充分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素量が3.5質量%以下であれば、炭素量が多すぎることなく、電極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が低下することがない。
【0019】
また、電極活物質の一次粒子の比表面積に対する炭素担持量([炭素担持量]/[電極活物質の一次粒子の比表面積])は、0.75以上かつ1.15以下であることが好ましく、0.8以上かつ1.1以下であることがより好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素担持量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。炭素担持量が0.75以上であれば、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が高くなり、充分な充放電レート性能を実現することができる。一方、炭素担持量が1.15以下であれば、炭素量が多すぎることなく、電極活物質の一次粒子の単位質量あたりのリチウムイオン二次電池の電池容量が低下することがない。
【0020】
「電極活物質」
電極活物質は、Li拡散に好適な結晶構造を有するLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.08、0.0001≦z≦0.001、0<w≦0.02)からなる。
LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOにおいて、xが、0.05≦x≦0.35を満たすこととした理由は、次の通りである。Feは、電圧3.5V付近で充放電容量を発現するために、CoやZnに比べ固溶に伴うエネルギー密度低下が緩やかであるので、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性を改善の見込める比較的多めの量を固溶可能とした。さらに、Feは、炭化触媒元素であり、Fe固溶により炭素質被膜の被覆性を良好にすることで出力特性や低温特性が改善できるため、充分な炭化触媒作用を発現可能な固溶量を固溶範囲とした。特に、0.05≦x≦0.25であることが好ましい。
【0021】
yが、0.01≦y≦0.08を満たすこととした理由は、次の通りである。Mgは、電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li)の挿入脱離反応の活性化エネルギーの改善効果が顕著であり、エネルギー密度の改善の効果が高い。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性を充分に改善可能となる比較的少ない量を固溶可能とした。
【0022】
zが、0.0001≦z≦0.001を満たすこととした理由は、次の通りである。
Caは電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、少量の添加においては低温特性の改善効果がみられる有用な元素である。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるばかりか、多量に添加した場合では結晶内への固溶ではなく不純物として存在し、電池として作動した際の不純物溶解による寿命特性の悪化をもたらすため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性を充分に改善可能となる比較的少ない量を固溶可能とした。
【0023】
wが、0≦w≦0.02を満たすこととした理由は、次の通りである。CoやZnは電圧1.0V〜4.3Vの範囲で電気化学的不活性な元素であり、電子伝導性およびLi拡散性、リチウムイオン(Li)の挿入脱離反応の活性化エネルギーの改善効果があり、エネルギー密度の改善の効果があるため、適宜、添加することができる。しかしながら、多量の固溶により充放電容量およびエネルギー密度の低減が顕著となるため、エネルギー密度を低減し過ぎない範囲で低温特性を充分に改善可能となる比較的少ない量を固溶可能とした。
【0024】
LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOは、結晶構造が斜方晶である。
【0025】
本実施形態におけるLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる粒子としては、例えば、LiFe0.2988Mn0.70Mg0.01Ca0.0002PO、LiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003PO、LiFe0.2968Mn0.70Mg0.03Ca0.0002PO、LiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003PO、LiFe0.2947Mn0.70Mg0.05Ca0.0003PO、LiFe0.2926Mn0.70Mg0.07Ca0.0004PO、LiFe0.2968Mn0.70Mg0.025Co0.005Ca0.0002PO、LiFe0.2947Mn0.70Mg0.045Co0.005Ca0.0003PO、LiFe0.1968Mn0.80Mg0.03Ca0.0002PO、LiFe0.2897Mn0.70Mg0.05Co0.005Ca0.0003PO、LiFe0.2957Mn0.70Mg0.04Ca0.0003PO、LiFe0.2888Mn0.70Mg0.02Ca0.0002PO、LiFe0.2965Mn0.70Mg0.03Co0.003Ca0.0002PO等が挙げられる。これらの中でも、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が大きく、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが大きくなる点から、LiFe0.2947Mn0.70Mg0.045Co0.005Ca0.0003POが好ましい。
【0026】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積は、10m/g以上かつ25m/g以下であることが好ましく、12m/g以上かつ24m/g以下であることがより好ましく、13m/g以上かつ22m/g以下であることがさらに好ましい。
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。比表面積が10m/g以上であれば、炭素質電極活物質複合粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動に時間がかかることがなく、よって内部抵抗が増加することもなく、出力特性が悪化することもない。一方、比表面積が25m/g以下であれば、炭素質電極活物質複合粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量が増加することがなく、充放電容量が低減することもない。
【0027】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料において、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60以上である。
【0028】
なお、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる粒子の4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量(mAh/g)は、環境温度25℃、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値0.1CAにて定電流充電を行い、4.0−4.3Vの範囲の容量をデータ抽出することで測定される。
【0029】
