特許第6075230号(P6075230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075230
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】発光印刷物
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/387 20140101AFI20170130BHJP
【FI】
   B42D15/10 387
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-137880(P2013-137880)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-9520(P2015-9520A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】森永 匡
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−266953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を照射した際の紫外線長波の反射率が、紫外線短波の反射率より大きい特性を有し、かつ、紫外線短波吸収能を有する基材上の少なくとも一部の領域に、網点で形成された第一の画像、第二の画像及び第三の画像が、前記基材から順に積層された印刷画像を備え、
前記第一の画像は、紫外線長波吸収能を有し、かつ、可視光下において透明又は前記基材と等色の第1の色材により形成され、
前記第二の画像は、前記領域内全体に、紫外線発光能を有し、かつ、可視光下において前記基材と異なる色彩の第2の色材で、最大網点面積率と最小網点面積率の差が10%以上60%以内の範囲で形成され、
前記第三の画像は、紫外線短波吸収能を有し、かつ、前記紫外線発光能及び前記紫外線長波吸収能を有さない、又は、前記第二の画像の発光色と異なる色彩で発光する紫外線短波発光能を有し、かつ、前記紫外線長波発光能及び前記紫外線長波吸収能を有さず、かつ、可視光下において透明の第3の色材により形成され、
可視光下による観察、紫外線長波の照射時による観察及び紫外線短波の照射時による観察で、それぞれ前記第二の画像、前記第一の画像又は前記第三の画像のみが視認できることを特徴とする発光印刷物。
【請求項2】
前記基材が白色の場合、前記第2の色材は、着色顔料の色彩と発光顔料の発光色が補色の関係であることを特徴とする請求項1記載の発光印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とするセキュリティ印刷物である銀行券、パスポ−ト、有価証券、身分証明書、カ−ド、通行券等の貴重印刷物の分野において、可視光下で観察できる画像が、紫外線を照射した場合に全く異なる画像に変化する発光印刷物に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光体、燐光体、蓄光体等に代表される、いわゆる紫外線励起発光体は、紫外線を照射することで励起して発光する特性を有している。この発光という現象は、容易に目視確認可能であるとともに、コピー機による複写物や家庭用プリンターによる出力物では再現が困難であるため、銀行券や諸証券等のセキュリティ印刷物に対して、真正品と偽造品を区別するための真偽判別要素の一つとして、従来から広く用いられてきた。
【0003】
発光体印刷の真偽判別技術としての優位性は、かつては限られた専門業者や特殊印刷に従事する者しか発光体を入手できないという材料自体の入手難易度に依存している面があった。しかし、昨今、発光体は雑貨量販店等において比較的安価で販売されており、特殊印刷に従事することのない一般人であっても様々な種類の発光体を容易に入手することができる状況になっているため、紫外線を照射することで発光画像が出現するだけの効果しか有さない、単純な発光画像を形成する技術の偽造防止技術としての価値は大きく低下してきている。
【0004】
これらの事情を鑑み、紫外線を照射した場合に単に発光画像が出現する、従来のような単純な発光画像ではなく、複雑な画像構成と特殊な機能性材料を用い、よりユニークな視覚効果を実現した発光画像やその形成方法が開示されている。それらの技術の一例を示す。
【0005】
本出願人はすでに、曲線の集合模様を、潜像を施さない部分は連続線で、潜像を施した部分は分岐した分断線で構成し、それぞれの部分の面積率が等しく、有色蛍光インキで印刷することを特徴とする複写防止模様を有する印刷物であって、可視光下で観察した場合には単なる曲線の集合模様として認識されるが、紫外線を照射することで、潜像が周辺よりも強く発光することを特徴とする印刷物を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、本出願人はすでに、条件によって可視色が変化する機能性画像表示材料を用いることで異なる画像を出現させる画像表示体であって、一つの第1の領域と、第1の領域に隣接する一つの第2の領域とが複数組配置され、各々の第2の領域の周囲が、複数の第1の領域により囲まれ、第1の領域には、第1の画像を構成する第1のドット領域と、第1のドット領域以外の第1の背景領域とを有し、第2の領域には、第2の画像を構成する第2のドット領域と、第2のドット領域以外の第2の背景領域とを有し、第1の背景領域と第2の背景領域には機能性画像表示材料を用い、第1のドット領域には、機能性画像表示材料が備えた第1の色と等色の画像表示材料を用いたことを特徴とし、通常光の下で、肉眼で見える画像と、特定の視認条件のもと(紫外線光照射時を含む)で視認できる画像とが異なる、すなわち通常光と紫外線光照射時に観察される画像が、全く相関がなく異なる画像のチェンジ効果を有する画像表示体を出願している(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
