特許第6070968号(P6070968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6070968
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】剥離起点作成装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20170123BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H01L21/02 B
   H01L21/02 C
   G01B11/02 Z
【請求項の数】17
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2015-525163(P2015-525163)
(86)(22)【出願日】2014年6月24日
(86)【国際出願番号】JP2014066714
(87)【国際公開番号】WO2015002030
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-138223(P2013-138223)
(32)【優先日】2013年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】滝内 圭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰則
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 洋
【審査官】 鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/157686(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/090147(WO,A1)
【文献】 特開2006−126139(JP,A)
【文献】 特開2010−64203(JP,A)
【文献】 特開平10−309653(JP,A)
【文献】 特開平5−62952(JP,A)
【文献】 特開2013−117066(JP,A)
【文献】 特開2003−17667(JP,A)
【文献】 特開2014−110388(JP,A)
【文献】 特開2014−110387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
G01B 11/02
B23Q 17/24
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面とを有する第1基板の前記第2主面に、第1主面と第2主面とを有する第2基板の前記第1主面が剥離可能に結合した積層体の前記第1基板と前記第2基板との間にナイフを挿入して剥離起点を作成する剥離起点作成装置において、
前記積層体と前記ナイフとを前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に相対的に移動させて、前記積層体の前記第1基板と前記第2基板との間に前記ナイフを挿入させる移動手段と、
前記第2基板の前記第2主面と平行に設定される基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と、前記第2基板の前記第2主面の位置とを検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果と、前記第2基板の板厚とに基づいて、前記ナイフの刃先が前記第1基板と前記第2基板との間に位置するように、前記積層体と前記ナイフとを前記第2基板の前記第2主面と垂直な方向に相対的に移動させて、前記積層体と前記ナイフとの位置を調整する位置調整手段と、
を備える剥離起点作成装置。
【請求項2】
前記移動手段は、
前記ナイフを前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に移動させるナイフ移動手段と、
前記積層体を前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に移動させる積層体移動手段と、
を備え、
前記位置検出手段は、所定の検出位置に位置した物体に対して、前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における位置を検出する位置検出手段を備え、
前記ナイフ移動手段によって前記ナイフを前記検出位置に移動させて、前記ナイフの刃先の位置を前記位置検出手段で検出し、
前記積層体移動手段によって前記積層体を前記検出位置に移動させて、前記第2基板の前記第2主面の位置を検出する請求項1に記載の剥離起点作成装置。
【請求項3】
前記位置検出手段が、レーザ変位計で構成される請求項2に記載の剥離起点作成装置。
【請求項4】
前記位置検出手段は、
前記基準面と同じ位置又は前記基準面に対して所定距離離れた位置に前記基準面と平行に設定される第1基準面を基準として、前記第1基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置を検出する第1位置検出手段と、
前記基準面と同じ位置又は前記基準面に対して所定距離離れた位置に前記基準面と平行に設定される第2基準面を基準として、前記第2基準面と垂直な方向における、前記第2基板の前記第2主面の位置を検出する第2位置検出手段と、
前記第1位置検出手段の検出結果と、前記第2位置検出手段の検出結果と、前記基準面に対する前記第1基準面の位置の情報と、前記基準面に対する前記第2基準面の位置の情報とに基づいて、前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と、前記第2基板の前記第2主面の位置とを算出する演算手段と、
を備える請求項1に記載の剥離起点作成装置。
【請求項5】
前記第1位置検出手段と前記第2位置検出手段とが、共にレーザ変位計で構成される請求項4に記載の剥離起点作成装置。
【請求項6】
前記位置検出手段は、
前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における物体の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段を前記第2基板の第2主面と平行な方向に移動させる位置検出手段移動手段と、
を備え、
前記位置検出手段移動手段によって前記位置検出手段を前記ナイフの配置位置に移動させて、前記ナイフの刃先の位置を前記位置検出手段で検出し、
前記位置検出手段移動手段によって前記位置検出手段を前記積層体の配置位置に移動させて、前記第2基板の第2主面の位置を検出する請求項1に記載の剥離起点作成装置。
【請求項7】
前記位置検出手段が、レーザ変位計で構成される請求項6に記載の剥離起点作成装置。
【請求項8】
前記位置検出手段は、前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と、前記第2基板の前記第2主面の位置とを同時に検出し、
前記位置調整手段は、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と前記第2基板の前記第2主面の位置とを同じ位置に調整した後、前記第2基板の板厚の情報に基づいて、前記ナイフの刃先が前記第1基板と前記第2基板との間に位置するように調整する請求項1に記載の剥離起点作成装置。
【請求項9】
前記移動手段は、
前記ナイフを前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に移動させるナイフ移動手段と、
前記積層体を前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に移動させる積層体移動手段と、
を備え、
前記位置検出手段は、所定長さを有する検出ライン上に位置した物体に対して、前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における位置を検出する位置検出手段を備え、
前記ナイフの刃先と前記積層体とを前記検出ライン上に移動させて、前記ナイフの刃先の位置と前記第2基板の前記第2主面の位置とを前記位置検出手段で同時に検出する請求項8に記載の剥離起点作成装置。
【請求項10】
前記位置検出手段が、二次元レーザ変位計で構成される請求項9に記載の剥離起点作成装置。
【請求項11】
前記第2基板の板厚を検出する板厚検出手段を更に備える請求項1から10のいずれか1項に記載の剥離起点作成装置。
【請求項12】
前記第2基板は透光性を有し、
前記板厚検出手段は、分光干渉法によって前記第2基板の板厚を検出する請求項11に記載の剥離起点作成装置。
【請求項13】
第1主面と第2主面とを有する第1基板の前記第2主面に、第1主面と第2主面とを有する第2基板の前記第1主面が剥離可能に結合した積層体の前記第1基板と前記第2基板との間にナイフを挿入して剥離起点を作成する剥離起点作成方法において、
前記第2基板の前記第2主面と平行に設定される基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と、前記第2基板の前記第2主面の位置とを検出する位置検出工程と、
前記位置検出工程の検出結果と、前記第2基板の板厚の情報とに基づいて、前記ナイフの刃先が前記第1基板と前記第2基板との間に位置するように、前記積層体と前記ナイフとを前記第2基板の前記第2主面と垂直な方向に相対的に移動させて、前記積層体と前記ナイフとの位置を調整する位置調整工程と、
前記積層体と前記ナイフとを前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に相対的に移動させて、前記積層体の前記第1基板と前記第2基板との間に前記ナイフを挿入させるナイフ挿入工程と、
を備える剥離起点作成方法。
【請求項14】
前記位置検出工程は、
前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における物体の位置を検出する位置検出手段を所定の検出位置に設置し、
前記ナイフを前記検出位置に移動させて、前記ナイフの刃先の位置を前記位置検出手段で検出し、
前記積層体を前記検出位置に移動させて、前記第2基板の前記第2主面の位置を検出する請求項13に記載の剥離起点作成方法。
【請求項15】
前記位置検出工程は、
前記基準面と同じ位置又は前記基準面に対して所定距離離れた位置に前記基準面と平行に設定される第1基準面を基準として、前記第1基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置を第1位置検出手段で検出し、
前記基準面と同じ位置又は前記基準面に対して所定距離離れた位置に前記基準面と平行に設定される第2基準面を基準として、前記第2基準面と垂直な方向における、前記第2基板の前記第2主面の位置を第2位置検出手段で検出し、
前記第1位置検出手段の検出結果と、前記第2位置検出手段の検出結果と、前記基準面に対する前記第1基準面の位置の情報と、前記基準面に対する前記第2基準面の位置の情報とに基づいて、前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と、前記第2基板の前記第2主面の位置とを算出する請求項13に記載の剥離起点作成方法。
【請求項16】
前記位置検出工程は、
前記基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における物体の位置を検出する位置検出手段を前記ナイフの配置位置に移動させて、前記ナイフの刃先の位置を検出し、かつ、前記位置検出手段を前記積層体の配置位置に移動させて、前記第2基板の前記第2主面の位置を検出する請求項13に記載の剥離起点作成方法。
【請求項17】
第1主面と第2主面とを有する第1基板の前記第2主面に、第1主面と第2主面とを有する第2基板の前記第1主面が剥離可能に結合した積層体の前記第1基板と前記第2基板との間にナイフを挿入して、前記第1基板と前記第2基板とを剥離する際の起点を作成する剥離起点作成方法において、
前記第2基板の前記第2主面と平行に設定される基準面を基準として、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と、前記第2基板の前記第2主面の位置とを同時に検出して、前記基準面と垂直な方向における、前記ナイフの刃先の位置と前記第2基板の前記第2主面の位置とを同じ位置に調整する第1位置調整工程と、
前記第2基板の板厚の情報に基づいて、前記ナイフの刃先が前記第1基板と前記第2基板との間に位置するように調整する第2位置調整工程と、
前記積層体と前記ナイフとを前記第2基板の前記第2主面と平行な方向に相対的に移動させて、前記積層体の前記第1基板と前記第2基板との間に前記ナイフを挿入させるナイフ挿入工程と、
を備える剥離起点作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は剥離起点作成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池等の電子デバイスの薄型化、軽量化に伴い、これらの電子デバイスに用いられるガラス、樹脂、金属などの基板の薄板化が要望されている。
【0003】
しかし、基板の板厚が薄くなると、基板のハンドリング性が悪くなり、基板上に電子デバイス用の機能層(たとえば、薄膜トランジスタ(TFT: Thin Film Transistor)やカラーフィルタ(CF:Color Filter)など)を形成することが難しくなる。
【0004】
そこで、基板を補強板で補強して、基板上に機能層を形成する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この方法では、基板に補強板を貼り合わせて積層体とし、その積層体とされた基板上に機能層を形成する。そして、機能層の形成後、基板から補強板を剥離する。
【0005】
補強板の剥離は、たとえば、対角線上に位置する2つのコーナ部の一方から他方に向けて、補強板又は基板、あるいは、その双方を撓み変形させることにより行われる。この際、剥離が容易に行われるようにするために、剥離起点(剥離のきっかけとなる隙間)が人為的に作成される。剥離起点は、基板と補強板との間にナイフを挿入することにより作成される。
【0006】
しかし、板厚の薄い基板と補強板との間にナイフを精度よく挿入することは難しく、ナイフを挿入する位置に対して、ナイフの刃先を高精度に位置合わせして挿入する必要がある(ミクロンオーダーでの位置合わせが要求される。)。そして、この位置合わせを高精度に行うためには、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置(鋭角に形成される刃の頂部の位置)を高精度に検出する必要がある。
【0007】
特許文献1に開示の装置では、水平移動可能なナイフを積層体端部のそばに設置するとともに、積層体端部とナイフの刃先とを撮像するための電子カメラを、ナイフの後ろに設置している。すなわち、電子カメラで積層体端部とナイフの刃先とを同じ位置から撮像し、得られた画像を処理することでナイフの挿入位置を検出する。ナイフが挿入される樹脂層(特許文献1の図2の5A、5B)は、その厚さが数μm程度と非常に薄いため、電子カメラは積層体端部をその真横から撮像する必要がある。
【0008】
一方、電子カメラをこのように配置した場合、ナイフの厚みが撮像され、ナイフの刃先を撮像することができないため、特許文献1の図3のようにナイフを積層体に対して若干傾けて設置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2010/090147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ナイフを傾けて設置すると、傾いた姿勢でナイフが挿入されるため、基板と補強板とにかかる負荷が大きくなり、基板と補強板とが破損しやすくなるという問題があった。
【0011】
これを防止するために、挿入時にナイフの姿勢を戻す方法も考えられるが、この場合、検出位置の補正が必要になり、また、姿勢を戻す動作も加わるため、挿入誤差が増えるおそれがある。
【0012】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ナイフを傾けなくても、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を検出でき、ナイフを精度よく挿入できる剥離起点作成装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段は次のとおりである。
【0014】
本発明の第1の態様は、第1主面と第2主面とを有する第1基板の第2主面に、第1主面と第2主面とを有する第2基板の第1主面が剥離可能に結合した積層体の第1基板と第2基板との間にナイフを挿入して剥離起点を作成する剥離起点作成装置において、積層体とナイフとを第2基板の第2主面と平行な方向に相対的に移動させて、積層体の第1基板と第2基板との間にナイフを挿入させる移動手段と、第2基板の第2主面と平行に設定される基準面を基準として、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを検出する位置検出手段と、位置検出手段の検出結果と、第2基板の板厚とに基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように、積層体とナイフとを第2基板の第2主面と垂直な方向に相対的に移動させて、積層体とナイフとの位置を調整する位置調整手段と、を備える剥離起点作成装置である。
【0015】
