特許第6070958号(P6070958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6070958新規ジアミン、重合体、液晶配向剤、液晶配向膜、及びそれを用いた液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070958
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】新規ジアミン、重合体、液晶配向剤、液晶配向膜、及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20170123BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20170123BHJP
   C07C 211/54 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08G73/10
   G02F1/1337 525
   C07C211/54CSP
【請求項の数】7
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2013-556435(P2013-556435)
(86)(22)【出願日】2013年1月30日
(86)【国際出願番号】JP2013052003
(87)【国際公開番号】WO2013115228
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-20245(P2012-20245)
(32)【優先日】2012年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚宏
(72)【発明者】
【氏名】望月 大
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 大輔
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−146431(JP,A)
【文献】 特開平08−146430(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/005266(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/126555(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されるジアミンを用いて得られるポリアミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、又は該ポリアミド酸及び/又はポリアミド酸エステルを脱水閉環(イミド化)して得られるポリイミドからなる重合体。
【化1】
(式中Aはtert-ブトキシカルボニル基を表す。NHA基はn個(n=1又は2)具備し、アミノ基(NH基)に対してオルト位に存在する。また、アミノ基同士はメタ位又はパラ位に存在する。)
【請求項2】
一般式[1]で示されるジアミンを5〜95mol%含有することを特徴とする請求項1記載の重合体。
【請求項3】
下記一般式[2]で表される側鎖を含有するジアミンを5〜50mol%含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の重合体。
【化2】
(式中、Rは単結合、二価の有機基を表し、X、X、Xはそれぞれ独立してベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、p,q,rはそれぞれ独立して0又は1の整数を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数12〜25である2価の有機基を表す。)
【請求項4】
請求項1〜の何れか1項に記載の重合体を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【請求項5】
請求項記載の液晶配向剤を用いた液晶配向膜。
【請求項6】
請求項記載の液晶配向膜を具備した液晶表示素子。
【請求項7】
下記一般式[1−5]又は[1−6]で示されるジアミン。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のジアミン、液晶表示素子に用いる液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶配向膜は液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。現在、工業的に利用されている主な液晶配向膜は、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(ポリアミック酸ともいわれる。)やポリイミドの溶液からなるポリイミド系の液晶配向剤を、基板に塗布し成膜することで作製される。また、基板面に対して液晶を平行配向又は傾斜配向させる場合は、成膜した後、更にラビングによる表面延伸処理が行われている。また、ラビング処理に代わるものとして偏光紫外線照射等による異方性光化学反応を利用する方法も提案されており、近年では工業化に向けた検討が行われている。
【0003】
液晶表示素子の表示特性の向上のために、ポリアミック酸やポリイミドの構造を種々変更し、最適化を行ったり、特性の異なる樹脂をブレンドしたり、添加剤を加えるなどにより、液晶配向性の改善やプレチルト角のコントロール、電気特性などの改善などが可能となり、更なる表示特性の改善を行うことができるとして、数々の技術が提案されてきた。例えば、高い電圧保持率を得るために、特定の繰り返し構造を有するポリイミド樹脂を用いることが提案されている(特許文献1など参照)。また、残像現象に対し、イミド基以外に窒素原子を有する可溶性ポリイミドを用いることにより、残像が消去されるまでの時間を短くすることが提案されている(特許文献2など参照)。
【0004】
しかしながら、液晶表示素子の高性能化、大面積化、表示デバイスの省電力化などが進み、それに加え、様々な環境下での使用がされるようになり、液晶配向膜に求められる特性も厳しいものになってきた。特に、液晶配向剤を基板に塗布した際に、タクトタイムが長くなることによる析出や分離による印刷不良の発生や、液晶表示素子の長期に渡る使用によるイオン密度の増加や、蓄積電荷による焼き付きなどの問題が課題となっており、従来の技術ではこの両者を同時に解決することは難しくなってきている。
【0005】
そこで、t−ブトキシカルボニル基(以下、Boc基という)で保護されたアルキルアミンを含有するジアミンを用いた液晶配向剤が提案されている(特許文献3参照)。この技術では、Boc基で保護された1級又は2級の脂肪族アミンを有するポリイミド前駆体又はポリイミドの塗膜を形成し、その後、焼成時に反応性の高い1級又は2級の脂肪族アミンを生成させて分子間架橋反応を進行させ、機械強度に優れたポリイミド膜を生成するというものである。
【0006】
しかしながら、かかるポリイミド膜は、ラビング耐性は向上するが、液晶配向性は逆に低下し、RDC(残留DC電圧)も蓄積し易くなるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−287324号公報
【特許文献2】特開平10−104633号公報
【特許文献3】WO2006−126555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑み、基板への印刷性が良好な液晶配向剤の提供、またラビング耐性と液晶の配向性に優れ、RDCが蓄積し難く、かつ長期にわたる高温・高湿試験やバックライト照射においても液晶表示素子特性が低下し難い液晶配向膜を提供することを目的とする。すなわち、このような特性を有するポリアミド、ポリイミド前駆体、ポリイミドを得ることが出来るジアミンを提供し、さらに、それを用いた液晶配向剤、およびコントラストの低下や焼き付きの起こりにくい液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、その課題は液晶配向剤の印刷性(ポリマーの溶剤への溶解性)が良好であり、ラビング耐性に優れ且つ液晶の配向性が良好であり、RDCが蓄積し難く、長時間にわたる高温環境下やバックライトなどの光照射状況下においても電圧保持率の低下が生じにくい該液晶配向膜を有する液晶表示素子、及び該液晶配向膜を形成するための液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、ジアミン成分として、加熱によりアミノ基を生じる官能基を含有したジアミン化合物(以下、特定ジアミン化合物とも言う)を使用したポリアミド、ポリアミド酸、及び/又は該ポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミドを含む液晶配向剤が上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、上記特定のジアミン化合物は、文献未載の新規化合物を含むものである。
【0011】
すなわち、本発明は以下の要旨を有するものである。
1.下記式[1]で示されるジアミンを用いて得られるポリアミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、又は該ポリアミド酸及び/又はポリアミド酸エステルを脱水閉環(イミド化)して得られるポリイミドからなる重合体。
【0012】
【化1】
(式中Aは熱によって脱離し得る有機基を表す。NHA基はn個(n=1又は2)具備し、アミノ基(NH基)に対してオルト位に存在する。また、アミノ基同士はメタ位又はパラ位に存在する。)
好ましくは、NHA基は1個であり、この場合には下記式1aで表される。
【0013】
【化2】
【0014】
2.式[1]中、有機基Aがtert−ブトキシカルボニル基であるのが好ましい。
【0015】
3.一般式[1]又は[1a]記載のジアミンを5〜95mol%含有することを特徴とするポリアミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、又は該ポリアミド酸及び/又はポリアミド酸エステルを脱水閉環(イミド化)して得られるポリイミドからなる重合体。
【0016】
4.下記式[2]で表される側鎖を含有するジアミンを5〜50mol%含有することを特徴とする、1〜3のいずれかに記載のポリアミド、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、又は該ポリアミド酸及び/又はポリアミド酸エステルを脱水閉環(イミド化)して得られるポリイミドからなる重合体。
【0017】
【化3】
(式中、Rは単結合、二価の有機基を表し、X、X、Xはそれぞれ独立してベンゼン環又はシクロヘキサン環を表し、p,q,rはそれぞれ独立して0又は1の整数を表し、Rは、水素原子、炭素数1〜22のアルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数12〜25である2価の有機基を表す。)
【0018】
5.1〜4のいずれか1つに記載の重合体(ポリマー)を含有することを特徴とする液晶配向剤。
【0019】
6.5記載の液晶配向剤を用いた液晶配向膜。
【0020】
7.6記載の液晶配向膜を具備した液晶表示素子。
【0021】
8.下記一般式[1−5]又は[1−6]で示されるジアミン化合物。
【0022】
【化4】
【発明の効果】
【0023】
本発明の液晶配向剤は、特定構造のジアミン化合物を用いたポリマーを含有するので、印刷性(ポリマーの溶剤への溶解性)が良好である。また、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、塗膜焼成の際に特定構造のジアミン化合物由来の保護基が脱離したアミノ基が反応して環化構造を形成するので、ラビング耐性に優れ且つ液晶の配向性が良好であり、RDCが蓄積し難く、長時間にわたる高温環境下やバックライトなどの光照射状況下においても電圧保持率の低下が生じ難く、また、このような液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において、特定ジアミン化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミド酸、及び該ポリアミド酸を脱水閉環させて得られるポリイミドは、総称して重合体ということもある。
【0025】
本発明の重合体は、下記式[1]にて表されるジアミン化合物を用いて得られる。
【0026】
【化5】
(式中Aは熱によって脱離し得る有機基を表す。NHA基はn個(n=1又は2)具備し、アミノ基(NH基)に対してオルト位に存在する。また、アミノ基同士はメタ位又はパラ位に存在する。)
好ましくは、NHA基は1個であり、この場合には下記式1aで表される。
【0027】
【化6】
式[1]におけるアミノ基の位置は特に限定されず、ジアミンであれば特に限定されず、例えば、下記式[1−1]〜[1−4]などが例示できるが、液晶配向性や合成のし易さの観点から、式[1−2]、[1−3]で表される構造になるような位置が好ましい。
【0028】
【化7】
(式中Aは熱によって脱離し得る有機基を表す。)
式[1]中、アミノ基が置換されるベンゼン環には有機基が置換されていてもよく、試薬の入手性などにより種々選択されるが、特に好ましくは未置換のものが好ましい。
【0029】
