特許第6071042号(P6071042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6071042
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】寸法測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20170123BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20170123BHJP
   G01B 9/02 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   G01B11/24 D
   G01B11/02 G
   G01B9/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-235581(P2012-235581)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-85269(P2014-85269A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】青戸 智浩
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−043954(JP,A)
【文献】 特開平06−317534(JP,A)
【文献】 特開平01−143334(JP,A)
【文献】 特開平06−148086(JP,A)
【文献】 特開2000−193443(JP,A)
【文献】 特開2008−309668(JP,A)
【文献】 特開2004−061254(JP,A)
【文献】 特開2011−174920(JP,A)
【文献】 特開2007−024677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/00−11/30
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/61
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低コヒーレンス光を放射する光源と、
前記光源から放射された低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
前記光分割手段から出射される前記参照光を反射する参照光反射体と、
前記参照光反射体を移動させて前記参照光の光路長を変更する参照光路長変更手段と、
前記参照光反射体の位置を検出する参照光反射体位置検出手段と、
前記光分割手段から出射される前記測定光を周期的あるいは定期的に偏向させる偏向手段と、
前記偏向手段で偏向された前記測定光を平らな像面に集光させるfθレンズと、
前記fθレンズを介して測定対象物に照射される前記測定光の照射位置を検出する照射位置検出手段と、
前記測定光を偏向させる方向に応じて、前記測定光の光路長の変化量と同じ変化量で前記参照光の光路長が変化するように、前記参照光の光路長を補正する手段と、
前記測定対象物で反射した前記測定光と前記参照光反射体で反射した前記参照光との干渉光を検出する光検出手段と、
前記光検出手段で検出される干渉光の強度が最大となるときの前記参照光反射体の位置を前記測定光の照射位置ごとに検出して、前記測定光の照射位置ごとの前記測定対象物の寸法を算出する演算手段と、
を有する寸法測定装置。
【請求項2】
前記参照光の光路長を補正する手段は、前記参照光の光路中に配置された補正用の光学系で構成される請求項1に記載の寸法測定装置。
【請求項3】
前記測定光を前記偏向手段で偏向させることによって生じる前記測定光の光路長の変化に基づく寸法の測定データの補正情報を記憶する補正情報記憶手段を更に備え、前記演算手段で算出した寸法の測定データを前記補正情報で補正して真の測定データとする請求項1又は2に記載の寸法測定装置。
【請求項4】
前記光源は中心波長が紫外線領域に属する低コヒーレンス光を放射する請求項1から3のいずれか1項に記載の寸法測定装置。
【請求項5】
前記偏向手段がポリゴンミラー又はガルバノミラーである請求項1からのいずれか1項に記載の寸法測定装置。
【請求項6】
前記測定対象物が載置され、前記測定光による走査方向と直交する方向に前記測定対象物を移動させる測定対象物駆動ステージと、
前記測定対象物駆動ステージの位置を検出するステージ位置検出手段と、
