(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーン樹脂組成物において、前記(A)成分、前記(B−1)成分及び前記(B−2)成分中のケイ素に結合した全置換基中の10〜80%が1価芳香族炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシリコーン樹脂組成物。
前記(B−1)成分と前記(B−2)成分を、(B−1)及び(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1:0.9〜0.9:0.1(但し、合計で1)となる量含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、接着強度、耐熱性、耐候性等の特性に優れた硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物を用いた積層板、及び該積層板を有するLED装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、(A) 下記平均式(1)で示される不飽和基含有オルガノポリシロキサン、
(R
13−nR
2nSiO
1/2)
a(R
12−mR
2mSiO
2/2)
b(R
3SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d…(1)
(式中、R
1は炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基、または1価芳香族炭化水素基であり、R
2は炭素数2〜8の1価不飽和炭化水素基であり、R
3は1価芳香族炭化水素基、または炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数であり、式(1)中に少なくとも一つはR
2を含み、かつ0≦a≦0.5、0<b≦0.75、0<c≦0.90、0≦d≦0.1、かつ、a+b+c+d=1を満たす数である。)
(B−1) 下記平均式(2)で示されるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン、
(R
12R
4SiO
1/2)
p(R
1R
4SiO
2/2)
q(R
5SiO
3/2)
r(SiO
4/2)
s…(2)
(式中、R
1は、上記と同様であり、R
4は水素原子またはR
1で示される基であり、かつ、全R
4中少なくとも一つは水素原子であり、R
5は1価芳香族炭化水素基、または炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基であり、0≦p≦0.5、0<q≦0.75、0<r≦0.9、0≦s≦0.1、かつ、p+q+r+s=1を満たす数である。)
(B−2) 下記平均式(3)で示される両末端ヒドロシリル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、
(R
12HSiO
1/2)
2(R
12SiO
2/2)
x…(3)
(式中、R
1は、上記と同様であり、xは1〜10の整数である。)
:前記(A)成分中の1価不飽和炭化水素基の合計に対する前記(B−1)及び前記(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜4.0となる量、
(C) 白金族金属触媒:有効量、
を含有するものであることを特徴とするシリコーン樹脂組成物を提供する。
【0008】
このようなシリコーン樹脂組成物であれば、接着強度、耐熱性、耐候性等の特性に優れた硬化物を与えることができる。
【0009】
更に、(D)成分として充填材:前記(A)成分、前記(B−1)成分、前記(B−2)成分の合計100質量部に対して900質量部以下、
を含有することが好ましい。
【0010】
このようなシリコーン樹脂組成物であれば、該組成物を用いて製造された積層板(シリコーン積層基板)の強度をより向上させることができる。
【0011】
また、前記(D)成分が、カップリング剤によって表面処理されていることが好ましい。
【0012】
このような(D)成分を含有するシリコーン樹脂組成物であれば、(D)成分と樹脂成分((A)、(B−1)、(B−2)成分)との親和性及び分散性を上げ、(D)成分と樹脂との結合強度を高めることができる。
【0013】
また、前記(D)成分が、
(D1)白色顔料:前記(A)成分、前記(B−1)成分及び前記(B−2)成分の合計100質量部に対して1〜300質量部
(D2)白色顔料以外の無機質充填材:前記(A)成分、前記(B−1)成分及び前記(B−2)成分の合計100質量部に対して600質量部以下(ただし、(D1)と(D2)の合計が、前記(A)成分、前記(B−1)成分及び前記(B−2)成分の合計100質量部に対して100〜900質量部である。)
の一方又は両方を含むことが好ましい。
【0014】
(D)成分が、(D1)、(D2)の一方又は両方である時、本発明のシリコーン樹脂組成物はよりその効果が向上する。特に、(D1)成分を含むシリコーン樹脂組成物であれば、該組成物を用いて製造された積層板の光反射率をより向上することができる。
【0015】
前記シリコーン樹脂組成物において、前記(A)成分、前記(B−1)成分及び前記(B−2)成分中のケイ素に結合した全置換基中の10〜80%が1価芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0016】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、このような置換基を有することが、特に好適である。
【0017】
また、前記(B−1)成分と前記(B−2)成分を、(B−1)及び(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1:0.9〜0.9:0.1(但し、合計で1)となる量含むことが好ましい。
【0018】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、上記の比率で(B−1)成分と(B−2)成分を含有することが特に好ましい。
【0019】
また、前記(A)成分における(R
12−mR
2mSiO
2/2)単位(R
1及びR
2は上記と同じ)若しくは前記(B−1)成分における(R
1R
4SiO
2/2)単位(R
1及びR
4は上記と同じ)又はその両方の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造を含むことが好ましい。
【0020】
このようなシリコーン樹脂組成物は、分岐構造を有し、更に、直鎖状に延伸した構造を有する。特に、(B−1)成分が直鎖状に延伸した構造(連鎖構造)を有することによって、本発明の組成物を硬化させたとき、部分的に架橋点間距離が長くなるため、本発明の組成物の硬化物に可とう性を付与することができる。
【0021】
また、前記シリコーン樹脂組成物が、未硬化状態(Aステージ)で固体状であることが好ましい。
【0022】
このようなシリコーン樹脂組成物であれば、取り扱いが容易であり、積層板を製造するのにより好適に用いることができる。
【0023】
更に本発明では、ガラスクロスと、該ガラスクロス中に含浸されたシリコーン樹脂組成物の硬化物とを有してなる積層板であって、
前記シリコーン樹脂組成物が、上記本発明のシリコーン樹脂組成物であることを特徴とする積層板を提供する。
【0024】
本発明の組成物は、接着強度、耐熱性、耐候性等の特性に優れた硬化物を与えることができる。そのため、本発明の組成物を用いて製造された積層板は、耐熱性、耐候性等の特性に優れたものとなる。また、本発明の積層板は、その最表面に、更に、金属箔を配置した場合であっても、金属箔の表面を粗く粗化することなくピール強度を向上することができる。
【0025】
前記積層板の最表面に、更に、金属箔を配置したものであることが好ましい。
【0026】
このような積層板であれば、本発明の組成物を介してガラスクロスと金属箔とが接着されているため、金属箔を剥離しにくくすることができる。
【0027】
また、前記積層板の、JIS C 6481に規定される金属箔の引きはがし強さが0.4kN/m以上のものであることが好ましい。
【0028】
このように引きはがし強さが0.4kN/m以上のものであれば、金属箔を剥がれにくくすることができるため好ましい。
【0029】
更に本発明では、上記本発明の積層板と、該積層板上に実装されたLEDチップとを有するものであることを特徴とするLED装置を提供する。
【0030】
