(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
[撮影装置の構造]
図1,
図2を参照し、撮影装置2の構造を説明した後、背景画像生成装置1(
図3)の構成を説明する。
背景画像生成装置1は、背景部分の欠損がない背景画像を生成するものであって、撮影装置2(基準カメラ3及び補助カメラ4)と、距離計測手段5と、演算装置6(
図3)とを備える。
図1に示すように、撮影装置2は、1台の基準カメラ3と、4台の補助カメラ4(4U,4D,4L,4R)とをリム構造体20に取り付けたものである。
【0020】
図1(a)に示すように、4台の補助カメラ4は、基準カメラ3を中心に、上下左右で対象となるように配置されている。また、
図1(b)に示すように、基準カメラ3及び4台の補助カメラ4は、側面視すると、同一の垂直面上に位置している。
【0021】
リム構造体20は、例えば、アルミニウムなどの金属を素材とすし、環状のリム部20aと、2本の支柱20bと、基部20cとで構成される。2本の支柱20bは、リム部20aの中心で斜め十字に交差する。基部20cは、支柱20bが交差する場所で板状に形成される。この基部20cは、基準カメラ3と、補助カメラ4の位置駆動手段41とが固定される。
【0022】
リム構造体20の下部には、台座21が形成される。台座21は、リム構造体20の半径程度の幅を有し、撮影装置2を直立させる。また、リム構造体20には、2本のリニアガイド22がリム部20aの中心で十字に交差している。
図1(b)では、垂直方向のリニアガイド22のみを図示し、水平方向のリニアガイド22を図示していない。
【0023】
支持部材23は、ボールねじ24が貫通し、後端部23aがリニアガイド22を挟んでいる。この支持部材23は、補助カメラ4の光軸方向駆動手段43が固定され、支点25を介して、補助カメラ4を支持する。ボールねじ24は、一方の端が位置駆動手段41の回転軸に固定され、他方の端がリム部20aの内周側に固定される。
【0024】
また、撮影装置2は、
図2に示すように、被写体から基準カメラ3までの距離を計測するために、ステレオカメラ5L,5Rを備えてもよい。このステレオカメラ5L,5Rは、リム部20aの左右外周部に固定される。
【0025】
なお、
図1(b)の符号αが補助カメラ4の光軸方向を示しており、
図2の符号βが基準カメラ3から補助カメラ4までの距離を示している。補助カメラ4の光軸方向α及び距離βの詳細は、背景画像生成装置1の構成と共に説明する。
また、
図2では、図面を見易くするため、一部符号を省略すると共に、ステレオカメラ5L,5R以外を破線で図示した。
【0026】
[背景画像生成装置の構成]
図3を参照し、背景画像生成装置1の構成について、説明する(適宜
図1,
図2参照)。
図3に示すように、基準カメラ3は、被写体を撮影する一般的なカメラであり、ズーム駆動手段31と、フォーカス駆動手段33とを備える。
【0027】
ズーム駆動手段31は、演算装置6から入力されたズーム制御信号に従って、基準カメラ3のズームリング(不図示)を駆動する駆動モータ(不図示)を備えるものである。また、ズーム駆動手段31は、ズームリングの駆動量を計測するエンコーダ(不図示)を備え、ズーム値変換テーブルにより、エンコーダで計測された駆動量を基準カメラ3のズーム値に変換する。
このズーム値変換テーブルは、ズームリングの駆動量と、ズーム値とを予め対応付けたものである。
【0028】
フォーカス駆動手段33は、演算装置6から入力されたフォーカス制御信号に従って、基準カメラ3のフォーカスリング(不図示)を駆動する駆動モータ(不図示)を備えるものである。また、フォーカス駆動手段33は、フォーカスリングの駆動量を計測するエンコーダ(不図示)を備え、フォーカス値変換テーブルにより、エンコーダで計測された駆動量を基準カメラ3のフォーカス値に変換する。
このフォーカス値変換テーブルは、フォーカスリングの駆動量と、フォーカス値とを予め対応付けたものである。
【0029】
基準カメラ3は、被写体を撮影した基準画像と、基準カメラ3のズーム値と、基準カメラ3のフォーカス値とを、演算装置6に出力する。