また、本出願人はすでに、紫外線領域の異なった波長域で発光強度が著しく異なる励起特性を有する発光体を使用し、ある一定の波長域の第一の紫外線を照射した際に発現する発光画像と、第一の紫外線と異なる波長域の第二の紫外線を照射した際に発現する発光画像とを、それぞれ所定の網点面積率や画線ピッチ等に差異を設けた異なる構成で印刷し、その上に紫外線吸収剤を刷り合わせて、第一の波長の紫外線と、第二の波長の紫外線とで発光画像をチェンジさせる画像形成体を出願している(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4085175号公報
【特許文献2】特開2008−126474号公報
【特許文献3】特許第4635170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の技術は、1種類の有色蛍光インキで形成されているにもかかわらず、潜像だけを極めて微細な画素で構成することによって、目視上、単なる曲線の集合として認識される画像の中で、潜像が周囲より強く発光するという優れた特徴を有している。しかしながら、潜像は、印刷によって再現可能な大きさの限界に近い微細な画素で構成するため、ドットゲインの制御が難しく、ドットゲインの発生の度合いによっては発光画像が所望の効果を発しない場合があり、製造難易度が高いという問題があった。また、紫外線の照射によって、曲線の集合の中に潜像画像が出現するものの、曲線の集合自体が不可視となる効果はなく、一つの画像から異なる画像へと画像自体が変化するような画像のチェンジ効果は有さず、変化が乏しいという問題があった。
【0010】
特許文献2に記載の技術は、可視光下でAという画像が見えていたとすると、紫外線を照射した場合にはAが消失してBという画像が出現する、いわゆる画像のチェンジ効果を有する技術であって、従来の技術と比較すると、画像の変化に優れ、発光画像の視認性を高く保つことができるという特徴を有している。しかしながら、画像のチェンジ効果を高く保つためには、三種類のインキ(一つの機能性表示材料と二つの着色インキ)を必要とし、加えて、三種類のインキによって構成される三つの画像が、お互いに重なり合う領域がなく完全に隣り合う、いわゆる「毛抜き合わせ」と呼ばれる、最も難易度の高い刷り合わせを要求することから、安定して連続製造するには極めて高い技術が必要であった。また、紫外線照射時にAの画像を消失させてBの画像を出現させるためには、可視光下で非等色であった二つの領域の色彩を、発光時には等色に変化させる必要があった。反射色は異なるが、発光時の色彩が等しいペアインキを作製するためには、発光体とインキに関する専門的な知識が必要であり、仮に作製できたとしても、発光している印刷物を観察すると、発光色か、発光強度の違いから、観察者が感知できる程度には色彩が異なっているのが常であった。以上のように、特許文献2に記載の技術は、インキ製造、印刷物製造の難易度が極めて高いという問題があった。
【0011】
特許文献3に記載の技術は、可視光下でAという画像が見えていたとすると、例えば紫外線長波を照射した場合にはAが消失してBという画像が出現し、例えば紫外線短波を照射した場合にはCという画像が出現する、より高度な画像のチェンジ効果を有する技術であって、従来の技術と比較すると、観察に用いる光の波長に応じて三つの画像が視認できる、優れた効果を有している。しかし、特許文献3に記載の技術も特許文献2に記載の技術同様に、二つの画像の位置関係を厳密に合わせる必要があり、高い刷り合わせ精度が必要であった。また、発光インキの発光強度をそれぞれの波長に合わせて調整する必要があり、インキの作製が困難であった。加えて、可視画像や発光画像は、比較的単純な二値画像に制限され、デザイン上の制約が大きいという問題があった。
【0012】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、可視光下で観察される画像と、紫外線長波を照射して出現する画像と、紫外線短波を照射して出現する画像とが全く相関のない異なる画像であることを特徴とする、画像のチェンジ効果に優れた発光印刷物であって、製造の難易度が低く、かつ、安定した連続製造が可能で、デザイン上の制約が極めて少ない発光印刷物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、紫外線を照射した際の紫外線長波の反射率が、紫外線短波の反射率より大きい特性を有する基材上の少なくとも一部の領域に、網点により形成された第一の画像、第二の画像及び第三の画像が基材から順に積層された印刷画像を備え、第一の画像は、紫外線長波吸収能を有する透明又は基材と等色の第1の色材により形成され、第二の画像は、領域内全体に、紫外線発光能を有する基材と異なる色彩の第2の色材で、最大網点面積率と最小網点面積率の差が10%以上60%以内の範囲で形成され、第三の画像は、紫外線短波吸収能を有し、かつ、紫外線発光能及び紫外線長波吸収能を有さない、又は、第二の画像と異なる色彩で発光する紫外線短波発光能を有し、かつ、紫外線長波発光能及び紫外線長波吸収能を有さない透明の第3の色材により形成され、可視光下による観察、紫外線長波の照射時による観察又は紫外線短波の照射時による観察で、それぞれ第二の画像、第一の画像又は第三の画像のみが視認できることを特徴とする発光印刷物である。
【0014】
また、本発明の発光印刷物は、基材が白色の場合、第2の色材は、着色顔料の色彩と発光顔料の発光色が補色の関係であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発光印刷物においては、印刷画像中に可視光下で視認される画像、紫外線長波を照射した場合に出現する画像、紫外線短波を照射した場合に出現する画像の三つの画像は、全く相関のない異なる画像であり、照射する光の波長に応じた画像のチェンジ効果を有する。この画像のチェンジ効果は、従来技術のように一つの画像と他の画像とが重なり合って出現することはなく、照射する紫外線の波長に応じてそれぞれ三つの画像が完全に別々に絶縁表示される。また、出現する三つの画像のいずれも視認性が高いため、真偽判別性に優れる。