本発明の積層板は、耐熱性、耐候性等の特性に優れたものである。そのため、本発明の積層板を有するLED装置は、耐熱性、耐候性等の特性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシリコーン樹脂組成物であれば、接着強度、耐熱性、耐候性等の特性に優れた硬化物を与えることができる。そのため、本発明の組成物を用いて製造された積層板は、耐熱性、耐候性等の特性に優れたものとなる。更に、本発明の積層板は、その最表面に、更に、金属箔を配置した場合であっても、金属箔の表面を粗く粗化することなくピール強度を向上することができる。また、本発明の積層板は、例えばLED等の発光装置用として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、接着強度、耐熱性、耐候性等の特性に優れた硬化物を与えるシリコーン樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0034】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、(A) 下記平均式(1)で示される不飽和基含有オルガノポリシロキサン、
(R
13−nR
2nSiO
1/2)
a(R
12−mR
2mSiO
2/2)
b(R
3SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d…(1)
(式中、R
1は炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基、または1価芳香族炭化水素基であり、R
2は炭素数2〜8の1価不飽和炭化水素基であり、R
3は1価芳香族炭化水素基、または炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数であり、式(1)中に少なくとも一つはR
2を含み、かつ0≦a≦0.5、0<b≦0.75、0<c≦0.90、0≦d≦0.1、かつ、a+b+c+d=1を満たす数である。)
(B−1) 下記平均式(2)で示されるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサン、
(R
12R
4SiO
1/2)
p(R
1R
4SiO
2/2)
q(R
5SiO
3/2)
r(SiO
4/2)
s…(2)
(式中、R
1は、上記と同様であり、R
4は水素原子またはR
1で示される基であり、かつ、全R
4中少なくとも一つは水素原子であり、R
5は1価芳香族炭化水素基、または炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基であり、0≦p≦0.5、0<q≦0.75、0<r≦0.9、0≦s≦0.1、かつ、p+q+r+s=1を満たす数である。)
(B−2) 下記平均式(3)で示される両末端ヒドロシリル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン、
(R
12HSiO
1/2)
2(R
12SiO
2/2)
x…(3)
(式中、R
1は、上記と同様であり、xは1〜10の整数である。)
:前記(A)成分中の1価不飽和炭化水素基の合計に対する前記(B−1)及び前記(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜4.0となる量、
(C) 白金族金属触媒:有効量、
を含有するものであることを特徴とするシリコーン樹脂組成物を用いることにより、上記課題を達成できることを見出した。また、本発明の組成物の硬化物を有する積層板は、銅箔等の金属箔との接着強度が改善され、耐熱性、耐候性等の特性に優れたものとなることを見出した。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書において、「半固体」とは、可塑性を持ちながら流動性を持たない性質を有し、温度・応力・歪みなどの外部からのストレスによって液体又は固体の性質を呈する状態であることを意味する。また、Phはフェニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、Viはビニル基を示す。
【0036】
(シリコーン樹脂組成物)
本発明のシリコーン樹脂組成物は、下記(A)、(B−1)、(B−2)、(C)成分、場合によって(D)成分を含み、本発明の積層板(シリコーン積層基板)を製造するのに好適に使用される。本発明の組成物は未硬化状態(Aステージ)で固体状であることが好ましく、可塑性の固体であることがより好ましい。Aステージで固体状の組成物は、取り扱いが容易である。
以下、本発明のシリコーン樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0037】
−(A)成分−樹脂構造のオルガノポリシロキサン−
本発明の組成物の重要な構成成分である(A)成分は、R
13−nR
2nSiO
1/2単位、R
12−mR
2mSiO
2/2単位、R
3SiO
3/2単位及びSiO
4/2単位からなり、下記平均式(1)で示される不飽和基含有オルガノポリシロキサンである。
(R
13−nR
2nSiO
1/2)
a(R
12−mR
2mSiO
2/2)
b(R
3SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d…(1)
(式中、R
1は炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基、または1価芳香族炭化水素基であり、R
2は炭素数2〜8の1価不飽和炭化水素基であり、R
3は1価芳香族炭化水素基、または炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基であり、nは1〜3の整数、mは0〜2の整数であり、式(1)中に少なくとも一つはR
2を含み、かつ0≦a≦0.5、0<b≦0.75、0<c≦0.90、0≦d≦0.1、かつ、a+b+c+d=1を満たす数である。)
【0038】
上記平均式(1)中に、上記R
12−mR
2mSiO
2/2単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個、好ましくは8〜40個、更に好ましくは10〜35個である直鎖状のシロキサン構造を部分的に含有することが特に好ましい。
【0039】
(A)成分中のR
1、R
3中の1価芳香族炭化水素基は炭素数6〜10のものが好ましい。また、R
1が、メチル基、エチル基、プロピル基、シクロヘキシル基又はフェニル基であり、R
2が、ビニル基又はアリル基であり、R
3が、フェニル基であることが好ましい。
【0040】
なお、上記のR
12−mR
2mSiO
2/2単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造とは、下記一般式(4):
【0041】
【化1】
(ここで、yは5〜50の整数)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を意味する。
【0042】
(A)成分のオルガノポリシロキサン中に存在するR
12−mR
2mSiO
2/2単位全体の少なくとも一部、好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特に80モル%以上(80〜100モル%)が、分子中でかかる一般式(4)で表される連鎖構造を形成していることが好ましい。
【0043】
(A)成分の分子中においては、R
12−mR
2mSiO
2/2単位はポリマー分子を直鎖状に延伸するように働き、R
3SiO
3/2単位及びSiO
4/2単位はポリマー分子を分岐させ或いは三次元網状化させる。R
12−mR
2mSiO
2/2単位及びR
13−nR
2nSiO
1/2単位のR
2(炭素数2〜8の1価不飽和炭化水素基)は、後述する(B−1)成分のR
12R
4SiO
1/2単位及びR
1R
4SiO
2/2単位、(B−2)成分のR
12HSiO
1/2単位のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)とヒドロシリル化付加反応することにより、本発明の組成物を硬化させる役割を果たす。
【0044】
(A)成分を構成する重要な四種のシロキサン単位のモル比、即ち、R
13−nR
2nSiO
1/2単位:R
12−mR
2mSiO
2/2単位:R
3SiO
3/2単位:SiO
4/2単位のモル比は、0〜0.5:0〜0.75:0〜0.90:0〜0.1、特に0〜0.1:0.1〜0.6:0.1〜0.5:0〜0.05(但し、合計で1であり、少なくとも、R
12−mR
2mSiO
2/2単位及びR
3SiO
3/2単位を含む。)であることが得られる硬化物の特性上好ましい。
【0045】
また、この(A)成分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000、特に8,000〜100,000の範囲にある固体もしくは半固体状のものが好適である。
【0046】
このような樹脂構造のオルガノポリシロキサンは、各単位の原料となる化合物を、上記モル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解及び縮合を行うことによって合成することができる。
【0047】
ここで、R
13−nR
2nSiO
1/2単位は、R