ここで、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料において、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量を上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g未満では、高速充放電において、質量エネルギー密度が低くなる。
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料において、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAを上記の範囲に限定した理由は、次の通りである。4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60未満では、高速充放電において、質量エネルギー密度が低くなる。
【0030】
このような性能(性質)を有するLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOからなる粒子としては、例えば、LiFe0.2988Mn0.70Mg0.01Ca0.0002PO、LiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003PO、LiFe0.2968Mn0.70Mg0.03Ca0.0002PO、LiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003PO、LiFe0.2947Mn0.70Mg0.05Ca0.0003PO、LiFe0.2926Mn0.70Mg0.07Ca0.0004PO、LiFe0.2968Mn0.70Mg0.025Co0.005Ca0.0002PO、LiFe0.2947Mn0.70Mg0.045Co0.005Ca0.0003PO、LiFe0.1968Mn0.80Mg0.03Ca0.0002PO等が挙げられる。これらの中でも、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が大きく、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが大きくなる点から、LiFe0.2947Mn0.70Mg0.045Co0.005Ca0.0003POが好ましい。
【0031】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料によれば、高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を実現することができる。
【0032】
[リチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法は、特に限定されないが、例えば、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源を、水を主成分とする溶媒と混合して得られた原料スラリーαを、150℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に加熱することで、加圧下にて、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子を合成する工程と、炭素源を含む水溶媒中にLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子を分散させてなる原料スラリーβを乾燥して、造粒した後、500℃以上かつ860℃以下の範囲の温度に加熱することで、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆する工程と、を有する方法が挙げられる。
【0033】
LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子の合成方法は特に限定されないが、例えば、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA(Co、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種)源を、水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌してLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPOの原料を含む原料スラリーαを調製する。
【0034】
これらLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源を、これらのモル比(Li源:Fe源:Mn源:Mg源:Ca源:P源:A源)、すなわち、Li:Fe:Mn:Mg:Ca:P:Aのモル比が2〜3.5:0.05〜0.35:0.94〜0.55:0.01〜0.10:0.00001〜0.001:0.95〜1.10:0〜0.05となるように水を主成分とする溶媒に投入し、撹拌・混合して原料スラリーαを調製する。
これらLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源は、均一に混合する点を考慮すると、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源をそれぞれ、一旦、水溶液の状態とした後、混合することが好ましい。
この原料スラリーαにおけるLi源、Fe源、Mn源、Mg源、Ca源、P源およびA源のモル濃度は、高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細なLiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子を得る必要があることから、0.8mol/L以上かつ3.5mol/L以下であることが好ましい。
【0035】
Li源としては、例えば、水酸化リチウム(LiOH)等の水酸化物、炭酸リチウム(LiCO)、塩化リチウム(LiCl)、硝酸リチウム(LiNO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸水素二リチウム(LiHPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)等のリチウム無機酸塩、酢酸リチウム(LiCHCOO)、蓚酸リチウム((COOLi))等のリチウム有機酸塩、および、これらの水和物が挙げられる。Li源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
なお、リン酸リチウム(LiPO)は、Li源およびP源としても用いることができる。
【0036】
Fe源としては、例えば、塩化鉄(II)(FeCl)、硫酸鉄(II)(FeSO)、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO))等の鉄化合物またはその水和物や、硝酸鉄(III)(Fe(NO)、塩化鉄(III)(FeCl)、クエン酸鉄(III)(FeC)等の3価の鉄化合物や、リン酸鉄リチウム等が用いられる。
【0037】
Mn源としては、Mn塩が好ましく、例えば、塩化マンガン(II)(MnCl)、硫酸マンガン(II)(MnSO)、硝酸マンガン(II)(Mn(NO)、酢酸マンガン(II)(Mn(CHCOO))、および、これらの水和物が挙げられる。Mn源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0038】
Mg源としては、Mg塩が好ましく、例えば、塩化マグネシウム(II)(MgCl)、硫酸マグネシウム(II)(MgSO)、硝酸マグネシウム(II)(Mg(NO)、酢酸マグネシウム(II)(Mg(CHCOO))、および、これらの水和物が挙げられる。Mg源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0039】
