特許第6075433号(P6075433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075433
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】含フッ素共重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/12 20060101AFI20170130BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20170130BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C08L27/12
   C08K3/26
   C08F214/18
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-219253(P2015-219253)
(22)【出願日】2015年11月9日
(62)【分割の表示】特願2013-518109(P2013-518109)の分割
【原出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-27177(P2016-27177A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2011-120523(P2011-120523)
(32)【優先日】2011年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】笠原 潔
(72)【発明者】
【氏名】原 祐二
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−263810(JP,A)
【文献】 特開平10−095888(JP,A)
【文献】 特開昭61−174210(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/095722(WO,A1)
【文献】 特開平05−001256(JP,A)
【文献】 特開平05−025420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/04
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C09D 1/00− 10/00
C09D 101/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位とフッ素原子を有しない単量体に基づく繰り返し単位とを有する含フッ素共重合体(A)、炭酸カリウム、及び有機溶媒を含有する組成物であって、前記有機溶媒中の炭素数1〜6のアルコールの含有量は0〜0.03質量%であり、炭酸カリウムの含有量が前記含フッ素共重合体(A)に対してKO換算値で5〜80ppmである含フッ素共重合体組成物。
【請求項2】
前記フッ素原子を有しない単量体の少なくとも一部が架橋性基を有する単量体である請求項1に記載の含フッ素共重合体組成物。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体(A)中の全繰り返し単位に対して、前記フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位が30〜70モル%、前記架橋性基を有する単量体に基づく繰り返し単位が5〜40モル%、フッ素原子及び架橋性基を有しない単量体に基づく繰り返し単位が0〜45モル%である請求項2に記載の含フッ素共重合体組成物。
【請求項4】
前記含フッ素共重合体(A)と前記有機溶媒との質量比率(含フッ素共重合体(A)/有機溶媒)が1/9〜9/1である請求項1〜3のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素共重合体組成物は塗料用樹脂として好適に用いられる。塗料用樹脂は、溶液状態での貯蔵安定性が良好であることが要求される。また樹脂溶液が無色且つクリアであることが好ましい。
【0003】
特許文献1は、含フッ素共重合体の製造方法に関し、フルオロオレフィン及びアルキルビニルエーテルを含む単量体混合物を、低級アルキルベンゼンと低級アルキルベンゼンよりも沸点の低い成分とを含む重合媒体中で、アルカリ金属炭酸塩の存在下で共重合させることにより、共重合反応の円滑な進行、及び生成共重合体を含むワニスの貯蔵安定性が得られることが記載されている。アルカリ金属炭酸塩の例として炭酸カリウムが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開昭61−174210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、炭酸カリウムの存在により貯蔵安定性は向上するものの、塗膜とした際にヘイズ(塗膜の曇りや白濁)が大きくなる場合があった。
【0006】
ヘイズが大きい場合は、透明な塗膜を形成するクリア塗料においては、塗膜の外観が損なわれるために大きな問題となる。また、塗料組成物に顔料等を添加して着色塗料とする場合においても、色合いが変化してしまうなどの問題を生じることがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、貯蔵安定性がよく且つ塗膜とした際のヘイズが抑制された含フッ素共重合体組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、含フッ素重合体組成物に、炭酸カリウムを含フッ素共重合体に対してKO換算で5〜80ppm含有させると、貯蔵安定性がよく且つヘイズを抑制した含フッ素共重合体組成物となり得ることを知見して本発明に至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
(1)フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位とフッ素原子を有しない単量体に基づく繰り返し単位とを有する含フッ素共重合体(A)、炭酸カリウム、及び有機溶媒を含有する組成物であって、炭酸カリウムの含有量が上記含フッ素共重合体(A)に対してKO換算値で5〜80ppmである含フッ素共重合体組成物。
【0011】
(2)上記フッ素原子を有しない単量体の少なくとも一部が架橋性基を有する単量体である上記(1)に記載の含フッ素共重合体組成物。
【0012】
(3)上記含フッ素共重合体(A)中の全繰り返し単位に対して、上記フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位が30〜70モル%、上記架橋性基を有する単量体に基づく繰り返し単位が5〜40モル%、フッ素原子及び架橋性基を有しない単量体に基づく繰り返し単位が0〜45モル%である上記(2)に記載の含フッ素共重合体組成物。
【0013】
(4)上記含フッ素共重合体(A)と上記有機溶媒との質量比率(含フッ素共重合体(A)/有機溶媒)が1/9〜9/1である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の含フッ素共重合体組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯蔵安定性がよく且つ塗膜とした際のヘイズが抑制された含フッ素共重合体組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<含フッ素共重合体組成物>
本発明の含フッ素共重合体組成物は、フルオロオレフィンに基づく繰り返し単位とフッ素原子を有しない単量体に基づく繰り返し単位とを有する含フッ素共重合体(A)(以下、「含フッ素共重合体(A)」という)、炭酸カリウム及び有機溶媒を含有する組成物であって、炭酸カリウムの含有量が上記含フッ素共重合体(A)に対してKO換算値で5〜80ppmである組成物である。
【0016】
本発明においては、炭酸カリウムの含有量が含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmであることにより、貯蔵安定性がよく且つ塗膜とした際のヘイズが抑制された含フッ素共重合体組成物となる。
【0017】
本発明において、「炭酸カリウムの含有量が含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppm」とは、含フッ素共重合体組成物中の含フッ素共重合体(A)に対する炭酸カリウム濃度の指標であり、これは原子吸光度測定法によって測定することができる。また、KO換算の炭酸カリウム濃度は、溶解している炭酸カリウム(KCO)だけでなく、含フッ素共重合体組成物中に分散(浮遊或いは沈殿を含む)している炭酸カリウム及びカリウム塩も含まれる。
【0018】
