(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多孔質の隔壁により形成された軸方向に延びる多数のセルを有するセラミックハニカム体と、前記セラミックハニカム体の外周に形成された外周壁とからなるセラミックハニカム構造体を製造する方法であって、
セラミック坏土を押出し、セラミックハニカム構造を有する成形体を形成する工程、
前記成形体、又は前記成形体を焼成した後の焼成体の外周部を加工することにより、外周部に位置するセルの隔壁の一部を除去し、外周面に軸方向に延びる溝を有するセラミックハニカム体を得る工程、及び
前記セラミックハニカム体の外周面にコート材を塗布し外周壁を形成するとともに、前記セラミックハニカム体の両端面の周縁部にコート材を塗布し、前記周縁部に塗布したコート材に円板状の押圧治具を押し当てて荷重を加え、前記周縁部に塗布したコート材を前記周縁部のセルの端部に挿入して封止部を形成し、同時に、一部がはみ出して隣接する前記封止部及び前記外周壁を連結する残留コート材層を、前記両端面の周縁部に形成する工程
を有することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
請求項1記載のセラミックハニカム構造体の製造方法において、前記コート材を乾燥した後、前記両端面の周縁部に残留したコート材を除去する工程を有することを特徴とするセラミックハニカム構造体の製造方法。
多孔質の隔壁により形成された軸方向に延びる多数のセルを有するセラミックハニカム体と、前記セラミックハニカム体の外周にコート材を塗布して形成された外周壁部と、前記セラミックハニカム体の周縁部のセルの両端部にコート材を挿入して形成された封止部と、前記両端部の前記封止部と前記外周壁部と前記隔壁とを一体的に連結した残留コート材層とからなることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内燃機関の排気ガス中に含まれる有害物質を削減するため、セラミックハニカム構造体を使用した排気ガス浄化用の触媒コンバータや微粒子捕集用のフィルタとして、セラミックハニカム構造体が使用されている。
【0003】
セラミックハニカム構造体50は、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、多孔質の隔壁53により形成された軸方向に延びる多数のセル54を有するセラミックハニカム体51と、前記セラミックハニカム体51の外周に形成された外周壁52とからなり、その流路方向に垂直な断面の形状は通常ほぼ円形又は楕円形をしている(
図12(b)参照)。セラミックハニカム構造体50は、金属メッシュ又はセラミックス製のマット等で形成された把持部材(図示せず)で使用中に動かないように強固に把持され、金属製収納容器(図示せず)内に収納されている。従って、外周壁には把持部材の把持力が負荷された状態での熱衝撃に耐える強度が必要とされる。
【0004】
特開平05-269388号は、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、多孔質の隔壁53により形成された軸方向に延びる多数のセル54を有し、外部に開口して軸方向に延びる溝56が外周面51aに形成されているセラミックハニカム体51と、前記溝56をコート材で充填して形成された外周壁52とからなるセラミックハニカム構造体50を開示している。このセラミックハニカム構造体50は、外周壁が一体的に形成されたセラミックハニカム焼成体を公知の方法で作製した後、外周部のセルを研削除去し、外周部に溝を有するセラミックハニカム体を作製し、セラミック粒子
及び/又はセラミックファイバーとコロイダルシリカ又はコロイダルアルミナからなるペースト状コート材57を、セラミックハニカム体の溝56に充填するように塗布及び乾燥して外周壁52を形成することにより製造される。特開平05-269388号は、このような方法により、外周面が補強され、耐熱性及び耐熱衝撃に優れたセラミックハニカム構造体が得られると記載している。
【0005】
特開平05-269388号は、最外周部の溝56に充填したコート材57の乾燥は、大気中に24時間放置後、90℃で2時間かけて行なったと記載している。しかしながら、製造効率を向上させるため、熱風乾燥炉、マイクロ波等を用いて前記コート材を迅速に乾燥させようとすると、高温(80℃以上)の熱風乾燥炉へ投入する時や、高出力マイクロ波乾燥でマイクロ波を出力する時に、セラミックハニカム体51と外周壁52との間に著しい温度差が急激に生じ、この時に生じる熱応力(熱衝撃)により、セラミックハニカム体51の溝56と外周壁52の端部との境界に隙間が生じるという問題がある。セラミックハニカム構造体の外周壁の端部に隙間が生じると、その後の取り扱いの際や、金属容器に収納して使用する際に、前記隙間から外周壁の端部が剥離及び欠損し、さらにはこの欠損部を起点として外周壁が破損して、使用できなくなるという問題が生じる。
【0006】
WO07/148764号は、
図15(a)に示すように、セラミックハニカム体61の外周面61aを覆うように配設された外周コート部63と、セラミックハニカム体61の端面65a,65bより外方に突出し、かつセラミックハニカム体61の端面65a,65bにおける周縁部分を覆うように配設された突出部64とを有する外周壁62が形成されたセラミックハニカム構造体60を開示している。WO07/148764号に記載のセラミックハニカム構造体60は、