を更に備える請求項1からのいずれか1項に記載の寸法測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は寸法測定装置に係り、特に低コヒーレンス干渉の原理を利用して測定対象物の寸法を精密に測定する寸法測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の寸法を非接触で精密に測定する方法として、低コヒーレンス干渉の原理を利用した測定方法が知られている。この方法では、スペクトル波長が広い白色光源、いわゆる低コヒーレンス光源から放射される光を測定光と参照光とに分割し、測定光を測定対象物に照射し、測定対象物で反射した測定光と参照光とを干渉させて、測定光を照射した位置における測定対象物の寸法(表面位置)を測定する。したがって、連続的な面の形状を測定するためには、測定光の照射位置を変えること、すなわち、測定光による走査が必要とされる。
【0003】
特許文献1には、反射面の向きを調節できるミラー(走査鏡)によって測定光の向きを変えることにより、測定光の照射位置を変える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−43954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、ミラーで測定光の向きを変えることにより、測定面に対して測定光が斜めに入射するという欠点がある。この結果、測定光反射光の強度が落ち、測定感度が低下するとともに、測定対象に対する測定光サイズが広がってしまうため、高精度な測定ができないという問題がある。
【0006】
また、従来、低コヒーレンス干渉の原理を利用した測定では、低コヒーレンス光源として、ハロゲンランプやLED(Light Emitting Diode)などの可視光域の光源、又は、SLD(Super Luminescent Diode)、ASE(Amplified Spontaneous Emission)、スーパーコンテニューム光源等の中心波長が赤外線領域の光源を使用している。しかし、このような光源は、測定対象物の表面で集光される測定光のスポットサイズが光源の波長の回折限界により制限される結果、横方向(測定光軸に対して垂直な方向)の分解能を向上させることができないという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、測定対象物の寸法を広範囲にわたって高精度に測定することができる寸法測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0009】
[1]第1の態様は、低コヒーレンス光を放射する光源と、光源から放射された低コヒーレンス光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、光分割手段から出射される参照光を反射する参照光反射体と、参照光反射体を移動させて参照光の光路長を変更する参照光路長変更手段と、参照光反射体の位置を検出する参照光反射体位置検出手段と、光分割手段から出射される測定光を周期的あるいは定期的に偏向させる偏向手段と、偏向手段で偏向された測定光を平らな像面に集光させるfθレンズと、fθレンズを介して測定対象物に照射される測定光の照射位置を検出する照射位置検出手段と、測定対象物で反射した測定光と参照光反射体で反射した参照光との干渉光を検出する光検出手段と、光検出手段で検出される干渉光の強度が最大となるときの参照光反射体の位置を測定光の照射位置ごとに検出して、測定光の照射位置ごとの測定対象物の寸法を算出する演算手段と、を有する寸法測定装置である。
【0010】
本態様によれば、偏向手段で偏向された測定光がfθレンズを介して測定対象物に照射される。これにより、測定対象物の測定面に対して測定光を垂直に入射させることができ、焦点サイズが最小になる条件で測定反射光を検出できるため、感度を向上させることができる。
【0011】
第2の態様は、上記第1の態様の寸法測定装置において、測定光を偏向手段で偏向させることによって生じる測定光の光路長の変化に基づく寸法の測定データの補正情報を記憶する補正情報記憶手段を更に備え、演算手段で算出した寸法の測定データを補正情報で補正して真の測定データとする態様である。
【0012】
本態様によれば、測定光を偏向手段で偏向させることによって生じる測定光の光路長の変化に基づく測定データのズレが補正される。これにより、更に高精度な測定を行うことができる。
【0013】
第3の態様は、上記第1又は2の態様の寸法測定装置において、光源は中心波長が紫外線領域に属する低コヒーレンス光を放射する態様である。
【0014】