なお、カリウム塩とは具体的に、例えばフルオロオレフィンとして塩素含有フルオロオレフィンを使用した場合に重合中に生成する場合があるフルオロオレフィン成分に由来する塩化カリウム等のことである。
【0019】
本発明の含フッ素共重合体組成物は、炭酸カリウムの含有量が含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmであり、8〜65ppmであることが好ましく、10〜55ppmであることがさらに好ましい。下限値以上で含フッ素共重合体組成物の貯蔵安定性が良好となる。また、上限値以下で塗膜とした際にヘイズの発生がないクリア塗膜を形成する組成物となる。
【0020】
「炭酸カリウムの含有量が含フッ素共重合体に対してKO換算で5〜80ppm」とするための方法については、後述する。
【0021】
以下、本発明の含フッ素共重合体組成物の各成分について説明する。
【0022】
(含フッ素共重合体(A))
本願において含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィン(以下、「フルオロオレフィン(a1)」ともいう。)に基づく繰り返し単位とフッ素原子を有しない単量体に基づく繰り返し単位とを有する共重合体である。含フッ素共重合体(A)に含有されるフルオロオレフィン(a1)は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。
【0023】
本発明における含フッ素共重合体(A)において、フッ素原子を有しない単量体の少なくとも一部が、架橋性基を有する単量体(以下、「架橋性を有する単量体(a2)」ともいう)であることが好ましい。含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィン(a1)の1種以上と、架橋性基を有する単量体(a2)の1種以上を単量体として用いて得られる共重合体であることが好ましい。
【0024】
また、本発明における含フッ素共重合体(A)は、フルオロオレフィン(a1)に基づく繰り返し単位と架橋性基を有する単量体(a2)に基づく繰り返し単位以外の、フッ素原子及び架橋性基を有しない単量体(以下「単量体(a3)」ともいう)に基づく繰り返し単位を有してもよい。
【0025】
本発明における含フッ素共重合体(A)の上記の繰り返し単位を構成する各単量体について以下に説明する。
【0026】
(1)フルオロオレフィン(a1)
本発明におけるフルオロオレフィン(a1)は、オレフィン炭化水素の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されている化合物である。フルオロオレフィン(a1)は、塩素等のフッ素原子以外のハロゲン原子を有していてもよい。フルオロオレフィン(a1)に含まれているフッ素原子数は2以上が好ましく、2〜6がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。該フッ素原子数が2以上であると、本発明の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いた場合、得られた塗膜の耐候性が充分となる。
【0027】
フルオロオレフィン(a1)としては、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン等が挙げられる。特にテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンが好ましい。
【0028】
本発明における含フッ素共重合体(A)中のフルオロオレフィン(a1)に基づく繰り返し単位の含有量は、含フッ素重合体(A)中の全繰り返し単位に対して30〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。重合に使用するフルオロオレフィン(a1)の量を、重合に使用する全単量体に対して、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%とすることにより、含フッ素共重合体(A)の組成が上記の範囲となる。
【0029】
上記フルオロオレフィン(a1)が下限値以上であると耐候性が良く、上限値以下であると溶剤や希釈剤への溶解性が良くなる。
【0030】
(2)架橋性基を有する単量体(a2)
本発明における架橋性基を有する単量体(a2)は、フッ素原子を有しない架橋性基を有する単量体であり、上記フルオロオレフィン(a1)と共重合可能な二重結合を有する単量体である。
【0031】
具体的に、架橋性基を有する単量体(a2)は、下記式(1)の構造を有する単量体であることが好ましい。
【0032】
[式1]
CH=CX(CH−Q−R−Y (1)
【0033】
上記式(1)中、Xは水素原子又はメチル基であり、nは0又は1であり、Qは酸素原子、−C(=O)O−で表される基、又は−OC(=O)−で表される基であり、Rは分岐構造又は環構造を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基であり、Yは架橋性基である。
【0034】
上記架橋性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素を有する官能基;アルコキシシリル基等の加水分解性シリル基等が好ましい。
【0035】
架橋性基を有する単量体(a2)として、上記式1におけるYが水酸基、カルボキシル基、アミノ基である化合物が好ましく、水酸基である化合物であることがより好ましい。架橋性基を有する単量体(a2)において、上記式1におけるRは、分岐構造及び環構造を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基が好ましいが、中でも直鎖状のアルキレン基がより好ましい。該アルキレン基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。架橋性基を有する単量体(a2)において、上記式1におけるQは、酸素原子が好ましい。
【0036】
なお、分岐構造を有する場合の炭素数は、分岐部分及び主骨格を含めた炭素数を意味する。環構造を有する場合の炭素数は、環部分及び主骨格を含めた炭素数を意味する。
【0037】
架橋性基を有する単量体(a2)としては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類、ヒドロキシアルキルカルボン酸ビニルエステル類、ヒドロキシアルキルカルボン酸アリルエーテル類、ヒドロキシアルキルアリルエステル類、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等の架橋性基が水酸基の単量体;不飽和カルボン酸類、飽和多価カルボン酸モノビニルエステル類、不飽和ジカルボン酸類又はその分子内酸無水物、不飽和カルボン酸モノエステル類等の架橋性基がカルボキシル基の単量体;CH=CH−O−(CH−NH(x=1〜10)で示されるアミノアルキルビニルエーテル類、CH=CHCH−O−(CH−NH(y=1〜10)で示されるアミノアルキルアリルエーテル類、CH=CH−O−CO(CH−NH(s=1〜10)で示されるアミノアルキルカルボン酸ビニルエステル類、CH=CHCH−O−CO(CH−NH(t=1〜10)で示されるアミノアルキルカルボン酸アリルエステル類、アミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等の架橋性基がアミノ基の単量体;等が好ましい。
【0038】
架橋性基を有する単量体(a2)の具体例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ヒドロキシメチルビニルエーテル(HMVE)、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類が好ましい。共重合性に優れ、本願の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いた場合に形成される塗膜の耐候性が良好であることから、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類がより好ましい。特に、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)が好ましい。
【0039】
本発明における含フッ素共重合体(A)中の架橋性基を有する単量体(a2)に基づく繰り返し単位の含有量は、含フッ素共重合体(A)中の全繰り返し単位に対して5〜40モル%であることが好ましく、より好ましくは8〜35モル%である。本発明における含フッ素共重合体(A)の重合に用いる架橋性基を有する単量体(a2)の量を、重合に使用する全単量体に対して、好ましくは5〜40モル%、より好ましくは8〜35モル%とすることにより、含フッ素共重合体(A)の組成が上記の範囲となる。
【0040】
