(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
160℃で4時間加熱後に常温で測定した場合の引張強度が300MPa以上であるキャリア、中間層、極薄銅層、シランカップリング処理層を含む表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径と最小直径との差が10mm以下であるキャリア付銅箔。
160℃で4時間加熱後に常温で測定した場合の引張強度が300MPa以上であるキャリア、中間層、極薄銅層、シランカップリング処理層を含む表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径が25mm以上である請求項1に記載のキャリア付銅箔。
以下の(7−1)〜(7−6)のいずれか一つに記載のキャリア付銅箔であって、(7−1)〜(7−6)のいずれか一つに記載のエッチング液の跡の最大直径と最小直径との差が5mm以下であるキャリア付銅箔。
(7−1):
キャリア、中間層、極薄銅層、シランカップリング処理層を含む表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径と最小直径との差が10mm以下であるキャリア付銅箔、
(7−2):
キャリア、中間層、極薄銅層、シランカップリング処理層を含む表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径が25mm以上であるキャリア付銅箔、
(7−3):
キャリア、中間層、極薄銅層、シランカップリング処理層を含む表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径が25mm以上である(7−1)に記載のキャリア付銅箔、
(7−4):
キャリア、中間層、極薄銅層、表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径と最小直径との差が10mm以下であるキャリア付銅箔、
(7−5):
キャリア、中間層、極薄銅層、表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径が25mm以上であるキャリア付銅箔、
(7−6):
キャリア、中間層、極薄銅層、表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔であって、水平面上にキャリア付銅箔を極薄銅層側の表面処理層を上面として置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った後、エッチング液の跡の最大直径が25mm以上である(7−4)に記載のキャリア付銅箔。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<キャリア付銅箔の製造方法>
キャリア、中間層、極薄銅層をこの順に備えたキャリア付銅箔の使用形態としては、まず、極薄銅層の表面を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がす。次に、絶縁基板に接着した極薄銅層に所定パターンのレジストを設ける。続いて、所定のエッチング液でエッチング処理を行い、レジストに覆われていない部分の極薄銅層を除去することで、目的とする導体パターンを形成し、例えば、所定の回路を有するプリント配線板等を作製する。ここで、所定のエッチング液によりエッチング処理を行うとき、極薄銅層の樹脂基材との界面近傍部のエッチング液への濡れ性が悪いと、エッチング液の濡れ広がりが不十分となる。その場合、樹脂基材との界面近傍部においてエッチング不均一部が生じ、回路直線性が不良となる。
【0046】
これに対し、本発明のキャリア付銅箔の製造方法は一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層、シランカップリング処理層を含む表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔を準備した後、当該キャリア付銅箔に対し、加熱温度100℃〜220℃で1時間〜8時間の加熱処理を行う。なお、前記100℃〜220℃は加熱装置内の雰囲気温度を示す。このように、加熱温度100℃〜220℃で1時間〜8時間の加熱処理を行うことで、シランカップリング処理層中の未反応の水酸基が脱水縮合反応することで当該処理層がより強固なものとなって樹脂基材との密着性が向上するほか、極薄銅層と表面処理層の間の界面近傍および、表面処理層が複数の層を有する場合には当該複数の層の間の界面近傍の原子組成不連続部が相互拡散により連続的な原子組成分布となるため、極薄銅層の樹脂基材との界面近傍部のエッチング液への濡れ性が良好となり、樹脂基材との界面近傍部においてエッチングが均一化し、極薄銅層の回路直線性が良好となる。なお、典型的には極薄銅層は主として銅で構成される。また、表面処理層は粗化処理層および/または耐熱層および/または防錆層および/またはクロメート処理層およびシランカップリング処理層をこの順に有してもよく、任意の順で有しても良い。粗化処理層は主として合金、例えば銅合金やニッケル合金やコバルト合金等で構成されることが好ましい。粗化処理層は主として銅で構成されてもよい。クロメート処理層は主として金属酸化物で構成されることが好ましい。シランカップリング処理層は有機ケイ素化合物で構成されることが好ましい。
通常、キャリア付銅箔と樹脂基材を貼り合わせる時には160〜220℃の温度で50〜120分程度の加熱圧着を行うため、この時にも上記の相互拡散がある程度進行するが、条件によっては相互拡散が不十分な場合がある。したがって、上記加熱処理を樹脂基材との接着前に行うことにより、エッチング性ならびにその均一性の向上効果がより確実なものとなる。
なお、XPS等の表面分析により、キャリア付銅箔の極薄銅層側表面にSiが検出された場合には、シランカップリング処理層が存在すると判断できる。
【0047】
当該加熱処理において、温度が100℃未満、または、加熱時間が1時間未満の場合、各処理層間界面近傍の相互拡散が不十分となる。また、当該加熱処理において、温度が220℃超、または、加熱時間が8時間超の場合、キャリアと極薄銅箔の剥離強度が変化したり、極薄銅層の結晶粒成長が進行して機械的強度が低下するなど別の問題が生じる可能性がある。当該加熱処理工程において、加熱温度100℃〜220℃で1時間〜6時間の加熱処理を行うのが好ましく、加熱温度120℃〜220℃で1〜6時間の加熱処理を行うのが好ましく、加熱温度160℃〜220℃で2〜4時間の加熱処理を行うのがより好ましい。
【0048】
本発明のキャリア付銅箔の製造方法は別の一側面において、キャリア、中間層、極薄銅層、表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔に対し、加熱温度に到達するまでの昇温速度を50℃/時間超として、加熱温度100℃〜220℃で1時間〜8時間の加熱処理を行う加熱処理工程を含む。ここで、当該昇温速度は、加熱開始から初めに加熱温度に到達するまでの昇温速度である。昇温速度が50℃/時間以下の場合、加熱処理の生産性が低下する場合があり、また、加熱処理の時間が長いため、キャリア付銅箔表面が酸化される場合がある。また、昇温速度は、200℃/時間以下であるのが好ましい。昇温速度が200℃/時間を超える場合には、キャリア付銅箔をコイル状として加熱したとき、巻き芯とキャリア付銅箔との熱膨張率の差により、伸びの程度が異なり、しわが発生する場合がある。また、200℃/時間を超える場合には、キャリア付銅箔のエッチング液への濡れ性が劣化する場合がある。この原因は不明であるが、キャリア付銅箔の急激な膨張により、コイル状とした際に接触している表面処理層とキャリアとの間に摩擦や、ズレ等が生じ、または表面処理層への応力の集中が生じ、当該摩擦・ズレ・応力の集中等が、表面処理層中の部分的な転位の発生につながり、当該転位が表面処理層の元素の拡散の状態に影響を及ぼしている可能性が有る。