【0016】
本発明の発光印刷物においては、紫外線長波を照射した場合に出現する画像及び紫外線短波を照射した場合に出現する画像は、階調制限を設ける必要はなく、文字やマーク等の二値画像はもちろん、人物や風景等の階調表現域が極めて広い多諧調画像を容易に表現できる。また、印刷画像中に可視光下で視認される画像には階調制限を設ける必要はあるものの、従来技術と比較すると階調表現域は広く、デザイン上の制限が小さい。以上のように、従来の技術と比較してデザイン上の自由度が高い。
【0017】
本発明の発光印刷物において、印刷画像を形成する三種類のインキは、可視光下でも紫外線照射時でも等色である必要はないため、インキ間の色合わせは必要なく、作製が容易である。また、それぞれのインキで形成する三つの画像は従来技術のような高精度な刷り合わせを必要とせず、三つの画像が単純に重なり合って入れば良い。また、ドットゲインの厳重な管理をすることなくチェンジング効果を奏することが可能であるため、製造の難易度が低く、安定した連続製造が可能である。
【0018】
以上の手法で形成した発光印刷物は、生産性の高い印刷方式であるオフセット印刷で製造可能であることからコストパフォーマンスに優れ、また最新のデジタル機器を用いたとしても発光画像の再現は不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における発光印刷物を示す。
図2】本発明における発光印刷物の構成の概要を示す。
図3】発光印刷物の三つの画像の積層構造を示す。
図4】本発明における発光印刷物を異なる観察条件で観察した場合の画像を示す。
図5】本発明の一実施例における発光印刷物を示す。
図6】本発明の一実施例における発光印刷物の構成の概要を示す。
図7】本発明における実施例1の発光印刷物を異なる観察条件で観察した場合の画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
(第一の実施の形態)
【0021】
図1に、本発明における発光印刷物(1)を示す。発光印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色を有する印刷画像(3)が形成されて成る。基材(2)は透明であっても不透明であってもよく、着色されていても問題ない。また、基材(2)は、紫外線長波の反射率が紫外線短波の反射率より大きい特性を有する特性を有する必要があるが、一般の印刷に用いられる上質紙やコート紙、プラスティック等はこの特性を満たしているため、基材(2)として、特殊な金属等を用いるのでなければ基材(2)の素材に関しては特に配慮は必要ではない。
【0022】
本明細書でいう基材(2)が備えるべき、「紫外線長波の反射率が紫外線短波の反射率より大きい特性」とは、紫外線長波領域(中心波長365nm±20nm)における紫外線反射率の積分値が、紫外線短波領域(中心波長254nm±20nm)における紫外線反射率の積分値の1.3倍以上であることとする。一例として、一般的な上質紙やコート紙の場合、この値は1.5倍〜3倍程度である。
【0023】
また仮に、紫外線長波の反射率が紫外線短波の反射率より大きい基材(2)を用いない場合でも、紫外線長波の反射率が紫外線短波の反射率より大きい特性を有する材料(紫外線長波より紫外線短波を強く吸収する特性を有する材料)であらかじめ基材(2)に印刷したり、コーティングしたりして下地を形成して前述の特性を基材(2)に付与すればよい。前述のような特性を有している樹脂は多数存在することから、その中から基材(2)との相性に応じて選択すればよい。
【0024】
印刷画像(3)は、透明以外で、基材と異なる色であれば良く、基材(2)の中に収まる限り、大きさにも制限はない。なお、図1の発光印刷物(1)の印刷画像(3)の中には、アルファベットの「A」及び「B」及び「C」の三つの文字が見える画像となっているが、この図は説明をわかり易くするための画像であって、実際の印刷画像(3)を可視光下で観察した場合にはアルファベットの「A」文字のみが観察でき、アルファベットの「B」及び「C」の文字は観察できない。
【0025】
まず、本発明の印刷画像(3)の構成を図2に示す。印刷画像(3)は、第一の有意情報(5A)を有する可視画像となる第二の画像(5)と、第二の有意情報を表した第一の画像(4)及び第三の有意情報を表した第三の画像(6)とから成る。本実施の形態では、前述したそれぞれの画像が表す画像が単純な二値画像である形態について説明する。第二の画像(5)は、複数の網点から構成され、基材と異なる色彩の第2の色材で形成されて成り、画像内の最大網点面積率と最小網点面積率の差が60%以内で形成されて成る。なお、本発明において、「面積率」とは、基材(2)の一定の面積の中に配置される網点の面積の割合のことであり、それぞれの画像を構成する網点において、一定の面積内に配置されている網点の最大の面積率と最小の面積率の差が60%以内であることを示す。
【0026】
また、第一の画像(4)は、複数の網点から構成され、基材(2)と同じ色彩か、透明な色彩の第1の色材で形成される必要がある。続いて、第三の画像(6)は、複数の網点から構成され、透明な色彩の第3の色材で形成される必要がある。実施の形態における第一の有意情報とはアルファベットの「A」の文字であり、第二の有意情報とはアルファベットの「B」の文字であり、第三の有意情報とはアルファベットの「C」の文字である。
【0027】
また、第二の画像(5)を形成する第2の色材は、紫外線を照射することで発光する、いわゆる紫外線発光能を有し、第一の画像(4)は紫外線長波を吸収する、いわゆる紫外線長波吸収能を有する必要がある。第三の画像(6)を形成する第3の色材は紫外線短波を吸収する、いわゆる紫外線短波吸収能を有するか、あるいは紫外線短波を照射することで、第二の画像(5)の発光色とは異なる色彩で発光する、いわゆる紫外線短波発光能を有する必要がある。第一の実施の形態においては、第三の画像(6)を形成する第3の色材が、紫外線短波を吸収する紫外線短波吸収能を有する形態を例に挙げて説明する。