本態様によれば、第2基板の第2主面と平行に設定される基準面(たとえば、積層体が水平に支持される場合は、基準面は水平な面として設定される)を基準として、その基準面と垂直な方向(基準面が水平な場合は鉛直方向)における、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とが位置検出手段によって検出される。そして、その位置検出手段の検出結果と第2基板の板厚とに基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように、積層体とナイフとの位置が位置調整手段によって調整される。すなわち、基準面を基準とした第2基板の第2主面の位置の情報と第2基板の板厚の情報とを取得することにより、基準面を基準としたナイフの挿入位置(第1基板と第2の基板との間の位置)を求めることができる。そして、この位置が分かることにより、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を求めることができ、ナイフの刃先をナイフ挿入位置に位置させるために必要な積層体とナイフとの相対的な移動量を求めることができる。本態様によれば、積層体に対して垂直方向から樹脂層の位置やナイフの刃先の位置を検出できるようにしたため、ナイフを傾けなくても、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を検出できるので、ナイフを挿入する際、ナイフを第1基板の第2主面と、第2基板の第1主面とに対して、平行に挿入することができる。これにより、第1基板と第2基板とに負荷をかけずにナイフを挿入することができる。また、ナイフの姿勢を制御する必要がないので、挿入誤差も低減させることができる。
【0016】
なお、基準面は、第2基板の第2主面と平行に設定されるが、第2基板の第2主面と第1主面とは互いに平行であり、また、積層体を構成する第1基板の第1主面と第2主面も第2基板の第2主面と互いに平行である。したがって、基準面は、積層体を構成する第2基板の第2主面と平行、かつ、積層体を構成する第2基板の第1主面と平行、かつ、積層体を構成する第1基板の第1主面と平行、かつ、積層体を構成する第1基板の第2主面と平行に設定される。
【0017】
本発明の第2の態様は、第1の態様の剥離起点作成装置において、移動手段は、ナイフを第2基板の第2主面と平行な方向に移動させるナイフ移動手段と、積層体を第2基板の第2主面と平行な方向に移動させる積層体移動手段と、を備え、位置検出手段は、所定の検出位置に位置した物体に対して、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における位置を検出する位置検出手段を備え、ナイフ移動手段によってナイフを検出位置に移動させて、ナイフの刃先の位置を位置検出手段で検出し、積層体移動手段によって積層体を検出位置に移動させて、第2基板の第2主面の位置を検出する態様である。
【0018】
本態様によれば、移動手段が、ナイフ移動手段と積層体移動手段とを備えて構成される。また、位置検出手段が、位置検出手段を備えて構成される。ナイフの刃先の位置は、ナイフ移動手段によってナイフを検出位置に移動させて検出し、第2基板の第2主面の位置は、積層体移動手段によって積層体を検出位置に移動させて検出する。これにより、1つの位置検出手段でナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを検出することができる。
【0019】
本発明の第3の態様は、第2の態様の剥離起点作成装置において、位置検出手段が、レーザ変位計で構成される態様である。
【0020】
本態様によれば、位置検出手段がレーザ変位計で構成される。これにより、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを非接触で検出することができる。
【0021】
なお、レーザ変位計には、二次元レーザ変位計を使用することもできる。二次元レーザ変位計を使用することにより、ナイフを移動させることなく、ナイフの刃先の位置を検出することができ、ナイフの刃先の位置を精度よく検出することができる。
【0022】
通常のレーザ変位計(スポット光としてのレーザ光を出射して、変位等を検出するタイプのレーザ変位計)を用いて、ナイフの刃先の位置を検出する場合は、ナイフの刃先がレーザ変位計の検出位置を通過するように、すなわち、ナイフの刃先がレーザ変位計から出射されるレーザ光で走査されるように、ナイフを移動させて、ナイフの刃先の位置を検出することが好ましい。これにより、ナイフの刃先の位置を精度よく検出することができる。
【0023】
本発明の第4の態様は、第1の態様の剥離起点作成装置において、位置検出手段は、基準面と同じ位置又は基準面に対して所定距離離れた位置に基準面と平行に設定される第1基準面を基準として、第1基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置を検出する第1位置検出手段と、基準面と同じ位置又は基準面に対して所定距離離れた位置に基準面と平行に設定される第2基準面を基準として、第2基準面と垂直な方向における、第2基板の第2主面の位置を検出する第2位置検出手段と、第1位置検出手段の検出結果と、第2位置検出手段の検出結果と、基準面に対する第1基準面の位置の情報と、基準面に対する第2基準面の位置の情報とに基づいて、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを算出する演算手段と、を備える態様である。
【0024】
本態様によれば、位置検出手段が、第1基準面を基準として、ナイフの刃先の位置を検出する第1位置検出手段と、第2基準面を基準として、第2基板の第2主面の位置を検出する第2位置検出手段とを備えて構成される。基準面を基準としたナイフの刃先の位置は、第1位置検出手段の検出結果と、基準面に対する第1基準面の位置の情報とに基づいて算出され、基準面に対する第2基板の第2主面の位置は、第2位置検出手段の検出結果と、基準面に対する第2基準面の位置の情報とに基づいて算出される。これにより、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを同時に検出することができる。また、検出する位置の設定の自由度を向上させることができる。
【0025】
本発明の第5の態様は、第4の態様の剥離起点作成装置において、第1位置検出手段と第2位置検出手段とが、共にレーザ変位計で構成される態様である。
【0026】
本態様によれば、第1位置検出手段と第2位置検出手段とが、共にレーザ変位計で構成される。これにより、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを非接触で検出することができる。なお、レーザ変位計には、二次元レーザ変位計を使用することもできる。特に、第1位置検出手段に二次元レーザ変位計を使用することにより、ナイフを移動させることなく、ナイフの刃先の位置を検出することができ、ナイフの刃先の位置を精度よく検出することができる。
【0027】
本発明の第6の態様は、第1の態様の剥離起点作成装置において、位置検出手段は、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における物体の位置を検出する位置検出手段と、位置検出手段を第2基板の第2主面と平行な方向に移動させる位置検出手段移動手段と、を備え、位置検出手段移動手段によって位置検出手段をナイフの配置位置に移動させて、ナイフの刃先の位置を位置検出手段で検出し、位置検出手段移動手段によって位置検出手段を積層体の配置位置に移動させて、第2基板の第2主面の位置を検出する態様である。
【0028】
本態様によれば、位置検出手段が、位置検出手段と、その位置検出手段を第2基板の第2主面と平行な方向に移動させる位置検出手段移動手段と、を備えて構成される。ナイフの刃先の位置は、位置検出手段移動手段によって位置検出手段をナイフの配置位置に移動させて検出し、第2基板の第2主面の位置は、位置検出手段移動手段によって位置検出手段を積層体の配置位置に移動させて検出する。これにより、1つの位置検出手段でナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを検出することができる。
【0029】
本発明の第7の態様は、第6の態様の剥離起点作成装置において、位置検出手段が、レーザ変位計で構成される態様である。
【0030】
本態様によれば、位置検出手段がレーザ変位計で構成される。これにより、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを非接触で検出することができる。なお、レーザ変位計には、二次元レーザ変位計を使用することもできる。
【0031】
本発明の第8の態様は、第1の態様の剥離起点作成装置において、位置検出手段は、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを検出する位置検出手段とを同時に検出し、位置調整手段は、位置検出手段の検出結果に基づいて、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを同じ位置に調整した後、第2基板の板厚の情報に基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように調整する態様である。
【0032】
本態様によれば、位置検出手段は、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを検出する位置検出手段とを同時に検出する。位置調整手段は、位置検出手段の検出結果に基づいて、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを同じ位置に調整した後、第2基板の板厚の情報に基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように調整する。これにより、より安定した挿入が可能になる。
【0033】
本発明の第9の態様は、第8の態様の剥離起点作成装置において、移動手段は、ナイフを第2基板の第2主面と平行な方向に移動させるナイフ移動手段と、積層体を第2基板の第2主面と平行な方向に移動させる積層体移動手段と、を備え、位置検出手段は、所定長さを有する検出ライン上に位置した物体に対して、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における位置を検出する位置検出手段を備え、ナイフの刃先と積層体とを検出ライン上に移動させて、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを位置検出手段で同時に検出する態様である。
【0034】
本態様によれば、移動手段が、ナイフ移動手段と積層体移動手段とを備え、ナイフの刃先と積層体とを1つの位置検出手段の検出ライン上に移動させて、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを同時に検出する。これにより、位置検出手段の絶対値精度が不十分であっても、フィードバック制御により、ナイフの刃先と第2基板の第2主面とを同じ位置に移動させることができる。
【0035】
本発明の第10の態様は、第9の態様の剥離起点作成装置において、位置検出手段が、二次元レーザ変位計で構成される態様である。
【0036】
本態様によれば、位置検出手段が二次元レーザ変位計で構成される。これにより、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを非接触で同時に検出することができる。ナイフを移動させることなく、ナイフの刃先の位置を検出することができ、ナイフの刃先の位置を精度よく検出することができる。
【0037】
本発明の第11の態様は、第1から10のいずれか1の態様の剥離起点作成装置において、第2基板の板厚を検出する板厚検出手段を更に備える態様である。
【0038】
本態様によれば、第2基板の板厚を検出する板厚検出手段が更に備えられる。これにより、同じ装置上で第2基板の板厚を検出することができる。
【0039】
本発明の第12の態様は、第11の態様の剥離起点作成装置において、第2基板は透光性を有し、板厚検出手段は、分光干渉法によって第2基板の板厚を検出する態様である。
【0040】
本態様によれば、透光性を有する第2基板に対して、分光干渉法によって板厚検出手段が板厚を検出する。
【0041】
本発明の第13の態様は、第1主面と第2主面とを有する第1基板の第2主面に、第1主面と第2主面とを有する第2基板の第1主面が剥離可能に結合した積層体の第1基板と第2基板との間にナイフを挿入して剥離起点を作成する剥離起点作成方法において、第2基板の第2主面と平行に設定される基準面を基準として、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを検出する位置検出工程と、位置検出工程の検出結果と、第2基板の板厚の情報とに基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように、積層体とナイフとを第2基板の第2主面と垂直な方向に相対的に移動させて、積層体とナイフとの位置を調整する位置調整工程と、積層体とナイフとを第2基板の第2主面と平行な方向に相対的に移動させて、積層体の第1基板と第2基板との間にナイフを挿入させるナイフ挿入工程と、を備える剥離起点作成方法である。
【0042】
本態様によれば、第2基板の第2主面と平行に設定される基準面を基準として、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とが検出される。そして、その検出結果と、第2基板の板厚の情報とに基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように、積層体とナイフとの位置が調整される。その後、積層体とナイフとが相対的に移動することにより、第1基板と第2基板との間にナイフが挿入される。
【0043】
本発明の第14の態様は、第13の態様の剥離起点作成方法において、位置検出工程は、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における物体の位置を検出する位置検出手段を所定の検出位置に設置し、ナイフを検出位置に移動させて、ナイフの刃先の位置を位置検出手段で検出し、積層体を検出位置に移動させて、第2基板の第2主面の位置を検出する態様である。
【0044】
本態様によれば、所定の検出位置に位置検出手段が設置され、その検出位置にナイフを移動させることにより、ナイフの刃先の位置が検出される。また、積層体を検出位置に移動させることにより、第2基板の第2主面の位置が検出される。
【0045】
本発明の第15の態様は、第13の態様の剥離起点作成方法において、位置検出工程は、基準面と同じ位置又は基準面に対して所定距離離れた位置に基準面と平行に設定される第1基準面を基準として、第1基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置を第1位置検出手段で検出し、基準面と同じ位置又は基準面に対して所定距離離れた位置に基準面と平行に設定される第2基準面を基準として、第2基準面と垂直な方向における、第2基板の第2主面の位置を第2位置検出手段で検出し、第1位置検出手段の検出結果と、第2位置検出手段の検出結果と、基準面に対する第1基準面の位置の情報と、基準面に対する第2基準面の位置の情報とに基づいて、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを算出する態様である。
【0046】
本態様によれば、第1基準面を基準として、ナイフの刃先の位置が第1位置検出手段で検出され、第2基準面を基準として、第2基板の第2主面の位置が第2位置検出手段で検出される。そして、その第1位置検出手段の検出結果と、第2位置検出手段の検出結果と、基準面に対する第1基準面の位置の情報と、基準面に対する第2基準面の位置の情報とに基づいて、基準面を基準としたナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とが算出される。
【0047】
本発明の第16の態様は、第13の態様の剥離起点作成方法において、位置検出工程は、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における物体の位置を検出する位置検出手段をナイフの配置位置に移動させて、ナイフの刃先の位置を検出し、かつ、位置検出手段を積層体の配置位置に移動させて、第2基板の第2主面の位置を検出する態様である。
【0048】
本態様によれば、位置検出手段をナイフの配置位置に移動させることにより、ナイフの刃先の位置が検出される。また、位置検出手段を積層体の配置位置に移動させることにより、第2基板の第2主面の位置が検出される。
【0049】
本発明の第17の態様は、第1主面と第2主面とを有する第1基板の第2主面に、第1主面と第2主面とを有する第2基板の第1主面が剥離可能に結合した積層体の第1基板と第2基板との間にナイフを挿入して、第1基板と第2基板とを剥離する際の起点を作成する剥離起点作成方法において、第2基板の第2主面と平行に設定される基準面を基準として、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と、第2基板の第2主面の位置とを同時に検出して、基準面と垂直な方向における、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを同じ位置に調整する第1位置調整工程と、第2基板の板厚の情報に基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように調整する第2位置調整工程と、積層体とナイフとを第2基板の第2主面と平行な方向に相対的に移動させて、積層体の第1基板と第2基板との間にナイフを挿入させるナイフ挿入工程と、を備える剥離起点作成方法である。
【0050】