【0030】
補助カメラ4は、基準カメラ3から見て、被写体に隠された背景部分を撮影する一般的なカメラである。この補助カメラ4は、位置駆動手段41と、光軸方向駆動手段43と、ズーム駆動手段45と、フォーカス駆動手段47とを備える。
【0031】
位置駆動手段41は、演算装置6から入力された位置制御信号に従って、ボールねじ24(
図1)を回転させることで、補助カメラ4を半径方向に移動させる駆動モータ(不図示)を備えるものである。また、位置駆動手段41は、ボールねじ24の回転量を計測するエンコーダ(不図示)を備え、位置変換テーブルにより、エンコーダで計測された回転量を補助カメラ4の位置に変換する。
【0032】
なお、
図1において、半径方向とは、補助カメラ4から見た基準カメラ3の方向であり、ボールねじ24に沿う方向のことである。
この位置変換テーブルは、ボールねじ24の回転量と、補助カメラ4の位置とを予め対応付けたものである。
【0033】
すなわち、
図1に示すように、垂直軸上の補助カメラ4U,4Dは、位置駆動手段41により、上下に移動可能である。また、水平軸上の補助カメラ4L,4Rは、位置駆動手段41により、左右に移動可能である。
【0034】
光軸方向駆動手段43は、演算装置6から入力された光軸方向制御信号に従って、支点25(
図1)に掛けられたベルト43aを回すことで、支点25に支持された補助カメラ4の光軸方向αを変える駆動モータ(不図示)を備えるものである。また、光軸方向駆動手段43は、ベルト43aの回転量を計測するエンコーダ(不図示)を備え、光軸方向変換テーブルにより、エンコーダで計測された回転量を補助カメラ4の光軸方向αに変換する。
この光軸方向変換テーブルは、ベルト43aの回転量と、補助カメラ4の光軸方向αとを予め対応付けたものである。
【0035】
すなわち、
図1に示すように、垂直軸上の補助カメラ4U,4Dは、光軸方向駆動手段43により、上下に光軸方向αを変更可能である。また、水平軸上の補助カメラ4L,4Rは、光軸方向駆動手段43により、左右に光軸方向αを変更可能である。
【0036】
ズーム駆動手段45は、演算装置6からのズーム制御信号に従って、補助カメラ4のズームリング(不図示)を駆動する駆動モータ(不図示)を備えるものである。また、ズーム駆動手段45は、ズームリングの駆動量を計測するエンコーダ(不図示)を備え、ズーム値変換テーブルにより、エンコーダで計測された駆動量を補助カメラ4のズーム値に変換する。
このズーム値変換テーブルは、ズーム駆動手段31と同様のものである。
【0037】
フォーカス駆動手段47は、演算装置6からのフォーカス制御信号に従って、補助カメラ4のフォーカスリング(不図示)を駆動する駆動モータを備えるものである。また、フォーカス駆動手段47は、フォーカスリングの駆動量を計測するエンコーダ(不図示)を備え、フォーカス値変換テーブルにより、エンコーダで計測された駆動量を補助カメラ4のフォーカス値に変換する。
このフォーカス値変換テーブルは、フォーカス駆動手段33と同様のものである。
【0038】
補助カメラ4は、背景部分が撮影された補助画像と、補助カメラ4の位置と、光軸方向αと、ズーム値と、フォーカス値とを、演算装置6に出力する。
【0039】
<基準カメラ及び補助カメラの関係>
図4を参照して、基準カメラ3及び補助カメラ4の関係について、説明する(適宜
図3参照)。
図4では、説明を簡易にするため、基準カメラ3、及び、基準カメラ3の左右に配置された補助カメラ4L,4Rのみを図示した。
また、
図4では、基準カメラ3及び補助カメラ4L,4Rは、背景までの距離Lが等しいこととする。
また、
図4では、基準カメラ3及び補助カメラ4L,4Rの画角θが同一であり、基準カメラ3の撮影範囲Wを太線で図示し、補助カメラ4L,4Rの撮影範囲を細線で図示した。
また、
図4では、基準カメラ3の光軸方向、及び、補助カメラ4L,4Rの光軸方向αを一点鎖線で図示した。
【0040】