上記加熱温度に到達するまでの昇温速度は、70℃/時間〜200℃/時間がより好ましく、100℃/時間〜200℃/時間が更により好ましく、150℃/時間〜200℃/時間が更により好ましい。
【0049】
本発明のキャリア付銅箔の製造方法においては、該加熱処理工程において、キャリア表面ならびに極薄銅層表面の酸化や劣化を生じさせる酸素、水蒸気等の気体を含まないような雰囲気下で加熱処理を行うのが好ましく、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等、及び、これらの混合ガスの不活性ガス雰囲気下で加熱処理を行うのが好ましい。
【0050】
本発明のキャリア付銅箔の製造方法においては、前記加熱処理工程において、キャリア付銅箔を金属製の中空管に巻きつけた状態で加熱処理を行うのが好ましい。キャリア付銅箔を金属製の中空管に巻きつけた状態で加熱処理することで、熱伝導の良い金属の管の中に通気することでキャリア付銅箔に対して内側からも加熱でき、効率的な熱処理が可能となる。金属製の中空管は特に限定されないが、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼製であるのが好ましく、その大きさとしては、外径7cm〜20cmで厚さ0.5cm〜3.0cmとすることができる。
【0051】
本発明のキャリア付銅箔の製造方法においては、前記加熱処理工程において、キャリア付銅箔を金属製の中空管に巻きつける際の張力を5〜100kgf/mとして加熱処理を行うのが好ましい。当該張力は、キャリア付銅箔の単位幅(幅1m)あたりの張力である。当該張力を5kgf/m以上とすることで、酸素の巻き込みを抑制してキャリア付銅箔の酸化を防止することができる。また、当該張力を100kgf/m以下とすることで、巻取り時に発生するシワを防止することができる。
当該張力は、より好ましくは10kgf/m以上、より好ましくは20kgf/m以上、より好ましくは20〜100kgf/mであり、更により好ましくは20〜50kgf/mであり、更により好ましくは20〜30kgf/mである。
【0052】
本発明のキャリア付銅箔の製造方法においては、前記加熱処理工程において、キャリア付銅箔を金属製の中空管に巻きつけた状態で前記中空管を0.01〜600回転/時間の速度で回転させながら加熱処理を行うのが好ましい。中空管を0.01回転/時間以上600回転/時間以下の比較的低速度で回転させながら加熱処理を行うことで、巻きつけられた銅箔と銅箔の間に巻き込まれた酸素が抜け、加熱処理中のキャリア付銅箔の酸化を防止することができる。当該中空管の回転速度は、より好ましくは0.01〜180回転/時間であり、より好ましくは0.01〜120回転/時間であり、より好ましくは0.01〜70回転/時間であり、より好ましくは1〜70回転/時間である。
【0053】
本発明のキャリア付銅箔の製造方法においては、前記加熱処理工程後に常温で測定したキャリアの引張強度が300MPa以上であるのが好ましい。このように加熱処理工程後に常温で測定したキャリアの引張強度が300MPa以上であることで、極薄銅箔のキャリアとして機能する上での剛性が十分に保たれる。
当該キャリアの引張強度は350MPa以上であるのがより好ましく、380MPa以上であるのが更により好ましく、より典型的には350〜500MPaであり、更により典型的には380〜450MPaである。
【0054】
<キャリア付銅箔>
以下、特に明記しない限り、キャリア付銅箔の実施形態は本発明に係る加熱処理前のものについて説明するが、当該実施形態は、加熱処理後のもの(本発明に係るキャリア付銅箔の製造方法によって作製されたキャリア付銅箔)にも同様に当てはまる。
本発明のキャリア付銅箔は、キャリアと、中間層と、極薄銅層と、表面処理層とをこの順で有する。キャリア付銅箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0055】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCPフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。
また、電解銅箔としては、以下の電解液組成及び製造条件にて作製することができる。
なお、本明細書に記載されている銅箔の製造、銅箔の表面処理又は銅箔のめっき等に用いられる処理液の残部は特に明記しない限り水である。
<電解液組成>
銅:90〜110g/L
硫酸:90〜110g/L
塩素:50〜100ppm
レベリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10〜30ppm
レベリング剤2(アミン化合物):10〜30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
【0056】
【化1】
(上記化学式中、R
1及びR
2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0057】
<製造条件>
電流密度:70〜100A/dm
2
電解液温度:50〜60℃
電解液線速:3〜5m/sec
電解時間:0.5〜10分間
なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0058】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。なお、プリント配線板の製造方法の一つである埋め込み工法(エンベッティド法(Enbedded Process))にキャリア付銅箔が用いられる場合には、キャリアの剛性が高いことが必要である。そのため、埋め込み工法に用いる場合には、キャリアの厚みは18μm以上300μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることが好ましく、35μm以上100μm以下であることが好ましく、35μm以上70μm以下であることが更により好ましい。
【0059】
<中間層>
キャリア上には中間層を設ける。キャリアと中間層との間に他の層を設けてもよい。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。また、中間層はキャリアの両面に設けてもよい。
【0060】
また、例えば、中間層はキャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物または有機物からなる層を形成することで構成することができる。
【0061】