本態様によれば、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とを同時に検出して、ナイフの刃先の位置と第2基板の第2主面の位置とが同じ位置に位置するように調整される。そして、その調整後、第2基板の板厚の情報に基づいて、ナイフの刃先が第1基板と第2基板との間に位置するように、積層体とナイフとの位置が調整される。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、ナイフを傾けなくても、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を検出でき、ナイフを精度よく挿入できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、電子デバイスの製造工程に供される積層体1の一例を示す側面要部拡大図である。
図2図2は、LCDの製造工程の途中で作製される積層体6の一例を示す側面要部拡大図である。
図3図3は、剥離装置10の一例を示す平面図である。
図4図4は、図3に示した剥離装置10の側面図である。
図5図5(A)及び5(B)は、剥離装置10の動作説明図である。
図6図6(A)及び6(B)は、補強板3を剥離した後の剥離装置10の動作説明図である。
図7図7(A)〜7(C)は、剥離起点の作成方法の概要を説明する説明図である。
図8図8は、ナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置とのズレ量を検出するための機構の概略図である。
図9図9は、ナイフNの水平移動量とレーザ変位計50の出力の関係を示すグラフである。
図10図10(A)〜10(D)は、ナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置とのズレ量の検出手順の説明図である。
図11図11は、剥離起点作成装置100の一実施形態を示す正面図である。
図12図12は、図11に示した剥離起点作成装置100の平面図である。
図13図13は、剥離起点作成装置200の第2の実施の形態を示す正面図である。
図14図14は、ナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先のズレ量の検出方法の概要を説明する説明図である。
図15図15(A)〜15(D)は、図13に示した第2の実施の形態の剥離起点作成装置200を用いた剥離起点の作成手順の説明図である。
図16図16(A)〜16(C)は、図13に示した第2の実施の形態の剥離起点作成装置200を用いた剥離起点の作成手順の説明図である。
図17図17(A)〜17(C)は、図13に示した第2の実施の形態の剥離起点作成装置200を用いた剥離起点の作成手順の説明図である。
図18図18(A)〜18(C)は、図13に示した第2の実施の形態の剥離起点作成装置200を用いた剥離起点の作成手順の説明図である。
図19図19は、剥離起点作成装置の第3の実施の形態の要部の概略構成図である。
図20図20は、剥離起点作成装置の第4の実施の形態の要部の概略構成図である。
図21図21は、剥離起点作成装置の第5の実施の形態の要部の概略構成図である。
図22図22(A)〜22(C)は、第4の剥離起点作成装置を用いたナイフNの刃先の位置調整方法の一例の説明図である。
図23図23(A)〜23(C)は、第4の剥離起点作成装置を用いたナイフNの刃先の位置調整方法の一例の説明図である。
図24図24は、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置と、ナイフNの刃先の位置とを同時に検出したときの第2の二次元レーザ変位計300Bの出力の一例を示すグラフである。
図25図25は、剥離起点の作成位置を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、添付図面に従って、本発明を実施するための形態について説明する。
【0054】
なお、以下においては、本発明に係る剥離起点作成装置及び方法を電子デバイスの製造工程で使用する場合を例に説明する。
【0055】
ここでの電子デバイスとは、表示パネル、太陽電池、薄膜二次電池等の電子部品をいい、表示パネルには、液晶ディスプレイパネル(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)、有機ELディスプレイパネル(OELD:Organic Electro Luminescence Display)等が含まれる。
【0056】
〔電子デバイスの製造工程の概要〕
まず、電子デバイスの製造工程について概説する。
【0057】
電子デバイスは、ガラス、樹脂、金属などの基板上に電子デバイス用の機能層(たとえば、LCDであれば、薄膜トランジスタ(TFT)や、カラーフィルタ(CF)など)を形成して製造される。
【0058】
電子デバイスに使用される基板は、電子デバイスの軽量化、薄型化の要求から、板厚が薄いものが使用される。しかし、板厚の薄い基板は、ハンドリング性が悪い。そこで、板厚の薄い基板を使用して電子デバイスを製造する場合は、基板を補強板で補強し、その補強された基板上に機能層を形成することが行われる。補強板は、あくまでも基板を補強する目的で使用されるものであるため、機能層が形成された後、基板から剥離される。
【0059】
したがって、この種の電子デバイスの製造工程には、補強板で補強した基板上に機能層を形成する機能層形成工程と、機能層が形成された基板から補強板を剥離する剥離工程と、が含まれる。
【0060】
本発明に係る剥離起点作成装置及び方法は、剥離工程で使用される。
【0061】
〔電子デバイスの製造工程に供される積層体1〕
上記のように、電子デバイスの製造工程に供される基板は、補強板で補強されたものが使用される。すなわち、基板は、補強板が貼り合わされ、積層体とされて、電子デバイスの製造に供される。
【0062】
図1は、電子デバイスの製造工程に供される積層体1の一例を示す側面要部拡大図である。
【0063】
電子デバイスの製造工程に供される積層体1は、機能層が形成される基板(第1基板)2と、その基板2を補強する補強板(第2基板)3とを備え、基板2と補強板3とを貼り合わせて構成される。補強板3は、第1主面である表面3aに樹脂層4を備え、この樹脂層4上に基板2が貼り付けられる。すなわち、基板2は、補強板3に備えられた樹脂層4との間に作用するファンデルワールス力、又は、樹脂層4の粘着力によって、補強板3に貼り付けられる。
【0064】
なお、本実施の形態の積層体1は、樹脂層4を介して補強板3が基板2に貼り付けられているが、樹脂層4を介さずに、補強板3を基板2に貼り付ける構成とすることもできる。この場合、基板2と補強板3との間に作用するファンデルワールス力等によって、基板2と補強板3とが剥離可能に貼り合わされる。
【0065】
[基板2]
基板2は、電子デバイスの機能層を形成するための基板(第1基板)であり、電子デバイスの一部を構成する。
【0066】
基板2は、第1主面である表面2aと、第2主面である裏面2bとを有し、表面2aに機能層が形成される。補強板3は、基板2の裏面2bに貼り付けられて、基板2を補強する。
【0067】
基板2は、たとえば、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板等で構成することができる。これらの中でも、ガラス基板は、耐薬品性、耐透湿性に優れ、かつ、線膨張係数が小さいので、電子デバイス用の基板2として好適である。線膨張係数が小さくなるほど、高温下で形成される機能層のパターンが冷却時にズレにくくなる。
【0068】
ガラス基板のガラスには、たとえば、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラス等を採用することができる。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40〜90質量%のガラスが好ましい。
【0069】
ガラス基板のガラスは、製造する電子デバイスの種類や、その製造工程に適したガラスを選択して採用することが好ましい。たとえば、液晶パネル用のガラス基板には、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)を採用することが好ましい。
【0070】
樹脂基板の樹脂は、結晶性樹脂であっても、非結晶性樹脂であってもよい。結晶性樹脂としては、たとえば、熱可塑性樹脂であるポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、もしくはシンジオタクティックポリスチレン等が挙げられ、熱硬化性樹脂ではポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等が挙げられる。また、非結晶性樹脂としては、たとえば、熱可塑性樹脂であるポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂ではポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、もしくは熱可塑性ポリイミドが挙げられる。
【0071】
樹脂基板の樹脂についても、製造する電子デバイスの種類や、その製造工程に適した樹脂を選択して採用することが好ましい。
【0072】
基板2の板厚は、基板2の種類に応じて設定される。たとえば、基板2にガラス基板を採用する場合、その板厚は、電子デバイスの軽量化、薄板化のため、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下に設定される。0.3mm以下の場合、ガラス基板に良好なフレキシブル性を与えることができる。更に、0.1mm以下の場合、ガラス基板をロール状に巻き取ることができる。一方、基板2にガラス基板を採用する場合、ガラス基板の製造が容易であること、ガラス基板の取り扱いが容易であること等の理由から、その板厚は、0.03mm以上であることが好ましい。
【0073】
なお、本例では基板2が1枚の基板で構成されているが、基板2は、複数枚の基板で構成することもできる。すなわち、基板2は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0074】
[補強板3]
補強板3は、基板2を補強するための基板(第2基板)であり、基板2に取り付けられて、基板2の変形、傷付き、破損等を防止する。補強板3は、基板2の補強が目的であるため、最終的には基板2から除去される。
【0075】
補強板3は、第1主面である表面3aと、第2主面である裏面3bとを備え、表面3a側に基板2が貼り付けられる。上記のように、本実施の形態の補強板3は、表面3aに樹脂層4を備え、この樹脂層4を介して基板2に貼り付けられる。
【0076】
補強板3は、たとえば、ガラス基板、セラミックス基板、樹脂基板、金属基板、半導体基板等で構成することができる。
【0077】
補強板3の種類は、製造する電子デバイスの種類や、その電子デバイスに使用する基板2の種類等に応じて選定される。補強板3と基板2とが同種であると、温度変化による反りや剥離を低減することができる。
【0078】
補強板3と基板2との平均線膨張係数の差(絶対値)は、基板2の寸法形状等に応じて適宜設定されるが、たとえば、35×10−7/℃以下であることが好ましい。ここで、「平均線膨張係数」とは、50〜300℃の温度範囲における平均線膨張係数(JIS R 3102)をいう。
【0079】
補強板3の板厚は、たとえば、0.7mm以下に設定され、補強板3の種類や、補強する基板2の種類、板厚などに応じて設定される。なお、補強板3の板厚は、基板2よりも厚くてもよいし、薄くてもよいが、基板2を補強するため、0.4mm以上であることが好ましい。
【0080】
なお、本例では補強板3が1枚の基板で構成されているが、補強板3は、複数枚の基板で構成することもできる。すなわち、補強板3は、複数枚の基板を積層した積層体で構成することもできる。
【0081】
[樹脂層4]
樹脂層4は、補強板3の表面3aに備えられ、補強板3を基板2に密着させる。基板2は、この樹脂層4との間に作用するファンデルワールス力、又は、樹脂層4の粘着力によって、補強板3に密着して取り付けられる。
【0082】
樹脂層4は、積層体1が意図しない位置(樹脂層4と補強板3との間)で剥離するのを防止するため、補強板3との間の結合力が、基板2との間の結合力よりも相対的に高くなるように設定される。これにより、剥離操作を行った際に、樹脂層4と基板2との間で積層体1が剥離される。
【0083】
樹脂層4を構成する樹脂は、特に限定されない。たとえば、樹脂層4の樹脂としては、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂等が挙げられる。いくつかの種類の樹脂を混合して用いることもできる。中でも、耐熱性や剥離性の観点から、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましい。
【0084】
樹脂層4の板厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜50μmに設定され、より好ましくは4〜20μmに設定される。樹脂層4の板厚を1μm以上とすることにより、樹脂層4と基板2との間に気泡や異物が混入した際、樹脂層4の変形によって、気泡や異物の厚さを吸収することができる。一方、樹脂層4の厚さを50μm以下とすることにより、樹脂層4の形成時間を短縮でき、さらに樹脂層4の樹脂を必要以上に使用しないため経済的である。
【0085】
なお、樹脂層4の外形は、補強板3が樹脂層4の全体を支持できるように、補強板3の外形と同一であるか、補強板3の外形よりも小さいことが好ましい。また、樹脂層4の外形は、樹脂層4が基板2の全体を密着できるように、基板2の外形と同一か、基板2の外形よりも大きいことが好ましい。
【0086】
また、本例では樹脂層4が1層で構成されているが、樹脂層4は2層以上で構成することもできる。この場合、樹脂層4を構成する全ての層の合計の厚さが、樹脂層の厚さとなる。また、この場合、各層を構成する樹脂の種類は異なっていてもよい。
【0087】
また、上記のように、本実施の形態の積層体1は、樹脂層4を介して基板2と補強板3とを貼り合わせているが、樹脂層4を用いずに基板2と補強板3とを貼り合わせることもできる。この場合、たとえば、基板2と補強板3の接合面(基板2の裏面2b、補強板3の表面3a)を互いに鏡面研磨することで、互いの接合面の表面粗さを小さくし、基板2と補強板3とを貼り合わせるようにしてもよい。
【0088】
また、樹脂層4の代りに、メタルシリサイド、窒化物、及び、炭化物からなる群(WSi、AlN、TiN、Si4、及びSiC等)から選択される少なくとも1種を含有する無機層を用いて、基板2と補強板3とを貼り合わせるようにしてもよい。
【0089】
〔機能層が形成された積層体6〕
機能層形成工程を経て、積層体1の基板2の表面2aには、機能層が形成される。
【0090】
機能層の種類は、電子デバイスの種類に応じて選択される。たとえば、LCDであれば、薄膜トランジスタ(TFT)や、カラーフィルタ(CF)など)が基板2の表面(第1主面)2aに形成される。機能層は、複数の機能層が順次積層されてもよい。
【0091】
機能層の形成方法としては、一般的な方法が用いられる。たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、PVD(Physical Vapor Deposition)法等の蒸着法、スパッタ法などが用いられる。機能層は、フォトリソグラフィ法、エッチング法等によって、所定のパターンに形成される。
【0092】
図2は、LCDの製造工程の途中で作製される積層体6の一例を示す側面要部拡大図である。
【0093】
図2に示すように、この積層体6は、補強板3Aと、樹脂層4Aと、基板2Aと、液晶層7と、基板2Bと、樹脂層4Bと、補強板3Bとが、この順で積層されて構成されている。すなわち、図1に示した積層体が、液晶層7を挟んで、対称に配置(互いの基板の表面が対向するように配置)されて構成されている。便宜上、一方の積層体(基板2Aと、樹脂層4Aと、補強板3Aとからなる積層体)を第1の積層体1Aとし、他方の積層体(基板2Bと、樹脂層4Bと、補強板3Bとからなる積層体)を第2の積層体1Bとする。
【0094】
第1の積層体1Aの基板2Aの表面(液晶層7側の面:第1主面)2Aaには、機能層としての薄膜トランジスタ(TFT)が形成され、第2の積層体1Bの基板2Bの表面(液晶層7側の面:第1主面)2Baには、機能層としてのカラーフィルタ(CF)が形成される。
【0095】
第1の積層体1Aと第2の積層体1Bとは、互いに基板2A、2Bの表面2Aa、2Baが重ね合わされて一体化される。これにより、液晶層7を挟んで、第1の積層体1Aと第2の積層体1Bとが、対称に配置された構造の積層体6が製造される。
【0096】
積層体6は、剥離工程で補強板3A、3Bが剥離され、その後、偏光板、バックライト等が取り付けられて、製品であるLCDが製造される。
【0097】
なお、LCDの製造工程において、補強板3A、3Bの剥離は、薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルタ(CF)等の機能層の形成後に行うこともできる。すなわち、上記の例では、液晶層7の形成後に補強板3A、3Bを剥離することとしているが、液晶層7を形成する前に第1の積層体1A、及び、第2の積層体1Bから補強板3A、3Bを剥離する構成とすることもできる。
【0098】
また、図2に示す積層体6の例では、表裏両面に補強板3A、3Bが配置された構成であるが、積層体としては、片側にのみ補強板が配置された構成であってもよい。
【0099】
〔剥離装置10〕
次に、剥離装置10について説明する。
【0100】
[剥離装置10の構成]
図3は、剥離装置10の一例を示す平面図である。また、図4は、図3に示した剥離装置10の側面図である。
【0101】
なお、ここでは、便宜上、図1に示した積層体1(特に外形が正方形状の積層体)を剥離する場合を例に説明する。
【0102】