式[1]中の熱によって脱離し得る有機基Aは、熱で分解して脱離してアミノ基に変換される有機基であれば特に限定はされない。勿論、Aを具備する状態では、アミノ基の反応性を低下させるものである。熱で脱離し得るAの構造としてはベンジルオキシカルボニル基や9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、第三級ブトキシカルボニル基などに代表されるカルバメート系の有機基が挙げられるが、熱による脱離の効率が良く、比較的低い温度で脱離し、脱離した際に無害な気体として排出されるという観点では第三級ブトキシカルボニル基が特に好ましい。
【0030】
<ジアミン化合物>
特に好ましい構造は、下記式で表されるジアミン化合物であり、新規化合物である。
【0031】
【化8】
【0032】
以下、新規な本発明のジアミン化合物を例にとって作用効果を説明するが、上記式[1]に示す本発明で用いられるジアミン化合物も同様な作用効果を奏することは明らかであるから、重複する説明は省略する。
【0033】
本発明のジアミン化合物は、第三級ブトキシカルボニル基(以下Boc基とする)で保護された芳香族アミノ基を他のアミノ基に隣接して(オルト位に)有することを特徴としている。通常アミノ基は反応性に富む有機基であるため、そのままではジアミンの側鎖の一部として応用することが困難であるが、Boc基で保護することによりアミノ基の反応性を低下させることができ、またBoc基で保護されたアミノ基は約150℃以上で加熱するとBoc基が脱保護されアミノ基に変化させることが出来る。それに加えてBoc基は嵩高い第三級ブチル基を有するため、モノマーの溶解性を向上させることができ、加えてそのモノマーを用いることで生成するポリマーも同様に溶解性を向上させることができる。
【0034】
アミノ基は反応性の高い有機基であり、不飽和結合、カルボン酸、カルボン酸無水物、エポキシ化合物、カルボニルなど様々な部位と反応することが知られている。一方で、下の図に示したようにアミド結合、エステル結合などのカルボニルを含む結合基と近接するようにBoc保護したアミノ基を配置させると、分子間ではなく分子内で反応が起こりやすくなり、例えば本発明のジアミンをポリアミドに適用させることでポリベンゾイミダゾールに誘導させることができ[scheme−1]、ポリアミック酸やポリイミドなどに応用することで、例えばカルボン酸部位を有すポリベンゾイミダゾール誘導体やアミノ基を有するポリイミド、またそれらから更に脱水反応を経て(1H−ベンゾ[d]ピロロ[1,2−a]イミダゾール−1−オン)のような環構造を有するポリマー[scheme−2]を誘導することができるようになる。
【0035】
本発明のジアミン化合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と反応させてBoc基で保護されたアミンを有するポリイミド前駆体又はポリイミドの塗膜を形成し、焼成によりBoc基が脱離して発生したアミノ基を分子内で反応させることにより複素環を形成させる点に特徴を有する。なお、Boc基が外れたアミノ基のすべてが環化反応に費やされるわけではなく、一部は分子間反応(すなわち架橋反応)にも費やされることが考えられる。
【0036】
このようなBoc基が脱離して発生したアミノ基の反応により、膜強度の向上や、ポリマー中の低分子成分と架橋することにより信頼性の向上に寄与すると考えられる。それに基づき、本発明ジアミンを用いたポリアミック酸又はポリイミドはラビング処理時の膜削れが起こり難く、長期間高温下やバックライトに暴露されても電圧保持率の低下が起こり難くなる効果が得られることがわかっている。
【0037】
また比較的低温でかさ高いBoc基が外れるため、液晶配向性も良好な構造に変化するため、ラビング耐性と液晶配向性の両立が可能になる。加えて、焼成にて生じる構造(複素環)は電気化学的に活性な構造となるため、低RDC化にも寄与することが考えられる。特に芳香族のテトラカルボン酸二無水物と本発明ジアミンを組み合わせるとお互いが強く相互作用すると考えられ、これにより非常にRDCが蓄積し難い配向膜を得ることが出来る。
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
<ジアミン化合物の合成方法>
以下に本発明のジアミンの主な合成法について説明する。尚、以下で説明した方法は合成例であり、これに限定されないものとする。
【0041】
本発明のジアミンは、各ステップを経てジニトロ体を合成し、通常用いる還元反応にてニトロ基をアミノ基に変換することにより目的とするジアミンを得ることができる。
【0042】
ジニトロ体の合成においては実施例にて具体的な合成法を示すが、ニトロ基とアミノ基が近接するようなジニトロアミノベンゼン誘導体やアミノ基同士が近接するようなモノニトロジアミノベンゼンに二炭酸第三級ブチルなどの熱脱保護が可能な保護試薬を反応させる方法が挙げられる。
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
上記反応において、必要に応じて塩基存在下にて行うことができる。用いる塩基としては合成可能であれば特に限定はしないが、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウムなどの無機塩基、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの有機塩基などが挙げられる。一方で、用いる塩基によっては一つのアミノ基に二つの保護基が置換してしまう場合があるため、適宜塩基を選ぶ必要がある。水素化ナトリウムなどの塩基は効率よくアミノ基の水素を引き抜くことが出来るため好ましいが、この方法以外でも合成は可能であるため、特に合成法は限定しない。
【0046】
ジニトロ化合物を還元する方法には、特に制限はなく、通常、パラジウム−炭素、酸化白金、ラネーニッケル、白金黒、ロジウム−アルミナ、硫化白金炭素などを触媒として用い、酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アルコール系などの溶媒中、水素ガス、ヒドラジン、塩化水素などによって還元を行う方法がある。必要に応じてオートクレーブなどを用いてもよい。一方で、構造に不飽和結合部位を含む場合、パラジウムカーボンや白金カーボンなどを用いると不飽和結合部位が還元されてしまい、飽和結合となってしまう恐れがあるため、好ましい条件としては還元鉄や錫、塩化錫などの遷移金属を触媒として用いた還元条件が好ましい。
【0047】
<式[2]で表されるジアミン>
本発明の重合体は、上記式[1]にて表されるジアミン化合物に加えて、下記式[2]で表されるジアミンを用いることができる。
【0048】
【化13】
【0049】
上記式[2]における、R、X、X、X、p,q,r及びRは上記に定義したとおりである。上記式[2]のジアミンは、液晶のプレチルト角(液晶配向膜に対する液晶の傾斜角度)を大きくすることに貢献するものであり、これらのジアミンとしては、長鎖アルキル基、パーフルオロアルキル基、芳香族環状基、脂肪族環状基、及びこれらを組み合わせた置換基、ステロイド骨格基などを有するジアミンであることが好ましい。
【0050】
プレチルト角の好ましい大きさはモードにより種々異なるが、上記ジアミンの構造や、導入量を種々選択することにより好ましいプレチルト角を得ることができる。
【0051】
式[2]で表される側鎖ジアミンにおいて、3〜5°の比較的低いプレチルト角が要求されるTNモードや、8〜20°のプレチルトが要求されるOCBモードなどではチルト発現能が比較的低い側鎖含有ジアミンが好ましい。
【0052】
比較的チルト発現能の小さな構造としては、Rは−O−、又は−NHCO−(−CONH−)が好ましく、式中pは0〜1、qは0〜1、rは0が好ましく、p及び/又はqが1の場合、Rは炭素数1〜12の直鎖アルキルが好ましく、p=q=r=0の場合、Rは炭素数10〜22の直鎖アルキル基又はステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基より選ばれる2価の有機基が好ましい。チルト発現能の小さい側鎖ジアミンの具体的な構造を表1に示すがこれに限定されない。
【0053】
【表1】
【0054】
電気特性の観点では、表1の[2−1]〜[2−3]のような長鎖アルキル側鎖が好ましく、液晶配向性、プレチルトの安定性の観点から表1の[2−25]〜[2−27]で表されるジアミンが好ましい。特に[2−25]で表されるジアミンは式[A]で表されるジアミンを併用するとプレチルト角の面内均一性に優れた液晶配向剤を得ることができるため好ましい。
【0055】
一方、VAモードなどはチルト発現能の大きな側鎖を併用することで垂直配向性を得ることができる。VAモードにおける式[2]の好ましい構造としては、式中、Rは−O−、−COO−、又は−CHO−が好ましく、pは0〜1、qは0〜1、rは0〜1が好ましく、Rは2〜22が好ましい。p=q=r=0の場合、Rは炭素数18〜22の直鎖アルキル基、又はステロイド骨格を有する炭素数12〜25の有機基である2価の有機基が好ましい。チルト発現能の大きな側鎖ジアミンの具体的な構造を表2−1及び表2−2に示す。
【0056】
【表2-1】
【0057】
【表2-2】
【0058】
これらのジアミンはチルト発現能が高く、VAモードに用いる場合好ましい。特に、[2−43]、[2−92]などのジアミンは、チルト発現能が高く、比較的少ない側鎖量で垂直配向を示すため好ましく、特に[2−52]や[2−101]のジアミンは、極めてチルト発現能が高く、非常に少ない側鎖量で垂直配向を得ることができるため配向剤の印刷性の点で好ましい。
【0059】
一方、前記の式[2]で表されるジアミンにおいては、Rは、−NHCO−が好ましく、Rは、炭素数1〜16、好ましくは3〜10のアルキル基が好ましい。また、X、X、X及びp、q、rは、適宜の組み合わせが選ばれる。かかるジアミンの構造において、ベンゼン環上の各置換基の位置は特に限定されないが、2つのアミノ基の位置関係はメタ又はパラが好ましい。
【0060】
上記式[2]で表されるジアミンの例として、下記の式[3]で表されるジアミンが挙げられる。
【0061】
【化14】
(式[3]中、nは0〜21の整数であり、好ましくは0〜15の整数である。)
上記式[3]で表されるジアミンの好ましい具体例を挙げるが、これに限定されるものではない。
【0062】
【化15】
【0063】
ここでnは0〜19の整数である。nは小さい場合、プレチルト角が発現せず、大きい場合は可溶性ポリイミドの溶解性が低下する。よって好ましいn範囲は2〜15であり、より好ましくは4〜10である。
【0064】
上記[2]で表されるジアミンの含有量は、全アミン成分中の5〜60モル%が好ましく、プレチルトの均一性や印刷性の観点で5〜30モル%であるのが特に好ましい。
【0065】
また、式[2]で表されるジアミンは、式[1]で表されるジアミンの1モルに対して0.1〜1.2モル含有することが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0モルである。式[2]のジアミンがこの範囲の場合、適切なプレチルト角が得られ、かつ良好な配向性が得られる。
【0066】
上記のジアミン成分において、式[1]及び[2]は、これらのみでもよいが、他のジアミンを併用してもよい。その場合の他のジアミンとしては、特に限定されないが、後記する可溶性ポリイミドと混合して使用されるポリアミック酸の製造に使用されるジアミンが挙げられる。
【0067】
また、ジアミンと反応させて可溶性ポリイミドを製造するのに使用されるテトラカルボン酸二無水物成分についても、後記する可溶性ポリイミドと混合して使用されるポリアミック酸の製造に使用されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0068】
本発明の液晶配向剤に含有される可溶性ポリイミドの分子量は特に限定されないが、塗膜の強度と液晶配向剤としての取り扱いのしやすさの観点から、重量平均分子量で2,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜50,000である。
【0069】
[ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド]
本発明のポリアミドは式[1]で表されるジアミン化合物を含有するジアミン成分とジカルボン酸のハライドとを塩基存在下で反応させる、またはジカルボン酸とジアミンを適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによって得られるポリアミドである。ポリアミック酸は、式[1]で表されるジアミン化合物を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応によって得られるポリアミック酸である。本発明のポリアミック酸エステルは式[1]で表されるジアミンを含有するジアミン成分とテトラカルボン酸ジエステルジクロリドを塩基存在下で反応させる、またはテトラカルボン酸ジエステルとジアミンを適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによって得られるポリアミック酸エステルである。本発明のポリイミドはこのポリアミック酸を脱水閉環させる、あるいはポリアミック酸エステルを加熱閉環させることにより得られるポリイミドである。かかるポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのいずれも液晶配向膜を得るための重合体として有用である。
