特許第6073114号(P6073114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6073114ロボットカメラ制御装置、そのプログラム及び多視点ロボットカメラシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6073114
(24)【登録日】2017年1月13日
(45)【発行日】2017年2月1日
(54)【発明の名称】ロボットカメラ制御装置、そのプログラム及び多視点ロボットカメラシステム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20170123BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20170123BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20170123BHJP
   G03B 17/56 20060101ALI20170123BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20170123BHJP
【FI】
   H04N5/232 Z
   H04N5/225 Z
   G03B15/00 S
   G03B15/00 P
   G03B17/56 A
   G06T1/00 315
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-253089(P2012-253089)
(22)【出願日】2012年11月19日
(65)【公開番号】特開2014-103491(P2014-103491A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年10月1日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】池谷 健佑
(72)【発明者】
【氏名】岩舘 祐一
(72)【発明者】
【氏名】久富 健介
(72)【発明者】
【氏名】片山 美和
【審査官】 高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−114593(JP,A)
【文献】 特開2009−069551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222−5/257
H04N 13/00−13/04
G03B 15/00
G03B 17/56
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のロボットカメラのうち、予め設定された1台のロボットカメラであるマスターカメラの光軸上を移動可能な注視点に向くように、前記マスターカメラ以外のロボットカメラであるスレーブカメラの姿勢を制御するロボットカメラ制御装置であって、
前記マスターカメラのカメラ姿勢を操作するカメラ姿勢操作部と、
前記マスターカメラから前記注視点までの距離を示すデプス値が、所定のデプス入力範囲内で入力され、前記注視点が前記マスターカメラから離れる程、単位時間あたりの前記注視点の移動距離が長くなるように、入力された前記デプス値を非線形に変化させるデプス値入力部と、
被写体に合焦したときの前記マスターカメラの前方被写界深度から後方被写界深度までの範囲を、予め設定された被写界深度と前記デプス値との対応関係に基づいて、前記デプス入力範囲に変換して前記デプス値入力部に設定するデプス入力範囲設定部と、
カメラキャリブレーションを行ったときの前記マスターカメラのカメラ姿勢と、前記マスターカメラの外部パラメータである並進ベクトルとを、前記カメラキャリブレーションにより算出するカメラキャリブレーション部と、
前記カメラ姿勢操作部と前記カメラキャリブレーション部とのカメラ姿勢の差分に基づいて、前記マスターカメラにおける回転行列を算出し、算出した前記回転行列に含まれる奥行成分のベクトルと前記デプス値との積に前記並進ベクトルを加算することで、前記注視点の位置を算出する注視点算出部と、
前記注視点算出部が算出した注視点に向くように、前記スレーブカメラの姿勢を制御するスレーブカメラ制御部と、
を備えることを特徴とするロボットカメラ制御装置。
【請求項2】
前記デプス入力範囲設定部は、前記マスターカメラから前記前方被写界深度及び前記後方被写界深度が入力されることを特徴とする請求項1に記載のロボットカメラ制御装置。
【請求項3】
複数台のロボットカメラのうち、予め設定された1台のロボットカメラであるマスターカメラと、前記マスターカメラ以外のロボットカメラであるスレーブカメラと、前記マスターカメラの光軸上を移動可能な注視点に向くように前記スレーブカメラの姿勢を制御するロボットカメラ制御装置とを備える多視点ロボットカメラシステムであって、
前記ロボットカメラ制御装置が、
前記マスターカメラのカメラ姿勢を操作するカメラ姿勢操作部と、
前記マスターカメラから前記注視点までの距離を示すデプス値が、所定のデプス入力範囲内で入力され、前記注視点が前記マスターカメラから離れる程、単位時間あたりの前記注視点の移動距離が長くなるように、入力された前記デプス値を非線形に変化させるデプス値入力部と、
被写体に合焦したときの前記マスターカメラの前方被写界深度から後方被写界深度までの範囲を、予め設定された被写界深度と前記デプス値との対応関係に基づいて、前記デプス入力範囲に変換して前記デプス値入力部に設定するデプス入力範囲設定部と、