本実施の形態の剥離装置10は、基板2に対して補強板3を撓み変形させて、補強板3を基板2から剥離する。この際、積層体1の一方のコーナ部1Cから対角線上に位置する他方のコーナ部1Dに向けて補強板3を徐々に撓み変形させて、補強板3を基板2から剥離する。このため、剥離は、積層体1の一方のコーナ部1Cから他方のコーナ部1Dに向かって進行する。また、この場合、剥離済みの領域と未剥離の領域との境界は、たとえば直線として現れ、この直線を剥離前線Aとすると、剥離前線Aは、図3に示すように、矢印Eで示される方向に進行する。
【0103】
剥離装置10は、ゴム製の弾性シート12を介して、基板2を変形不能に吸着保持するステージ14と、ゴム製の弾性シート16を介して、補強板3を撓み変形可能に吸着保持する可撓性板18とを備える。
【0104】
ステージ14は、弾性シート12を介して、基板2の表面(第1主面)2aを真空吸着して保持する。ステージ14は、架台20の上面に固定されて、水平に設置される。ステージ14は、基板2よりも十分に面積が大きく、かつ、基板2の外形(本例では、矩形状)に沿った形状を有している。
【0105】
可撓性板18は、弾性シート16を介して、補強板3の裏面(第2主面)3bを真空吸着して保持する。可撓性板18は、撓み変形可能な本体部18Aを備える。本体部18Aは、補強板3よりも十分に面積が大きく、かつ、補強板3の外形(本例では、矩形状)に沿った形状を有している。
【0106】
本体部18Aの一端には、積層体1のコーナ部1Cから外側に向けて水平方向に突出した矩形状の突出部18Bが備えられている。また、本体部18Aの他端には、積層体1のコーナ部1Dから外側に向けて水平方向に突出した矩形状の突出部18Cが備えられている。突出部18B、18Cは、剥離前線Aの進行方向(矢印E方向)に沿って備えられる。
【0107】
可撓性板18の単位幅(1mm)あたりの曲げ剛性は、1000〜40000N・mmであることが好ましい。たとえば、可撓性板18の幅が100mmの部分では、曲げ剛性は、100000〜4000000N・mmとなる。可撓性板18の単位幅(1mm)あたりの曲げ剛性を1000N・mm以上とすることにより、可撓性板18が吸着保持する板(本実施形態では、補強板3)の折れ曲がりを防止することができる。また、可撓性板18の単位幅(1mm)あたりの曲げ剛性を40000N・mm以下とすることにより、可撓性板18が吸着保持する板を適度に撓み変形させることができる。
【0108】
可撓性板18としては、たとえば、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール(POM:polyoxymethylene)樹脂等の樹脂板の他、金属板を用いることができる。
【0109】
可撓性板18の突出部18Cの端部には、軸22が水平方向に設けられる。この軸22は、架台20の上面に固定された軸受24、24に回動自在に支持される。したがって、可撓性板18は、軸22を中心として、架台20に対して傾動自在に設けられる。
【0110】
また、可撓性板18には、駆動手段であるサーボシリンダ26が搭載される。
【0111】
サーボシリンダ26は、シリンダ本体26Aとピストン26Bとを備える。サーボシリンダ26は、図3の平面視において、積層体1のコーナ部1Cとコーナ部1Dとを結ぶ直線上にピストン26Bの軸が位置するように配置される。すなわち、サーボシリンダ26は、剥離前線Aの進行方向(矢印E方向)に沿ってピストン26Bが伸縮するように配置される。
【0112】
シリンダ本体26Aの基端部には、軸28が水平方向に設けられる。この軸28は、可撓性板18の突出部18Cの上面に固定された軸受30、30に回動自在に支持される。
【0113】
また、ピストン26Bの先端部には、軸32が水平方向に設けられる。この軸32は、可撓性板18の突出部18Bの上面に固定された軸受34、34に回動自在に支持される。
【0114】
なお、本実施形態では、駆動手段として、サーボシリンダ26を使用しているが、駆動手段には、回転式のサーボモータ及び送りネジ機構等からなる直動装置や、流体圧シリンダ(たとえば、空気圧シリンダ)等を使用することもできる。
【0115】
また、剥離装置10の全体の動作は、図示しない制御部によって、統括制御される。
【0116】
[剥離装置10の作用]
図5(A)、5(B)は、剥離装置10の動作説明図である。なお、図5(A)は、剥離開始から所定時間経過後の剥離装置10の状態を示しており、図5(B)は、補強板3を剥離した直後の剥離装置10の状態を示している。
【0117】
剥離装置10にセットされた積層体1は、基板2の表面2aが、弾性シート12を介してステージ14に吸着保持される。また、補強板3の裏面3bが、弾性シート16を介して、可撓性板18に吸着保持される。
【0118】
初期状態において、サーボシリンダ26のピストン26Bは伸長状態にある(図4参照)。
【0119】
サーボシリンダ26のピストン26Bを伸長状態から収縮させると、突出部18Bを引く力(突出部18Cに向けて引く力)が作用する。この力によって、図5(A)に示すように、可撓性板18が撓み変形を開始する。
【0120】
可撓性板18が撓み変形を開始することにより、可撓性板18に吸着保持された補強板3も撓み変形を開始し、この結果、コーナ部1Cを起点に剥離が開始する。
【0121】
なお、このコーナ部1Cには、後述するように、事前に剥離起点が作成される。
【0122】
サーボシリンダ26のピストン26Bが、更に収縮させてゆくと、可撓性板18も更に撓み変形してゆく。
【0123】
ここで、サーボシリンダ26は、軸28及び軸32を中心に回動自在に支持されているため、可撓性板18が撓み変形してゆくと、軸28を中心に傾動する。このサーボシリンダ26の傾動は、可撓性板18の撓み変形に連動する。
【0124】
このように、サーボシリンダが26が徐々に傾動しながら、可撓性板18が、突出部18B側から突出部18C側に向かって徐々に撓み変形し、この結果、一方のコーナ部1Cから他方のコーナ部1Dに向かって、補強板3が徐々に剥離されてゆく。そして、最終的には、図5(B)に示すように、補強板3の全面が基板2から剥離される。
【0125】
図6(A)、6(B)は、補強板3を剥離した後の剥離装置10の動作説明図である。なお、図6(A)は、剥離した補強板3を鉛直方向に退避させた状態を示しており、図6(B)は、剥離した補強板3を搬出装置36によって保持した状態を示している。
【0126】
補強板3が基板2から完全に剥離されると、可撓性板18は、不図示の傾動装置によって、軸22を中心に傾動され、図6(A)に示す退避位置に位置する。
【0127】
可撓性板18が、退避位置に位置すると、ピストン26Bが伸長し、初期状態に復帰する。これにより、可撓性板18の撓み変形が解消され、図6(B)に示すように、撓みのない垂直に起立した状態で保持される。また、これにより、補強板3も撓み変形が解消され、垂直に起立した状態で保持される。
【0128】
ピストン26Bの復帰動作が完了すると、搬出装置36が補強板3に向けて進出移動する。そして、搬出装置36に備えられた吸着パッド38、38…によって補強板3の表面(第1主面)3aが吸着保持される。この後、可撓性板18による補強板3の裏面3bの吸着が解除され、搬出装置36によって、補強板3が剥離装置10から搬出される。
【0129】
補強板3の搬出が完了すると、次に、不図示の搬出装置が基板2に向けて進出移動する。そして、この搬出装置に備えられた吸着パッドによって、基板2の裏面(第2主面)2bが吸着保持される。この後、ステージ14による基板2の吸着が解除され、基板2が搬出装置によって剥離装置10から搬出される。
【0130】
以上の動作によって、剥離装置10による積層体1の剥離作業が終了する。
【0131】
なお、剥離装置10においては、剥離前線Aの進行方向(図3の矢印E)と直交する方向の基板2(補強板3)の長さと、可撓性板18の長さとの比が等しくなるように、可撓性板18の本体部18Aの大きさを設定することが好ましい。これにより、剥離前線Aが通過する際の本体部18Aの撓み変形量(曲率半径)が一定になるので、剥離動作が安定する。
【0132】
また、剥離前線Aが長くなるときの剥離前線Aの進行速度よりも、剥離前線Aが短くなるときの剥離前線Aの進行速度を低速にすることが好ましい。これにより、可撓性板18のスプリングバッグ作用によって剥離終了直後に生じる可撓性板18の振れ(バウンド)を抑制できる。
【0133】
また、上記の例では、基板2を変形不能に支持し、補強板3を撓み変形させて、基板2から補強板3を剥離させているが、補強板3を変形不能に支持し、基板2を撓み変形させて、基板2から補強板3を剥離させることもできる。この場合、補強板3の裏面3bがステージ14で吸着保持され、基板2の表面2aが可撓性板18で吸着保持されるようにして、積層体1を剥離装置10にセットする。
【0134】
また、上記の例では、図1に示した積層体1を剥離する場合を例に説明したが、図2に示した積層体6についても、同様に剥離装置10で剥離することができる。この場合、第1の積層体1Aの補強板3Aを剥離した後、第2の積層体1Bの補強板3Bを剥離する。あるいは、第2の積層体1Bの補強板3Bを剥離した後、第1の積層体1Aの補強板3Aを剥離する。
【0135】
なお、上記構成の剥離装置10は、剥離装置の一例である。したがって、他の構成の剥離装置を用いて、補強板3を剥離することもできる。たとえば、上記構成の剥離装置10では、サーボシリンダ26で可撓性板18を撓み変形させる構成としているが、たとえば、国際公開第2011/024689号等で開示されているように、複数のロッドを用いて可撓性板を撓み変形させる構成とすることもできる。すなわち、可撓性板に複数のロッドを二次元的に配置し、各ロッドを個別に伸縮させることにより、可撓性板を一端側から順次撓み変形させる構成とすることもできる。
【0136】
〔剥離起点の作成〕
上記のように、剥離装置10は、積層体1を一端から他端に向けて補強板3を徐々に撓み変形させることにより、補強板3を基板2から剥離する。
【0137】
このように剥離する場合、剥離が開始される点に、あらかじめ隙間が形成されていると、無理な力をかけずに、補強板3をスムーズに基板2から剥離することができる。
【0138】
この剥離の起点となる隙間は、基板2と補強板3との間に薄板状のナイフを挿入することにより作成することができる。すなわち、ナイフを挿入することにより、基板2と補強板3とを強制的に離間させて、剥離起点となる隙間を形成する。
【0139】
[剥離起点の作成方法の概要]
図7は、剥離起点の作成方法の概要を説明する説明図である。なお、図7(A)は、ナイフNの位置調整前の状態、図7(B)は、ナイフNの位置調整後の状態、図7(C)は、ナイフNを挿入した状態を示している。
【0140】
上記のように、剥離起点は、基板2と補強板3との間に薄板形状のナイフを挿入することにより作成される。
【0141】
積層体1は、たとえば、補強板3の裏面(第2主面)3Bをテーブル(不図示)で吸着保持して、水平に支持する。
【0142】
ナイフNは、剥離起点を作成する位置の積層体1の端面(たとえば、コーナ部の端面)に刃先が対向するようにして、水平に支持する。
【0143】
ナイフNは、位置調整手段(不図示)によって、鉛直方向(図中Z軸方向)に移動可能とし、刃先の高さ位置(鉛直方向の位置)が調整できるように構成する。
【0144】
また、ナイフNと積層体1とは、移動手段(不図示)によって、水平方向(図中X軸方向)に相対的に移動可能とし、積層体1に対してナイフNを挿入できるように構成する。
【0145】
以下、剥離起点の作成手順について概説する。
【0146】
通常、何もしない状態では、図7(A)に示すように、ナイフNの刃先は、ナイフ挿入位置から高さ方向(Z軸方向)にズレた位置に存在する。
【0147】
そこで、まず、図7(B)に示すように、ナイフNの刃先の高さ方向(鉛直方向)の位置を調整する。ナイフNの刃先の位置調整は、ナイフNを鉛直方向(図中Z軸方向)に移動させて、ナイフNの刃先が、ナイフ挿入位置と同じ高さの位置に位置するように調整する。
【0148】
ここで、ナイフ挿入位置は、基板2と補強板3の間に設定される。本実施の形態の積層体1は、基板2と補強板3との間に樹脂層4を有するので、この樹脂層4の位置にナイフ挿入位置が設定される。特に、樹脂層4の厚さ方向の中央にナイフ挿入位置が設定される。
【0149】
このナイフNの位置調整後、図7(C)に示すように、ナイフNを積層体1に向けて水平に移動させて、ナイフNを基板2と補強板3との間に挿入する。ナイフNは、刃先の位置が、ナイフ挿入位置と同じ高さの位置に位置しているので、積層体1に向けて水平に移動させると、基板2と補強板3との間に挿入される。
【0150】
ナイフNが基板2と補強板3との間に挿入されることにより、補強板3が基板2から離間し、隙間としての剥離起点が作成される。
【0151】
ナイフNは、所定量挿入され、挿入後、水平に引き戻されて、初期位置に復帰する。
【0152】
このように、剥離起点は、基板2と補強板3との間にナイフNを水平に挿入することにより作成される。
【0153】
[ナイフNの刃先の位置調整方法]
ナイフNは、刃先がナイフ挿入位置と同じ高さの位置に位置するように調整する。
【0154】
刃先の位置調整は、現在のナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置との鉛直方向のズレ量を求め、ズレを相殺するように、ナイフNを鉛直方向に移動させることにより行われる(ズレ量分だけナイフNを鉛直方向に移動させる。)。
【0155】
ズレ量は、鉛直方向におけるナイフNの刃先の位置の情報と、鉛直方向におけるナイフ挿入位置の情報とを取得することにより求めることができる。
【0156】
ここで、鉛直方向におけるナイフNの刃先の位置の情報は、ある水平な基準面を基準としたナイフNの刃先の鉛直方向の位置(基準面からの高さ)の情報として取得することができる。そして、この情報は、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における位置を検出する位置検出手段を用いて、ナイフNの刃先の位置を検出することにより取得することができる。
【0157】
一方、鉛直方向におけるナイフ挿入位置の情報は、基準面を基準とした補強板3の裏面(第2主面)3Aの鉛直方向の位置(基準面からの高さ)の情報と、補強板3の板厚の情報(補強板3が表面(第1主面)3Aに樹脂層4を有する場合は、補強板自体の板厚と、樹脂層4を含めた板厚の情報)とから取得することができる。すなわち、ナイフ挿入位置は、基板2と補強板3との間に設定され、補強板3の表面(第1主面)3Aの位置に設定される(補強板3が樹脂層4を有する場合は、樹脂層4の位置(特に、樹脂層4の厚さ方向の中央位置)に設定される。)。そして、補強板3の表面3aの位置は、補強板3の裏面3bの位置に補強板3の板厚(補強板3が樹脂層4を有する場合は、樹脂層4を含めた板厚(より厳密には、「補強板の板厚+樹脂層の厚さの1/2」の板厚))を加算することにより求めることができる。したがって、基準面を基準とした補強板3の裏面3bの鉛直方向の位置の情報と、補強板3の板厚の情報とが取得できれば、鉛直方向におけるナイフ挿入位置を求めることができる。
【0158】
基準面を基準とした補強板3の裏面3bの鉛直方向の位置は、基準面を基準として、基準面と垂直な方向における位置を検出する位置検出手段を用いて、補強板3の裏面3bの位置を検出することにより取得することができる。
【0159】
また、補強板3の板厚(補強板3が樹脂層4を有する場合は、補強板自体の板厚、及び、樹脂層4を含めた板厚)は、所定の板厚検出手段で検出することにより取得することができる。
【0160】
したがって、現在のナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置とのズレ量は、水平な基準面を基準として、鉛直方向におけるナイフNの刃先の位置と、鉛直方向における補強板3の裏面3bの位置とを位置検出手段で検出し、かつ、補強板3の板厚(補強板3が表面3aに樹脂層4を有する場合は、補強板3の板厚、及び、樹脂層4の厚さ)を板厚検出手段で検出することにより求めることができる。
【0161】
[ズレ量を検出するための機構の概要]
図8は、ナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置とのズレ量を検出するための機構の概略図である。
【0162】
上記のように、ズレ量の検出は、ナイフNの刃先の位置と、補強板3の裏面3bの位置とを位置検出手段で検出し、かつ、補強板3の板厚を板厚検出手段で検出することにより求められる。
【0163】
本機構では、位置検出手段として、公知のレーザ変位計50を使用して、鉛直方向におけるナイフNの刃先の位置と、鉛直方向における補強板3の裏面3bの位置とを検出する。
【0164】
レーザ変位計50は、検出光としてのレーザ光を出射して、そのレーザ光が照射された物体の表面までの距離を検出する(基準面からの変位量を検出して、基準面からの距離を検出する。)。基準面は、たとえば、水平な面として設定される。
【0165】
また、補強板3が透光性を有することを前提として(たとえば、補強板がガラス基板で構成されている場合など)、板厚検出手段には、分光干渉法によって補強板3の板厚を検出する公知の板厚検出計52を使用する。
【0166】
板厚検出計52は、積層体1に向けて光源から検査光を照射し、積層体1で反射した干渉光を分光器で分光し、分光した光を受光器で受光し、受光波形を解析して、補強板3の板厚を算出する。検査光は、所定の広さの波長を有し、受光波形の解析では波長に対する強度の変化を解析する。
【0167】
なお、分光干渉法による板厚検出計は、樹脂層4を備えた補強板3の板厚を検出する場合、樹脂層4の屈折率と、基板2の屈折率とが異なる場合に用いられる。この場合、補強板3自体の板厚と、樹脂層4を含めた補強板3の板厚(補強板3の板厚+樹脂層4の厚さ)とを検出することができる。
【0168】
