(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式(I)中の基Aとして、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のうちの少なくとも1種の化合物から、2つのカルボン酸無水物基を除いた4価の残基を含む請求項2記載のポリイミド前駆体。
前記一般式(I)中の基Bとして、一般式(B1)で表されるトリアジン部分構造を10〜100モル%の範囲で含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、下記一般式(I):
【0032】
【化7】
(式中、Aは、4価の芳香族基または脂肪族基、Bは2価の芳香族基である。)
で表される構造単位を有する。基Aは、テトラカルボン酸から4つのCOOH基を除いた残基(即ち、テトラカルボン酸二無水物から2つのカルボン酸無水物基(CO)
2Oを除いた残基)であり、基Bはジアミンから2つのNH
2基を除いた残基である。
【0033】
前記ポリイミド前駆体から得られるポリイミドは、下記一般式(II):
【0034】
【化8】
(式中、Aは、4価の芳香族基または脂肪族基、Bは2価の芳香族基である。)
で表される構造単位を有する。基Aは、テトラカルボン酸から4つのCOOH基を除いた残基(即ち、テトラカルボン酸二無水物から2つのカルボン酸無水物基(CO)
2Oを除いた残基)であり、基Bはジアミンから2つのNH
2基を除いた残基である。以下、ポリイミド製造の反応に使用されるテトラカルボン酸およびその二無水物をテトラカルボン酸成分、ジアミン類をジアミン成分という。一般式(I)および一般式(II)中の基Aおよび基Bは、それぞれテトラカルボン酸成分、ジアミン成分に由来して、ポリイミド構造中に含まれるものである。
【0035】
本発明のポリイミド前駆体およびポリイミドは、前記一般式(I)および一般式(II)中の基Bとして、下記式(B1):
【0036】
【化9】
(式中、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示す。)
で表されるトリアジン部分構造を含む。ポリイミド前駆体およびポリイミドに含まれる基Bの中で、式(B1)で表される基の割合は、0を超え100モル%まで、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%である。
【0037】
式(B1)の構造は、ジアミン成分として使用される、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジンに由来して、ポリイミド前駆体およびポリイミド中に導入される。式(B1)の構造の詳細は、後述するジアミン成分の説明から明らかである。
【0038】
本発明のポリイミド前駆体は、ハンドリングの観点から溶液の形態であることが好ましい。また、本発明のポリイミドは、フィルム、粉体、溶液等、所望の形態であることができるが、以下、ポリイミドフィルムの製造を例に説明する。
【0039】
ポリイミドフィルムは、熱イミド化および/または化学イミド化により得られるものであり、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを複数含む場合には、ランダム共重合していても、ブロック共重合していてもよく、またはこれらが併用されていてもよい。
【0040】
ポリイミドフィルムの厚みは特に限定されるものではないが、5〜120μm、好ましくは6〜75μm、さらに好ましくは7〜60μmである。
【0041】
ポリイミドフィルムの製造方法の例を概略的に示すと、
(1)ポリアミック酸溶液、またはポリアミック酸溶液に必要に応じてイミド化触媒、脱水剤、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、加熱により脱水環化、脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法;
(2)ポリアミック酸溶液に環化触媒および脱水剤を加え、さらに必要に応じて無機微粒子などを選択して加えたポリアミック酸溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、化学的に脱水環化させて、必要に応じて加熱乾燥して自己支持性フィルムを得た後、これを加熱により脱溶媒、イミド化することによりポリイミドフィルムを得る方法;
(3)ポリイミドが有機溶媒に可溶の場合、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリイミド溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱乾燥などにより一部または全部の溶媒を除去した後、最高加熱温度に加熱することによりポリイミドフィルムを得る方法;
(4)ポリイミドが有機溶媒に可溶の場合、離型助剤、無機微粒子などを選択して加えたポリイミド溶液組成物をフィルム状に支持体上に流延し、加熱により溶媒を除去しながら最高加熱温度に加熱することによりポリイミドフィルムを得る方法、
が挙げられる。
【0042】
上記製造方法において、自己支持性フィルムを得た後、加熱処理工程において、加熱する。加熱温度としては、加熱最高温度を300℃以上、350℃以上、さらに450℃以上で行うことが好ましい。これにより、熱処理後の剥離強度が優れる。
【0043】
上記製造方法において、最高加熱温度で加熱する場合、支持体上で行ってもよく、支持体上から剥がしておこなってもよい。
【0044】
ポリイミドフィルムはポリイミド前駆体(ポリアミック酸)より製造することが好ましい。
【0045】
以下にポリイミド前駆体およびポリイミドに使用される原料と共に、製造方法を説明する。
【0046】
<テトラカルボン酸成分、ジアミン成分>
テトラカルボン酸成分を構成するテトラカルボン酸二無水物は、芳香族系または脂肪族系のものが使用できる。
【0047】
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるテトラカルボン酸二無水物は、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0048】
テトラカルボン酸成分は、少なくともs−BPDA、PMDAおよび6FDAから選ばれる酸二無水物を含むことが好ましい。この中で、PMDAが好ましい。PMDAを使用することにより、ポリイミドフィルムの耐熱性が高くなる。また、ジアミン成分としてm−ATDAを使用した場合におけるポリイミドフィルムの紫外可視領域における透過率とp−ATDAを使用した場合における紫外可視領域における透過率の差が大きい。この実施形態では、テトラカルボン酸成分100モル%中に、PMDAを好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上含む。
【0049】
また、本発明の1実施形態においては、テトラカルボン酸成分として6FDAを使用することも好ましい。6FDAを使用した場合、ジアミン成分としてm−ATDAを使用した場合におけるポリイミドフィルムの有機溶媒に対する溶解性が、p−ATDAと比べてより高くなる。この実施形態では、テトラカルボン酸成分100モル%中に、6FDAを好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上含む。
【0050】
また、本発明の1実施形態においては、テトラカルボン酸成分100モル%中に、s−BPDAを好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは75モル%以上含む。s−BPDAをこのような割合で含むテトラカルボン酸成分を用いて得られるポリイミドフィルムは機械的特性などに優れる。
【0051】
脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物としては、脂環式のテトラカルボン酸二無水物を好適に用いることができる。この脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物とATDA(m−ATDA、p−ATDA)の組合せの場合、紫外可視領域における透過率が著しく改善される。脂環式のテトラカルボン酸二無水物の具体例としては、以下のもの及びそれらの誘導体などが挙げられる。
(1S,2R,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
(シス、シス、シス−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)、
(1S,2S,4R,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
(1R,2S,4S,5R)−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
などのシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(以下「CHDA」という場合がある)、
ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、
ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、
4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、
テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、
ビシクロ−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、
1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下「CBDA」ということがある)、
1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、
1,4−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、
1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
ペンタシクロ[8.2.1.1
4,7.0
2,9.0
3,8]テトラデカン−5,6,11,12−テトラカルボン酸二無水物、
5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、
シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物。
これらの脂環式テトラカルボン酸二無水物等は、単独で又は2種以上を併用することができる。脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物としては、CHDAおよびCBDAのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
一般式(I)および一般式(II)中の基Aの例、好ましい構造は、上記のテトラカルボン酸二無水物からカルボン酸無水物基(CO)
2Oを除いた4価の残基に対応し、その割合は、上記のテトラカルボン酸成分の記載に対応する。
【0053】
ジアミン成分は、一般式(B2)で表されるジアミン化合物を含む。
【0055】
R
1は水素原子または炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基またはアリール基を示し、
R
2は水素原子または炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基またはアリール基を示し、R
1とR
2は異なっていても良く、同じであっても良い。
【0056】
R
1とR
2の炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基としては、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニル、ベンジル、ナフチル、メチルフェニル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0057】
一般式(B2)で表されるジアミン化合物では、トリアジン環に結合した2つのNH基に接続するアミノアニリノ基が、3−アミノアニリノ(メタ位)である。実施例において示すように、4−アミノアニリノ(パラ位)を有する化合物に比べて得られるポリイミドの紫外可視領域における透過率(透明性)が著しく改善される。
【0058】
一般式(1)で示されるジアミン化合物としては、具体的には、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ビフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジフェニルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジベンジルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−N−メチルアニリノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−N−メチルナフチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−メチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−エチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジエチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(3−アミノアニリノ)−6−アミノ−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0059】
ジアミン成分は、一般式(B2)で表されるジアミン化合物以外に、ポリイミドの製造に一般的に使用されるジアミン化合物を含有してもよい。具体例としては、
1)パラフェニレンジアミン(1,4−ジアミノベンゼン;PPD)、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−トルエンジアミン、2,5−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン、
などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0060】
ジアミン成分は、一般式(B2)で表される化合物のパラ異性体である下記一般式(C)で表されるジアミン化合物(p−ATDA)を含有してもよい。
【0061】
【化11】
(式中、R
1、R
2は、式(B2)について定義されたものと同じ意味を表す。)
【0062】
本発明においては、一般式(B2)で示されるジアミン化合物は、全ジアミン成分(=100モル%)中、0を超え100モル%以下、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%、好ましくは15〜100モル%、より好ましくは17〜100モル%の量で使用され、特定の実施形態においては25〜100モル%の量で使用することも好ましい。
【0063】
一般式(B2)で示されるジアミン化合物以外のジアミン類を使用するときは、好ましくはパラフェニレンジアミン(PPD)およびジアミノジフェニルエーテル類から選ばれるジアミン化合物を、より好ましくはPPD、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルおよび3,4’−ジアミノジフェニルエーテルから選ばれる1種以上の化合物を、特に好ましくはPPDを含む。これにより得られるポリイミドフィルムは、機械的特性などに優れる。
【0064】
一般式I中の基Bの例、好ましい構造は、上記のジアミン類からNH
2を除いた2価の残基に対応し、その割合は、上記のジアミン成分の記載に対応する。
【0065】
本発明のポリイミドは、特許文献5に示されるような−SO
3H、−COOHおよび−PO
3H
2からなる群から選択される少なくとも1種のプロトン伝導性官能基を含まないことが優れた耐熱性を有するために好ましい。
【0066】
<ポリイミド前駆体の調製>
ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを公知の方法で反応させて得ることができ、例えば略等モル量を、有機溶媒中で反応させてポリアミック酸の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)を得ることができる。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリアミック酸を合成しておき、各ポリアミック酸溶液を一緒にした後、反応条件下で混合してもよい。このようにして得られたポリアミック酸溶液はそのまま、あるいは必要であれば溶媒を除去または加えて、自己支持性フィルムの製造に使用することができる。
【0067】
得られるポリイミドが有機溶媒に可溶の場合は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを公知の方法で反応させてポリイミドを得ることができる。例えば略等モル量を、有機溶媒中で反応させてポリイミド溶液を得ることができる。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミドを合成しておき、各ポリイミド溶液を一緒にした後、反応条件下で混合してもよい。
【0068】
ポリアミック酸溶液またはポリイミド溶液の有機溶媒としては、公知の溶媒を用いることができ、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミドなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
ポリアミック酸とポリイミドの重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、例えば、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度が、5質量%〜30質量%、さらに15質量%〜27質量%、特に18質量%〜26質量%であることが好ましい。
【0070】
ポリアミック酸の製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応は、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、反応温度100℃以下、好ましくは80℃以下にて約0.2〜60時間反応させることにより実施して、ポリアミック酸溶液を得ることができる。