【0070】
上記ポリアミド、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミドを得るためのジアミン成分(以下、ジアミン成分ともいう)において、式[1]で表されるジアミンの含有割合に制限はない。
【0071】
ジアミン成分において、式[1]で表されるジアミンが100モル%未満の場合、使用される式[1]で表されるジアミン以外のジアミンは特に限定されない。あえて、その具体例を挙げるとすれば以下の通りである。
【0072】
脂環式ジアミン類の例としては、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0073】
芳香族ジアミン類の例としては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、3,5−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、2,5−ジアミノ−p−キシレン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、1,4−ジアミノ−2,5−ジクロロベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,2−ジフェニルエタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビベンジル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’―ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、3,5−ビス(4−アミノフェノキシ)安息香酸、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビベンジル、2,2−ビス[(4−アミノフェノキシ)メチル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、α、α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフロロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,4−ジアミノジフェニルアミン、1,8−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノアントラキノン、1,3−ジアミノピレン、1,6−ジアミノピレン、1,8―ジアミノピレン、2,7−ジアミノフルオレン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)テトラメチルジシロキサン、ベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェニル)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェニル)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェニル)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェニル)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェニル)デカン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、ジ(4−アミノフェニル)プロパン−1,3−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ブタン−1,4−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ペンタン−1,5−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘキサン−1,6−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ヘプタン−1,7−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)オクタン−1,8−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)ノナン−1,9−ジオエート、ジ(4−アミノフェニル)デカン−1,10−ジオエート、1,3−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕プロパン、1,4−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ブタン、1,5−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ペンタン、1,6−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘキサン、1,7−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ヘプタン、1,8−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕オクタン、1,9−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕ノナン、1,10−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ〕デカンなどが挙げられる。
【0074】
芳香族−脂肪族ジアミンの例としては、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノ−N−メチルベンジルアミン、4−アミノ−N−メチルベンジルアミン、3−アミノフェネチルアミン、4−アミノフェネチルアミン、3−アミノ−N−メチルフェネチルアミン、4−アミノ−N−メチルフェネチルアミン、3−(3−アミノプロピル)アニリン、4−(3−アミノプロピル)アニリン、3−(3−メチルアミノプロピル)アニリン、4−(3−メチルアミノプロピル)アニリン、3−(4−アミノブチル)アニリン、4−(4−アミノブチル)アニリン、3−(4−メチルアミノブチル)アニリン、4−(4−メチルアミノブチル)アニリン、3−(5−アミノペンチル)アニリン、4−(5−アミノペンチル)アニリン、3−(5−メチルアミノペンチル)アニリン、4−(5−メチルアミノペンチル)アニリン、2−(6−アミノナフチル)メチルアミン、3−(6−アミノナフチル)メチルアミン、2−(6−アミノナフチル)エチルアミン、3−(6−アミノナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。
【0075】
複素環式ジアミン類の例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2,7−ジアミノジベンゾフラン、3,6−ジアミノカルバゾール、2,4−ジアミノ−6−イソプロピル−1,3,5−トリアジン、2,5−ビス(4−アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなどが挙げられる。
【0076】
脂肪族ジアミン類の例としては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,3−ジアミノ−2,2−ジメチルプロパン、1,6−ジアミノ−2,5−ジメチルヘキサン、1,7−ジアミノ−2,5−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−4,4−ジメチルヘプタン、1,7−ジアミノ−3−メチルヘプタン、1,9−ジアミノ−5−メチルヘプタン、1,12−ジアミノドデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタンなどが挙げられる。
【0077】
側鎖にアルキル基、フッ素含有アルキル基、芳香環、脂肪族環、複素環、並びにそれらからなる大環状置換体を有するジアミン化合物を併用してもよい。具体的には、下記の式[DA-1]〜式[DA-30]で示されるジアミン化合物を例示することができる。
【0078】
【化16】
(式[DA-1]から式[DA-5]中、Rは、炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基である。)
【0079】
【化17】
(式[DA-6]から式[DA-9]中、Sは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH−、−O−、−CO−、又は−NH−を示し、Rは炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基を示す。)
【0080】
【化18】
(式[DA-10]及び式[DA-11]中、Sは、−O−、−OCH−、−CHO−、−COOCH−、又は−CHOCO−を示し、Rは炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0081】
【化19】
(式[DA-12]から式[DA-14]中、Sは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、又は−CH−を示し、Rは炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0082】
【化20】
(式[DA-15]及び式[DA-16]中、Sは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、−CH−、−O−、又は−NH−を示し、Rはフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基、又は水酸基である。)
【0083】
【化21】
(式[DA-17]〜[DA-20]中、R10は炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロへキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス体である。)
【0084】
【化22】
【0085】
光により配向処理する場合においては、一般式[1]のジアミンと上記[DA−1]〜[DA−30]のジアミンを併用させることでさらに安定したプレチルトを得ることができるため好ましい。併用できるより好ましいジアミンとしては式[DA−10]〜[DA−30]が好ましく、より好ましくは[DA−10]〜[DA−16]のジアミンである。これらのジアミンの好ましい含有量は特に限定はされないが、5〜50mol%が好ましく、印刷性の観点では5〜30mol%が好ましい。
【0086】
また、以下のジアミンを併用させても良い。
【0087】
【化23】
【0088】
式[DA−35]中、mは0〜3の整数であり、式[DA−38]中、nは1〜5の整数である。[DA−31]や[DA−32]は導入することによりVHRを向上させることができ、[DA−33]〜[DA−38]は蓄積電化の低減に効果があるため、好ましい。
【0089】
加えて、下記の式[DA−39]で示されるようなジアミノシロキサンなども挙げることができる。
【0090】
【化24】
(式[DA−39]中、mは、1から10の整数である。)
【0091】
その他のジアミン化合物は、液晶配向膜とした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0092】
本発明のポリアミド酸を得るためにジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物は特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0093】
脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−二無水物、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0094】
更には、上記脂環式構造又は脂肪族構造を有するテトラカルボン酸二無水物に加えて、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用すると、液晶配向性が向上し、かつ液晶セルの蓄積電荷を低減させることができるので好ましい。芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0095】
本発明のポリアミド酸エステルを得るためにジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸ジアルキルエステルは特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0096】