架橋性基を有する単量体(a2)の含有量が下限値以上であると、本願の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いた場合に硬度の高い塗膜を得るために充分な量の架橋性基が共重合体中に導入される。また、架橋性基を有する単量体(a2)の含有量が上限値以下であると、高固形分タイプであっても、含フッ素共重合体組成物の溶液として充分な低粘度を維持できる。
【0041】
(3)フッ素原子及び架橋性基を有しない単量体(a3)
本発明における含フッ素共重合体(A)は、上記フルオロオレフィン(a1)及び上記架橋性基を有する単量体(a2)以外に、本願の含フッ素共重合体組成物の硬度や柔軟性を調整する目的で、これら以外の、フッ素原子及び架橋性基を有しない単量体(a3)を用いて得られる共重合体としてもよい。単量体(a3)は、上記フルオロオレフィン(a1)と上記架橋性基を有する単量体(a2)と共重合可能な二重結合を有する単量体である。
【0042】
具体的に、単量体(a3)は、下記式(2)の構造を有する単量体であることが好ましい。
【0043】
[式2]
CH=CX(CH−Q−R−H (2)
【0044】
上記式(2)中、Xは水素原子又はメチル基であり、nは0又は1であり、Qは酸素原子、−C(=O)O−で表される基、又は−OC(=O)−で表される基であり、Rは分岐構造又は環構造を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基である。
【0045】
なお、分岐構造を有する場合の炭素数は、分岐部分及び主骨格を含めた炭素数を意味する。環構造を有する場合の炭素数は、環部分及び主骨格を含めた炭素数を意味する。
【0046】
単量体(a3)としては、アルキルビニルエーテル類、アルキルカルボン酸ビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、アルキルカルボン酸アリルエステル類又は(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。なお、(メタ)アクリル酸なる記載は、アクリル酸又はメタクリル酸の両方を表す。
【0047】
単量体(a3)の具体例としては、エチルビニルエーテル(EVE)、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)、2−エチルへキシルビニルエーテル(2EHVE)等が好ましい。
【0048】
特に、単量体(a3)がシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)を含むと、得られる共重合体の剛性が高く、溶剤に可溶で、特に塗料に適用した場合に施工が容易で、硬い塗膜が得られる点でより好ましい。
【0049】
本発明における含フッ素共重合体(A)中の単量体(a3)に基づく繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位に対して0〜45モル%であることが好ましく、より好ましくは3〜35モル%、さらに好ましくは5〜30モル%である。本発明における含フッ素共重合体(A)の重合に用いる単量体(a3)の量を、重合に使用する全単量体に対して、好ましくは0〜45モル%、より好ましくは3〜35モル%、さらに好ましくは5〜30モル%とすることにより、含フッ素共重合体(A)の組成が上記の範囲となる。
【0050】
含フッ素共重合体(A)に単量体(a3)が含まれることにより、本願の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いた場合に得られる塗膜の硬度や柔軟性を適宜調整することができる。単量体(a3)の量が上限値以下であると耐候性が良く、硬度の高い塗膜を得るために充分な量の架橋性基が共重合体中に導入される。
【0051】
なお、本発明のおける含フッ素共重合体(A)中の架橋性基を有する単量体(a2)と単量体(a3)とに基づく繰り返し単位の含有量は、含フッ素共重合体(A)中の全繰り返し単位に対して30〜70モル%であることが好ましく、より好ましくは40〜60モル%、さらに好ましくは45〜55モル%である。本発明における含フッ素共重合体(A)の重合に用いる架橋性基を有する単量体(a2)と単量体(a3)との合計量を、重合に使用する全単量体に対して、好ましくは30〜70モル%、より好ましくは40〜60モル%、最も好ましくは45〜55モル%とすることにより、含フッ素共重合体(A)の組成が上記の範囲となる。
【0052】
含フッ素共重合体(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、含フッ素共重合体(A)の数平均分子量(Mn)が3000〜9000であることが好ましい。Mnが3000以上であると、本発明の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いる場合、得られる塗膜の耐候性に優れ、Mnが9000以下であると、含フッ素共重合体組成物中、含フッ素共重合体(A)が高濃度であっても充分な溶解性を実現でき、低粘度化が実現できるため好ましい。
【0053】
(有機溶媒)
本発明の含フッ素共重合体組成物は、有機溶媒を含有する。有機溶媒は、炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmとすることができる溶媒であれば特に限定されない。
【0054】
有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エーテルエステル系溶媒、エステル系溶媒、及び弱溶剤からなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒であることが好ましい。
【0055】
エーテルエステル系溶媒とは、分子内にエーテル結合とエステル結合の両方を有する化合物である。弱溶剤とは、日本国労働安全衛生法における第三種有機溶剤に分類される溶剤である。
【0056】
芳香族炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、ソルベッソ♯100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ♯150(エクソン化学(株)登録商標)が好ましく、キシレン、トルエン、エチルベンゼンがより好ましい。
【0057】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルアミルケトン(MAK)、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンが好ましい。
【0058】
エーテルエステル系溶媒としては、3−エトキシプロピオン酸エチル(EEP)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチルが好ましい。
【0059】
弱溶剤とは、ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット及びミネラルターペンを含む)からなる群から選ばれる1種以上からなる溶剤である。
【0060】
弱溶剤としては、引火点が室温以上であることから、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット及びミネラルターペンを含む)が好ましい。
【0061】
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチルが好ましい。
【0062】
これらのうちで有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒がより好ましく、芳香族炭化水素系溶媒としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼンが好ましい。さらに好ましくは、エチルベンゼンを10〜100質量%及びキシレンを0〜90質量%含有する溶媒であることが好ましく、エチルベンゼンの含有量は10〜80質量%がより好ましい。
【0063】
また、環境負荷低減の観点からは、有機溶媒としては、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、HAPs(Hazardous Air Pollutants)規制に対応した溶媒、すなわち、芳香族を含有しない有機溶媒や、弱溶剤も使用することができる。
【0064】
具体的には、PRTR法、HAPs規制に該当しないケトン系溶媒、エーテルエステル系溶媒や弱溶剤であるパラフィン系溶剤やナフテン系溶剤を使用することができる。
【0065】
有機溶媒は1種の溶媒のみからなっていてもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
【0066】
