(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070918
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】表示装置の点灯制御方法及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/32 20160101AFI20170123BHJP
G09G 3/30 20060101ALI20170123BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09G3/30 K
G09G3/20 622D
G09G3/20 642A
G09G3/20 611J
G09G3/20 622P
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-284554(P2011-284554)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-134377(P2013-134377A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 誠
【審査官】
橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−109427(JP,A)
【文献】
特開昭62−220986(JP,A)
【文献】
特開2005−003768(JP,A)
【文献】
特開2002−023689(JP,A)
【文献】
特開2007−094009(JP,A)
【文献】
特開2007−248902(JP,A)
【文献】
特開平09−325729(JP,A)
【文献】
特開2003−122289(JP,A)
【文献】
特開平02−205890(JP,A)
【文献】
特開平10−214058(JP,A)
【文献】
特開2005−156960(JP,A)
【文献】
特開2008−191353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/32
G09G 3/20
G09G 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子(1)として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部(10)と、
前記表示部(10)の行方向に配置された前記複数の発光素子(1)のアノード端子に接続された複数の共通ライン(C)を走査して電圧を印加するための走査部(20)と、
前記表示部(10)の列方向に配置された前記複数の発光素子(1)のカソード端子に接続された複数の駆動ライン(S)を導通させて該発光素子(1)に電流を流すための駆動部(30)と、
を備える表示装置の点灯制御方法において、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、
表示データを保持する工程と、
前記保持された表示データに基づいて、一サイクル中の、前記発光素子(1)の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいて、前記走査部(20)が前記共通ライン(C)に電圧を印加して前記発光素子(1)を点灯させる工程と、
同一サイクル中の、前記発光素子(1)を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいて、前記走査部(20)が前記共通ライン(C)への電圧の印加を停止して前記発光素子(1)を非点灯とする工程と、
を含むことを特徴とする表示装置の点灯制御方法。
【請求項2】
複数の発光素子(1)として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部(10)と、
前記表示部(10)の行方向に配置された前記複数の発光素子(1)のアノード端子に接続された複数の共通ライン(C)を走査して電圧を印加するための走査部(20)と、
前記表示部(10)の列方向に配置された前記複数の発光素子(1)のカソード端子に接続された複数の駆動ライン(S)を導通させて該発光素子(1)に電流を流すための駆動部(30)と、
を備える表示装置の点灯制御方法であって、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、
表示データを保持する工程と、
前記保持された表示データに基づいて、一サイクル中の、前記発光素子(1)の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいて、前記駆動部(30)による前記駆動ライン(S)の導通期間に応じて、前記走査部(20)による前記共通ライン(C)への電圧の印加の導通期間を変化させて前記発光素子(1)を点灯させ、
同一サイクル中の、前記発光素子(1)を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいて、前記共通ライン(C)に電圧を印加せず前記発光素子(1)を非点灯とする工程を含むことを特徴とする表示装置の点灯制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置の点灯制御方法であって、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、一フレーム中で、前記走査部(20)による前記複数の共通ライン(C)への電圧の印加を、前記駆動部(30)による前記駆動ライン(S)の導通のタイミングと同期させることを特徴とする表示装置の点灯制御方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一に記載の表示装置の点灯制御方法であって、
前記走査部(20)は、共通ライン(C)に接続される複数の発光素子(1)の内、該複数の発光素子(1)が接続された駆動ライン(S)を駆動する前記駆動部(30)による導通期間の内で、点灯期間が最も長い発光素子(1)の点灯期間に合わせて、該共通ライン(C)に電圧を印加するよう制御してなることを特徴とする表示装置の点灯制御方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の表示装置の点灯制御方法であって、
