特許第6072663号(P6072663)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6072663加熱硬化型導電性シリコーン組成物、該組成物からなる導電性接着剤、該組成物からなる導電性ダイボンド材、該ダイボンド材の硬化物を有する光半導体装置。
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  • 特許6072663-加熱硬化型導電性シリコーン組成物、該組成物からなる導電性接着剤、該組成物からなる導電性ダイボンド材、該ダイボンド材の硬化物を有する光半導体装置。 図000033
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6072663
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】加熱硬化型導電性シリコーン組成物、該組成物からなる導電性接着剤、該組成物からなる導電性ダイボンド材、該ダイボンド材の硬化物を有する光半導体装置。
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20170123BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20170123BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170123BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170123BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08K5/14
   C08K3/00
   H01L21/52 E
   C09J9/02
   C09J11/04
   C09J183/07
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-214594(P2013-214594)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78256(P2015-78256A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】小内 諭
(72)【発明者】
【氏名】小材 利之
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−074982(JP,A)
【文献】 特開2012−052029(JP,A)
【文献】 特開平03−128937(JP,A)
【文献】 特許第3418778(JP,B2)
【文献】 国際公開第2008/108326(WO,A1)
【文献】 特開平09−095652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08K 3/00−13/08
C09J 1/00−201/10
H01L 21/00−21/98
C08G 77/00−77/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
[式中、mは0,1,2のいずれかであり、Rは水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、Rは水素原子またはメチル基、Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜12の1価の有機基、Zは−R−、−R−O−、−R(CHSi−O−(Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基)のいずれか、Zは酸素原子又は置換若しくは非置換で同一若しくは異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基である。]
(B)有機過酸化物:前記(A)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、
(C)導電性粒子:前記(A)成分と前記(B)成分の固形分100質量部を基準として0.1〜1000質量部
を含有するものであることを特徴とする加熱硬化型導電性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサンのZが−R−であり、前記Zが酸素原子であることを特徴とする請求項1に記載の加熱硬化型導電性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサンのZが−R−O−又は、−R(CHSi−O−であり、前記Zが置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基であることを特徴とする請求項1に記載の加熱硬化型導電性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサン中に、0.1mol%以上(SiO)単位を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性シリコーン組成物。
【請求項5】
前記(A)成分のオルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性シリコーン組成物。
【化2】
(式中、m、R、R、R、Rは上記と同様である。)
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性シリコーン組成物からなるものであることを特徴とする導電性接着剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の加熱硬化型導電性シリコーン組成物からなるものであり、半導体素子を配線板に導電接続するために使用するものであることを特徴とする導電性ダイボンド材。
【請求項8】
請求項7に記載の導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有するものであることを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱硬化型導電性シリコーン組成物、該組成物からなる導電性接着剤、該組成物からなる導電性ダイボンド材、該ダイボンド材の硬化物を有する光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)などの光半導体素子は電力消費量が少ないという優れた特性を有するため、屋外照明用途や自動車用途の光半導体デバイスへの適用が増えてきている。このような光半導体デバイスは、一般に青色光、近紫外光あるいは紫外光を発光する光半導体発光素子から発する光を、波長変換材料である蛍光体によって波長変換して疑似白色が得られるようにした発光装置である。