12R
21SiO
1/2単位、R
11R
22SiO
1/2単位及びR
23SiO
1/2単位から選ばれる1種のシロキサン単位又は2種以上のシロキサン単位の組み合わせであることを示す。その原料としては、Me
2ViSiCl、MeVi
2SiCl、Ph
2ViSiCl、PhVi
2SiCl、Vi
3SiClのクロロシラン類、これらのクロロシラン類のそれぞれに対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類等を例示することができる。
【0048】
また、R
12−mR
2mSiO
2/2単位は、R
12SiO
2/2単位、R
1R
2SiO
2/2単位及びR
22SiO
2/2単位から選ばれる1種のシロキサン単位又は2種以上のシロキサン単位の組み合わせであることを示す。
R
12−mR
2mSiO
2/2単位の原料としては、
MeViSiCl
2、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
jSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
k(PhMeSiO)
LSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
k(Ph
2SiO)
LSiMe
2Cl、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
jSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(PhMeSiO)
LSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(Ph
2SiO)
LSiMe
2OH、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
jSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(PhMeSiO)
LSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(Ph
2SiO)
LSiMe
2OMe
(但し、j=3〜48の整数(平均値)、かつk=0〜47の整数(平均値)、L=1〜48の整数(平均値)、かつk+L=3〜48の整数(平均値))
等を例示することができる。
【0049】
また、R
3SiO
3/2単位の原料としては、MeSiCl
3、EtSiCl
3、PhSiCl
3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のクロロシラン類、これらそれぞれのクロロシラン類に対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン等が例示することができる。
【0050】
なお、本発明において、(A)成分のオルガノポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R
13−nR
2nSiO
1/2単位、R
12−mR
2mSiO
2/2単位、R
3SiO
3/2単位、SiO
4/2単位またはこれらの2種以上の組み合わせ中に、シラノール基を有するシロキサン単位を含んでいてもよい。(A)成分のオルガノポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して10モル%以下(0〜10モル%)程度含有することができる。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、(HO)SiO
3/2単位、R
1(HO)SiO
2/2単位、R
2(HO)SiO
2/2単位、(HO)
2SiO
2/2単位、R
22(HO)SiO
1/2単位、R
1R
2(HO)SiO
1/2単位、R
2(HO)
2SiO
1/2単位(ここで、R
1、R
2は前記定義の通りである。)が挙げられる。
【0051】
−(B−1)成分−樹脂構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン−
本発明の組成物の重要な構成成分の一つである(B−1)成分は、R
12R
4SiO
1/2単位、R
1R
4SiO
2/2単位、R
5SiO
3/2単位及びSiO
4/2単位からなり、下記平均式(2)で示されるヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンである。
(R
12R
4SiO
1/2)
p(R
1R
4SiO
2/2)
q(R
5SiO
3/2)
r(SiO
4/2)
s…(2)
(式中、R
1は、上記と同様であり、R
4は水素原子またはR
1で示される基であり、かつ、全R
4中少なくとも一つは水素原子であり、R
5は1価芳香族炭化水素基、または炭素数1〜10の1価飽和炭化水素基であり、0≦p≦0.5、0<q≦0.75、0<r≦0.9、0≦s≦0.1、かつ、p+q+r+s=1を満たす数である。)
【0052】
上記平均式(2)中に、上記R
1R
4SiO
2/2単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個、好ましくは8〜40個、更に好ましくは10〜35個である直鎖状のシロキサン構造を部分的に含有することが好ましい。
【0053】
(B−1)成分中のR
1が炭素数6〜10の1価芳香族炭化水素基であることが好ましい。R
4は水素原子またはR
1であり、かつ、全R
4中少なくとも一つは水素原子であり、R
5が、フェニル基であることが好ましい。
【0054】
(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの末端は、シラノール基又はメトキシ基であってもよい。
【0055】
なお、上記のR
1R
4SiO
2/2単位の少なくとも一部が連続して繰り返してなり、その繰り返し数が5〜50個である構造とは、下記一般式(5):
【0056】
【化2】
(ここで、yは5〜50の整数)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン連鎖構造を形成していることを意味する。
【0057】
(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中に存在するR
1R
4SiO
2/2単位全体の少なくとも一部、好ましくは50モル%以上(50〜100モル%)、特には80モル%以上(80〜100モル%)が、分子中でかかる一般式(5)で表される連鎖構造を形成していることが好ましい。連続したR
1R
4SiO
2/2単位を有することにより、部分的に架橋点間距離が長くなり、可とう性を付与することができるので、硬化物の脆さが改善され、ガラスクロスや銅箔への高い接着性を有する。
【0058】
(B−1)成分の分子中においては、R
1R
4SiO
2/2単位はポリマー分子を直鎖状に延伸するように働き、R
5SiO
3/2単位及びSiO
4/2単位はポリマー分子を分岐させ或いは三次元網状化させる。R
12R
4SiO
1/2単位及びR
1R
4SiO
2/2単位の中のケイ素に結合した水素原子は、上述した(A)成分が有する1価不飽和炭化水素基とヒドロシリル化付加反応することにより本発明の組成物を硬化させる役割を果たす。
【0059】
(B−1)成分を構成する重要な四種のシロキサン単位のモル比、即ち、R
12R
4SiO
1/2単位:R
1R
4SiO
2/2単位:R
5SiO
3/2単位:SiO
4/2単位のモル比はそれぞれ0〜0.5:0〜0.75:0〜0.9:0〜0.1、0〜0.1:0.1〜0.6:0.1〜0.5:0〜0.05(但し、合計で1であり、少なくとも、R
1R
4SiO
2/2単位及びR
5SiO
3/2単位を含む。)であることが得られる硬化物の特性上好ましい。
【0060】
また、この(B−1)成分のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は3,000〜1,000,000、特に8,000〜100,000の範囲にあるものが作業性、硬化物の特性などの点から好適である。
【0061】
このような樹脂構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、各単位の原料となる化合物を、生成ポリマー中で上記四種のシロキサン単位が所要のモル比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解を行うことによって合成することができる。
【0062】
ここで、R
12R
4SiO
1/2単位の原料としては、Me
2HSiCl、Ph
2HSiCl等のクロロシラン類、これらのクロロシラン類のそれぞれに対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン類等を例示することができる。
【0063】
R
1R
4SiO