前記発光素子(1)が点灯可能な最大期間のうち、実際に前記発光素子(1)を点灯させる点灯期間よりも、前記発光素子(1)を点灯させない非点灯期間を長くしてなることを特徴とする表示装置の点灯制御方法。
【請求項6】
複数の発光素子(1)として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部(10)と、
前記表示部(10)の行方向に配置された前記複数の発光素子(1)のアノード端子に接続された複数の共通ライン(C)を走査して電圧を印加するための走査部(20)と、
前記表示部(10)の列方向に配置された前記複数の発光素子(1)のカソード端子に接続された複数の駆動ライン(S)を導通させて該発光素子(1)に電流を流すための駆動部(30)と、
を備える表示装置であって、さらに、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、
保持された表示データに基づいて、該一サイクル中の、前記発光素子(1)の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいては、前記走査部(20)で前記共通ライン(C)に電圧を印加して前記発光素子(1)を点灯させ、
同一のサイクル中の、前記発光素子(1)を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいては、前記走査部(20)で前記共通ライン(C)への電圧の印加を停止して前記発光素子(1)を非点灯とするよう点灯制御する点灯制御部(2)を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項7】
複数の発光素子(1)として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部(10)と、
前記表示部(10)の行方向に配置された前記複数の発光素子(1)のアノード端子に接続された複数の共通ライン(C)を走査して電圧を印加するための走査部(20)と、
前記表示部(10)の列方向に配置された前記複数の発光素子(1)のカソード端子に接続された複数の駆動ライン(S)を導通させて該発光素子(1)に電流を流すための駆動部(30)と、
を備える表示装置であって、さらに、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、保持された表示データに基づいて、一サイクル中の、前記発光素子(1)の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいて、前記駆動部(30)による前記駆動ライン(S)の導通期間に応じて、前記走査部(20)による前記共通ライン(C)への電圧の印加の導通期間を変化させて前記発光素子(1)を点灯させ、同一サイクル中の、前記発光素子(1)を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいて、前記共通ライン(C)に電圧を印加せず前記発光素子(1)を非点灯とする点灯制御部(2)を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置であって、
前記点灯制御部(2)が、一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、一フレーム中で、前記走査部(20)による前記複数の共通ライン(C)への電圧の印加を、前記駆動部(30)による前記駆動ライン(S)の導通のタイミングと同期させることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一に記載の表示装置であって、
前記走査部(20)は、共通ライン(C)に接続される複数の発光素子(1)の内、該複数の発光素子(1)が接続された駆動ライン(S)を駆動する前記駆動部(30)による導通期間の内で、点灯期間が最も長い発光素子(1)の点灯期間に合わせて、該共通ライン(C)に電圧を印加するよう制御してなることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一に記載の表示装置であって、
前記点灯制御部(2)が、表示装置と外部接続された外部機器からの外部制御信号に基づいて、非点灯のフレームにおいて前記走査部(20)による共通ライン(C)への電圧の印加を停止するよう制御してなることを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行列配置された複数の発光素子を備える表示装置や、これを用いた表示装置の点灯制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、発光素子として発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を用いた表示装置が作製されている。例えば、複数の表示装置を組み合わせることにより大型の表示システムとすることができる。ここでm行×n列ドットマトリックスで構成された表示装置を考えると、例えば各行に位置する各LEDのアノード端子が1つの共通ラインに接続され、各列に位置する各LED素子のカソード端子が1つの駆動ラインに接続される。そして、m行の共通ラインが所定の周期で順次ONされ、ONした共通ライン上に配置されたLEDは各駆動ラインにより個別に駆動される。
【0003】
このような表示装置の表示方法の場合、各サイクルにおいて最初に駆動される発光素子が、他の発光素子に比較して暗くなる場合があるという問題があった。そのメカニズムを、
図7〜
図9に基づいて説明する。ここで
図7(a)は、表示装置の模式平面図、
図7(b)はこの表示装置において一部の行が暗く点灯された状態を示す模式平面図、
図8はこの表示装置における各発光素子1の従来の点灯タイミングを示すタイミングチャートである。ここでは、1画像を表示するための1サイクルを複数のフレームに分割し、各フレームを制御することにより全体として1画像を表示する場合について説明する。また
図9(a)〜(h)は、
図8の区間11〜23における表示装置の電流の流れをそれぞれ示した回路図である。ここで
図9(a)はサイクルCL1における区間11、
図9(b)は区間12、
図9(c)は区間13、
図9(d)は区間21、
図9(e)は区間22、
図9(f)は区間23、
図9(g)は残留電荷が溜まった状態、
図9(h)はサイクルCL2以降における区間11を、それぞれ示している。なお、これらの