脂肪族テトラカルボン酸ジエステルの具体的な例としては1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸ジアルキルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸ジアルキルエステル、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸ジアルキルエステル、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸ジアルキルエステル、シス−3,7−ジブチルシクロオクタ−1,5−ジエン−1,2,5,6−テトラカルボン酸ジアルキルエステル、トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン−3,4,7,8−テトラカルボン酸−3,4:7,8−ジアルキルエステル、ヘキサシクロ[6.6.0.12,7.03,6.19,14.010,13]ヘキサデカン−4,5,11,12−テトラカルボン酸−4,5:11,12−ジアルキルエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンー1,2−ジカルボンジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0097】
芳香族テトラカルボン酸ジアルキルエステルとしては、ピロメリット酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸ジアルキルエステル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,3’,4−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルジアルキルエステル、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホンジアルキルエステル、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステル、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジアルキルエステルなどが挙げられる。
【0098】
本発明のポリアミドを得るためにジアミン成分と反応させるジカルボン酸は特に限定されない。ジカルボン酸またはその誘導体の脂肪族ジカルボン酸の具体例として、マロン酸、蓚酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ムコン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライイン酸、セバシン酸およびスベリン酸等のジカルボン酸を挙げることができる。
【0099】
脂環式系のジカルボン酸としては、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、1,2−シクロプロパンジカルボン酸、1,1−シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロブタンジカルボン酸、3,4−ジフェニル−1,2−シクロブタンジカルボン酸、2,4−ジフェニル−1,3−シクロブタンジカルボン酸、1−シクロブテン−1,2−ジカルボン酸、1−シクロブテン−3,4−ジカルボン酸、1,1−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−(2−ノルボルネン)ジカルボン酸、ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3−ジカルボン酸、2,5−ジオキソ−1,4−ビシクロ[2.2.2]オクタンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、4,8−ジオキソ−1,3−アダマンタンジカルボン酸、2,6−スピロ[3.3]ヘプタンジカルボン酸、1,3−アダマンタン二酢酸、カンファ−酸等を挙げることができる。
【0100】
芳香族ジカルボン酸としては、o−フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−アミノイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、テトラメチルテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−アントラセンジカルボン酸、1,4−アントラキノンジカルボン酸、2,5−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、1,5−ビフェニレンジカルボン酸、4,4"−タ−フェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ビベンジルジカルボン酸、4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−トランジカルボン酸、4,4’−カルボニル二安息香酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−ジチオ二安息香酸、p−フェニレン二酢酸、3,3’−p−フェニレンジプロピオン酸、4−カルボキシ桂皮酸、p−フェニレンジアクリル酸、3,3’−[4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’−[4,4’−(オキシジ−p−フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’−[4,4’−(オキシジ−p−フェニレン)]二酪酸、(イソプロピリデンジ−p−フェニレンジオキシ)二酪酸、ビス(p−カルボキシフェニル)ジメチルシラン等のジカルボン酸を挙げることができる。
【0101】
複素環を含むジカルボン酸としては、1,5−(9−オキソフルオレン)ジカルボン酸、3,4−フランジカルボン酸、4,5−チアゾールジカルボン酸、2−フェニル−4,5−チアゾールジカルボン酸、1,2,5−チアジアゾール−3,4−ジカルボン酸、1,2,5−オキサジアゾール−3,4−ジカルボン酸、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0102】
上記の各種ジカルボン酸は酸ジハライドあるいは無水の構造のものであってもよい。これらのジカルボン酸類は、特に直線的な構造のポリアミドを与えることが可能なジカルボン酸類であることが液晶分子の配向性を保つ上から好ましい。これらの中でも、テレフタル酸、イソテレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジカルボン酸、2,2−ビス(フェニル)プロパンジカルボン酸、4、4鋳タ−フェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸またはこれらの酸ジハライド等が好ましく用いられる。これらの化合物には異性体が存在するものもあるが、それらを含む混合物であってもよい。また、2種以上の化合物を併用してもよい。なお、本発明に使用するジカルボン酸類は、上記の例示化合物に限定されるものではない。
【0103】
テトラカルボン酸二無水物は、液晶配向膜にした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上併用することができる。
【0104】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分との反応により、本発明のポリアミド酸を得るにあたっては、公知の合成手法を用いることができる。一般的にはテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0105】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミド酸が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0106】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミド酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミド酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
【0107】
また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミド酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0108】
テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いても良い。また、テトラカルボン酸二無水物またはジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させても良く、個別に順次反応させても良く、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としても良い。
【0109】
その際の重合温度は−20℃から150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5℃から100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、テトラカルボン酸二無水物とジアミン成分の反応溶液中での合計濃度が、好ましくは1から50質量%、より好ましくは5から30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0110】
ポリアミド酸の重合反応においては、テトラカルボン酸二無水物の合計モル数と、ジアミン成分の合計モル数の比は0.8から1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミド酸の分子量は大きくなる。
【0111】
本発明のポリイミドは、前記のポリアミド酸を脱水閉環させて得られるポリイミドであり、液晶配向膜を得るための重合体として有用である。
【0112】
本発明のポリイミドにおいて、アミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は、必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0113】
[ポリイミド]
ポリアミド酸をイミド化させる方法としては、ポリアミド酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミド酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0114】
ポリアミド酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃から400℃、好ましくは120℃から250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0115】
ポリアミド酸の触媒イミド化は、ポリアミド酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20から250℃、好ましくは0から180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5から30モル倍、好ましくは2から20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1から50モル倍、好ましくは3から30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0116】
[ポリアミック酸エステル]
ポリアミック酸エステルを合成する方法としては、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応や、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを適当な縮合剤、塩基の存在下にて反応させることによりポリイミドの前駆体の一種であるポリアミック酸エステルを得ることができる。または、予めポリアミック酸を重合し、高分子反応を利用してアミック酸中のカルボン酸をエステル化することでも得ることができる。
【0117】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0118】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0119】
縮合剤存在下にて縮合重合を行う場合、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニル、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)4−メトキシモルホリウムクロリド n−水和物などが使用できる。
【0120】
また、上記縮合剤を用いる方法において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量は(C1)に対して0.1〜1.0倍モル量であることが好ましい。
【0121】
上記の反応に用いる溶媒は、上記にて示したポリアミック酸を重合する際に用いられる溶媒で行うことができるが、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが良く、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0122】
[ポリアミド]