【0071】
ポリイミドの製造例の一例として、前記の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミン成分との重合反応は、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、公知の方法でポリイミド溶液を得ることができ、例えば反応温度140℃以上、好ましくは160℃以上(好ましくは250℃以下、さらに230℃以下)にて約1〜60時間反応させることによりポリイミド溶液を得ることができる。
【0072】
ポリアミック酸溶液には、熱イミド化であれば必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。ポリアミック酸溶液には、化学イミド化であれば必要に応じて、環化触媒および脱水剤、無機微粒子などを加えてもよい。ポリイミド溶液には、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。また、無機微粒子の代わりに、有機溶媒に不溶なポリイミド微粒子を用いることもできる。
【0073】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどを好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01〜2倍当量、特に0.02〜1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上することがある。
【0074】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0075】
環化触媒としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。
【0076】
脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられる。
【0077】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0078】
<ポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムの製造>
ポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムは、ポリアミック酸溶液を支持体上に流延塗布し、自己支持性となる程度(通常のキュア工程前の段階を意味する)、例えば支持体上より剥離することができる程度にまで加熱して製造される。
【0079】
本発明において用いるポリアミック酸溶液の固形分濃度は、製造に適した粘度範囲となる濃度であれば特に限定されないが、通常、5質量%〜30質量%が好ましく、15質量%〜27質量%がより好ましく、18質量%〜26質量%がさらに好ましい。
【0080】
自己支持性フィルム作製時の加熱温度および加熱時間は適宜決めることができ、熱イミド化では、例えば、温度50〜180℃で1〜60分間程度加熱すればよい。
【0081】
支持体としては、ポリアミック酸溶液をキャストできるものであれば特に限定されないが、平滑な基材を用いることが好ましく、例えばガラス基板や、ステンレスなどの金属製のドラムやベルトなどが使用される。
【0082】
自己支持性フィルムは、支持体上より剥離することができる程度にまで溶媒が除去され、および/またはイミド化されていれば特に限定されないが、熱イミド化では、その加熱減量が20〜50質量%の範囲にあることが好ましく、加熱減量が20〜50質量%の範囲で且つイミド化率が7〜55%の範囲にあると、自己支持性フィルムの力学的性質が十分となる。
【0083】
ここで、自己支持性フィルムの加熱減量とは、自己支持性フィルムの質量W1とキュア後のフィルムの質量W2とから次式によって求めた値である。
【0084】
加熱減量(質量%)={(W1−W2)/W1}×100
【0085】
また、部分的にイミド化された自己支持性フィルムのイミド化率は、自己支持性フィルムと、そのフルキュア品(ポリイミドフィルム)のIRスペクトルをATR法で測定し、振動帯ピーク面積または高さの比を利用して算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。より具体的には、自己支持性フィルムと、そのフルキュアフィルム(ポリイミドフィルム)のFT−IRスペクトルを、日本分光製FT/IR6100を用いて、Geクリスタル、入射角45°の多重反射ATR法で測定し、1775cm
−1のイミドカルボニル基の非対称伸縮振動のピーク高さと1515cm
−1の芳香環の炭素−炭素対称伸縮振動のピーク高さの比を用いて、次式(1)によりイミド化率を算出できる。
【0086】
イミド化率(%)={(X1/X2)/(Y1/Y2)}×100 (1)
但し、
X1:自己支持性フィルムの1775cm
−1のピーク高さ、
X2:自己支持性フィルムの1515cm
−1のピーク高さ、
Y1:フルキュアフィルムの1775cm
−1のピーク高さ、
Y2:フルキュアフィルムの1515cm
−1のピーク高さ、とする。
【0087】
<加熱処理(イミド化)工程>
次いで、自己支持性フィルムを加熱処理してポリイミドフィルムを得る。加熱処理工程において、最高加熱温度が、好ましくは300℃以上、350℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは470℃以上となるように加熱する。加熱温度の上限はポリイミドフィルムの特性が低下しない温度であれば良く、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下、さらに好ましくは530℃以下、特に好ましくは520℃以下である。
【0088】
加熱処理の一例としては、次のような形態が挙げられる。最初に約100℃〜350℃未満の温度においてポリマーのイミド化および溶媒の蒸発・除去を約0.05〜5時間、特に0.1〜3時間で徐々に行うことが適当である。特に、この加熱処理は段階的に、約100℃〜約170℃の比較的低い温度で約0.5〜30分間第一次加熱処理し、次いで170℃を超えて220℃以下の温度で約0.5〜30分間第二次加熱処理して、その後、220℃を越えて350℃未満の高温で約0.5〜30分間第三次加熱処理することが好ましい。さらに、350℃以上から600℃以下の高い温度で第四次高温加熱処理することが好ましい。また、この加熱プロセスは逐次的にも連続的にも行うことができる。
【0089】
自己支持性フィルムの加熱処理(イミド化)は、支持体上で行ってもよく、支持体上から剥がしておこなってもよい。工業的に製造する場合、加熱処理の際、自己支持性フィルムを支持体上から剥がし、キュア炉中においてピンテンタ、クリップ、枠などで、少なくとも長尺の自己支持性フィルムの長手方向に直角の方向、すなわちフィルムの幅方向の両端縁を固定し、必要に応じて幅方向、または長さ方向に拡縮して加熱処理を行なうことができる。
【0090】
上述のようにして、得られた本発明のポリイミドフィルムは、さらに、サンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、エッチング処理などを行っても良い。
【0091】
<ポリイミド積層体およびポリイミド金属積層体>
本発明のポリイミドフィルムは、金属箔等の基材や接着剤等の材料との接着性に優れている。このため、本発明のポリイミドフィルムと接着剤層が積層されたポリイミド積層体や、後述するポリイミド金属積層体とすることができる。金属として銅が好ましい。
【0092】
ポリイミド金属積層体の製造方法としては、(1)ポリイミドフィルムと基材(例えば、金属箔)とを、直接または接着剤を介して、加圧または加熱加圧して積層する方法、(2)ポリイミドフィルム上に湿式法(メッキ)または乾式法(真空蒸着、スパッタリング等のメタライジング)により金属層を直接形成する方法、(3)金属箔等の基材上に、前述のポリアミック酸溶液またはポリイミド溶液を塗布し、乾燥・イミド化(ポリイミド溶液のときは乾燥)する方法、等が挙げられる。
【0093】
以上のように、本発明のポリイミドフィルム、ポリイミド金属積層体(接着剤層を介してフィルムと金属層が積層された積層体、フィルム上に直接金属層が形成された積層体の両方を含む)およびポリイミド積層体は、プリント配線板、フレキシブルプリント基板、TAB用テープ、COF用テープあるいは金属配線など、また、金属配線、ICチップなどのチップ部材などのカバー基材、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー、電子ペーパー、太陽電池などのベース基材等の電子部品や電子機器類の素材として用いることができる。
【0094】
本発明のポリイミドフィルムは、金属との接着性に優れ、かつ紫外可視領域における透過率が改善されている。従って、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、電子ペーパーなどの表示装置用のガラス基板代替用のプラスチック基板として好適に利用することができる。
【0095】
<脂環式のテトラカルボン酸二無水物と、ATDA(p−ATDAおよびm−ATDA)を使用して得られたポリイミド前駆体、ポリイミドおよびポリイミドフィルム>
