【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記実施例において、粘度はキャノンフェンスケ粘度計を用い、比重は浮秤計を用いて測定した。屈折率はデジタル屈折率計RX−5000(アタゴ社製)を用いて測定した。
1H−NMR分析は、JNM−ECP500(日本電子社製)を用い、測定溶媒として重クロロホルムを使用して実施した。
また、下記において化合物の純度は、以下の条件によるガスクロマトグラフィー(GC)測定により行ったものである。
ガスクロマトグラフィー(GC)測定条件
ガスクロマトグラフ:Agilent社製
検出器:FID、温度300℃
キャピラリーカラム:J&W社 HP−5MS(0.25mm×30m×0.25μm)
昇温プログラム:50℃(5分)→10℃/分→250℃(保持)
注入口温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム(1.0ml/分)
スプリット比: 50:1
注入量:1μl
【0043】
[実施例1]
エチレングリコールモノアリルエーテル76.5g(0.75mol)、トルエン100gを、攪拌機、ジムロート、温度計、及び滴下ロートを付けた1リットルフラスコに仕込み、70℃まで昇温した。塩化白金酸アルカリ中和物ビニルシロキサン錯体触媒トルエン溶液(白金含有量0.5%)0.38gを前記フラスコ中に添加した後、滴下ロートを用いて、1−ブチル−9−ヒドロ−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチルペンタシロキサン206g(0.5mol)を1時間かけて前記フラスコ中へ滴下した。内温は85℃まで上昇した。100℃で1時間熟成後に反応物をGCで分析したところ、原料モノブチルデカメチルヒドロペンタシロキサンのピークが消失し、反応が完結したことを示した。反応物に200gのイオン交換水を加え、攪拌しながら水洗し、静置して相分離させ、過剰のエチレングリコールモノアリルエーテルを含む水層を除去した。同様にして、200gイオン交換水で2回水洗し、有機層のトルエンを減圧ストリップして、無色透明液体であり下記式(6)で示されるシリコーン化合物242g(収率94%)を得た。GC測定による該シリコーン化合物の純度は99.4質量%であった。
【化13】
【0044】
上記式(6)のシリコーン化合物128.5g(0.25mol)、ジオクチルスズオキサイド0.01g(0.01質量%)、アイオノール0.01g、4−メトキシフェノール0.01gを、攪拌機、ジムロート、温度計、滴下ロートを付けた、1リットルフラスコに仕込み、下記式(7)で表される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物40.3g(0.26mol)を1時間かけて滴下した。内温は20℃から40℃まで上昇した。シリコーン化合物のピークをGC測定でモニタリングしながら40℃で熟成した。4時間後に、シリコーン化合物のピークが、GC測定での検出限界以下になったことを確認し、反応液にメタノール4.0g(0.125mol)を加えた。更に、ヘキサン180g、イオン交換水180g加え水洗した。静置分離して水層をカットした後、さらに2回水洗した。有機層から溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより、無色透明液体の生成物147gを得た。
1H-NMR分析により下記式(8)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(0.22mol、収率88%)。GC測定による該シリコーン化合物の純度は97.3%であり、粘度は32.6mm
2/s(25℃)であり、比重は0.993(25℃)であり、屈折率は1.4381であった。
【化14】
【化15】
【0045】
[実施例2]
実施例1において上記式(7)で表される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物40.3g(0.26mol)の替わりに下記式(9)で表される(メタ)アクリル基含有イソシアネート化合物30.9g(0.26mol) を使用した以外は実施例1を繰り返し、無色透明液体の生成物128.3gを得た。また
1H-NMR分析で、下記式(10)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(0.18mol、収率90%)。GC測定による該シリコーン化合物の純度は96.5%であり、粘度は29.5mm
2/s(25℃)であり、比重は0.995(25℃)であり、屈折率は1.4382であった。
【化16】
【化17】
【0046】
[比較例1]
実施例1で使用した上記式(6)のシリコーン化合物205.6g(0.4mol)、脱塩酸剤トリエチルアミン50.6g(0.5mol)、ヘキサン500gを、攪拌機、ジムロート、温度計、滴下ロートを付けた、2リットルフラスコに仕込み、フラスコを水浴中で冷却しながら、メタクリル酸クロライド48.1g(0.46mol)とヘキサン50gの混合物を1時間かけて滴下した。内温は20℃から30℃まで上昇した。水浴をはずし、シリコーン化合物のピークをGCでモニターしながら室温で熟成した。10時間後に、シリコーン化合物のピークが、GCでの検出限界以下になったので、反応液にイオン交換水500g加え水洗した。静置分離して水層をカットした後、さらに2回水洗した。有機層から溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより、無色透明液体の生成物206gを得た。
1H-NMR分析で、下記式(11)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(収率89%)。GC測定による該シリコーン化合物の純度は98.5%であり、粘度は5.9mm
2/s(25℃)であり、比重は0.944(25℃)であり、屈折率は1.4260であった。
【化18】
【0047】
[比較例2]
実施例1においてエチレングリコールモノアリルエーテル76.5gの替わりにジエチレングリコールモノアリルエーテル109.5g(0.75mol)を使用した以外は実施例1を繰り返した。反応終了後、200gイオン交換水で水洗したところ、分離不良だったので水を5%ぼう硝水に変更した。有機層のトルエンを減圧ストリップして下記式(12)で表されるシリコーン化合物240g(収率87%)を得た。GC測定で求めた該化合物の純度は99.1質量%だった。