【0028】
第二の画像(5)と第一の画像(4)及び第三の画像(6)を構成する網点の構成には、特段の制約はなく、その大小や粗密によって、濃淡が表現できてさえいれば、AMスクリーンでもFMスクリーンでも良い。また、網点を集合させて形成した画線や、画素等を用いて第二の画像(5)と第一の画像(4)及び第三の画像(6)を構成したとしても何ら問題ない。加えて、それぞれの網点の相互の位置関係等にも制約はない。以上が、本発明の印刷画像(3)の構成の概要である。
【0029】
本発明における「網点」とは、印刷画像(3)を形成する最小単位の小さな点のことである。これらを特定の方向に一定の距離連続して配置した点線や破線の分断線、直線、曲線及び破線を画線とし、少なくとも一つの印刷網点又は印刷網点を複数集めて一塊にした円や三角形、四角形を含む多角形、星形等の各種図形、あるいは文字や記号、数字等を画素とする。すなわち、本発明においては、画線及び画素等は、網点構成のバリエーションの一つとして考える。
【0030】
図3に印刷画像(3)の層構造を示す。本発明の印刷画像(3)は、まず基材(2)のすぐ上に、紫外線長波吸収能を有する第1の色材で第一の画像(4)を形成し、第一の画像(4)の上に紫外線発光能を有する第2の色材で第二の画像(5)を形成し、第二の画像(5)の上に、紫外線短波吸収能または紫外線短波発光能を有する第3の色材で第三の画像(6)を形成する構造となっている。この積層構造はこの順序で重ね合わせる必要があり、いずれの画像の層が入れ替わっても本発明の意図する効果は失われる。
【0031】
ここで第二の画像(5)に要求される性能について具体的に説明する。第二の画像(5)は、可視光下では第一の有意情報(5A)を任意の色彩の濃淡で表す一方、紫外線照射時には画像全体が目視上均一に発光し、第一の有意情報(5A)が視認できないフラットな発光画像となる必要がある。第二の画像(5)の励起波長は、紫外線の長波(中心波長365nm)から短波(中心波長254nm)までを少なくとも含んでいる必要がある。発光の形態は蛍光、燐光、蓄光のいずれであってもよく、発光波長は可視領域でも赤外域のような不可視領域でも問題ない。ただし、認証性を考慮すると、可視領域に発光波長を有するものが望ましい。
【0032】
可視光下で視認される第二の画像(5)中の一定の濃淡を、紫外線照射時に目視上消失させるためには、第二の画像(5)の可視光下の色彩と、紫外線照射時の発光強度をバランスさせる必要がある。例えば、第二の画像(5)が濃い色彩で形成されている場合には、第二の画像(5)の発光強度は高い必要があり、一方、第二の画像(5)が淡い色彩で形成されている場合には、第二の画像(5)の発光強度は低い必要がある。仮に、第二の画像(5)が濃い色彩で形成されているにも関わらず、発光強度が低い場合には、紫外線照射時でも第一の有意情報(5A)が消失しきらずにやや濃度が淡くなった程度の色彩で観察され、逆に第二の画像(5)が淡い色彩で形成されているにも関わらず、発光強度が高い場合には、紫外線照射時には第一の有意情報(5A)が強く発光しすぎてネガポジが反転した状態で観察される。
【0033】
第二の画像(5)の色彩は、基本的に第二の画像(5)を第2の色材で形成した画線中に含まれる着色顔料の種類とその配合割合によって決定され、発光強度とは基本的に第二の画像(5)を形成した画線中に含まれる発光顔料の種類とその配合割合によって決定される。着色顔料と発光顔料の配合割合のバランスがとれていない場合、紫外線照射時の第一の有意情報(5A)の消失効果は失われてしまうことから、着色顔料や発光顔料を変更した場合にはその都度、適正な配合割合を見出す必要がある。適正な配合割合の簡単な見分け方としては、紫外線照射時に第二の画像(5)中の第一の有意情報(5A)がポジで視認されている場合には発光顔料の配合割合が相対的に不足しており、逆に第二の画像(5)中の第一の有意情報(5A)がネガで視認されている場合には着色顔料の配合割合が相対的に不足していると考えて良い。また、基材(2)が白色である場合には、着色顔料の色彩と、発光顔料の発光色は基本的には補色の関係にあることが好ましい。それは二つの顔料の物体色と発光色の合成色を白色にすることによって、紫外線照射時の第二の画像(5)の色彩を基材の色彩に近づけて画像の消失効果をより高めるためである。
【0034】
また、可視光下で視認される第二の画像(5)中の一定の濃淡を、紫外線照射時に目視上消失させるためには、第二の画像(5)の階調表現域、すなわち第二の画像(5)中の最小網点面積率と最大網点面積率の差も重要となる。いかに適切に着色顔料と発光顔料を調整して画像を形成したとしても、その階調表現域が100%であった場合(濃い部分は面積率100%、淡い部分は面積率0%)には第二の画像(5)中の第一の有意情報(5A)が紫外線照射時に目視上消失することはない。第一の有意情報(5A)を紫外線照射時に目視上消失させるためには、第二の画像(5)に一定の階調制限を必ず設ける必要がある。
【0035】
第二の画像(5)の階調表現域を広くした場合には、可視光下での第一の有意情報(5A)の視認性は高くなるものの、紫外線照射時に第一の有意情報(5A)を消失させることは難しくなり、逆に第二の画像(5)の階調表現域を狭くした場合には、紫外線照射時に第一の有意情報(5A)を消失させることは容易になるものの、可視光下での第一の有意情報(5A)の視認性は低くなる。よって、可視光下での第一の有意情報(5A)の視認性と、紫外線照射時の第一の有意情報(5A)の消失効果を両立させうる階調表現域で第二の画像(5)を形成する必要がある。
【0036】
具体的には第二の画像(5)の階調表現域が10%より低い場合には可視光下の第一の有意情報(5A)の視認性が低すぎ、第二の画像(5)の階調表現域が60%を超える場合には紫外線照射時の第一の有意情報(5A)の消失効果を得られなくなるため、第二の画像(5)の階調表現域が10%以上、60%以下で形成する必要があり、第二の画像(5)を形成している画像に含まれる着色顔料や発光顔料が変わる毎に適正な階調表現域を設定しなおす必要がある。