Ca源としては、Ca塩が好ましく、例えば、水酸化カルシウム(II)(Ca(OH))、塩化カルシウム(II)(CaCl)、硫酸カルシウム(II)(CaSO)、硝酸カルシウム(II)(Ca(NO)、酢酸カルシウム(II)(Ca(CHCOO))、および、これらの水和物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0040】
P源としては、例えば、オルトリン酸(HPO)、メタリン酸(HPO)等のリン酸、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、リン酸アンモニウム((NHPO)、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸水素二リチウム(LiHPO)、リン酸二水素リチウム(LiHPO)等のリン酸塩、および、これらの水和物の中から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0041】
Co源としては、Co塩が好ましく、例えば、塩化コバルト(II)(CoCl)、硫酸コバルト(II)(CoSO)、硝酸コバルト(II)(Co(NO)、酢酸コバルト(II)(Co(CHCOO))、および、これらの水和物が挙げられる。Co源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0042】
Ni源としては、例えば、Ni塩が好ましく、例えば、塩化ニッケル(II)(NiCl)、硫酸ニッケル(II)(NiSO)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO)、酢酸ニッケル(II)(Ni(CHCOO))、および、これらの水和物が挙げられる。Ni源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0043】
Zn源としては、Zn塩が好ましく、例えば、塩化亜鉛(II)(ZnCl)、硫酸亜鉛(II)(ZnSO)、硝酸亜鉛(II)(Zn(NO)、酢酸亜鉛(II)(Zn(CHCOO))、および、これらの水和物が挙げられる。Zn源としては、これらの群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0044】
Al源としては、例えば、塩化物、硫酸化物、硝酸化物、酢酸化物、水酸化物等のアルミニウム化合物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0045】
Ga源としては、例えば、塩化物、硫酸化物、硝酸化物、酢酸化物、水酸化物等のガリウム化合物が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
【0046】
水を主成分とする溶媒とは、水単独、あるいは、水を主成分とし、必要に応じてアルコール等の水性溶媒を含む水系溶媒、のいずれかである。
水性溶媒としては、Li源、Fe源、Mn源、Mg源、P源およびA源を溶解させることのできる溶媒であれば、特に制限されない。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れ、150℃以上かつ250℃以下、好ましくは165℃以上かつ215℃以下の範囲の温度に加熱し、0.5時間以上かつ60時間以下、水熱処理を行い、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子を得る。
この150℃以上かつ250℃以下の範囲の温度に到達したときの耐圧容器内の圧力は、例えば、0.1MPa以上かつ2MPa以下となる。
この場合、水熱処理時の温度および時間を調整することにより、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子の粒子径を所望の大きさに制御することが可能である。
【0048】
次いで、炭素源を含む水溶媒中に、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子を分散させて、原料スラリーβを調製する。
次いで、この原料スラリーβを、乾燥して、造粒した後、500℃以上かつ860℃以下の範囲の温度にて、0.5時間以上かつ60時間以下加熱し、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO粒子(一次粒子)の表面を炭素質被膜によって被覆し、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を得る。
【0049】
炭素源としては、特に限定されない。例えば、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプン等の天然の水溶性高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキシド等の合成高分子等が用いられる。
これらの炭素源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法において、炭素源の添加量(添加率)は、電極活物質と炭素源の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上かつ12質量%以下がより好ましい。
炭素源の添加量が1質量%以上であれば、リチウムイオン二次電池用電極材料における混合安定性が得られる。一方、炭素源の添加量が15質量%以下であれば、相対的に正極活物質の含有量が多いため、電池特性が低下することがない。
【0051】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料の製造方法によれば、高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池を得ることができる。
【0052】
[リチウムイオン二次電池用電極]
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、電極集電体と、その電極集電体上に形成された電極合剤層(電極)と、を備え、電極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を含有するものである。
すなわち、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体の一主面に電極合剤層が形成されてなるものである。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極は、主に、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる。
【0053】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料を用いて、電極集電体の一主面に電極を形成できる方法であれば特に限定されない。本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合してなる、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製する。
【0054】
「結着剤」
結着剤としては、水系で使用できれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、酢酸ビニル共重合体や、スチレン・ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン系ラテックス、フッ素系ラテックス、シリコン系ラテックス等の群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0055】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける結着剤の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上かつ6質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