脂環式のテトラカルボン酸二無水物と、ATDAとから、ポリイミド前駆体を得ることができる。また、前記ポリイミド前駆体からポリイミドおよびポリイミドフィルムを得ることができる。このポリイミドフィルムは、金属箔等の基材や接着剤等の材料との接着性に優れている。また、このポリイミドフィルムは、紫外可視領域における透過率(透明性)が改善される。
【0096】
脂環式のテトラカルボン酸二無水物、および、ATDA(p−ATDAおよびm−ATDA)は、前記<テトラカルボン酸成分、ジアミン成分>で述べたものと同じである。
また、脂環式のテトラカルボン酸二無水物と、ATDA(p−ATDAおよびm−ATDA)を使用してポリイミド前駆体を得る方法については、前記<ポリイミド前駆体の調製>と同じである。
【0097】
さらに、前記ポリイミド前駆体を使用してポリイミドおよびポリイミドフィルムを得る方法は、前記<ポリアミック酸溶液の自己支持性フィルムの製造>および<加熱処理(イミド化)工程>と同じである。
【0098】
また、前記ポリイミドフィルムを使用してポリイミド積層体およびポリイミド金属積層体を得る方法およびポリイミド積層体およびポリイミド金属積層体の用途については、前記<ポリイミド積層体およびポリイミド金属積層体>と同じである。
【0099】
<一般式(B2)の化合物の製造方法>
次に、本発明のポリイミドの製造に使用される、一般式(B2)で表される2,4-ビス(3−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジンの製造方法について説明する。
【0100】
まず、下の反応スキームで示されるように、ハロゲン化シアヌルとアミノ化合物(NHR
1R
2)とを反応させて、一般式(B3)で表される6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジハライドを合成する。
【0102】
式中、Xはハロゲン原子であり、好ましくは、Cl、BrまたはIである。また、R
1、R
2は、一般式(B2)について、定義されたとおり、R
1は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、R
2は水素原子または炭素数1〜12のアルキル基またはアリール基を示し、好ましい範囲も一般式(B2)について示したとおりである。R
1、R
2の具体的例は、一般式(B2)の具体例が有している基である。
【0103】
次に、下の反応スキームで示されるように、一般式(B3)で表される6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジハライドと3−ニトロアニリンとを反応させて、一般式(B4)で表される2,4−ビス−(3−ニトロアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン(B4)を合成する。
【0105】
式中、X、R
1およびR
2は、前で述べたものと同じである。
【0106】
上記二つの反応は、一般に、塩基の存在下、溶媒中で行われることが好ましい。使用される塩基は、特に限定されず、一般的な無機塩基が使用され、例えば、炭酸ナトリウム等を挙げることができる
【0107】
使用される溶媒も、特に限定されず、例えばジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒;トルエン、ベンゼン等の炭化水素系の溶媒;N,Nージメチルホルムアミド,N,Nージメチルアセトアミド,Nーメチルー2ーピロリドン等のアミド系溶媒等の一般的な溶媒を使用することができる。
【0108】
次に、得られた2,4−ビス−(3−ニトロアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン(B4)を、還元して、ニトロ基をアミノ基に変換して、2,4-ビス(3−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン(B2)を合成する。
【0110】
還元反応としては、公知の方法を採用することができるが、上記のスキームに示すように、溶媒中、適宜加熱しながら、例えば、適当な触媒の存在下、水素添加することで行うことができる。触媒としてはカーボン担持パラジウム等の公知のものを使用することができる。
【0111】
本発明の2,4-ビス(3−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジンの製造方法は、新規な方法である。反応の詳細は、実施例により説明するが、当業者は、溶媒、仕込み量、反応条件等を変更することが可能であり、また、慣用の方法に従って、後処理、精製等を行うことができる。
【0112】
本発明者らは、6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジハライド(B3)に、過剰のパラフェニレンジアミンを反応させることにより、2,4-ビス(4−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン(p−ATDA)を得ることができることを確認した。そこで、6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジハライド(B3)に、過剰のメタフェニレンジアミンを反応させることにより、2,4-ビス(3−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン(m−ATDA)を得ることを試みた。しかし、m−ATDAを得ることができなかった。
【0113】
本発明の製造方法によれば、2,4-ビス(3−アミノアニリノ)−6−置換アミノ−1,3,5−トリアジン(B2)を高収率で効率良く得ることができる。
【実施例】
【0114】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0115】
<評価方法>
ポリアミック酸およびポリイミドの物性の評価は以下の方法に従って行った。
【0116】
(1)ポリアミック酸の対数粘度の測定
後述のようにして調製したポリアミック酸溶液をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)で0.5g/dLに希釈し、オストワルド粘度計を用いて30℃で対数粘度を測定した。
【0117】
(2)ポリイミドフィルムの溶解性試験
得られたポリイミドフィルム10mgを有機溶媒5mLに加え、室温で溶解した場合は「++」、加熱して室温で溶解した場合は「+」、部分的に溶解または膨潤した場合は「±」、不溶の場合は「−」で表した。有機溶媒には、DMAc、NMP、THF、クロロホルムを用いた。
【0118】
(3)ポリイミド溶液の対数粘度の測定
得られたポリイミドをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)で0.5g/dLの濃度になるように溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で対数粘度を測定した。
【0119】
(4)ガラス転移温度
島津製作所製DSC−60を用いて、窒素中20℃/分の昇温速度で測定し、ガラス転移温度を求めた。
【0120】
(5)ポリイミドフィルムの線膨張係数
Seiko Instroments Inc.EXSTAR TMA/SS6100(昇温速度:10℃/min)により測定し、線膨張係数を算出した。
【0121】
(6)光学特性
(ジアミンモノマー)
m−ATDAまたはp−ATDAの1×10
−5mol/Lのテトラヒドロフラン溶液を日本分光製V−570紫外−可視分光器を用いて紫外−可視吸収スペクトルを測定した。カットオフ波長「λ
cutoff」、透過率80%となる波長「λ
80%」を求めた。また、波長が400、500および600nmにおける透過率を求めた。
【0122】
(ポリイミドフィルム)
日本分光製V−570紫外−可視分光器を用いて、後述のようにして得たポリイミドフィルムの紫外−可視吸収スペクトルを測定した。カットオフ波長「λ
cutoff」、透過率80%となる波長「λ
80%」を求めた。また、波長が400、500および600nmにおける透過率を求めた。
【0123】
(7)ポリイミドフィルムの屈折率
アタゴ製アッベ屈折計DR−M4を用いて,ポリイミドフィルムのD線(589nm)における屈折率を室温で測定した。
【0124】
(8)ポリイミド金属積層体の剥離強度の測定
得られたポリイミド金属積層体の90°剥離強度を温度23℃、相対湿度50%の環境下で、50mm/分の剥離速度で測定した。
【0125】
<合成参考例1>
<6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジクロリド(ATD)の合成>
撹拌子、温度計、滴下ロートおよび塩化カルシウム管を取り付けた三口フラスコ(1L)に、塩化シアヌル(36.52g、0.2mol)とTHF(120mL)を入れ、氷浴により−5〜0℃に冷却しながら完全に溶解させた。アニリン(19.03g、0.2mol)をTHF(70mL)に溶解させた溶液を三口フラスコにゆっくりと滴下した。滴下後、0〜5℃で2時間撹拌した。炭酸ナトリウム(12.90g、0.12mol)を蒸留水(70mL)に溶かした水溶液を温度の上昇に気をつけながら、三口フラスコにゆっくりと滴下した。滴下後、2時間撹拌した。反応溶液を分液ロートに移し、飽和食塩水を加えた。分離した有機層に無水硫酸マグネシウムを加え一晩撹拌した。吸引ろ過により無水硫酸マグネシウムを除去した後、エバポレーターによりTHFを留去し、固体の粗生成物を得た。この粗生成物を脱水したヘキサン/トルエン混合溶媒で再結晶し、白色針状結晶を得た。