【化19】
【0048】
比較例1において上記式(6)で表されるシリコーンカルビノール205.6gの替わりに、上記式(12)で表されるシリコーンカルビノール223.2g(0.4mol)を使用した以外は、比較例1を繰り返した。水洗時にイオン交換水の替わりに5%ぼう硝水を使用し、最終工程で、溶媒のヘキサン等を減圧ストリップすることにより無色透明液体の生成物213gを得た。
1H-NMR分析により下記(13)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(収率85%)。 GC測定で求めた該モノマーの純度は97.7質量%であり、粘度は6.4mm
2/s(25℃)であり、比重は0.945(25℃)であり、屈折率は1.4267であった。
【化20】
【0049】
[比較例3]
実施例1において上記式(6)のシリコーン化合物143g(0.25mol)の替わりに比較例2で合成した式(12)のシリコーン化合物139.5g(0.25mol)使用した以外は、実施例1を繰り返し、無色透明液体の生成物164gを得た。
1H-NMR分析により、下記式(14)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(0.23mol、収率92%)。 GC測定で求めた該化合物の純度は96.3質量%であり、粘度は34.5mm
2/s(25℃)、比重は0.990(25℃)、屈折率は1.4373であった。
【化21】
【0050】
[比較例4]
実施例2において式(6)のシリコーン化合物143g(0.25mol)の替わりに比較例2の式(12)のシリコーン化合物139.5g(0.25mol)使用した以外は、実施例2を繰返し、無色透明液体の生成物174.1gを得た。
1H-NMR分析により下記式(15)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(0.23mol、収率92%)。GC測定による該シリコーン化合物の純度は96.3%であり、粘度は30.8mm
2/s(25℃)、比重は0.999(25℃)、屈折率は1.4371であった。
【化22】
【0051】
[比較例5]
実施例1においてエチレングリコールモノアリルエーテル76.5gの替わりにジプロピレングリコールモノアリルエーテル130.5g(0.75mol)を使用した以外は実施例1を繰返し、無色透明液体であり、下記式(16)で表されるシリコーン化合物254.9g(0.43mol、収率87%)を得た。GC測定で求めた該化合物の純度は99.2質量%だった。
【化23】
【0052】
実施例2において上記式(6)で表されるシリコーン化合物139.5gの替わりに、上記式(16)のシリコーン化合物146.5g(0.25mol)を使用した以外は、実施例2を繰り返し、無色透明液体の生成物163.0gを得た。また
1H-NMR分析により下記式(17)で表されるメタクリルモノマーであることが確認された(0.22mol、収率88%)。 GC測定で求めた該化合物の純度は96.6質量%であり、粘度は35.3mm
2/s(25℃)、比重は1.003(25℃)、屈折率は1.4392であった。
【化24】
【0053】
[評価試験]
実施例1及び2、並びに比較例1〜5で得られた化合物について、下記の評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0054】
(1)モノマーの相溶性
モノマー(60質量部)、N,N−ジメチルアクリルアミド(35質量部)、トリエチレングリコールジメタクリレート(1質量部)、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート(5質量部)、ダロキュア1173(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、0.5質量部)を混合し撹拌した。得られた混合物の外観を目視により観察した。モノマーと他の化合物との相溶性が良好である混合物は無色透明になるが、相溶性が悪い混合物は濁りを生じる。
【0055】
(2)フィルム(重合体)の外観
上記(1)で調製した混合物をアルゴン雰囲気下で脱気した。該混合液を、石英ガラス板2枚をはさんだ鋳型に流し込み、超高圧水銀ランプで1時間照射したところ、厚さ約0.3mmのフィルムを得た。該フィルムの外観を目視観察した。
【0056】
(3)フィルム(重合体)の水濡れ性(表面親水性)
上記(2)で製造したフィルムに対して、接触角計CA−D型(協和界面科学株式会社製)を用い、液適法にて水接触角°の測定を行った。
【0057】
(4)フィルム(重合体)の耐汚染性
上記(2)で製造したフィルムを37℃リン酸緩衝液(PBS(−))に24時間浸漬した。浸漬前および24時間浸漬した後の各フィルムを、公知の人工脂質液中にて、37℃±2℃にて8時間インキュベートした。その後、PBS(−)にて濯ぎ洗いをし、0.1%スダンブラックー胡麻油溶液に浸漬した。浸漬前後で染色状態に差異が確認されない場合を○、確認された場合を×とした。
【0058】
(5)機械的強度
上記(2)に従いフィルムを2枚作製し、その内の1枚の表面水分を拭き取った後に37℃リン酸緩衝液(PBS(一))に24時間浸漬した。PBS(一)浸漬前および24時間浸漬後のフィルム各々を幅2.Ommのダンベル形状にカットし、試験サンプルの上下端を冶具で挟み、一定速度で引張続けた際の破断強度および破断伸度を破断試験機AGS−50NJ(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。破断強度と破断伸度が、PBS(一)に浸漬前後で、10%以内の変化の場合は○、10%を超える減少が認められる場合は×とした。
【0059】
【表1】
【0060】
本発明の化合物は、他の(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が良好であり、無色透明な重合体を提供することができる。また、フッ素置換基含有(メタ)アクリル系モノマーとも良好に相溶するため、親水性及び耐汚染性に優れる重合体を与えることができる。さらに、ウレタン結合を有することにより機械的強度に優れた重合体を与える。これに対し、比較例1〜4のモノマーは(メタ)アクリル系モノマーとの相溶性が悪く透明な重合物を得られない。また、ウレタン結合とシロキサン構造を連結する部分の構造がプロピレンオキサイド−プロピレンオキサイド構造である比較例5のモノマーから得られた重合体は水濡れ性(表面親水性)に劣る。