【0003】
近年、光半導体素子の更なる発光効率の向上を目的として、垂直型光半導体素子の開発がなされている。垂直型(Vertical)光半導体素子は電極を垂直構造で配置したものであり、単に垂直型LEDチップとも呼ばれる。垂直型LEDチップは、発光層に均一に電流が流れることにより、電極を水平配置した構造である同サイズの水平型(lateral)LEDチップに比べ、数十倍の電流を流すことが可能であり、発光層の温度上昇を抑え、発光効率を高めることができる。更に、水平型LEDチップに見られた局所的な電流密度の増加が抑制され、LEDの大電流化が可能となるなど、優れた特長を持つため、その実用が進んでいる。
【0004】
一方で、垂直型LEDチップは、前述のとおり電極を垂直構造で配置していることから理解されるように、垂直型LEDチップを配線板に搭載する場合、一方の電極は従来と同様ワイヤーボンドなどの方法を用いて電気的に接続し、もう一方の電極は共晶半田や導電性接着剤などを用いて電気的に接続する必要がある。
【0005】
従来、垂直型LEDチップを配線板に搭載するための接着剤として、共晶半田やエポキシ樹脂組成物に導電性粒子を配合した導電性接着剤が広く用いられている。共晶半田を用いる方法では、ダイボンド時に必要な半田を溶融するため熱により、光半導体の発光層にダメージを与えるため好ましくない。
【0006】
一方、導電性接着剤を用いた例として、例えば、特許文献1では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはビスフェノールF型エポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂を併用し、さらに紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール誘導体を添加することで450〜500nm付近の光に対する耐光性を改善した導電性接着剤が提案されている。しかしながら、前述の通り、光半導体素子が垂直型となり、より一層の高出力化するに伴い、エポキシ樹脂導電性組成物では、波長の短い青色光や紫外線に対する耐光性が伴わず、依然、光による劣化で経時で変色、分解するという問題が生じている。
【0007】
特許文献2には、特定の導電性粉末、(3,5−ジグリシジルイソシアヌリル)アルキル基を有するオルガノポリシロキサン及びグリシジル基と反応する硬化触媒(アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤)を含有する、光半導体素子用のダイボンド材が提案されている。しかしながら、同様に、イソシアヌリル基に代表される有機基が、短波長の光により劣化を受け、経時で変色、分解するという問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3769152号公報
【特許文献2】特開2012−52029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性を有する硬化物を与える加熱硬化型導電性シリコーン組成物を提供することを目的とする。また、該組成物からなる導電性接着剤、該組成物からなる導電性ダイボンド材を提供することを目的とする。さらに、該ダイボンド材で光半導体素子をダイボンディングした光半導体装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明では、(A) 下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
[式中、mは0,1,2のいずれかであり、Rは水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、Rは水素原子またはメチル基、Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜12の1価の有機基、Zは−R−、−R−O−、−R(CHSi−O−(Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基)のいずれか、Zは酸素原子又は置換若しくは非置換で同一若しくは異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基である。]
(B)有機過酸化物:前記(A)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、
(C)導電性粒子:前記(A)成分と前記(B)成分の固形分100質量部を基準として0.1〜1000質量部
を含有するものであることを特徴とする加熱硬化型導電性シリコーン組成物を提供する。
【0011】
このような加熱硬化型導電性シリコーン組成物であれば、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を与えることができる。
【0012】
また、前記(A)成分のオルガノポリシロキサンのZが−R−であり、前記Zが酸素原子であることが好ましい。
【0013】
また、前記(A)成分のオルガノポリシロキサンのZが−R−O−又は、−R(CHSi−O−であり、前記Zが置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基であることが好ましい。
【0014】
このようなZ、Zの組み合せの時、本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物は、よりその効果が向上する。
【0015】
また、前記(A)成分のオルガノポリシロキサン中に、0.1mol%以上(SiO)単位を有することが好ましい。
【0016】
このような加熱硬化型導電性シリコーン組成物であれば、(B)成分が分解する際に発生するフリーラジカルと効果的に反応し、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を得ることができる。
【0017】
また、前記(A)成分のオルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有することが好ましい。
【化2】
(式中、m、R、R、R、Rは上記と同様である。)
【0018】
本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物は、このような単位を含有することが、特に好適である。
