【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人通信研究機構「高度通信・放送研究委託開発/低消費電力高速光スイッチング技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気光学効果を有する基板内に光導波路を備え、前記基板上かつ前記光導波路の上方に前記光導波路を伝搬する光波に電界を与える信号電極を備え、前記基板上かつ前記信号電極から離間した位置に接地電極を備えてなる光デバイスであって、
前記基板上の外周部の一部、かつ前記信号電極から離間した位置に剥離防止膜を設けてなり、
前記剥離防止膜は導電性材料からなり、
前記信号電極から前記剥離防止膜までの距離は80μm以上であり、
前記基板の下側に第2の接地電極を備え、
前記信号電極は、帯状に形成され、
前記信号電極の中央部と前記第2の接地電極は、前記光導波路と平面的に重なって設けられ、マイクロストリップ構造を形成し、
前記信号電極に隣り合って前記信号電極の両側には、前記剥離防止膜が設けられ、
前記信号電極の両側に設けられた前記剥離防止膜の少なくとも一方は、前記接地電極を兼ね、
前記信号電極の両側に設けられた前記剥離防止膜または前記接地電極は、前記第2の接地電極と電気的に接続され、かつ前記信号電極とコプレーナ型構造を形成していることを特徴とする光デバイス。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信伝送技術においては、さらなる高速化、高周波化、高集積化、多値変調化等の要求が高まっており、この光通信伝送技術に用いられる光デバイスに対しても、高速化、高周波化、高集積化、多値変調化等に適用することが求められている。
従来、光デバイスにおいては、高周波化や高集積化に伴う小型化に対応するために、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LiNbO
3)等の上面に信号電極に隣接して上部接地電極を形成したコプレーナ型構造(以下、CPW構造と称することもある)の光デバイスが提案されている(特許文献3)。
CPW構造よりも変調効率を高めるため、LiNbO
3や樹脂等を用いた電気光学基板を薄板化し、この基板の上面に信号電極を、下面に接地電極を、それぞれ形成することにより、電気光学基板を信号電極及び接地電極により上下方向から挟んだマイクロストリップ構造(以下、MSL構造と称することもある)の光デバイスが提案されている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
このCPW構造で特性を安定させるために、電気光学基板の上面に信号電極に隣接して上部接地電極を形成してCPW構造とするとともに、この電気光学基板の下面に下部接地電極を形成することにより、マイクロ波と光波との速度整合やマイクロ波のインピーダンス整合を実現し、高速動作可能とした光デバイスも提案されている(特許文献3)。
【0004】
さらに、光導波路を一対の電極層により上下方向から挟み込む構造の光デバイスを複数形成したウエハを個々のチップ(光デバイス)に切断する際の切断位置に電極層が架からないようにした構造の光デバイスも提案されている(特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光デバイスを高周波化や集積化する場合には、光デバイスの接地電極と、この光デバイスを固定する筐体や中継基板、終端抵抗等の外部回路の接地電極との間の電位を同一の電位に保持することが重要になる。
ところで、上述した特許文献1,2のMSL構造の光デバイスにおいては、基板に埋め込まれている接地電極と、筺体等の外部の接地電極とを同一の電位に保持することが必要となる。そこで、埋め込まれている接地電極と外部の接地電極とをビアにより電気的に接続したり、あるいは、基板の一部を加工して接地電極を露出させ、この接地電極をワイヤボンディングにより外部の接地電極と電気的に接続することが考えられるが、新たにビアを形成するためのスペースを確保したり、接地電極を露出させるための加工が新たに必要になるという問題点があった。
【0007】
また、集積化等によりチップサイズが大きくなると、チップの中央付近の接地が弱くなるため、電気信号の透過特性や反射特性に影響が生じる。さらに、電極間の混信なども生じ特性劣化につながる。そこで、接地電極の接続を検討する場合にも、ビアを空ける位置が他の電極や導波路によりスペースが限られてくるため、必要な箇所にもうけることができない。
裏面電極と筺体など外部接地とを直接接続することも考えられるが、光導波路への変調効率を高めるため基板を薄くしているため、基板下に補強基板を設ける必要があり、筺体と接地電極を直接接続することは困難である。