また、キャリアの片面又は両面上にはNiを含む中間層を設けることができる。中間層は、キャリア上にニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及びクロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がこの順で積層されて構成されているのが好ましい。そして、ニッケルまたはニッケルを含む合金のいずれか1種の層、及び/または、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層に亜鉛が含まれているのが好ましい。ここで、ニッケルを含む合金とはニッケルと、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。ニッケルを含む合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム合金とはクロムと、コバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタンからなる群から選択された一種以上の元素からなる合金のことをいう。クロム合金は3種以上の元素からなる合金でも良い。また、クロム、クロム合金、クロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層であってもよい。ここでクロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。
【0062】
また、中間層は、キャリア上にニッケル、ニッケル−亜鉛合金、ニッケル−リン合金、ニッケル−コバルト合金のいずれか1種の層、及び亜鉛クロメート処理層、純クロメート処理層、クロムめっき層のいずれか1種の層がこの順で積層されて構成されているのが好ましく、中間層は、キャリア上にニッケル層またはニッケル−亜鉛合金層、及び、亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されている、又は、ニッケル−亜鉛合金層、及び、純クロメート処理層または亜鉛クロメート処理層がこの順で積層されて構成されているのが更に好ましい。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロメート処理層との界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。また、中間層にクロムめっきではなくクロメート処理層を形成するのが好ましい。クロムめっきは表面に緻密なクロム酸化物層を形成するため、電気めっきで極薄銅箔を形成する際に電気抵抗が上昇し、ピンホールが発生しやすくなる。クロメート処理層を形成した表面は、クロムめっきとくらべ緻密ではないクロム酸化物層が形成されるため、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗になりにくく、ピンホールを減少させることができる。ここで、クロメート処理層として、亜鉛クロメート処理層を形成することにより、極薄銅箔を電気めっきで形成する際の抵抗が、通常のクロメート処理層より低くなり、よりピンホールの発生を抑制することができる。
キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に中間層を設けることが好ましい。
【0063】
中間層のうちクロメート処理層は極薄銅層の界面に薄く存在することが、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離しない一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能であるという特性を得る上で好ましい。ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)を設けずにクロメート処理層をキャリアと極薄銅層の境界に存在させた場合は、剥離性はほとんど向上しないし、クロメート処理層がなくニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)と極薄銅層を直接積層した場合は、ニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)におけるニッケル量に応じて剥離強度が強すぎたり弱すぎたりして適切な剥離強度は得られない。
【0064】
また、クロメート処理層がキャリアとニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)の境界に存在すると、極薄銅層の剥離時に中間層も付随して剥離されてしまう、すなわちキャリアと中間層の間で剥離が生じてしまうので好ましくない。このような状況は、キャリアとの界面にクロメート処理層を設けた場合のみならず、極薄銅層との界面にクロメート処理層を設けたとしてもクロム量が多すぎると生じ得る。これは、銅とニッケルは固溶しやすいので、これらが接触していると相互拡散によって接着力が高くなり剥離しにくくなる一方で、クロムと銅は固溶しにくく、相互拡散が生じにくいので、クロムと銅の界面では接着力が弱く、剥離しやすいことが原因と考えられる。また、中間層のニッケル量が不足している場合、キャリアと極薄銅層の間には微量のクロムしか存在しないので両者が密着して剥がれにくくなる。
【0065】
中間層のニッケル層またはニッケルを含む合金層(例えばニッケル−亜鉛合金層)は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。なお、キャリアが樹脂フィルムの場合には、CVD及びPDVのような乾式めっきまたは無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっきにより中間層を形成することができる。
また、クロメート処理層は、例えば電解クロメートや浸漬クロメート等で形成することができるが、クロム濃度を高くすることができ、キャリアからの極薄銅層の剥離強度が良好となるため、電解クロメートで形成するのが好ましい。
【0066】
本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上にニッケル層、及び、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層の順で積層されて構成されていてもよい。また、本発明のキャリア付銅箔の中間層は、キャリア上に窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物層、及び、ニッケル層の順で積層されて構成されていてもよい。また、当該窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のいずれかを含む有機物としては、BTA(ベンゾトリアゾール)、MBT(メルカプトベンゾチアゾール)等が挙げられる。
【0067】
また、中間層が含有する有機物としては、窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸の中から選択される1種又は2種以上からなるものを用いることが好ましい。窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸のうち、窒素含有有機化合物は、置換基を有する窒素含有有機化合物を含んでいる。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
前述の有機物は厚みで25nm以上80nm以下含有するのが好ましく、30nm以上70nm以下含有するのがより好ましい。中間層は前述の有機物を複数種類(一種以上)含んでもよい。
なお、有機物の厚みは以下のようにして測定することができる。
【0068】
<中間層の有機物厚み>
キャリア付銅箔の極薄銅層をキャリアから剥離した後に、露出した極薄銅層の中間層側の表面と、露出したキャリアの中間層側の表面をXPS測定し、デプスプロファイルを作成する。そして、極薄銅層の中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをA(nm)とし、キャリアの中間層側の表面から最初に炭素濃度が3at%以下となった深さをB(nm)とし、AとBとの合計を中間層の有機物の厚み(nm)とすることができる。
XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型式5600MC)
・到達真空度:3.8×10
-7Pa
・X線:単色AlKαまたは非単色MgKα、エックス線出力300W、検出面積800μmφ、試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar
+、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリングレート2.8nm/min(SiO
2換算)
【0069】
中間層が含有する有機物の使用方法について、以下に、キャリア箔上への中間層の形成方法についても述べつつ説明する。キャリア上への中間層の形成は、上述した有機物を溶媒に溶解させ、その溶媒中にキャリアを浸漬させるか、中間層を形成しようとする面に対するシャワーリング、噴霧法、滴下法及び電着法等を用いて行うことができ、特に限定した手法を採用する必要性はない。このときの溶媒中の有機系剤の濃度は、上述した有機物の全てにおいて、濃度0.01g/L〜30g/L、液温20〜60℃の範囲が好ましい。有機物の濃度は、特に限定されるものではなく、本来濃度が高くとも低くとも問題のないものである。なお、有機物の濃度が高いほど、また、上述した有機物を溶解させた溶媒へのキャリアの接触時間が長いほど、中間層の有機物厚みは大きくなる傾向にある。そして、中間層の有機物厚みが厚い場合、Niの極薄銅層側への拡散を抑制するという、有機物の効果が大きくなる傾向にある。
【0070】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、高電流密度での銅層形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には1〜5μmであり、更により典型的には1.5〜5μmであり、更により典型的には2〜5μmである。なお、極薄銅層はキャリアの両面に設けてもよい。
【0071】
<粗化処理及びその他の表面処理>
極薄銅層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、コバルト、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。ここでクロメート処理層とは前述のクロメート処理層であってもよく、そのほかのクロメート処理層であってもよい。
なお、上記シランカップリング処理層は、上記本発明の別の一側面に係るキャリア、中間層、極薄銅層、表面処理層をこの順に備えたキャリア付銅箔に対し、加熱温度に到達するまので昇温速度を50℃/時間超として、加熱温度100℃〜220℃で1時間〜8時間の加熱処理を行う加熱処理工程を含むキャリア付銅箔の製造方法においては、上述の通り必須の構成要素である。
【0072】
耐熱層、防錆層としては公知の耐熱層、防錆層を用いることができる。例えば、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む層であってもよく、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素からなる金属層または合金層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む酸化物、窒化物、珪化物を含んでもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金を含む層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金層であってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層は、不可避不純物を除き、ニッケルを50wt%〜99wt%、亜鉛を50wt%〜1wt%含有するものであってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層の亜鉛及びニッケルの合計付着量が5〜1000mg/m
2、好ましくは10〜500mg/m
2、好ましくは20〜100mg/m
2であってもよい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量と亜鉛の付着量との比(=ニッケルの付着量/亜鉛の付着量)が1.5〜10であることが好ましい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量は0.5mg/m
2〜500mg/m
2であることが好ましく、1mg/m
2〜50mg/m
2であることがより好ましい。耐熱層および/または防錆層がニッケル−亜鉛合金を含む層である場合、スルーホールやビアホール等の内壁部がデスミア液と接触したときに銅箔と樹脂基板との界面がデスミア液に浸食されにくく、銅箔と樹脂基板との密着性が向上する。
【0073】
例えば耐熱層および/または防錆層は、付着量が1mg/m
2〜100mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜50mg/m
2のニッケルまたはニッケル合金層と、付着量が1mg/m
2〜80mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜40mg/m
2のスズ層とを順次積層したものであってもよく、前記ニッケル合金層はニッケル−モリブデン、ニッケル−亜鉛、ニッケル−モリブデン−コバルトのいずれか一種により構成されてもよい。また、耐熱層および/または防錆層は、ニッケルまたはニッケル合金とスズとの合計付着量が2mg/m
2〜150mg/m
2であることが好ましく、10mg/m
2〜70mg/m
2であることがより好ましい。また、耐熱層および/または防錆層は、[ニッケルまたはニッケル合金中のニッケル付着量]/[スズ付着量]=0.25〜10であることが好ましく、0.33〜3であることがより好ましい。当該耐熱層および/または防錆層を用いるとキャリア付銅箔をプリント配線板に加工して以降の回路の引き剥がし強さ、当該引き剥がし強さの耐薬品性劣化率等が良好になる。
【0074】
なお、シランカップリング処理に用いられるシランカップリング剤には公知のシランカップリング剤を用いてよく、例えばアミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤を用いてよい。また、シランカップリング剤にはビニルトリメトキシシラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ‐メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4‐グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐3‐(4‐(3‐アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を用いてもよい。
【0075】
前記シランカップリング処理層は、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、メタクリロキシ系シラン、メルカプト系シランなどのシランカップリング剤などを使用して形成してもよい。なお、このようなシランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。中でも、アミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤を用いて形成したものであることが好ましい。