「導電助剤」
導電助剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ等の繊維状炭素の群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0057】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける導電助剤の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤の合計質量を100質量%とした場合に、1質量%以上かつ15質量%以下であることが好ましく、3質量%以上かつ10質量%以下であることがより好ましい。
【0058】
「溶媒」
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストでは、集電体等の被塗布物に対して塗布し易くするために、溶媒を適宜添加してもよい。
主な溶媒は水であるが、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の特性を失わない範囲内で、アルコール類やグリコール類、エーテル類等の水系溶媒が含有されていてもよい。
【0059】
リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストにおける溶媒の含有率は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極材料と結着剤と導電助剤と溶媒の合計質量を100質量%とした場合に、80質量%以上かつ300質量%以下であることが好ましく、100質量%以上かつ250質量%以下であることがより好ましい。
上記の範囲で溶媒が含有されることにより、電極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを得ることができる。
【0060】
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と、結着剤と、導電助剤と、溶媒とを混合する方法としては、これらの成分を均一に混合できる方法であれば特に限定されない。例えば、ボールミル、サンドミル、プラネタリー(遊星式)ミキサー、ペイントシェーカー、ホモジナイザー等の混錬機を用いた方法が挙げられる。
【0061】
次いで、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを、電極集電体の一主面に塗布して塗膜とし、この塗膜を乾燥し、次いで、加圧圧着することにより、電極集電体の一主面に電極合剤層が形成されたリチウムイオン二次電池用電極を得ることができる。
【0062】
[リチウムイオン二次電池]
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極(正極)と、負極と、セパレータと、電解液と、とを備えてなる。
【0063】
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、負極、電解液、セパレータ等は特に限定されない。
負極としては、例えば、金属Li、炭素材料、Li合金、LiTi12等の負極材料を用いることができる。
また、電解液とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
【0064】
電解液は、例えば、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを、体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を、例えば、濃度1モル/dmとなるように溶解することで作製することができる。
セパレータとしては、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
【0065】
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、本実施形態のリチウムイオン二次電池用電極を正極として用いたので、高容量かつ高エネルギー密度である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実施例1]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積13.9m/gのLiFe0.2988Mn0.70Mg0.01Ca0.0002POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2988:0.70:0.01:0.0002:1となるように混合して、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.41であった。
反応後、耐熱容器内の雰囲気が室温になるまで冷却して、ケーキ状態の反応生成物の沈殿物を得た。
この沈殿物を蒸留水で複数回、充分に水洗し、乾燥しないように含水率40%に保持し、ケーキ状物質とした。
このケーキ状物質を70℃にて2時間真空乾燥させて、得られた粉体(粒子)の95質量%に対し、あらかじめ10質量%に調整したポリビニルアルコール2質量%を水溶媒中に分散してなる原料スラリーβを乾燥造粒後、735℃にて7.5時間熱処理を行うことにより、粒子の表面を炭素質被膜によって被覆し、実施例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0068】
[実施例2]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積14.0m/gのLiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2967:0.70:0.03:0.0003:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.37であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0069】
[実施例3]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積19.5m/gのLiFe0.2968Mn0.70Mg0.03Ca0.0002POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2968:0.70:0.03:0.0002:1となるように混合して、さらにpH調整剤として、できあがりのLiFe0.2968Mn0.70Mg0.03Ca0.0002POに対してLiOHの添加量が1mol%となるようにLiOH水溶液を添加し、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.81であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0070】
[実施例4]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積24.6m/gのLiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2967:0.70:0.03:0.0003:1となるように混合して、さらにpH調整剤として、できあがりのLiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003POに対してLiOHの添加量が2mol%となるようにLiOH水溶液を添加し、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは6.11であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0071】