【0037】
以上のように、第二の画像(5)を形成するにあたっては、可視光下の色彩と紫外線照射時の発光強度をバランスよく調整し、かつ、10%以上60%の階調表現域の中から適切な値を見出す必要がある。
【0038】
次に、第一の画像(4)に要求される性能について具体的に説明する。第一の画像(4)を形成するための第1の色材には、可視光下で不可視であって、紫外線長波を吸収する紫外線長波吸収能を備える必要がある。なお、紫外線長波を吸収する紫外線長波吸収能を備えることは必須であるが、このような紫外線長波吸収能を備える材料は、紫外線短波も吸収する特性を備えている場合がほとんどである。本発明の第一の画像(4)については、紫外線長波吸収能を備えていれば、紫外線短波吸収能も同時に有していても問題ない。
【0039】
第一の画像(4)は印刷画像(3)中に形成されているにもかかわらず、可視光下では視認されてはならない。よって、第一の画像(4)を形成するための第1の色材は、透明であるか、あるいは基材(2)と等色である必要がある。
【0040】
続いて、第三の画像(6)に要求される性能について具体的に説明する。第三の画像(6)を形成するための第3の色材は、可視光下で不可視であって、紫外線短波を吸収する紫外線短波吸収能を備える必要がある。なお、第三の画像(6)を形成するための第3の色材は、紫外線長波を吸収する紫外線長波吸収能を備えていてはならず、紫外線長波を照射した場合に励起して発光する、紫外線長波発光能を備えていてはならない。
【0041】
第三の画像(6)は印刷画像(3)中の最上層に形成され、可視光下では視認されてはならない。よって、第三の画像(6)を形成するための第3の色材は、透明である必要がある。
【0042】
紫外線吸収能は、特定の顔料や樹脂を用いることで付与することができる。紫外線吸収能を有する材料の一例を挙げる。顔料として用い得る無機系紫外線吸収材としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄等が代表的であり、これらは特に高い紫外線吸収特性を有している。また、ハロゲン、カルボニル基、ベンゼン環、不飽和基等を含む有機化合物はいずれも少なからず紫外線を吸収する特性を有しているが、サリチル酸系吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤、シアノアクリレ−ト系紫外線吸収剤等が代表的である。
【0043】
特にベンゾトリアゾ−ル系紫外線吸収剤は紫外線長波領域(波長400nm〜300nm)に顕著な吸収特性を有していることで知られている。第一の画像(4)には上記の材料を用いて形成することができる。
【0044】
また、ポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカ−ボネイト樹脂、アミノアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合体、ゼラチン、ポリビニルアルコ−ル等の樹脂は、紫外線領域の紫外線短波の波長の短い領域を特に吸収する特性を持っていることで知られている。第三の画像(6)は、これらの材料を用いて形成することができる。
【0045】
これらの顔料や樹脂の特性を利用して、紫外線吸収能を有するインキを作製して第一の画像(4)を形成するための第1の色材及び第三の画像(6)を形成するための第3の色材を用いて印刷すればよい。ただし、印刷適性や堅牢性、耐光性等を考慮すると、樹脂成分に長期にわたって紫外線吸収能を担保させることは困難であると考えられることから、顔料に無機系紫外線吸収材を用いて紫外線吸収能を担保させる形態のインキが最も好ましい。
【0046】
以上のような構成で形成した発光印刷物(1)の効果について図4を用いて説明する。図4(a)に示すように、太陽や蛍光灯等の一般的な可視光源(7)から照射される可視光下の観察で本発明の発光印刷物(1)を観察した場合、印刷画像(3)の中に透明あるいは基材(2)と等しい色の第1の色材で形成された第一の画像(4)及び第3の色材で形成された第三の画像(6)は視認できず、基材(2)と異なる色を有する第2の色材で形成された第二の画像(5)だけが視認でき、具体的には第二の画像(5)中に含まれた第一の有意情報(5A)が面積率の差異によって形成された色の濃淡によって視認できる。
【0047】
また、図4(b)に示すように、紫外線長波(9L)を照射して本発明の発光印刷物(1)を観察した場合、印刷画像(3)の中の第一の有意情報(5A)及び第三の有意情報は視認できず、第一の画像(4)の表す第二の有意情報のみが視認できる。この効果が生じる原理は以下の通りである。
【0048】
紫外線長波(9L)が照射されると、発光能を有する第二の画像(5)全体が均一に発光し、第一の有意情報(5A)が視認できないフラットな発光画像となる。第二の画像(5)に直接入射した紫外線長波(9L)は、そのすべてが第二の画像(5)の励起のために一度に使い果たされるのではなく、その一部は励起に寄与することなく第二の画像(5)を通過し、この励起に寄与しなかった紫外線長波(9L)のその多くは、基材(2)面で再び反射されて、第二の画像(5)へと戻ってくる。しかし、第二の画像(5)下には、紫外線長波(9L)吸収能を有する第一の画像(4)が存在するため、第二の画像(5)下に第一の画像(4)がある場合には、紫外線長波(9L)は吸収され、一方の第一の画像(4)がない場合には、紫外線長波(9L)の一部は基材(2)で吸収され、一部は基材(2)反射されて第二の画像(5)へ再度戻ってくる。紫外線長波(9L)が再反射されるか否かによって、第二の画像(5)の発光強度にさらに強弱が生まれ、第一の画像(4)の第二の有意情報が可視化される。また、このとき照射される紫外線は紫外線長波(9L)であるため、紫外線短波吸収能しか有さない第三の画像(6)は素通りし、第三の有意情報は不可視のままである。