【0076】
ここで言うアミノ系シランカップリング剤とは、N‐(2‐アミノエチル)‐3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N‐スチリルメチル‐2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐(3‐アクリルオキシ‐2‐ヒドロキシプロピル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、4‐アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル‐3‐アミノプロピル)トリス(2‐エチルヘキソキシ)シラン、6‐(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3‐(1‐アミノプロポキシ)‐3,3‐ジメチル‐1‐プロペニルトリメトキシシラン、3‐アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、3‐アミノプロピルトリメトキシシラン、ω‐アミノウンデシルトリメトキシシラン、3‐(2‐N‐ベンジルアミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N‐ジエチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N‐ジメチル‐3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、N‐メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N‐フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3‐(N‐スチリルメチル‐2‐アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるものであってもよい。
【0077】
シランカップリング処理層は、ケイ素原子換算で、0.05mg/m
2〜200mg/m
2、好ましくは0.15mg/m
2〜20mg/m
2、好ましくは0.3mg/m
2〜2.0mg/m
2の範囲で設けられていることが望ましい。前述の範囲の場合、基材樹脂と表面処理銅箔との密着性をより向上させることができる。
【0078】
また、極薄銅層、粗化処理層、耐熱層、防錆層、シランカップリング処理層またはクロメート処理層の表面に、国際公開番号WO2008/053878、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、特開2013−19056号に記載の表面処理を行うことができる。
なお、極薄銅層の一方の表面、又は、両方の表面に、粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を設けてもよく、表面処理層を設けてもよい。表面処理層は粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層であってもよい。
【0079】
また、キャリア付銅箔は、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群のから選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
また、キャリア付銅箔は、キャリア上に粗化処理層を備えてもよく、キャリア上に粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群から選択された層を一つ以上備えてもよい。前記粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層は、公知の方法を用いて設けてもよく、本願明細書、特許請求の範囲、図面に記載の方法により設けてもよい。キャリアに前記粗化処理層、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層から選択された層を一つ以上設けることは、前記粗化処理層等を有する表面側から、キャリアを樹脂基板等の支持体に積層する場合に、キャリアと支持体が剥離しにくくなるという利点を有する。
【0080】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ状態)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0081】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399号、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0082】
また、前記樹脂層は、その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリマレイミド化合物、マレイミド系樹脂、芳香族マレイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)、ポリエーテルスルホン(ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルフォンともいう)樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂ポリマー、ゴム性樹脂、ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、カルボン酸の無水物、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上を含む樹脂を好適なものとして挙げることができる。
【0083】
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0084】
(樹脂層が誘電体(誘電体フィラー)を含む場合)
前記樹脂層は誘電体(誘電体フィラー)を含んでもよい。
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO
3、SrTiO
3、Pb(Zr−Ti)O
3(通称PZT)、PbLaTiO
3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi
2Ta
2O
9(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
【0085】
誘電体(誘電体フィラー)は粉状であってもよい。誘電体(誘電体フィラー)が粉状である場合、この誘電体(誘電体フィラー)の粉体特性は、粒径が0.01μm〜3.0μm、好ましくは0.02μm〜2.0μmの範囲のものであることが好ましい。なお、誘電体を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影し、当該写真上の誘電体の粒子の上に直線を引いた場合に、誘電体の粒子を横切る直線の長さが最も長い部分の誘電体の粒子の長さをその誘電体の粒子の径とする。そして、測定視野における誘電体の粒子の径の平均値を、誘電体の粒径とする。
【0086】