収量40.6g、収率84%、融点136−137℃、
1H−NMR[400MHz,DMSO−d
6,ppm]:δ7.18(t,1H,Ar−H),7.40(t,2H,Ar−H),7.61(d,2H,Ar−H),8.92(s,1H,NH)
13C NMR[101MHz,DMSO−d
6,TMS,ppm]:δ170.1,169.2,164.2,137.3,129.3,125.4,122.0
【0126】
<合成参考例2>
<2,4−ビス(4−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(p−ATDA)の合成> 比較ジアミン化合物の合成
【0127】
撹拌子、冷却管、側管付き滴下ロート、窒素導入管を備えた三口フラスコ(1L)に1,4−ジオキサン(100mL)、炭酸ナトリウム(8.90g、0.08mol)、p-フェニレンジアミン(34.62g、0.32mol)を加え、加熱して溶解させた。6−アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジクロリド(10.11g、0.04mol)を1,4-ジオキサン(80mL)に溶かした溶液を滴下ロートに入れ、還流した溶液に5時間かけて滴下した。還流温度のまま一晩撹拌した。反応終了後、反応混合物をビーカー(3L)中、熱水で4回、水1回で、洗浄水が透明になるまで洗浄した。吸引ろ過により固形分を回収した後、固形分をアセトン中に加え、還流温度で30分撹拌して溶解し、不溶分をろ過した。ろ液からアセトンをエバポレーターで留去し粗生成物を得た。粗生成物を1,4-ジオキサン/ヘキサンにより再結晶した。このとき、熱時ろ過をする前に活性炭を加え約1時間還流して、活性炭処理を行った。その後、熱時ろ過し得られた結晶を190℃で6時間減圧乾燥した。淡褐色粉末を得た。
【0128】
収量9.17g、収率58%、融点224−225℃
1H−NMR[400MHz,DMSO−d
6,TMS,ppm]:δ4.78(s,4H,Ar−NH
2),6.53(d,4H,NH
2−o−Ar−H),6.94(t,1H,p−Ar−H),7.23(t,2H,m−Ar−H),7.34(d,4H,NH
2−m−Ar−H),7.79(d,2H,o−Ar−H),8.64(s,2H,Ar−NH−Ar),8.95(s,1H,Ar−NH)
13C NMR[101MHz,DMSO−d
6,TMS,ppm]:δ164.1,164.0,144.1,140.4,129.0,128.2,122.6,121.4,119.9,113.8
元素分析(C
21H
20N
8 Mw:384.44)
計算値(%)C;65.61 H;5.24 N;29.15
測定値(%)C;65.88 H;5.36 N;29.07
【0129】
<合成実施例1>
【0130】
(i)2,4−ビス−(3−ニトロアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(NAT)の合成 −− 式(B4)の化合物の合成
【0131】
撹拌子、冷却管、側管付き滴下ロート、窒素導入管を備えた三口フラスコ(1L)に、6−アニリノ−1,3,5−トリアジン−2,4-ジクロリド(15.0g、0.062mol)、3−ニトロアニリン(10.27g、0.074mol)、炭酸ナトリウム(4.32g、0.041mol)、1,4−ジオキサン(150mL)を加え還流温度にさせ温度を保持し一晩撹拌させた。その後大量の水に落とし吸引ろ過し、メタノールで洗浄後、ジオキサン/ヘキサンで再結晶を行った。130℃で8時間減圧乾燥を行い、淡黄色粉末結晶が得られた。
【0132】
収量:14.6g、収率53%、融点217−218℃
1H−NMR[400MHz,DMSO−d
6,TMS,ppm]:δ7.04(t,1H,Ar−H),7.31(t,2H,Ar−H),7.59(t,2H,Ar−H),7.78(d,2H,Ar−H),7.84(d,2H,Ar−H),8.29(s,2H,Ar−H),8.61(s,2H,Ar−H),9.48(s,1H,NH),9.84(s,2H,NH)
13C NMR[101MHz,DMSO−d
6,ppm]:d=164.9,164.5,148.5,141.5,139.9,130.2,128.9,126.7,123.0,121.2,117.0,114.8
元素分析(C
21H
16N
8O
4)
計算値(%)C;56.76 H;3.63 N;25.21
測定値(%)C;56.98 H;3.72 N;25.08
【0133】
(ii)2,4-ビス(3−アミノアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(m−ATDA)の合成 −− 式(B2)の化合物の合成
【0134】
三方コック、水素を充填した耐圧風船、冷却管を備えた三口フラスコ(1L)に、2,4−ビス(3−ニトロアニリノ)−6−アニリノ−1,3,5−トリアジン(10.00g、0.023mol)、DMAc(250mL)を加え、さらに5wt%Pd/C(0.53g)を加え攪拌した。フラスコ内を水素の充填とアスピレーターによる脱気の操作を三回繰り返し、水素雰囲気下にした後80℃で72時間攪拌した。反応後、Pd/Cを吸引ろ過によりろ別し、ろ液からDMAcを留去して、固体の粗生成物を得た。これをTHF溶媒に溶解し、還流温度で活性炭処理を30分行った。ろ過により活性炭を除去し、ろ液からTHFを留去して白色の固体の生成物を得た。その後、ジオキサン/ヘキサンを用いて再結晶を行い、170℃で7時間減圧乾燥を行った。白色粉末結晶を得た。
【0135】
収量:4.58g、収率:53%、融点186−187℃
1H−NMR[400MHz,DMSO−d
6,ppm]:δ=4.92(s,4H,NH
2),6.26(s,1H,Ar−H),6.96(t,2H,Ar−H),7.00(d,2H,Ar−H),7.05(t,1H,Ar−H),7.28(s,2H,Ar−H),7.31(t,2H,Ar−H),7.82(t,2H,Ar−H),8.88(s,2H,NH),9.05(s,1H,NH)
13C NMR[101MHz,DMSO−d
6,ppm]:d=164.1,164.0,148.6,140.3,140.1,128.5,121.7,120.0,109.0,108.5,106.7
元素分析(C
21H
20N
8)
計算値(%)C;65.61 H;5.24 N;29.15
測定値(%)C;65.42 H;5.35 N;29.31
【0136】
<製造比較例1>
撹拌子、冷却管、側管付き滴下ロート、窒素導入管を備えた三口フラスコ(1L)に1,4−ジオキサン(100mL)、炭酸ナトリウム(8.90g、0.08mol)、メタフェニレンジアミン(34.62g、0.32mol)を加え、還流温度で撹拌し溶解させた。6−アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジクロリド(10.11g、0.04mol)を1,4-ジオキサン(80mL)に溶かした溶液を滴下ロートに入れ、還流した溶液に5時間かけて滴下し、還流温度のまま一晩撹拌した。反応終了後、反応混合物をビーカー(3L)中熱水で4回、水で1回、洗浄水が透明になるまで洗浄した。吸引ろ過により回収した後、還流温度のアセトン中で30分撹拌して不溶分をろ過し、ろ液からアセトンをエバポレーターで留去し固体を得た。この固体を1,4-ジオキサン/ヘキサンにより再結晶を試みた。しかし、生成物(m−ATDA)の結晶を得ることができなかった。
【0137】
次のポリアミック酸溶液を調製した。
【0138】
(ポリアミック酸溶液Aの調製)
s−BPDA/p−ATDA
撹拌棒、窒素導入管を取り付けた三口フラスコ(100mL)に、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(p−ATDA)(0.961g,2.50mmol)とN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(5mL)を加え、室温で撹拌して溶解させた。その後、室温で撹拌しながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)(0.736g、2.50mmol)を添加して室温で6時間反応させ、粘稠な重合溶液を得た。これをDMAcで希釈してポリアミック酸溶液A(ポリイミド前駆体溶液A)を得た。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、1.29dL/gであった。
【0139】
(ポリアミック酸溶液Bの調製)
s−BPDA/m−ATDA
ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Bを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、1.20dL/gであった。
【0140】
(ポリアミック酸溶液Cの調製)
PMDA/p−ATDA
酸二無水物をピロメリット酸二無水物(PMDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Cを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.38dL/gであった。
【0141】
