(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075392
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】成形体の製造方法及びガラス成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 18/02 20060101AFI20170130BHJP
C03B 11/00 20060101ALI20170130BHJP
C03B 11/08 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
C03B18/02
C03B11/00 E
C03B11/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-557463(P2014-557463)
(86)(22)【出願日】2014年1月14日
(86)【国際出願番号】JP2014050469
(87)【国際公開番号】WO2014112485
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2016年7月19日
(31)【優先権主張番号】特願2013-6504(P2013-6504)
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊賀 元一
(72)【発明者】
【氏名】中野 正徳
【審査官】
延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−099127(JP,A)
【文献】
特開昭58−223621(JP,A)
【文献】
特表平4−506053(JP,A)
【文献】
特開昭63−211363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 18/00 − 18/22
C03B 11/00
C03B 11/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物質よりも比重の軽い溶融物質を該液状物質上に浮かせ、該溶融物質に接触する接触部に囲まれた非接触部を有する型を前記溶融物質に押し付け、前記溶融物質を冷却することで成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた非接触部を有する型を前記溶融ガラスに押し付け、前記溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
【請求項3】
溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた中空部を有する型を前記溶融ガラスに押し付け、前記溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
【請求項4】
溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、側壁に囲繞された開口部を一端側に有し他端側が閉塞された型を前記側壁が前記溶融ガラスと接するように前記溶融ガラスに押し付け、前記溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
【請求項5】
ガラスの粘度が107〜109Pa・sである範囲内において、前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
【請求項6】
前記型の自重によって前記型を前記溶融ガラスに押し付けるか、若しくは、該自重に加えて押付力を付与することで前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
【請求項7】
溶融ガラスを溶融金属上に浮かせてガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、を有するガラス成形体の製造方法であって、
前記成形工程において、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた中空部を有する型を前記溶融ガラスに押し付けることにより、成形されたガラスリボンを得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
【請求項8】
溶融ガラスを溶融金属上に浮かせてガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、を有するガラス成形体の製造方法であって、
前記成形工程において、側壁に囲繞された開口部を一端側に有し他端側が閉塞された型を前記側壁が前記溶融ガラスと接するように前記溶融ガラスに押し付けることにより、成形されたガラスリボンを得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