2/2単位の原料としては、
MeHSiCl
2、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
jSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
k(PhMeSiO)
LSiMe
2Cl、
ClMe
2SiO(Me
2SiO)
k(Ph
2SiO)
LSiMe
2Cl、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
jSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(PhMeSiO)
LSiMe
2OH、
HOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(Ph
2SiO)
LSiMe
2OH、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
jSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(PhMeSiO)
LSiMe
2OMe、
MeOMe
2SiO(Me
2SiO)
k(Ph
2SiO)
LSiMe
2OMe
(但し、j=3〜48の整数(平均値)、かつk=0〜47の整数(平均値)、L=1〜48の整数(平均値)、かつk+L=3〜48の整数(平均値))
等を例示することができる。
【0064】
また、R
5SiO
3/2単位の原料としては、MeSiCl
3、EtSiCl
3、PhSiCl
3、プロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン等のクロロシラン類、これらそれぞれのクロロシランに対応するメトキシシラン類などのアルコキシシラン等を例示することができる。
【0065】
なお、本発明において、(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R
4SiO
3/2単位は、その末端がシラノール基又はメトキシ基であるシロキサン単位であってもよい。この場合、(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、シラノール基又はメトキシ基を含有することがある。
【0066】
また、本発明において、(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記の原料化合物の共加水分解及び縮合により製造する際には、R
12R
4SiO
1/2単位、R
1R
4SiO
2/2単位、R
5SiO
3/2単位、SiO
4/2単位又はこれらの2種以上の組合せ中に、シラノール基を有するシロキサン単位が含まれることがある。(B−1)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、かかるシラノール基含有シロキサン単位を、通常、全シロキサン単位に対して10モル%以下(0〜10モル%)程度含有することがある。上記シラノール基含有シロキサン単位としては、例えば、(HO)SiO
3/2単位、R
1(HO)SiO
2/2単位、(HO)
2SiO
2/2単位、R
4(HO)SiO
2/2単位、R
42(HO)SiO
1/2単位、R
1R
4(HO)SiO
1/2単位、R
4(HO)
2SiO
1/2単位(ここで、R
1は前記で定義した通りの基であり、R
4は前記定義の通りである。)が挙げられる。
【0067】
−(B−2)成分−両末端ヒドロシリル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン−
本発明の組成物の重要な構成成分の一つである(B−2)成分は、R
12HSiO
1/2単位及びR
12SiO
2/2単位からなり、下記平均式(3)で示される両末端ヒドロシリル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)である。
(R
12HSiO
1/2)
2(R
12SiO
2/2)
x…(3)
(式中、R
1は、上記と同様であり、xは1〜10の整数である。)
【0068】
(B−2)成分のR
1は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル等のアラルキル基等が挙げられる。特に、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0069】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法により調製することができ、たとえば、SiH基を含むシロキサンとジアルコキシシランを強酸触媒の存在下で酸平衡化する事により合成できる。尚、本発明は両末端がケイ素原子に結合した水素基又はアルコキシ基で封鎖されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンを少量含んでいてもよい。
【0070】
(B−1)成分及び(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中の1価不飽和炭化水素基の合計量に対する(B−1)成分及び(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の合計量がモル比で0.1〜4.0となる量、特に好ましくは0.5〜3.0となる量、更に好ましくは0.8〜2.0となる量である。0.1未満では硬化反応が進行せず、シリコーン樹脂組成物の硬化物を得ることが困難であり、4.0を超えると未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存するため、シリコーン樹脂組成物の硬化物の物性が経時的に変化する原因となる。また、(B−1)成分と(B−2)成分の配合比は、(B−1)及び(B−2)成分中のケイ素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜0.9:0.9〜0.1となる量、特に好ましくは0.2〜0.6:0.8〜0.4となる量(但し、合計で1)である。
【0071】
本発明では、接着性付与のために(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分のいずれか一成分以上がシラノール基を含有するものであることが好ましい。該シラノール基を有するシロキサン単位の量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン、又は、(B−1)成分及び(B−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、全シロキサン単位に対して40モル%以下(0〜40モル%)程度である。
【0072】
また、本発明のシリコーン樹脂組成物において、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分中のケイ素に結合した全置換基中の10〜80%が1価芳香族炭化水素基であることが特に好ましい。
【0073】
−(C)成分−白金族金属系触媒−
この触媒成分は、本発明の組成物の付加硬化反応を生じさせるために配合されるものであり、白金系、パラジウム系、ロジウム系のものがある。該触媒としてはヒドロシリル化反応を促進するものとして従来公知であるいずれのものも使用することができる。コスト等を考慮して、白金、白金黒、塩化白金酸などの白金系のもの、例えば、H
2PtCl
6・pH
2O,K
2PtCl
6,KHPtCl
6・pH
2O,K
2PtCl
4,K
2PtCl
4・pH
2O,PtO
2・pH
2O,PtCl
4・pH
2O,PtCl
2,H
2PtCl
4・pH
2O(ここで、pは、正の整数)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を例示することができ、これらの触媒は1種単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0074】
(C)成分の配合量は、硬化のための有効量でよく、通常、前記(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計量に対して白金族金属として質量換算で0.1〜500ppm、特に好ましくは0.5〜100ppmの範囲である。
【0075】
−(D)成分−充填材−
(D)成分の充填材は、本発明の積層板(シリコーン積層基板)の線膨張率を下げ且つ該基板の強度を向上させることを目的として、本発明の組成物に添加される。(D)成分としては、公知の充填材であればいずれのものであってよく、例えば、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、ヒュームド二酸化チタン、酸化亜鉛、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。(D)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0076】