【0049】
次に、図4(c)に示すように、紫外線短波(9S)を照射して本発明の発光印刷物(1)を観察した場合、第一の有意情報(5A)と第二の有意情報は視認できず、第三の画像(6)が表す第三の有意情報のみが視認できる。これは発光能を有する第二の画像(5)が発光することで、第一の有意情報(5A)が視認できないフラットな発光画像となる一方、第三の画像(6)は紫外線短波(9S)を吸収することで発光せず、第二の画像(5)が作り出したフラットな発光画像をバックに、第三の画像(6)の第三の有意情報が可視化されるためである。また、紫外線短波(9S)は紫外線長波(9L)と異なり、基材(2)である一般的な上質紙やコート紙、プラスティック等に吸収される波長域のエネルギーであるため、第二の画像(5)を通過した紫外線短波(9S)は紫外線長波(9L)と異なり、第一の画像(4)だけに選択的に吸収されるのでなく、基材(2)によっても同様に吸収されるために、基材(2)からの再反射はほとんど生じず、第一の画像(4)は可視化されず、不可視のままである。
【0050】
以上のように、可視光下の観察では第二の画像(5)が表す第一の有意情報(5A)が出現し、紫外線長波を照射して観察した場合には第一の画像(4)が表す第二の有意情報が出現し、紫外線短波を照射して観察した場合には第三の画像(6)が表す第三の有意情報が出現する。これが本発明の発光印刷物(1)の効果であり、観察条件を変えることで第一の有意情報(5A)と第二の有意情報と第三の有意情報が混ざり合うことなく、完全にチェンジして観察できることを最大の特徴とする。
(第二の実施の形態)
【0051】
続いて、第一の実施の形態、すなわち第三の画像(6)が紫外線短波吸収能を有する形態とは異なり、第三の画像(6)が紫外線短波発光能を有する形態について説明する。本実施の形態は、第三の画像(6)の機能以外は第一の実施の形態と同じであるため、説明に用いる図は第一の実施の形態に用いた図1から図4をそのまま用いることとする。また、特に説明しない事項については、第一の実施の形態と同じである。
【0052】
第二の実施の形態における発光印刷物(1)は図1に示す通りである。基材(2)の特性は第一の実施の形態と同じである。まず、本発明の印刷画像(3)の構成を図2に示す。印刷画像(3)は、第一の実施の形態の印刷画像(3)と同じく、第一の有意情報(5A)を表した第二の画像(5)と、第二の有意情報を表した第一の画像(4)及び第三の有意情報を表した第三の画像(6)とから成る。第二の画像(5)は、複数の網点から構成され、基材と異なる色彩の第2の色材で成り、画像内の最大網点面積率と最小網点面積率の差が60%以内で形成されて成る。また、第一の画像(4)は、複数の網点から構成され、基材と同じ色彩か、透明な色彩の第1の色材で形成される必要がある。続いて、第三の画像(6)は、複数の網点から構成され、透明な色彩の第3の色材で形成される必要がある。実施の形態における第一の有意情報(5A)とはアルファベットの「A」の文字であり、第二の有意情報とはアルファベットの「B」の文字であり、第三の有意情報とはアルファベットの「C」の文字である。
【0053】
また、第二の画像(5)を形成する第2の色材は、紫外線を照射することで発光する、いわゆる紫外線発光能を有し、第一の画像(4)を形成する第1の色材は紫外線長波を吸収する、いわゆる紫外線長波吸収能を有する必要がある。第三の画像(6)を形成する第3の色材は紫外線短波を照射することで、第二の画像(5)の発光色とは異なる色彩で発光する、いわゆる紫外線短波発光能を有する。
【0054】
図3に印刷画像(3)の層構造を示す。本発明の印刷画像(3)は、まず基材(2)側上に、紫外線長波吸収能を有する第1の色材で第一の画像(4)を形成し、第一の画像(4)の上に紫外線発光能を有する第2の色材で第二の画像(5)を形成し、第二の画像(5)の上に紫外線短波発光能を有する第3の色材で第三の画像(6)を形成する構造となっている。第二の画像(5)に要求される性能については、第一の実施の形態と同様であることから省略する。第二の画像(5)を形成するにあたっては、第一の実施の形態と同様に、可視光下の色彩と紫外線照射時の発光強度をバランスよく調整し、かつ、10%以上60%の階調表現域の中から適切な値を見出す必要がある。第一の画像(4)に要求される性能についても第一の実施の形態と同様であることから省略する。
【0055】
第三の画像(6)に要求される性能について具体的に説明する。第二の実施の形態と第一の実施の形態との画像構成上の差異は、第三の画像(6)の構成の違いのみである。第二の実施の形態において、第三の画像(6)は可視光下で不可視であって、紫外線短波を照射した場合に励起して発光する、紫外線短波発光能を備える必要がある。なお、第三の画像(6)は、紫外線長波を吸収する紫外線長波吸収能を備えていてはならず、紫外線長波を照射した場合に励起して発光する、紫外線長波発光能を備えていてはならない。
【0056】
紫外線長波を照射した場合に励起し、発光する紫外線長波発光能を有さず、紫外線短波を照射した場合に励起し、発光する紫外線短波発光能を有する発光材料は多数存在する。例えば、MgWOは紫外線長波では発光せず、紫外線短波で励起して青色で発光し、ZnSiO:Mnは紫外線長波では発光せず、紫外線短波で励起して緑色で発光し、LaPO:Ce、Tbは紫外線長波では発光せず、紫外線短波で励起して緑色で発光し、ZnS:Cu、Alは紫外線長波では発光せず、紫外線短波で励起して緑色で発光し、Y:Euは紫外線長波では発光せず、紫外線短波で励起して赤色で発光し、(Sr、Mg)(PO:Snは紫外線長波では発光せず、紫外線短波で励起して赤色で発光する。以上のような発光材料は、本発光印刷物(1)の第三の画像(6)を構成する材料として適している。
【0057】