図15(b)に示すように、少なくとも一方の端面65a又は端面65bの周縁部分が開放されるように、二つの挟持部材69a,69bによって両端面65a,65bを挟持した状態で、セラミックハニカム体61の外周面61a及び端面65a,65bの周縁部分を覆うようにコート材67をへら68で塗布し、外周コート部63と突出部64とを形成した後、乾燥及び必要に応じて焼成を行って製造される。WO07/148764号は、このような方法により、外周壁62の破損や剥離が有効に防止されると記載している。
【0007】
WO07/148764号は、外周コート層の乾燥割れを防止するために、前記コート材を100〜200℃の熱風乾燥と電気ヒーター、遠赤外線等の無風乾燥とを組み合わせて行うのが好ましく、さらに加湿により乾燥速度を調整するのも好ましいと記載している。しかしながら、特開平05-269388号に記載の方法と同様に、製造効率を向上させるため、前記コート材67を熱風乾燥炉、マイクロ波等を主に用いて迅速に乾燥させようとした場合、高温(80℃以上)の熱風乾燥炉へ投入する時や、高出力マイクロ波乾燥でマイクロ波を出力する時に、急激な温度差が生じ、その際に生じる熱衝撃により、外周コート部63の端部63aと外周面61aとの間、及び突出部64と端面65a,65bとの間に隙間が生じ易いという問題がある。これらの部位に隙間が生じると、その後の取り扱いの際や、金属容器に収納して使用する際に、前記隙間から外周壁の端部が剥離及び欠損し、さらにはこれらの欠損部を起点として外周壁が破損して、使用できなくなるという問題が生じる。
【0008】
WO08/117729号は、
図16(a)に示すように、セラミックハニカム体71の軸方向の長さよりも外周壁部73を長く形成するとともに、セラミックハニカム体71の端面75a,75bの周縁部に周縁壁部74を形成したセラミックハニカム構造体70を開示しており、端面の周縁部に形成された周縁壁部74は、
図16(b)に示すように、乾燥後にセラミックハニカム体71の端面位置まで除去するのが好ましいと記載している。WO08/117729号に記載のセラミックハニカム構造体70は、外周部71a及び端面75a,75bの周縁部に塗布したコート材77を、乾燥することによって製造されるが、セラミックハニカム体71の軸方向の長さよりも外周壁部73を長く形成しているため、乾燥時に外周面71aとコート材77との境界にすき間が生じないので、衝撃等による外周壁部の欠けを防止できると記載している。
【0009】
しかしながらWO08/117729号に記載の発明においても、特開平05-269388号及びWO07/148764号に記載の方法と同様に、外周面71a及び端面75a,75bの周縁部に塗布されたコート材77を、製造効率を向上させるため、熱風乾燥炉、マイクロ波等を用いて迅速に乾燥させようとすると、その際に生じる熱衝撃により、外周壁部73の端部73aと外周面71a、又は周縁壁部74と端面75a,75bとの間に隙間が生じ易いという問題がある。さらに、端面75a,75bの周縁部に形成された周縁壁部74を、端面75a,75b位置まで除去すると、外周壁部73の端部73aと外周面71aとの間に生じた隙間が拡大する。これらの隙間が生じることにより、その後の取り扱いの際や、金属容器に収納して使用する際に、前記隙間から外周壁部73の端部73aが剥離及び欠損し、さらにはこれらの欠損部を起点として外周壁が破損して、使用できなくなるという問題が生じる。
【0010】
特開2003-284923号は、
図17に示すように、セラミックハニカム体81のセルのうち、最外周に位置する最外周セル及びそれから内部方向に位置する所定数のセルの少なくとも一方の端部及び/又は中間部が、外周壁82の内周面によって封止されて、流体を流させない遮蔽セル84を構成してなるセラミックハニカム構造体80を開示している。特開2003-284923号は、このセラミックハニカム構造体80は、押出成形により作製したハニカム構造を有する成形体を、一方の端部の収縮率が他方と異なるように乾燥及び焼成することにより円錐台状のセラミックハニカム体を形成し、前記セラミックハニカム体の円錐台状の外周面を円筒状に加工し、その外周面81aに外周壁82を配設し、乾燥することにより製造されると記載している。特開2003-284923号は、このような方法で製造したハニカム構造体80は、外周壁82により形成された遮蔽セル84の断熱効果により、運転開始からの温度上昇時間を短くでき、触媒を担持した時に短時間で触媒活性を高くできると記載している。
【0011】
しかしながら、特開2003-284923号に記載の方法においても、前述の先行技術と同様に、外周面81aに配設された外周壁82を、製造効率を向上させるため、熱風乾燥炉、マイクロ波等を用いて迅速に乾燥させようとすると、その際に生じる熱衝撃により、外周面81aと外周壁82の端部との境界に隙間が生じ易いという問題がある。これらの部位に隙間が生じると、その後の取り扱いの際や、金属容器に収納して使用する際に、前記隙間から外周壁の端部が剥離及び欠損し、さらにはこれらの欠損部を起点として外周壁が破損して、使用できなくなるという問題が生じる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1(a)】本発明の方法により製造したセラミックハニカム構造体の一例を軸方向に平行な断面で示す模式図である。
【
図1(b)】
図1(a)のセラミックハニカム構造体を軸方向から見た模式図である。
【
図2(a)】セラミックハニカム体の一例を軸方向に平行な断面で示した模式図である。
【
図2(b)】