カメラキャリブレーションを行ったときの前記マスターカメラのカメラ姿勢と、前記マスターカメラの外部パラメータである並進ベクトルとを、前記カメラキャリブレーションにより算出するカメラキャリブレーション部と、
前記カメラ姿勢操作部と前記カメラキャリブレーション部とのカメラ姿勢の差分に基づいて、前記マスターカメラにおける回転行列を算出し、算出した前記回転行列に含まれる奥行成分のベクトルと前記デプス値との積に前記並進ベクトルを加算することで、前記注視点の位置を算出する注視点算出部と、
前記注視点算出部が算出した注視点に向くように、前記スレーブカメラの姿勢を制御するスレーブカメラ制御部と、
を備えることを特徴とする多視点ロボットカメラシステム。
【請求項4】
複数台のロボットカメラのうち、予め設定された1台のロボットカメラであるマスターカメラの光軸上を移動可能な注視点に向くように、前記マスターカメラ以外のロボットカメラであるスレーブカメラの姿勢を制御するために、前記マスターカメラのカメラ姿勢を操作するカメラ姿勢操作部と、前記マスターカメラから前記注視点までの距離を示すデプス値が、所定のデプス入力範囲内で入力され、前記注視点が前記マスターカメラから離れる程、単位時間あたりの前記注視点の移動距離が長くなるように、入力された前記デプス値を非線形に変化させるデプス値入力部とを備えるコンピュータを、
被写体に合焦したときの前記マスターカメラの前方被写界深度から後方被写界深度までの範囲を、予め設定された被写界深度と前記デプス値との対応関係に基づいて、前記デプス入力範囲に変換して前記デプス値入力部に設定するデプス入力範囲設定部、
カメラキャリブレーションを行ったときの前記マスターカメラのカメラ姿勢と、前記マスターカメラの外部パラメータである並進ベクトルとを、前記カメラキャリブレーションにより算出するカメラキャリブレーション部、
前記カメラ姿勢操作部と前記カメラキャリブレーション部とのカメラ姿勢の差分に基づいて、前記マスターカメラにおける回転行列を算出し、算出した前記回転行列に含まれる奥行成分のベクトルと前記デプス値との積に前記並進ベクトルを加算することで、前記注視点の位置を算出する注視点算出部、
前記注視点算出部が算出した注視点に向くように、前記スレーブカメラの姿勢を制御するスレーブカメラ制御部、
として機能させるためのロボットカメラ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロボットカメラの姿勢を制御するロボットカメラ制御装置、そのプログラム及び多視点ロボットカメラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、動く被写体をパンフォローした多視点映像を撮影することが可能な多視点ロボットカメラシステムが提案されている(非特許文献1)。この多視点ロボットカメラシステムは、複数台のロボットカメラのうち1台をマスターカメラとして設定し、カメラマンがマスターカメラを被写体に向けるように操作する。ここで、マスターカメラの光軸上には注視点が設定されており、マスターカメラ以外のスレーブカメラは、注視点に向くように制御角度が変化して、自動的に方向制御される。このとき、カメラマンが、マスターカメラと注視点との距離であるデプス値を連続的に変化させることで、注視点をマスターカメラの光軸上で移動させる。そして、注視点が被写体に重なるように(すなわち、全スレーブカメラの画面の中心に被写体が位置するように)、カメラマンが、デプス操作装置を用いて、デプス調整範囲内でデプス値を変化させることで、多視点映像を撮影することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】伊佐憲一、他4名、「最新スポーツ中継技術 世界初! プロ野球中継におけるEyeVisionTM(アイビジョン)の活用」、放送技術、兼六館出版、2001年11月、p.96−p.105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8を参照して、従来の多視点ロボットカメラシステムの問題について、詳細に説明する。
図8では、ロボットカメラMCの光軸βの上にある注視点を符号Qで図示した。
従来の多視点ロボットカメラシステムにおいて、注視点が被写体に重なるようにデプス調整を行う作業は、被写界深度が極めて浅い撮影環境で被写体にピントを合わせる作業とほぼ等価になる。
【0005】
ここで、図8に示すように、デプス最小値dminからデプス最大値dmaxまでのデプス調整範囲が、例えば、数10メートルと広くなっている。一方、被写界深度が、例えば、被写体の前後数センチと極めて浅くなっている。このように、多視点ロボットカメラシステムでは、デプス調整範囲が被写界深度に無関係に設定され、デプス調整範囲が被写界深度よりも大幅に広くなっている。従って、多視点ロボットカメラシステムでは、注視点Qを被写体αに重ねるために必要なデプス操作装置の操作量が多くなり、デプス調整の作業時間が長くなるという問題がある。
なお、図8では、図面を見やすくするため、スレーブカメラの図示を省略した(図3も同様)。
【0006】