本態様によれば、中心波長が紫外線領域(波長400nm〜200nm)の低コヒーレンス光を放射する光源が用いられる。これにより測定光のスポットサイズを小さくすることができ(0.2μm程度)、横方向の分解能を向上させることができる。特に、放射する光の中心波長が深紫外線領域(波長300nm〜200nm)の光源を使用することにより、測定光をナノメートルオーダーのスポットサイズにすることができる。また、測定光のスポットサイズを小さくすることにより、測定対象物からの反射光を増大させることができ、高感度な測定を行うことができる。更に垂直方向の精度も向上(理論的には分解能が光源中心波長の2乗に比例するため、光源波長が短くなれば干渉縞分解能も向上)する。
【0015】
第4の態様は、上記第1から3のいずれか1の態様の寸法測定装置において、偏向手段がポリゴンミラー又はガルバノミラーである態様である。
【0016】
本態様によれば、偏向手段がポリゴンミラー又はガルバノミラーで構成される。これにより、測定光を高速高精度に走査偏向させることができる。
【0017】
第5の形態は、上記第1から4のいずれか1の態様の寸法測定装置において、測定対象物が載置され、測定光による走査方向と直交する方向に測定対象物を移動させる測定対象物駆動ステージと、測定対象物駆動ステージの位置を検出するステージ位置検出手段と、を更に備える態様である。
【0018】
本態様によれば、測定対象物が、測定光による走査方向と直交する方向に移動可能に設けられる。これにより、たとえば、偏向手段による測定光の偏向方向が一方向のみの場合であっても、測定対象物の面の三次元形状を測定することができる。すなわち、たとえば、測定光で一回走査(いわゆる主走査)されるたびに測定対象物をその走査方向と直交する方向に所定量移動させる(いわゆる副走査)構成とする。これにより、面の各位置での寸法を測定することができ、面の三次元形状を測定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定対象物の寸法を広範囲にわたって高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る寸法測定装置の一実施形態を示す概略構成図
図2】低コヒーレンス光源が放射する光のスペクトル分布例を示す図
図3】参照光走査光学系の概略構成図
図4】光検出器から出力される干渉信号の例を示す図
図5】本発明に係る寸法測定装置のその他の実施形態を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0022】
[装置構成]
図1は、本発明に係る寸法測定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【0023】
同図に示すように、本実施の形態の寸法測定装置10は、主として、低コヒーレンス光源12と、バンドルファイバ14と、コリメータ16と、ビームスプリッタ18と、測定対象物走査光学系20と、参照光走査光学系22と、光検出器24と、測定対象物駆動ステージ26、コントローラ28とを備えて構成される。
【0024】
低コヒーレンス光源12は、コヒーレンス長が短く、広帯域な波長の光(低コヒーレンス光)を放射する光源である。
【0025】
図2は、低コヒーレンス光源が放射する光のスペクトル分布例を示す図である。
【0026】
同図に示すように、低コヒーレンス光源12から放射される光の発光スペクトルは、波長ΛMを中心として一定の拡がりをもった発光スペクトルとなる。本実施形態では、発光スペクトルが正規分布に近い強度分布を持つ光源が好ましい。
【0027】
特に、本実施の形態の寸法測定装置10では、中心波長ΛMが紫外線領域(波長400nm〜200nm)に光源が用いられる。このような光源を使用することにより、両凸レンズなどの集光光学素子を用いることによって測定光のスポットサイズを、従来の低コヒーレンス法による集光光学系に比べ小さくすることができ(0.2μm程度)、横方向(測定光軸に対して垂直な方向)の分解能を向上させることができる。特に、中心波長ΛMが深紫外線領域(波長300nm〜200nm)に属する光を放出可能な光源を使用することにより、測定光をナノメートルオーダーのスポットサイズにすることができる。
【0028】
低コヒーレンス光源12としては、たとえば、キセノンランプ、広帯域紫外レーザ光源、LED(Light Emitting Diode)などを用いることができる。
【0029】
バンドルファイバ14は、低コヒーレンス光源12から放出される光をコリメータ16に伝播する。
【0030】
コリメータ16は、バンドルファイバ14から出射される発散光を平行光にし、ビームスプリッタ18に入射する。
【0031】
ビームスプリッタ18は、光分割手段として機能し、コリメータ16から出射される光を測定光と参照光とに分割する。測定光は測定対象物走査光学系20に入射され、参照光は参照光走査光学系22に入射される。また、ビームスプリッタ18は、測定対象物走査光学系20から戻る光(測定対象物Oで反射した測定光)と参照光走査光学系22から戻る光(CCP40で反射した参照光)とを一つに合わせ光学的に干渉させて光検出器24に入射する。