有機溶媒は、含フッ素共重合体(A)の溶液重合で用いる重合溶媒、すなわち炭素数1〜6のアルコール溶媒と該炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒をそのまま、含フッ素共重合体組成物中に含有される有機溶媒とすることが好ましい。しかし、炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmとするためには、含フッ素共重合体組成物の製造方法の炭酸カリウム低減工程において、重合溶媒中の炭素数1〜6のアルコール溶媒の含有量を0〜0.03質量%にすることは重要である。
【0067】
炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体に対してKO換算で5〜80ppmとすることができる限り、重合溶媒の一部を留去し、または留去せずに、重合溶媒と異なる溶媒を新たに加える、もしくは、全部留去して他の溶媒に完全に置換することも可能である。
【0068】
また、含フッ素共重合体(A)の溶液重合で用いる炭素数1〜6のアルコール溶媒と炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒については、後述する。
【0069】
含フッ素共重合体組成物中の有機溶媒の含有量は、前記含フッ素共重合体(A)と前記有機溶媒との質量比率(含フッ素共重合体(A)/有機溶媒)が1/9〜9/1であることが好ましい。すなわち、含フッ素共重合体組成物中の有機溶媒の含有量は、含フッ素共重合体組成物に対して約10〜90質量%であることが好ましい。約10質量%以上であると共重合体の有機溶媒への溶解性が良好であり、約90質量%以下であると後処理性が良好である理由から、含フッ素共重合体組成物中の固形分が約10〜90質量%となることが好ましい。
【0070】
<含フッ素共重合体組成物の製造方法>
含フッ素共重合体組成物の製造方法は以下(1)〜(3)の工程を含む。
【0071】
(1)重合工程:フルオロオレフィン、フッ素原子を有しない単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤、炭酸カリウム、及び炭素数1〜6のアルコール溶媒と該炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒の存在下に、前記炭酸カリウムの少なくとも一部が上記重合溶媒に溶解した状態で共重合させて、含フッ素共重合体(A)の溶液を得る工程。
【0072】
(2)炭酸カリウム析出工程:該フッ素共重合体(A)の溶液から上記炭素数1〜6のアルコール溶媒を除去して、上記炭素数1〜6のアルコール溶媒の含有量を、重合溶媒に対して0〜0.03質量%に低減し、炭酸カリウムを析出させる工程。
【0073】
(3)炭酸カリウム低減工程:上記炭酸カリウム析出工程で得た含フッ素共重合体(A)の溶液を濾過して、溶解していない炭酸カリウムを除去し、溶液中の炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmに低減する工程。
【0074】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0075】
(1)重合工程
含フッ素共重合体組成物の製造方法における重合工程は、フルオロオレフィン、及びフッ素原子を有しない単量体を含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤、炭酸カリウム、炭素数1〜6のアルコール溶媒と該炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒の存在下に、前記炭酸カリウムの少なくとも一部が上記重合溶媒に溶解した状態で共重合させて、含フッ素共重合体(A)の溶液を得る工程である。
【0076】
上記(1)重合工程における単量体混合物としては、上記フルオロオレフィン(a1)の1種以上と、必要によりそれ以外の架橋性基を有する単量体(a2)、フッ素原子及び架橋性基を有しない単量体(a3)等の1種以上と、を含む混合物が挙げられる。
【0077】
重合工程で用いる炭酸カリウムは、平均粒径100〜1000μmの大きさのものが好ましく、100〜600μmがより好ましく用いられる。平均粒径が100μm以上であると、濾過による除去が容易になる。一方で1000μm以下であると単位当たりの表面積が大きく、共重合反応が円滑に進行する。
【0078】
ここで、平均粒径とはJIS K0069(1992)の[化学製品のふるい分け試験方法]により測定した重量平均粒径を意味する。
【0079】
上記範囲の平均粒径を有する炭酸カリウムは、市販のものを適宜選択して用いればよく、具体的には、関東化学(株)製の炭酸カリウム(特級)等が挙げられる。
【0080】
重合工程における炭酸カリウムと単量体混合物中の全単量体との質量比率(炭酸カリウム/単量体混合物中の全単量体)が0.005/1〜0.013/1であることが好ましい。より好ましくは、0.008/1〜0.012/1である。炭酸カリウムと単量体混合物中の全単量体との質量比率を0.005/1以上とすることで、円滑な共重合反応の進行をもたらすことができ、炭酸カリウムと単量体混合物中の全単量体との質量比率=0.013/1以下とすることで、重合安定性を確保するとともに、含フッ素共重合体組成物の着色を抑えることができる。
【0081】
なお、重合工程における重合溶媒は、炭素数1〜6のアルコール溶媒を含有していれば、特に制限されず、炭素数1〜6のアルコール溶媒以外に、従来公知の、重合に用いる溶媒を使用することができる。しかし、溶媒置換等の特別な処理が不要なことから、重合工程における重合溶媒を本発明の含フッ素重合体組成物中に含有される有機溶媒と同じものとし、上記(3)の炭酸カリウム低減工程後に得られた組成物をそのまま本発明の含フッ素重合体組成物として使用することが好ましい。しかし、前述しているように、炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmとするためには、含フッ素共重合体組成物の製造方法の炭酸カリウム低減工程において、重合溶媒中の炭素数1〜6のアルコール溶媒の含有量は0〜0.03質量%にすることは重要である。
【0082】
あるいは、製造工程のいずれかの段階で、重合工程で用いた重合溶媒の一部を留去し、または留去せずに新たに重合工程で用いた重合溶媒とは異なる溶媒を添加する、もしくは、重合工程で用いた重合溶媒を完全に留去して、重合工程で用いた重合溶媒とは異なる溶媒に完全に置換してもよい。この場合に用いる、「重合工程で用いた重合溶媒とは異なる溶媒」としては、含フッ素共重合体組成物に含有される有機溶媒であり、炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体に対してKO換算で5〜80ppmとすることができることが重要である。
【0083】
重合工程に用いる重合溶媒中の炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒、炭素数1〜6のアルコール溶媒以外のアルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテルエステル系溶媒、エステル系溶媒、及び弱溶剤からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エーテルエステル系溶媒、エステル系溶媒、及び弱溶剤としては、含フッ素共重合体組成物中に好ましく含まれる上記有機溶媒で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0084】
炭素数1〜6のアルコール溶媒以外のアルコール系溶媒としては、オクチルアルコール、ドデシルアルコール等が挙げられる。
【0085】
炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒としてはこれらの中で、芳香族炭化水素系溶媒、エーテルエステル系溶媒、炭素数1〜6のアルコール溶媒以外のアルコール系溶媒がより好ましい。さらに好ましくは、芳香族炭化水素系溶剤であり、キシレン、トルエン、エチルベンゼンが特に好ましい。
【0086】
本願においては、重合工程で用いる重合溶媒として、上記炭素数1〜6のアルコール溶媒と共に、炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒を含有する重合溶媒を用いる。
【0087】
重合溶媒中の炭素数1〜6のアルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。なかでも好ましくは、炭酸カリウムの溶解性が良好であることからエタノールである。
【0088】
重合工程における重合溶媒中の炭素数1〜6のアルコール溶媒の割合としては、炭素数1〜6のアルコール溶媒が重合溶媒に対して10〜95質量%含まれることが好ましく、より好ましくは20〜90質量%含まれることである。
【0089】