ポリアミドもポリアミック酸エステル同様にして合成することができる。
【0123】
[ポリマーの回収]
ポリアミド酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミドの反応溶液から、生成したポリアミド酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミドを回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2から10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0124】
本発明の液晶配向剤に含有されるポリアミド酸及びポリイミドの分子量は、そこから得られる塗膜の強度及び、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000から1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000から150,000である。
【0125】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成するための塗布液であり、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液である。ここで、前記の樹脂成分は、上記した本発明の重合体から選ばれる少なくとも一種の重合体を含む樹脂成分である。その際、樹脂成分の含有量は1質量%から20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%から15質量%、特に好ましくは3質量%から10質量%である。
【0126】
本発明において、前記樹脂成分は、全てが本発明に用いる共重合体であってもよく、本発明の重合体にそれ以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における本発明の重合体以外の他の重合体の含有量は0.5質量%から15質量%、好ましくは1質量%から10質量%である。
【0127】
かかる他の重合体は、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分と反応させるジアミン成分として、特定ジアミン化合物以外のジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸又はポリイミドなどが挙げられる。
【0128】
本発明の液晶配向剤に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0129】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0130】
本発明の液晶配向剤は、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などである。
【0131】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては次のものが挙げられる。
【0132】
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1−ヘキサノール、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒などが挙げられる。
【0133】
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5から80質量%であることが好ましく、より好ましくは20から60質量%である。
【0134】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
【0135】
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01から2質量部、より好ましくは0.01から1質量部である。
【0136】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
【0137】
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0138】
更に、基板と膜の密着性向上に加え、バックライトによる電気特性低下などを防ぐ目的で以下のようなフェノプラスト系の添加剤を導入しても良い。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0139】
【化25】
【0140】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1から30質量部であることが好ましく、より好ましくは1から20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0141】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0142】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、又は垂直配向用途などでは配向処理無しで液晶配向膜として用いることができる。この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、若しくはアクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができる。また、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
【0143】
液晶配向剤の塗布方法は特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェットなどで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナーなどがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0144】
液晶配向剤を基板上に塗布した後の焼成は、ホットプレートなどの加熱手段により50から300℃、好ましくは80から250℃で行い、溶媒を蒸発させて、塗膜を形成させることができる。焼成後に形成される塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5から300nm、より好ましくは10から100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の塗膜をラビング又は偏光紫外線照射などで処理する。
【0145】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。
【0146】
液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサーを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、又は、スペーサーを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。このときのスペーサーの厚みは、好ましくは1から30μm、より好ましくは2から10μmである。
【0147】
以上のようにして、本発明の液晶配向剤を用いて作製された液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。
【0148】
<実施例>
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではないことはもちろんである。
【0149】
実施例及び比較例で使用する化合物の略号は以下の通りである。
【0150】
また、表3には、実施例及び比較例で合成したポリアミック酸(PAA)のリストを、表4には、実施例及び比較例で合成した可溶性ポリイミド(SPI)のリストを、表5には、実施例及び比較例で合成したポリアミック酸エステル(PAE)及びポリアミドのリストを、それぞれ示す。
【0151】
さらに、表6及び表7には、実施例及び比較例で調製した液晶配向剤(AL)のリストをそれぞれ示し、表8には、実施例及び比較例の液晶配向剤の配向剤印刷性、ラビング耐性、セル表示特性評価結果を示し、表9には、実施例及び比較例の液晶配向剤を用いた液晶セルの特性評価結果を示す。
【0152】
<テトラカルボン酸二無水物>
A−1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二水物
A−2:ピロメリット酸二水物
A−3:ビシクロ[3,3,0]オクタンー2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物
A−4:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸―1,4:2,3−二無水物
A−5:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸ジメチルエステル
A−6:アジピルクロリド
A−7:テレフタロイルクロリド
【0153】
【化26】
【0154】
<ジアミン>
B−1:1,4−フェニレンジアミン
B−2:3−アミノベンジルアミン
B−3:1,3−フェニレンジアミン
【0155】
【化27】
【0156】
B−4:4−ヘキサデシルオキシ−1,3−ジアミノベンゼン
B−5:4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)ベンズアミド−2’,4’−フェニレンジアミン
B−6:4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノキシ−2’,4’−フェニレンジアミン
【0157】
【化28】
【0158】
B−7:2,5−ジアミノ tert−ブトキシカルボニルアミノベンゼン
B−8:2,4−ジアミノ tert−ブトキシカルボニルアミノベンゼン
【0159】
【化29】
【0160】
<縮合剤>
DMT−MM:4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)4−メトキシモルホリウムクロリド n−水和物
【0161】
<有機溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
GBL:γ−ブチロラクトン
BC:ブチルセロソルブ
THF:テトラヒドロフラン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【0162】
以下に、本実施例で行った評価方法について示す。
【0163】
<分子量の測定>
ポリアミック酸及びポリイミドの分子量は、該ポリイミドをGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量と重量平均分子量を算出した。
【0164】
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30ミリモル/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30ミリモル/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製ポリエチレングリコール(分子量約12,000、4,000、1,000)。
【0165】
<イミド化率の測定>
ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d、0.05%TMS混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNM−ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。
【0166】
イミド化率は、以下の式によって算出した。なお、式[1]で表されるジアミンを用いないポリイミドのイミド化率は、下記の式中の「ポリアミック酸重合時の式[1]ジアミンの導入量」の値をゼロとして算出した。
【0167】
イミド化率(%)=(100−ポリアミック酸重合時の式[1]ジアミンの導入量(mol%)×1/2)×α
【0168】
式中αは、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5〜10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い次式によって求めた。
【0169】
α =(1−α・x/y)
【0170】
上記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基プロトン一個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0171】
<液晶セルの作製>
液晶配向剤を透明電極付きガラス基板にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で70秒乾燥させた後、220℃のIRオーブンを用いて窒素雰囲気下で10分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この塗膜面をロール径120mmのラビング装置でコットン布(吉川製YA−25C)を用いて、ロール回転数1000rpm、ロール進行速度50mm/sec、押し込み量0.4mmの条件でラビングし、液晶配向膜付き基板を得た。