【0032】
測定対象物走査光学系20は、測定対象物Oの表面が測定光によって走査されるように、ビームスプリッタ18から出射される測定光を周期的あるいは定期的に偏向させる。測定対象物走査光学系20は、主として、ポリゴンミラー30と、fθレンズ32と、エンコーダ34とを備えて構成される。
【0033】
ポリゴンミラー30は、複数の反射面を有する多面鏡であり、測定光を周期的に変化させるための偏向手段として機能する。ポリゴンミラー30は、モータ36に駆動されて回転する。ビームスプリッタ18から出射される測定光は、回転するポリゴンミラー30の反射面に入射して、周期的に偏向される。これにより、測定光の照射位置が周期的に変動する。
【0034】
fθレンズ32は、ポリゴンミラー30で偏向された測定光を平らな像面に集光させる。このfθレンズ32を介して測定光を測定対象物Oの表面に照射することにより、ポリゴンミラー30で偏向された測定光を測定対象物Oに対して垂直に入射させることができる。
【0035】
エンコーダ34は、ポリゴンミラー30の回転角度を検出する。エンコーダ34は、コントローラ28とともに測定光の照射位置を検出するための照射位置検出手段を構成する。エンコーダ34で検出されるポリゴンミラー30の回転角度情報は、コントローラ28に出力される。コントローラ28は、このポリゴンミラー30の回転角度情報に基づいて、測定光の照射位置を検出する。
【0036】
参照光走査光学系22は、ビームスプリッタ18から出射される参照光の光路長を変化させる。
【0037】
図3は、参照光走査光学系の概略構成図である。
【0038】
同図に示すように、参照光走査光学系22は、主として、CCP(Corner Cube Prism:コーナーキューブプリズム)40と、直動ステージ42と、リニアスケール44と、スケールヘッド46とを備えて構成される。
【0039】
CCP40は、参照光反射体として機能し、ビームスプリッタ18から出射される参照光を反射して、ビームスプリッタ18に入射する。
【0040】
直動ステージ42は、参照光路長変更手段として機能し、CCP40を移動させて参照光の光路長を変化させる。図3に示すように、CCP40は、直動ステージ42に設けられる。直動ステージ42は、ガイドレール48上に設けられる。ガイドレール48は、ビームスプリッタ18から出射される参照光の光軸の平行同軸性を保つように配設される。直動ステージ42は、図示しない駆動手段によって駆動されてガイドレール48上を往復移動する。直動ステージ42がガイドレール48上を往復移動することにより、CCP40がビームスプリッタ18から出射される参照光の光軸に沿って往復移動する。これにより、参照光の光路長が変化する。
【0041】
リニアスケール44とスケールヘッド46は、CCP40の位置を検出するための参照光反射体位置検出手段を構成する。リニアスケール44は、ガイドレール48に沿って移動する直動ステージ42の位置検出が可能となるように配設される。スケールヘッド46は、直動ステージ42に設けられる。直動ステージ42が移動すると、スケールヘッド46がリニアスケール44に沿って移動する。スケールヘッド46でリニアスケール44の位置情報を読み取り、CCP40の位置を検出する。スケールヘッド46で読み取られたCCP40の位置情報は、コントローラ28に出力される。
【0042】
光検出器24は、光検出手段を構成する。測定対象物Oで反射した測定光とCCP40で反射した参照光は、ビームスプリッタ18によって一つに合わされて干渉し、光検出器24に入射する。光検出器24は、この測定対象物Oで反射した測定光とCCP40で反射した参照光との干渉光の強度を検出し、電気信号(干渉信号)として出力する。
【0043】
ここで、光検出器24で検出される干渉光の強度は、CCP40の移動により変化する。すなわち、干渉光の強度は、参照光と測定光との光路長差により変化するので、CCP40を移動させて参照光の光路長を変化させると、測定光と参照光との光路長差が変化して、干渉光の強度が変化する。測定光と参照光との光路長差がゼロのとき、干渉光の強度振幅が最大になる。
【0044】
光検出器24としては、たとえば、CCDやC−MOSなどの撮像デバイス、フォトダイオード等を使用することができる。光検出器24は、所定の時間間隔でサンプリングして、各サンプリング時点における検出光量を電気信号に変換し、干渉信号としてコントローラ28に出力する。
【0045】
なお、本実施の形態の寸法測定装置10では、低コヒーレンス光源12として中心波長が紫外線領域の光源を使用するので、紫外線領域の感度が高い検出器を使用することが好ましい。
【0046】