(D)成分の配合量は、得られるシリコーン積層基板の線膨張率および強度の観点から、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計量100質量部当り900質量部以下(0〜900質量部)の範囲であり、600質量部以下(0〜600質量部)の範囲であることが好ましく、10〜600質量部、特には50〜500質量部の範囲であることがより好ましい。
【0077】
下記の(D1)若しくは(D2)又はその両方の成分を含有する充填材は、(D)成分として本発明のシリコーン積層基板に好適に用いられ、LED装置に用いるシリコーン積層基板に特に好適に用いられる。
【0078】
−(D1)白色顔料−
(D1)成分は白色顔料であり、得られるシリコーン樹脂組成物の硬化物を白色にするための白色着色剤として用いられる。(D1)成分は、得られるシリコーン積層基板が光を反射することが必要である場合には、該シリコーン積層基板の光反射率を上げることを目的として、本発明の組成物に添加されるが、特に光を反射することを必要としないシリコーン積層基板を得る場合には本発明の組成物に添加されないこともある。ここで、「シリコーン積層基板が光を反射することが必要である」とは、後述のとおり、該シリコーン積層基板の光反射率が全可視光領域にわたって好ましくは80%以上(即ち、80〜100%)であることをいう。(D1)成分としては、従来から一般的に使用されている公知の白色顔料であれば制限なく使用できるが、好適には二酸化チタン、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウムなどが挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記(D1)成分のうち、二酸化チタン、アルミナ、酸化マグネシウムがより好ましく、二酸化チタンが更により好ましい。二酸化チタンの結晶形はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わないが、ルチル型が好ましく使用される。
【0079】
白色顔料の平均粒径および形状は特に限定されないが、平均粒径が、0.05〜10.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜5.0μm、更に好ましくは0.1〜1.0μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。(D1)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用するこができる。
【0080】
(D1)成分の配合量は、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計量100質量部当り1〜300質量部であることが好ましく、3〜200質量部であることがより好ましく、10〜150質量部であることが特に好ましい。該配合量が1質量部以上の場合、得られるシリコーン樹脂組成物の硬化物の白色度が十分となるため好ましい。該配合量が300質量部以下の場合、本発明のシリコーン積層基板の線膨張率を下げ且つ該基板の機械的強度を向上させることを目的として添加される(D2)成分の無機質充填材の全充填材に占める割合が低くなることがないため好ましい。なお、(D1)成分の白色顔料の量は、シリコーン樹脂組成物全体において1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更により好ましい。
【0081】
−(D2)無機質充填材−
(D2)は、白色顔料以外の無機質充填材であり、本発明のシリコーン積層基板の線膨張率を下げ且つ該基板の機械的強度を向上させることを目的として、本発明の組成物に添加される。(D2)成分としては、通常、シリコーン樹脂組成物に配合されるものを使用することができ、公知の無機質充填材であればいずれのものであってもよく、例えば、溶融シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ等のシリカ類、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン等が挙げられ、特に、溶融シリカ、溶融球状シリカ、アルミナが好ましい。(D2)成分は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用するこができる。
【0082】
(D2)成分の平均粒径および形状は特に限定されない。(D2)成分の平均粒径は、通常0.5〜50μmであるが、得られるシリコーン樹脂組成物の成型性および流動性からみて、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは1〜5μmである。なお、平均粒径は、上述の通り、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D
50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0083】
(D2)成分の配合量は、得られるシリコーン積層基板の線膨張率および強度の観点から、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計量100質量部当り600質量部以下(0〜600質量部)の範囲であることが好ましく、より好ましくは、10〜600質量部であり、さらに好ましくは、50〜500質量部の範囲である。
【0084】
また、(D1)と(D2)の合計が、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100質量部に対して100〜900質量部であることが好ましい。
【0085】
また、上記(D1)、(D2)の両方になり得る材料、すなわち、白色顔料にも、無機質充填材としても使うことができる材料があり、具体的には、二酸化チタン、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
【0086】
−カップリング剤−
カップリング剤は前記(D)成分と樹脂成分との親和性及び分散性を上げ、樹脂との結合強度を高め、シリコーン樹脂組成物の強度を向上するために使用する。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。
【0087】
このようなカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。
【0088】
充填材に対する上記カップリング剤組成物の付着量は、0.05質量%以上、5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上、1.0質量%以下がより好ましい。
【0089】
充填材に上記カップリング剤組成物を表面処理する方法としては、公知の方法であれば制限なく使用できるが、例えば水、または有機溶剤を溶媒としてカップリング剤組成物を溶かし(以下、「処理剤溶液」という。)、そこに充填材を入れ撹拌し、溶媒をスプレードライヤー、スラリードライヤー、または加熱などにより揮発除去し、乾燥する方法が挙げられる。有機溶剤にはメタノール、エタノール、エチレングリコールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、ヘキサンなどが使用できる。
【0090】
−その他の成分‐
本発明の組成物には、上述した(A)〜(D)成分以外にも、必要に応じて、それ自体公知の各種の添加剤を配合することができる。
【0091】
(a)接着助剤
本発明の組成物には、接着性を付与するため、接着助剤(接着性付与剤)を必要に応じて添加できる。接着助剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。接着助剤としては、例えば、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)、ケイ素原子に結合したアルケニル基(例えばSi−CH=CH
2基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基)から選ばれる官能性基を少なくとも1種、好ましくは2種又は3種含有する直鎖状又は環状のケイ素原子数4〜50個、好ましくは4〜20個程度のオルガノシロキサンオリゴマーや、下記一般式(6)で示されるオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物、その加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)及びこれらの2種以上の組合せなどが挙げられる。
【0092】
【化3】
[式中、R
6は、下記式(7)
【0093】
【化4】
(ここでR
7では水素原子又は炭素原子数1〜6の一価炭化水素基であり、vは1〜6、特に1〜4の整数である。)