【0019】
更に本発明では、上記本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物からなるものであることを特徴とする導電性接着剤を提供する。
【0020】
このような導電性接着剤であれば、LEDチップを配線板に搭載するための接着剤として好適に用いることができる。
【0021】
更に本発明では、上記本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物からなるものであり、半導体素子を配線板に導電接続するために使用するものであることを特徴とする導電性ダイボンド材を提供する。
【0022】
このような導電性ダイボンド材であれば、LEDチップを配線板に搭載するための接着剤として好適に用いることができる。
【0023】
更に本発明では、上記本発明の導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有するものであることを特徴とする光半導体装置を提供する。
【0024】
本発明の組成物は、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を与えることができる。そのため、本発明の組成物からなる導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有する光半導体装置は、耐熱性、耐光性及び耐クラック性を有するものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物は、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性、耐クラック性及び耐変色性を有する硬化物(透明硬化物)を与えることができるため、LEDチップ、特に垂直型LEDチップを配線板に搭載するための接着剤として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の組成物からなる導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有する光半導体装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性を有する硬化物を与える加熱硬化型導電性シリコーン組成物が求められている。
【0028】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、(A) 下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化3】
[式中、mは0,1,2のいずれかであり、Rは水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、Rは水素原子またはメチル基、Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜12の1価の有機基、Zは−R−、−R−O−、−R(CHSi−O−(Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基)のいずれか、Zは酸素原子又は置換若しくは非置換で同一若しくは異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基である。]
(B)有機過酸化物:(A)成分の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、
(C)導電性粒子:(A)成分と(B)成分の固形分100質量部を基準として0.1〜1000質量部を含有する加熱硬化型導電性シリコーン組成物が、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を与えることができ、信頼性の高い光半導体装置を提供できることを見出し本発明に至った。
【0029】
以下、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
[(A)オルガノポリシロキサン]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサンである。
【化4】
[式中、mは0,1,2のいずれかであり、Rは水素原子、フェニル基又はハロゲン化フェニル基、Rは水素原子またはメチル基、Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜12の1価の有機基、Zは−R−、−R−O−、−R(CHSi−O−(Rは置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基)のいずれか、Zは酸素原子又は置換若しくは非置換で同一若しくは異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基である。]
【0031】
(A)成分のオルガノポリシロキサン中の、Z、Zの組み合わせとしては、Zが−R−であり、Zが酸素原子であるものや、Zが−R−O−又は、−R(CHSi−O−であり、Zが置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜10の2価の有機基であるものが(B)成分が分解する際に発生するフリーラジカルと効果的に反応し、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を得ることができるため好ましい。
【0032】
また、(A)成分のオルガノポリシロキサン中に、0.1mol%以上(SiO)単位を有することが(B)成分が分解する際に発生するフリーラジカルと効果的に反応し、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を得ることができるため好ましい。
【0033】
更に、(A)成分のオルガノポリシロキサンが、下記一般式(2)で表される構造を分子中に少なくとも1つ有することが(B)成分が分解する際に発生するフリーラジカルと効果的に反応し、接着強度及び作業性に優れ、かつ耐熱性、耐光性及び耐クラック性に優れた硬化物を得ることができるため好ましい。
【化5】
(式中、m、R、R、R、Rは上記と同様である。)
【0034】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃での粘度が10mPa・s以上の液状又は固体の分岐状又は三次元網状構造のオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0035】