【0008】
また、上述した特許文献3のCPW構造の光デバイスにおいては、基板の上面に信号電極に隣接して接地電極を設けているので、筺体等の外部との電気的接続は容易であるが、基板の上面に信号電極及び接地電極を含めて設計する必要があり、設計や製造条件が難しいという問題点があった。
さらに、上述した特許文献4の切断位置に電極層が架からないようにした構造の光デバイスにおいては、下部電極の切断位置を開口することで、切断は容易となるが、基板自体が薄いことから、切断やチップハンドリング時によるチッピングが起点となって、基板に割れが生じたり、あるいは、基板上に形成された膜が剥離し易くなったり等の問題点があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、光通信伝送技術の高速化、高周波化、高集積化、多値変調化に適用することができ、しかも、基板の割れや膜の剥離が生じる虞のない光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、電気光学効果を有する基板内に光導波路を備え、前記基板上かつ前記光導波路の上方に前記光導波路を伝搬する光波に電界を与える信号電極を備え、前記基板上かつ前記信号電極から離間した位置に接地電極を備えてなる光デバイスの、基板上の外周部の少なくとも一部、かつ信号電極から離間した位置に剥離防止膜を設けることとすれば、光通信伝送技術の高速化、高周波化、高集積化、多値変調化に適用することができ、しかも、基板の割れや膜の剥離が生じる虞がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の光デバイスは、電気光学効果を有する基板内に光導波路を備え、前記基板上かつ前記光導波路の上方に前記光導波路を伝搬する光波に電界を与える信号電極を備え、前記基板上かつ前記信号電極から離間した位置に接地電極を備えてなる光デバイスであって、前記基板上の外周部
の一部、かつ前記信号電極から離間した位置に剥離防止膜を設けてなり、前記剥離防止膜は導電性材料からなり
、前記信号電極から前記剥離防止膜までの距離は80μm以上であ
り、前記基板の下側に第2の接地電極を備え、前記信号電極は、帯状に形成され、前記信号電極の中央部と前記第2の接地電極は、前記光導波路と平面的に重なって設けられ、マイクロストリップ構造を形成し、前記信号電極に隣り合って前記信号電極の両側には、前記剥離防止膜が設けられ、前記信号電極の両側に設けられた前記剥離防止膜の少なくとも一方は、前記接地電極を兼ね、前記信号電極の両側に設けられた前記剥離防止膜または前記接地電極は、前記第2の接地電極と電気的に接続され、かつ前記信号電極とコプレーナ型構造を形成していることを特徴とする。
【0012】
前記剥離防止膜は、前記基板の表面の外周縁部から離間して設けられていることが好ましい。
前記剥離防止膜は、前記信号電極と略平行に設けられていることが好ましい。
前記基板の下側に第2の接地電極を備え、前記剥離防止膜と前記第2の接地電極とは電気的に接続されていることが好ましい。
前記基板を厚み方向に貫通し、導電性材料からなるビアを有し、前記ビアは、前記剥離防止膜と前記第2の接地電極とを電気的に接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光デバイスによれば、電気光学効果を有する基板内に光導波路を備え、この基板上かつ光導波路の上方に信号電極を、この基板上かつ信号電極から離間した位置に接地電極を、それぞれ備えてなる光デバイスのうち基板上の外周部の少なくとも一部、かつ信号電極から離間した位置に剥離防止膜を設けたので、この剥離防止膜が基板の割れや膜の剥離を防止することができる。したがって、光通信伝送技術の高速化、高周波化、高集積化、多値変調化に容易に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の光デバイスを実施するための形態について説明する。
本発明では、CPW−MSL構造を導入した光デバイスを例に取り説明する。
なお、以下の実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の光デバイスを示す平面図、
図2は、
図1のA−A線に沿う断面図である。
図において、符号1は本実施形態の光デバイスであり、シリコン基板等の基板2の上面全面に裏面接地電極(第2の接地電極)3が設けられ、この裏面接地電極3上に電気光学効果を有する基板(以下、EO基板とも称する)4が設けられ、このEO基板4内に、このEO基板4の上面に平行に光導波路5が形成されている。
【0017】