【0172】
この基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に6μmのスペーサーを散布し、その上からシール剤(住友化学株式会社製 NX−1500T)をシールディスペンサーにて印刷し、もう1枚の基板を液晶配向膜面が向き合いラビング方向が直行するようにして張り合わせた後、シール剤を硬化(仮硬化:80℃30分、本硬化:150℃1時間)させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2003(メルク・ジャパン社製)を注入し、注入口を封止して、ツイストネマティック液晶セルを得た。
【0173】
また、垂直配向(VAモード)用の液晶配向材評価にはラビング工程を踏まず、上記手法にて空セルを作製し、液晶はMLC−6608を用いて評価を行った。
【0174】
<ワニス印刷性試験>
調製した液晶配向処理剤を、洗浄したCr板上に配向膜印刷機(日本写真印刷社製「オングストローマー」)を用いてフレキソ印刷を行うことにより塗布性試験を行った。アニロックスロールに約1.0mLの液晶配向剤を滴下し、空運転を10回実施した後、10分間印刷機を止め、印刷版を乾燥させた。その後、Cr基板1枚に印刷を行い、印刷後の基板は70℃のホットプレート上に5分間放置して、塗膜の仮乾燥を行い、膜状態の観察を行った。観察は目視と光学顕微鏡(ニコン社製「ECLIPSE ME600」)にて50倍で観察し、主に膜厚ムラやエッジ部の膜厚ムラの観察を行った。
【0175】
<プレチルト角の測定>
上記の<液晶セルの作製>と同様にして得られた液晶セルを105℃で10分間加熱した後、用いてプレチルト角の測定を行った。測定にはオプトメトリクス社製 Axo Scan ミュラーマトリクスポーラリメーターを用いた。
【0176】
<初期VHR(電圧保持率)の測定>
上記の<液晶セルの作製>に記載の方法で作製したツイストネマティック液晶セルに、60℃の温度下で1Vの電圧を60μs間印加し、166.7ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。なお、電圧保持率の測定には東陽テクニカ社製のVHR−1電圧保持率測定装置を使用した。
【0177】
<バックライトエージング耐性>
40inch型液晶TV用バックライトモジュール上に240時間放置し、上記の<初期VHR(電圧保持率)の測定>と同じ方法に準じて測定を行った。
【0178】
<高温高湿試験>
さらに高温高湿装置内に温度70℃、湿度70%下で240時間放置し、上記の<初期VHR(電圧保持率)の測定>と同じ方法に準じて測定を行った。
【0179】
<RDC(残留DC電圧)の測定>
上記の<液晶セルの作製>に記載の方法で作製したツイストネマティック液晶セルに、23℃の温度下で直流電圧を0Vから0.1V間隔で1.0Vまでに印加し、各電圧でのフリッカー振幅レベル光電変換装置を用いて測定し、フリッカー振幅レベルと印加電圧における検量線を作成した。セルを5分間アースし、放置後、交流電圧をV50(輝度が半分になる電圧)、直流電圧5.0Vを1時間印加した後、直流電圧のみ0Vにした直後のフリッカー振幅レベルを測定し、予め作製した検量線と照らし合わせる事によりRDCを見積もった。(このRDCの見積もり方法は、フリッカー参照法という。)
【0180】
<ジアミンの合成>
実施例1
2,5−ジアミノ tert−ブトキシカルボニルアミノベンゼン[B−7]の合成
【0181】
Step1 4−ニトロ 2−tertブトキシカルボニルアミノアニリンの合成
1L四口フラスコに4−ニトロ−1,2−フェニレンジアミンを50.0g(326.5mmol)測りとり、THFを500ml加え溶解させ、窒素雰囲気下で約60℃に加熱し、二炭酸tertブチル71.3g(326.5mmol)を滴下ロートを用いて1時間かけてゆっくり滴下し、4時間還流させた。
【0182】
反応終了後、反応溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、酢酸エチル:n−ヘキサンの混合溶媒(体積比7:3)にて再結晶することで橙色の固体62.0g(収率75%)を得た。
【0183】
Step2 [B−7]の合成
1L四口フラスコに2−tertブトキシカルボニルアミノ−5−ニトロアニリンを60.0g(236.9mmol)、10wt%パラジウムカーボンを6.0g計り取り、THFを500ml加え、減圧脱気及び水素置換を行い、室温で24時間反応させた。
【0184】
反応終了後、PTFE製のメンブランフィルターにてパラジウムカーボンを除去し、濾液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒(体積比5:5)により再結晶することにより目的のジアミンである薄ピンク色の固体50.2g(収率:95%)を得た。その構造は、分子内水素原子の核磁気共鳴スペクトルであるH−NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
H NMR (400 MHz,[D]−DMSO)δ:6.91−6.89(d、1H)、6.12−6.09(d−d、2H)、5.95(s−br、1H)、3.75(s−br、2H)、3.53(s−br、2H)、1.49(s、9H)
【0185】
実施例2
2,4−ジアミノ−2−tert−ブトキシカルボニルアミノベンゼン[B−8]の合成
【0186】
Step1 2,4−ジニトロ tertブトキシカルボニルアミノベンゼンの合成
1L四口フラスコに水素化ナトリウム(Pure:50%)を22.8g(約273.0mmol分)を測り取り、DMFを500ml加え、窒素雰囲気下で約0℃に冷却し、2,4−ジニトロアニリン50.0g(273.0mmol)のDMF溶液をゆっくり滴下し、1時間反応させ、二炭酸tertブチル59.6g(273.0mmol)を滴下ロートを用いて1時間かけてゆっくり滴下し、室温で2時間反応させた。
【0187】
反応終了後、イオン交換水を500ml加えしばらく攪拌すると固体が析出してくるため、固体を濾過により回収し、メタノールで数回洗浄し、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒(体積比5:5)にて再結晶を行うことで、薄黄色の固体60.3g(収率78%)を得た。
【0188】
Step2 [B−8]の合成
1L四口フラスコに2,4−ジニトロ tertブトキシカルボニルアミノベンゼンを60.0g(211.8mmol)、10wt%パラジウムカーボンを6.0g計り取り、THFを500ml加え、減圧脱気及び水素置換を行い、室温で24時間反応させた。
【0189】
反応終了後、PTFE製のメンブランフィルターにてパラジウムカーボンを除去し、濾液をロータリーエバポレーターにより濃縮し、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒(体積比3:7)により再結晶することにより目的のジアミンである乳白色の固体45.9g(収率:97%)を得た。その構造は、分子内水素原子の核磁気共鳴スペクトルであるH−NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
H NMR (400 MHz,[D]−DMSO)δ:7.07(s−br、1H)、6.68(d、1H)、6.67−6.63(d−d、1H)、6.35−6.32(d−d、1H)、3.42(s−br、2H)、3.12(s−br、2H)、1.50(s、9H)
【0190】
実施例3
ポリアミック酸[PAA−1:A−1 / B−7]の重合と配向剤[AL−1]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−7を3.35g(15.00mmol)測り取り、NMPを34.8g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−1を2.85g(14.60mmol)を少しずつ加え、室温に戻し6時間反応させ15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−1]を得た。
得られたPAA−1の数平均分子量11,300、重量平均分子量は24,500であった。
【0191】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を10.0g計り取り、NMPを7.5g、BCSを7.5gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−1が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−1]を得た。
【0192】
実施例4
可溶性ポリイミド[SPI−1:A−1/B−7]の合成と配向剤[AL−2]の調製
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、実施例3で得られたポリアミック酸溶液[PAA−1]を30.0g測りとり、NMPを34.3g無水酢酸を3.32g、ピリジンを1.37g加え、室温で30分攪拌した後、50℃で3時間攪拌し反応させた。反応終了後、240mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−1]を得た。このポリイミドの数平均分子量は10,300、重量平均分子量は22,600、イミド化率は82%であった。
【0193】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−1を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを3.33g BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−1が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−2]を得た。
【0194】
実施例5
ポリアミック酸[PAA−2:A−1/B−8]の重合と配向剤[AL−3]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−8を3.35g(15.00mmol)測り取り、NMPを34.8g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−1 2.85g(14.60mmol)を少しずつ加え、室温に戻し6時間反応させ15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−2]を得た。
得られたPAA−2の数平均分子量13,900、重量平均分子量は28,300であった。
【0195】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を10.0g計り取り、NMPを7.5g、BCSを7.5gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−1が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−3]を得た。
【0196】
実施例6
可溶性ポリイミド[SPI−2:A−1/B−8]の合成と配向剤[AL−4]の調製
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、実施例5で得られたポリアミック酸溶液[PAA−2]を30.0g測りとり、NMPを34.3g無水酢酸を3.32g、ピリジンを1.37g加え、室温で30分攪拌した後、50℃で3時間攪拌し反応させた。反応終了後、240mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−2]を得た。このポリイミドの数平均分子量は12,800、重量平均分子量は26,600、イミド化率は85%であった。
【0197】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−2を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを3.33g BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−1が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−4]を得た。
【0198】
実施例7
ポリアミック酸[PAA−3:A−2/B−7]の重合と配向剤[AL−5]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−7を2.33g(6.00mmol)測り取り、NMPを14.5g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−2を1.22g(5.58mmol)を少しずつ加え、室温に戻し6時間反応させ15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−3]を得た。
得られたPAA−3の数平均分子量9,600、重量平均分子量は20,100であった。
【0199】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を15.0g計り取り、NMPを11.3g、BCSを11.3gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−3が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−5]を得た。