上記式(1)において、Rで示されるケイ素原子に結合した置換又は非置換で同一又は異なってもよい1価の有機基としては、通常、炭素数1〜12、好ましくは1〜8程度の炭化水素基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0036】
上記式(1)において、Rで示される置換又は非置換で同一又は異なってもよい2価の有機基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素原子数1〜10のアルキレン基などの2価炭化水素基が例示され、炭素原子数1〜3のアルキレン基が好ましい。
【0037】
以下に(A)成分のオルガノポリシロキサンを例示する。(下記式において、Meはメチル基を示す。)この成分は単一成分でも、他の成分と併用でも良い。また、下記式において、上記式(1)中のRに相当する基が、メチル基の場合を例示しているが、その他の基(置換又は非置換で同一又は異なってもよい炭素数1〜12の1価の有機基)にも変更できる。
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
下記式に示す、MA単位、M単位、Q単位が、MA:M:Q=1:4:6の割合で含まれ、分子量がポリスチレン換算の重量平均分子量で、5000であるオルガノポリシロキサン。
【化8】
【化9】
【化10】
【0041】
下記式に示す、MA−D単位、D単位、T単位が、MA−D:D:T=2:6:7の割合で含まれ、分子量がポリスチレン換算の重量平均分子量で、3500であるオルガノポリシロキサン。
【化11】
【化12】
【化13】
【0042】
(A)成分には、組成物の粘度や硬化物の硬度を調整する等の目的で、以下に示すようなシリコーンを含む反応性希釈剤や、シリコーンを含まない反応性希釈剤を添加することが出来る。
【0043】
シリコーンを含む反応性希釈剤の具体的な例としては、下記式(3)〜(7)で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。(下記式において、Meはメチル基を示す。)この成分は単一でも、他の成分と併用でも良い。
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
(式中、pは18、qは180である。)
【0047】
【化17】
(式中、p’は20、qは180である。)
【0048】
【化18】
(式中、pは18、qは180である。)
【0049】
このような(A)成分の合成方法としては、たとえば、
【化19】
(式中、m、R、R、R、Zは上記と同様である。)
に示すオルガノシラン又はオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、脂肪族不飽和基(例えば、エチレン性不飽和基、及びアセチレン性不飽和基が挙げられる。)を含むオルガノポリシロキサンとを、塩化白金酸触媒存在下でヒドロシリル化反応させるとよく、この方法で本発明に好適なものを製造することができるが、前記の合成方法に制限されるものではない。また、市販のものを用いても良い。
【0050】
シリコーンを含まない反応性希釈剤としては、HC=CGCOによって示されるような(メタ)アクリレート類があり、上記式中、Gは、水素、ハロゲン、炭素原子1〜4個のアルキル基のいずれかであり;Rは、1〜16個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルカリル基、アラルキル基、アリール基のいずれかから選ばれ、これらのいずれかは、必要に応じ、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カルバメート、アミン、アミド、イオウ、スルホネート、スルホン等で置換し得る。
【0051】
反応性希釈剤としてとりわけ望ましい(メタ)アクリレート類としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレート(″EBIPA″又は″EBIPMA″)のようなビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレート及びジ(メタ)アクリレート、シトロネリルアクリレート及びシトロネリルメタクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(″HDDA″又は″HDDMA″)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(″ETTA″)、トリエチレングリコールジアクリレート及びトリエチレングリコールジメタクリレート(″TRIEGMA″)、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレート、に相応するアクリレートエステルがある。もちろん、これらの(メタ)アクリレート類の組合せも反応性希釈剤として使用できる。
【0052】
反応性希釈剤を添加する場合の添加量としては、0.01〜30質量%の範囲が好ましく、0.05〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、特定の用途において所望されるような硬化又は未硬化特性を改変させる他の成分も含ませ得る。例えば、(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリアルキル−又はトリアリル−イソシアヌレート、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような接着促進剤を含むことができ、約20質量%までの量含むことが好ましい。他の任意成分は、非(メタ)アクリルシリコーン希釈剤又は可塑剤が挙げられ、約30質量%までの量含むことが好ましい。非(メタ)アクリルシリコーン類としては、100〜500mPa・sの粘度を有するトリメチルシリル末端化オイル、及びシリコーンゴムが挙げられる。非(メタ)アクリルシリコーン類は、ビニル基のような共硬化性基を含み得る。
【0054】
[(B)有機過酸化物]
(B)成分の有機過酸化物は、本組成物を所望の形状に成形した後に、加熱処理を加えて架橋反応により硬化させるために配合される成分であり、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選択する。
【0055】