これにより、EO基板4のうち光導波路5の上側の部分は上部クラッド層としての機能を、また、光導波路5の下側の部分は下部クラッド層としての機能を有しており、これらにより、下部クラッド層、光導波路5及び上部クラッド層からなる光導波路素子としての機能を有するようになっている。
そして、このEO基板4上かつ光導波路5の上方に該光導波路5を伝搬する光波に電界を与える信号電極6が設けられ、このEO基板4上かつ信号電極6から離間した位置に、信号電極6とほぼ平行に導電性材料からなる剥離防止膜7が設けられている。
【0018】
この剥離防止膜7は、EO基板4の表面の外周縁部から僅かに離間した位置でかつ、インピーダンスやマイクロ波実効屈折率等、信号電極6の特性に影響しない位置(EO基板4の端部)に設けることと、導電性材料により構成されていることの2点により、上面接地電極(接地電極)を兼ね備えたものとなっている。
この導電性材料としては、金及びその合金、銀及びその合金、白金及びその合金、銅、アルミニウム等の導電性金属が好適に用いられる。
そして、この剥離防止膜7すなわち上面接地電極は、EO基板4を厚み方向に貫通する導電性材料からなるビア8により裏面接地電極3に電気的に接続されている。
【0019】
剥離防止膜は、切断時に巻き込まれないよう、EO基板4の表面の外周部から僅かに離間した位置が設ける。離間の距離としては、切断時の誤差などを考慮して、200μm以上、また、切断やチップハンドリング時によるチッピングが起点などの剥離抑制効果のため、500μm以下が好ましい。
一方、剥離防止膜が信号電極6のインピーダンスやマイクロ波実効屈折率など特性に影響しない位置に設ける。
【0020】
切断箇所のほぼ全域に設けることで、チッピングが起点を抑えることができる。よって、切断などの製造上や、電気特性などの影響がない部分は、剥離防止膜を設けることが好ましい。
【0021】
剥離防止膜と下部接地電極とビアで接続することにより、電気的な効果と、機械的な強度が増すことにより剥離防止効果が向上する。
剥離防止の目的だけで、ビアにより下部電極と接続しなくてもよい。
【0022】
このEO基板4の厚みは、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
ここで、EO基板4の厚みを100μm以下とした理由は、EO基板4の厚みが100μmを超えると、このEO基板4の内部にある光導波路5への変調効率が低下し、高周波化や高集積化に対応することが困難となるので好ましくないからである。
【0023】
このEO基板4を構成する電気光学効果を有する材料としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)、チタン酸リチウム(LiTiO
3)、PLZT(PbZrO
3・PbTiO
3:La)等の無機系強誘電体材料、あるいは電気光学効果を示す有機分子(有機EO分子)を分散したポリマー材料(電気光学ポリマー)が好適に用いられる。
【0024】
上記電気光学ポリマーとしては、少なくとも1種類以上の有機ポリマーまたは無機ポリマー、または、有機ポリマー及び無機ポリマーを複合した有機無機複合材料等の各種ポリマーに対して、少なくとも1種類以上の有機EO色素を分散もしくは導入した材料を用いる。この電気光学ポリマーを導波路形成層の少なくとも一部に用いることで電気光学効果を発現する導波路層が形成される。
【0025】
前記ポリマー材料としては、光導波路を伝搬する光に対して高い透過率を有するものであればよく、特に限定しないが、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリキノリン系樹脂、ポリキノキサンリン系樹脂、ポリベンゾオキサゾール系樹脂、ポリベンゾイミダゾール系樹脂等が挙げられる。
【0026】
また、前記有機EO分子としては、公知のものであれば特に限定されないが、1分子中に、電子供与性を有する原子団(以下、ドナー)と、電子吸引性を有する原子団(以下、アクセプター)を両方有しており、ドナーとアクセプターの間に、π電子共役系の原子団を配している構造を有した分子が望ましい。
【0027】
「ドナー」は、電子供与性の置換基(電子供与性置換基)のみであってもよく、電子供与性置換基が、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環などのπ電子系に結合した原子団であってもよい。
【0028】
電子供与性置換基としては、電子供与性を有するものであれば特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、などが好ましい。
【0029】