図9(a)〜(h)においては、発光素子1が所望の輝度で発光している状態を示すために、点灯中の発光素子1を黒色で示している。また、電流の流れを矢印で示している。さらに、各配線が持つ寄生容量を仮想的に等価コンデンサC
S0〜C
S2として、各駆動ラインS0〜S2(以下、S0〜S2をまとめて単に「S」ともいう。)上に図示している。
【0004】
図7(a)〜(b)に示す表示装置は、表示部を3行×3列の行列配置としており、各ドットに発光素子としてLEDを配置している。この表示装置の回路構成は
図9(a)〜(h)のようになり、3行×3列で行列配置された計9つの発光素子1と、行方向における3つの発光素子1のアノード端子にそれぞれ接続された3つの共通ラインC0〜C2(以下、C0〜C2をまとめて単に「C」ともいう。)と、列方向における3つの発光素子1のカソード端子にそれぞれ接続された3つの駆動ラインS0〜S2と、共通ラインC0〜C2を走査する走査部20と、駆動ラインS0〜2を介して電流を引き込み発光素子1に電流を流す駆動部30とを備える。
【0005】
また
図8には、表示装置の点灯タイミングを示している。この図に示すように、電源を投入後に表示装置に与えられる最初のサイクルCLをCL1、2番目をCL2、3番目をCL3として、それぞれ示している。またCL1〜CL3はそれぞれ複数のフレームFMに分割される。各フレームにおいて、共通ラインCの走査順は同じであり、CO、C1、C2の順としている。ここでは、各サイクルにおいてFM1のみですべての発光素子を最小輝度(最小階調)で点灯し、他のフレームにおいてはすべての発光素子を消灯する動作を想定している。つまり、各サイクルCL1〜CL3においてすべての発光素子を最小輝度で点灯する場合を想定する。なお
図8では、作図の都合上、各サイクルの区間11、12及び13において、S0、S1及びS2に接続された発光素子1が最大輝度(最大階調)で点灯しているように見えるが、実際はFM1において最小輝度(最小階調)で点灯しているものとする。
【0006】
まず、サイクルCL1での動作について
図9(a)を参照して説明する。フレームFM1で最初に走査される共通ラインC0がONする区間11では、走査部20により共通ラインC0に電圧が印加されると共に、駆動ラインS0〜S2を介して駆動部30により所定の電流が引き込まれる。この結果、C0に接続された3つの発光素子1は所望の輝度で点灯する。次に区間12では、
図9(b)に示すように、走査部20により共通ラインC1に電圧が印加されると共に、駆動ラインS0〜S2を介して駆動部30により所定の電流が引き込まれる。この結果、C1に接続された3つの発光素子1が所望の輝度で点灯する。同様に、区間13では
図9(c)に示すように、C2に接続された3つの発光素子1が所定の輝度で点灯する。
【0007】
次に、フレームFM2における区間21では、
図9(d)に示すように、共通ラインC0に電圧が印加されるものの、駆動ラインがOFF状態であって駆動部30が電流を引き込まないため、各配線(S0、S1及びS2)の寄生容量に対して充電される。同様に、区間22では、
図9(e)に示すように共通ラインC1に電圧が印加されるものの、駆動部30が電流を引き込まないため、各配線(S0、S1及びS2)の寄生容量が充電される。区間23も同様に、
図9(f)に示すように各配線(S0、S1及びS2)の寄生容量が充電される。このように、各フレームFMにおいて同様の走査が行われることにより、最終的には
図9(g)に示すように各配線の寄生容量が完全に充電されて、それ以上充電されなくなる。
【0008】
次に、サイクルCL2での動作について説明する。サイクルCL2ではサイクルCL1と異なり、最初に発光する発光素子1が他に比べて暗くなる。つまり、
図9(h)に示すようにフレームFM1における区間11では、走査部20により共通ラインC0に電圧が印加されると共に、駆動ラインS0〜S2を介して駆動部30により所定の電流が引き込まれるので、C0に接続された3つの発光素子1が点灯する。
【0009】
しかしながら、サイクルCL1において各駆動ラインS0〜S2の寄生容量が充電されているため、駆動ラインS0〜S2を介して駆動部に引き込まれる電流は、実際には発光素子1に流れる電流に加えて、寄生容量が加算された電流量となる。つまり、区間11では、他の区間12及び13に比較して、実際に発光素子1に流れる電流が、寄生容量が放電される電流分だけ相対的に少なくなるので、C0に接続された発光素子1の、サイクルCL2の区間における発光量は、C1及びC2に接続された発光素子1と比べて暗くなってしまう、「暗ライン」と呼ばれる現象が発生する。
【0010】
なお
図8では、サイクルCL2及びCL3の区間11で発光素子1が暗くなることを示すため、C0のON期間をハッチングで示している。また
図9(h)では、寄生容量に起因して発光素子が暗くなることを示すため、発光素子1をハッチングで示している。
【0011】
次に区間12では、
図9(b)に示すように、走査部20により共通ラインC1に電圧が印加されると共に駆動ラインS0〜S2を介して駆動部30により所定の電流が引き込まれる。このとき、フレームFM1において寄生容量分の電流が駆動部30にて引き抜かれているので、C1に接続された3つの発光素子1は所望の輝度で点灯することができる。同様に区間13でも、
図9(c)に示すように、C2に接続された3つの発光素子1は所望の輝度電点灯する。なお、区間21以降についてはサイクルCL1と同様なので説明を省略する。さらにサイクルCL3以降についても、区間11における発光素子1が暗くなってしまうことが生じる。そのメカニズムについてはCL2と同様なので繰り返さない。
【0012】
以上のような理由により、従来の駆動方法では、寄生容量に起因して暗い発光素子が生じてしまい、表示品質に影響を与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−147933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、各サイクルにおいて最初に駆動される発光素子が、他の発光素子に比較して暗くなることを回避し、表示品質を改善した表示装置の点灯制御方法及び表示装置を提供することにある。