図4に示すように、基準カメラ3は、被写体90の背景部分Sが隠れてしまい、この背景部分Sを撮影できない。このため、基準画像から被写体90を切り出して背景映像を生成しても、背景部分Sが欠落し、完全に補完することが難しい。そこで、背景画像生成装置1は、補助カメラ4が別の位置から背景部分Sを撮影した補助画像を用いて、基準画像で欠落した背景部分Sを補完する。
【0041】
図3に戻り、背景画像生成装置1の構成について、説明を続ける。
距離計測手段5は、ステレオカメラ5L,5Rから入力されたステレオ画像を用いて、被写体90から基準カメラ3までの距離P(
図5)を計測するものである。例えば、距離計測手段5は、三角測量の原理により、ステレオ画像から視差情報を求め、この視差情報から、距離Pを示す距離情報(奥行情報)を生成する。そして、距離計測手段5は、生成した距離情報を演算装置6に出力する。
【0042】
演算装置(演算手段)6は、基準カメラ用DSP(Digital Signal Processor)61と、補助カメラ用DSP62と、MPU(Micro Processing Unit)63と、TC(Time Code)ジェネレータ64と、ストレージ65と、同期信号発生手段(カメラ同期手段)66とを備える。
【0043】
基準カメラ用DSP61は、被写体90のサイズを算出すると共に、基準カメラ3のズーム及びフォーカスを制御するものであり、被写体サイズ算出手段611と、ズーム制御手段613と、フォーカス制御手段615とを備える。
【0044】
被写体サイズ算出手段611は、距離計測手段5から入力された距離情報を用いて、被写体90のサイズを算出するものである。この距離情報では被写体90と背景との奥行(距離)が異なる。このため、被写体サイズ算出手段611は、距離情報を参照して、基準画像で奥行が異なる領域を被写体領域として抽出する。そして、被写体サイズ算出手段611は、抽出した被写体領域のサイズを求めて、被写体90のサイズを示すサイズ情報を生成する。
【0045】
ズーム制御手段613は、基準カメラ3のズームを制御するものである。例えば、ズーム制御手段613は、外部から、基準カメラ3のズームが操作されると、このズーム操作量に応じて、基準カメラ3のズームを制御するためのズーム制御信号を生成する。
【0046】
フォーカス制御手段615は、基準カメラ3のフォーカスを制御するものである。例えば、フォーカス制御手段615は、外部から、基準カメラ3のフォーカス操作が入力されると、このフォーカス操作量に応じて、基準カメラ3のフォーカスを制御するためのフォーカス制御信号を生成する。
【0047】
基準カメラ用DSP61は、基準画像をMPU63に出力する。また、基準カメラ用DSP61は、ズーム制御信号及びフォーカス制御信号を基準カメラ3に出力すると共に、MPU63を介して、補助カメラ用DSP62に出力する。さらに、基準カメラ用DSP61は、MPU63を介して、距離情報及びサイズ情報を補助カメラ用DSP62に出力する。
【0048】
補助カメラ用DSP62は、補助画像を変換すると共に、補助カメラ4の位置と、光軸方向αと、ズームと、フォーカスとを制御するものである。補助カメラ用DSP62は、補助画像変換手段621と、位置制御手段623と、光軸方向制御手段625と、ズーム制御手段627と、フォーカス制御手段629とを備える。
【0049】
本実施形態では、補助カメラ用DSP62は、補助カメラ4と一対一で対応するように、補助カメラ4と同数備えられる。つまり、4台の補助カメラ用DSP62は、同一構成である。
【0050】
補助画像変換手段621は、補助カメラ4から入力された補助画像を、基準画像と同一の仮想平面上に射影変換するものである。
【0051】
<補助画像の射影変換>
図5を参照して、補助画像変換手段621について、説明する(適宜
図3参照)。
図5では、説明を簡易にするため、基準カメラ3、及び、基準カメラ3の右側に配置された補助カメラ4Rのみを図示した。
【0052】