「アクセプター」は、電子吸引性の置換基(電子吸引性置換基)のみであってもよく、電子供与性置換基が、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環などのπ電子系に結合した原子団であってもよい。
【0030】
電子吸引性置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン置換されたアルキル基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、などが好ましい。
「π電子共役系の原子団」としては、脂肪族不飽和結合、芳香環、ヘテロ芳香環などが好ましい。
【0031】
具体的には、例えば、Disperse Red類、Disperse Orenge類、スチルベン化合物などが挙げられる。
【0032】
「Disperse Red類」としては、Disperse Red1、Disperse Red11、Disperse Red13、Disperse Red17、Disperse Red19等、市販のものを例示することができる。
【0033】
「Disperse Orenge類」としては、Disperse Orange1、Disperse Orange3、Disperse Orange11、Disperse Orange25、Disperse Orange37等、市販のものを例示することができる。
【0034】
「スチルベン」は、示性式がC
6H
5CH=CHC
6H
5と表される有機化合物である。「C
6H
5」フェニル基を表す。また、ここでは、スチルベンは主に熱的に安定なトランス体を指す。
【0035】
「スチルベン化合物」は、スチルベン骨格が有する2つの芳香環の一方に上述のドナー、他方に上述のアクセプターが結合した化合物である。「スチルベン骨格」としては、スチルベンが有する2つのフェニル基の一方が、他の芳香環、チオールやフランなどの複素芳香環に置換していてもよい。
【0036】
スチルベン系化合物としては、下記式(1−1)〜(1−7)の化合物を例示することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の光デバイス1によれば、このEO基板4上かつ光導波路5の上方に信号電極6を設け、このEO基板4上かつ信号電極6から離間した位置に、信号電極6とほぼ平行に剥離防止膜7を設け、これら剥離防止膜7を導電性材料により構成することで上面接地電極を兼ね備えたものとしたので、これら剥離防止膜7により基板の割れや膜の剥離を防止することができ、しかも、1つの剥離防止膜7で上面接地電極を兼ね備えたものとすることができる。したがって、光通信伝送技術の高速化、高周波化、高集積化、多値変調化に容易に適用することができる。
【0039】
なお、本実施形態では、EO基板4上に直線状の光導波路5を設けた構成としたが、光導波路5の形状は、光デバイス1に求められる光動作及び機能に合わせて適宜変更可能である。たとえば、Y分岐を有する光導波路であってもよく、方向性結合器型の分岐形状であってもよく、直線状の光導波路と分岐を組み合せたマッハツェンダー干渉計型の形状であってもよく、これらの形状を組み合わせた形状であってもよい。
また、信号電極6及び上面接地電極を兼ね備えた剥離防止膜7の形状は、要求される光導波路の形状に合わせて様々に変更可能である。
【0040】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態の光デバイス11を示す平面図であり、この光デバイス11は、第1の実施形態の光デバイス1が筐体12の底部に接着剤等により固定され、この光デバイス1の長手方向に沿う一方の端部に、光デバイス1と筐体12とを接続するコネクタ等を有する中継基板13が設けられ、この光デバイス1の信号電極6は金属ワイヤ14により中継基板13にボンディングされ、一方、剥離防止膜7は、金属ワイヤ14により中継基板13、筐体12の底部のいずれかにボンディングされている。
【0041】
本実施形態の光デバイス11においても、上述した光デバイス1と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、光デバイス1の信号電極6を金属ワイヤ14により中継基板13にボンディングし、剥離防止膜7を金属ワイヤ14により中継基板13、筐体12の底部のいずれかにボンディングしたので、光デバイス1の接地電位を定めることができる。
なお、本実施形態の光デバイス11では、ボンディングに金属ワイヤ14を用いたが、金属ワイヤ14以外に、金属リボン、導電性接着剤等を用いてもよい。