重合溶媒が炭素数1〜6のアルコール溶媒を上記範囲で含むことにより、共重合反応時に重合溶媒に対する炭酸カリウムの溶解度が高くなる。炭酸カリウムは、含フッ素共重合体組成物の貯蔵安定性を向上させるだけでなく、溶液重合中に重合系中に存在することで重合安定性をも向上させる効果がある。
【0090】
さらに、上記炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒として、エチルベンゼンを10〜100質量%及びキシレンを0〜90質量%含有する溶媒を用いることが好ましい。つまり、重合工程に用いる重合溶媒は、炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒としての、エチルベンゼンを10〜100質量%及びキシレンを0〜90質量%含有する溶媒と、炭素数1〜6のアルコール溶媒と、を含むことが好ましい。
【0091】
炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒中のエチルベンゼンの割合が10質量%以上であると、炭酸カリウムの溶媒に対する溶解度が低下し、含フッ素共重合体組成物中の炭酸カリウムの溶解度が低下することから好ましい。
【0092】
重合工程に用いる重合溶媒としては、エチルベンゼンを10〜100質量%及びキシレンを0〜90質量%含有する炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒60〜90質量%と、炭素数1〜6のアルコール溶媒10〜40質量%と、を含有する重合溶媒が最も好ましい。
【0093】
上記単量体混合物を、ラジカル重合開始剤、炭酸カリウム、及び上記炭素数1〜6のアルコール溶媒と該アルコール溶媒以外の溶媒を含有する重合溶媒の存在下に、炭酸カリウムの少なくとも一部が溶解した状態で溶液重合により共重合させることが好ましい。また必要に応じて連鎖移動剤を添加する。
【0094】
なお、「炭酸カリウムの少なくとも一部が溶解した状態」とは、溶媒中に炭酸カリウムの一部が溶解しているが、少なくとも一部が溶解せずに分散(浮遊或いは沈殿を含む)していてもよい状態のことである。
【0095】
用いるラジカル重合開始剤としては、従来公知の開始剤を使用することができ、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボネートニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類、tert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)等のアルキルパーエステル類、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート類の過酸化物系開始剤;が挙げられる。
【0096】
また、含フッ素共重合体(A)の数平均分子量(Mn)を調節する必要がある場合には、必要に応じて従来公知の連鎖移動剤を添加すればよい。
【0097】
共重合は、具体的には、以下のいずれかの方法で溶液重合を行うことが好ましい。
【0098】
(i)全単量体、炭素数1〜6のアルコール溶媒と該アルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒、炭酸カリウム及びラジカル重合開始剤を一括仕込みして重合させる方法。仕込み順序は適宜設定できる。
【0099】
(ii)炭素数1〜6のアルコール溶媒と該アルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒、フルオロオレフィン(a1)、炭酸カリウムを仕込んだ反応器に、フルオロオレフィン(a1)以外の単量体及びラジカル重合開始剤を連続的に、又は分割して添加する方法。フルオロオレフィン(a1)以外の単量体及びラジカル重合開始剤は、重合溶媒と混合して一緒に添加してもよく、仕込み順序は適宜設定できる。
【0100】
(iii)炭素数1〜6のアルコール溶媒と該アルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒、炭酸カリウムを仕込んだ反応器に、全単量体及びラジカル重合開始剤をそれぞれ連続的に、又は分割して添加する方法。全単量体及びラジカル重合開始剤は、重合溶媒と混合して一緒に添加してもよく、仕込み順序は適宜設定できる。
【0101】
(iv)炭素数1〜6のアルコール溶媒と該アルコール溶媒以外の溶媒とを含有する重合溶媒、炭酸カリウムを仕込み、更にフルオロオレフィン(a1)及び/又はフルオロオレフィン(a1)以外の単量体の一部を仕込んだ反応容器に、フルオロオレフィン(a1)及び/又はフルオロオレフィン(a1)以外の単量体の残りの分、ラジカル重合開始剤、を連続的に、又は分割して添加する方法。フルオロオレフィン(a1)及び/又はフルオロオレフィン(a1)以外の単量体の残りの分、ラジカル重合開始剤は、重合溶媒と混合して一緒に添加してもよく、仕込み順序は適宜設定できる。
【0102】
重合反応は、65℃±10℃、6時間〜36時間の条件で行うことが好ましい。重合温度は、使用する開始剤の分解開始温度や半減期に応じて適宜設定すればよい。重合反応の停止は、冷却後にハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤により行うことが好ましい。
【0103】
(2)炭酸カリウム析出工程
上記(1)重合工程後に、上記炭素数1〜6のアルコール溶媒を除去して、好ましくは重合溶媒に対して0〜0.03質量%に低減し、炭酸カリウムを溶液中に析出させる工程を行う。
【0104】
重合溶媒中に炭素数1〜6のアルコール溶媒を多く含む場合、重合溶媒に対する炭酸カリウムの溶解度が高いことより、後に続く(3)炭酸カリウム低減工程を行っても全溶媒に溶解している炭酸カリウムは除去しにくい。炭酸カリウムの含有量が含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmとするためには、重合溶媒から炭素数1〜6のアルコール溶媒を除去して溶解している炭酸カリウムを析出させ、その後濾過を行って不溶解物を除去することが好ましい。
【0105】
重合溶媒に対して炭素数1〜6のアルコール溶媒を0〜0.03質量%の含有量範囲とするには、減圧蒸留装置により減圧加熱下で濃縮する方法等が挙げられる。
【0106】
アルコール溶媒除去に際して溶媒量が減少しすぎる場合には、炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒を適宜添加することが好ましい。
【0107】
炭素数1〜6のアルコール溶媒を除去する前に予備濾過を行うことも好ましい。予備濾過は、上記含フッ素共重合体(A)の溶液中に固体として分散(浮遊或いは沈殿を含む)する上記炭酸カリウム又はその変質物等をおおまかに濾別する目的で行う。なお、予備濾過を行わない場合は、下記(3)炭酸カリウム低減工程において、これらを除去すればよい。
【0108】
予備濾過の方法としては、特に制限はないが、例えば、得られた反応液を粘調液用濾紙(例えば、No.63等)を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05〜0.5MPaにて炭酸カリウム等を濾別することで行う。
【0109】
アルコール除去の後に、固形濃度を調整する目的で適当な溶媒を追加添加することも可能である。ここで用いる溶媒は、上記重合工程で用いる炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒や含フッ素共重合体組成物に含まれる有機溶媒が挙げられる。固形濃度としては、共重合体組成物の溶解性と後処理時の作業性の理由から、10〜90質量%であることが好ましい。
【0110】
(3)炭酸カリウム低減工程
含フッ素共重合体組成物の製造方法における炭酸カリウム低減工程は、上記(2)炭酸カリウム析出工程で得られた、アルコール溶媒を除去した含フッ素共重合体(A)の溶液を濾過して、溶解していない炭酸カリウムを除去して、溶液(組成物)中の炭酸カリウムの含有量を含フッ素共重合体(A)に対してKO換算で5〜80ppmとした含フッ素共重合体組成物を得る工程である。
【0111】
この炭酸カリウム低減工程で、組成物中の炭酸カリウムの含有量が含フッ素共重合体(A)に対してKO換算値で5〜80ppmである組成物とすることができる。
【0112】
炭酸カリウム低減工程における上記含フッ素共重合体(A)の溶液に含有される溶媒は、重合工程に用いる重合溶媒と同じであることが好ましいが、必要に応じて濾過工程の前に他の溶媒を添加したり、他の溶媒に置換してもよい。ただし、溶媒中の炭素数1〜6のアルコール溶媒の含有量は0〜0.03質量%である。
【0113】
濾過の方法としては、特に制限はないが、珪藻土を用いた濾過が挙げられる。珪藻土としては、中間粒度25〜40μmのものが挙げられ、その使用量は、濾過面積に対して0.05〜0.10g/cmであることが好ましい。