[実施例5]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積13.9m/gのLiFe0.2947Mn0.70Mg0.05Ca0.0003POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2947:0.70:0.05:0.0003:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.52であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0072】
[実施例6]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積14.0m/gのLiFe0.2926Mn0.70Mg0.07Ca0.0004POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2926:0.70:0.07:0.0004:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.39であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0073】
[実施例7]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積15.3m/gのLiFe0.2968Mn0.70Mg0.025Co0.005Ca0.0002POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液、Co源としてCoSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Co:Ca:P=3:0.2968:0.70:0.025:0.005:0.0002:1となるように混合して、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.46であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例7のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0074】
[実施例8]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積13.4m/gのLiFe0.2947Mn0.70Mg0.045Co0.005Ca0.0003POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液、Co源としてCoSO水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Co:Ca:P=3:0.2947:0.70:0.045:0.005:0.0003:1となるように混合して、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.35であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0075】
[実施例9]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積14.1m/gのLiFe0.1968Mn0.80Mg0.03Ca0.0002POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.1968:0.80:0.03:0.0002:1となるように混合して、250mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.48であった。
以下、実施例1と同様にして、実施例9のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0076】
[比較例1]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積13.2m/gのLiFe0.2998Mn0.70Ca0.0002POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.2998:0.70:0.0002:1となるように混合して、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.44であった。
以下、実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0077】
[比較例2]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積24.1m/gのLiFe0.2996Mn0.70Ca0.0004POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Ca:P=3:0.2996:0.70:0.0004:1となるように混合して、さらにpH調整剤として、できあがりのLiFe0.2996Mn0.70Ca0.0004POに対してLiOHの添加量が2mol%となるようにLiOH水溶液を添加し、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは6.14であった。
以下、実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0078】
[比較例3]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積9.6m/gのLiFe0.2969Mn0.70Mg0.03Ca0.0001POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2969:0.70:0.03:0.0001:1となるように混合して、さらにpH調整剤として、できあがりのLiFe0.2969Mn0.70Mg0.03Ca0.0001POに対して酢酸の添加量が2mol%となるように酢酸水溶液を添加し、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは4.54であった。
以下、実施例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0079】
[比較例4]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積27.3m/gのLiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2967:0.70:0.03:0.0003:1となるように混合して、さらにpH調整剤として、できあがりのLiFe0.2967Mn0.70Mg0.03Ca0.0003POに対してLiOHの添加量が3mol%となるようにLiOH水溶液を添加し、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは6.76であった。
以下、実施例1と同様にして、比較例4のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0080】
[比較例5]
「リチウムイオン二次電池用電極材料の合成」
以下のようにして、比表面積13.7m/gのLiFe0.2908Mn0.70Mg0.09Ca0.0002POを合成した。
Li源およびP源としてLiPO、Fe源としてFeSO水溶液、Mn源としてMnSO水溶液、Mg源としてMgSO水溶液、Ca源としてCa(OH)水溶液を用い、これらをモル比でLi:Fe:Mn:Mg:Ca:P=3:0.2908:0.70:0.09:0.0002:1となるように混合して、280mlの原料スラリーαを調製した。
次いで、この原料スラリーαを耐圧容器に入れた。
その後、この原料スラリーαについて、225℃にて3.5時間、加熱反応を行い、水熱合成を行った。水熱合成後のスラリーのpHは5.47であった。