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面に係る表示装置の点灯制御方法によれば、複数の発光素子1として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部10と、前記表示部10の行方向に配置された前記複数の発光素子1のアノード端子に接続された複数の共通ラインCを走査して電圧を印加するための走査部20と、前記表示部10の列方向に配置された前記複数の発光素子1のカソード端子に接続された複数の駆動ラインSを導通させて該発光素子1に電流を流すための駆動部30と、を備える表示装置の点灯制御方法において、一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、
表示データを保持する工程と、前記保持された表示データに基づいて、一サイクル中の、前記発光素子1の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいて、前記走査部20が前記共通ラインCに電圧を印加
して前記発光素子1を点灯させる工程と、同一サイクル中の、前記発光素子1を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいて、前記走査部20が前記共通ラインCへの電圧の印加を停止
して前記発光素子1を非点灯とする工程と、を含むことができる。
これにより、点灯期間以外は共通ラインに電圧を印加せず、駆動ラインを導通しないため、この共通ラインと接続された駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まる事態を回避し、もって、寄生容量の電荷分だけ発光素子の発光量が低下して所定の行が暗くなる現象を抑制することができる。
【0016】
また、第2の側面に係る表示装置の点灯制御方法によれば、複数の発光素子1として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部10と、前記表示部10の行方向に配置された前記複数の発光素子1のアノード端子に接続された複数の共通ラインCを走査して電圧を印加するための走査部20と、前記表示部10の列方向に配置された前記複数の発光素子1のカソード端子に接続された複数の駆動ラインSを導通させて該発光素子1に電流を流すための駆動部30と、を備える表示装置の点灯制御方法であって、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、表示データを保持する工程と、前記保持された表示データに基づいて、一サイクル中の、前記発光素子1の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいて、前記駆動部30による前記駆動ラインSの導通期間に応じて、前記走査部20による前記共通ラインCへの電圧の印加の
導通期間を変化させ
て前記発光素子1を点灯させ、同一サイクル中の、前記発光素子1を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいて、前記共通ラインCに電圧を印加せず前記発光素子1を非点灯とする工程を含むことができる。
これにより、共通ラインへの電圧の印加を駆動ラインの導通と同期させ、点灯期間以外は共通ラインに電圧を印加せず、駆動ラインを導通しないため、この共通ラインと接続された駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まる事態を回避し、もって、寄生容量の電荷分だけ発光素子の発光量が低下して所定の行が暗くなる現象を抑制することができる。
【0017】
さらに、第3の側面に係る表示装置の点灯制御方法によれば、一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、一フレーム中で、前記走査部20による前記複数の共通ラインへの電圧の印加を、前記駆動部30による前記駆動ライン
Sの導通のタイミングと同期させることができる。
これにより、一フレーム内で発光素子を例えば100%点灯している場合は、共通ラインを100%の期間走査させ、一方で発光素子を一フレームの20%点灯している場合は、共通ラインを20%の期間走査させて、残り80%の期間は走査を停止し電圧を印加しないことで、暗ラインの発生の原因となる寄生容量への充電を回避できる。
【0018】
さらにまた、第4の側面に係る表示装置の点灯制御方法によれば、前記走査部20は、共通ライン
Cに接続される複数の発光素子1の内、
該複数の発光素子1が接続された駆動ラインSを駆動する前記駆動部30による導通期間の内で、点灯期間が最も長い発光素子1の点灯期間に合わせて、該共通ライン
Cに電圧を印加するよう制御できる。
これにより、同一の共通ラインに接続されている複数の発光素子の内、駆動部による導通の時間が最も長い発光素子に一致させて電圧を印加することで、所望の点灯時間を確保できる。
【0019】
さらにまた、第5の側面に係る表示装置の点灯制御方法によれば、前記発光素子1が点灯可能な最大期間のうち、実際に前記発光素子1を点灯させる点灯期間よりも、前記発光素子1を点灯させない非点灯期間を長くすることができる。
【0020】
さらにまた、第6の側面に係る表示装置によれば、複数の発光素子1として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部10と、前記表示部10の行方向に配置された前記複数の発光素子1のアノード端子に接続された複数の共通ラインCを走査して電圧を印加するための走査部20と、前記表示部10の列方向に配置された前記複数の発光素子1のカソード端子に接続された複数の駆動ラインSを導通させて該発光素子1に電流を流すための駆動部30と、を備える表示装置であって、さらに、一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、
保持された表示データに基づいて、該一サイクル中の、前記発光素子1の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいては、前記走査部20で前記共通ラインCに電圧を印加
して前記発光素子1を点灯させ、同一のサイクル中の、前記発光素子1を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいては、前記走査部20で前記共通ラインCへの電圧の印加を停止
して前記発光素子1を非点灯とするよう点灯制御する走査制御部50を備えることができる。