また、第二の実施の形態における第三の画像(6)を形成する第3の色材は、紫外線短波照射時の第二の画像(4)の発光色とは異なる色彩で発光する必要がある。例えば、短波を照射した場合に第二の画像(4)が緑色で発光するのであれば、第三の画像(6)は緑色以外の色相、例えば、赤色や橙色、黄色、青色等で発光する必要がある。紫外線短波照射時に第二の画像(4)と第三の画像(6)が同じ色で発光してしまった場合、第二の画像(4)と第三の画像(6)との間に充分な色差が生じず、第三の有意情報の視認性が低下してしまうためである。仮に、第三の画像(6)と第二の画像(4)の発光色とが緑や青、緑や黄のように近い色相である場合には、第三の画像(6)と第二の画像(4)の発光強度を大きく異ならせることが望ましい。
【0058】
以上のような構成で形成した発光印刷物(1)の効果について図4を用いて説明する。図4(a)に示すように、太陽や蛍光灯等の一般的な可視光源(7)から照射される可視光下の観察で本発明の発光印刷物(1)を観察した場合、印刷画像(3)の中に透明あるいは基材と等しい色の第1の色材で形成された第一の画像(4)及び第3の色材で形成された第三の画像(6)は視認できず、基材と異なる色を有する第二の画像(5)だけが視認でき、具体的には第二の画像(5)中に含まれた第一の有意情報(5A)が面積率の差異によって形成された色の濃淡によって視認できる。
【0059】
また、図4(b)に示すように、紫外線長波(9L)を照射して本発明の発光印刷物(1)を観察した場合、印刷画像(3)の中の第一の有意情報(5A)及び第三の有意情報は視認できず、第一の画像(4)の表す第二の有意情報のみが視認できる。また、このとき照射される紫外線は紫外線長波(9L)であるため、第三の画像(6)は不可視のままである。
【0060】
次に、図4(c)に示すように、紫外線短波(9S)を照射して本発明の発光印刷物(1)を観察した場合、第一の有意情報(5A)と第二の有意情報は視認できず、第三の画像(6)が表す第三の有意情報のみが視認できる。これは発光能を有する第二の画像(5)が発光することで、第一の有意情報(5A)が視認できないフラットな発光画像となる一方、第三の画像(6)は紫外線短波によって第二の画像(5)と異なる色彩で発光することで、第二の画像(5)が作り出したフラットな発光画像をバックに、第三の画像(6)の第三の有意情報が可視化されるためである。また、このとき照射される紫外線短波(9S)は紫外線長波(9L)と異なり、第一の画像(4)だけに選択的に吸収されるのでなく、基材(2)によっても吸収されるために、基材(2)からの再反射はほとんど生じず、第一の画像(6)は不可視のままである。
【0061】
以上のように、可視光下の観察では第二の画像(5)が表す第一の有意情報(5A)が出現し、紫外線長波を照射して観察した場合には第一の画像(4)が表す第二の有意情報が出現し、紫外線短波を照射して観察した場合には第三の画像(6)が表す第三の有意情報が出現する。本発明の発光印刷物(1)は、観察条件を変えることで第一の有意情報(5A)と第二の有意情報と第三の有意情報が混ざり合うことなく、完全にチェンジして観察できることを最大の特徴とする。
【0062】
本発明の発光印刷物(1)の構造上の特徴は、紫外線発光能を有する第2の色材で形成した第二の画像(5)の下に紫外線長波吸収能を有する第1の色材で第一の画像(4)を形成したことにある。この層構造は、紫外線長波照射時の効果を実現するためではなく、紫外線短波照射時の効果を実現するために必要となる。単に紫外線長波照射時の効果だけを実現するのであれば、第二の画像(5)の上層に第一の画像(4)あっても、下層に第一の画像(4)あっても紫外線長波吸収の機能は大差無く発揮されるため、いずれの場合も紫外線長波を吸収して第二の有意情報が出現する効果を実現することができる。しかし、一般に紫外線長波吸収能を有する材料は、紫外線短波吸収能も備えているため、第二の画像(5)の上層に第一の画像(4)を形成した場合には、紫外線短波を照射した場合でも第二の有意情報が可視化されてしまう。この場合には紫外線短波を照射して可視化される第三の有意情報と第二の有意情報が混ざって不明瞭な画像として視認されてしまうことから、本発明の三つの画像が完全にチェンジする効果を実現することができない。
【0063】
しかし、本発明の発光印刷物(1)の作製にあたって、第二の画像(5)の下層に第一の画像(4)を形成した場合には、第一の画像(4)を形成する第1の色材が紫外線短波吸収能を備えていたとしても、基材(2)が紫外線短波よりも紫外線長波を強く反射する特性を有する場合には紫外線短波照射時に第二の有意情報が可視化されない現象を新たに見出した。このため、紫外線発光能を有する第2の色材で第二の画像(5)の下に紫外線長波吸収能を有する第1の色材で第一の画像(4)を形成した構造をとることで、三つの画像が完全にチェンジする効果を実現することができる構造を実現することが可能となった。
【0064】
なお、本発明における「可視光」とは、発光印刷物(1)に波長が400nmから700nmの光を指す。また、「紫外線長波」とは、中心波長を365nmとする400nmから300nmまでの波長帯に含まれる光を指し、「紫外線短波」とは、中心波長を254nmとする200nmから300nmまでの波長帯に含まれる光を指す。
【0065】
なお、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400nm〜700nm)の特定の波長の強弱の分布を示すものである。
【0066】
以上のような性能を備えた第一の画像(4)、第二の画像(5)及び第三の画像(6)を印刷する方式は、いずれの印刷方式であってもよい。本発明の発光印刷物(1)は、オフセット印刷で形成しても十分な効果を発揮するが、フレキソ印刷やグラビア印刷、凸版印刷、凹版印刷、スクリ−ン印刷等で形成してもよい。生産性を重視場合には、オフセット印刷で形成することが望ましい。
【0067】
第二の画像(5)は、紫外線長波及び紫外線短波を照射することで発光する必要があるが、紫外線長波で発光する発光色と、紫外線短波で発光する発光色とが異なっていても良い。 照射する紫外線の波長に応じて第二の画像(5)の発光色が変化する特性を有している場合、紫外線長波照射時に出現する第二の有意情報及び紫外線短波照射時に出現する第三の有意情報が異なる色彩で観察できる効果が加わる。このような形態の場合、色彩表現が豊かになるだけでなく、認証性が向上し、かつ偽造に対する耐性も向上することから、より望ましい。