【0200】
実施例8
ポリアミック酸[PAA−4:A−2/B−8]の重合と配向剤[AL−6]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−8を2.33g(6.00mmol)測り取り、NMPを14.5g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−2を1.22g(5.58mmol)を少しずつ加え、室温に戻し6時間反応させ15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−4]を得た。
得られたPAA−4の数平均分子量は9,200、重量平均分子量は19,900であった。
【0201】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を15.0g計り取り、NMPを11.3g、BCSを11.3gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−3が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−6]を得た。
【0202】
実施例9
可溶性ポリイミド[SPI−3:A−1、A−2(30)/B−2、B−7(40)、B−4(20)]の合成と配向剤[AL−7]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−2を0.92g(7.50mmol)、B−7を2.23g(10.00mmol)、B−4を1.74g(5.00mmol)測り取り、NMPを39.5g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−2を1.64g(7.50mmol)を少しずつ加え、室温に戻し30分間反応させ、さらにA−1を3.36g(17.13mmol)加え、室温で16時間反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液[PAA−6]を得た。
得られたPAA−6の数平均分子量12,800、重量平均分子量は29,600であった。
【0203】
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、前記で得られたポリアミック酸溶液を30.0g測りとり、NMPを45.0g無水酢酸を4.39g(43.00mmol)、ピリジンを1.87g(23.65mmol)加え、室温で30分攪拌した後、50℃で3時間攪拌し反応させた。反応終了後、200mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−3]を得た。このポリイミドの数平均分子量は11,200、重量平均分子量は24,300、イミド化率は92%であった。
【0204】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−3を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを3.33g、BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−3が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−7]を得た。
【0205】
実施例10
可溶性ポリイミド[SPI−4:A−1、A−2(30)/B−2、B−8(40)、B−4(20)]の合成と配向剤[AL−8]の調製
実施例9のB−7をそのままB−8に置き換えて同様の操作にて行い、20質量%のポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸の数平均分子量10,600、重量平均分子量は26,600であった。
【0206】
PAA−6を用いて実施例10同様の操作を行い、ポリイミド[SPI−4]およびSPI−4が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−8]を得た。このポリイミドの数平均分子量は9,900、重量平均分子量は21,300、イミド化率は90%であった。
【0207】
実施例11
可溶性ポリイミド[SPI−5:A−1、A−2(30)/B−2、B−7(40)、B−5(15)]の合成と配向剤[AL−9]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−2を1.10g(9.00mmol)、B−7を1.78g(8.00mmol)、B−5を1.22g(3.00mmol)測り取り、NMPを32.3g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−2を1.30g(6.00mmol)を少しずつ加え、室温に戻し30分間反応させ、さらにA−1を2.67g(13.60mmol)加え、室温で16時間反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸の数平均分子量10,900、重量平均分子量は32,600であった。
【0208】
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、前記で得られたポリアミック酸溶液[PAA−7]を30.0g測り取り、NMPを45.0g無水酢酸を4.39g(43.00mmol)、ピリジンを1.87g(23.65mmol)加え、室温で30分攪拌した後、50℃で3時間攪拌し反応させた。反応終了後、200mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−5]を得た。このポリイミドの数平均分子量は10,200、重量平均分子量は27,300、イミド化率は94%であった。
【0209】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−5を2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを3.33g BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−5が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−9]を得た。
【0210】
実施例12
可溶性ポリイミド[SPI−6:A−1、A−3(50)/B−1、B−7(40)、B−6(20)]の合成と配向剤[AL−10]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−1を0.65g(6.00mmol)、B−7を1.34g(6.00mmol)、B−6を1.14g(3.00mmol)測り取り、NMPを25.0g加え溶解させ、室温でA−3を1.88g(7.50mmol)加え、窒素雰囲気下80℃で4時間反応させ、さらにA−1を1.44g(7.35mmol)加え、室温で16時間反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸の数平均分子量15,900、重量平均分子量は42,800であった。
【0211】
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、前記で得られたポリアミック酸溶液を30.0g測り取り、NMPを55.7g無水酢酸を6.71g(65.74mmol)、ピリジンを5.20g(65.74mmol)加え、室温で30分攪拌した後、90℃で2.5時間攪拌し反応させた。反応終了後、200mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−6]を得た。このポリイミドの数平均分子量は14,300、重量平均分子量は33,300、イミド化率は69%であった。
【0212】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−6を2.00g測りとり、NMPを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、NMPを3.33g、BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−6が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−10]を得た。
【0213】
実施例13
可溶性ポリイミド[SPI−7:A−1、A−4(50)/B−1、B−7(40)、B−6(20)]の合成と配向剤[AL−11]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−1を0.65g(6.00mmol)、B−7を1.34g(10.00mmol)、B−6を1.14g(5.00mmol)測り取り、NMPを25.0g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−4を1.68g(7.50mmol)を少しずつ加え、室温に戻し30分間反応させ、さらにA−1を1.44g(7.35mmol)加え、室温で16時間反応させ、酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸の数平均分子量13,800、重量平均分子量は39,800であった。
【0214】
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、前記で得られたポリアミック酸溶液を30.0g測りとり、NMPを55.7g無水酢酸を6.71g(65.74mmol)、ピリジンを5.20g(65.74mmol)加え、室温で30分攪拌した後、90℃で3時間攪拌し反応させた。反応終了後、200mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−7]を得た。このポリイミドの数平均分子量は14,300、重量平均分子量は33,300、イミド化率は62%であった。
【0215】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−7を2.00g測りとり、NMPを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、NMPを3.33g、BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−7が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−11]を得た。
【0216】
実施例14
ポリアミック酸エステル[PAE−1:A−5/B−1,B−7(40)、B−4(10)]の合成と配向剤[AL−12]の調製
窒素導入管と攪拌子を備えた100mL四口フラスコにA−5を2.96g(11.40mmol)、ジアミン成分として、B−1を0.52g(4.80mmol)、B−7を1.07g(4.80mmol)、B−4を0.41g(1.20mmol)、NMPを36.5g、トリエチルアミン0.60g(5.90mmol)を加え、約10℃に冷却し、DMT−MMを9.96g(36.00mmol)加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させ、ポリアミック酸エステル(PAE−1)の濃度12質量%の溶液を得た。
【0217】
このポリアミック酸エステル(PAE−1)溶液にNMPを41.4g加え、約10℃に冷やしたメタノール500mL中に攪拌しながらゆっくり注ぎ、固体を析出させた。沈殿した固体を回収し、さらに、メタノール200mLで計2回分散洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル(PAE−1)の白色粉末を得た。このポリアミック酸エステルの数平均分子量は13,500、重量平均分子量は29,000であった。
【0218】
ポリアミック酸エステル(PAE−1)2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを3.33g、BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、PAE−1が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−12]を得た。
【0219】
実施例15
ポリアミド[PA−1:A−6、A−7(50)/B−7]の合成と配向剤[AL−13]の調製
窒素導入管と攪拌子を備えた100mL四口フラスコにB−7を2.23g(10.00mmol)、NMPを16.7g、ピリジン1.98g(25.00mmol)を加え、約10℃に冷却し、A−6を0.91g(4.80mmol)、A−7を1.02g(5.00mmol)加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させポリアミド(PA−1)の濃度20質量%の溶液を得た。
【0220】