これにより、点灯期間以外は共通ラインに電圧を印加せず、駆動ラインを導通しないため、この共通ラインと接続された駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まる事態を回避し、もって、寄生容量の電荷分だけ発光素子の発光量が低下して所定の行が暗くなる現象を抑制することができる。
【0021】
さらにまた、第7の側面に係る表示装置によれば、複数の発光素子1として、発光ダイオードが行列状に配置された表示部10と、前記表示部10の行方向に配置された前記複数の発光素子1のアノード端子に接続された複数の共通ラインCを走査して電圧を印加するための走査部20と、前記表示部10の列方向に配置された前記複数の発光素子1のカソード端子に接続された複数の駆動ラインSを導通させて該発光素子1に電流を流すための駆動部30と、を備える表示装置であって、さらに、
一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、保持された表示データに基づいて、一サイクル中の、前記発光素子1の点灯を行う少なくとも一のフレームにおいて、前記駆動部30による前記駆動ラインSの導通期間に応じて、前記走査部20による前記共通ラインCへの電圧の印加の
導通期間を変化させ
て前記発光素子1を点灯させ、同一サイクル中の、前記発光素子1を非点灯とする少なくとも一のフレームにおいて、前記共通ラインCに電圧を印加せず前記発光素子1を非点灯とする点灯制御部2を備えることができる。
これにより、共通ラインへの電圧の印加を駆動ラインの導通と同期させ、点灯期間以外は共通ラインに電圧を印加せず、駆動ラインを導通しないため、この共通ラインと接続された駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まる事態を回避し、もって、寄生容量の電荷分だけ発光素子の発光量が低下して所定の行が暗くなる現象を抑制することができる。
【0022】
さらにまた、第8の側面に係る表示装置によれば、前記点灯制御部2が、一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、一フレーム中で、前記走査部20による前記複数の共通ライン
Cへの電圧の印加を、前記駆動部30による前記駆動ライン
Sの導通のタイミングと同期させることができる。
これにより、一フレーム内で発光素子を例えば100%点灯している場合は、共通ラインを100%の期間走査させ、一方で発光素子を一フレームの20%点灯している場合は、共通ラインを20%の期間走査させて、残り80%の期間は走査を停止し電圧を印加しないことで、暗ラインの発生の原因となる寄生容量への充電を回避できる。
【0023】
さらにまた、第9の側面に係る表示装置によれば、前記走査部20は、共通ライン
Cに接続される複数の発光素子1の内、
該複数の発光素子1が接続された駆動ラインSを駆動する前記駆動部30による導通期間の内で、点灯期間が最も長い発光素子1の点灯期間に合わせて、該共通ライン
Cに電圧を印加するよう制御することができる。
これにより、同一の共通ラインに接続されている複数の発光素子の内、駆動部による導通の時間が最も長い発光素子に一致させて電圧を印加することで、所望の点灯時間を確保できる。
【0024】
さらにまた、第10の側面に係る表示装置によれば、前記点灯制御部2が、表示装置と外部接続された外部機器からの外部制御信号に基づいて、非点灯のフレームにおいて前記走査部20による共通ライン
Cへの電圧の印加を停止するよう制御できる。
これにより、走査部への電圧の印加を、外部から制御させることで、表示装置側の処理を簡素化できる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態1に係る表示装置を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る点灯制御方法を示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3(a)〜(c)は、
図2に示す区間11〜13において流れる表示装置の電流を示す回路図である。
【
図4】実施形態2に係る表示システムを説明するためのブロック図である。
【
図5】実施形態3に係る表示装置に用いられる表示装置を説明するためのブロック図である。
【
図6】実施例1に係る表示装置のタイミングチャートである。
【
図7】
図7(a)は、表示装置の模式平面図、
図7(b)は
図7(a)の表示装置において一部の行が暗く点灯された状態を示す模式平面図である。
【
図8】表示装置を点灯させる従来のタイミングチャートである。
【
図9】
図9(a)〜(h)は、
図8に示す区間11〜23において流れる表示装置の電流を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を以下のものに特定しない。また、本明細書においては、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0027】
なお本明細書において「寄生容量」とは、主に駆動ラインSにおける寄生容量を意味している。ただ、これに限らず他の要因、例えば駆動ラインに接続された電子部品の容量など、容量性の成分も含める意図で使用する。
(実施形態1)
【0028】
実施形態1に係る表示装置100のブロック図を
図1に、これを点灯するタイミングを示すタイミングチャートを
図2に、それぞれ示す。また
図2の各区間における、表示装置に流れる電流を、
図3(a)〜(c)の回路図において矢印で示す。
(表示部)
【0029】
表示装置100は、
図1に示すように表示部10と、点灯制御部2を備える。表示部10は、行列配置された複数の発光素子1と、行方向における複数の発光素子1のアノード端子に接続された複数の共通ラインC0〜C2と、列方向における複数の発光素子1のカソード端子に接続された複数の駆動ラインS0〜S2とを備える。
(点灯制御部2)
【0030】
また点灯制御部2は、1画像を表示するための1サイクルを複数のフレームに分割するフレーム分割部40と、共通ラインCに接続され各フレームにおいて共通ラインCを走査すると共に、共通ラインCに電圧を印加する走査部20と、駆動ラインSに接続され外部から入力される制御データに基づいて1つのサイクルのうちの一部のフレームで発光素子1を駆動可能な駆動部30と、走査部20に接続され1サイクルを構成する各フレームの共通ラインの走査の可否を制御する走査制御部50とを備える。