前述の樹脂層に含まれる樹脂および/または樹脂組成物および/または化合物を例えばメチルエチルケトン(MEK)、シクロペンタノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、トルエン、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサノン、エチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶剤に溶解して樹脂液(樹脂ワニス)とし、これを前記キャリア付銅箔の極薄銅層側の表面に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。前記樹脂層の組成物を、溶剤を用いて溶解し、樹脂固形分3wt%〜70wt%、好ましくは、3wt%〜60wt%、好ましくは10wt%〜40wt%、より好ましくは25wt%〜40wt%の樹脂液としてもよい。なお、メチルエチルケトンとシクロペンタノンとの混合溶剤を用いて溶解することが、環境的な見地より現段階では最も好ましい。なお、溶剤には沸点が50℃〜200℃の範囲である溶剤を用いることが好ましい。
また、前記樹脂層はMIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して測定したときのレジンフローが5%〜35%の範囲にある半硬化樹脂膜であることが好ましい。
本件明細書において、レジンフローとは、MIL規格におけるMIL−P−13949Gに準拠して、樹脂厚さを55μmとした樹脂付表面処理銅箔から10cm角試料を4枚サンプリングし、この4枚の試料を重ねた状態(積層体)でプレス温度171℃、プレス圧14kgf/cm2、プレス時間10分の条件で張り合わせ、そのときの樹脂流出重量を測定した結果から数1に基づいて算出した値である。
【0088】
前記樹脂層を備えた表面処理銅箔(樹脂付き表面処理銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついで表面処理銅箔がキャリア付銅箔の極薄銅層である場合にはキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、表面処理銅箔の粗化処理されている側とは反対側の表面から所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0089】
この樹脂付き表面処理銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0090】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
この樹脂層の厚みは0.1〜120μmであることが好ましい。
【0091】
樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付き表面処理銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。一方、樹脂層の厚みを120μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる場合がある。
なお、樹脂層を有する表面処理銅箔が極薄の多層プリント配線板を製造することに用いられる場合には、前記樹脂層の厚みを0.1μm〜5μm、より好ましくは0.5μm〜5μm、より好ましくは1μm〜5μmとすることが、多層プリント配線板の厚みを小さくするために好ましい。
【0092】
更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。本発明において、「プリント配線板」にはこのように電子部品類が搭載されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。
また、当該プリント配線板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント回路板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント基板を用いて電子機器を作製してもよい。以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0093】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0094】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0095】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0096】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0097】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0098】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0099】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0100】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0101】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0102】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理(必要に応じて更に電解めっき処理)によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0103】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0104】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0105】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0106】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0107】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0108】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは表面処理層として粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔を例に説明するが、これに限られず、当該表面処理層が粗化処理層ではないキャリア付銅箔を用いても同様に下記のプリント配線板の製造方法を行うことができる。
まず、
図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、
図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、
図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、
図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、
図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、
図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、