【0114】
珪藻土の中間粒度と使用量との関係は、中間粒度が小さくなると炭酸カリウムの濃度が低下する傾向がある。また、使用量が増加すると炭酸カリウムの濃度は低下することから、珪藻土の中間粒度が25〜40μmのもの、かつ、その使用量は、濾過面積に対して0.05〜0.10g/cmの範囲で適宜調整すればよい。
【0115】
濾過は、具体的には、上記珪藻土を用いて粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.01〜0.05MPaの加圧条件下で濾過を行い、濾液の外観が目視でヘイズ無しになるまで循環濾過することで行う。
【0116】
なお、加圧濾過器の濾紙上に形成される珪藻土のケーキ層の厚みは1.5〜2.5mmとなることが好ましい。ケーキ層の厚みは1.5〜2.5mmとするには、上記濾過条件で行えばよい。
【0117】
中間粒度とは、粒子径の小さいほうから質量%を積算して50質量%になるときの粒子径である。上記範囲の中間粒度である珪藻土は、市販のものを適宜選択して用いればよい。
【0118】
なお、「溶解していない炭酸カリウムを除去する」とあるが、濾過に用いる珪藻土の中間粒度、使用量によっては、溶解してなくとも分散している微細な炭酸カリウムは、得られる含フッ素共重合体組成物中に残る。この分散している炭酸カリウムも含め、炭酸カリウムが含フッ素共重合体に対してKO換算で5〜80ppm含まれた状態となればよい。
【0119】
上記(3)炭酸カリウム低減工程の前に、含フッ素共重合体組成物に必要に応じて添加物を添加することも可能である。
【0120】
<含フッ素共重合体組成物の利用>
本発明の含フッ素共重合体組成物は、クリア塗料として好適に用いることができる。本発明の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いる場合、硬化剤、上記含フッ素共重合体(A)以外の樹脂等の塗料配合成分をさらに含むことが好ましい。これらは2種以上を併用しても良い。
【0121】
本発明の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いる場合、一液タイプの塗料でもよく、二液タイプの塗料でもよい。二液タイプの場合には、硬化剤は使用直前に混合されることが好ましい。
【0122】
(硬化剤)
硬化剤としては、含フッ素共重合体(A)中の架橋性基を有する単量体(a2)が有する架橋性基と架橋可能な硬化剤が好ましい。
【0123】
架橋性基を有する単量体(a2)が有する架橋性基が水酸基である場合には、硬化剤としては例えば常温硬化型イソシアネート系硬化剤、熱硬化型ブロックイソシアネート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の塗料用硬化剤が好ましい。
【0124】
常温硬化型イソシアネート系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の無黄変イソシアネート類が好ましい。
【0125】
熱硬化型ブロックイソシアネート系硬化剤としては、イソシアネート硬化剤のイソシアネート基をカプロラクタム、イソホロン、β−ジケトン等でブロック化したものが好ましい。
【0126】
メラミン系硬化剤としては、ブチル化メラミン等の低級アルコールによりエーテル化されたメラミン、エポキシ変性メラミン等が好ましい。
【0127】
本発明における塗料中の硬化剤の含有量は、塗料中の含フッ素共重合体(A)の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
【0128】
硬化剤が1質量部以上であると、得られた塗膜の耐溶剤性に優れ、硬度が充分であり、硬化剤が100質量部以下であると、加工性に優れ、耐衝撃性に優れる。
【0129】
(含フッ素共重合体(A)以外の樹脂)
含フッ素共重合体(A)以外の樹脂は、塗料に配合される公知の樹脂を適宜用いることができる。
【0130】
例えば、塗膜の乾燥性を改善するために、CAB(セルロースアセテートブチレート)、NC(ニトロセルロース)等を配合してもよい。また、塗膜の光沢、硬度、塗料の施工性を改良するために、アクリル酸又はそのエステルからなる重合体、ポリエステル等の塗料用樹脂を配合してもよい。
【0131】
(その他の成分)
その他にも、添加物としてシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、着色剤、つや消し剤等、塗料に配合される公知の成分を必要に応じて配合することができる。
【0132】
紫外線吸収剤としては、HALS(ヒンダードアミン)等が挙げられる。
【0133】
着色剤としては、耐光性のよいカーボンブラック、酸化チタン等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド、インダンスレンオレンジ、イソインドリノン系イエロー等の有機顔料;染料等が挙げられる。
【0134】
本発明の含フッ素共重合体組成物を塗料として用いて塗装する方法は、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーター等の任意の方法を適用できる。
【0135】
塗装される物品の材質としては、コンクリート、自然石、ガラス等の無機物;鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等の金属;プラスチック、ゴム、接着剤、木材等の有機物が挙げられる。
【0136】
また有機無機複合材である繊維強化プラスチック(FRP)、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等の塗装にも適する。
【0137】
塗装される物品としては、自動車、電車、航空機等の輸送用機器;橋梁部材、鉄塔などの土木部材;防水材シート、タンク、パイプ等の産業機材;ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等の建築部材;道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁等の道路部材;通信機材;電気及び電子部品;太陽電池モジュール用の表面シート、バックシート等が挙げられる。
【実施例】
【0138】
以下、実施例、比較例により本発明を詳細に説明する。なお、部及び%は特に規定のない限り質量基準で示す。
【0139】
<測定方法>
(カリウム濃度の測定)
カリウム濃度の測定は、原子吸光度測定法を用いて行うが、具体的には、試料を有機溶媒に希釈してカリウムイオンを水に抽出し、炎光光度計でカリウムイオンを測定する。定量は原子吸光度用標準液の塩化カリウム水溶液で検量線を作製して行った。
【0140】
(分子量の測定)
含フッ素共重合体(A)の数平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。
【0141】
(アルコール濃度の測定)
重合溶媒に対する炭素数1〜6のアルコール溶媒の含有量は、GC分析により確認した。
【0142】
<重合溶媒に用いる炭素数1〜6のアルコール溶媒以外の溶媒の調製>
純度98%以上のp−キシレンと純度98%以上のエチルベンゼンを用いて、混合キシレンの調製を行った。
【0143】
混合キシレンA*1:エチルベンゼン濃度50質量%
混合キシレンB:エチルベンゼン濃度10質量%
混合キシレンC:エチルベンゼン濃度80質量%
混合キシレンD:エチルベンゼン濃度5質量%
*1:混合キシレンAとはo−、m−、p−キシレンが50質量%とエチルベンゼンが50質量%の工業用キシレンを使用した。
【0144】
<含フッ素共重合体組成物の調製>
(実施例1)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0145】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0146】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0147】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し、濃度調整液を得た。
【0148】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−1)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0149】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−1)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A−1))質量に対し、42ppmであった。
【0150】
組成物中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0151】