有機過酸化物は、高い反応性と長いポットライフを両立する観点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下であることが好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、かつ、半減期1分の温度が170℃以下であることがより好ましい。また、有機過酸化物は、回路部材の回路電極(接続端子)の腐食を防止するために、塩素イオンや有機酸の含有量が5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。
【0056】
この場合、有機過酸化物の熱分解によって生じるフリーラジカルによって、上記(A)成分中のケイ素原子に結合した炭化水素基同士、又は上記(A)成分中のビニル基、アリル基等のアルケニル基同士の結合反応が生じて架橋硬化物とすることができる。
【0057】
有機過酸化物としては、ラジカル重合反応等に用いられる公知のものを全て用いることができ、具体的には、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド及びシリルパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上が好適に用いられる。これらの中では、回路部材の接続構造や半導体装置における接続端子の腐食を更に抑制するために、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイド及びハイドロパーオキサイドからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0058】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン及びベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びt−ブチルクミルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ビス(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート及びビス(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
パーオキシエステルとしては、例えば、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート及びビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサヒドロテレフタレートが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン及び2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカンが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド及びクメンハイドロパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
シリルパーオキサイドとしては、例えば、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド及びトリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイドが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0065】
(B)成分の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。添加量が、0.1質量部未満の場合、反応が十分に進行しない恐れがある。10質量部を超える場合、所望とする硬化後の物性、すなわち十分な耐熱性、耐光性、耐クラック性が得られない恐れがある。
【0066】
[(C)導電性粒子]
本発明の導電性粒子としては、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、導電性無機酸化物を用いることができ、単独又は2種以上混合して使用することができる。粒子の大きさは、特に制限は無いが、好ましくは、0.2〜20μm、なお好ましくは0.3〜10μmである。粒子の好ましい形状として、球状、フレーク状、針状、無定型等が挙げられるが、この限りではない。
【0067】
金属粒子としては、例えば、金、ニッケル、銅、銀、半田、パラジウム、アルミニウム、それらの合金、それらの多層化物(例えば、ニッケルメッキ/金フラッシュメッキ物)等、を挙げることができる。中でも、導電性粒子を茶色としてしまうことのない、銀、半田、パラジウム、アルミニウムが好ましい。このような金属粒子の好ましい大きさ・形状としては、0.2〜10μmの球状粒子、あるいは0.2〜0.4μm厚で直径1〜10μmのフレーク状粒子が挙げられる。
【0068】
また、導電性粒子として、樹脂粒子を金属材料で被覆した金属被覆樹脂粒子を使用することができる。このような金属被覆樹脂粒子を構成する樹脂粒子としては、スチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ナイロン樹脂粒子などが挙げられる。樹脂粒子を金属材料で被覆する方法としても従来公知の方法を採用することができ、無電解メッキ法、電解メッキ法等を利用することができる。また、被覆する金属材料の層厚は、良好な接続信頼性を確保するに足る厚さであり、樹脂粒子の粒径や金属の種類にもよるが、通常、0.1〜10μmである。
【0069】
また、金属被覆樹脂粒子の粒径は、好ましくは1〜20μm、より好ましくは3〜10μm、特に好ましくは3〜5μmである。粒径が1〜20μmの範囲であれば、導通不良や、パターン間ショートが生じることがない。この場合、金属被覆樹脂粒子の形状としては球状が好ましいが、針状、フレーク状であってもよい。
【0070】
また、導電性無機酸化物として、無機酸化物に導電性を付与したものを使用することができる。このような金属被覆無機粒子を構成する無機粒子としては、酸化チタン(TiO)、窒化ホウ素(BN)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、無機ガラスなどが挙げられる。中でも、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが好ましい。導電性無機酸化物の被覆層は、導電性を付与されておれば良く、無機酸化物を銀などの金属材料で被覆したものであっても良いし、酸化錫にアンチモンをドープ、酸化インジウムに錫をドープするなど、導電性の被覆層を設けても良い。
【0071】