図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記
図1−B及び
図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、
図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、
図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
【0109】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、
図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0110】
また、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔のキャリア側表面に基板を有してもよい。当該基板を有することで1層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板には、前記1層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板を用いることが出来る。例えば前記基板として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0111】
キャリア側表面に基板を形成するタイミングについては特に制限はないが、キャリアを剥離する前に形成することが必要である。特に、前記キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に樹脂層を形成する工程の前に形成することが好ましく、キャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面に回路を形成する工程の前に形成することがより好ましい。
【0112】
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記埋め込み樹脂は熱可塑性樹脂を含んでもよい。前記埋め込み樹脂の種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂、ブロック共重合ポリイミド樹脂などを含む樹脂や、紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、液晶ポリマーフィルム、フッ素樹脂フィルムなどを好適なものとしてあげることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実験例に基づいて説明する。なお、本実験例はあくまで一例であり、この例のみに制限されるものではない。
【0114】
1.キャリア付銅箔の製造
以下の手順で、キャリア付銅箔を作製した。
まず、キャリアとして、表1に記載の厚さを有する長尺の電解銅箔又は圧延銅箔を用意した。
電解銅箔は、下記の条件にて製造した。
(電解浴組成)
Cu:80〜120g/L
H
2SO
4:80〜120g/L
Cl:20〜80mg/L
ニカワ:0.1〜6.0mg/L
(電解条件)
液温:55〜65℃
電流密度:100A/dm
2
電解液流速:1.5m/秒
【0115】
圧延銅箔は、例9、12はタフピッチ銅(JIS H3100 C1100に規格されているタフピッチ銅)、例10、11は無酸素銅(JIS H3100 C1020に規格されている無酸素銅)を用いた。表1のキャリアの種類欄の「圧延銅箔(Ag180ppm)」はタフピッチ銅にAgを180質量ppm添加したことを意味する。
【0116】
<実験例の中間層>
上記銅箔の光沢面(シャイニー面)に対して、以下の条件で、ロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより中間層を形成した。
・Ni層
硫酸ニッケル:250〜300g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:15〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
pH:4〜6
浴温:50〜70℃
電流密度:3〜15A/dm
2
付着量:4000μg/dm
2
【0117】
水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、Ni層の上に10μg/dm
2の付着量のCr層を以下の条件で電解クロメート処理することにより付着させた。
・電解クロメート処理
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0.1〜2.6A/dm
2
クーロン量:0.5〜30As/dm
2
【0118】
<実験例の極薄銅層>
引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、中間層の上に厚み3μmの極薄銅層を以下の条件で電気めっきすることにより形成して、キャリア付銅箔を製造した。
・極薄銅層
銅濃度:30〜120g/L
H
2SO
4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm
2
【0119】
<実験例の表面処理層>
前述の極薄銅層の表面に、以下の表面処理条件にて表面処理を行った。表1に、当該表面処理によって形成した表面処理層の層構成を示す。
一部の実験例においては、上記極薄銅層の表面に、粗化処理として下記の条件でCu−W合金めっき、Cu−P合金めっき、Cu−Co−Ni合金めっきから選択される一つを行った。
【0120】
・Cu−W合金めっき(例1、2、15、16)
液組成:Cu15g/リットル、硫酸100g/リットル、W 5mg/リットル
温度:25℃
(1段目)
電流密度(D
k):90A/dm
2
時間:1.5秒
(2段目)
電流密度(D
k):20A/dm
2
時間:3秒
【0121】
・Cu−P合金めっき(例3、4)
液組成:Cu30g/リットル、硫酸100g/リットル、P 500mg/リットル
温度:30℃
(1段目)
電流密度(D
k):140A/dm
2
時間:0.6秒
(2段目)
電流密度(D
k):20A/dm
2
時間:2.0秒
【0122】
・Cu−Co−Ni合金めっき(例5、6、14)
液組成:Cu15g/リットル、Co8g/リットル、Ni8g/リットル
pH:1〜3
温度:40℃
(1段目)
電流密度(D
k):45A/dm
2
時間:0.6秒
(2段目)
電流密度(D
k):30A/dm
2
時間:0.8秒
【0123】
次に、以下の耐熱処理、防錆処理、クロメート処理、シランカップリング処理から選択される少なくとも1つ以上の処理をこの順で行った。それぞれの処理を行う前には表面の水洗浄を行った。
【0124】
・耐熱処理(耐熱層を形成)
液組成:Co1〜8g/リットル、Ni10〜20g/リットル
pH:2〜3
温度:40℃
電流密度(D
k):5A/dm
2
時間:1.0秒
【0125】
・防錆処理(防錆層を形成)
液組成:Ni15〜30g/リットル、Zn1〜10g/リットル
pH:2〜4
温度:40℃
電流密度(D
k):5A/dm
2
時間:1.0秒
【0126】
・電解クロメート処理(クロメート処理層を形成)
液組成:K
2Cr
2O
7:1〜10g/リットル、Zn:0〜5g/リットル
pH:2〜4
温度:40℃
電流密度(D
k):1A/dm
2
時間:1.0秒
【0127】
・シランカップリング処理(シランカップリング処理層を形成)