(実施例2)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA668g、エタノール188g、2−エチルヘキシルビニルエーテル(2EHVE)195g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)87g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)272g、炭酸カリウム10g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0152】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)503gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0153】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0154】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0155】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(B−1)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0156】
得られた含フッ素共重合体組成物(B−1)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、27ppmであった。
【0157】
組成物中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.8質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/2EHVE/HBVEのモル比で50.5/26.3/14.5/8.7であった。
【0158】
(実施例3)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA674g、エタノール190g、エチルビニルエーテル(EVE)308g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)124g、炭酸カリウム13g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0159】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)622gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0160】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0161】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0162】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(C−1)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0163】
得られた含フッ素共重合体組成物(C−1)中の炭酸カリウムの濃度を原子吸光度測定法によって測定したところ、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し5ppmであった。
【0164】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.5質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/EVE/HBVEのモル比で50.0/40.3/9.7であった。
【0165】
(実施例4)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンB587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0166】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。
【0167】
この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0168】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンBを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0169】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−2)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0170】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−2)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、50ppmであった。
【0171】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0172】
(実施例5)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンC587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0173】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0174】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンCを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0175】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−3)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0176】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−3)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、64ppmであった。
【0177】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0178】
(実施例6)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、エチルベンゼン587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0179】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0180】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0181】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たにエチルベンゼンを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0182】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−9)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0183】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−9)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、62ppmであった。
【0184】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0185】
(比較例1)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0186】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0187】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0188】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土b(中間粒度19.2μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−4)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは2.0mmであった。