また、本実施の形態の寸法測定装置10は、測定対象物Oの表面を走査して測定対象物Oの寸法を高速で測定するので、1Mhz以上の時間分解能を有する検出器を使用することが好ましい。
【0047】
測定対象物駆動ステージ26は、測定対象物Oが載置されるステージであり、互いに直交するX方向(図1においてX方向)とY方向(図1において紙面と直交する方向)とに移動可能に設けられる(XY平面を移動可能に設けられる)。測定対象物駆動ステージ26は、図示しないステージ駆動手段に駆動されて、X方向とY方向とに移動する(XY平面を移動する)。
【0048】
測定対象物駆動ステージ26の位置は、図示しないステージ位置検出手段で検出され、検出された位置情報はコントローラ28に出力される。
【0049】
fθレンズ32から出射される測定光は、この測定対象物駆動ステージ26に垂直(Z方向)に入射される(XY平面に垂直に出射される。)。すなわち、fθレンズ32は、測定対象物駆動ステージ26に対して直交するように測定光を出射する。
【0050】
なお、上記のように測定光はポリゴンミラー30によって偏向されるが、その走査方向はX方向に設定される。
【0051】
コントローラ28は、測定対象物Oの寸法を算出するための演算手段として機能するとともに、寸法測定装置10の全体の動作を統括制御する制御手段として機能する。コントローラ28は、いわゆるPC(Personal Computer)で構成され、所定のプログラムを実行して、演算手段及び制御手段としての機能を実現する。
【0052】
測定対象物駆動ステージ26の移動制御、ポリゴンミラー30の回転制御、CCP40の移動制御、低コヒーレンス光源12の発光制御などの各部の駆動制御は、このコントローラ28によって行われる。
【0053】
また、測定対象物Oの寸法の算出は、このコントローラ28によって行われる。すなわち、コントローラ28は、光検出器24から出力される干渉信号(干渉光の強度)、測定対象物駆動ステージ26の位置情報、スケールヘッド46から出力されるCCP40の位置情報、及び、ポリゴンミラー30の回転角度に基づく測定光の照射位置情報を取得し、これらの情報に基づいて測定光で走査した部位における寸法(表面位置)を算出する。具体的には、次のようにして走査部位の寸法を算出する。
【0054】
低コヒーレンス光源12から放射される光は、コヒーレンス長が短いため、測定光と参照光との光路長の差がゼロ又はその近傍でのみ干渉縞(白色干渉縞)が検出される。そして、その干渉縞のコントラストは、測定光の光路長と参照光の光路長とが一致するとき、すなわち、両者の光路長の差がゼロのときに最大となる。
【0055】
干渉縞のコントラストは、光検出器24で検出される干渉光の強度として表され、図4に示すように、CCP40の位置、すなわち、測定光と参照光との光路長差に応じて変化する。そして、測定光と参照光との光路長差がゼロのときに最大となる。
【0056】
そこで、コントローラ28は、寸法(表面位置)が既知の基準品(マスタ)の基準面について干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置と、測定対象物Oの測定点(測定光の照射点)について干渉光の強度が最大となるときのCCP40の位置とを求める。そして、その差に相当する光路差を求め、求めた光路差を基準面の表面位置に加えて、測定対象物Oの測定点の表面位置を決定する。
【0057】
なお、本実施の形態の寸法測定装置10では、測定光が偏向走査されて、測定点が連続的に変化するので、各測定点について寸法が測定される。これにより横方向の測定に対して、高速にかつ緻密にデータを収集することが可能となり、測定対象の形状寸法が精度よく測定できることとなる。
【0058】
[作用]
実際に測定対象物Oを測る事前準備として、基準面の測定を行う。基準面の測定は、寸法(表面位置)が既知の基準品を測定対象物駆動ステージ26にセットし、その表面(基準面)の位置を測定することにより行う。すなわち、ポリゴンミラー30の回転角度を変更しつつ測定対象物駆動ステージ26の位置を変更して、基準品の表面(基準面)を測定光で走査し、各点で光検出器24で検出される干渉光の強度が最大になるときのCCP40の位置P0を検出することにより行う。コントローラ28は、得られたCCP40の位置P0の情報を基準位置情報としてコントローラ28内の記憶装置(不図示)に記憶する。
【0059】
以上の事前準備が完了した後、測定対象物Oの測定を行う。
【0060】
測定対象物Oを寸法測定装置10にセットする。セット後、オペレータはコントローラ28に測定開始を指示する。
【0061】