そこで、本願発明は、デプス調整の作業時間を短縮できるロボットカメラ制御装置、そのプログラム及び多視点ロボットカメラシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題に鑑みて、本願第1発明に係るロボットカメラ制御装置は、複数台のロボットカメラのうち、予め設定された1台のロボットカメラであるマスターカメラの光軸上を移動可能な注視点に向くように、マスターカメラ以外のロボットカメラであるスレーブカメラの姿勢を制御するロボットカメラ制御装置であって、カメラ姿勢操作部と、デプス値入力部と、デプス入力範囲設定部と、カメラキャリブレーション部と、注視点算出部と、スレーブカメラ制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、ロボットカメラ制御装置は、カメラ姿勢操作部によって、マスターカメラのカメラ姿勢を操作する。また、ロボットカメラ制御装置は、デプス値入力部によって、マスターカメラから注視点までの距離を示すデプス値が、所定のデプス入力範囲内で入力され、注視点がマスターカメラから離れる程、単位時間あたりの注視点の移動距離が長くなるように、入力されたデプス値を非線形に変化させる
【0009】
また、ロボットカメラ制御装置は、デプス入力範囲設定部によって、被写体に合焦したときのマスターカメラの前方被写界深度から後方被写界深度までの範囲を、予め設定された被写界深度とデプス値との対応関係に基づいて、デプス入力範囲に変換してデプス値入力部に設定する。これによって、ロボットカメラ制御装置は、デプス値の入力範囲を前方被写界深度から後方被写界深度までの間に狭めることができる。
【0010】
また、ロボットカメラ制御装置は、カメラキャリブレーション部によって、カメラキャリブレーションを行ったときのマスターカメラのカメラ姿勢と、マスターカメラの外部パラメータである並進ベクトルとを、カメラキャリブレーションにより算出する。
【0011】
また、ロボットカメラ制御装置は、注視点算出部によって、カメラ姿勢操作部とカメラキャリブレーション部とのカメラ姿勢の差分に基づいて、マスターカメラにおける回転行列を算出し、算出した回転行列に含まれる奥行成分のベクトルとデプス値との積に並進ベクトルを加算することで、注視点の位置を算出する。そして、ロボットカメラ制御装置は、スレーブカメラ制御部によって、注視点算出部が算出した注視点に向くように、スレーブカメラの姿勢を制御する。
【0012】
また、本願第2発明に係るロボットカメラ制御装置は、デプス入力範囲設定部により、マスターカメラから前方被写界深度及び後方被写界深度が入力されることを特徴とする。
かかる構成によれば、ロボットカメラ制御装置は、マスターカメラのオートフォーカス機能を利用して、前方被写界深度及び後方被写界深度を取得する。
【0013】
また、前記した課題に鑑みて、本願第3発明に係る多視点ロボットカメラシステムは、複数台のロボットカメラのうち、予め設定された1台のロボットカメラであるマスターカメラと、マスターカメラ以外のロボットカメラであるスレーブカメラと、マスターカメラの光軸上を移動する注視点に向くようにスレーブカメラの姿勢を制御するロボットカメラ制御装置とを備える多視点ロボットカメラシステムであって、ロボットカメラ制御装置が、カメラ姿勢操作部と、デプス値入力部と、デプス入力範囲設定部と、カメラキャリブレーション部と、注視点算出部と、スレーブカメラ制御部とを備えることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、ロボットカメラ制御装置は、カメラ姿勢操作部によって、マスターカメラのカメラ姿勢を操作する。また、ロボットカメラ制御装置は、デプス値入力部によって、マスターカメラから注視点までの距離を示すデプス値が、所定のデプス入力範囲内で入力され、注視点がマスターカメラから離れる程、単位時間あたりの注視点の移動距離が長くなるように、入力されたデプス値を非線形に変化させる。
【0015】
また、ロボットカメラ制御装置は、デプス入力範囲設定部によって、被写体に合焦したときのマスターカメラの前方被写界深度から後方被写界深度までの範囲を、予め設定された被写界深度とデプス値との対応関係に基づいて、デプス入力範囲に変換してデプス値入力部に設定する。これによって、ロボットカメラ制御装置は、デプス値の入力範囲を前方被写界深度から後方被写界深度までの間に狭めることができる。
【0016】
また、ロボットカメラ制御装置は、カメラキャリブレーション部によって、カメラキャリブレーションを行ったときのマスターカメラのカメラ姿勢と、マスターカメラの外部パラメータである並進ベクトルとを、カメラキャリブレーションにより算出する。
【0017】
また、ロボットカメラ制御装置は、注視点算出部によって、カメラ姿勢操作部とカメラキャリブレーション部とのカメラ姿勢の差分に基づいて、マスターカメラにおける回転行列を算出し、算出した回転行列に含まれる奥行成分のベクトルとデプス値との積に並進ベクトルを加算することで、注視点の位置を算出する。そして、ロボットカメラ制御装置は、スレーブカメラ制御部によって、注視点算出部が算出した注視点に向くように、スレーブカメラの姿勢を制御する。
【0018】
ここで、本願第1発明に係るロボットカメラ制御装置は、カメラ姿勢操作部及びデプス値入力部を備えるコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、ハードディスクなどのハードウェア資源を、デプス入力範囲設定部、カメラキャリブレーション部、注視点算出部及びスレーブカメラ制御部として協調動作させるロボットカメラ制御プログラムによって実現することもできる(本願第4発明)。このプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1,3,4発明によれば、ロボットカメラ制御装置、そのプログラム及び多視点ロボットカメラシステムは、デプス入力範囲を前方被写界深度から後方被写界深度までの間に狭めるため、デプス調整の作業時間を短縮することができる。