以下、実施例1と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池用電極材料を得た。
【0081】
「リチウムイオン二次電池用電極材料の評価」
(1)炭素量
炭素分析計(商品名:EMIA−220V、HORIBA社製)を用いて、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料における炭素量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0082】
(2)比表面積
比表面積計(商品名:BELSORP−mini、日本ベル社製)を用いて、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料の比表面積を、窒素(N)吸着によるBET法により測定した。評価結果を表1に示す。
【0083】
「リチウムイオン二次電池の作製」
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用電極材料と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、電極材料:AB:PVdF=90:5:5となるように加えて、これらを混合し、リチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを調製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用電極材料ペーストを、厚さ30μmのアルミニウム箔(集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、アルミニウム箔の表面に電極合剤層を形成した。その後、電極合剤層を、所定の密度となるように、所定の圧力にて加圧し、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池用正極を作製した。
次いで、このリチウムイオン二次電池用正極を、成形機を用いて直径16mmの円板状に打ち抜き、真空乾燥後、乾燥アルゴン雰囲気下、ステンレススチール(SUS)製の2016コイン型セルを用いて、実施例および比較例のリチウムイオン二次電池を作製した。
負極としては金属リチウムを、セパレータとしては多孔質ポリプロピレン膜を、電解液としては1MのLiPF溶液を用いた。LiPF溶液としては、炭酸エチレンと、炭酸エチレンとを、体積比で1:1となるように混合したものを用いた。
【0084】
「リチウムイオン二次電池の評価」
(1)電池特性
リチウムイオン二次電池の電池特性を評価した。環境温度25℃にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値0.1CAにて定電流充電を行った。その後、1分間休止した後、充電を行った環境温度と同じ温度にて、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して2.0Vになるまで0.1CAの定電流放電を行った。その後、正極の電圧がLiの平衡電圧に対して4.3Vになるまで電流値1CAにて定電流充電を行った。0.1CAおよび1CAでの充電について、4.0−4.3Vの範囲の容量をデータ抽出し、1CAと0.1CAの容量を比較することでMnの高速充電特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1の結果から、実施例1〜9のリチウムイオン二次電池用電極材料は、比表面積が13.9m/g以上かつ24.6m/g以下、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100.1mAh/g以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.605以上であるため、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における1CA容量が60.6mAh/g以上であることが分かった。
これに対して、比較例1のリチウムイオン二次電池用電極材料は、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が88.9mAh/g、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.521であるため、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における1CA容量が46.3mAh/gであることが分かった。
比較例2のリチウムイオン二次電池用電極材料は、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が96.3mAh/g、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.596であるため、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における1CA容量が57.4mAh/gであることが分かった。
比較例3のリチウムイオン二次電池用電極材料は、比表面積が9.6m/g、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.510であるため、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における1CA容量が51.3mAh/gであることが分かった。
比較例4のリチウムイオン二次電池用電極材料は、比表面積が27.3m/g、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.544であるため、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における1CA容量が56.7mAh/gであることが分かった。
比較例5のリチウムイオン二次電池用電極材料は、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が96.6mAh/gであるため、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における1CA容量が59.9mAh/gであることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.08、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなり、結晶構造が斜方晶である粒子を含み、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60以上であるため、このリチウムイオン二次電池用電材料を用いて作製したリチウムイオン二次電池用電極を備えたリチウムイオン二次電池は、高速充放電において、充放電容量およびエネルギー密度が高いから、より高電圧、高エネルギー密度、高負荷特性および高速充放電特性が期待される次世代の二次電池に対しても適用することが可能であり、次世代の二次電池の場合、その効果は非常に大きなものである。
【要約】
【課題】高速充放電において、質量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池用電極材料を提供する。
【解決手段】本発明のリチウムイオン二次電池用電極材料は、LiFeMn1−w−x−y−zMgCaPO(但し、AはCo、Ni、Zn、AlおよびGaからなる群から選択される少なくとも1種、0.05≦x≦0.35、0.01≦y≦0.08、0.0001≦z≦0.001、0≦w≦0.02)からなり、結晶構造が斜方晶である粒子を含み、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量が100mAh/g以上、4.0V−4.3Vの範囲の定電流充電における0.1CA容量に対する1CA容量の割合1CA/0.1CAが0.60以上である。
【選択図】なし