図2(a)のセラミックハニカム体の外周部を軸方向から拡大して見た模式図である。
【
図3(a)】セラミックハニカム体の外周部及び端面周縁部にコート材を塗布するための装置を示す軸方向に平行な模式断面図である。
【
図3(b)】
図3(a)の装置の支持板を示す模式断面図である。
【
図3(c)】
図3(a)の装置の支持板を軸方向から見た模式図である。
【
図4(a)】セラミックハニカム体の端面の周縁部のセル内にコート材を挿入する様子を示す軸方向に平行な模式断面図である。
【
図4(b)】
図4(a)の押圧治具を示す模式断面図である。
【
図5(a)】セラミックハニカム体の周縁部のセル内にコート材を挿入する様子を示す軸方向に平行な模式断面図である。
【
図5(b)】
図5(a)の押圧治具を示す模式断面図である。
【
図5(c)】
図5(a)の押圧治具を軸方向から見た模式図である。
【
図6】セラミックハニカム体の周縁部のセル内にコート材を挿入した後の、端面周縁部にコート材が残留している状態を示す模式断面図である。
【
図7(a)】セラミックハニカム体の端面の周縁部にコート材を塗布した状態を模式的に示す部分断面図である。
【
図7(b)】
図7(a)のセラミックハニカム体の端面の周縁部に塗布したコート材を、周縁部にコート材が残留するようにセル内に挿入した状態を示す部分断面図である。
【
図7(c)】
図7(a)のセラミックハニカム体の端面の周縁部に塗布したコート材を、周縁部にコート材が残留しないようにセル内に挿入した状態を示す部分断面図である。
【
図8(a)】実施例8のハニカム構造を有する成形体を示す模式断面図である。
【
図8(b)】実施例8のハニカム構造を有する成形体を乾燥する様子を示す模式断面図である。
【
図8(c)】実施例8のハニカム構造を有する成形体を乾燥後、焼成する様子を示す模式断面図である。
【
図8(d)】実施例8のハニカム構造を有する成形体を焼成後、加工により円筒形に成形した後のセラミックハニカム体を示す模式断面図である。
【
図9(a)】実施例8のセラミックハニカム体の外周部及び端面周縁部にコート材を塗布する装置を示す模式断面図である。
【
図9(b)】
図9(a)の装置の支持板を示す模式断面図である。
【
図10(a)】実施例8のセラミックハニカム体の周縁部のセル内にコート材を挿入する様子を示す軸方向に平行な模式断面図である。
【
図10(b)】
図10(a)の押圧治具を示す模式断面図である。
【
図11(a)】実施例8において、端面周縁部にコート材が残留した状態のセラミックハニカム体を示す模式断面図である。
【
図11(b)】実施例8において、残留コート材を研磨除去して得られたセラミックハニカム構造体を示す模式断面図である。
【
図12(a)】従来のセラミックハニカム構造体の一例を軸方向に平行な断面で示す模式図である。
【
図12(b)】
図12(a)のセラミックハニカム構造体を軸方向から見た模式図である。
【
図13(a)】特開平05-269388号に記載のセラミックハニカム構造体を軸方向に平行な断面で示す模式断面図である。
【
図13(b)】
図13(a)のセラミックハニカム構造体の外周部を軸方向から拡大して見た模式図である。
【
図14】比較例1のセラミックハニカム体の外周面にコート材を塗布する装置を示す模式断面図である。
【
図15(a)】WO07/148764号に記載のセラミックハニカム構造体を示す模式断面図である。
【
図15(b)】WO07/148764号に記載のセラミックハニカム構造体を製造するための装置を示す模式断面図である。
【
図16(a)】WO08/117729号に記載のセラミックハニカム構造体の一例を示す模式断面図である。
【
図16(b)】WO08/117729号に記載のセラミックハニカム構造体の他の一例を示す模式断面図である。
【
図17】特開2003-284923号に記載のセラミックハニカム構造体を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[1]セラミックハニカム構造体
本発明のセラミックハニカム構造体1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、多孔質の隔壁13により形成された軸方向に延びる多数のセル14を有するセラミックハニカム体11と、前記セラミックハニカム体11の外周に形成された外周壁12とを有し、さらに前記セラミックハニカム体11の周縁部のセル141の両端面15a,15bに封止部18が設けられている。
【0020】
前記周縁部のセル141は、前記セラミックハニカム体11を構成するセル14(外周面11aの溝16は含まない)のうち、外周から軸中心に向かって1〜7セルの範囲にあるセルである(図では便宜的に1〜3セルの範囲を封止した例を示した)。周縁部のセル141の両端部には前記封止部18が設けられているため排気ガスが流通しない。従って、圧力損失が大きくなることを防ぐためには、前記封止部18が設けられた周縁部のセル141をできるだけ少なくした方が好ましい。このような観点から、前記両端部に封止部18が設けられている周縁部のセル141は、外周から軸中心に向かって1〜5セルの範囲とするのが好ましく、1〜4セルの範囲とするのがより好ましく、1〜2セルの範囲とするのが最も好ましい。一方、本発明の製造方法において(後述)、乾燥時の熱衝撃により発生する外周面11aに塗布したコート材170の剥離を防止するためには、少なくとも外周から軸中心に向かって1〜2セルの範囲にコート材を塗布するのが好ましく、1〜4セルの範囲にコート材を塗布するのがより好ましい。なお封止部18が設けられたセル数、及びコート材を塗布したセル数は、最外周から軸中心に向かって数えたセル数(外周面の溝は除く)であって、セル壁が外周部に直交する方向で数えたセル数(