図5に示すように、基準カメラ3及び補助カメラ4Rの位置が異なるため、基準画像及び補助画像の画像座標系も異なることになる。すなわち、基準カメラ3の光軸が被写体90及び背景部分Sと垂直になるのに対し、補助カメラ4Rの光軸が被写体90及び背景部分Sと斜めになる。従って、基準画像の背景部分Sと、補助画像の背景部分S´とのなす角がθ/2になり、同一平面上に位置しないことになる。この状態では、背景画像生成装置1は、補助画像の背景部分S´を用いても、基準画像の背景部分Sを欠損なく補完することが困難である。
【0053】
そこで、補助画像変換手段621は、補助画像が遠方同一平面にあると近似し、補助画像の背景部分S´が基準画像の背景部分Sと重なるように、基準画像と同一平面を表す
仮想平面91の上に補助画像を射影変換する。具体的には、補助画像変換手段621は、補助画像をθ/2だけ回転させるアフィン変換を行う。
以後、射影変換された補助画像の背景部分S´を「背景部分S」と記す。
【0054】
図3に戻り、背景画像生成装置1の構成について、説明を続ける。
位置制御手段623は、基準カメラ用DSP61から入力された距離情報及びサイズ情報に基づいて、基準カメラ3から補助カメラ4までの距離β(
図2)が等しくなるように、補助カメラ4の位置を制御するものである。
【0055】
具体的には、位置制御手段623は、被写体90から基準カメラ3までの距離P(
図5)が近くなる程、距離βを遠くし、距離Pが遠くなる程、距離βを近くする。さらに、位置制御手段623は、被写体90のサイズが小さくなる程、距離βを遠くし、被写体90のサイズが大きくなる程、距離βを近くする。例えば、位置制御手段623は、距離βと、距離P及び被写体90のサイズとを対応付けた位置制御テーブルを予め設定しておく。そして、位置制御手段623は、この位置制御テーブルを参照して、補助カメラ4の位置を制御するための位置制御信号を生成する。
従って、補助カメラ4U,4D,4L,4Rは、それぞれに対応する位置制御手段623により、距離βが等しくなるように制御され、同一円の円周上に位置することになる。
【0056】
光軸方向制御手段625は、基準カメラ用DSP61から入力された距離情報及びサイズ情報に基づいて、補助カメラ4の光軸方向αの制御量が等しくなるように、補助カメラ4の光軸方向αを制御するものである。
【0057】
具体的には、光軸方向制御手段625は、距離Pが近くなる程、補助カメラ4の光軸方向αの制御量を多くし、距離Pが遠くなる程、補助カメラ4の光軸方向αの制御量を小さくする。さらに、光軸方向制御手段625は、被写体90のサイズが小さくなる程、補助カメラ4の光軸方向αの制御量を多くし、被写体90のサイズが大きくなる程、補助カメラ4の光軸方向αの制御量を小さくする。例えば、光軸方向制御手段625は、補助カメラ4の光軸方向αの制御量と、距離P及び被写体90のサイズとを対応付けた光軸方向制御テーブルを予め設定しておく。そして、光軸方向制御手段625は、この光軸方向制御テーブルを参照して、補助カメラ4の光軸方向αを制御するための光軸方向制御信号を生成する。
【0058】
図4において、正面を向いていた補助カメラ4L,4Rを被写体90に向ける場合を考える。この場合、光軸方向制御手段625は、それぞれに対応する補助カメラ4L,4Rを、被写体90の側に光軸方向αをθ/2だけ回転させる。言い換えるなら、補助カメラ4L,4Rは、空間上の同一点(例えば、被写体90)に向けられる。
なお、
図4では補助カメラ4U,4Dを省略したが、光軸方向制御手段625は、補助カメラ4U,4Dの光軸方向αをθ/2だけ回転させる。
【0059】
図3に戻り、背景画像生成装置1の構成について、説明を続ける。
ズーム制御手段627は、基準カメラ用DSP61から入力されたズーム制御信号に基づいて、基準カメラ3と同一画角になるように、補助カメラ4のズームを制御するものである。つまり、ズーム制御手段627は、基準カメラ3をマスターとし、補助カメラ4をスレーブとしたマスター・スレーブ制御により、補助カメラ4のズームを制御するためのズーム制御信号を生成する。
【0060】
フォーカス制御手段629は、基準カメラ用DSP61から入力されたフォーカス制御信号に基づいて、基準カメラ3のフォーカス位置に合焦するように、補助カメラ4のフォーカスを制御するものである。つまり、フォーカス制御手段629は、基準カメラ3をマスターとし、補助カメラ4をスレーブとしたマスター・スレーブ制御により、補助カメラ4のフォーカスを制御するためのフォーカス制御信号を生成する。