で表される有機基、又は脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基であるが、R
6の少なくとも1個は式(7)の有機基である。]
【0094】
一般式(6)におけるR
6の脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基、シクロヘキセニル基などの炭素原子数6〜8のシクロアルケニル基などが挙げられる。また、式(7)におけるR
7の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、上記R
6について例示したアルケニル基及びシクロアルケニル基、さらにフェニル基等のアリール基などの炭素原子数1〜8、特に1〜6の一価炭化水素基が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
【0095】
さらに、接着助剤としては、1,5−ビス(グリシドキシプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−グリシドキシプロピル−5−トリメトキシシリルエチル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等、並びに、下記式に示される化合物が例示される。
【0096】
【化5】
(式中、g及びhは各々0〜50の範囲の整数であって、しかもg+hが2〜50、好ましくは4〜20を満足するものである。)
【0099】
上記の有機ケイ素化合物のうち、得られるシリコーン樹脂組成物の硬化物に特に良好な接着性をもたらす化合物は、一分子中にケイ素原子結合アルコキシ基と、アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子(SiH基)とを有する有機ケイ素化合物である。
【0100】
接着助剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、通常10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.1〜8質量部、より好ましくは0.2〜5質量部程度である。該配合量が10質量部以下であれば、シリコーン樹脂組成物の硬化物の硬度に悪影響を及ぼすことがなく、表面タック性を高めることができる。
【0101】
(b)硬化抑制剤
本発明のシリコーン樹脂組成物には必要に応じて適宜硬化抑制剤を配合することができる。硬化抑制剤は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。硬化抑制剤としては、例えば、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンのようなビニル基高含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン変性物及びシロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール及びこれらの混合物からなる群から選ばれる化合物等が挙げられる。硬化抑制剤は(A)成分100質量部当たり通常0.001〜1.0質量部、好ましくは0.005〜0.5質量部添加される。
【0102】
−調製−
本発明のシリコーン樹脂組成物は、所要の成分を均一に混合することによって調製される。通常は、硬化が進行しないように2液に分けて保存され、使用時に2液を混合して硬化を行う。勿論、前述したアセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。また、本発明のシリコーン樹脂組成物は、(A)〜(C)成分を均一に混合してベース組成物を得て、このベース組成物にトルエン、キシレン、ヘプタン等の溶剤を加えたのち、更にカップリング剤で表面処理した(D)成分を添加することにより、溶液または分散液として調製してもよい。また、(D)成分を、(D1)若しくは(D2)又はその両方の成分とすることができる。その場合、本発明のシリコーン樹脂組成物は、まず、(A)〜(C)成分を均一に混合してベース組成物を得て、このベース組成物にトルエン、キシレン、ヘプタン等の溶剤を加えた後、更に(D1)若しくは(D2)又はその両方の成分を添加することにより、分散液として調製してもよい。
【0103】
[積層板(シリコーン積層基板)]
本発明の積層板は、
ガラスクロスと、該ガラスクロス中に含浸された本発明のシリコーン樹脂組成物の硬化物とを有してなるものである。
本発明の積層板は、ガラスクロス中に本発明の組成物の硬化物が充填され、かつ、ガラスクロス表面が本発明の組成物の硬化物によって被覆されたものである。
シリコーン積層基板の厚さは、該基板の用途や該基板の製造に用いるガラスクロスの厚さ等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは20〜2,000μm、より好ましくは50〜1,000μmである。なお、シリコーン積層基板としては、例えば、LED装置用シリコーン積層基板、電気電子部品等の実装用シリコーン積層基板が挙げられる。
【0104】
また、積層板の最表面に、更に、金属箔を配置したものであることが好ましい。
【0105】
このような積層板であれば、本発明の組成物を介してガラスクロスと金属箔とが接着されているため、金属箔を剥離しにくくすることができる。
【0106】
また、積層板の、JIS C 6481に規定される金属箔の引きはがし強さが0.4kN/m以上のものであることが好ましい。
【0107】
このように引きはがし強さが0.4kN/m以上のものであれば、金属箔を剥がれにくくすることができるため好ましい。
【0108】
本発明の一実施形態において、上記シリコーン積層基板は、LED装置に用いるシリコーン積層基板であって、(D)成分の充填材は、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100質量部に対して1〜300質量部の(D1)成分と、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100質量部に対して600質量部以下の(D2)成分の一方又は両方を含有する。本発明のLED装置に用いるシリコーン積層基板は、光反射率が全可視光領域にわたって好ましくは80%以上(即ち、80〜100%)、より好ましくは85〜99%である。本発明において、光反射率は、例えば、光反射率測定器X−rite 8200(積分球分光光度計、X−rite社(US)製)等により測定される。なお、本発明において、可視光領域とは400〜700nmの領域を意味する。
【0109】
また、本発明のLED装置に用いる場合、シリコーン積層基板は、温度200℃、23時間加熱し耐熱変色試験を行った後の光反射率が、全可視光領域にわたって80%以上(即ち、80〜100%)であることが好ましく、より好ましくは85〜98%である。
【0110】
−ガラスクロス−
ガラスクロスは特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、石英ガラスクロス、無アルカリガラスクロス、高引張強度のTガラスクロスを用いることができる。ガラスクロスはシート状であって、その厚さは、本発明の積層板の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、例えば、10〜2,000μm、好ましくは10〜1,000μm、より好ましくは20〜300μmである。本発明のLED装置にシリコーン積層基板を用いる場合、ガラスクロスの厚さは、用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは20〜2,000μm、より好ましくは50〜1,000μmである。
【0111】
−シリコーン樹脂組成物の硬化物−
上述した(A)〜(C)成分、場合によっては(D)成分等を含むシリコーン樹脂組成物をガラスクロス中に含浸させて硬化することで、硬化物が上記ガラスクロス中に充填され、かつ、該ガラスクロス表面を被覆することになる。本発明の積層板において、該硬化物はガラスクロスの片面のみを被覆しても両面を被覆してもよいが、該ガラスクロスの両面を被覆することが好ましい。該ガラスクロス表面を被覆する硬化物の厚さは、本発明の積層板の用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは20〜2,000μm、より好ましくは50〜1,000μmである。LED装置に本発明の積層板を用いる場合、ガラスクロス表面を被覆する硬化物の厚さは、用途等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは50〜2,000μm、より好ましくは60〜1,000μmである。
【0112】
(シリコーン積層基板の製造方法)
本発明の積層板は、
上記(A)〜(C)成分、場合によっては(D)成分等を含むシリコーン樹脂組成物を溶剤に溶解・分散された状態でガラスクロスに含浸させ、