これらの導電性無機粒子は、太陽光の下では白色を呈する無機粒子であり、可視光を反射しやすい。無機粒子の粒径は好ましくは0.02〜10μm、より好ましくは0.1〜3μmである。無機粒子の形状としては無定型、球状、鱗片状、針状等を挙げることができる。
【0072】
導電性粒子の配合量は、接着剤組成物の(A)成分と(B)成分の固形分100質量部を基準として0.1〜1000質量部、好ましくは1〜500質量部がよい。導電性を付与するためには、0.1質量部は配合する必要があり、1000質量部を超えると、樹脂組成物の流動性が損なわれ作業性が低下する恐れがある。また、樹脂硬化物の強度が低下する原因となる恐れがある。
【0073】
本発明の(C)成分の導電性粒子の粒子径は、レーザー光回折による粒度分布測定における累積体積平均値D50(又はメジアン径)として測定した値である。
【0074】
[(D)その他の成分]
組成物の透明性を更に維持し、硬化物の着色、酸化劣化等の発生を抑えるために、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の従来公知の酸化防止剤を本発明の組成物に配合することができる。また、光劣化に対する抵抗性を付与するために、ヒンダードアミン系安定剤等の光安定剤を本発明の組成物に配合することもできる。
【0075】
本発明の組成物の強度を向上させ、粒子の沈降を抑えるために、更に、ヒュームドシリカ、ナノアルミナ等の無機質充填剤を配合してもよい。必要に応じて、本発明の組成物に、染料、顔料、難燃剤等を配合してもよい。
【0076】
また、作業性を改善する目的で溶剤等を添加して使用することも可能である。溶剤の種類は特に制限されるものでなく、硬化前の樹脂組成物を溶解し、導電性粉末を良好に分散させ、均一なダイボンド材あるいは接着剤等を提供できる溶剤であればよい。該溶剤の配合割合はダイボンド材等を使用する作業条件、環境、使用時間等に応じて適宜調整すればよい。溶剤は2種以上を併用してもよい。このような溶剤としては、ブチルカルビトールアセテート、カルビトールアセテート、メチルエチルケトン、α−テルピネオール、及びセロソルブアセテート等が挙げられる。
【0077】
また、本発明の組成物は、その接着性を向上させるための接着付与剤を含有してもよい。この接着付与剤としては、シランカップリング剤やその加水分解縮合物等が例示される。シランカップリング剤としては、エポキシ基含有シランカップリング剤、(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、イソシアネート基含有シランカップリング剤、イソシアヌレート基含有シランカップリング剤、アミノ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤等公知のものが例示され、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.3〜10質量部用いることができる。
【0078】
本発明の樹脂組成物は、上記各成分を、公知の混合方法、例えば、ミキサー、ロール等を用いて混合することによって製造することができる。また、本発明の樹脂組成物は、E型粘度計により23℃での回転粘度計による測定値として10〜1,000,000mPa・s、特には100〜1,000,000mPa・sであることが好ましい。
【0079】
本発明の組成物は、公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させることができる。具体的には、通常、80〜200℃、好ましくは100〜160℃で加熱することにより、該組成物を硬化させることができる。加熱時間は、0.5分〜5時間程度、特に1分〜3時間程度でよい。作業条件、生産性、発光素子及び筐体耐熱性とのバランスから適宜選定することができる。
【0080】
本発明の導電性樹脂組成物は、垂直型LEDチップをパッケージに固定するために好適に用いることができる。また、その他発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、及びLEDアレイ等の光半導体素子にも好適に用いることができる。
【0081】
更に本発明では、上記本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物からなる導電性接着剤を提供する。また、上記本発明の加熱硬化型導電性シリコーン組成物からなるものであり、半導体素子を配線板に導電接続するために使用する導電性ダイボンド材を提供する。
【0082】
このような導電性接着剤、導電性ダイボンド材であれば、LEDチップを配線板に搭載するための接着剤として好適に用いることができる。
【0083】
ダイボンド材を塗布する方法は特に制限されず、例えば、スピンコーティング、印刷、及び圧縮成形等が挙げられる。ダイボンド材の厚みは適宜選択すればよく、通常5〜50μm、特には10〜30μmである。例えば、ディスペンス装置を用いて23℃の温度、0.5〜5kgf/cmの圧力で吐出することで容易に塗布ができる。また、スタンピング装置を用いることで、所定の量のダイボンド材を基板に転写することでも容易にできる。
【0084】
更に本発明では、上記本発明の導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有するものであることを特徴とする光半導体装置を提供する。
【0085】
本発明の光半導体装置は、本発明の組成物からなる導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有するため、耐熱性、耐光性及び耐クラック性を有するものとなる。
【0086】
本発明の光半導体装置は、本発明の組成物からなるダイボンド材を基板に塗布した後、従来公知の方法に従い光半導体素子をダイボンディングすることにより製造することができる。
【0087】
以下、本発明の光半導体装置の一態様について図面を参照して説明する。図1は、本発明の組成物からなる導電性ダイボンド材を硬化して得られる硬化物を有する光半導体装置の一例を示す断面図である。この光半導体装置は、光半導体素子4の下部電極と第1のリード2を導電性ダイボンド材1により、電気的に接続し、光半導体素子4の上部電極と第2のリード3をワイヤー5により電気的に接続し、光半導体素子4を封止材6で封止したものである。
【0088】
図1の光半導体装置の製造方法としては、以下の方法を例示できる。