【0061】
補助カメラ用DSP62は、射影変換された補助画像をMPU63に出力する。また、補助カメラ用DSP62は、位置制御信号と、光軸方向制御信号と、ズーム制御信号と、フォーカス制御信号とを、補助カメラ4に出力する。
【0062】
MPU63は、背景画像の生成に必要な演算処理を行うものであり、背景画像生成手段631を備える。
背景画像生成手段631は、基準画像で被写体90に隠された背景部分Sを、補助画像の背景部分Sで補完することで、背景画像を生成するものである。
【0063】
<背景画像の生成>
図6〜
図8を参照し、背景画像生成手段631による背景画像の生成について、説明する(適宜
図1〜
図3参照)。
図6には、基準カメラ3で撮影した基準画像92の一例を図示した。また、
図6では、被写体90に隠された星型の背景部分Sを破線で図示した。
【0064】
図7には、補助カメラ4U,4D,4L,4Rで撮影され、補助画像変換手段621で射影変換された補助画像93U,93D,93L,93Rの一例を図示した。
補助画像93Uは、基準カメラ3より上に配置された補助カメラ4Uが被写体90を向いた状態で撮影されている。このため、補助画像93Uでは、背景部分Sの上側が、被写体90からはみ出している。
補助画像93D,93L,93Rは、補助画像93Uと同様、基準カメラ3と異なる位置の補助カメラ4D,4L,4Rが被写体90を向いた状態で撮影されている。このため、補助画像93D,93L,93Rでも、背景部分Sの一部が、被写体90からはみ出している。
【0065】
また、基準画像92及び補助画像93U,93D,93L,93Rは、同一の画像座標系で扱うことができる。このため、背景画像生成手段631は、基準画像92の背景部分Sを、補助画像93の背景部分Sで補完できる。
【0066】
具体的には、背景画像生成手段631は、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)、SURF(Speeded Up Robust Features)等の特徴点検出処理と、対応点探索処理とを施し、基準画像92及び補助画像93U,93D,93L,93Rの間で画素位置の対応関係を求める。そして、背景画像生成手段631は、基準画像92から被写体90を削除する。さらに、背景画像生成手段631は、画素位置の対応関係に基づいて、被写体90が削除された領域に、補助画像93U,93D,93L,93Rで対応する領域を重ね合わせる。ここで、背景画像生成手段631は、被写体90が削除された領域に、補助画像93U,93D,93L,93Rで対応する領域が複数ある場合、何れか1つを重ね合わせればよい。以上の手順により、背景画像生成手段631は、背景部分Sの欠損がない背景画像94を生成する。
【0067】
MPU63は、背景画像生成手段631が生成した背景画像94に、TCジェネレータ64から入力されたタイムコードを付加して、ストレージ65に記憶する。
【0068】
TCジェネレータ64は、タイムコードを発生させて、MPU63に出力するものである。
ストレージ65は、背景画像94を記憶するものであり、例えば、メモリやハードディスクである。また、ストレージ65は、基準カメラ3から入力された基準画像を記憶してもよい。
なお、TCジェネレータ64及びストレージ65は、一般的なものであるため、詳細な説明を省略する。
【0069】
同期信号発生手段66は、基準カメラ3が基準画像92を撮影するタイミングと、補助カメラ4が補助画像93を撮影するタイミングとを同期させるものである。つまり、同期信号発生手段66は、撮影タイミングを示す同期信号を、基準カメラ3及び補助カメラ4に同時に出力する。
【0070】
[背景画像生成装置の動作]
図9を参照し、背景画像生成装置1の動作について、説明する(適宜
図3参照)。
背景画像生成装置1は、距離計測手段5によって、被写体90から基準カメラ3までの距離Pを計測する(ステップS1)。