次に、該ガラスクロスから上記溶剤を蒸発させて除去し、
次に、該ガラスクロスに含浸されたシリコーン樹脂組成物を加圧成型下で加熱硬化させることにより得ることができる。ここで、本発明のLED装置にシリコーン積層基板を用いる場合、(D)成分として、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100質量部に対して1〜300質量部の(D1)成分と、(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分の合計100質量部に対して600質量部以下の(D2)成分の一方又は両方を含有する充填材を用いることが好ましい。
【0113】
−溶剤−
溶剤は、上述したシリコーン樹脂組成物を溶解・分散させることができ、かつ、該組成物が未硬化または半硬化の状態に保持される温度で蒸発させることができるものであれば特に限定されず、例えば、沸点が50〜200℃、好ましくは80〜150℃の溶剤が挙げられる。LED装置用のシリコーン積層基板を製造する場合には、上述したシリコーン樹脂組成物を溶解・分散することができ、かつ、該組成物が未硬化または半硬化の状態に保持される温度で蒸発させることができるものであれば特に限定されず、例えば、沸点が50〜150℃、好ましくは60〜100℃の溶剤が挙げられる。溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系非極性溶剤;エーテル類等が挙げられる。溶剤の使用量は、上述したシリコーン樹脂組成物が溶剤・分散し、得られた溶液または分散液をガラスクロスに含浸させることができる量であれば、特に制限されず、該シリコーン樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは、10〜200質量部、より好ましくは20〜100質量部である。LED装置用のシリコーン積層基板を製造する場合には、上述したシリコーン樹脂組成物が溶解・分散し、得られた溶液または分散液をガラスクロスに含浸させることができる量であれば、特に制限されず、該シリコーン樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは、10〜200質量部、より好ましくは50〜100質量部である。
【0114】
上述したシリコーン樹脂組成物の溶液または分散液は、例えば、ガラスクロスを該溶液または分散液に浸漬することにより、または、ガラスクロスの片面もしくは両面にディップ装置等を用いて塗布することにより、ガラスクロスに含浸させることができる。
【0115】
溶剤の蒸発は、例えば、上述したシリコーン樹脂組成物を溶剤に溶解・分散された状態で含浸させたガラスクロスを、好ましくは50〜150℃、より好ましくは60〜100℃で放置させることにより行うことができる。適宜、オーブン、ドライヤー等の加熱装置を用いてもよい。
【0116】
加圧成型下での加熱硬化は、例えば、熱プレス機、真空プレス機等を用いて、好ましくは1〜100MPa、より好ましくは5〜50MPaの圧力下、好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜180℃の温度下で行うことができる。加圧成型時間は、好ましくは10〜150分、より好ましくは40〜120分である。また、50〜200℃、特に70〜180℃で0.1〜10時間、特に1〜4時間のポストキュアを行うことができる。
【0117】
(LED装置)
本発明のLED装置は、本発明の積層板と、該基板上に実装されたLEDチップとを有する。
図1は本発明のLED装置の一例を示す断面図である。
図1に示すLED装置1において、本発明の積層板(シリコーン積層基板)2上には陽極と陰極とからなる電極パターン3が作製され、電極パターンの一方の電極にダイボンディングペースト4を介してLEDチップ5がダイボンディングされている。LEDチップ5と電極パターン3の他方の電極との間にはボンディングワイヤー6が接続されている。電極パターン3の一部、LEDチップ5およびボンディングワイヤー6は透明封止体7によって封止されている。
【0118】
電極パターン3は、公知の方法で作製すればよく、例えば、本発明のシリコーン積層基板2と、該基板2の片面または両面に設けられた銅箔とを有する銅箔積層基板に対してエッチングなどを行うことにより作製することができる。ダイボンディングペースト4としては、例えば、銀ペーストなどが挙げられる。ボンディングワイヤー6としては、例えば、金線等が挙げられる。透明封止体7は、例えば、シリコーン封止剤、エポキシ封止剤などの公知の封止剤を、適宜所望の形状に成型して、硬化させることにより設けることができる。
【実施例】
【0119】
以下、合成例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、本発明中で言及する重量平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレンを標準物質とした重量平均分子量を指すこととする。
[測定条件]
展開溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.6mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSK Guardcolomn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL(濃度0.5重量%のTHF溶液)
【0120】
(合成例1)
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A1)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:952.5g(81.5モル%)、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2Cl:398.0g(9.1モル%)、MeViSiCl
2:37.8g(4.9モル%)、Me
2ViSiCl:30.2g(4.5モル%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有レジンを合成した。このレジンの重量平均分子量は11000、ビニル基含有量は0.05モル/100gであった。
【0121】
(合成例2)
−ビニル基含有オルガノポリシロキサン樹脂(A2)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:499.6g(81.5モル%)、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2Cl:398.0g(9.1モル%)、MeViSiCl
2:37.8g(9.4モル%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、T単位からなる三次元網状構造のビニル基含有樹脂(A2)を合成した。この樹脂は、重量平均分子量14000、ビニル基含有量は0.15モル/100gである。
【0122】
(合成例3)
−ヒドロシリル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂(B−1−1)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:666.8g(81.8モル%)、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2Cl:278.6g(9.1モル%)、MeHSiCl
2:21.8g(4.9モル%)、Me
2HSiCl:16.6g(4.5モル%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有レジンを合成した。このレジンの重量平均分子量は9000、ヒドロシリル基含有量は0.05モル/100gであった。
【0123】
(合成例4)
−ヒドロシリル基含有オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂(B−1−2)−
PhSiCl
3で示されるオルガノシラン:666.8g(81.8モル%)、ClMe
2SiO(Me
2SiO)
8SiMe
2Cl:278.6g(9.1モル%)、MeHSiCl
2:40.3g(9.4モル%)をトルエン溶媒に溶解後、水中に滴下し、共加水分解し、更に水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有レジンを合成した。このレジンの重量平均分子量は11000、ヒドロシリル基含有量は0.05モル/100gであった。
【0124】
(合成例5)
−直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−1)−
Ph
2Si
(OMe