測定開始が指示されると、まず、コントローラ28は、低コヒーレンス光源12を点灯させる。これにより、測定光が測定対象物Oの表面に照射されるとともに、参照光がCCP40に入射される。測定光は、測定対象物Oの表面で反射された後、ビームスプリッタ18に戻り、CCP40で反射した参照光と一つに合わされて干渉し、光検出器24に入射される。
【0062】
低コヒーレンス光源12から放射される光が安定したところで、コントローラ28は測定対象物走査光学系20のモータ36を駆動し、ポリゴンミラー30を回転させる。これにより、ビームスプリッタ18から出射される測定光が偏向され、その偏向された測定光が測定対象物Oの表面上を走査される(X方向に走査される)。
【0063】
この際、本実施形態の寸法測定装置10では、ポリゴンミラー30で偏向された測定光が、fθレンズ32を介して測定対象物Oに照射される。これにより、測定対象物Oの測定対象の面に対して測定光を垂直(Z方向)に入射させることができる。
【0064】
コントローラ28は、直動ステージ42の駆動手段(不図示)を駆動して、直動ステージ42を往復移動させる。これにより、CCP40が往復移動する。CCP40が往復移動することにより、参照光の光路長が変化し、参照光と測定光との光路長差が変化する。
【0065】
コントローラ28は、スケールヘッド46からCCP40の位置情報を取得するとともに、光検出器24から干渉信号を取得して、干渉信号が最大となるとき(参照光と測定光との光路長差がゼロのときに最大となる)のCCP40の位置Pを検出する。
【0066】
ここで、上記のように、測定光はポリゴンミラー30で偏向されて、照射位置が変化する。したがって、コントローラ28は、一定周期でCCP40を往復移動させて、各測定点で干渉信号が最大となるときのCCP40の位置Pを検出する。
【0067】
また、測定対象物Oの面の寸法を測定する場合には、1回の走査(いわゆる主走査)が終わるたびに測定対象物駆動ステージ26がY方向に所定の移動量で送られる(いわゆる副走査)。すなわち、測定対象物Oの面の寸法を測定する場合には、測定光の偏向による主走査と、測定対象物の送りによる副走査とが交互に行われ、各測定点で干渉信号が最大となるときのCCP40の位置Pが検出される。
【0068】
検出されたCCP40の位置Pの情報は、検出位置情報として、その検出位置情報が取得された測定点の位置Pxyの情報に関連付けられてコントローラ28の記憶装置(不図示)に記憶される。
【0069】
なお、測定点の位置(測定位置)Pxyは、エンコーダ34を介して取得されるポリゴンミラー30の回転角度の情報、及び、ステージ位置検出手段(不図示)から取得される測定対象物駆動ステージ26の位置情報に基づいて算出される。
【0070】
各測定点での検出が終了すると、コントローラ28は、各測定点について、基準位置P0との差を求め、その差に対応する参照光の光路差を求める。そして、求めた光路差を基準面の表面位置に加えて、各測定点における測定対象物Oの寸法(表面位置)を決定する。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態の寸法測定装置10では、ポリゴンミラー30によって測定光を偏向させることにより、測定対象物Oの面の形状を高速に測定することができる。
【0072】
また、ポリゴンミラー30で偏向させた測定光を測定対象物Oに照射する際、fθレンズ32を介して照射する構成とすることにより、測定光を測定対象物Oの測定面に対して垂直に入射させることができる。これにより、測定光スポットサイズが測定面に対して斜めに入射することによる散乱を回避でき、高感度な測定を行うことができる。
【0073】
更に、低コヒーレンス光源12として、中心波長が紫外線領域の光源を使用することにより、測定光のスポットサイズを小さくすることができる。これにより、横方向の分解能を高めることができ、高精度な測定を行うことができる。また、これにより、微細形状やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、粗さなどの計測を行うことができる。更に、測定光のスポットサイズを小さくすることにより、測定対象物からの反射光を増大させることができ、高感度な測定を行うことができる。
【0074】
[他の実施の形態]
(1)偏向に基づく測定データの較正
上記のように、本発明に係る寸法測定装置では、測定光を偏向させて、測定対象物を走査する。しかし、測定光に対して伝播方向に偏向を与えると、測定光の光路長に変化が生じ、測定データにズレが生じる。そこで、測定光の偏向方向に基づく測定データのズレを補正するため、事前に補正データを取得し、この補正データを用いて測定データを補正する。これにより、より高精度な測定を行うことができる。
【0075】