【0068】
紫外線長波と紫外線短波を照射した場合に発光色が変わる特性を付与するには、二色性発光顔料を用いた第2の色材で第二の画像(5)を構成すれば良い。二色性発光顔料としてはハネウェル・ジャパンの「LUMILUX CD−R/G I」(紫外線長波で赤発光、紫外線短波で黄発光)、「LUMILUX R/G CD770」(紫外線長波で黄発光、紫外線短波で赤発光)、根本特殊化学社製造のDE−RB(紫外線長波で青発光、紫外線短波で赤発光)、DE−RG(紫外線長波で緑発光、紫外線短波で赤発光)、DE−GB(紫外線長波で青発光、紫外線短波で緑発光)、DE−GR(紫外線長波で赤発光、紫外線短波で緑発光)等が販売されている。独自の発光色の組合せを実現したい場合には、任意の色彩で発光する紫外線長波発光能を有する発光材料と、異なる色彩で発光する紫外線短波発光能を有する発光材料を同じインキ中に混合して作製すればよい。
【0069】
また、第一の画像(4)を形成するための第1の色材、第二の画像(5)を形成するための第2の色材及び第三の画像(6)を形成するための第3の色材にIR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えても良く、この場合、画像のスイッチ効果に加えて各種の機能性を追加することができる。
【0070】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した発光印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0071】
本実施例は、図5から図7までを用いて説明する。本実施例は、第一の画像(4−1)、第二の画像(5−1)、第三の画像(6−1)をそれぞれ多階調画像とし、それぞれの画像をオフセット印刷方式で形成した例であって、第三の画像(6−1)は紫外線吸収能を有する例である。
【0072】
図5に、本発明における発光印刷物(1−1)を示す。発光印刷物(1−1)は、基材(2−1)の上に、淡い紫色の印刷画像(3−1)が形成されて成る。基材(2−1)には、一般的な白色上質紙(日本製紙製)を使用した。
【0073】
本発明の印刷画像(3−1)の構成を図6に示す。印刷画像(3−1)は、第二の有意情報である、鳳凰の画像を表した第一の画像(4−1)の上に、第一の有意情報(5A)である、男性の顔画像を表した第二の画像(5−1)が重なり、その上に第三の有意情報である浮世絵の画像を表した第三の画像(6−1)が重なって成る。
【0074】
図6に示す第一の画像(4−1)は、最小網点面積率0%で最大網点面積率100%の、階調表現域100%の階調で表した多階調画像である。第一の画像(5−1)は、第一の有意情報(5A)である男性の顔画像を表し、最小網点面積率50%で最大網点面積率100%の、階調表現域50%の階調で表した多階調画像である。また、第三の画像(6−1)は、最小網点面積率0%で最大網点面積率100%の、階調表現域100%の階調で表した多階調画像である。
【0075】
まず、基材(2−1)に、365nmを中心波長とする紫外線長波の吸収能のある金属顔料、チタンを含む白インキ(ベストワン GIGA 白 M−SOYA T&K TOKA製)で、第一の画像(4−1)をウェットオフセット印刷方式によって形成した。第一の画像(4−1)は基材(2−1)と同じ色である白色であり、第二の画像(5−1)を形成する前に、基材(2−1)に直接印刷した。この段階で第一の画像(4−1)は白色で基材(2−1)と等色であることから、目視上不可視となった。
【0076】
続いて、表1に示すインキを用いて、第二の画像(5−1)を同じくウェットオフセット印刷方式によって、第一の画像(4−1)上に重ね合わせて印刷した。表1のインキは三つのインキを混合して作製した。第二の画像(5−1)は可視光下の観察で紫に見えるが、365nmを中心波長とする紫外線長波を照射すると、やや白味がかった緑色で発光し、紫外線短波を照射すると、黄味の強い橙色で発光する。
【0077】
表1
【0078】
続いて、紫外線短波吸収能を有するインキ(マットメジウム T&K TOKA製)を用いて、第二の画像(5−1)の上にウェットオフセット印刷方式によって、第三の画像(6−1)を重ね合わせて印刷した。
【0079】
以上の構成で作製した発光印刷物(1−1)の効果について図7を用いて説明する。図7(a)に示すように、可視光下の観察では第二の画像(5−1)が表す第一の有意情報(5A)が紫色の濃淡によって視認できた。次に、365nmを中心波長とする紫外線長波を照射して観察した場合には、第二の画像(5−1)が、白味がかった緑色で発光して第一の有意情報(5A)が消失して、第一の画像(4−1)が表す第二の有意情報が発光せず、暗く沈んだ紫色で視認され、結果として、白味がかった緑色の発光の中に、暗く沈んだ紫色の第二の有意情報が視認できた。最後に、254nmを中心波長とする紫外線短波を照射して観察した場合には第二の画像(5−1)が橙色で発光して第一の有意情報(5A)が消失して、第三の画像(6−1)が表す第三の有意情報が発光せず、暗く沈んだ紫色で視認され、結果として、橙色の発光の中に、暗く沈んだ紫色の第三の有意情報が視認できた。
【0080】
以上のように、観察条件に応じて、第一の有意情報、第二の有意情報及び第三の有意情報が混ざり合うことなく、完全にチェンジして観察できることが確認できた。
【符号の説明】
【0081】
1、1−1 発光印刷物
2、2−1 基材
3、3−1 印刷画像
4、4−1 第一の画像
5、5−1 第二の画像
6、6−1 第三の画像
7、7−1 可視光源
8、8−1 観察者の視点
9L、9L−1 紫外線長波光源
9S、9S−1 紫外線短波光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7