補強板3に樹脂層4が備えられていないときは、補強板3自体の屈折率と基板2自体の屈折率とが異なる場合、あるいは、補強板3と基板2との境界面の屈折率が異なる場合(たとえば、基板2又は補強板3が成膜されている場合など)に、分光干渉法を用いた板厚検出計が用いられる。分光干渉法による板厚検出計を用いる場合、基板2と補強板3との境界の面で屈折率が変化していればよい。
【0169】
分光干渉法による板厚検出では、補強板3と基板2との間に樹脂及び膜、気泡が介在せず、それぞれの屈折率が同じ場合、積層体を1枚の板として認識する。
【0170】
分光干渉法以外の板厚検出計としては、たとえば、三角測量法による板厚検出計を用いることができる。三角測量法では、所定の波長を有する検査光を用いて、補強板3の板厚を検出する。補強板3と基板2との間に樹脂や膜が介在せず、それぞれの屈折率が同じ積層体1の板厚を検出する場合などは、たとえば、三角測量法による板厚検出計が用いられる。
【0171】
なお、上記同様、積層体1とナイフNとは、ともに水平に支持されているものとする。したがって、補強板3の裏面3bは、基準面と平行であるものとする。補強板3の表面3a、基板2の裏面2b、及び、基板2の表面2aについても同様に基準面と平行であるものとする。
【0172】
また、積層体1とナイフNとは、移動手段(不図示)によって、それぞれ水平方向に相対的に移動可能に設けられているものとする。
【0173】
また、ナイフNは、位置調整手段(不図示)によって、鉛直方向に移動可能に設けられているものとする。
【0174】
位置検出手段としてのレーザ変位計50は、積層体1及びナイフNの移動経路上に設置され、鉛直にレーザ光を出射する。なお、本例では、積層体1とナイフNとが同一直線上(図中X軸上)を移動するものとし、この直線上にレーザ変位計50が設置される。
【0175】
積層体1は、このレーザ変位計50の設置位置(より厳密にはレーザ光の出射位置(検出位置))に移動することにより、その補強板3の裏面(第2主面)3bにレーザ光が照射される。これにより、補強板3の裏面3bの鉛直方向の位置(基準面からの距離L2)が検出される。
【0176】
同様にナイフNは、レーザ変位計50の設置位置に移動することにより、刃先にレーザ光が照射され、刃先の位置(基準面からの距離L1)が検出される。
【0177】
なお、レーザ変位計50での位置検出は、ピンポイントでの検出になるので、ナイフNの刃先をレーザ変位計50で検出する場合は、ナイフNの刃先がレーザ光で走査されるように、ナイフNを移動させることが好ましい。
【0178】
図9は、ナイフNの水平移動量とレーザ変位計50の出力の関係を示すグラフである。
【0179】
図9に示すように、レーザ変位計50から出射されるレーザ光によって、ナイフNの刃先が走査されるように、ナイフNを水平移動させることにより、刃先を含むナイフ先端部の全体の位置を検出することができ、ナイフNの刃先の位置を正確に検出することができる。
【0180】
なお、このためには、少なくとも刃先を含むナイフNの先端部分が、レーザ変位計50のレーザ光の出射位置(検出位置)を通過するように、ナイフNを水平移動させる。
【0181】
板厚検出計52は、積層体1の移動経路上に設置される。積層体1は、この板厚検出計52の設置位置に移動することにより、その補強板3の板厚が検出される。なお、補強板3が、表面3aに樹脂層4を有する場合は、補強板自体の板厚T1と、樹脂層4を含めた板厚T2とが検出される。
【0182】
板厚を検出する位置は、補強板3の裏面3bの鉛直方向の位置を検出する位置と同じ位置とすることが好ましい。
【0183】
図10は、ナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置とのズレ量の検出手順の説明図である。なお、図10(A)は、初期状態、図10(B)は、ナイフNの刃先の位置を検出している状態、図10(C)は、補強板3の板厚を検出している状態、図10(D)は、補強板の裏面の位置を検出している状態を示している。
【0184】
図10(A)に示すように、初期状態において、ナイフNと積層体1とは、ともにレーザ変位計50の検出位置、及び、板厚検出計52の検出位置から離れた位置に位置している。
【0185】
まず、図10(B)に示すように、ナイフNをレーザ変位計50の検出位置(レーザ光の出射位置)まで水平に移動させて、ナイフNの刃先の位置を検出する。
【0186】
この際、上記のように、ナイフNの刃先が、レーザ変位計50から出射されるレーザ光によって走査されるように、ナイフNを水平移動させて、ナイフNの刃先の位置を検出する。
【0187】
ナイフNの刃先の位置の検出後、ナイフNを初期位置(図10(A)の位置)に復帰させる。
【0188】
次に、図10(C)に示すように、積層体1を板厚検出計52の検出位置まで水平に移動させて、補強板3の板厚を検出する。
【0189】
補強板3の板厚は、補強板3に樹脂層4が備えられている場合、補強板自体の板厚T1と、樹脂層4を含めた板厚T2とが検出される。
【0190】
一方、補強板3に樹脂層4が備えられていない場合、補強板3の板厚T1のみが検出される。
【0191】
なお、上記のように、分光干渉法による板厚検出では、樹脂層4の屈折率と、基板2の屈折率とが異なる場合に、補強板自体の板厚T1と、樹脂層4を含めた板厚T2とが検出される。
【0192】
補強板3に樹脂層4が備えられていないときは、補強板3の屈折率と基板2の屈折率とが異なる場合、あるいは、補強板3と基板2との境界の面の屈折率が異なる場合に、補強板3の板厚T1のみが検出される。
【0193】
補強板3の板厚検出後、図10(D)に示すように、積層体1をレーザ変位計50の検出位置まで移動させて、補強板3の裏面3bの位置(基準面からの距離L2)を検出する。
【0194】
この際、板厚検出計52で板厚を検出した位置と同じ位置で、補強板3の裏面3bの位置を検出する。
【0195】
以上一連の工程(ナイフNの刃先の位置を検出する工程と補強板3の裏面3bの位置を検出する工程とからなる位置検出工程、及び、補強板3の板厚を検出する板厚検出工程)でナイフNの刃先の位置とナイフ挿入位置とのズレ量を算出するために必要な情報の取得が完了する。この後、取得した各情報に基づいて、ズレ量が算出される。ズレ量の演算は、次のように行われる。
【0196】
ナイフ挿入位置(基準面からの距離L3)は、レーザ変位計50で検出された補強板3の裏面3bの位置に、補強板3の板厚を加算した位置である。この際、補強板3に樹脂層4が備えられている場合は、補強板自体の板厚T1と、樹脂層4を含めた板厚T2との平均((T1+T2)/2)が補強板3の板厚とされ、この板厚が、補強板3の裏面3bの位置に加算された位置がナイフ挿入位置(基準面からの距離L3)とされる(L3=L2+(T1+T2)/2)。補強板3に樹脂層4が備えられていない場合は、補強板自体の板厚T1を補強板3の裏面3bの位置に加算された位置がナイフ挿入位置(基準面からの距離L3)とされる(L3=L2+T1)。
【0197】
ズレ量Hは、ナイフ挿入位置(基準面からの距離L3)と、現在のナイフNの刃先の位置(基準面からの距離L1)との差である(H=L3−L1)。
【0198】
したがって、ズレ量Hは、補強板3に樹脂層4が備えられている場合、H=L3−L1=[L2+(T1+T2)/2]−L1で求められる。
【0199】
また、補強板3に樹脂層4が備えられていない場合は、H=L3−L1=[L2+T1]−L1で求められる。
【0200】
このようにしてズレ量Hを算出する。そして、算出後、得られたズレ量の情報に基づいて、ズレを相殺するように、ナイフNを鉛直方向に移動させて、ナイフNの刃先をナイフ挿入位置に位置させる(位置調整工程の実施)。
【0201】
〔剥離起点作成装置〕
[剥離起点作成装置の構成]
図11は、剥離起点作成装置100の一実施形態を示す正面図である。また、図12は、図11に示した剥離起点作成装置100の平面図である。
【0202】
なお、ここでは、便宜上、図1に示した積層体1を剥離する場合を例に説明する。
【0203】
剥離起点作成装置100は、積層体1を支持するテーブル112と、ナイフNを保持するホルダ114と、テーブル112を水平に移動させるテーブル駆動ユニット116と、ナイフNを水平に移動させるナイフ駆動ユニット118と、ナイフNの高さ方向(鉛直方向:図中Z方向)の位置を調整する位置調整ユニット120と、テーブル112に支持された積層体1の補強板3の裏面3bの高さ方向の位置、及び、ナイフNの刃先の高さ方向の位置を検出するレーザ変位計50と、テーブル112に支持された積層体1の補強板3の板厚を検出する板厚検出計52と、全体の動作を統括制御するとともに、各種演算処理を実行する制御部(不図示)と、を備えて構成される。
【0204】
テーブル112は、テーブル支持架台122の上に水平に設置される。テーブル112は、積層体1のほぼ全面を支持できるように、積層体1の外形に対応した外形を有する。本実施の形態の積層体1は、外形が矩形状であるので、テーブル112も矩形状を有する。テーブル112の上面は、積層体1の載置面とされ、水平面として構成される。積層体1は、このテーブル112の上面(載置面)に載置される。
【0205】
また、テーブル112には、図示しない吸引機構が備えられる。テーブル112に載置された積層体1は、この吸引機構によって、裏面(ここでは、補強板3の裏面3b)が真空吸引される。これにより、テーブル112に載置された積層体1が、テーブル112に吸着保持される。
【0206】
テーブル112は、剥離起点の作成部が、ナイフNの刃先に対向するように設置される。本実施の形態の積層体1は、コーナ部1Cに剥離起点が作成されるので、このコーナ部1CがナイフNの刃先と対向するように、テーブル112が設置される。
【0207】
また、テーブル112は、支持した積層体1の裏面(補強板3の裏面3b)の位置をレーザ変位計50で検出できるようにするために、一部に切欠き112Aを有する。この切欠き112Aは、剥離起点の作成箇所に形成することが好ましい。このため、テーブル112は、積層体1の剥離起点の作成箇所に該当するコーナ部に切欠き112Aを有する。
【0208】
ナイフNは、矩形の平板形状を有し、片方の長辺部分に鋭角な刃を有する。ナイフNは、基板2と補強板3との間に挿入されるときに弾性変形することが好ましい。ナイフNの板厚は、積層体1の構成にもよるが、たとえば、50〜600μmである。
【0209】
ホルダ114は、ナイフNを着脱可能に保持する。ホルダ114は、ナイフNの両端を把持して、ナイフNを水平に保持する。ホルダ114に保持されることにより、ナイフNは、テーブル112に支持される積層体1と平行に設置される(積層体1の補強板3の裏面3b、補強板3の表面3a、基板2の裏面2b、及び、基板2の表面2aと平行に設置される。)。
【0210】
テーブル駆動ユニット116は、積層体移動手段を構成し、テーブル112が設置されたテーブル支持架台122を水平移動させて、テーブル112に支持された積層体1を水平移動させる。テーブル駆動ユニット116は、本体フレーム132と、本体フレーム132に備えられるレール134と、レール134上をスライドするスライダ136と、レール134に沿って配設されるネジ棒138と、ネジ棒138を回転させるモータ140とを備えて構成される。
【0211】
本体フレーム132は、剥離起点作成装置100のベース102上に水平に設置される。
【0212】
レール134は、本体フレーム132に備えられる。レール134は、直線であり、スライダ136を直線に沿ってガイドする。本体フレーム132は、このレール134が水平に配設されるように、ベース102に設置される。
【0213】
スライダ136は、レール134に沿って摺動することにより、直線運動する。テーブル支持架台122は、このスライダ136の上に設置される。これにより、テーブル支持架台122が、水平な直線に沿って移動自在に支持される。
【0214】
スライダ136は、レール134と平行なネジ穴(不図示)を有する。ネジ棒138は、このスライダ136のネジ穴に螺合される。これにより、ネジ棒138を回転させると、そのネジ棒138の回転量に応じて、スライダ136がレール134に沿って移動する。
【0215】
ネジ棒138は、レール134と平行に配設され、両端部を本体フレーム132に備えられた軸受(不図示)に回動自在に支持される。
【0216】
モータ140は、本体フレーム132に備えられ、ネジ棒138を回転駆動する。モータ140は、たとえば、サーボモータで構成される。
【0217】
モータ140を駆動して、ネジ棒138を回転させると、スライダ136がレール134に沿って直線移動する。これにより、テーブル支持架台122が水平方向に直線移動し、そのテーブル支持架台122に設置されたテーブル112が水平方向に直線移動する。
【0218】
ナイフ駆動ユニット118は、ナイフ移動手段を構成し、ナイフNを保持するホルダ114を水平移動させて、ナイフNを水平移動させる。ナイフ駆動ユニット118は、ベース102上に設置された架台104上に設置される。
【0219】
ナイフ駆動ユニット118は、本体フレーム142と、本体フレーム142に備えられるレール144と、レール144上をスライドするスライダ146と、レール144に沿って配設されるネジ棒148と、ネジ棒148を回転させるモータ140とを備えて構成される。
【0220】
本体フレーム142は、架台104上に水平に設置される。
【0221】
レール144は、本体フレーム142に備えられる。レール144は、直線であり、スライダ146を直線に沿ってガイドする。本体フレーム142は、このレール144が水平に配設されるように、架台104に設置される。
【0222】
スライダ146は、レール144に沿って摺動することにより、直線運動する。ホルダ114は、このスライダ146の上に位置調整ユニット120を介して設置される。これにより、ホルダ114が、水平な直線に沿って移動自在に支持される。
【0223】
スライダ146は、レール144と平行なネジ穴(不図示)を有する。ネジ棒148は、このスライダ146のネジ穴に螺合される。これにより、ネジ棒148を回転させると、そのネジ棒148の回転量に応じて、スライダ146がレール144に沿って移動する。
【0224】
ネジ棒148は、レール144と平行に配設され、両端部を本体フレーム142に備えられた軸受(不図示)に回動自在に支持される。
【0225】
モータ140は、本体フレーム142に備えられ、ネジ棒148を回転駆動する。モータ140は、たとえば、サーボモータで構成される。
【0226】
モータ140を駆動して、ネジ棒148を回転させると、スライダ146がレール144に沿って直線移動する。これにより、ホルダ114が水平方向に直線移動し、そのホルダ114に保持されたナイフNが水平方向に直線移動する。
【0227】
ここで、ナイフ駆動ユニット118のレール144は、テーブル駆動ユニット116のレール134と平行になるように設置される。これにより、テーブル112とナイフNとが水平面上を同じ方向(図11のX軸方向)に直線移動する。特に、本実施の形態の剥離起点作成装置100では、図12に示すように、ナイフ駆動ユニット118のレール144と、テーブル駆動ユニット116のレール134とが同一直線上に設置される。これにより、積層体1とナイフNとが、同一直線上を進退移動可能に設けられる。
【0228】
位置調整ユニット120は、位置調整手段を構成し、ナイフNを保持するホルダ114を鉛直方向(図11のZ軸方向)に移動させて、ナイフNを鉛直方向に移動させる。位置調整ユニット120は、ナイフ駆動ユニット118のスライダ146上に設置される。
【0229】
位置調整ユニット120は、本体フレーム152と、本体フレーム152に備えられるレール154と、レール154上をスライドするスライダ156と、レール154に沿って配設されるネジ棒158と、ネジ棒158を回転させるモータ150とを備えて構成される。
【0230】
本体フレーム152は、ナイフ駆動ユニット118のスライダ146上に垂直に起立して設置される。
【0231】
レール154は、本体フレーム152に備えられる。レール154は、直線であり、スライダ156を直線に沿ってガイドする。本体フレーム152は、このレール154が鉛直方向に沿って配設されるように、起立して架台104に設置される。
【0232】
スライダ156は、レール154に沿って摺動することにより、直線運動する。ホルダ114は、このスライダ156に取り付けられる。これにより、ホルダ114が、鉛直な直線に沿って移動自在に支持される。すなわち、鉛直方向に昇降自在に支持される。
【0233】
スライダ156は、レール154と平行なネジ穴(不図示)を有する。ネジ棒158は、このスライダ156のネジ穴に螺合される。これにより、ネジ棒158を回転させると、そのネジ棒158の回転量に応じて、スライダ156がレール154に沿って移動する。
【0234】
ネジ棒158は、レール154と平行に配設され、両端部を本体フレーム152に備えられた軸受(不図示)に回動自在に支持される。
【0235】
モータ160は、本体フレーム152に備えられ、ネジ棒158を回転駆動する。モータ160は、たとえば、サーボモータで構成される。
【0236】
モータ160を駆動して、ネジ棒158を回転させると、スライダ156がレール154に沿って直線移動する。これにより、ホルダ114が鉛直方向に直線移動し、そのホルダ114に保持されたナイフNが鉛直方向に直線移動する。
【0237】
以上のように、積層体1を支持するテーブル112は、テーブル駆動ユニット116によって、水平にスライド移動し、ナイフNは、ナイフ駆動ユニット118によって、水平にスライド移動する。
【0238】
ここで、図12に示すように、テーブル112は、剥離起点を作成する積層体1のコーナ部1Cと、そのコーナ部1Cの対角線上に位置する他方側のコーナ部1Dとを結ぶ直線Sに沿ってスライド移動するように設置される。また、ナイフNは、直線S上に配設され、その直線Sに対して、刃が直交するように配置される。これにより、ナイフNの刃先の位置を積層体1のナイフ挿入位置(基板2と補強板3との間)に合わせて、ナイフNを水平移動させると、ナイフNを基板2と補強板3との間に挿入させることができる。
【0239】