図1(b)における矢印a又は矢印bの方向)である。
【0021】
前記周縁部のセル141の両端部に設けられた封止部18の長さは、セラミックハニカム体11の各端面から3〜15 mmであるのが好ましく、5〜10 mmであるのがより好ましい。前記封止部18の長さは、全ての前記周縁部のセル141で同じである必要はなく、例えば
図7(c)に示すように、異なった長さの封止部18,18aが混在してもよい。
【0022】
前記封止部18を設けた前記周縁部のセル141の端面には、
図6に示すように、前記封止部18の一部がはみ出して、隣接する封止部18同士及び外周壁12を連結する残留コート材層172を有していてもよい。
【0023】
[2]セラミックハニカム構造体の製造方法
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし本発明は以下の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基いて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明に含まれる。
【0024】
本発明の製造方法は、多孔質の隔壁により形成された軸方向に延びる多数のセルを有するセラミックハニカム体と、前記セラミックハニカム体の外周に形成された外周壁とからなるセラミックハニカム構造体を製造する方法であって、
(a)セラミック坏土を押出し、セラミックハニカム構造を有する成形体を形成する工程、
(b)前記成形体、又は前記成形体を焼成した後の焼成体の外周部を加工することにより、外周部に位置するセルの隔壁の一部を除去し、外周面に軸方向に延びる溝を有するセラミックハニカム体を得る工程、
(c)前記セラミックハニカム体の外周面にコート材を塗布し外周壁を形成する工程、及び
(d)前記セラミックハニカム体の両端面の周縁部にコート材を塗布し、前記塗布したコート材
に円板状の押圧治具を押し当てて荷重を加え、
前記塗布したコート材を前記周縁部のセル
の端部に挿入
して封止部を形成し、同時に、一部がはみ出して隣接する前記封止部及び前記外周壁を連結する残留コート材層を、前記両端面の周縁部に形成する工程
を有する。
【0025】
(a) 成形体の形成
セラミックハニカム構造を有する成形体は、セラミック坏土の押出成形によって作製する。まずセラミックス粉末に、バインダー、潤滑剤、及び必要に応じて造孔材を添加し、乾式で十分混合した後、水を添加し、十分な混練を行って可塑化したセラミック坏土を作製する。このセラミック坏土を押出して、所定長さに切断し、乾燥することにより、外周壁と隔壁とが一体に形成されたセラミックハニカム構造を有する成形体を得る。
【0026】
(b) セラミックハニカム体の作製
得られたセラミックハニカム構造を有する成形体を焼成し、この焼成体の外周部を加工により除去して、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、外周部に位置する最外周セル14aの隔壁の一部が除去されたことにより、外周面11aに軸方向に延びる溝16が形成されたセラミックハニカム体11を作製する。なお、この方法では、成形体を焼成した後に外周面を加工する例を示したが、焼成前の成形体に加工を施して、その後焼成してセラミックハニカム体11を作製してもよい。
【0027】
セラミックハニカム体の好ましい材質としては、コーディエライト、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、チタン酸アルミ、LAS等が挙げられ、中でもコーディエライトを主結晶相とするセラミックハニカム体は、安価で耐熱性に優れ、化学的にも安定なため最も好ましい。
【0028】
(c) コート材の塗布
得られたセラミックハニカム体11の、軸方向に延びる溝16を有する外周面11aと、両端面15a,15bの周縁部151にコート材17を塗布する。乾燥時の熱衝撃により発生する外周面11aと前記外周面11aに塗布したコート材170との間の剥離を防止するためには、少なくとも外周から軸中心に向かって1〜2セルの範囲にコート材を塗布するのが好ましく、1〜4セルの範囲にコート材を塗布するのがより好ましい。前記外周面11aに塗布するコート材17の厚さは0.1〜5 mmであるのが好ましく、0.5〜4 mmであるのがより好ましい。また前記両端面15a,15bの周縁部151に塗布するコート材17の厚さは3.5〜15 mmであるのが好ましく、4〜13 mmであるのがより好ましい。
【0029】
前記コート材17の塗布は、例えば
図3(a)に示すような塗布装置20を用いて行うことができる。塗布装置20は、セラミックハニカム体11の両端面15a,15bを挟持する円板状の2つの支持板21a,21bと、前記支持板21a,21bの外周端部213aに当接する
スクレーパー25とからなる。前記セラミックハニカム体11は、前記支持板21a,21bに挟持された状態で中心軸Xを軸として自由に回転させることができる。
【0030】
前記支持板21a,21bは、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、セラミックハニカム体11の端面15a,15bに当接する中央部211と、前記中央部211よりも薄く形成された周縁部213とを有し、前記中央部211と前記周縁部213との境界は軸を中心とした円状の高さL