【0031】
この点灯制御部2は、
図2のような点灯タイミングでもって表示部10を制御する点灯制御方法を採用することで、
図7(b)に示すように従来発生していた表示部10が部分的に暗く点灯する「暗ライン」が発生する現象を回避し、
図7(a)のような均一で高品質な点灯を可能とする。以下、その理由について説明する。
【0032】
従来の点灯制御方法では、
図8に示すとおり、各サイクルにおける共通ラインCの走査を、昇順に繰り返している。この例では、各サイクルの先頭のフレームで駆動ラインの導通を行った後は、駆動ラインをOFFとして発光素子の点灯を行っていない。しかしながら、共通ラインの走査は、駆動ラインを導通しない区間においても継続しているため、導通されない区間において、駆動ラインの寄生容量に電荷が充電された状態となる。この結果、次のサイクルにおいて最初のフレームで発光素子が点灯される際には、
図8においてハッチングで示すように、最初に点灯される発光素子は寄生容量に蓄えられた電荷が放電される結果、この電荷の分だけ発光素子の通電量が減少して、他の発光素子の点灯よりも暗くなる、いわゆる「暗ライン」が発生していた。暗ラインは、動画や高輝度表示では目立たないが、低輝度で静止画を表示した場合に特に目立ってしまい、表示品質を大きく損なってしまう。そこで本実施形態では、駆動ラインを導通させる期間のみ、共通ラインを走査させ、逆に駆動ラインを導通させない区間では、共通ラインの走査も停止させることによって、駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まることを回避して、暗ラインの発生を阻止している。
【0033】
具体的には、実施形態1の表示装置100では、
図2に示すように、サイクルCL1において、駆動ラインが導通される最初のフレームFM1で駆動ラインS0、S1、S2が導通されており、他のフレームFM2、FM3においては、導通されない。これに応じて共通ラインも、フレームFM1でのみ走査を行い、他のフレームFM2、FM3においては、走査を停止している。このように、共通ラインの走査を行う走査期間と、走査を停止する非走査期間とを設けるように、走査制御部50は走査部20の走査を制御する。また、以降のサイクルCL2、CL3においても同様に、駆動ラインの導通期間と対応させて、共通ラインの走査期間を設定している。言い換えると、駆動ラインが導通されない非導通期間においては、共通ラインの走査も停止する非走査期間とするよう、共通ラインの走査を駆動ラインの導通と連動させることで、同様に暗ラインの発生を阻止できる。
【0034】
以上の動作を、
図3(a)〜(c)の回路図に基づいて説明する。これらの図においては、電流の流れを矢印で示している。加えて、各配線が持つ寄生容量を仮想的に等価コンデンサC
S0〜C
S2として、各駆動ラインS上に図示している。
【0035】
表示装置100は、上述の通り3行×3列で行列配置された計9つの発光素子1と、行方向における3つの発光素子1のアノード端子にそれぞれ接続された3つの共通ラインC0〜C2と、列方向における3つの発光素子1のカソード端子にそれぞれ接続された3つの駆動ラインS0〜S2とを備える。この表示部を点灯させるために、
図2に示す点灯制御方法では、サイクルCL1〜CL3をそれぞれ複数のフレーム(FM1、FM2、...)に分割する。ここでは、理解を容易にするため、各サイクルにおいてFM1のみで全発光素子を最小輝度(最小階調)で点灯し、他のフレームにおいては全発光素子を消灯する場合を想定する。つまり、各サイクルにおいてすべての発光素子を最小輝度で点灯させていることになる。なお
図2においては、作図の都合上、各サイクルのフレームFM1における区間11、12及び13において、駆動ラインS0、S1及びS2に接続された発光素子1が最大輝度(最大階調)で点灯しているように見えるが、実際は最小輝度(最小階調)で点灯しているものとする。
【0036】
まず、サイクルCL1について説明する。サイクルCL1では、各フレームの共通ラインCの走査順を、共通ラインC0、C1、C2としている。すなわち、共通ラインの接続順であり、
図8に示した従来の点灯制御方法と同様となる。具体的に、
図2に示すフレームFM1における区間11では、
図3(a)に示すように、走査部20により共通ラインC0に電圧が印加されると共に、駆動ラインS0〜S2を介して駆動部30により所定の電流が引き込まれる。このとき、C0に接続された3つの発光素子1は、所望の輝度で点灯される。また区間12では、
図3(b)に示すように、共通ラインC1に電圧が印加されると共に、駆動ラインS0〜S2を介して所定の電流が引き込まれ、C1に接続された3つの発光素子1は所望の輝度で点灯される。さらに区間13では、
図3(c)に示すように、共通ラインC2に電圧が印加されると共に、駆動ラインS0〜S2を介して所定の電流が引き込まれ、C2に接続された3つの発光素子1は所望の輝度で点灯される。
【0037】
また、以降のサイクルCL2においても、同様に共通ラインは区間11、12、13において、それぞれC0、C1、C2の順で走査され、駆動ラインもS0、S1、S2の順で導通される。この結果、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)に示すように、共通ラインC0、C1、C2はそれぞれ所望の輝度で点灯され、駆動ラインを導通しない区間に不必要な電圧が印加されることもなく、暗ラインの発生が阻止される。また、続くサイクルCL3においても、同様の手順で駆動ラインS0、S1、S2の導通タイミングと同期させて共通ラインC0、C1、C2が走査されて、それぞれ電圧が印加されることにより、所望の輝度で発光され、暗ラインの発生を回避できる。
【0038】
この方法であれば、駆動ラインを導通させない区間に共通ラインを走査させることで、電荷が駆動ラインの寄生容量に溜まる事態を回避でき、暗ラインの発生を阻止できる。この結果、低輝度で静止画を表示した場合であっても、暗ラインによる発光むらのない高品質な表示装置を実現できる。特に連続するサイクルで表示される画像を同一とする静止画の表示において、特定の行のみが暗くなると非常に目立つ。そこで、暗ラインが目立ちやすい静止画の表示であっても、上記の制御方法によって暗ラインの発生を阻止して、高品質な表示を実現できる。
【0039】