位置検出手段としてのレーザ変位計50は、検出光としてのレーザ光を出射して、そのレーザ光が照射された物体の表面までの距離を検出する(水平面として設定される基準面からの変位量を検出して、基準面から物体の表面までの距離を検出する。)。
【0240】
レーザ変位計50は、図示しないブラケットを介して、ベース102上に設置され、鉛直に上向きにレーザ光を出射する。また、レーザ変位計50は、その上を積層体1及びナイフNが移動できるように、積層体1及びナイフNの移動経路である直線S上に設置される。
【0241】
テーブル112に支持された積層体1は、レーザ変位計50の設置位置(検出位置)に移動することにより、その裏面(補強板3の裏面3b)にレーザ光が照射され、補強板3の裏面3bの高さ方向の位置(基準面からの鉛直方向の距離L2)が検出される。
【0242】
また、ナイフNは、レーザ変位計50の設置位置に移動することにより、その刃先にレーザ光が照射され、刃先の高さ方向の位置(基準面からの鉛直方向の距離L1)が検出される。
【0243】
板厚検出計52は、分光干渉法によって補強板3の板厚を検出する。したがって、積層体1を構成する補強板3は、透光性を有するものとする。
【0244】
板厚検出計52は、図示しないブラケットを介して、ベース102上に設置され、鉛直に上向きに検査光を出射する。また、板厚検出計52は、その上を積層体1が移動できるように、積層体1の移動経路である直線S上に設置される。
【0245】
テーブル112に支持された積層体1は、板厚検出計52の設置位置(板厚検出位置)に移動することにより、その裏面(補強板3の裏面3b)に向けて検査光が出射され、板厚が検出される。
【0246】
なお、補強板3が樹脂層4を有する場合、補強板自体の板厚T1と、樹脂層4を含めた補強板3の補強板の板厚T2(補強板3の板厚+樹脂層4の厚さ)とが、補強板3の板厚として検出される。
【0247】
補強板3が樹脂層4を有しない場合は、補強板自体の板厚T1が検出される。
【0248】
制御部(不図示)は、剥離起点作成装置100の全体の動作を統括制御するとともに、各種演算処理を実行する。制御部は、たとえば、マイコンで構成され、所定の制御プログラムを実行して、各種処理を実行する。具体的には、テーブル駆動ユニット116の駆動を制御して、テーブル112の移動を制御するとともに、ナイフ駆動ユニット118の駆動を制御して、ナイフNの移動を制御する。また、レーザ変位計50、及び、板厚検出計52の検出結果に基づいて、ナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先のズレ量を算出し、その算出結果に基づいて、位置調整ユニット120の駆動を制御して、ナイフNの位置調整を実施する。
【0249】
[剥離起点作成装置の作用]
次に、上記のように構成される本実施の形態の剥離起点作成装置100による剥離起点の作成方法について説明する。
【0250】
初期状態において、ナイフNは、所定のナイフ待機位置に位置し、テーブル112は、所定のテーブル待機位置に位置して、互いに離間している(図11参照)。
【0251】
まず、テーブル112に処理対称の積層体1をセットする。すなわち、積層体1をテーブル112の上に載置し、積層体1の裏面をテーブル112で吸着保持する。積層体1は、補強板3の裏面3bがテーブル112に吸着保持されるように、補強板3側を下にして、テーブル112の上に載置する。
【0252】
積層体1がテーブル112にセットされると、制御部による制御の下、剥離起点の作成処理が開始される。
【0253】
まず、ナイフ駆動ユニット118が駆動され、ナイフNがレーザ変位計50の設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する(図10(B)参照)。また、これと同時に、レーザ変位計50から検出光としてのレーザ光が出射され、刃先の位置の検出が開始される。ナイフNは、刃先がレーザ変位計50の設置位置を所定量通過したところで、移動が停止される。これにより、刃先を含むナイフNの先端部分が、レーザ変位計50から出射されるレーザ光によって走査され、基準面を基準とした、ナイフNの刃先の鉛直方向の位置(高さL1)が検出される。
【0254】
ナイフNの刃先の位置の検出が完了すると、レーザ光の出射が停止される。また、ナイフ駆動ユニット118が駆動され、ナイフNが水平に移動して、ナイフ待機位置に復帰する(図10(A)参照)。
【0255】
次に、テーブル駆動ユニット116が駆動され、積層体1が板厚検出計52の設置位置(板厚の検出位置)に向かって水平に移動する。積層体1は、剥離起点を作成するコーナ部1Cの近傍に設定される所定の検出対象部位が、板厚検出計の設置位置に位置したところで、移動が停止される(図10(C)参照)。移動停止後、板厚検出計52から検査光が出射され、補強板3の板厚が検出される。
【0256】
ここで、補強板3の表面3aに樹脂層4が備えられている場合は、補強板3自体の板厚T1と、樹脂層4を含めた板厚T2とが、補強板3の板厚として、板厚検出計52により検出される。
【0257】
また、補強板3の表面3aに樹脂層4が備えられていない場合は、補強板3自体の板厚T1が、補強板3の板厚として、板厚検出計52により検出される。
【0258】
補強板3の板厚の検出が完了すると、テーブル駆動ユニット116が駆動され、積層体1がレーザ変位計50の設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。積層体1は、上記検出対象部位が、レーザ変位計50の設置位置に位置したところで、移動が停止される(図10(D)参照)。移動停止後、レーザ変位計50から検出光としてのレーザ光が出射され、補強板3の裏面3bの鉛直方向の位置(高さL2)が検出される。
【0259】
以上の工程(ナイフNの刃先の位置を検出する工程と補強板3の裏面3bの位置を検出する工程とからなる位置検出工程、及び、補強板3の板厚を検出する板厚検出工程)により、ナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量を算出するために必要な情報の取得が完了する。
【0260】
演算手段としての制御部(不図示)は、レーザ変位計50で検出されたナイフNの刃先の位置情報(L1)と、同じくレーザ変位計50で検出された補強板3の裏面3bの位置情報(L2)と、板厚検出計52で検出された補強板3の板厚情報(T1、T2)とに基づいて、ナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量を算出する。
【0261】
すなわち、補強板3に樹脂層4が備えられている場合は、次式:H=L3−L1=[L2+(T1+T2)/2]−L1により、ズレ量Hを算出する。
【0262】
また、補強板3に樹脂層4が備えられていない場合は、次式:H=L3−L1=[L2+T1]−L1により、ズレ量Hを算出する。
【0263】
ズレ量Hが算出されると、算出されたズレ量の情報に基づいて、ナイフNの刃先の位置を調整する工程(位置調整工程)が実施される。すなわち、位置調整ユニット120が駆動され、ナイフNの刃先が、ナイフ挿入位置と同じ高さの位置に位置するように、ナイフNが鉛直方向に移動される(図7(B)参照)。
【0264】
ナイフNの刃先の位置調整が完了すると、基板2と補強板3との間にナイフNを挿入する工程(ナイフ挿入工程)が実施される。すなわち、ナイフ駆動ユニット118が駆動され、ナイフNが積層体1に向かって水平に移動して、基板2と補強板3との間にナイフNが挿入される。
【0265】
ナイフNは、刃先が、ナイフ挿入位置、すなわち、基板2と補強板3との間に位置しているので、ナイフNが積層体1に向かって水平に移動すると、ナイフNの刃先が、積層体1のコーナ部1Cにおける基板2と補強板3との間に挿入される。これにより、コーナ部1Cに剥離起点が作成される。
【0266】
ナイフNは、積層体1に対して、所定量挿入されると、移動が停止する。移動停止後、ナイフNは、逆方向(積層体1から離れる方向)に移動し、ナイフ待機位置に復帰する。
【0267】
ナイフNがナイフ待機位置に復帰すると、テーブル駆動ユニット116が駆動され、テーブル112がテーブル待機位置に復帰する。復帰後、テーブル112による積層体1の吸着が解除され、テーブル112から積層体1が回収される。
【0268】
以上一連の工程で剥離起点の作成が完了する。
【0269】
本実施の形態の剥離起点作成装置100によれば、ナイフNを傾けて基板2と補強板3との間に挿入されることがないので、基板2及び補強板3に無理な力をかけずに、剥離起点を作成することができる。
【0270】
また、刃先の位置検出等のために、ナイフNの姿勢を変えることもないので、誤差の発生要因が少なく、高精度にナイフNを基板2と補強板3との間に挿入することができる。
【0271】
なお、上記実施の形態では、図1に示した積層体1を剥離する場合を例に説明したが、図2に示す構成の積層体6についても同様に剥離処理することができる。この場合、まず、第1の積層体1Aを下側にして、積層体6をテーブル112の上に載置し、第1の積層体1Aの基板2Aと補強板3Aとの間に剥離起点を作成する。その後、積層体6を裏返して、テーブル112の上に載置し(第2の積層体1Bを下側にして、積層体6をテーブル112の上に載置する。)、第2の積層体1Bの基板2Bと補強板3Bとの間に剥離起点を作成する。
【0272】
[剥離起点作成装置の第2の実施の形態]
〈構成〉
図13は、剥離起点作成装置200の第2の実施の形態を示す正面図である。
【0273】
図2に示す構成の積層体6のように、積層体6の表面と裏面とに補強板3A、3Bが備えられている場合、上記実施の形態の剥離起点作成装置100では、積層体6を裏返す処理が必要となる。
【0274】
本実施の形態の剥離起点作成装置200は、図2に示す構成の積層体6のように、積層体6の表面と裏面とに補強板3A、3Bが備えられている場合であっても、積層体6を裏返す処理を行うことなく、重ねられた2つの積層体(第1の積層体1Aと第2の積層体1B)に剥離起点を作成できるように構成したものである。
【0275】
なお、上記実施の形態の剥離起点作成装置100と、共通の構成については、共通の符号を付して、その説明は省略する。
【0276】
図13に示すように、本実施の形態の剥離起点作成装置200は、ナイフNの刃先の位置、及び、補強板3A、3Bの裏面3Ab、3Bbの位置を検出する位置検出手段としてのレーザ変位計50A、50Bが、2つ備えられている。また、補強板3A、3Bの板厚を検出する板厚検出手段としての板厚検出計52A、52Bが、2つ備えられている。
【0277】
レーザ変位計50A、50Bは、積層体6及びナイフNの移動経路上(直線S上:図12参照)に設置される。レーザ変位計50A、50Bは、互いに対向して配置され、上側に配置されるレーザ変位計50A(以下、第1のレーザ変位計50Aという。)は、鉛直下向きに検出光であるレーザ光を出射する。また、下側に配置されるレーザ変位計50B(以下、第2のレーザ変位計50Bという。)は、鉛直上向きに検出光であるレーザ光を出射する。
【0278】
第1のレーザ変位計50Aは、ナイフNの刃先の位置、及び、テーブル112に載置された積層体6の上側に位置する積層体、すなわち、第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの位置を検出する。
【0279】
また、第2のレーザ変位計50Bは、ナイフNの刃先の位置、及び、テーブル112に載置された積層体6の下側に位置する積層体、すなわち、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置を検出する。
【0280】
板厚検出計52A、52Bは、積層体6の移動経路上(直線S上:図12参照)に設置される。板厚検出計52A、52Bは、互いに対向して配置され、上側に配置される板厚検出計52A(以下、第1の板厚検出計52Aという。)は、鉛直下向きに検査光を出射する。また、下側に配置される板厚検出計52B(以下、第2の板厚検出計52Bという。)は、鉛直上向きに検査光を出射する。
【0281】
第1の板厚検出計52Aは、テーブル112に載置された積層体6の上側に位置する積層体、すなわち、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚を検出する。
【0282】
また、第2の板厚検出計52Bは、テーブル112に載置された積層体6の下側に位置する積層体、すなわち、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を検出する。
【0283】
〈ズレ量の検出方法の概要〉
図14は、ナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先のズレ量の検出方法の概要を説明する説明図である。
【0284】
積層体6の上側に位置する第1の積層体1Aに対しては、第1のレーザ変位計50Aと、第1の板厚検出計52Aとを用いて、第1のナイフ挿入位置(第1の積層体1Aの基板2Aと補強板3Aとの間の位置)に対するナイフNの刃先の位置のズレ量が検出される。また、積層体6の下側に位置する第2の積層体1Bに対しては、第2のレーザ変位計50Bと、第2の板厚検出計52Bとを用いて、第2のナイフ挿入位置(第2の積層体1Bの基板2Bと補強板3Bとの間の位置)に対するナイフNの刃先の位置のズレ量が検出される。
【0285】
すなわち、第1のレーザ変位計50Aによって、第1の基準面(第1のレーザ変位計50Aによる変位量の検出の基準となる面)を基準とした、ナイフNの刃先の鉛直方向の位置(第1の基準面からの距離LA1)と、第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの鉛直方向の位置(第1の基準面からの距離LA2)とが検出され、第1の板厚検出計52Aによって、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚が検出される(補強板3Aが表面3Aaに樹脂層4を有する場合は、補強板3A自体の板厚TA1と、樹脂層4の厚さを含めた板厚TA2が検出され、補強板3Aが表面3Aaに樹脂層4を有しない場合は、補強板3A自体の板厚TA1が検出される。)。そして、検出されたナイフNの刃先の位置(第1の基準面からの距離LA1)と、第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの位置(第1の基準面からの距離LA2)と、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚とに基づいて、第1のナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量HAが算出される。すなわち、補強板3Aに樹脂層4Aが備えられている場合は、次式:HA=[LA2+(TA1+TA2)/2]−LA1によって、ズレ量HAが求められる。また、補強板3に樹脂層4が備えられていない場合は、次式:HA=[LA2+TA1]−LA1によって、ズレ量HAが求められる。
【0286】
また、第2のレーザ変位計50Bによって、第2の基準面(第2のレーザ変位計50Bによる変位量の検出の基準となる面)を基準とした、ナイフNの刃先の鉛直方向の位置(第2の基準面からの距離LB1)と、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの鉛直方向の位置(第2の基準面からの距離LB2)とが検出され、第2の板厚検出計52Bによって、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚が検出される(補強板3Bが表面3Baに樹脂層4を有する場合は、補強板3B自体の板厚TB1と、樹脂層4の厚さを含めた板厚TB2が検出され、補強板3Bが表面3Baに樹脂層4を有しない場合は、補強板3B自体の板厚TB1が検出される。)。そして、検出されたナイフNの刃先の位置(第2の基準面からの距離LB1)と、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置(第2の基準面からの距離LB2)と、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚とに基づいて、第2のナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量HBが算出される。すなわち、補強板3Bに樹脂層4Bが備えられている場合は、次式:HB=[LB2+(TB1+TB2)/2]−LB1によって、ズレ量HBが求められる。また、補強板3に樹脂層4が備えられていない場合は、次式:HB=[LB2+TB1]−LB1によって、ズレ量HBが求められる。
【0287】
〈第2の実施の形態の剥離起点作成装置200を用いた剥離起点の作成方法〉
図15図18は、図13に示した第2の実施の形態の剥離起点作成装置200を用いた剥離起点の作成手順の説明図である。
【0288】
なお、図15(A)は、初期状態、図15(B)は、ナイフNの刃先の位置を検出している状態、図15(C)は、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を検出している状態、図15(D)は、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置を検出している状態を示している。
【0289】
また、図16(A)は、第2のナイフ挿入位置に対して、ナイフNの刃先の位置を調整した状態、図16(B)は、第2のナイフ挿入位置にナイフNを挿入している状態、図16(C)は、第2の積層体1Bに対する剥離起点の作成処理が完了した状態を示している。
【0290】
また、図17(A)は、ナイフNの刃先の位置を検出している状態、図17(B)は、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚を検出している状態、図17(C)は、第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの位置を検出している状態を示している。