【0020】
本願第2発明によれば、ロボットカメラ制御装置は、マスターカメラのオートフォーカス機能を利用できるため、簡易な演算処理によりデプス入力範囲を狭くし、デプス調整の作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本願発明の実施形態に係る多視点ロボットカメラシステムの構成を示すブロック図である。
図2】(a)は図1のデプス操作部が備える操作部及びエンコーダを説明する図であり、(b)はデプス操作部の操作を説明する説明図である。
図3図1のデプス操作部に設定されるデプス調整範囲を説明する説明図である。
図4図1のデプス操作部において、デプス値の変化を説明する説明図である。
図5図1のデプス操作部において、デプス値の変化を説明する説明図である。
図6】(a)及び(b)は図1の多視点ロボットカメラシステムにおいて、スレーブカメラの制御角度の変化を説明する説明図である。
図7図1の多視点ロボットカメラシステムの動作を示すフローチャートである。
図8】従来の多視点ロボットカメラシステムに設定されるデプス調整範囲を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0023】
(実施形態)
[多視点ロボットカメラシステムの構成]
図1を参照し、本願発明の実施形態に係る多視点ロボットカメラシステム100の構成について、説明する。
図1に示すように、多視点ロボットカメラシステム100は、被写体の多視点映像を撮影するものであり、ロボットカメラ制御装置1と、マスターカメラMCと、スレーブカメラSC,…,SC(SC)とを備える。
【0024】
本実施形態では、マスターカメラMC及びスレーブカメラSCは、所定の間隔で直線状に配置されることとする。
また、スレーブカメラSCは、n台であることとする(但し、n≧1を満たす整数)。
【0025】
ロボットカメラ制御装置1は、マスターカメラMC及びスレーブカメラSCを制御するものであり、デプス値設定部(デプス入力範囲設定部)10と、操作インターフェース部20と、カメラキャリブレーション部30と、マスターカメラ制御部40と、注視点算出部50と、スレーブカメラ制御部60,…,60(60)とを備える。
【0026】
デプス値設定部10は、被写体に合焦したときの前方被写界深度から後方被写界深度までの範囲がマスターカメラMCから入力される。そして、デプス値設定部10は、入力された範囲を、予め設定された被写界深度とデプス値との対応関係に基づいて、所定のデプス最小値からデプス最大値までのデプス調範囲(デプス入力範囲)に変換して、デプス操作部(デプス値入力部)25に設定するものである。
【0027】
操作インターフェース部20は、カメラマンが、マスターカメラMC及びスレーブカメラSCを遠隔操作するものであり、パン・チルト操作部(カメラ姿勢操作部)21と、ズーム・アイリス操作部23と、デプス操作部25とを備える。
【0028】
パン・チルト操作部21は、カメラマンが、マスターカメラMCのパン及びチルト(カメラ姿勢)を操作するものである。そして、パン・チルト操作部21は、カメラマンの操作に応じたパン値及びチルト値を検出して、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41と、注視点算出部50とに出力する。
【0029】
ズーム・アイリス操作部23は、カメラマンが、マスターカメラMCのズーム及びアイリスを操作するものである。そして、ズーム・アイリス操作部23は、カメラマンの操作に応じたズーム値及びアイリス値を検出して、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41と、ズーム・アイリス制御部65とに出力する。
【0030】
デプス操作部25は、デプス値設定部10によりデプス調整範囲が設定されると共に、このデプス調整範囲内でデプス値が入力されるものである。このとき、デプス操作部25は、入力されたデプス値を、マスターカメラから離れる程、単位時間あたりの注視点の移動距離が長くなるように変化させることが好ましい。
なお、デプス値とは、マスターカメラMCから注視点までの距離を示す。
【0031】
本実施形態では、デプス操作部25は、図2(a)に示すように、注視点の移動操作が行われる回転ダイヤル26と、回転ダイヤル26に対する移動操作量を検出するエンコーダ27とを備える。
ここで、図2(b)に示すように、回転ダイヤル26を時計回りに回転させる程、エンコーダ27のエンコーダ値(移動操作の検出値)が増大する。そして、回転ダイヤル26に刻まれた指標26aが指標位置「△最大」に達したときに、エンコーダ27のエンコーダ値が最大となる。
一方、回転ダイヤル26を反時計回りに回転させる程、エンコーダ27のエンコーダ値が減少する。そして、回転ダイヤル26に刻まれた指標26aが指標位置「△最小」に達したときに、エンコーダ27のエンコーダ値が最小となる。
【0032】
そして、デプス操作部25は、デプス値設定部10により、指標26aが指標位置「△最小」に達したときにデプス最小値dminとなり、指標26aが指標位置「△最大」に達したときにデプス最大値dmaxとなるように、エンコーダ値とデプス値とを対応付けたデプス値変換情報が設定される。すなわち、デプス操作部25は、デプス値設定部10により、図3に示すように、デプス最小値dminが前方被写界深度に対応し、デプス最大値dmaxが後方被写界深度に対応するように、デプス調整範囲が被写界深度に関連付けて設定される。従って、デプス操作部25のデプス調整範囲は、図8に比べて狭くなる。このため、デプス操作部25は、カメラマンによる回転ダイヤル26の操作量を低減し、デプス調整時間を短縮することができる。