(ポリアミック酸溶液Dの調製)
PMDA/m−ATDA
酸二無水物をピロメリット酸二無水物(PMDA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Dを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.72dL/gであった。
【0142】
(ポリアミック酸溶液Eの調製)
6FDA/p−ATDA
酸二無水物を4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Eを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.54dL/gであった。
【0143】
(ポリアミック酸溶液Fの調製)
6FDA/m−ATDA
酸二無水物を4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Fを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.57dL/gであった。
【0144】
(ポリアミック酸溶液Gの調製)
CBDA/p−ATDA
酸二無水物を1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Gを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、1.54dL/gであった。
【0145】
(ポリアミック酸溶液Hの調製)
CBDA/m−ATDA
酸二無水物を1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Hを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.65dL/gであった。
【0146】
(ポリアミック酸溶液Iの調製)
s−BPDA/ODA
ジアミンを4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Iを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、1.84dL/gであった。
【0147】
(ポリアミック酸溶液Nの調製)
DSDA/m−ATDA
酸二無水物を3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Nを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.62dL/gであった。
【0148】
(ポリアミック酸溶液Oの調製)
ODPA/m−ATDA
酸二無水物を4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Oを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.66dL/gであった。
【0149】
(ポリアミック酸溶液Pの調製)
BTDA/m−ATDA
酸二無水物を3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Pを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.60dL/gであった。
【0150】
(ポリアミック酸溶液Qの調製)
CHDA/m−ATDA
酸二無水物を1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、ジアミンを2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Qを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.46dL/gであった。
【0151】
(ポリアミック酸溶液Rの調製)
DSDA/p−ATDA
酸二無水物を3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Rを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.78dL/gであった。
【0152】
(ポリアミック酸溶液Sの調製)
ODPA/p−ATDA
酸二無水物を4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Sを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.84dL/gであった。
【0153】
(ポリアミック酸溶液Tの調製)
BTDA/p−ATDA
酸二無水物を3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Tを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.64dL/gであった。
【0154】
(ポリアミック酸溶液Uの調製)
CHDA/p−ATDA
酸二無水物を1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)とした以外は、ポリアミック酸溶液Aの調製と同様にして、ポリアミック酸溶液Uを調製した。このポリアミック酸の対数粘度(η
inh)は、0.50dL/gであった。
【0155】
次のポリイミド、ポリイミド溶液を調製した。
【0156】
(ポリイミドV、ポリイミド溶液Vの調製)
6FDA/m−ATDA
100mLの三口フラスコにスリーワンモーター、窒素導入管を備え、窒素気流下で2,4-ビス(3-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジン(m−ATDA)(0.961g,2.50mmol)とN−メチルピロリドン(NMP)(5mL)を加え、室温で撹拌して溶解させた。その後、室温で撹拌しながら、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)(1.111g、2.50mmol)を加え、室温で6時間攪拌した。重合途中で粘度が増大するため、溶媒を追加し、前駆体であるポリアミック酸溶液を得た。その後、ディーン・スターク管とジムロートをとりつけ、反応溶液が5wt%となるように、ポリアミック酸溶液にNMPを仕込んだ。共沸溶媒としてトルエン5mLを加え、140℃で3時間撹拌し系中の水を除去した後、200℃、3時間撹拌し、イミド化反応を行った。反応溶液をメタノールに注ぎ固体を析出させ、吸引ろ過により固体を得た。その後、得られた固体を室温で減圧乾燥させることによりポリイミドVを得た。ポリイミドVの対数粘度(η
inh)は、0.64dL/gであった。また、ポリイミドVをNMPに再溶解させることにより、ポリイミド溶液Vを得た。
【0157】
(ポリイミドW、ポリイミド溶液Wの調製)
DSDA/m−ATDA
酸二無水物を3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)とした以外は、ポリイミドV、ならびにポリイミド溶液Vの調製と同様にして、ポリイミドW、ならびにポリイミド溶液Wを調製した。ポリイミドWの対数粘度(η
inh)は、0.62dL/gであった。
【0158】
(ポリイミドX、ポリイミド溶液Xの調製)
ODPA/m−ATDA
酸二無水物を4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)とした以外は、ポリイミドV、ならびにポリイミド溶液Vの調製と同様にして、ポリイミドX、ならびにポリイミド溶液Xを調製した。ポリイミドXの対数粘度(η
inh)は、0.52dL/gであった。
【0159】
(ポリイミドフィルムの作製と、有機溶媒への溶解性および光学特性の評価)
(比較例1)ポリイミドフィルムAの作製
s−BPDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aをガラス板上に薄膜状にキャストし、60℃で6時間、100℃で1時間、200℃で1時間、さらに300℃で1時間加熱して、加熱イミド化を行った。冷却後,水に浸すことによりポリイミドフィルムをガラス板より剥離させた。乾燥後,厚み16μmのポリイミドフィルムAを得た。
【0160】
得られたポリイミドフィルムの有機溶媒への溶解性を表1に、光学特性を表2に示す。
【0161】
(実施例1)ポリイミドフィルムBの作製
s−BPDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Bを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み14μmのポリイミドフィルムBを得た。このポリイミドフィルムBの屈折率(n
D)は、1.739であった。得られたポリイミドの有機溶媒への溶解性を表1に、光学特性を表2に示す。
【0162】
(比較例2)ポリイミドフィルムCの作製
PMDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Cを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み14μmのポリイミドフィルムCを得た。各物性値を、表1および表2に示す。
【0163】
(実施例2)ポリイミドフィルムDの作製
PMDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Dを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み17μmのポリイミドフィルムDを得た。このポリイミドフィルムDの屈折率(n
D)は、1.759であった。各物性値を、表1および表2に示す。
【0164】
(比較例3)ポリイミドフィルムEの作製
6FDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Eを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み17μmのポリイミドフィルムEを得た。各物性値を、表1および表2に示す。
【0165】
(実施例3)ポリイミドフィルムFの作製
6FDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Fを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み16μmのポリイミドフィルムFを得た。このポリイミドフィルムFの屈折率(n
D)は、1.728であった。各物性値を、表1および表2に示す。
【0166】
(比較例4)ポリイミドフィルムIの作製
s−BPDA/ODA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Iを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み37μmのポリイミドフィルムIを得た。このポリイミドフィルムIの屈折率(n
D)は、1.714であった。各物性値を、表1および表2に示す。
【0167】
(CBDAとATDAを使用したポリイミドフィルムの作製)
(参考例1)ポリイミドフィルムGの作製
CBDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Gを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み10μmのポリイミドフィルムGを得た。各物性値を、表1および表2に示す。
【0168】
(実施例4)ポリイミドフィルムHの作製
CBDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Hを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み11μmのポリイミドフィルムHを得た。このポリイミドフィルムHの屈折率(n
D)は、1.729であった。各物性値を、表1および表2に示す。
【0169】
(ガラス転移温度の評価)
(実施例5)ポリイミドフィルムJの作製
s−BPDA/m−ATDA
ポリイミドフィルムの厚みを40μmに変更した以外は、実施例1と同様な方法によりポリイミドフィルムJを得た。ポリイミドフィルムJのガラス転移温度(DSC)は261℃であった。
【0170】
(実施例6)ポリイミドフィルムKの作製
PMDA/m−ATDA
ポリイミドフィルムの厚みを40μmに変更した以外は、実施例2と同様な方法によりポリイミドフィルムKを得た。ポリイミドフィルムKのガラス転移温度(DSC)は291℃であった。
【0171】
(実施例7)ポリイミドフィルムLの作製
6FDA/m−ATDA
ポリイミドフィルムの厚みを40μmに変更した以外は、実施例3と同様な方法によりポリイミドフィルムLを得た。ポリイミドフィルムLのガラス転移温度(DSC)は256℃であった。
【0172】
(実施例8)ポリイミドフィルムMの作製
CBDA/m−ATDA
ポリイミドフィルムの厚みを23μmに変更した以外は、実施例4と同様な方法によりポリイミドフィルムMを得た。ポリイミドフィルムMのガラス転移温度(DSC)は288℃であった。また、300℃でのアニール処理後、線膨張係数を測定したところ、50〜200℃までの線膨張係数は14.1ppm/Kと低い値を示した。
【0173】
(ポリイミド金属積層体の作製と剥離強度)
(実施例9)
s−BPDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Bを用いてポリイミド金属積層体を作製した。ポリイミド金属積層体は、ポリアミック酸溶液Bを圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製、BHY−13H−T、18μm厚)に塗布し、120℃で10分加熱後、さらに400℃まで20分かけて昇温することにより得た。ポリイミド金属積層体のポリイミドフィルムの厚みは24μmであった。ポリイミド金属積層体の90°剥離試験を行った結果、接着が良好で、0.45kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は0.45kN/m以上であると推定される。
【0174】
(実施例10)
s−BPDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Bを用いてポリイミド金属積層体を作製した。ポリイミド金属積層体は、ポリアミック酸溶液Bを圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製、BHY−13H−T、18μm厚)に塗布し、120℃で10分加熱後、さらに400℃まで20分かけて昇温することにより得た。ポリイミド金属積層体のポリイミドフィルムの厚みは47μmであった。ポリイミド金属積層体の90°剥離試験を行った結果、接着が良好で、1.35kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は1.35kN/m以上であると推定される。
【0175】
(比較例5)
s−BPDA/PPD
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン(PPD)を使用して得られたポリアミック酸溶液を用いてポリイミド金属積層体を作製した。ポリイミド金属積層体は、ポリアミック酸溶液を圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製、BHY−13H−T、18μm厚)に塗布し、120℃で10分加熱後、さらに400℃まで20分かけて昇温することにより得た。ポリイミド金属積層体のポリイミドフィルムの厚みは22μmであった。ポリイミド金属積層体の90°剥離試験を行った結果、剥離強度は0.1kN/m以下であった。
【0176】
(実施例11)ポリイミドフィルムNの作製
DSDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Nを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み21μmのポリイミドフィルムNを得た。このポリイミドフィルムNの屈折率(n
D)は、1.724であった。各物性値を、表3および表4に示す。また、ポリイミドフィルムNのガラス転移温度(DSC)は249℃であった。
【0177】
(実施例12)ポリイミドフィルムOの作製
ODPA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Oを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み18μmのポリイミドフィルムOを得た。このポリイミドフィルムOの屈折率(n
D)は、1.732であった。各物性値を、表3および表4に示す。また、ポリイミドフィルムOのガラス転移温度(DSC)は253℃であった。
【0178】
(実施例13)ポリイミドフィルムPの作製
BTDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Pを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み17μmのポリイミドフィルムPを得た。このポリイミドフィルムPの屈折率(n
D)は、1.730であった。各物性値を、表3および表4に示す。また、ポリイミドフィルムPのガラス転移温度(DSC)は248℃であった。
【0179】
(実施例14)ポリイミドフィルムQの作製
CHDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Qを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み21μmのポリイミドフィルムQを得た。各物性値を、表3および表4に示す。ポリイミドフィルムQの溶解性試験において、ポリイミドフィルムQはNMPに室温で溶解し、さらには15質量%以上溶解した。
【0180】
(比較例6)ポリイミドフィルムRの作製
DSDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Rを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、ポリイミドフィルムRを得た。各物性値を、表3および表4に示す。また、ポリイミドフィルムRのガラス転移温度(DSC)は291℃であった。
【0181】
(比較例7)ポリイミドフィルムSの作製
ODPA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Sを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み16μmのポリイミドフィルムSを得た。各物性値を、表3に示す。また、ポリイミドフィルムSのガラス転移温度(DSC)は257℃であった。