補正データは、寸法が既知(形状データ(基準形状データ)が既知)の基準品の基準面を測定し、その測定結果から各測定点における測定データの補正データを生成する。たとえば、基準品を測定して得られた測定データと、基準品の基準形状データとを比較して、較正するための補正係数を作成し、これを補正データとする。
【0076】
コントローラ28は、たとえば、実際の測定開始前にこの補正データの生成処理を実施し、得られた補正データを記憶装置(補正情報記憶手段)に記録する。そして、実際の測定の際には、得られた測定データを補正データで補正して、真の測定データを算出する。
【0077】
上記のように、実際の測定では、事前準備として、基準面の測定が行われるので、この基準面の測定と同時に補正データの生成を行うことが好ましい。
【0078】
(2)偏向に基づく参照光路長の補正
上記のように、測定光に対して伝播方向に偏向を与えると、測定光の光路長に変化が生じる。したがって、この偏向に基づく測定光の光路長の変化に応じて、参照光の光路長も変化させることにより、より高精度な測定を行うことができる。すなわち、偏向させることによって測定光の光路長が変化したときに、その測定光の光路長の変化量と同じ変化量で参照光の光路長を変化させる。これにより、測定光を偏向させることによる影響を取り除くことができる。偏向させることによって測定光の光路長がどのように変化するかは、あらかじめ求めることができる。したがって、測定光を偏向させる方向(ポリゴンミラーの回転角度等)に応じて、測定光の光路長の変化量と同じ変化量で参照光の光路長が変化するように、参照光の光路長を補正する。補正は、たとえば、参照光の光路中に補正用の光学系を配置し、この補正用の光学系で参照光の光路長を補正することにより行う。
【0079】
(3)三次元計測
上記のように、本発明に係る寸法測定装置によれば、測定光の偏向による主走査と、測定対象物の送りによる副走査とを交互に行うことにより、測定対象物の面の寸法を測定すること(三次元計測)ができる。上記の例では、測定対象物駆動ステージ26により測定対象物側を移動させる構成としているが、測定対象物側を固定とし、寸法測定装置側を移動させる構成とすることもできる。この場合、たとえば、測定対象物走査光学系20をユニット化し、このユニットのみを移動させる構成(ビームスプリッタ18と測定対象物走査光学系20との間の測定光の伝送は、たとえば、光ファイバで行う)とすることもできる。
【0080】
(4)偏向手段の他の実施例
上記実施の形態では、偏向手段としてポリゴンミラーを使用しているが、偏向手段としては、この他、図5に示すように、ガルバノミラー50を使用することもできる。同図において、ガルバノミラー50は、モータ52に駆動されて揺動し、ビームスプリッタ18から出射される測定光を偏向させる。ガルバノミラー50で偏向させた測定光をfθレンズ32を介して測定対象物に照射することにより、測定対象物に対して測定光を垂直に照射することができる。また、ガルバノミラー50の回転角度をエンコーダ54で検出することにより、測定光の照射位置を検出することができる。
【0081】
なお、ガルバノミラーを用いて測定光を偏向させる場合、測定光をXY二次元エリアに偏向走査させる構成とすることもできる(いわゆるXYガルバノスキャナ)。この場合、測定対象物を副走査方向に送らずとも測定対象物の面の形状を測定することが可能になる。
【0082】
(5)光分割手段の他の実施例
上記実施の形態では、光分割手段としてビームスプリッタを使用しているが、光分割手段としては、この他、光カプラ等を用いることもできる。
【0083】
(6)参照光反射体の他の実施例
上記実施の形態では、参照光反射体としてCCPを使用しているが、参照光反射体としては、この他、CCM(Corner Cube Mirror:コーナーキューブミラー)や直角プリズム、直角ミラーなどを使用することもできる。
【0084】
(7)測定対象物
本発明によれば、測定対象物の寸法を広範囲にわたって高精度に測定することができる。測定対象物は特に限定されない。低コヒーレンス干渉法では、透明体を透過させて屈折率の異なる多層膜も計測することができるため、膜厚及び透明プラスチックなどで覆われた物体の形状測定も行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
10…寸法測定装置、12…低コヒーレンス光源、14…バンドルファイバ、16…コリメータ、18…ビームスプリッタ、20…測定対象物走査光学系、22…参照光走査光学系、24…光検出器、26…測定対象物駆動ステージ、28…コントローラ、30…ポリゴンミラー、32…fθレンズ、34…エンコーダ、36…モータ、40…CCP、42…直動ステージ、44…リニアスケール、46…スケールヘッド、48…ガイドレール、50…ガルバノミラー、52…モータ、54…エンコーダ、O…測定対象物
図1
図2
図3
図4
図5