【0033】
その後、デプス操作部25は、前記したデプス値変換情報を参照して、エンコーダ27で検出されたエンコーダ値をデプス値に変換し、変換されたデプス値を以下で説明するように変化(増減)させ、フォーカス制御部43と、注視点算出部50とに出力する。
【0034】
<デプス値の変化>
図4図5を参照して、デプス操作部25によるデプス値の変化について、説明する(適宜図1,2参照)。
図4に示すように、カメラマンは、マスターカメラMCの撮影映像90を見ながら、マスターカメラMCが被写体αを捉えるようにパン・チルト操作部21及びズーム・アイリス操作部23を操作する。従って、マスターカメラMCの撮影映像90は、画面中央に被写体αが捉えられている。一方、スレーブカメラSCの撮影映像91は、被写体αが捉えられていない。
なお、ズーム・アイリス操作部23は、カメラマン以外が遠隔操作することもある。
【0035】
次に、カメラマンは、回転ダイヤル26の操作によりデプス値を連続的に変化させることで、注視点Qを光軸βの上で移動させる。そして、図5に示すように、カメラマンは、スレーブカメラSCの撮影映像91を見ながら、撮影映像91の中央に被写体αが位置するように、回転ダイヤル26を操作してデプス値を調整する。
【0036】
このとき、デプス操作部25は、マスターカメラMCから離れる程、単位時間あたりの注視点Qの移動距離が長くなるように、デプス値を非線形に変化させる。具体的には、デプス操作部25は、以下の式(1)〜式(4)を用いて、デプス値kを求める。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
なお、マスターカメラMCと、マスターカメラMCから最も遠いスレーブカメラSCのベースラインの距離(カメラ間隔)がB、デプス値の最大値がdmax、デプス値の最小値がdmin、エンコーダ27で検出可能なエンコーダ値の最大値がtmax、エンコーダ27で検出されたエンコーダ値がtである(但し、0≦t≦tmaxを満たす)。
この最大距離B及び最大検出値tmaxは、予め設定されている。
【0042】
図1に戻り、多視点ロボットカメラシステム100の説明を続ける。
カメラキャリブレーション部30は、マスターカメラMC及びスレーブカメラSCのカメラパラメータ(A,R,T,p0m,t0m,z0m,f0m,i0m,A,R,T,p0n,t0n,z0n,f0n,i0n)をカメラキャリブレーションにより算出して、メモリやハードディスク等の記憶装置(不図示)に格納するものである。
【0043】
ここで、カメラキャリブレーション部30は、カメラキャリブレーションを行ったときのマスターカメラMCのカメラ姿勢として、マスターカメラMCのパン値p0mと、チルト値t0mとを算出し、記憶装置に格納する。また、カメラキャリブレーション部30は、カメラキャリブレーションを行ったときのマスターカメラMCの内部パラメータAと、外部パラメータ(回転行列R及び並進ベクトルT)と、マスターカメラMCのズーム値z0mと、フォーカス値f0mと、アイリス値i0mとを算出し、記憶装置に格納する
なお、添え字mがマスターカメラMCを示す。
【0044】
また、カメラキャリブレーション部30は、カメラキャリブレーションを行ったときのスレーブカメラSCの内部パラメータAと、外部パラメータ(回転行列R及び並進ベクトルT)と、スレーブカメラSCのパン値p0nと、チルト値t0nと、ズーム値z0nと、フォーカス値f0nと、アイリス値i0nとを算出し、記憶装置に格納する。
【0045】
なお、カメラキャリブレーションの手法は、例えば、以下の参考文献に記載されているため、詳細な説明を省略する。
参考文献「デジタル画像処理:財団法人 画像情報教育振興協会」
【0046】
マスターカメラ制御部40は、マスターカメラMCを制御するものであり、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41と、フォーカス制御部43とを備える。
【0047】
パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41は、パン・チルト操作部21から入力されたパン値及びチルト値と、ズーム・アイリス操作部23から入力されたズーム値及びアイリス値とに基づいて、マスターカメラMCのパン、チルト、ズーム及びアイリスを制御するものである。
【0048】
具体的には、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41は、パン値、チルト値、ズーム値及びアイリス値を、それら値の大きさに応じたパン・チルト・ズーム・アイリス制御信号に変換する。そして、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41は、変換したパン・チルト・ズーム・アイリス制御信号をマスターカメラMCに出力する。
【0049】
フォーカス制御部43は、デプス操作部25から入力されたデプス値に基づいて、マスターカメラMCのフォーカスを制御するものである。具体的には、フォーカス制御部43は、デプス値とフォーカス値とを対応付けた情報が予め設定され、この情報を参照して、デプス値に対応したフォーカス値を算出する。そして、フォーカス制御部43は、算出したフォーカス値を、その値の大きさに応じたフォーカス制御信号に変換して、マスターカメラMCに出力する。