【請求項9】
ガラスの粘度が107〜109Pa・sである範囲内において、前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする請求項7又は8に記載のガラス成形体の製造方法。
【請求項10】
前記型の自重によって前記型を前記溶融ガラスに押し付けるか、若しくは、該自重に加えて押付力を付与することで前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法及びガラス成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、タブレットPC等のディスプレイ装置が普及している。ディスプレイ装置の前面には、化学強化ガラスがカバーガラスとして取り付けられており、液晶ディプレイ(LCD)を保護する機能とともに、意匠性を高める機能を有している。このカバーガラスとしては、これまで平坦な板ガラスが用いられているが、意匠性を高めることを考慮すると、平坦な板ガラスの一部、例えば、平面部を囲う外縁部を曲面状に折り曲げて、カバーガラスが筐体の一部をなすように成形することなどが考えられる。
【0003】
板ガラスを成形する方法としては、プレス成形が一般的に知られている。特許文献1には、加熱炉にて軟化点近くまで加熱された板ガラスを搬送ローラによって水平状態のまま上型と下型との間の成形部まで移送し、上型と下型の間で曲げ成形するようにした成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開昭61−91025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上型と下型の間で板ガラスを曲げ成形する場合、板ガラスが上型と下型に接触するため上型と下型の凹凸が板ガラスに転写し、平滑な表面を得ることができないという課題があった。
【0006】
上型と下型の凹凸を抑制するためには、上型と下型のメンテナンスが必要であり、メンテナンスコストが嵩むという課題があった。また、このプレス成形されたガラス表面を平滑にするためには、プレス成形後の板ガラスを研磨等により表面処理する必要があり、生産性が悪いという課題があった。なお、この上記課題は、ガラスに限らず、樹脂材料等においても同様に発生し得るものである。
【0007】
そこで、本発明は、型の表面形状に影響を受けない成形体を製造する成形体の製造方法及びガラス成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を提供するものである。
(1) 液状物質よりも比重の軽い溶融物質を該液状物質上に浮かせ、該溶融物質に接触する接触部に囲まれた非接触部を有する型を前記溶融物質に押し付け、前記溶融物質を冷却することで成形体を得ることを特徴とする成形体の製造方法。
(2) 溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた非接触部を有する型を前記溶融ガラスに押し付け、前記溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
(3) 溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた中空部を有する型を前記溶融ガラスに押し付け、前記溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
(4) 溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、側壁に囲繞された開口部を一端側に有し他端側が閉塞された型を前記側壁が前記溶融ガラスと接するように前記溶融ガラスに押し付け、前記溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
(5) ガラスの粘度が10
7〜10
9Pa・sである範囲内において、前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のガラス成形体の製造方法。
(6) 600℃〜800℃の温度範囲内において、前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載のガラス成形体の製造方法。
(7) 前記型の自重によって前記型を前記溶融ガラスに押し付けるか、若しくは、該自重に加えて押付力を付与することで前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする(2)〜(6)のいずれかに記載のガラス成形体の製造方法。
(8) 溶融ガラスを溶融金属上に浮かせてガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、を有するガラス成形体の製造方法であって、