1の段差212を構成している。このような形状を有することにより、前記支持板21a,21bは、前記周縁部213において、セラミックハニカム体11の端面15a,15bとの間にコート材を塗布するための幅L
1の隙間を形成する。前記支持板21a,21bの外径は、セラミックハニカム体11の外径よりも大きく構成されており、セラミックハニカム体11の外周面11aと、前記支持板21a,21bの外周端部213aに当接したスクレーパ25との間にコート材を塗布するための隙間を構成する。
【0031】
前記コート材17の塗布は、前記支持板21a,21bでセラミックハニカム体11を挟持し、前記支持板21a,21bの外周端部213aにスクレーパ25を当接させた状態で、セラミックハニカム体11の外周面11aと、スクレーパ25との隙間、及び両端面15a,15bの周縁部151と、前記支持板21a,21bの周縁部213との隙間にコート材17を流入し、前記支持板21a,21bにより挟持したセラミックハニカム体11を軸Xの周りに回転させることにより、スクレーパ25でコート材17を均して前記外周面11a及び両端面15a,15bの周縁部151に前記コート材17を塗布する。このとき、前記外周面11aの溝16の中に前記コート材17が隙間なく充填されるように塗布するのが好ましい。
【0032】
ここで、支持板21a,21bの中央部211の外径を調節することで、セラミックハニカム体11の両端面15a,15bにコート材17を塗布する周縁部151の領域を調節することができる。また支持板21a,21bの段差212の高さL
1を調節することで、後述する周縁部のセル141の端部に挿入するコート材17の量を調節し、封止部18の長さを調節することができる。
【0033】
コート材17は、セラミックス骨材、コロイダルシリカ又はコロイダルアルミナ、バインダー、水、必要に応じて分散剤等を混練して、20 Pa・s以上の粘度を有するペースト状にしたものが好ましい。粘度が高すぎる場合、コート材17がセラミックハニカム体11の外周面11aの溝16の中に十分に充填し難くなり、さらに両端面15a,15bの周縁部151に塗布したコート材17を周縁部のセル141の端部に挿入させ難くなるため好ましくない。従って、コート材17の粘度は、500 Pa・s以下であるのがより好ましい。
【0034】
前記セラミックス骨材としては、コーディエライト、アルミナ、ムライト、シリカ、チタン酸アルミ等が使用できる。セラミックス骨材は、セラミックハニカム体と同材質であっても、異なる材質であっても良い。例えば、非晶質シリカ等の、セラミックハニカム体よりも熱膨張係数の小さい材質を用いることで、使用時の耐熱衝撃性が良好となる。コート材17には、セラミックス骨材に加えて、セラミックス繊維、無機バインダー、有機バインダー等を含んでもよい。
【0035】
コート材17を塗布した後、セラミックハニカム体11からスクレーパ25及び支持板21a,21bを取り外して、外周面11aの溝16及び両端面15a,15bの周縁部151にコート材17が塗布されたセラミックハニカム体11を塗布装置20から分離する。
図4(a)に示すように、分離したセラミックハニカム体11の両端面15a,15bの周縁部151に塗布したコート材17に、円板状の押圧治具31a,31b(
図4(b))を押し当てて荷重を加え、前記両端面15a,15bの周縁部151に塗布したコート材17を、周縁部のセル141の端部に挿入する。その結果、
図6に示すように、周縁部のセル141の端部に挿入されたコート材171により周縁部のセル141の両端部に封止部18が形成され、セラミックハニカム体11の両端面15a,15bの周縁部151には残留コート材層172が形成される。
【0036】
周縁部のセル141の端部に挿入されたコート材171は、セル内の端部を充填するとともに、多孔質の隔壁13中に存在する気孔内に浸入し、隔壁13との密着力を増大させる。このため、外周面11aの溝16に塗布され外周壁12を形成するコート材170と、前記残留コート材層172と、セル端の内部に挿入され封止部18を形成するコート材171と、隔壁13とが、一体となってセラミックハニカム体11に良好に固着される。押圧治具31a,31bが、セラミックハニカム体11の両端面15a,15bから所定の位置に停止するように設定することで、周縁部のセル141の端部に挿入されたコート材171の長さ、及び残留コート材層172の厚さを調節することができる。
【0037】
前記残留コート材層172の厚さは、例えば
図5(b)及び
図5(c)に示すような、押圧治具の中央部311と周縁部313とに段差312を設けた段付円板状の押圧治具32a,32b(
図5(a)参照)を用いることで容易に調節することができる。前記段付円板状の押圧治具32a,32bを、
図5(a)に示すようにセラミックハニカム体11の両端面15a,15bに配置し、前記セラミックハニカム体11を両端面15a,15bから挟持する方向に0.1 MPa以上の荷重を加えて、前記中央部311の端面がセラミックハニカム体11の端面15a,15bに接触するまで加圧して、両端面15a,15bの周縁部151に塗布されたコート材17をセル内に挿入させ、封止部18及び残留コート材層172を形成する。この場合は、段付円板状の押圧治具32a,32bの段差312の高さL
2を変更することにより、残留コート材層172の厚さを
調節できる。
【0038】