【0050】
マスターカメラMCは、多視点ロボットカメラシステム100が備える複数台のロボットカメラのうち、予め設定された1台のロボットカメラである。このマスターカメラMCは、例えば、電動雲台に搭載された固定ロボットカメラである。そして、マスターカメラMCは、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41から入力されたパン・チルト・ズーム・アイリス制御信号に従って、パン、チルト、ズーム及びアイリスを駆動する。さらに、マスターカメラMCは、フォーカス制御部43から入力されたフォーカス制御信号に従って、フォーカスを駆動する。
【0051】
また、マスターカメラMCは、位相差検出方式、コントラスト検出方式、アクティブ方式等のオートフォーカス機能を搭載している。例えば、被写体にピントがあっておらず撮影映像がぼけている場合、カメラマンは、操作インターフェース部20が備える被写界深度算出指示部(不図示)を操作して、前方被写界深度及び後方被写界深度の算出をマスターカメラMCに指示する。この指示に応じて、マスターカメラMCは、オートフォーカス機能を用いて、被写体に合焦したときの前方被写界深度及び後方被写界深度を算出して、デプス値設定部10に出力する。
【0052】
注視点算出部50は、パン・チルト操作部21から入力されたパン値及びチルト値と、デプス操作部25から入力されたデプス値と、カメラキャリブレーション部30に格納されたカメラ姿勢及びカメラパラメータとに基づいて、注視点の世界座標を算出するものである。
【0053】
具体的には、注視点算出部50は、以下の式(5)を用いて、マスターカメラMCについて、パン・チルト操作部21からのパン値pと、カメラキャリブレーション時のパン値p0mとの角度差θpmを算出する。
【0054】
【数5】
【0055】
また、注視点算出部50は、以下の式(6)を用いて、マスターカメラMCについて、パン・チルト操作部21からのチルト値tと、カメラキャリブレーション時のチルト値t0mとの角度差θtmを算出する。
【0056】
【数6】
【0057】
次に、注視点算出部50は、以下の式(7)に示すように、角度差θpm及び角度差θtmを用いて、カメラ座標系における回転行列R´rect_Cmを生成する。
【0058】
【数7】
【0059】
そして、注視点算出部50は、以下の式(8)に示すように、回転行列R´rect_Cm及び回転行列Rを用いて、世界座標系におけるカメラ姿勢の回転行列R´rectmを生成する。この回転行列R´rectmは、マスターカメラMCについて、カメラキャリブレーション時のカメラ姿勢から、操作インターフェース部10で操作後のカメラ姿勢に変えるための回転行列である。
なお、回転行列R´rectmが請求項に記載の「マスターカメラにおける回転行列」に相当する。
【0060】
【数8】
【0061】
ここで、式(8)の回転行列R´rectmは、以下の式(9)に示すように、世界座標系におけるカメラ姿勢のX軸を示すベクトルe´xmと、世界座標系におけるカメラ姿勢のY軸を示すベクトルe´ymと、世界座標系におけるカメラ姿勢のZ軸を示すベクトル(奥行成分のベクトル)ezmとを用いて、定義することができる。
なお、式(9)のベクトルe´xm,e´ymは、以後の計算に利用されない。
【0062】
【数9】
【0063】
そして、注視点算出部50は、以下の式(10)に示すように、回転行列R´rectmと、マスターカメラMCの並進ベクトルTと、デプス操作部25から入力されたデプス値kとを用いて、注視点Qの世界座標(位置)Pを算出する。この式(10)は、ベクトルezmとデプス値kとの積に並進ベクトルTを加算することを示す。その後、注視点算出部50は、算出した注視点Qの世界座標Pを、パン・チルト制御部61と、フォーカス制御部63とに出力する。
【0064】
【数10】
【0065】
図6を参照し、スレーブカメラSCの制御角度の変化について、説明する(適宜図1参照)。
図6(a)の注視点Q〜Qは、マスターカメラMCの光軸βの上を移動する注視点について、時間t=1〜4での位置を示している。
前記したように、デプス操作部25がデプス値を非線形に変化(増減)させるため、注視点Q〜Qの単位時間あたりの移動距離は、マスターカメラMCから離れる程、広くなる。つまり、注視点Q,Qの距離よりも注視点Q,Qの距離が広くなり、注視点Q,Qの距離よりも注視点Q,Qの距離が広くなる。このため、時間t=1〜2におけるスレーブカメラSCの制御角度Aと、時間t=3〜4におけるスレーブカメラSCの制御角度Bとが、等しくなる。
【0066】
図6(b)では、回転ダイヤル26において、注視点Q〜Qに対応する指標位置を図示した。これら注視点Q〜Qに対応する指標位置は、全て等間隔となっている。
つまり、指標26aが指標位置「Q」に重なるとき、図6(a)の注視点Qを指す。これと同様、指標26aが指標位置「Q」に重なるときに図6(a)の注視点Qを指し、指標26aが指標位置「Q」に重なるときに図6(a)の注視点Qを指し、指標26aが指標位置「Q」に重なるときに図6(a)の注視点Qを指す。
【0067】
ここで、図6(a)に示すように、注視点Qから注視点Qに移動させる場合、及び、注視点Qから注視点Qに移動させる場合でも、制御角度A,Bが等しいため、図6(b)に示すように、回転ダイヤル26の移動操作量が一定となる。このように、多視点ロボットカメラシステム100では、回転ダイヤル26の操作量に対し、スレーブカメラSCの制御角度の変化量が一定となる。