さらにこの方法であれば、共通ラインの走査順は変更しない。よって共通ライン側の制御は変更する必要がないため、走査制御部50は既存のものを利用できる。また駆動ライン側においても、導通が必要な区間のみ動作させ、他の区間では動作を定位するのみで足り、駆動ラインの導通タイミングの順序を変更する必要もないため、例えばサイクル間で走査順あるいは導通順をランダムに変化させるような制御方法に比べ、走査や導通の順序の変更等が不要であるため、制御の変更も比較的容易に行える利点が得られる。
【0040】
このように、一サイクル中の、発光素子の点灯を行う点灯区間において、走査部20が共通ラインに電圧を印加する一方で、同一サイクル中の非点灯区間において、走査部20が共通ラインへの電圧の印加を停止することで、点灯期間以外は共通ラインに電圧を印加しないため、この共通ラインと接続された駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まる事態を回避でき、暗ラインの発生を抑制できる。
【0041】
なお、この例ではフレーム単位で発光素子の駆動ラインを導通させているため、共通ラインもフレーム単位で走査、非走査を繰り返している。ただ、フレームの途中で導通を停止するような制御を駆動部30が行う場合は、走査部20もこれに応じて、フレームの途中で共通ラインの走査を中止させることができる。このように、共通ラインの走査の停止区間は、必ずしもフレーム単位で行うことを要せず、駆動ラインの制御に応じて適宜調整できる。
【0042】
また、
図2の例では、共通ラインをC0、C1、C2と順次切り替えるように走査しているが、本発明はこのような順次操作に限定されるものでなく、ランダムに走査することも可能である。
【0043】
さらに、走査部20による複数の共通ラインへの電圧の印加を、駆動部30による駆動ラインの導通のタイミングと同期させつつ、駆動部30による駆動ラインの導通期間に応じて、走査部20による共通ラインへの電圧の印加のタイミングを変化させることができる。このようにすることで、共通ラインへの電圧の印加を駆動ラインの導通と同期させ、点灯期間以外は共通ラインに電圧を印加せず、駆動ラインを導通しないため、この共通ラインと接続された駆動ラインの寄生容量に電荷が溜まる事態を回避し、もって寄生容量の電荷分だけ発光素子の発光量が低下して所定の行が暗くなる現象(暗ライン)を抑制することができる。具体的には、駆動部30による駆動ラインの導通期間に、走査部20による共通ラインへの電圧の印加期間を一致させる。いいかえると、駆動部30が駆動ラインを導通させていない非導通期間には、走査部20も共通ラインへの電圧の印加を行わない非印加期間とする。
【0044】
さらにまた、一画像を表示する一サイクルを複数のフレームに分割して点灯制御する際に、一フレーム中で、走査部20による複数の共通ラインへの電圧の印加を、駆動部30による駆動ラインの導通のタイミングと同期させることができる。 これにより、一フレーム内で発光素子を例えば100%点灯している場合は、共通ラインを100%の期間走査させ、一方で発光素子を一フレームの20%点灯している場合は、共通ラインを20%の期間走査させて、残り80%の期間は走査を停止し電圧を印加しないことで、暗ラインの発生の原因となる寄生容量への充電を回避できる。
【0045】
加えて、共通ラインに接続される複数の発光素子の内、点灯期間が最も長い発光素子の点灯期間に合わせて、この共通ラインに電圧を印加するよう走査部20で制御させてもよい。 これにより、同一の共通ラインに接続されている複数の発光素子の内、駆動部30による導通の時間が最も長い発光素子に一致させて電圧を印加することで、所望の点灯時間を確保できる。
【0046】
さらに、発光素子が点灯可能な最大期間のうち、実際に発光素子を点灯させる点灯期間よりも、発光素子を点灯させない非点灯期間を長くしてもよい。
【0047】
なお以上の例では、一サイクルを3フレームとし、一フレームを3区間としているが、これらは一例であって、任意の数のフレーム、区間に分割できることはいうまでもない。
(表示部10)
【0048】
以上の実施形態1の点灯制御方法で点灯される表示装置100を構成する主な構成要素について説明する。まず表示部10は、行方向に複数の共通ラインCを互いに平行に配置し、これと交差する列方向に複数の駆動ラインSを互いに平行に配置している。また複数の発光素子1を、各共通ラインCと駆動ラインSとの間に各々接続することで、発光素子1を行列配置している。
図1においては、共通ラインCが行、駆動ラインSが列に、それぞれ対応しており、複数の発光素子1がm行×n列のマトリックス状に配列される。また各列の発光素子1のカソード端子がそれぞれ駆動ラインSに接続され、各行の発光素子1のアノード端子がそれぞれ共通ラインCに接続されている。
【0049】
ここでは、表示部10として発光素子1を3行×3列のマトリックス状に配置しているが、行及び列の数は任意に設定できることは言うまでもない。また、本明細書では説明の便宜上、
図1の横方向を「行」とし、
図1の縦方向を「列」としているが、「行」は必ずしも水平方向を指すのではなく、「列」は必ずしも鉛直方向を指すのではない。つまり、「行」及び「列」は相対的な関係にあればよく、例えば
図1の行と列(縦横)を入れ替えても、つまり
図1において表示装置100を左右のどちらかの方向に90°回転させても、本発明の範囲内とする。
(発光素子1)
【0050】
発光素子1には、半導体発光素子であれば限定されないが、典型的には発光ダイオード(LED)を用いることができる。この例では、発光素子1としてLEDを用いる例を説明している。
(走査部20)
【0051】
走査部20は、共通ラインCに接続されており、任意の共通ラインCを走査し、選択した共通ラインCに順次電圧(例えば5V)を印加する。走査部20は共通ラインCごとにスイッチ(図示せず)を備え、走査制御部50からの指示に基づいて各共通ラインCのON/OFFを制御する。
(駆動部30)
【0052】
駆動部30は、駆動ラインSにそれぞれ接続された駆動素子(図示せず)を備え、PWMコントローラ90からの指示に基づいて発光素子1を駆動する。また、RAM70から読み出した表示データに基づくフレーム階調制御と各フレームでのPWMコントローラ90によるPWM階調制御を組み合わせることで、1サイクルとしての画像を表示する。
(フレーム分割部40)
【0053】