被処理面に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 1.0体積%水溶液を噴霧することでシランカップリング剤塗布処理を行った後、70℃以上200℃以下の雰囲気中で2秒以上乾燥を行い、表面の水分を除去した。
【0128】
・樹脂層(例13、14、15)
樹脂層の塗布は、極薄銅層側表面にグラビアコート法を用いて硬化前の樹脂を塗布した後、ドクターブレードを用いて樹脂塗膜の厚みを10μmに調節し、200℃の乾燥雰囲気中で溶剤を揮発させながら樹脂成分を硬化させた。なお、使用した樹脂はエポキシ系樹脂(DIC株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いた。
【0129】
なお、例16においては極薄銅層側とは反対側のキャリア表面にも前記粗化処理(Cu−W合金めっき)、耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層の表面処理を行った。
【0130】
−加熱処理−
次に、各キャリア付銅箔に対し、加熱処理として、99.9%以上の純度を有する窒素ガス雰囲気下で、表2〜4に記載の条件にて加熱処理を行った。表2〜4の昇温速度は、熱処理条件に記載の温度(加熱温度)に初めに到達するまでの昇温速度である。熱処理後の常温までの冷却時間は1〜6時間とした。
また、例1〜16については、キャリア付銅箔をステンレス鋼製の中空管(外径11cm、厚さ0.5cm)に巻きつけた状態で加熱処理を行った。
また、例1〜16については、当該中空管に巻きつける際の張力を、それぞれ表2〜4に記載の設定として加熱処理を行った。
また、当該中空管の回転速度を、それぞれ表2〜4に記載の設定として加熱処理を行った。
【0131】
2.キャリア付銅箔の評価
上述のように作製した例1〜16のキャリア付銅箔について、加熱処理前と加熱処理後とでそれぞれ以下の評価試験を行った。評価結果を表2〜4に示す。なお、表2〜4の加熱後の実験例の番号の表記について、例えば、「例1−1」〜「例1−50」は、それぞれ加熱前のサンプルである「例1」を加熱した後のサンプルを示す。
【0132】
−エッチング液の濡れ性評価−
水平面上にキャリア付銅箔(樹脂層を備えるものを除く)を極薄銅箔側の表面処理層を上面に置き、硫酸24重量%−過酸化水素15重量%(残部は水)の組成を有するエッチング液をピペットを用いて1か所に30μリットル滴下し、30秒間放置後にエッチング液を拭き取った。硫酸-過酸化水素系エッチング液は表面処理層ならびにその下地の極薄銅層を溶解しながら濡れ広がるため、液滴の跡が真円に近ければ表面近傍のエッチング液の濡れ性が均一であり、いびつな形状であれば不均一であると判断できる。また、液滴の跡の最大直径が大きいほどエッチング液濡れがよくエッチング液による除去性が良好であると言える。
【0133】
・濡れ均一性
そこで、液滴の跡の最大直径と最小直径を測定し、その差が10mm以下であればエッチング液の濡れ性が十分に均一であり(表2〜4:濡れ均一性欄「○」)、5mm以下であればより一層均一である(表2〜4:濡れ均一性欄「◎」)とした。また、液滴の跡の最大直径と最小直径との差が10mmよりも大きい場合には、エッチング液濡れ性は十分には均一ではない(表2〜4:濡れ均一性欄「×」)とした。ここで、表2〜4の「濡れ均一性 最大−最小」は、「液滴の跡の最大直径(mm)−液滴の跡の最小直径(mm)」で算出した。
【0134】
・濡れ性
液滴の跡の最大直径を測定し、最大直径が25mm以上であればエッチング液濡れ性が十分に良好であり(表2〜4:濡れ性欄「○」)、35mm以上であればより一層良好である(表2〜4:濡れ性欄「◎」)とした。また、最大直径が25mm未満である場合をエッチング液濡れ性が不十分(表2〜4:濡れ性欄「×」)とした。ここで、表2〜4の「濡れ性 最大直径」は、「液滴の跡の最大直径(mm)」とした。
なお、前述の「濡れ均一性」と「濡れ性」の評価において、液滴の跡を取り囲む円の最小直径を「液滴の跡の最大直径」とし、液滴の跡に含まれる円の最大直径を「液滴の跡の最小直径」とした。
【0135】
−キャリアの引張強度の評価−
加熱処理工程後に常温で測定したキャリアの引張強度を以下のようにして測定した。
まず、作製したキャリア付銅箔について、キャリアを剥がした。次に、当該キャリアについて、JIS Z 2241に準じて、引張り試験により抗張力(引張強度)を求めた。
【0136】
−回路直線性(回路形成性)の評価−
キャリア付銅箔の極薄銅箔側を熱圧着によりビスマレイミドトリアジン樹脂プリプレグに貼り合わせた後、キャリアを剥離して除去し、続いて露出した極薄銅層表面に21μm幅のパターン銅めっき層をL/S=21μm/9μmとなるように形成し(極薄銅層とパターン銅めっき層との厚み合計16.5μm)、続いて以下のエッチング条件で、パターン銅めっき層を回路上端幅12〜15μmの銅めっき層となるまでフラッシュエッチングを行って回路を形成した。続いて、
図5に示すように回路上面から見た回路下端幅の最大値と最小値の差(μm)を測定し、5箇所を測定した平均値とした。最大値と最小値の差が2μm以下であれば、良好な回路直線性を有すると判断し、◎とした。また、当該最大値と最小値の差が2μm超え且つ4μm以下のとき、〇とした。また、当該最大値と最小値の差が4μm超えのとき、×とした。
(エッチング条件)
・エッチング形式:スプレーエッチング
・スプレーノズル:フルコーン型
・スプレー圧:0.10MPa
・エッチング液温:30℃
・エッチング液組成:
H
2O
2 18g/L
H
2SO
4 92g/L
Cu 8g/L
添加剤 株式会社JCU製 FE−830IIW3C 適量
【0137】
−シワの観察−
各実験例の加熱処理後の極薄銅層表面の長さ5mの範囲でのシワの有無を目視観察した。長さ10cm以上のシワが確認できた箇所が0箇所のときを◎、1箇所のときを〇、2箇所のときを△、3箇所以上のときを×とした。
【0138】
−酸化の程度−
各実験例について、加熱処理後、1巻巻きほぐして、2巻目の長さ1mのサンプルについて目視で観察した。このとき、酸化による変色面積が5%以下であるものを◎、酸化による変色面積が5%超え10%以下であるものを○○、酸化による変色面積が10%超え15%以下であるものを〇、酸化による変色面積が15%超え20%以下であるものを△、酸化による変色面積20%超えであるものを×とした。
試験条件及び評価結果を表1〜4に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
(評価結果)
例1−1〜例1−48、例2−1〜例2−3、例3−5〜例3−13、例4−1〜例16−1は、いずれも回路直線性(回路形成性)が良好であった。例1〜例4、例7〜例10、例14〜例16については、加熱処理前は回路直線性(回路形成性)が不良であったが、適切な加熱処理により回路直線性(回路形成性)が改善されていることがわかる。
さらに、例1−1〜例1−48、例2−1〜例2−6、例3−5〜例3−13、例4−1〜例8−1、例11−1及び例16−1については、エッチング液の濡れ性についても良好であった。
例1−49は加熱処理の温度が低く、回路直線性(回路形成性)が不良であった。
例1−50は加熱処理の時間が短く、回路直線性(回路形成性)が不良であった。
例2−4は加熱処理の時間が長く、結晶粒の粗大化によって回路直線性(回路形成性)が不良となった。
例2−5及び2−6は加熱処理の温度が高く、結晶粒の粗大化によって回路直線性(回路形成性)が不良となった。
例3−1〜例3−4は加熱処理の昇温速度が小さく、回路直線性(回路形成性)が不良であった。