【0068】
図1に戻り、多視点ロボットカメラシステム100の説明を続ける。
スレーブカメラ制御部60,…,60は、スレーブカメラSC,…,SCを制御するものであり、パン・チルト制御部61,…,61(61)と、フォーカス制御部63,…,63(63)と、ズーム・アイリス制御部65,…,65(65)とを備える。
なお、スレーブカメラ制御部60,…,60は、スレーブカメラSC,…,SCに対応するように備えられており、全て同一構成である。
【0069】
パン・チルト制御部61は、注視点算出部50から入力された注視点Qと、カメラキャリブレーション部30に格納されたカメラパラメータ(回転行列R及び並進ベクトルT)とに基づいて、注視点Qに向くように、スレーブカメラSCの姿勢(パン及びチルト)を制御するものである。
【0070】
具体的には、パン・チルト制御部61は、以下の式(11)に示すように、パン及びチルトを制御するために、スレーブカメラSCから注視点Qの世界座標Pへ向かう単位ベクトルeznを算出する。
なお、“‖‖”はノルムを示す。
【0071】
【数11】
【0072】
また、パン・チルト制御部61は、以下の式(12)に示すように、算出した単位ベクトルezn、及び、回転行列Rの逆行列R−1を用いて、カメラ座標系におけるスレーブカメラSCから注視点Qの世界座標Pへ向かう単位ベクトルeCznを算出する。
【0073】
【数12】
【0074】
そして、パン・チルト制御部61は、以下の式(13)〜式(15)に示すように、スレーブカメラSCのパン値θPn及びチルト値θTnを算出する。
なお、e,e,eは、それぞれ、単位ベクトルeCznのX軸、Y軸、Z軸成分を示す。
【0075】
【数13】
【0076】
【数14】
【0077】
【数15】
【0078】
さらに、パン・チルト制御部61は、算出したパン値θPn及びチルト値θTnを、それら値の大きさに応じたパン・チルト制御信号に変換する。その後、パン・チルト制御部61は、変換したパン・チルト制御信号をスレーブカメラSCに出力する。
【0079】
フォーカス制御部63は、注視点算出部50から入力された注視点Qの世界座標Pと、カメラキャリブレーション部30に格納されたカメラパラメータ(並進ベクトルT)とに基づいて、注視点Qに合焦するように、スレーブカメラSCのフォーカスを制御するものである。
【0080】
具体的には、フォーカス制御部63は、以下の式(16)に示すように、フォーカスを制御するために、スレーブカメラSCから注視点Qの世界座標Pへ向かうベクトルEznを算出する。
【0081】
【数16】
【0082】
そして、フォーカス制御部63は、以下の式(17)及び式(18)に示すように、ベクトルEznから、スレーブカメラSCと注視点Qの世界座標Pとの距離kを算出する。
なお、E,E,Eは、それぞれ、ベクトルEznのX軸、Y軸、Z軸成分を示す。
【0083】
【数17】
【0084】
【数18】
【0085】
さらに、フォーカス制御部63は、距離kとフォーカス値とを対応付けた情報が予め設定され、この情報を参照して、距離kに対応するフォーカス値を算出する。その後、フォーカス制御部63は、算出したフォーカス値を、その値の大きさに応じたフォーカス制御信号に変換して、スレーブカメラSCに出力する。
【0086】
ズーム・アイリス制御部65は、ズーム・アイリス操作部23から入力されたズーム値及びアイリス値に基づいて、スレーブカメラSCのズーム及びアイリスを制御するものである。
【0087】
具体的には、ズーム・アイリス制御部65は、ズーム値及びアイリス値を、それら値の大きさに応じたズーム・アイリス制御信号に変換する。そして、ズーム・アイリス制御部65は、変換したズーム・アイリス制御信号をスレーブカメラSCに出力する。
【0088】
スレーブカメラSCは、多視点ロボットカメラシステム100が備える複数台のロボットカメラのうち、マスターカメラMC以外のロボットカメラである。このスレーブカメラSCは、例えば、電動雲台に搭載された固定ロボットカメラである。また、スレーブカメラSCは、パン・チルト制御部61から入力されたパン・チルト制御信号に応じて、パン及びチルトを駆動する。そして、スレーブカメラSCは、フォーカス制御部63から入力されたフォーカス制御信号に応じて、フォーカスを駆動する。さらに、スレーブカメラSCは、ズーム・アイリス制御部65から入力されたズーム・アイリス制御信号に応じて、ズーム及びアイリスを駆動する。
【0089】
[多視点ロボットカメラシステムの動作]
図7を参照し、図1の多視点ロボットカメラシステム100の動作について、説明する(適宜図1参照)。
多視点ロボットカメラシステム100は、カメラキャリブレーション部30によって、マスターカメラMC及びスレーブカメラSCのカメラパラメータと、パン値と、チルト値と、ズーム値と、フォーカス値と、アイリス値とを算出し(ステップS1)、記憶装置に格納する(ステップ2)。
【0090】
多視点ロボットカメラシステム100は、パン・チルト操作部21によって、カメラマンの操作に応じたパン値及びチルト値を検出して、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41と、注視点算出部50とに出力する。