このポリアミド(PA−1)溶液にNMPを32.2g加え8.0%とし、約10℃に冷やしたメタノール500mL中に攪拌しながらゆっくり注ぎ、固体を析出させた。沈殿した固体を回収し、さらに、メタノール200mLで計2回分散洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリアミド(PA−1)の薄茶色粉末を得た。このポリアミック酸エステルの数平均分子量は11,600、重量平均分子量は23,000であった。
【0221】
ポリアミド(PA−1)2.00g測りとり、NMPを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、NMPを3.33g BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、PA−1が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−13]を得た。
【0222】
比較例1
ポリアミック酸[PAA−5:A−1/B−1]の重合と配向剤[AL−14]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−1を2.16g(20.00mmol)測り取り、NMPを32.9g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−1を3.64g(18.60mmol)を少しずつ加え、室温に戻し6時間反応させ15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−5]を得た。
得られたPAA−5の数平均分子量9,700、重量平均分子量は19,300であった。
【0223】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を10.0g計り取り、NMPを7.5g、BCSを7.5gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−5が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−14]を得たが、冷蔵保存中にポリマーが析出するのを確認した。
【0224】
比較例2
可溶性ポリイミド[SPI−8:A−1/B−1]の合成と配向剤[AL−15]の調製
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、比較例1で得られたポリアミック酸溶液[PAA−5]を30.0g測りとり、NMPを45.0g無水酢酸を4.65g、ピリジンを2.00g加え、室温で30分攪拌した後、50℃で3時間攪拌し反応させたが、反応途中でゲル化が生じてしまい、ポリイミド(SPI−8)の調製が出来なかった。よって配向剤AL−15の調製はできなかった。
【0225】
比較例3
ポリアミック酸[PAA−6:A−1/B−3]の重合と配向剤[AL−16]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−3を2.16g(20.00mmol)測り取り、NMPを32.9g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−1を3.77g(19.20mmol)を少しずつ加え、室温に戻し6時間反応させ15質量%のポリアミック酸溶液[PAA−6]を得た。
得られたPAA−6の数平均分子量11,700、重量平均分子量は23,200であった。
【0226】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を10.0g計り取り、NMPを7.5g、BCSを7.5gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−6が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−16]を得た。
【0227】
比較例4
可溶性ポリイミド[SPI−9:A−1/B−3]の合成と配向剤[AL−17]の調製
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、比較例3で得られたポリアミック酸溶液[PAA−6]を30.0g測りとり、NMPを45.0g無水酢酸を4.65g、ピリジンを2.00g加え、室温で30分攪拌した後、50℃で3時間攪拌し反応させたが、反応途中でゲル化が生じてしまい、ポリイミド(SPI−9)の調製が出来なかった。よって配向剤AL−17の調製はできなかった。
【0228】
比較例5
ポリアミック酸[PAA−7:A−1/B−5、B−4(10)]の重合と配向剤[AL−18]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−5を3.570g(18.00mmol)、B−4を0.75g(2.00mmol)測り取り、NMPを31.9g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−1を3.72g(19.0mmol)を少しずつ加え、室温で16時間反応させ、20質量%のポリアミック酸溶液[PAA−7]を得た。
得られたPAA−7の数平均分子量11,800、重量平均分子量は30,200であった。
【0229】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにこのポリアミック酸溶液を10.0g計り取り、NMPを7.5g、BCSを7.5gを加え、室温で30分攪拌し、PAA−7が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−18]を得た。
【0230】
比較例6
可溶性ポリイミド[SPI−10:A−1/B−5、B−4(10)]の合成と配向剤[AL−19]の調製
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、比較例5で得られたポリアミック酸溶液[PAA−7]を30.0g測りとり、NMPを55.7g無水酢酸を4.62g(45.3mmol)、ピリジンを1.91g(24.2mmol)加え、室温で30分攪拌した後、45℃で反応させたが、ゲル化してしまった。よって配向剤AL−19を得ることは出来なかった。
【0231】
比較例7
可溶性ポリイミド[SPI−11:A−1、A−4(50)/B−1、B−6(20)]の合成と配向剤[AL−20]の調製
窒素導入管とメカニカルスターラーを備えた50ml四口フラスコに、B−1を1.08g(10.00mmol)、B−6を1.14g(5.00mmol)測り取り、NMPを25.0g加え溶解させ、窒素雰囲気下で約10℃に冷却し、A−4を1.68g(7.50mmol)を少しずつ加え、室温に戻し30分間反応させ、さらにA−1を1.44g(7.35mmol)加え、室温で16時間反応させ、ポリアミック酸溶液を得た。
得られたポリアミック酸の数平均分子量13,800、重量平均分子量は39,800であった。
【0232】
攪拌子を備えた100ml三角フラスコに、前記で得られたポリアミック酸溶液を30.0g測りとり、NMPを55.7g無水酢酸を6.71g(65.74mmol)、ピリジンを5.20g(65.74mmol)加え、室温で30分攪拌した後、90℃で3時間攪拌し反応させた。反応終了後、200mlのメタノールにゆっくり注ぎポリマーを析出させ、30分攪拌した後、濾過により固体を回収した。得られた固体をメタノールで十分洗浄した後、100℃で真空乾燥させることによりポリイミド[SPI−11]を得た。このポリイミドの数平均分子量は13,200、重量平均分子量は30,710、イミド化率は62%であった。
【0233】
攪拌子を備えた50mlの三角フラスコにSPI−11を2.00g測りとり、NMPを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、NMPを3.33g BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、SPI−11が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−20]を得た。
【0234】
比較例8
ポリアミック酸エステル[PAE−2:A−5/B−1、B−4(10)]の合成と配向剤[AL−21]の調製
窒素導入管と攪拌子を備えた100mL四口フラスコにA−5を2.96g(11.40mmol)、ジアミン成分として、B−1を1.16g(10.80mmol)、B−4を0.45g(1.20mmol)、NMPを30.6g、トリエチルアミン0.60g(5.90mmol)を加え、約10℃に冷却し、DMT−MMを9.96g(36.00mmol)加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させ、ポリアミック酸エステル(PAE−2)の濃度12質量%の溶液を得た。
【0235】
このポリアミック酸エステル(PAE−2)溶液にNMPを41.4g加え、約10℃に冷やしたメタノール500mL中に攪拌しながらゆっくり注ぎ、固体を析出させた。沈殿した固体を回収し、さらに、メタノール200mLで計2回分散洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリアミック酸エステル(PAE−2)の白色粉末を得た。このポリアミック酸エステルの数平均分子量は11,700、重量平均分子量は26,000であった。
【0236】
ポリアミック酸エステル(PAE−2)2.00g測りとり、GBLを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、GBLを3.33g、BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、PAE−2が6.0質量%、GBLが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−21]を得た。
【0237】
比較例9
ポリアミド[PA−2:A−6、A−7(50)/A−1]の合成と配向剤[AL−22]の調製
窒素導入管と攪拌子を備えた100mL四口フラスコにB−1を1.08g(10.00mmol)、NMPを16.7g、ピリジン1.98g(25.00mmol)を加え、約10℃に冷却し、A−6を0.91g(4.80mmol)、A−7を1.02g(5.00mmol)加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させたが、反応中にポリマーが析出してきたため、配向剤AL−22を得ることは出来なかった。
【0238】
比較例10
ポリアミド[PA−3:A−6、A−7(50)/B−3]の合成と配向剤[AL−23]の調製
窒素導入管と攪拌子を備えた100mL四口フラスコにB−3を1.08g(10.00mmol)、NMPを16.7g、ピリジン1.98g(25.00mmol)を加え、約10℃に冷却し、A−6を0.91g(4.80mmol)、A−7を1.02g(5.00mmol)加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させたが、反応中にポリマーが析出してきたため、配向剤AL−23を得ることは出来なかった。
【0239】
比較例11
ポリアミド[PA−4:A−6/B−3]の合成と配向剤[AL−24]の調製
窒素導入管と攪拌子を備えた100mL四口フラスコにB−3を1.08g(10.00mmol)、NMPを16.7g、ピリジン1.98g(25.00mmol)を加え、約10℃に冷却し、A−6を1.50g(9.70mmol)加え、室温に戻し窒素雰囲気下24時間反応させた。反応終了後、300mlのアセトンにゆっくり注ぎ固体を析出させた。沈殿した固体を回収し、さらに、メタノール200mLで計2回分散洗浄し、100℃で減圧乾燥することで、ポリアミド(PA−4)の薄灰色粉末を得た。このポリアミドの数平均分子量は8,500、重量平均分子量は17,900であった。
【0240】
ポリアミド(PA−4)を2.00g測りとり、NMPを18.0g加え50℃で24時間攪拌し溶解させ、完全に溶解しているのを確認し、NMPを3.33g BCSを10.0g加え室温で30分攪拌することで、PA−4が6.0質量%、NMPが64質量%、BCSが30質量%の配向剤[AL−24]を得た。
【0241】
【表3】
【0242】
【表4】
【0243】
【表5】
【0244】
【表6】
【0245】
【表7】
【0246】
【表8】
【0247】
【表9】
【0248】
本発明ジアミンを用いたポリマーは溶剤への溶解性が高くなるため、比較例1、2、4、6、10、11のような可溶性ポリマーにならないものでも、本発明のモノマーを導入することで可溶性ポリマーにすることが可能となる。すなわち、溶剤への溶解性が高くなることから、基板の濡れ性が良好な貧溶媒を多く導入することが可能となり、また印刷時に析出や白化などが生じにくくなるため、塗布・成膜性を向上させることができ、良好な印刷性の液晶配向剤を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明の液晶配向処理剤により、ラビング時の膜剥がれや削れに強く、電圧保持率が高く、かつ直流電圧が印加されても初期の電荷の蓄積が起こり難い液晶配向膜が得られる。そのため、本発明の液晶配向処理剤を用いて作製した液晶表示素子は、信頼性の高い液晶表示デバイスとすることができ、TN液晶表示素子、STN液晶表示素子、TFT液晶表示素子、VA液晶表示素子、IPS液晶表示素子、OCB液晶表示素子など、種々の方式による表示素子に好適に用いられる。