前記成形工程において、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた中空部を有する型を前記溶融ガラスに押し付けることにより、成形されたガラスリボンを得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
(9) 溶融ガラスを溶融金属上に浮かせてガラスリボンを成形する成形工程と、前記ガラスリボンを徐冷する徐冷工程と、を有するガラス成形体の製造方法であって、
前記成形工程において、側壁に囲繞された開口部を一端側に有し他端側が閉塞された型を前記側壁が前記溶融ガラスと接するように前記溶融ガラスに押し付けることにより、成形されたガラスリボンを得ることを特徴とするガラス成形体の製造方法。
(10) ガラスの粘度が10
7〜10
9Pa・sである範囲内において、前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする(8)又は(9)に記載のガラス成形体の製造方法。
(11) 600℃〜800℃の温度範囲内において、前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載のガラス成形体の製造方法。
(12) 前記型の自重によって前記型を前記溶融ガラスに押し付けるか、若しくは、該自重に加えて押付力を付与することで前記型を前記溶融ガラスに押し付けることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載のガラス成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
上記(1)に記載の成形体の製造方法によれば、成形中、溶融物質のボトム面は液状物質に接し、トップ面は型の非接触部に対応して成形雰囲気にさらされており、製品としての使用部分は両面ともに型と接触しない。そのため、上型と下型の表面形状に影響されず平滑な表面形状を有する成形体を得ることができる。また、上型と下型のメンテナンスも不要であり、プレス成形後の成形体の表面処理を省略することもでき、生産性が高く、製造コストを低減させることができる。
【0010】
上記(2)〜(4)に記載のガラス成形体の製造方法によれば、成形中、溶融ガラスのボトム面は溶融金属に接し、トップ面は型の非接触部、中空部又は開口部に対応して成形雰囲気にさらされており、製品としての使用部分は両面ともに型と接触しない。そのため、上型と下型の表面形状に影響されず平滑な表面形状を有するガラス成形体を得ることができる。また、上型と下型のメンテナンスも不要であり、プレス成形後のガラス成形体の表面処理を省略することもでき、生産性が高く、製造コストを低減させることができる。
【0011】
また、上記(8)及び(9)に記載のガラス成形体の製造方法によれば、上記(3)及び(4)に記載の効果に加えて、オンライン上でガラス成形体を成形することで、一度冷却したガラスを再加熱する必要はなく、生産工程を大幅に簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)〜(e)は本発明の一実施形態のガラス成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。
【
図2】
図2(A),(B)は本発明の一実施形態のガラス成形体の製造方法の各工程を説明する説明図である。
【
図3】型の一実施形態である中空型の斜視図である。
【
図4】ガラス製造装置のフロートバスに設けられた押圧装置を模式的に示す模式図である。
【
図6】実施例で製造されたガラス成形体の写真を示す図である。
【
図7】型の他の実施形態である有底型の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
先ず、本発明の成形体の製造方法の一実施形態としてガラス成形体の製造方法について図面に基づいて説明する。本実施形態のガラス成形体の製造方法は、溶融金属上に浮かせた溶融ガラスに対し、該溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた非接触部を有する型を該溶融ガラスに押し付け、該溶融ガラスを冷却することでガラス成形体を製造するものである。
図1は、本発明の一実施形態のガラス成形体の製造方法の各工程を説明する説明図であり、(a)は溶融金属浴内の溶融金属上に溶融ガラスを浮かせた状態を示す図であり、(b)は溶融ガラス上に中空型を配置した状態を示す図であり、(c)は中空型を押圧した状態を示す図であり、(d)は押圧中にガラスが変形する状態を示す図であり、(e)は溶融金属浴から中空型のみを取り出した状態を示す図である。
【0014】