【0291】
また、図18(A)は、第1のナイフ挿入位置に対して、ナイフNの刃先の位置を調整した状態、図18(B)は、第1のナイフ挿入位置にナイフNを挿入している状態、図18(C)は、第1の積層体1Aに対する剥離起点の作成処理が完了した状態を示している。
【0292】
図15図18に示すように、積層体6の表裏両面に補強板3A、3Bが備えられている場合、順番にナイフNが挿入されて、剥離起点が作成される。剥離起点を作成する順番は、上下いずれが先であってもよいが、ここでは、最初に下側の積層体(第2の積層体1B)に対して剥離起点を作成し、次に上側の積層体(第1の積層体1A)対して剥離起点を作成する場合を例に説明する。
【0293】
図15(A)に示すように、初期状態において、ナイフNは、所定のナイフ待機位置に位置している。また、積層体6がセットされたテーブル112(不図示)は、所定のテーブル待機位置に位置している。
【0294】
まず、図15(B)に示すように、ナイフNがレーザ変位計50の設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。また、これと同時に第2のレーザ変位計50Bからレーザ光が出射され、刃先の位置の検出が開始される。ナイフNは、刃先が第2のレーザ変位計50Bの設置位置を所定量通過したところで、移動が停止される。これにより、刃先を含むナイフNの先端部分が、第2のレーザ変位計50Bから出射されるレーザ光によって走査され、第2の基準面を基準とした、ナイフNの刃先の鉛直方向の位置(高さLB1)が検出される。
【0295】
ナイフNの刃先の位置の検出が完了すると、レーザ光の出射が停止される。また、ナイフNが水平に移動して、図15(C)に示すように、ナイフ待機位置に復帰する。
【0296】
次に、積層体6が第2の板厚検出計52Bの設置位置(板厚の検出位置)に向かって水平に移動する。図15(C)に示すように、積層体6は、所定の検出対象部位が、第2の板厚検出計52Bの設置位置に位置したところで、移動が停止される。移動停止後、第2の板厚検出計52Bから検査光が出射され、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚が検出される。
【0297】
ここで、補強板3Bの表面3Baに樹脂層4Bが備えられている場合は、補強板3B自体の板厚TB1と、樹脂層4Bを含めた板厚TB2とが、補強板3Bの板厚として、第2の板厚検出計52Bにより検出される。
【0298】
また、補強板3Bの表面3Baに樹脂層4Bが備えられていない場合は、補強板3B自体の板厚TB1が、補強板3Bの板厚として、第2の板厚検出計52Bにより検出される。
【0299】
第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚の検出が完了すると、積層体6が第2のレーザ変位計50Bの設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。図15(D)に示すように、積層体6は、上記検出対象部位が、第2のレーザ変位計50Bの設置位置に位置したところで、移動が停止される。移動停止後、第2のレーザ変位計50Bからレーザ光が出射され、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの鉛直方向の位置(高さLB2)が検出される。
【0300】
なお、この位置(補強板3Bの裏面3Bbの検出位置)が、第2の積層体1Bの剥離起点作成ポジションとなり、この位置で基板2Bと補強板3Bとの間にナイフNが挿入される。
【0301】
以上により、第2のナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量HBを算出するために必要な情報の取得が完了する。
【0302】
制御部(不図示)は、第2のレーザ変位計50Bで検出されたナイフNの刃先の位置情報(LB1)と、同じく第2のレーザ変位計50Bで検出された第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置情報(LB2)と、第2の板厚検出計52Bで検出された第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚情報(TB1、TB2)とに基づいて、第2のナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量HBを算出する。
【0303】
ズレ量HBが算出されると、図16(A)に示すように、そのズレを相殺するように、ナイフNの刃先の位置が調整される。すなわち、算出したズレ量に基づいて、第2のナイフ挿入位置と同じ高さの位置にナイフNの刃先が位置するように、ナイフNが鉛直方向に移動される。
【0304】
ナイフNの刃先の位置の調整が完了すると、図16(B)に示すように、ナイフNが、積層体6に向かって水平に移動する。ここで、ナイフNは、刃先が、第2のナイフ挿入位置、すなわち、第2の積層体1Bの基板2Bと補強板3Bとの間に位置しているので、ナイフNが積層体6に向かって水平に移動すると、ナイフNの刃先が、第2の積層体1Bの基板2Bと補強板3Bとの間に挿入される。これにより、第2の積層体1Bに剥離起点が作成される。
【0305】
ナイフNは、第2の積層体1Bに対して、所定量挿入されると、移動が停止する。移動停止後、ナイフNは、逆方向(積層体6から離れる方向)に移動し、図16(C)に示すように、ナイフ待機位置に復帰する。
【0306】
ナイフNがナイフ待機位置に復帰すると、図16(C)に示すように、テーブル112がテーブル待機位置に復帰する。
【0307】
以上の工程で、第2の積層体1Bに剥離起点が作成される。続けて、第1の積層体1Aに対する剥離起点の作成処理が行われる。
【0308】
まず、図17(A)に示すように、ナイフNがレーザ変位計50の設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。また、これと同時に第1のレーザ変位計50Aからレーザ光が出射され、刃先の位置の検出が開始される。ナイフNは、刃先が第1のレーザ変位計50Aの設置位置を所定量通過したところで、移動が停止される。これにより、刃先を含むナイフNの先端部分が、第1のレーザ変位計50Aから出射されるレーザ光によって走査され、第1の基準面を基準とした、ナイフNの刃先の鉛直方向の位置(高さLA1)が検出される。
【0309】
ナイフNの刃先の位置の検出が完了すると、レーザ光の出射が停止される。また、ナイフNが水平に移動して、図17(B)に示すように、ナイフ待機位置に復帰する。
【0310】
次に、積層体6が第1の板厚検出計52Aの設置位置(板厚の検出位置)に向かって水平に移動する。図17(B)に示すように、積層体6は、所定の検出対象部位が、第1の板厚検出計52Aの設置位置に位置したところで、移動が停止される。移動停止後、第1の板厚検出計52Aから検査光が出射され、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚が検出される。
【0311】
ここで、補強板3Aの表面3Aaに樹脂層4Aが備えられている場合は、補強板3A自体の板厚TA1と、樹脂層4Aを含めた板厚TA2とが、補強板3Aの板厚として、第1の板厚検出計52Aにより検出される。
【0312】
また、補強板3Aの表面3Aaに樹脂層4Aが備えられていない場合は、補強板3A自体の板厚TA1が、補強板3Aの板厚として、第1の板厚検出計52Aにより検出される。
【0313】
第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚の検出が完了すると、積層体6が第1のレーザ変位計50Aの設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。図17(C)に示すように、積層体6は、上記検出対象部位が、第1のレーザ変位計50Aの設置位置に位置したところで、移動が停止される。移動停止後、第1のレーザ変位計50Aからレーザ光が出射され、第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの鉛直方向の位置(高さLA2)が検出される。
【0314】
なお、この位置(補強板3Aの裏面3Abの検出位置)が、第1の積層体1Aの剥離起点作成ポジションとなり、この位置で基板2Aと補強板3Aとの間にナイフNが挿入される。
【0315】
以上により、第1のナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量HAを算出するために必要な情報の取得が完了する。
【0316】
制御部(不図示)は、第1のレーザ変位計50Aで検出されたナイフNの刃先の位置情報(LA1)と、同じく第1のレーザ変位計50Aで検出された第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの位置情報(LA2)と、第1の板厚検出計52Aで検出された第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚情報(TA1、TA2)とに基づいて、第1のナイフ挿入位置に対するナイフNの刃先の位置のズレ量HAを算出する。
【0317】
ズレ量HAが算出されると、図18(A)に示すように、そのズレを相殺するように、ナイフNの刃先の位置が調整される。すなわち、算出したズレ量に基づいて、第1のナイフ挿入位置と同じ高さの位置にナイフNの刃先が位置するように、ナイフNが鉛直方向に移動される。
【0318】
ナイフNの刃先の位置の調整が完了すると、図18(B)に示すように、ナイフNが、積層体6に向かって水平に移動する。ここで、ナイフNは、刃先が、第1のナイフ挿入位置、すなわち、第1の積層体1Aの基板2Aと補強板3Aとの間に位置しているので、ナイフNが積層体6に向かって水平に移動すると、ナイフNの刃先が、第1の積層体1Aの基板2Aと補強板3Aとの間に挿入される。これにより、第1の積層体1Aに剥離起点が作成される。
【0319】
ナイフNは、第1の積層体1Aに対して、所定量挿入されると、移動が停止する。移動停止後、ナイフNは、逆方向(積層体6から離れる方向)に移動し、図18(C)に示すように、ナイフ待機位置に復帰する。
【0320】
ナイフNがナイフ待機位置に復帰すると、図18(C)に示すように、テーブル112がテーブル待機位置に復帰する。
【0321】
以上の工程で、第1の積層体1Aに剥離起点が作成される。この後、テーブル112による積層体6の吸着が解除され、テーブル112から積層体6が回収される。
【0322】
以上一連の工程で表裏両面に補強板3A、3Bを備えた積層体6に対する剥離起点の作成が完了する。
【0323】
本実施の形態の剥離起点作成装置200によれば、表裏両面に補強板3A、3Bを備えた積層体6であっても、裏返しの作業を行うことなく、1度に全ての剥離起点を作成することができる。
【0324】
なお、上記の例では、表裏両面に補強板3A、3Bを備えた積層体6の剥離作業を行う場合を例に説明したが、図1に示した積層体1のように、片側にのみ補強板3を備えた積層体1を剥離する場合にも本実施の形態の剥離起点作成装置200は使用することができる。
【0325】
また、上記の作成手順では、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚と、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を別々に検出しているが、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚を検出する際、同時に第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を検出する構成とすることもできる。すなわち、上記構成の剥離起点作成装置200では、第1の板厚検出計52Aと第2の板厚検出計52Bとが同軸上に設置されているため、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚を第1の板厚検出計52Aで検出する際、同時に第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を第2の板厚検出計52Bで検出することができる。したがって、第1の積層体1Aの補強板3Aの板厚を検出する際に、同時に第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を検出する構成としてもよい。
【0326】
[剥離起点作成装置の第3の実施の形態]
図19は、剥離起点作成装置の第3の実施の形態の要部の概略構成図である。
【0327】
上記実施の形態の剥離起点作成装置100、200は、位置検出手段としてのレーザ変位計50(50A、50B)、及び、板厚検出手段としての板厚検出計52(52A、52B)が、一定位置に固定して設置され、その設置位置に積層体1、6、ナイフNが移動して、ナイフNの刃先の位置の検出等が行われているが、レーザ変位計50(50A、50B)、及び、板厚検出計52(52A、52B)を移動させて、ナイフNの刃先の位置の検出等を行う構成とすることもできる。
【0328】
図19は、レーザ変位計50A、50B、及び、板厚検出計52A、52Bを移動させて、ナイフNの刃先の位置の検出等を行う構成の一例を示している。
【0329】
第1のレーザ変位計50Aと第1の板厚検出計52Aとは、ともに水平に移動する第1の移動体310A(位置検出手段移動手段)に設置されて、水平方向に移動可能に設けられている。
【0330】
また、第2のレーザ変位計50Bと第2の板厚検出計52Bとは、ともに水平に移動する第2の移動体310B(位置検出手段移動手段)に設置されて、水平方向に移動可能に設けられている。
【0331】
第1のレーザ変位計50AでナイフNの刃先の位置を検出する場合は、第1のレーザ変位計50AをナイフNの設置位置に水平に移動させて、ナイフNの刃先の位置を検出する。この際、第1のレーザ変位計50Aから出射されるレーザ光によって、ナイフNの刃先が走査されるように、第1のレーザ変位計50Aを移動させて、ナイフNの刃先の位置を検出する。
【0332】
同様に、第1のレーザ変位計50Aで第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの位置を検出する場合は、第1のレーザ変位計50Aを補強板3Aの検出対象部位に移動させて、第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの位置を検出する。
【0333】
また、第2のレーザ変位計50BでナイフNの刃先の位置を検出する場合は、第2のレーザ変位計50BをナイフNの設置位置に水平に移動させて、ナイフNの刃先の位置を検出する。この際、第2のレーザ変位計50Bから出射されるレーザ光によって、ナイフNの刃先が走査されるように、第2のレーザ変位計50Bを移動させて、ナイフNの刃先の位置を検出する。
【0334】
同様に、第2のレーザ変位計50Bで第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置を検出する場合は、第2のレーザ変位計50Bを補強板3Bの検出対象部位に移動させて、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置を検出する。
【0335】
なお、本例では、第1のレーザ変位計50Aと第1の板厚検出計52Aとを同じ第1の移動体310Aに設置して、同時に移動する構成としているが、各々独立して移動する構成とすることもできる。第2のレーザ変位計50Bと第2の板厚検出計52Bについても同様であり、各々独立して移動する構成とすることもできる。
【0336】
なお、このようにレーザ変位計50(50A、50B)と、板厚検出計52(52A、52B)とが移動する構成では、積層体1、6とナイフNとをレーザ変位計50(50A、50B)の検出位置、及び、板厚検出計52(52A、52B)の検出位置に移動させる必要がないので、積層体1、6とナイフNとは、少なくとも一方が水平方向に移動できる構成であればよい。すなわち、積層体1、6とナイフNとは、相対的に水平方向に移動できる構成であればよく、少なくとも一方が水平方向に移動できればよい。
【0337】
上記実施の形態の剥離起点作成装置100、200では、積層体1、6とナイフNとを相対的に移動させる移動手段として、テーブル駆動ユニット116(積層体移動手段)と、ナイフ駆動ユニット118(ナイフ移動手段)を備えているが、レーザ変位計50(50A、50B)と、板厚検出計52(52A、52B)とが移動する構成では、移動手段として、いずれか一方が備えられていればよい。
【0338】
また、上記実施の形態の剥離起点作成装置100、200では、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を調整するために、ナイフNを鉛直方向に移動させる構成としているが、積層体1、6を鉛直方向に移動可能に支持し(たとえば、テーブル112を鉛直方向に移動可能に支持する。)、積層体1、6を鉛直方向に移動させて、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を調整する構成とすることもできる。あるいは、ナイフNと、積層体1、6の双方を鉛直方向に移動させて、ナイフ挿入位置に対するナイフの刃先の位置を調整する構成とすることもできる。
【0339】
[剥離起点作成装置の第4の実施の形態]
図20は、剥離起点作成装置の第4の実施の形態の要部の概略構成図である。
【0340】
上記実施の形態の剥離起点作成装置100、200は、ナイフNの刃先の位置と、補強板3(3A、3B)の裏面3b(3Ab、3Bb)の位置とを同じレーザ変位計50(50A、50B)で検出する構成としているが、図20に示すように、ナイフNの刃先の位置と、補強板3A、3Bの裏面3Ab、3Bbの位置とは、別のレーザ変位計50Aa、50Ab、50Ba、50Bbで検出する構成とすることもできる。