【0042】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態の光デバイス21を示す平面図であり、この光デバイス21は、シリコン基板等の基板の上面全面に裏面接地電極(第2の接地電極)を介して電気光学効果を有する基板(以下、EO基板とも称する)4が設けられ、このEO基板4内に、このEO基板4の上面に平行にマッハツェンダー型光導波路22が設けられ、このマッハツェンダー型光導波路22の一方の分岐光導波路22aの上方に該分岐光導波路22aを伝搬する光波に電界を与える信号電極23が設けられ、このEO基板4上かつ信号電極23から離間した位置に、導電性材料からなる剥離防止膜24が設けられている。
【0043】
一方、マッハツェンダー型光導波路22の他方の分岐光導波路22bの上方にも該分岐光導波路22bを伝搬する光波に電界を与える信号電極23が設けられ、このEO基板4上かつ信号電極23から離間した位置に、形状の異なる導電性材料からなる剥離防止膜24、25、26が設けられている。これら剥離防止膜24、25、26、…は、EO基板4の表面の外周縁部から僅かに離間した位置、すなわち、インピーダンスやマイクロ波実効屈折率等、信号電極23の特性に影響しない位置(EO基板4の端部)に設けることと、導電性材料により構成されていることの2点により、上面接地電極(接地電極)を兼ね備えたものとなっている。
【0044】
そして、EO基板4上かつマッハツェンダー型光導波路22の分岐光導波路22a、22bの間の上方には、T字型の上面接地電極(接地電極)27が設けられ、この上面接地電極27は、金属ワイヤ14により剥離防止膜25に、金属ワイヤ14により剥離防止膜26に、それぞれボンディングされている。
【0045】
本実施形態の光デバイス21においても、上述した光デバイス1、11と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、分岐光導波路22aを信号S1にて変調し、分岐光導波路22bを信号S1と異なる信号S2にて変調する場合においても、分岐光導波路22aと分岐光導波路22bとの間に上面接地電極27を設けることにより、混信を抑制することができる。
また、上面接地電極27を裏面接地電極と電気的に接続するような場合が生じた場合においても、この上面接地電極27を金属ワイヤ14により剥離防止膜25、26にそれぞれボンディングすることで、ビアの位置を形成する際の制限を緩和することができる。
【0046】
なお、本実施形態の光デバイス21では、分岐光導波路22a、22bの形状に合わせて上面接地電極27の形状をT字型としたが、T字型に限定されることなく、マッハツェンダー型光導波路22の形状及び位置や分岐光導波路22a、22bの形状及び位置、マッハツェンダー型光導波路22と上面接地電極27との位置関係、上面接地電極27と剥離防止膜24、25、26、…との位置関係等に合わせて様々に変形可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
上述した光デバイス1について、信号電極と剥離防止膜との間隔の影響を検証するため、マイクロ波実効屈折率nmを計算する。基板2の電気光学効果を有する材料としてEOポリマーである、Disperse Red1を分散したポリメチルメタクリレート(以下、ポリマーと略記する)とニオブ酸リチウム(LiNbO
3:以下、LNと略記する)とを用い、これらのポリマー及びLNそれぞれの膜厚を5μm、25μmの2種類とした計4種類の条件にて、信号電極6と上面接地電極を兼ね備えた剥離防止膜7との間隔、すなわち上部電極間ギャップを10μmから100μmまで10μm間隔で変化させた10種類、合計40種類の条件にて計算した。
【0049】
図5は、4種類の測定用光デバイスそれぞれにおける上部電極間ギャップとnm変化率との関係を示す図である。
図5から、上部電極間ギャップが狭くなるにつれ、nmが変化していることがわかる。つまり、上部信号電極に対し、剥離防止膜が影響を及ぼすため、変調効率やインピーダンスなどの電気特性に対し影響することになる。よって、この図から、間隔が80μm以上にすることで、マイクロ波実効屈折率nmがEO基板の誘電率に影響されないことが分かった。
【0050】
尚、本願発明はこれまでの実施形態に限定されることはない。
例えば、
図2の構成において信号電極と剥離防止膜の上に信号電極や剥離防止膜を保護する膜を設ける構造としてもよい。こうすることで更に剥離防止の効果を高めることができる。
膜の材料としては特に限定されないが、例えばポリジメチルシロキサンなどのシリコーン樹脂やポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂などの汎用的な樹脂を用いることができる。また熱による膨張を考慮しクラッド層と同じ材料で膜を形成してもよい。