パッケージ基板上の第1のリード2に、導電性ダイボンド材1を定量転写し、その上に光半導体素子4を搭載する。次に導電性ダイボンド材1を加熱硬化させ、光半導体素子4の下部電極と第1のリード2を電気的に接続する。次いで、光半導体素子4が搭載されたパッケージ基板を、光半導体素子4の上部電極と第2のリード3に対してワイヤー5を用いて電気的に接続し、光半導体素子4が搭載されたパッケージ基板を得る。次いで、封止材6を定量塗布し、封止材6の加熱硬化を行う。
【実施例】
【0089】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。(下記式において、Meはメチル基を示す。)
【0090】
〔調整例〕
(調整例1〜3)
下記成分を用意し、表1に示す組成のシリコーン組成物を調製した。
【0091】
[(A)成分]
(A−1)
下記式に示す、MA単位、M単位、Q単位が、MA:M:Q=1:4:6の割合で含まれ、分子量がポリスチレン換算の重量平均分子量で、5000であるオルガノポリシロキサン。
【化20】
【化21】
【化22】
【0092】
(A−2)
【化23】
【0093】
(A−3)
下記式に示す、MA−D単位、D単位、T単位が、MA−D:D:T=2:6:7の割合で含まれ、分子量がポリスチレン換算の重量平均分子量で、3500であるオルガノポリシロキサン。(下記式において、Meはメチル基を示す。)
【化24】
【化25】
【化26】
【0094】
[(B)成分]
(B)1,1−Di(t−butylperoxy)cyclohexane(商品名:パーヘキサC、日本油脂株式会社製)
【0095】
調整例1〜3の(A)成分、(B)成分の配合量を、表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
(調整例−4)
(C)SiO3/2単位、(CH=CH)(CH)SiO2/2単位及び(CHSiO2/2単位からなり、平均組成が(CH0.65(C0.55(CH=CH)0.25SiO1.28で示されるオルガノポリシロキサン樹脂共重合体(シリコーンレジン)の100質量部に対して、ケイ素原子に結合したメチル基、フェニル基、水素原子(SiH基)の合計に対してフェニル基を20モル%有する、水素ガス発生量が150ml/gである、粘度10mPa・sのフェニルメチルハイドロジェンシロキサンを20質量部、エチニルシクロヘキサノールを0.2質量部、この混合物に白金触媒を白金原子として20ppmを混合し、減圧脱泡してシリコーン組成物を調整した。
【0098】
(調整例−5)
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(商品名 EOCN103S、大日本インキ化学工業社製)80質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名 エピコート#1007、油化シェルエポキシ社製)20質量部に対し、硬化剤としてフェノール樹脂(商品名 BRG558、昭和高分子社製)40質量部を、ジエチレングリコールジエチルエーテル140質量部中で85℃,1時間溶解反応を行い、粘稠な樹脂を得た。この樹脂28質量部に、硬化触媒としてイミダゾールの2−エチル−4−メチルイミダゾール0.2質量部を混合し、減圧脱泡してエポキシ組成物を調整した。
【0099】
[実施例1〜8]
(実施例1)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)30質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(導電性樹脂組成物)(a)を製造した。
【0100】
(実施例2)
調整例2で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)30質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(b)を製造した。
【0101】
(実施例3)
調整例3で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)30質量部、補強材として煙霧質シリカ(製品名 レオロシールDM−30S、トクヤマ社製)5質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(c)を製造した。
【0102】
(実施例4)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径0.3μmの導電性酸化チタン(製品名 EC−210、チタン工業社製)50質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(d)を製造した。
【0103】
(実施例5)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径0.3μmの導電性酸化ケイ素(製品名 ES−650E、チタン工業社製)100質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(e)を製造した。
【0104】
(実施例6)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径0.4μmの導電性酸化アルミ(製品名 EC−700、チタン工業社製)50質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(f)を製造した。
【0105】
(実施例7)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径3.0μmの、樹脂微粒子に金メッキがなされた導電性微粒子(製品名 ミクロパールAU−203、積水化学工業社製)50質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(g)を製造した。
【0106】
(実施例8)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)1000質量部、溶剤としてキシレンを100質量部混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(h)を製造した。
【0107】
[比較例1〜3]
(比較例1)
調整例4で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)30質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(i)を製造した。導電性ペースト(i)は、ダイボンド材の加熱硬化工程で十分な硬化がなされず、後の工程のワイヤーボンドを行うことができず、光半導体パッケージを得ることができなかった。
【0108】