多視点ロボットカメラシステム100は、ズーム・アイリス操作部23によって、カメラマンの操作に応じたズーム値及びアイリス値を検出して、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41と、ズーム・アイリス制御部65とに出力する。
多視点ロボットカメラシステム100は、デプス値設定部10によって、マスターカメラMCから入力された被写界深度をデプス調整範囲に変換して、デプス操作部25に設定する。
多視点ロボットカメラシステム100は、デプス操作部25によって、デプス値設定部10が設定したデプス調整範囲内で、カメラマンの操作に応じてデプス値を出力する(ステップS3)。
【0091】
多視点ロボットカメラシステム100は、パン・チルト・ズーム・アイリス制御部41によって、パン値、チルト値、ズーム値及びアイリス値を、パン・チルト・ズーム・アイリス制御信号に変換して、マスターカメラMCに出力する。
多視点ロボットカメラシステム100は、フォーカス制御部43によって、デプス値に対応したフォーカス値を算出し、算出したフォーカス値をフォーカス制御信号に変換して、マスターカメラMCに出力する(ステップS4)。
【0092】
多視点ロボットカメラシステム100は、注視点算出部50によって、パン・チルト操作部21とカメラキャリブレーション部30とのカメラ姿勢の差分に基づいて、式(8)の回転行列R´rectmを算出する。
多視点ロボットカメラシステム100は、注視点算出部50によって、式(10)のように、回転行列R´rectmに含まれるベクトルezmとデプス値kとの積に並進ベクトルTを加算することで、注視点Qの世界座標Pを算出する(ステップS5)。
【0093】
多視点ロボットカメラシステム100は、パン・チルト制御部61によって、注視点Qに向くようにスレーブカメラSCのパン及びチルトを制御する。
多視点ロボットカメラシステム100は、フォーカス制御部63によって、注視点Qに合焦するようにスレーブカメラSCのフォーカスを制御する。
多視点ロボットカメラシステム100は、ズーム・アイリス制御部65によって、ズーム値及びアイリス値に基づいて、スレーブカメラSCのズーム及びアイリスを制御する(ステップS6)。
多視点ロボットカメラシステム100は、マスターカメラMC及びスレーブカメラSCによって、撮影を行う(ステップS7)。
【0094】
多視点ロボットカメラシステム100は、カメラマンの目視により、マスターカメラMCの撮影映像で、被写体にピントがあっているか否かを判定する(ステップS8)。
被写体にピントがあっている場合(ステップS8でYes)、多視点ロボットカメラシステム100は、処理を終了する。
【0095】
一方、被写体にピントがあっていない場合(ステップS8でNo)、多視点ロボットカメラシステム100は、カメラマンの指示により、マスターカメラMCが、被写体に合焦したときの前方被写界深度及び後方被写界深度をデプス値設定部10に出力し、ステップS3の処理に戻る(ステップS9)。
【0096】
以上のように、本願発明の実施形態に係る多視点ロボットカメラシステム100は、デプス調整範囲を前方被写界深度から後方被写界深度までの間に狭めるため、デプス調整の作業時間を短縮することができる(図3参照)。
【0097】
さらに、多視点ロボットカメラシステム100は、デプス操作部25によりデプス値を非線形に変化させるため、注視点とマスターカメラとの遠近に関係なく、スレーブカメラSCの制御角度A,Bの変化が線形(一定)となる。このため、多視点ロボットカメラシステム100は、スレーブカメラSCの制御角度の変化が一定にならない従来技術に比べ、デプス調整を容易に行うことができる(図6参照)。
【0098】
本願発明は、実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。以下、本願発明の変形例について、具体的に説明する。
【0099】
(変形例1)
本願発明の変形例1に係る多視点ロボットカメラシステム100Bは、デプス操作部25Bでデプス値を非線形に変化させない点が、前記した実施形態と異なる。
つまり、デプス操作部25Bは、前記した式(1)〜式(4)を用いずに、エンコーダ値から変換されたデプス値をそのまま、フォーカス制御部43と、注視点算出部40とに出力する。
以上のように、本願発明の変形例1に係る多視点ロボットカメラシステム100Bは、前記した実施形態と同様、デプス調整の作業時間を短縮することができる。
【0100】
(その他変形例)
前記した実施形態では、デプス操作部25が回転ダイヤル26を備えることとして説明したが、本願発明は、これに限定されない。
例えば、デプス操作部25は、回転ダイヤル26の代わりにスライダを備えてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 ロボットカメラ制御装置
10,10A デプス値設定部(デプス入力範囲設定部)
20 操作インターフェース部
21 パン・チルト操作部(カメラ姿勢操作部)
23 ズーム・アイリス操作部
25,25B デプス操作部(デプス値入力部)
26 回転ダイヤル
27 エンコーダ
30 カメラキャリブレーション部
40 マスターカメラ制御部
41 パン・チルト・ズーム・アイリス制御部
43 フォーカス制御部
50 注視点算出部
60 スレーブカメラ制御部
61 パン・チルト制御部
63 フォーカス制御部
65 ズーム・アイリス制御部
100、100A,100B 多視点ロボットカメラシステム
MC マスターカメラ
SC スレーブカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8