セラミックハニカム体11の両端面15a,15bの周縁部151に塗布されたコート材17をセル内に挿入させた後、押圧治具31a,31b(又は段付円板状の押圧治具32a,32b)を取り外し、コート材17を熱風乾燥、マイクロ波乾燥等の公知の方法で乾燥させ、コート材17中の水分を除去し、外周面11aの溝16に外周壁12を形成するとともに、周縁部のセル141の両端部に封止部18を形成する。本発明のセラミックハニカム構造体1の製造方法によれば、周縁部のセル141の両端部に挿入されたコート材171が、隔壁13に存在する気孔内に浸入し密着性を高めるため、外周面11aの溝16に塗布されたコート材170と、残留コート材層172と、セル端の内部に挿入されたコート材171と、隔壁13とが一体となって良好に固着される。このため、コート材17が塗布されたセラミックハニカム体11を乾燥する際に、熱衝撃が加わっても、外周壁12の端部において隔壁13との間に隙間が生じ難くなり、その後の取り扱いの際や金属容器に収納して使用する際に、外周壁12の端部が剥離したり欠損したりすることがない。
【0039】
周縁部のセル141の両端部に挿入されたコート材171が、隔壁13と良好に固着するためには3 mm以上の深さにコート材17を挿入させるのが好ましく、5 mm以上の深さに挿入させるのがより好ましい。
【0040】
セラミックハニカム体11の両端面15a,15bの周縁部151にコート材17が残留してなる残留コート材層172が、0.5 mm未満であると、外周面11aの溝16に塗布されたコート材170と、残留コート材層172と、セル端の内部に挿入されたコート材171と、隔壁13とが十分に一体化しないため、コート材17を塗布した後の乾燥の際に、外周壁12と溝13との間に隙間が生じ易くなるため好ましくない。そのため、前記残留コート材層172の厚さは0.5 mm以上であるのが好ましく、1 mm以上であるのがより好ましい。一方、前記残留コート材層172が10 mmを超えると、その後の取り扱いの際に残留コート材層172が破損し易くなり、破損部を起点として外周面11aに設けたコート材170(外周壁12)が破損して使用できなくなる場合があるので好ましくない。前記残留コート材層172の厚さは、好ましくは8 mm以下であり、さらに好ましくは5 mm以下である。
【0041】
外周面11aの溝16に塗布されたコート材170と、残留コート材層172と、セル端の内部に挿入されたコート材171と、隔壁13とが一体となって良好に固着されるためには、隔壁13の気孔率が40〜80%であるのが好ましい。
【0042】
乾燥後、両端面15a,15bの周縁部151に残留している残留コート材層172は、セラミックハニカム体11の両端面15a,15bから突出しているため、乾燥後にこれを研磨除去して
図1(a)及び
図1(b)に示すようなセラミックハニカム構造体1としてもよい。乾燥後に前記残留コート材層172を除去した場合は、既にコート材17の乾燥が完了しているため、外周壁12の端部において溝13との間に隙間が生じる心配はない。
【0043】
周縁部のセル141の端部に挿入するコート材171は、それらの深さが全て同一である必要はない。両端面15a,15bの周縁部151に塗布されたコート材17の軸中心に近い側の部分が、
図7(a)に示すように、セル全体を覆っていない場合、コート材17を前記セル内に挿入すると、
図7(b)及び
図7(c)に示すように、周縁部のセル141の端部に挿入されたコート材171の深さが一致しなくなるが、このような場合であっても、本発明の効果は得られる。
【0044】
本発明の方法を、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、一方の端部が外周壁12の内周面によって封止された遮蔽セル141aを有するセラミックハニカム構造体1の製造へ適用した場合、外周壁12の端部の剥離及び欠損を防止することができるだけでなく、前記遮蔽セル141aが、他方の端部に挿入されたコート材171によって封止されているため、前記遮蔽セル141aの断熱効果がより向上するといった効果が得られる。
【0045】
乾燥後、必要に応じて外周壁12を加熱及び焼成しても良い。またセラミックハニカム構造体1の各セルの両端部を、交互に目封止してなる構成とすることもできる。
【0046】
[3]実施例
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
実施例1
(1)セラミックハニカム体の作製
カオリン、タルク、シリカ、及びアルミナの粉末を調整し、50質量%のSiO
2、36質量%のAl
2O
3、及び14質量%のMgOを含むコージェライト生成原料粉末とし、この原料粉末にバインダーとしてメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、潤滑剤、並びに造孔材として発泡済み樹脂を添加し、乾式で十分混合した後、水を添加して十分な混練を行い、可塑化したセラミック杯土を作製した。このセラミック坏土を押出成形し、所定長さに切断後、乾燥し、周縁部と隔壁とが一体に形成されたセラミックハニカム構造を有する成形体を得た。この成形体を焼成した後、外周部を加工することにより、外周部に位置するセルの隔壁の一部を除去し、外周面に軸方向に延びる溝を有し、外径266 mm、全長305 mm、隔壁厚さ0.3 mm、セルピッチが1.57 mm、及び隔壁の気孔率が61%のコーディエライト質のセラミックハニカム体を得た。
【0048】
(2)コート材の作製