(比較例2)
調整例5で得られたエポキシ組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)30質量部を混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(j)を製造した。
【0109】
(比較例3)
調整例1で得られたシリコーン組成物100質量部、導電性粒子として平均粒径6.9μmの銀粉(製品名 シルベストTCG−7、徳力科学研究所社製)1100質量部を混合し、溶剤としてキシレンを100質量部混合し、さらに三本ロールで混練処理を行い、減圧脱泡して導電性ペースト(k)を製造した。導電性ペースト(k)は、ダイボンダーでのスタンピング工程で十分な作業性を得ることできず(具体的には定量転写が行えなかった)、光半導体素子を実装することができず、光半導体パッケージを得ることができなかった。
【0110】
実施例、比較例の組成物について、以下の諸特性を測定した。結果を表2、表3に示す。
【0111】
[光半導体パッケージの作製]
LED用パッケージ基板として、光半導体素子を載置する凹部を有し、その底部に銀メッキされた第1のリードと第2のリードが設けられたLED用パッケージ基板[SMD5050(I−CHIUN PRECISION INDUSTRY CO.,社製、樹脂部PPA(ポリフタルアミド))]、光半導体素子として、主発光ピークが450nmの垂直型LED(SemiLEDs社製 EV−B35A)を、それぞれ用意した。
【0112】
ダイボンダー(ASM社製 AD−830)を用いて、パッケージ基板の銀メッキされた第1のリードに、実施例及び比較例に示す各導電性ダイボンド材をスタンピングにより定量転写し、その上に光半導体素子を搭載した。次にパッケージ基板をオーブンに投入し各ダイボンド材を加熱硬化させ(実施例1〜8、比較例1、及び比較例3は150℃ 1時間、比較例2は170℃ 4時間)、光半導体素子の下部電極と第1のリードを電気的に接続した。次いでワイヤーボンダーを用いて、該光半導体素子が搭載された該LED用パッケージ基板を、光半導体素子の上部電極と第2のリードに対して金ワイヤー(田中電子工業社製 FA 25μm)を用いて電気的に接続し、光半導体素子が搭載されたLED用パッケージ基板各1枚(パッケージ数にして120個)を得た。
【0113】
次いで、上記で得られた光半導体素子が搭載されたLED用パッケージ基板1枚の半分(パッケージ数にして60個)を採取し、ディスペンス装置(武蔵エンジニアリング製、SuperΣ CM II)を用いて、シリコーン封止材(製品名:KER2500、信越化学工業株式会社製)を定量塗布し、150℃、4時間で封止材の加熱硬化を行った。
【0114】
上記のようにして、導電性ダイボンド材の異なる光半導体パッケージを作製し、以下の試験に用いた。なお、工程上問題なく作製可能であったものを○、何らかの不具合が発生し作製不可能であったものを×として表2、表3に示した。
【0115】
[温度サイクル試験]
上記の方法で得られた封止材が充填された光半導体パッケージのうち10個を、温度サイクル試験(−40℃〜125℃、各20分間を1000サイクル)に用い、顕微鏡で、試験後のサンプルの導電性接着材部のクラックの有無を観察し、クラックが発生した試験片数/総試験片数を数えた。更に、試験後のサンプルの通電試験を行い、点灯した試験片数/総試験片数を数えた。
【0116】
[高温点灯試験]
上記の方法で得られた封止材が充填された光半導体パッケージのうち10個を、高温下(85℃)で、350mA通電、1000時間点灯した後、光半導体素子と光半導体素子を載置する凹部の底部との間の剥離等の接着不良の有無、クラック発生の有無、及び光半導体素子周りの接着層の変色の有無を顕微鏡で観察し、外観異常が発生した試験片数/総試験片数を数えた。更に、試験後のサンプルの通電試験を行い、点灯した試験片数/総試験片数を数えた。
【0117】
[ダイシェア試験]
上記の方法で得られた封止材を充填しなかった光半導体パッケージのうち10個を、25度の室内でボンドテスター(Dage社製 Series4000)を用いてダイシェア強度の測定を行い、得られた測定値の平均値をMPaで示した。
更に、上記の方法で得られた封止材を充填しなかった光半導体パッケージのうち10個を、高温下(85℃)で、350mA通電、1000時間点灯した後、同様にボンドテスター(Dage社製 Series4000)を用いてダイシェア強度の測定を行い、得られた測定値の平均値をMPaで示した。
【0118】
得られた結果を表2、表3に示す。
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
表2に示すように、本発明の範囲を満たす導電性樹脂組成物(a)〜(h)をダイボンド材として用いた実施例1〜実施例8では、温度サイクル試験後のクラックの発生がなく、すべてのパッケージで点灯可能であった。また、高温通電試験(高温点灯試験)でも導電性樹脂組成物に外観の変化はなく、すべてのパッケージで点灯可能であった。更に、高温通電試験前後のダイシェア測定の結果、接着力変化のない信頼性の高い光半導体デバイスを製造できることがわかった。
【0122】
一方、表3に示すように、(A)成分及び(B)成分が本発明の範囲を満たさないシリコーン樹脂組成物である比較例1では、ダイボンド材の加熱硬化工程で十分な硬化がなされず良好な硬化物が得られなかった。このため、後の工程のワイヤーボンドを行うことができず、光半導体パッケージとすることができなかった。
【0123】
(A)成分及び(B)成分が本発明の範囲を満たさないエポキシ樹脂組成物である比較例2では、温度サイクル試験後にダイボンド材の硬化物のクラック及び不点灯を確認した。また、高温通電試験後、光半導体素子からの光及び熱により黒く変色したエポキシ樹脂が確認され、更に不点灯を確認した。更に、高温通電試験前後のダイシェア測定の結果、素子搭載初期と比較して、通電試験後に接着力の低下が確認された。
【0124】
(A)成分及び(B)成分が本発明の範囲を満たすシリコーン樹脂組成物であるが、(C)成分の導電性粒子の配合量が範囲外となる比較例3では、ダイボンダーでのスタンピング工程で十分な作業性を得ることできず(具体的には定量転写が行えなかった)、従って安定して光半導体素子を搭載することができず、光半導体パッケージを得ることができなかった。
【0125】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0126】
1…導電性ダイボンド材、 2…第1のリード、 3…第2のリード、 4…光半導体素子、 5…ワイヤー、 6…封止材。
図1