フレーム分割部40は、後述するタイミングコントローラ80が生成する1画像を表示するための1サイクルCLを複数のフレームFMに分割するように制御する。
【0054】
本実施形態では、表示装置100がフレーム分割部40を含む構成としたが、フレーム分割部40を備えない表示装置とすることもできる。斯かる場合であっても、走査部20により所定の共通ラインCが選択されている時間内で駆動部30が電流を引き込まない時間があれば、駆動ラインSに寄生容量が充電され暗ラインが発生し得るからである。
(走査制御部50)
【0055】
走査部20は、走査制御部50からの指示に基づいて共通ラインCを順に走査すると共に、適切なタイミングで走査を停止させる。ここでは、共通ラインCへの電圧の印加のON/OFFを切り替えるように、走査制御部50は走査部20を制御している。走査制御部50は、共通ラインCの走査順の制御を内部で自律式に行うこともできるし、外部から制御可能なように構成することもできる。この場合走査制御部50は、外部機器からの外部制御信号に基づいて、非点灯のフレームにおいて走査部20による共通ラインへの電圧の印加を停止するよう制御する。この構成によれば、表示装置側の処理を簡素化できる。
(シフトレジスタ60)
【0056】
シフトレジスタ60は外部から1画像を構成する表示データDATA_INをシフトクロックCLK_INにより入力する。このシフトレジスタ60は表示部10を構成する発光素子1すべてに対してフレーム階調とPWM階調に相当する表示データを保持できる。
(RAM70)
【0057】
RAM70はシフトレジスタ60の内容をLATCH_INにより保存する。ここでは記載していないが表示部10の表示制御をするためにフレーム分割部40およびPWMコントローラ90から読み出すとともに、外部からの表示データ入力つまりシフトレジスタ60の内容を書き込むために2つ以上の独立したRAM構成となっている。
(タイミングコントローラ80)
【0058】
タイミングコントローラ80は、VSYNC_INによりサイクルを生成し、各制御部のタイミングを制御する。
(PWMコントローラ90)
【0059】
PWMコントローラ90は、フレーム分割部40が生成したフレームにおいて、RAM70から読み出した表示データに基づきPWM階調制御する。
(実施形態2)
【0060】
以上の例では、表示装置を単体で使用する例を説明したが、本発明はこれに限らず、表示装置を複数接続することで、表示部を拡大した1つの表示システムとすることもできる。このような例を実施形態2として、
図4に示す。この図に示す例では、複数の表示装置100を接続し、その一端に表示装置100に表示データ等を含む制御データを出力する外部制御部500を接続して表示システムを構築している。これにより、暗ラインの抑制された表示システムとすることができる。
(実施形態3)
【0061】
実施形態1、2の表示装置では、サイクルにおける走査の可否を表示装置に設けられた走査制御部50で制御している。ただ、表示装置が走査制御部50を備えない場合であっても、外部制御部からの制御データにより、共通ラインの走査を停止させることもできる。つまり、外部制御部からの制御データが、走査の可否を制御する走査制御データを含むことにより、実施形態2と同様の作用効果を奏する表示装置とすることができる。このような例を実施形態3として、
図5のブロック図に示す。
【0062】
本実施形態に係る表示装置は、外部制御部にてフレームを生成し、フレーム毎に階調制御し各フレームを組み合わせることにより1サイクルで一画像を表示する。ここで、各フレームでの階調制御は、外部制御部からの制御信号であるPWMCLK_INとPWMカウンターのリセットであるBLANK_INによりPWMコントローラ90を制御することにより行われる。
【0063】
また、各フレームにおける走査部20の制御を走査制御部50ではなく外部制御部からの走査順制御データADR_IN[1:0]にて行う。ここではC0〜C2の選択なので2bitあれば足りる。なお走査部20による共通ラインの走査、すなわち共通ラインへの電圧の印加の可否は、イネーブル信号ENBからの入力により制御される。
(実施例1)
【0064】
次に実施例1として、32行×32列のLEDを配置した表示装置について説明する。表示部は、C0〜C7の8の共通ラインを計4組、S0〜S7の8の駆動ラインを計4組、それぞれの交点に配置された1024のLED(より正確には各LEDはRed、Green、Blueの3つの発光素子を含む。)、を備える構成とした(図示せず)。走査部20、駆動部30等、基本的な構成は実施形態1(
図1)と同様なのでここでは説明しない。
【0065】
本実施例に係る表示装置は、1/8Dutyダイナミック駆動で、
図6のタイミングチャートに示すように、16.384msの1サイクルを16のフレームで構成した。具体的には、サイクルCL1では各フレームにおいてC0、C1、...、C6、C7の順に走査し、以下CL2、CL3で同様の走査を繰り返し
た。この際、駆動部による導通が行われないフレームにおいては、走査部による共通ラインの走査を停止させた。
【0066】
このように構成した表示装置において、暗ラインが目立ちやすいようにあえて各サイクルのFM1において最初の走査によりすべてのLEDを最小時間となる50nsで点灯させた。その結果、最小輝度での点灯にもかかわらず比較例1に比べて暗ラインが視認し難くなり、表示品質の高い表示装置とすることができた。
<比較例1>
【0067】
すべてのサイクルにおいて、各フレームで駆動部により駆動ラインを導通しないフレームも、走査部による走査を継続させた以外は、実施例1と同様とした表示装置を作製した。各サイクルのFM1の最初の走査によりすべてのLEDを最小時間となる50nsで点灯させたところ、C0に配置されたLEDに暗ラインが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る表示装置の点灯制御方法及び表示装置は、例えば、大型テレビ、交通情報に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
100…表示装置;500…外部制御部
1…発光素子;2…点灯制御部
10…表示部
20…走査部
30…駆動部
40…フレーム分割部
50…走査制御部
60…シフトレジスタ
70…RAM
80…タイミングコントローラ
90…PWMコントローラ
C…共通ライン;S…駆動ライン;CL…サイクル;FM…フレーム