平均粒径50μmのコーディエライト粉末100質量部に対して、コロイダルシリカを固形分で13質量部配合し、さらに、コーディエライト粉末とコロイダルシリカの固形分合計100質量部に対して、1.2質量部のメチルセルロースを配合し、20Pa・sの粘度になるように水を加えて混練しコート材17を作製した。
【0049】
(3)コート材の塗布
図9(a)及び
図9(b)に示す塗布装置20を用いて、このセラミックハニカム体の外周面11aにコート材17を塗布した。塗布装置20の支持板21a,21bは、外径が270 mm、及び段差212の高さL
1が6 mmのものを使用し、前記段差212から外周端部213aまでの距離は、セラミックハニカム体の両端面15a,15bの周縁部に塗布したコート材が、外周から中心に向かって5セル分(外周面の溝は除く)の領域を覆うように設定した。
【0050】
両端面15a,15bを前記支持板21a,21bで挟持したセラミックハニカム体11を回転させながら、スクレーパ25を支持板21a,21bの外周端部213aに当接させて、セラミックハニカム体11の外周面11aと
スクレーパ25との隙間、
及び両端面15a,15bの周縁部151と
支持板21a,21bとの隙間にコート材17を流入させ、スクレーパ25でならしながらコート材17を塗布した。
【0051】
塗布後、支持板21a,21bを取り外し、
図5(a)に示すように、段差312の高さL
2が1 mmの段付円板状の押圧治具32a,32b(
図5(b)及び
図5(c)を参照)をセラミックハニカム体11の両方の端面全面に、押し当てて、0.1 MPaの荷重を加えて、両端面15a,15bの周縁部151に塗布されたコート材17をセル内に挿入した。
【0052】
外周面11aのコート材17(外周壁12)、周縁部のセル141の端部に挿入されたコート材171(封止部18)、及び残留コート材層172を熱風乾燥炉で130℃で2時間乾燥させた後、両端面15a,15bの周縁部151に残留している残留コート材層172を研磨除去して、外径270 mm及び全長305 mmのセラミックハニカム構造体を3個作製した。
【0053】
実施例1のセラミックハニカム構造体1について、周縁部へのコート材塗布の有無、コート材を塗布したセル数、コート材を挿入したセル数、挿入したコート材の長さ、乾燥時の残留コート材層172の厚さ、及び乾燥後の残留コート材層172の除去の有無を表1に示した。表1において、コート材を塗布したセル数及びコート材を挿入したセル数は、最外周から軸中心に向かって数えたセル数(外周面の溝は除く)であって、セル壁が外周部に直交する方向で数えたセル数(
図1(b)における矢印a又は矢印bの方向)である。挿入したコート材の長さは、評価試験終了後に切断して10か所の長さを測定して平均した値である。
【0054】
これらの試料について、外周壁端部と外周面との隙間の発生、使用時に金属製収納容器内に載置して振動させたときの破損、及び圧力損失を評価し表1に示した。
【0055】
外周壁端部と外周面との隙間の発生は、セラミックハニカム構造体の1つを切断して目視で観察し、
隙間が生じていないものを「優(◎)」、
0.5 mm未満の隙間が生じていたものを「良(○)」、
0.5 mm以上1 mm未満の隙間が生じていたものを「可(△)」、及び
1 mm以上の隙間が生じていたものを「不可(×)」
として評価した。
【0056】
使用時に金属製収納容器内に載置して振動させたときの破損の評価は、セラミックハニカム構造体の他の1つを金属容器に収納して、振動数100 Hz、及び加速度60 Gの振動を100時間加える振動試験を行い、試験後のセラミックハニカム構造体を金属製収納容器から取り出して目視で観察し、
欠損が生じていないものを「優(◎)」、
端部から0.5 mm未満の長さの欠損が生じていたものを「良(○)」、
0.5 mm以上1 mm未満の長さの欠損が生じていたものを「可(△)」、及び
1 mm以上の長さの欠損が生じていたものを「不可(×)」
として評価した。
【0057】
圧力損失の評価は、セラミックハニカム構造体のさらに他の1つを圧力損失テストスタンドに固定し、空気を流量10 Nm
3/minで送り込み、流入側と流出側との差圧(圧力損失)が、
0.6 kPa以下の場合を「優(◎)」、
0.6 kPaを超え0.8 kPa以下の場合を「良(○)」、
0.8 kPaを超え1.0 kPa以下の場合を「可(△)」、及び
1.0 kPaを越える場合を「不可(×)」
として評価した。
【0058】
実施例2〜5
塗布装置20の支持板21a,21bの段差212から外周端部213aまでの距離を変更することにより、セラミックハニカム体11の両端面の周縁部にコート材を塗布したときにコート材によって覆われるセル数(コート材を塗布したセル数)を、表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、外径270 mm及び全長306 mmのセラミックハニカム構造体1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
実施例6
段差312の高さL
2が0.5 mmの押圧治具31a,31bを用いた点、及び両端面15a,15bの周縁部151に残留している残留コート材層172を除去しなかった点以外は実施例1と同様にして、外径270 mm及び全長306 mmのセラミックハニカム構造体1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
実施例7