背景画像生成装置1は、被写体サイズ算出手段611によって、被写体90のサイズを算出する(ステップS2)。
【0071】
背景画像生成装置1は、位置制御手段623によって、基準カメラ3から補助カメラ4までの距離βが等しくなるように、補助カメラ4の位置を制御する。
背景画像生成装置1は、光軸方向制御手段625によって、4台の補助カメラ4の光軸方向αの制御量が等しくなるように、補助カメラ4の光軸方向αを制御する(ステップS3)。
【0072】
背景画像生成装置1は、ズーム制御手段627によって、基準カメラ3と同一画角になるように、補助カメラ4のズームを制御する。
背景画像生成装置1は、フォーカス制御手段629によって、基準カメラ3のフォーカス位置に合焦するように、補助カメラ4のフォーカスを制御する(ステップS4)。
【0073】
背景画像生成装置1は、基準カメラ3によって基準画像92を撮影し、補助カメラ4によって背景画像93を撮影する(ステップS5)。
背景画像生成装置1は、補助画像変換手段621によって、補助画像93を、基準画像92と同一の仮想平面上に射影変換する(ステップS6)。
背景画像生成装置1は、背景画像生成手段631によって、被写体90に隠された基準画像92の背景部分Sを、補助画像93の背景部分Sで補完することで、背景画像を生成する(ステップS7)。
【0074】
[作用・効果]
背景画像生成装置1は、補助カメラ4により、基準カメラ3から見て被写体90に隠された背景部分Sを撮影した補助画像93が得られ、補助画像93の画像座標系を基準画像92の画像座標系に合わせてから、この補助画像93を用いて補完を行うため、背景部分Sの欠損がない背景画像94を生成することができる。さらに、背景画像生成装置1は、補助画像93の画像座標系の軸方向(水平軸及び垂直軸)に沿って補助カメラ4が配置され、全ての補助カメラ4の位置及び光軸方向の制御量が等しくなるため、補助カメラ4の位置及び光軸方向の制御処理と、背景画像94の生成処理とを簡略化することができる。
【0075】
さらに、背景画像生成装置1は、ズーム制御手段627及びフォーカス制御手段629がマスター・スレーブ処理を行うため、補助カメラ4のフォーカス及びズームを簡易に制御することができる。さらに、背景画像生成装置1は、同期信号発生手段66が基準画像92と補助画像93との撮影タイミングを一致させるので、背景部分Sの補完誤りを低減することができる。
【0076】
例えば、背景画像生成装置1は、通常の撮影映像(基準画像92)と同時に、同一条件で撮影された背景画像94を得ることができ、VFX映像制作といった緻密な映像合成に有効に活用することができる。さらに、背景画像生成装置1は、得られた背景画像94を映像ストレージサーバ(不図示)に記憶させれば、様々な用途で背景画像94の二次利用が可能となり、映像のマルチユース化、素材映像の充実を促進することができる。これにより、背景画像生成装置1は、ポストプロダクション工程において、作業を大幅に簡略化できる。さらに、背景画像生成装置1は、素材映像のバリエーションを拡充が可能なことから、ドラマ番組、情報番組、報道番組等の様々な番組において臨場感が高い映像を制作でき、視聴者本位の魅力ある番組作りに大きく貢献する。
【0077】
本願発明に係る背景画像生成装置1は、前記した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で変形を加えることができる。
例えば、本実施形態では、補助カメラ4が4台であることとして説明したが、背景画像生成装置1は、補助カメラ4が5台以上であってもよい。
また、本実施形態では、撮影装置2がボールねじ24を用いることとして説明したが、背景画像生成装置1は、リニアモータ等の駆動モータや、空気シリンダ等の駆動機構を用いてもよい。
また、本実施形態では、距離計測手段5によって被写体90(前景)を認識することとして説明したが、操作者が操作端末を用いて前景を手動で指定してもよい。
この他、背景画像生成装置1は、距離計測手段5として、レーザ又は赤外線を利用した距離計も利用してもよい。