図1(a)に示すように、先ず、温度制御が可能な加温装置内の溶融金属浴10を加温して溶融錫等の溶融金属11上に溶融状態のガラス20(以下、溶融ガラスとも呼ぶ。)を浮かせる。溶融金属浴内温度は、軟化点近傍、例えば、800℃に設定される。
【0015】
続いて、
図1(b)に示すように、溶融金属11上の溶融ガラス20上に中空型12を配置する。中空型12は、成形温度において耐熱性を有する材料、例えば、金属、セラミック、カーボン等から構成される。本実施形態では、
図3に示す円筒状の中空型を例示して説明する。中空型12は、溶融ガラス20と接触する環状部12aの内部が円柱状にくりぬかれた中空部12bとなっており、環状部12a以外の領域が溶融ガラス20の変形の前後において、溶融ガラス20と接触しないように構成されている。中空部12bは、例えば、円形状、楕円形状、三角形状、矩形形状等、成形するガラスの形状に対応するようにその形状が決められており、中空部12bに対応するガラス部分(以下で説明する、成形領域21、境界領域23)が製品としてのガラス成形体25を構成することとなる。
【0016】
続いて、
図1(c)に示すように、溶融ガラス20上の中空型12を溶融金属11に向けて下方に押圧する。溶融ガラス20の上面が溶融金属11に埋没しないように押圧することで、溶融ガラス20は、溶融金属11中に押し込まれる。押圧力は、溶融ガラスの厚さ、粘度、成形するガラス成形体の形状に応じて設定され、中空型12の自重により押圧するように中空型12の重さを適宜設定してもよく、中空型12の自重に加えて、押圧力を付与してもよい。
図1(c)の白抜きの矢印は押圧力を示し、黒い矢印は溶融ガラス20の深さに応じて溶融ガラス20の下面に作用する浮力を示している。押圧中、溶融金属浴内温度は、例えば、800℃から600℃へと降下させる。また、このときの溶融ガラス20の粘度は、10
7〜10
9Pa・sの範囲内であることが好ましい。
【0017】
図1(c)の状態から所定時間が経過すると、
図1(d)に示すように、中空型12の中空部12bに対応する溶融ガラス20の下面に作用する浮力により、溶融ガラス20の成形領域21及び環状部12aの外側に位置するガラスが上方に凸となるように変形する。最終的に、中空型12の環状部12aに対応する接触領域22と成形領域21の境界領域23が凸状に湾曲し、中空部12b中央に対応する成形領域21は平坦となる。この境界領域23の湾曲形状は、ガラスの粘性、板厚に応じて形状が異なり、例えば、ガラスの粘性が低い状態で、且つ、ガラスの板厚が薄い場合、境界領域23は環状部12aに沿って鋭く湾曲し、反対に、ガラスの粘性が高い状態で、且つ、ガラスの板厚が厚い場合、境界領域23は環状部12aに沿って緩やかに湾曲する。
【0018】
そして、ガラスの温度が降下して固化した状態で、
図1(e)に示すように、中空型12を取り出すことで、中空型12の環状部12aに対応する接触領域22が窪み、接触領域22から凸状に湾曲した境界領域23を経て中空部12b中央に対応する成形領域21が平坦となった曲面ガラスであるガラス成形体25が得られる。なお、中空型12は、環状部12aの表面粗さを粗くして溶融ガラス20との接触面積を大きくすることで、中空型12とともにガラス成形体25を取り出すこともできる。ガラス成形体25は、冷却後、接触領域22が切り取られて、最終的な形状となる。
【0019】
ガラス成形体25は、成形後、化学強化処理が行われてもよい。化学強化は、例えば、380℃〜450℃の硝酸カリウム(KNO
3)溶融塩にガラスを0.1〜20hr浸漬させることで行われるが、硝酸カリウム(KNO
3)溶融塩の温度や、浸漬時間、溶融塩等を変更することで、化学強化の入り方を調整することができる。化学強化することでガラス表面には圧縮応力層が形成され、内部に引張応力層が形成される。
【0020】
このようにして製造されたガラス成形体25は、ボトム面が溶融金属11に接し、トップ面は中空型12の中空部12bに対応して成形雰囲気にさらされており、製品としての使用部分である成形領域21及び境界領域23は両面ともに中空型12と接触しない。そのため、従来のように、上型と下型の表面形状に影響されず平滑な表面形状を有するガラス成形体25を得ることができる。また、従来行っていた上型と下型のメンテナンスも不要となり、プレス成形後のガラス成形体の表面処理を省略することもでき、生産性が高く、製造コストを低減させることができる。
【0021】
また、上記実施形態で説明したガラス成形の成形速度と押し込み速度を制御することで、より高さ方向に大きく変形させることもできる。例えば、
図2(A)(d1)に示すように、変形した溶融ガラス20の縁から溶融金属11が入ってこないように、中空型12をゆっくり徐々に押し下げることで(