造孔材を使用しないでセラミックハニカム体11を作製した点、及びセラミックハニカム体11の隔壁厚さを0.2 mm、セルピッチを1.47 mm、及び隔壁の気孔率を35%とした点以外は実施例1と同様にして、セラミックハニカム構造体1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
実施例8
実施例1と同様にして押出成形したセラミックハニカム構造を有する成形体(
図8(a))を、300μmの表面粗さを有する窒化珪素質の台41の上に載置して乾燥させた。台41は表面粗さが高く滑り難いため、台41と端面15bとの摩擦により、セラミックハニカム体11の台41と接触する側の端面15bの乾燥時の収縮が小さくなり、この端面15bの外径が他方の端面15aの外径より大きい、円錐台状のセラミックハニカム構造を有する乾燥体が得られた(
図8(b))。次に、この円錐台状のセラミックハニカム体の外径の大きい端面15bを下側にして台41の上に載置して焼成し(
図8(c))、得られた円錐台状の焼成体の周縁部を円筒状に加工除去して、外径266 mm、全長30 5mm、隔壁厚さ0.3 mm、セルピッチが1.57 mm、及び隔壁の気孔率が61%のコーディエライト質のセラミックハニカム体を得た(
図8(d))。このセラミックハニカム体は、
図8(d)に示すように、端面15aの最外周から軸中心方向に3セル分が、反対側の端面15bまで貫通しておらず、外周面に開口することにより、外周面に軸方向に延びる溝を形成していた。
【0062】
このセラミックハニカム体11に対して、実施例1と同様にしてコート材17の塗布し、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、両端面15a,15bの周縁部151に塗布されたコート材17をセル内に挿入した。
図11(a)に示すように残留コート材層172を有する状態で、実施例1と同様にして乾燥した。乾燥後、外周セルの端面に残留している残留コート材層172を研磨除去して、
図11(b)に示すようなセラミックハニカム構造体1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なおコート材を塗布したセル数及びコート材を挿入したセル数は、一方の端面と他方の端面とで異なる値であったので、表1には両方の数を記載した。
【0063】
実施例9
段差212の高さL
1が4 mmの支持板21a,21bを用いた以外は実施例3と同様にして、外径270 mm及び全長306 mmのセラミックハニカム構造体1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
比較例1
セラミックハニカム体11の端面15a,15bにコート材21の塗布を行わなかった以外実施例1と同様にして外径270 mm及び全長306 mmのセラミックハニカム構造体1を作製した。なお端面15a,15bにコート材21を塗布しなかったため、段付円板状の押圧治具32a,32bによるコート材17のセル内への挿入、及び残留コート材層172の除去の操作は行わなかった。
【0065】
セラミックハニカム体11の外周面11aへのコート材17の塗布は、
図14に示す塗布装置20aを用いて行った。塗布装置20aは、実施例1で使用した塗布装置20で用いた支持板21a,21bの代わりに、段差212を有しない支持板59a,59bを用いたものである。つまり支持板59a,59bは、セラミックハニカム体11の端面15a,15b全面に当接する形状であり、その外径は実施例1で使用した塗布装置20の支持板21a,21bと同じ270 mmであった。
【0066】
得られたセラミックハニカム構造体1に対して、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
比較例2
両端面15a,15bの周縁部151に塗布されたコート材17をセル内に挿入する操作を行わなかった以外は実施例1と同様にして、外径270 mm及び全長306 mmのセラミックハニカム構造体1を作製し、実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。なお、周縁部のセル141の端面に塗布し乾燥したコート材17は、実施例1における残留コート材層172と同様にして研磨除去した。
【0068】
表1
*外周から軸中心に向かって数えたセル数(ただし外周面の溝は除く)
*
2 ( )内は他方の端面でのセル数
【0069】
表1(続き)
*乾燥時に残留したコート材層の厚さ
【0071】
表1から、セラミックハニカム体の両端面の周縁部に塗布されたコート材をセル内に挿入し、かつ前記両端面の周縁部に残留コート材層を形成した状態で乾燥を行って製造した実施例1〜9のセラミックハニカム構造体は、外周壁と外周面との間に隙間が生じにくく、使用時の振動により外周壁の端部に発生する剥離及び欠損が少ないことが分かる。これは、外周面(隔壁により形成された溝)に塗布したコート材が、セル内に挿入したコート材及び端面に残留してなる残留コート材層と一体となり強固に固着されているためと考えられる。
【0072】
一方、セラミックハニカム体の両端面の周縁部にコート材を塗布していない比較例1のセラミックハニカム構造体は、外周壁の端部で外周面との間に隙間が生じ、外周壁の剥離及び欠損が多いことが分かる。セラミックハニカム体の両端面の周縁部にコート材を塗布しているが、塗布されたコート材をセル内に挿入していない比較例2は、コート材のセラミックハニカム体の両端面への固着が不十分となり、外周壁の端部で外周面との間に隙間が生じ、外周壁の剥離及び欠損が多いことが分かる。