)2で示されるオルガノシラン:5376g(57.1モル%)、アセトニトリル:151.8gを10℃以下まで冷却し、濃硫酸:303.69g、水:940.36g、(HSiMe
2)
2O:2216g(42.9モル%)を滴下し、終夜撹拌した。水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを合成した。得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは下記一般式(8)に示される両末端ハイドロジェンポリシロキサンを主成分とするものだった。
【0125】
【化8】
(n=2.0(平均値))
【0126】
(合成例6)
−直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−2)−
[(Me)
2SiO]
n(n=4.0(平均値))で示されるジメチルシクロシロキサン:2340g(66.8モル%)に、濃硫酸:69.85g、水:216.28g、(HSiMe
2)
2O:528g(33.2モル%)を滴下し、終夜撹拌した。水洗、アルカリ洗浄にて中和、脱水後、溶剤をストリップし、ヒドロシリル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを合成した。得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは下記一般式(9)に示される両末端ハイドロジェンポリシロキサンを主成分とするものだった。
【0127】
【化9】
(p=8.0(平均値))
【0128】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
(実施例1)
合成例1で得られたビニル基含有樹脂(A1):122.8g、合成例3で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−1):55.4g、合成例5で得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−1):7.35g、反応抑制剤としてアセチレンアルコール系のエチニルメチルデシルカルビノール:0.2g、塩化白金酸の1質量%オクチルアルコール溶液:0.2gを加え、よく撹拌してベース組成物を得た。このベース組成物に、溶剤としてトルエン290gを加え、さらにトリメトキシビニルシラン(ViSi(OMe)
3)で表面処理したアルミナ(商品名:アドマファインAO−502、平均粒子径:約0.7μm、(株)アドマテックス製)を395gおよび、二酸化チタン(商品名:PF−691、平均粒子径:約0.2μm、(株)石原産業製)を10g加えて、シンキーミキサーで撹拌し、シリコーン樹脂組成物のトルエン分散液を調製した。
【0129】
このトルエン分散液にガラスクロス(日東紡製、厚さ:100μm)を浸漬することにより、該トルエン分散液を該ガラスクロスに含浸させた。該ガラスクロスを110℃で8分間放置することによりトルエンを蒸発させた。トルエンを蒸発させた後のガラスクロスの両面には、室温で固体の皮膜が形成されていた。該ガラスクロスを熱プレス機にて160℃で20分間、その後200℃で70分間加圧成型してシリコーン積層基板を得た。また、前記ガラスクロスを銅箔(古河電気工業製、厚さ35μm)2枚の間に挟み、熱プレス機にて160℃で20分間、その後200℃で70分間加圧成型して銅張積層基板を得た。
【0130】
(実施例2)
合成例1で得られたビニル基含有樹脂(A−1):111.8g、合成例3で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−1):73.8g、合成例5で得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−1):4.9gを用い、実施例1と同様にして、シリコーン積層基板および銅張積層基板を得た。
【0131】
(実施例3)
実施例1において、合成例1で得られたビニル基含有樹脂(A−1)の代わりに、合成例2で得られたビニル基含有樹脂(A−2):122.8gを用い、合成例3で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−1)の代わりに、合成例4で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−2):55.4gを用いた以外は、実施例1と同様にして、シリコーン積層基板および銅張積層基板を得た。
【0132】
(実施例4)
合成例1で得られたビニル基含有樹脂(A−1):121.2g、合成例3で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−1):66.7g、合成例6で得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−2):12.1gを用い、実施例1と同様にして、シリコーン積層基板および銅張積層基板を得た。
【0133】
(実施例5)
実施例1において、二酸化チタンを用いずにアルミナのみを395g用いた以外は、実施例1と同様にして、シリコーン積層基板および銅張積層基板を得た。
【0134】
(比較例1)
実施例1において、合成例5で得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−1)を用いずに、合成例1で得られたビニル基含有樹脂(A−1):94.7g、合成例3で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−1):105.3gを用いて、シランカップリング処理していないアルミナ(商品名:アドマファインAO−502、平均粒子径:約0.7μm、(株)アドマテックス製)を使用した以外は実施例1と同様にして、シリコーン積層基板および銅張積層基板を得た。
【0135】
(比較例2)
実施例3において、合成例5で得られた直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B−2−1)を用いずに、合成例2で得られたビニル基含有樹脂(A−2):94.7g、合成例4で得られたヒドロシリル基含有樹脂(B−1−2):105.3gを用いて、シランカップリング処理していないアルミナ(商品名:アドマファインAO−502、平均粒子径:約0.7μm、(株)アドマテックス製)を使用した以外は実施例3と同様にして、シリコーン積層基板および銅張積層基板を得た。
【0136】
(比較例3)
実施例1で作製したシリコーン積層基板の代わりに、市販の白色ガラスエポキシ基板を用いて、耐熱変色性試験を行った。
【0137】
評価としては以下の項目について実施した。
【0138】
1.外観
得られたシリコーン積層基板の表面の均一性、即ち、該表面が平滑であるか、凹凸を有し不均一であるかどうかを目視により確認した。
【0139】
2.ピール強度の測定
JIS C 6481に従い、得られた銅張積層基板を25mm幅に切りだし、35μm銅箔1mm幅のピール強度をヘッドスピード50mm/minで測定した(n=3の平均値を測定した。)。
【0140】
3.IRリフロー試験
得られたシリコーン銅張積層板に対してIRリフロー装置(商品名:リフローソルダリング装置、(株)田村製作所製)により260℃、10秒間のIRリフロー処理を2回行って、銅箔が剥離したかどうかを確認した。
【0141】
4.耐熱変色性
得られた銅張積層基板の銅箔をエッチング処理によって除去したのち、該積層基板表面の青色LEDの平均波長(450nm)における反射率を光反射率測定機X−rite 8200(積分球分光光度計、X−rite社(US)製)にて測定し、さらに200℃23時間加熱処理したのちの反射率も同様に測定した。
【0142】
5.耐紫外変色性
得られた銅張積層基板の銅箔をエッチング処理によって除去したのち、該積層基板表面の青色LEDの平均波長(450nm)における反射率を光反射率測定機X−rite 8200(積分球分光光度計、X−rite社(US)製)にて測定し、さらに波長365nm、強度30mW/cm
2の紫外線を120℃で5時間照射したのちの反射率も同様に測定した。
【0143】
これらの各測定結果を表1、2に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1が示すように、本発明に係る(A)成分、(B−1)成分及び(B−2)成分を用いた積層基板を用いることで、銅箔との接着強度が向上したシリコーン積層基板を得ることができた。一方、比較例1、2は(B−2)成分を含まないため、実施例1〜5に対し、特に銅箔との接着強度(ピール強度)が劣る。
【0146】
【表2】
【0147】
表2が示すように、本発明のシリコーン積層基板は、汎用のエポキシ基板と比較して耐熱性及び耐紫外性の特性に著しく優れており、加工時の加熱およびLEDチップの発熱量の増大による基板の劣化を防ぐことができることが明確となった。
【0148】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。