図2(B)(d2))、より高さのあるガラス成形体25を形成することができる。中空型12によって沈められた溶融金属11の(体積部分の)重量が、中空型12に作用する反力と等しく、この反力が成形圧力となるため、溶融ガラス20の面積を十分大きくしておくことで溶融ガラス20全体が押し下げられることが抑制される。高粘性のガラスの成形速度は遅いので、粘性が高くなればなるほど押し下げ速度も遅くなる。
【0022】
このガラス成形体25の製造に用いられる溶融ガラス20は、フロート法、フュージョン法等の製造方法で製造されたガラス板を加温して再度、溶融状態にしてもよく、ガラス原料を溶解した溶融ガラスを用いてもよい。また、フロート法に用いられるガラス製造装置内に組み込むことで、オンライン上で成形を行うこともできる。
【0023】
ガラス20としては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラスなどが使用され得る。
【0024】
アルミノシリケートガラスとしては、例えば以下の組成のガラスが使用される。
(i)モル%で表示した組成で、SiO
2を50〜80%、Al
2O
3を2〜25%、Li
2Oを0〜10%、Na
2Oを0〜18%、K
2Oを0〜10%、MgOを0〜15%、CaOを0〜5%およびZrO
2を0〜5%を含むガラス。ここで、たとえば「K
2Oを0〜10%含む」とはK
2Oは必須ではないが10%までの範囲で、かつ、本発明の目的を損なわない範囲で含んでもよい、の意である。
(ii)モル%で表示した組成が、SiO
2を50〜74%、Al
2O
3を1〜10%、Na
2Oを6〜14%、K
2Oを3〜11%、MgOを2〜15%、CaOを0〜6%およびZrO
2を0〜5%含有し、SiO
2およびAl
2O
3の含有量の合計が75%以下、Na
2OおよびK
2Oの含有量の合計が12〜25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7〜15%であるガラス。
(iii)モル%で表示した組成が、SiO
2を68〜80%、Al
2O
3を4〜10%、Na
2Oを5〜15%、K
2Oを0〜1%、MgOを4〜15%およびZrO
2を0〜1%含有するガラス。
(iv)モル%で表示した組成が、SiO
2を67〜75%、Al
2O
3を0〜4%、Na
2Oを7〜15%、K
2Oを1〜9%、MgOを6〜14%およびZrO
2を0〜1.5%含有し、SiO
2およびAl
2O
3の含有量の合計が71〜75%、Na
2OおよびK
2Oの含有量の合計が12〜20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス。
【0025】
また、ガラス20は、板厚が1.5mm以下が好ましく、0.3〜1.1mmがより好ましい。
【0026】
図4、5は、オンライン上で押圧成形を行う際のガラス製造装置の例を示す図である。
ガラス製造装置30は、ガラスの原料を溶解する溶解炉(図示せず)と、溶解された溶融ガラスを溶融錫上に浮かせて平坦なガラスリボンGを成形するフロートバス31と、ガラスリボンGをフロートバス31から引き出した後に、ガラスリボンGの温度を徐々に下げることで徐冷する徐冷炉33と、を備えて構成される。
【0027】
溶融錫が湛えられたフロートバス31には、押圧装置40が設けられている。フロートバス31では、例えば、電気ヒータHにより、その出力が制御された熱量をフロートバス31内の必要位置に供給して、搬送されるガラスリボンGをゆっくり冷却しながら所望の大きさ及び板厚に成形して徐冷炉33へ排出している。
【0028】
押圧装置40は、このフロートバス31内のガラスの粘度が10
7〜10
9Pa・sである範囲内となる領域にガラスリボンGのトップ面と対向するように配置される。押圧装置40には、フロートバス31の側壁31aから延びる少なくとも2本の支持軸42が上流側と下流側に所定の間隔をあけて回転可能に配置されており、この2本の支持軸42に巻き掛けられた無端ベルト43上に、格子状の接触部により形成される複数の中空部44が幅方向及び搬送方向に並んだ押圧型45が複数設けられている。このように構成された押圧装置40では、2本の支持軸42が回転することで、無端ベルト43が回動し、押圧型45が所定の押圧力で溶融ガラスを押圧し、溶融ガラスの搬送とともに押圧型45が移動することで、溶融ガラスが押圧されながら冷却される。これにより、中空型12の環状部12aに対応する接触領域22と成形領域21の境界領域23が凸状に湾曲し、中空部12b中央に対応する成形領域21は平坦となったガラスリボンGが得られ、徐冷炉33から排出されたガラスリボンGを切断することで複数のガラス成形体25が得られる。
【0029】
このように、オンライン上でガラス成形体25を成形することで、一度冷却したガラスを再加熱する必要はなく、生産工程を大幅に簡略化することができる。また、製品となる成形領域21及び境界領域23が、接触領域22よりも上方に位置するので、ガラスリボンGを搬送する搬送ローラ34が成形領域21及び境界領域23に接触することはなく、搬送ローラ34を安価に構成することができ、ロールの代わりにネット状の搬送部材を用いることもできる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例について説明する。