【0182】
(比較例8)ポリイミドフィルムTの作製
BTDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Tを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、乾燥後、厚み21μmのポリイミドフィルムTを得た。各物性値を、表3および表4に示す。また、ポリイミドフィルムPのガラス転移温度(DSC)は268℃であった。
【0183】
(参考例2)ポリイミドフィルムUの作製
CHDA/p−ATDA
ポリアミック酸溶液Aの代わりにポリアミック酸溶液Uを用いた以外は、ポリイミドフィルムAの作製と同様にして、ポリイミドフィルムUを得た。各物性値を、表3に示す。
【0184】
(ポリイミド溶液からのポリイミドフィルムの作製と有機溶媒への溶解性の評価)
(実施例15)ポリイミドフィルムVの作製
6FDA/m−ATDA
ポリイミド溶液Vをガラス板上に薄膜状にキャストし、減圧下で脱気を行った。その後真空オーブンにより60℃で6時間、100℃で1時間、200℃で1時間、さらに300℃で1時間加熱して厚み40μmのポリイミドフィルムVを得た。ポリイミドフィルムVのガラス転移温度(DSC)は250℃であった。
【0185】
ポリイミドVの有機溶媒への溶解性を表5に示す。ポリイミドVの溶解性試験において、ポリイミドVはNMPに室温で溶解し、さらには20wt%以上溶解した。
【0186】
(実施例16)ポリイミドフィルムWの作製
DSDA/m−ATDA
ポリイミド溶液Vの代わりにポリイミド溶液Wを用いた以外は、ポリイミドフィルムVの作製と同様にして、ポリイミドフィルムWを得た。ポリイミドフィルムWのガラス転移温度(DSC)は244℃であった。
【0187】
ポリイミドWの有機溶媒への溶解性を表5に示す。
【0188】
(実施例17)ポリイミドフィルムXの作製
ODPA/m−ATDA
ポリイミド溶液Vの代わりにポリイミド溶液Xを用いた以外は、ポリイミドフィルムVの作製と同様にして、ポリイミドフィルムXを得た。ポリイミドフィルムXのガラス転移温度(DSC)は253℃であった。
【0189】
ポリイミドXの有機溶媒への溶解性を表5に示す。
【0190】
(ポリイミド金属積層体の作製と剥離強度の評価)
(実施例18)
PMDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Dを用いてポリイミド金属積層体を作製した。ポリイミド金属積層体は、ポリアミック酸溶液Dを圧延銅箔(JX日鉱日石金属株式会社製、BHY−13H−T、18μm厚)に塗布し、120℃で10分加熱後、さらに400℃まで20分かけて昇温することにより得た。ポリイミド金属積層体のポリイミドフィルムの厚みは40μmであった。ポリイミド金属積層体の90°剥離試験を行った結果、接着が良好で、0.68kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は0.68kN/m以上であると推定される。
【0191】
(実施例19)
6FDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Fをポリアミック酸溶液Dの代わりに用いた以外は、実施例18と同様にしてポリイミド金属積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、0.54kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は0.54kN/m以上であると推定される。
【0192】
(実施例20)
DSDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Nをポリアミック酸溶液Dの代わりに用いた以外は、実施例18と同様にしてポリイミド金属積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、0.42kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は0.42kN/m以上であると推定される。
【0193】
(実施例21)
ODPA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Oをポリアミック酸溶液Dの代わりに用いた以外は、実施例18と同様にしてポリイミド金属積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、1.35kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は1.35kN/m以上であると推定される。
【0194】
(実施例22)
BTDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Pをポリアミック酸溶液Dの代わりに用いた以外は、実施例18と同様にしてポリイミド金属積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、1.29kN/mでフィルムが破断した。従って、ポリイミド金属積層体の剥離強度は1.29kN/m以上であると推定される。
【0195】
(2層ポリイミド積層体の作製と剥離強度の評価)
(実施例23)
PMDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Dを用いて2層ポリイミド積層体を作製した。ポリアミック酸溶液Dをポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックス75S、75μm厚)に塗布した以外は、実施例18と同様の方法で2層ポリイミド積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、0.62kN/mでフィルムが破断した。従って、2層ポリイミド積層体の剥離強度は0.62kN/m以上であると推定される。
【0196】
(実施例24)
6FDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Fを用いて2層ポリイミド積層体を作製した。ポリアミック酸溶液Fをポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックス75S、75μm厚)に塗布した以外は、実施例18と同様の方法で2層ポリイミド積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、0.55kN/mでフィルムが破断した。従って、2層ポリイミド積層体の剥離強度は0.55kN/m以上であると推定される。
【0197】
(実施例25)
DSDA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Nを用いて2層ポリイミド積層体を作製した。ポリアミック酸溶液Nをポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックス75S、75μm厚)に塗布した以外は、実施例18と同様の方法で2層ポリイミド積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、0.37kN/mでフィルムが破断した。従って、2層ポリイミド積層体の剥離強度は0.37kN/m以上であると推定される。
【0198】
(実施例26)
ODPA/m−ATDA
ポリアミック酸溶液Oを用いて2層ポリイミド積層体を作製した。ポリアミック酸溶液Oをポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックス75S、75μm厚)に塗布した以外は、実施例18と同様の方法で2層ポリイミド積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、接着が良好で、0.28kN/mでフィルムが破断した。従って、2層ポリイミド積層体の剥離強度は0.28kN/m以上であると推定される。
【0199】
(比較例9)
s−BPDA/PPD
芳香族系のテトラカルボン酸二無水物として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ジアミン成分としてパラフェニレンジアミン(PPD)を使用して得られたポリアミック酸溶液を用いて2層ポリイミド積層体を作製した。このポリアミック酸溶液をポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックス75S、75μm厚)に塗布した以外は、実施例18と同様の方法で2層ポリイミド積層体を作製し、剥離試験を行った。その結果、剥離強度は0.02kN/m以下であった。
【0200】
【表1】
【0201】
【表2】
【0202】
【表3】
【0203】
【表4】
【0204】
【表5】
【0205】
表2および表4に示したポリイミドフィルムの透過率を、
図1、
図2および
図3に示す。表2および表4、
図1、
図2および
図3から明らかなように、本発明のm−ATDAを用いたポリイミドフィルムは、p−ATDAを用いて製造したポリイミドフィルムより、透過率が高い。
【0206】
上記ポリイミド金属積層体の剥離強度の結果から明らかなように、本発明のポリイミドフィルムは、剥離強度が大きい。