【0341】
図20において、第1の刃先検出用のレーザ変位計50Aa(上側の第1位置検出手段)は、ナイフNの移動経路上に設置され、第1の積層体1Aに剥離起点を作成する際に、所定の基準面(上側の第1基準面)を基準としたナイフNの刃先の鉛直方向の位置を検出する。また、第1の裏面検出用のレーザ変位計50Ab(上側の第2位置検出手段)は、積層体6の移動経路上に設置され、所定の基準面(上側の第2基準面)を基準とした第1の積層体1Aの補強板3Aの裏面3Abの鉛直方向の位置を検出する。また、第2の刃先検出用のレーザ変位計50Ba(下側の第1位置検出手段)は、ナイフNの移動経路上に設置され、第2の積層体1Bに剥離起点を作成する際に、所定の基準面(下側の第1基準面)を基準としたナイフNの刃先の鉛直方向の位置を検出する。また、第2の裏面検出用のレーザ変位計50Bb(下側の第2位置検出手段)は、積層体6の移動経路上に設置され、所定の基準面(下側の第2基準面)を基準とした第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの鉛直方向の位置を検出する。
【0342】
なお、このように、ナイフNの刃先の位置と、補強板3A、3Bの裏面3Ab、3Bbの位置とを別のレーザ変位計50Aa、50Ab、50Ba、50Bbで検出する場合も、上記第3の実施の形態と同様に、レーザ変位計50Aa、50Ab、50Ba、50Bbが水平移動する構成とすることもできる。
【0343】
また、刃先検出用のレーザ変位計50Aa、50Ba(第1位置検出手段)の基準面(第1基準面)と、裏面検出用のレーザ変位計50Ab、50Bb(第2位置検出手段)の基準面(第2基準面)とは、必ずしも同じ高さの位置に設定する必要はないが、異なる高さの位置に設定する場合は、その高さ方向(鉛直方向)の位置の差の情報をあらかじめ取得して、ズレ量の算出を行う。
【0344】
[剥離起点作成装置の第5の実施の形態]
図21は、剥離起点作成装置の第5の実施の形態の要部の概略構成図である。
【0345】
上記実施の形態の剥離起点作成装置100、200では、ナイフNの刃先の位置、及び、補強板3(3A、3B)の裏面3b(3Ab、3Bb)の位置を検出する位置検出手段として、スポット光としてのレーザ光を出射するレーザ変位計50(50A、50B)を使用しているが、一定の幅を有する帯状のレーザ光を出射する公知の二次元レーザ変位計300A、300Bを使用して、ナイフNの刃先の位置、及び、補強板3(3A、3B)の裏面3b(3Ab、3Bb)の位置を検出することもできる。
【0346】
この二次元レーザ変位計300A、300Bを使用することにより、ナイフNの刃先の位置を検出する際、ナイフNの刃先をレーザ光で走査させなくても、ナイフNの刃先の位置を精度よく検出することができる。すなわち、図20に示すように、二次元レーザ変位計300B(300A)からは、検出光として帯状のレーザ光が出射され、この帯状のレーザ光の照射範囲内にナイフNの刃先を位置させることにより、ナイフNの刃先の位置を検出することができる。これにより、ナイフNの水平移動に伴う測定誤差の発生を防止することができる。
【0347】
また、この二次元レーザ変位計300A、300Bを使用することにより、ナイフNの刃先の位置と、補強板3(3A、3B)の裏面3b(3Ab、3Bb)の位置とを同時に検出することもできる。これにより、ナイフNの刃先の位置のズレ量の算出に要する時間を短縮することができ、全体の作業時間を短縮することができる。
【0348】
さらに、ナイフNの刃先の位置と、補強板3(3A、3B)の裏面3b(3Ab、3Bb)の位置とを同時に検出することができることにより、次のように、ナイフNの刃先の位置調整を行うことができる。
【0349】
図22及び図23は、第4の剥離起点作成装置を用いたナイフNの刃先の位置調整方法の一例の説明図である。
【0350】
なお、図22(A)は、初期状態、図22(B)は、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚を検出している状態、図22(C)は、ナイフNの刃先の位置、及び、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置を検出している状態を示している。
【0351】
また、図23(A)は、ナイフNの刃先の位置と、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置とを位置合わせしている状態、図23(B)は、第2のナイフ挿入位置に対して、ナイフNの刃先の位置を調整した状態、図23(C)は、第2の積層体1Bに対してナイフNを挿入している状態を示している。
【0352】
図22(A)に示すように、初期状態において、ナイフNは、所定のナイフ待機位置に位置している。また、積層体6がセットされたテーブル112(不図示)は、所定のテーブル待機位置に位置している。
【0353】
まず、図22(B)に示すように、積層体6が第2の板厚検出計52Bの設置位置(板厚の検出位置)に向かって水平に移動する。積層体6は、所定の検出対象部位が、第2の板厚検出計52Bの設置位置に位置したところで、移動が停止される。移動停止後、第2の板厚検出計52Bから検査光が出射され、第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚が検出される。
【0354】
ここで、補強板3Bの表面3Baに樹脂層4Bが備えられている場合は、補強板3B自体の板厚TB1と、樹脂層4Bを含めた板厚TB2とが、補強板3Bの板厚として、第2の板厚検出計52Bにより検出される。
【0355】
また、補強板3Bの表面3Baに樹脂層4Bが備えられていない場合は、補強板3B自体の板厚TB1が、補強板3Bの板厚として、第2の板厚検出計52Bにより検出される。
【0356】
第2の積層体1Bの補強板3Bの板厚の検出が完了すると、積層体6が第2の二次元レーザ変位計300Bの設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。図22(C)に示すように、積層体6は、上記検出対象部位が、第2の二次元レーザ変位計300Bの検出範囲内(帯状に出射されるレーザ光の照射範囲内)に位置したところで、移動が停止される。
【0357】
また、これと同時に、ナイフNが二次元レーザ変位計300Bの設置位置(検出位置)に向かって水平に移動する。図22(C)に示すように、ナイフNは、刃先を含む先端部分が、第2の二次元レーザ変位計300Bの検出範囲内に位置したところで、移動が停止される。
【0358】
積層体6及びナイフNの移動停止後、第2の二次元レーザ変位計300Bから帯状のレーザ光が出射され、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの鉛直方向の位置と、ナイフNの刃先の位置とが同時に検出される。
【0359】
図24は、第2の積層体1Bの補強板3Bの裏面3Bbの位置と、ナイフNの刃先の位置とを同時に検出したときの第2の二次元レーザ変位計300Bの出力の一例を示すグラフである。
【0360】
図24に示すように、レーザ光の照射範囲内に積層体6とナイフNの刃先とを位置させることにより、補強板3Bの裏面3Bbの位置と、ナイフNの刃先の位置とを同時に検出することができる。
【0361】
制御部(不図示)は、図23(A)に示すように、この第2の二次元レーザ変位計300Bで検出される補強板3Bの裏面3Bbの位置の情報と、ナイフNの刃先の位置の情報とを取得し、ナイフNの刃先が、補強板3Bの裏面3Bbと同じ高さの位置に位置するように、ナイフNを鉛直方向に移動させる(第1位置調整工程)。
【0362】
ナイフNの移動後、制御部は、第2の板厚検出計52Bにより検出された補強板3Bの板厚分だけナイフNを鉛直方向に移動させる(第2位置調整工程)。
【0363】
ここで、補強板3Bの表面3Baに樹脂層4が備えられている場合は、(T1+T2)/2だけ、ナイフNを鉛直方向に移動させる。
【0364】
また、補強板3Bの表面3Baに樹脂層4が備えられていない場合は、T1だけ、ナイフNを鉛直方向に移動させる(ナイフ挿入工程)。
【0365】
これにより、図23(B)に示すように、ナイフNの刃先が、第2のナイフ挿入位置に位置する。
【0366】
この後、図24(C)に示すように、ナイフNが、積層体6に向かって水平に移動する。これにより、ナイフNの刃先が、第2の積層体1Bの基板2Bと補強板3Bとの間に挿入され、第2の積層体1Bに剥離起点が作成される。
【0367】
ナイフNは、第2の積層体1Bに対して、所定量挿入されると、移動が停止する。移動停止後、ナイフNは、逆方向(積層体6から離れる方向)に移動し、ナイフ待機位置に復帰する。
【0368】
他方側の積層体(第1の積層体1A)についても、同様の手順でナイフNの刃先の位置調整を行い、剥離起点を作成する。
【0369】
このように、二次元レーザ変位計300A、300Bを用いて、ナイフNの刃先の位置と、補強板3(3A、3B)の裏面3b(3Ab、3Bb)の位置とを同時に検出することにより、いわゆるフィードバック制御を用いたナイフNの位置調整を行うことができる。これにより、レーザ変位計の絶対値精度が不十分であっても、フィードバック制御により、ナイフNを補強板の裏面と等しい高さの位置に移動させることができ、安定したナイフNの挿入が可能になる。
【0370】
なお、上記フィードバック制御を用いたナイフNの位置調整は、ナイフNの刃先の位置と補強板3Bの裏面3Bbの位置と同時に検出できれば、実施することができるので、二次元レーザ変位計以外の位置検出手段を用いて実施することもできる。したがって、たとえば、ナイフNの刃先の位置と、補強板3Bの裏面3Bbの位置とを別の位置検出手段で検出する構成とすることもできる(たとえば、ナイフNの刃先の位置を第1のレーザ変位計(第1位置検出手段)で検出し、補強板3Bの裏面3Bbの位置を第2のレーザ変位計(第2位置検出手段)で検出する構成として、ナイフNの刃先の位置と、補強板3Bの裏面3Bbの位置とを同時に検出できる構成とする。)。
【0371】
[剥離起点作成装置のその他の実施の形態]
上記一連の実施の形態では、剥離起点作成装置に補強板3(3A、3B)の板厚検出手段を組み込んだ構成としているが、補強板3の板厚は、事前に検出して取得する構成とすることもできる。この場合、板厚検出手段としての板厚検出計は、剥離起点作成装置には不要となる。
【0372】
なお、事前に補強板3の板厚を検出する場合、剥離起点作成装置外で板厚を検出することとなるが、この場合、補強板3の裏面3b(3Ab、3Bb)を検出する位置(検出対象部位)、又は、その近傍位置で板厚を検出することが好ましい。
【0373】
また、図2に示す積層体6のように、積層体1の表裏両面に補強板3A、3Bが備えられ、その両方を剥離する場合、一方の剥離起点は、コーナ部の1つに作成し、他方の剥離起点は、そのコーナ部の対角線上に位置するコーナ部に作成することが好ましい。
【0374】
図25は、剥離起点の作成位置を説明する説明図である。
【0375】
図25に示すように、表裏両面に補強板3A、3Bを備えた積層体6の場合、第1の積層体1Aの剥離起点(第1の剥離起点)は、積層体6のコーナ部6Cに作成し、第2の積層体1Bの剥離起点(第2の剥離起点)は、そのコーナ部6Cの対角線上に位置するコーナ部6Dに作成する。
【0376】
この場合、剥離作業も第1の積層体1Aの補強板3Aの剥離は、コーナ部6Cからコーナ部6Dに向けて補強板3Aを撓み変形させて剥離し、第2の積層体1Bの補強板3Bの剥離は、コーナ部6Dからコーナ部6Cに向けて補強板3Bを撓み変形させて剥離する。
【0377】
また、上記実施の形態では、便宜上、積層体の形状を矩形状、特に正方形状としているが、剥離対象とする積層体の形状は特に限定されるものではない。また、剥離起点の作成位置についても、特に限定されるものではない。ただし、積層体が、矩形状の場合は、コーナ部に剥離起点を作成することが好ましい。
【0378】
また、補強板を剥離する際の剥離方向(撓み変形させる方向)については、矩形状の積層体のコーナ部に剥離起点を作成した場合、コーナ部で直交する各辺に対して45度の方向に設定することが好ましい(積層体の外形が正方形の場合、対角線方向)。
【0379】
また、上記実施の形態の剥離起点作成装置では、積層体とナイフの双方が水平方向に移動できるように構成されているが、積層体とナイフとは、相対的に水平移動できる構成であればよい。すなわち、互いに平行に支持された積層体とナイフの少なくとも一方が移動して、積層体の基板と補強板との間にナイフが挿入できる構成であればよい。したがって、積層体は、固定されていてもよい。
【0380】
また、上記実施の形態では、積層体を対角線方向に水平移動できるように構成しているが、積層体を水平移動させる方向は特に限定されるものではない。最終的に所定の剥離起点作成ポジション(ナイフが挿入されて剥離起点が作成される位置)に移動できる構成であればよい。
【0381】
また、上記実施の形態では、剥離起点の作成処理と、実際の剥離処理とを各々別々の装置で実施する構成としているが、剥離起点の作成から実際の剥離処理までを1台の装置で実施する構成とすることもできる。これは、たとえば、図3に示した剥離装置10に図11に示した剥離起点作成装置100を組み込むことにより実現することができる。この場合、テーブル112に代えてステージ14で積層体が支持される。
【0382】
また、剥離装置に剥離起点作成装置を一体的に組み込む場合、剥離起点の作成から実際の剥離処理までを連続して行うことができる。この場合、たとえば、ナイフを挿入した状態で剥離処理を開始することもできる。
【0383】
また、上記実施の形態では、ナイフNの刃先の位置、及び、補強板3の裏面の位置を検出する位置検出手段として、レーザ変位計を用いているが、位置検出手段は、これに限定されるものではない。所定の検出位置に位置した物体に対して、所定の基準面(補強板3の裏面3bと平行に設定される基準面)を基準として、その基準面と垂直な方向における位置を検出する手段(特に非接触で検出する手段)であれば、他の検出手段を用いることもできる。
【0384】
また、二次元レーザ変位計についても、同様の検出(所定長さを有する検出ライン上に位置した物体に対して、所定の基準面を基準として、基準面と垂直な方向における位置の検出)ができる限り、その他の検出手段を用いることができる。
【0385】
また、上記実施の形態では、補強板の板厚を検出する板厚検出手段として、分光干渉法によって板厚を検出する板厚検出計を使用しているが、その他の構成の板厚検出手段を用いることもできる。
【0386】
また、補強板の板厚の検出は、補強板に基板を貼り合わせる前に実施することもできる。
【0387】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の範囲と精神を逸脱することなく、様々な修正や変更を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2013年7月1日出願の日本特許出願2013−138223に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0388】
N…ナイフ、1…積層体、1A…第1の積層体、1B…第2の積層体、1C…積層体のコーナ部、1D…積層体のコーナ部、2…基板、2a…基板の表面、2b…基板の裏面、2A…基板、2Aa…基板の表面、2Ab…基板の裏面、2B…基板、2Ba…基板の表面、2Bb…基板の裏面、3…補強板、3a…補強板の表面、3b…補強板の裏面、3A…補強板、3Aa…補強板の表面、3Ab…補強板の裏面、3B…補強板、3Ba…補強板の表面、3Bb…補強板の裏面、4…樹脂層、4A…樹脂層、4B…樹脂層、6…積層体、6C…積層体のコーナ部、6D…積層体のコーナ部、7…液晶層、10…剥離装置、12…弾性シート、14…ステージ、16…弾性シート、18…可撓性板、18A…可撓性板の本体部、18B…可撓性板の突出部、18C…可撓性板の突出部、20…架台、22…軸、24…軸受、26…サーボシリンダ、26A…サーボシリンダのシリンダ本体、26B…サーボシリンダのピストン、28…軸、30…軸受、32…軸、34…軸受、36…搬出装置、38…吸着パッド、50…レーザ変位計、50A…第1のレーザ変位計、50B…第2のレーザ変位計、50Aa…第1の刃先検出用のレーザ変位計、50Ab…第1の裏面検出用のレーザ変位計、50Ba…第2の刃先検出用のレーザ変位計、50Bb…第2の裏面検出用のレーザ変位計、52…板厚検出計、52A…第1の板厚検出計、52B…第2の板厚検出計、100…剥離起点作成装置、102…ベース、104…架台、112…テーブル、114…ホルダ、116…テーブル駆動ユニット、118…ナイフ駆動ユニット、120…位置調整ユニット、122…テーブル支持架台、132…テーブル駆動ユニットの本体フレーム、134…テーブル駆動ユニットのレール、136…テーブル駆動ユニットのスライダ、138…テーブル駆動ユニットのネジ棒、140…テーブル駆動ユニットのモータ、142…ナイフ駆動ユニットの本体フレーム、144…ナイフ駆動ユニットのレール、146…ナイフ駆動ユニットのスライダ、148…ナイフ駆動ユニットのネジ棒、150…ナイフ駆動ユニットのモータ、152…位置調整ユニットの本体フレーム、154…位置調整ユニットのレール、156…位置調整ユニットのスライダ、158…位置調整ユニットのネジ棒、160…位置調整ユニットのモータ、200…剥離起点作成装置、300A…第1の二次元レーザ変位計、300B…第2の二次元レーザ変位計、310A…第1の移動体、310B…第2の移動体
図1
図2
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図5
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