先ず、縦:約30mm、横:約60mm、板厚:約0.7mmのソーダライムガラスを準備し、溶融錫が湛えられた溶融金属浴内の溶融錫上に配置した。このときの溶融金属浴内温度は約800℃であった。
【0031】
中空型として、
図3に示す円筒形状のカーボン製の中空型を準備した。この中空型は、内径:約40mm、外径:約50mm、重さ:約22gであった。
【0032】
そして、窒素雰囲気下で、この中空型を溶融錫上に配置したソーダライムガラスに押圧して、約20℃/minの冷却速度で約600℃まで冷却し、約600℃になったときに、中空型及びソーダライムガラスを取り出した。
【0033】
図6は、得られたガラス成形体の写真を示す図である。このように、ガラス成形体は、中空型の中空部に対応する成形領域を平坦に、接触領域と成形領域の境界領域を湾曲した形状に成形することができ、これらの成形領域及び境界領域を中空型に接触させずに形成することができた。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態のガラス成形体の製造方法によれば、溶融金属上に浮かせた溶融ガラス20に対し、該溶融ガラス20に接触する環状部12aに囲まれた中空部12bを有する中空型12を押し付け、該溶融ガラス20を冷却することでガラス成形体25が得られるので、ガラス成形体25となる該溶融ガラス20のボトム面は溶融金属11に接し、トップ面は中空型12の中空部12bに対応して成形雰囲気にさらされており、製品としての使用部分である成形領域21及び境界領域23は両面ともに中空型12と接触しない。そのため、上型と下型の表面形状に影響されず平滑な表面形状を有するガラス成形体25を得ることができる。また、上型と下型のメンテナンスも不要であり、プレス成形後のガラス成形体25の表面処理を省略することもでき、生産性が高く、製造コストを低減させることができる。
【0035】
また、溶融ガラス20のガラスの粘度が10
7〜10
9Pa・sである範囲内において、中空型12を溶融ガラスに押し付けることにより、中空型12の中空部12b中央に対応する部分を平坦としつつ、中空部外縁部分に所望の湾曲を有する曲面ガラスを形成することができる。
【0036】
また、中空型の自重、若しくは該自重に加えて押付力を付与することで、ガラス成形体の形状を調整することができる。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【0038】
例えば、上記実施形態では、型として中空型を例示したが、溶融ガラスに接触する接触部に囲まれた非接触部を有する型であればこれに限定されるものではない。例えば、
図7に示すように、一端側に開口部13aを有し他端側が閉塞された有底型13を用いてもよい。ここで、例示した有底型13は、一端側に略矩形状の開口部13aを有し、他端側が底面13bで閉塞されており、開口部13aを区画形成する側壁13cの開口部13a側端部が溶融ガラス20に押し付けられることで、ガラス成形体25となる該溶融ガラス20のボトム面は溶融金属11に接し、トップ面は有底型13の空間部に対応して成形雰囲気にさらされる。底面13bは溶融ガラス20と接触しない高さに設定される。なお、底面13bには、内部と外部を連通する連通孔が設けられていてもよい。
【0039】
また、上記実施形態では、ガラスの製造方法を例示したが、これに限らず、樹脂、ゴム等の成形体を形成することができる。この場合、樹脂、ゴム等の溶融物質よりも比重の重い液状物質上に、液状物質よりも比重の軽いこれらの溶融物質を該液状物質上に浮かせ、該溶融物質に中空型を押し付け、冷却することで成形体を得ることができる。なお、本発明において液状物質および溶融物質はいずれも液体という点で共通し、比重の大小によって便宜的に液状物質と溶融物質の語を使い分けている。たとえば溶融スズと溶融ソーダライムシリカガラスが接触している場合、比重の大きな溶融スズは液状物質であり、比重の小さい溶融ソーダライムシリカガラスは溶融物質である。
また、上記実施形態で製造されるガラス等の用途は、ディスプレイ装置のカバーガラスに限らず、自動車用フロントガラス等、あらゆる用途に適用することができる。
【0040】
本出願は、2013年1月17日出願の日本特許出願2013−006504に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0041】
11 溶融金属
12 中空型(型)
12b 中空部
13 有底型(型)
13a 開口部
13b 底面
13c 側壁
20 ガラス(溶融ガラス)
25 ガラス成形体
G ガラスリボン