【0189】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−4)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、2ppmであった。
【0190】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0191】
(比較例2)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0192】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0193】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0194】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0195】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土c(中間粒度46.5μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し、珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−5)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.8mmであった。
【0196】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−5)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、133ppmであった。
【0197】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0198】
(比較例3)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0199】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0200】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0201】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0202】
次に濾過面積に対し0.12g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−6)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは3.8mmであった。
【0203】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−6)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、3ppmであった。
【0204】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0205】
(比較例4)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンA587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0206】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0207】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0208】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンAを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0209】
次に濾過面積に対し0.03g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−7)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは0.9mmであった。
【0210】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−7)中の炭酸カリウムの濃度は、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、158ppmであった。
【0211】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0212】
(比較例5)
攪拌機が装着された内容積2500mLのステンレス鋼製耐圧反応器に、上記で調製した混合キシレンD587g、エタノール168g、エチルビニルエーテル(EVE)206g、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)129g、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)208g、炭酸カリウム11g及びtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)3.5gを仕込み、窒素による加圧・パージ及び脱気により液中の溶存酸素を除去した。
【0213】
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
【0214】
得られた反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)を粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別(予備濾過)した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、HQMME)を0.1g添加した。
【0215】
次に減圧蒸留装置によって減圧加熱下、反応液(含フッ素共重合体(A)の溶液)におけるエタノール量が重合溶媒に対して0.03質量%以下になるまで濃縮した。次に濃縮液の固形分濃度を測定した後、新たに混合キシレンDを加え、固形分濃度を60質量%に調製し濃度調整液を得た。
【0216】
次に濾過面積に対し0.06g/cm2の珪藻土a(中間粒度30.1μm)を濃度調整液に添加し、混合攪拌した後、粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し圧力0.2MPaにて2度濾過し珪藻土を濾別し、含フッ素共重合体組成物(A−8)を得た。加圧濾過器中の濾紙上に形成された珪藻土のケーキ層の厚みは1.9mmであった。
【0217】
得られた含フッ素共重合体組成物(A−8)中の炭酸カリウムの濃度を原子吸光度測定法によって測定したところ、KO換算値で共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、84ppmであった。
【0218】
溶液中に存在する単量体量は、共重合体(含フッ素共重合体(A))質量に対し、0.6質量%であった。また、この共重合体の13CNMRスペクトルに基づいて分析した組成はCTFE/CHVE/EVE/HBVEのモル比で50.0/14.7/25.5/9.8であった。
【0219】
<得られた含フッ素共重合体組成物の評価>
上記で得られた実施例1〜6及び比較例1〜5の含フッ素共重合体組成物の貯蔵安定性、外観の評価を以下のように行った結果を表1に示す。なお、各含フッ素共重合体組成物の配合量、濾過工程で用いた珪藻土等についても表1に示す。
【0220】
(貯蔵安定性の評価)
得られた含フッ素共重合体組成物を70℃で14日間の条件で貯蔵した後の溶液を目視で観察し、ゲル化の有無を評価した。
【0221】
評価基準として、ゲル化なしのときをA、ゲル化ありのときをBとした。
【0222】
(外観の評価)
得られた含フッ素共重合体組成物を目視で観察し、ヘイズの度合いを評価した。
【0223】
【表1】
【0224】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な修正や変更を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2011年5月30日出願の日本特許出願2011−120523に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0225】
本発明により、貯蔵安定性がよく且つヘイズの発生を抑制した含フッ素共重合体組成物及びその製造方法を提供できる。