(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、汎用性に乏しい酸二無水物を原料に用いなくても、適度な線膨張係数及び適度な柔軟性を有する有用な硬化膜を形成することができるディスプレイ基板用樹脂組成物の提供を目的とする。なお、ここでいう適度な柔軟性とは、自己支持性があり、かつ90度に曲げても割れない程度の高い柔軟性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特定のアミノ基含有化合物をディスプレイ基板用樹脂組成物中に配合させることにより、該樹脂組成物から、適度な線膨張係数及び適度な柔軟性を有する有用な硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、第1観点として、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含むディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
(A)成分:下記式(1)で表わされる構造単位を含むポリアミック酸又は下記式(2)で表わされる構造単位を含むポリイミド
【化1】
[式(1)及び式(2)中、X
1は芳香族基と2つのカルボニル基を有する4価の有機基を表わし、Y
1は芳香族基又は脂肪族基を含む2価の有機基を表わし、nは自然数を表わす。]
(B)成分:(A)成分より低分子量のカルボニル基を有する化合物又はその重合体
(C)成分:架橋剤
(D)成分:溶剤
第2観点として、前記X
1が下記式(3)で表わされる構造である、第1観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
【化2】
[式中、R
1乃至R
10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、W
1で置換されていてもよいフェニル基、W
1で置換されていてもよいナフチル基、W
1で置換されていてもよいチエニル基又はW
1で置換されていてもよいフリル基を表し、
W
1は、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、下記式(4):
【化3】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基を表わす。なお、○は結合手を表わす。)で表わされる2価の基又は酸素原子を表わす。]
第3観点として、前記式(3)中のR
1乃至R
10が水素原子を表わし、かつZ
1及びZ
2が酸素原子を表わす、第2観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第4観点として、前記(B)成分が下記式(5)乃至(10)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、第1観点乃至第3観点のうちいずれか1つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
【化4】
[式(5)乃至式(10)中、R
11乃至R
52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、W
1で置換されていてもよいフェニル基、W
1で置換されていてもよいナフチル基、W
1で置換されていてもよいチエニル基又はW
1で置換されていてもよいフリル基を表わし、
W
1は、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、
Z
3乃至Z
16は、それぞれ独立して、下記式(4):
【化5】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基を表わす。なお、○は結合手を表わす。)で表わされる2価の基又は酸素原子を表わし、
m、l、k、j、i、h、g、f、e及びdは自然数を表わす。]
第5観点として、前記(B)成分が前記(A)成分より低い重量平均分子量を有する、第4観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第6観点として、前記式(5)乃至(10)中のR
11乃至R
52に置換された芳香族基が少なくとも1つの水素原子を含み、かつZ
3乃至Z
16が、それぞれ独立して、下記式(4):
【化6】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基を表わす。なお、○は結合手を表わす。)で表わされる2価の基を表わす、第4観点又は第5観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第7観点として、前記Aが水素原子を表わす、第6観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第8観点として、前記Y
1が下記式(11)で表わされるジアミンから誘導される、第1観点乃至第7観点のうちいずれか1つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
H
2N−Y
1−NH
2 (11)
(式中、Y
1は2価の芳香族基又は脂肪族基を表わす。)
第9観点として、前記2価の芳香族基がフェニル基である、第8観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第10観点として、前記架橋剤が2つ以上のエポキシ基と芳香族基とを有する化合物である、第1観点乃至第9観点のうちいずれか1つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第11観点として、前記架橋剤が6つ以下のエポキシ基を有する化合物であって、かつ該化合物はエポキシ基と芳香族基とを結合する炭素原子数1乃至10のアルキル基を有する、第10観点に記載のディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
第12観点として、前記成分(A)100質量部に対して、前記(B)成分と前記(C)成分との合計質量部が20質量部以下である、第1観点乃至第11観点のうちいずれか1つに記載の樹脂組成物に関する。
第13観点として、第1観点乃至第12観点のうちいずれか1つに記載のディスプレイ基板用樹脂組成物が少なくとも1種の溶剤に溶解していることを特徴とする、ワニスに関する。
第14観点として、第13観点に記載のワニスを用いて摂氏230度以上で焼成することにより得られる、硬化膜に関する。
第15観点として、基板上に第14観点に記載の硬化膜からなる層を少なくとも一層備える、構造体に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物は、適度な線膨張係数及び適度な柔軟性を有する有用な硬化膜を形成することができる。したがって、該硬化膜は、フレキシブルディスプレイ用ベースフィルム等に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含むディスプレイ基板用樹脂組成物に関する。
(A)成分:下記式(1)で表わされる構造単位を含むポリアミック酸又は下記式(2)で表わされる構造単位を含むポリイミド
【化7】
[式(1)及び式(2)中、X
1は芳香族基と2つのカルボニル基を有する4価の有機基を表わし、Y
1は芳香族基又は脂肪族基を含む2価の有機基を表わし、nは自然数を表わす。]
(B)成分:(A)成分より低分子量のカルボニル基を有する化合物又はその重合体
(C)成分:架橋剤
(D)成分:溶剤
【0010】
本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物における固形分の割合は、例えば1乃至100質量%、または5乃至100質量%であり、または50乃至100質量%であり、または80乃至100質量%である。ここで、固形分とはディスプレイ基板用樹脂組成物の全成分から溶剤を除去した残りの成分である。
本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物における前記ポリアミック酸又はポリイミドの含有量は、該樹脂組成物の固形分中の含有量に基づいて、通常は8乃至99.9質量%であり、好ましくは40乃至99質量%であり、より好ましくは70乃至99質量%である。
なお、本願明細書中において、ポリマーの重量平均分子量はポリスチレン換算値である。
【0011】
[ディスプレイ基板用樹脂組成物]
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、下記式(1)で表わされる構造単位を含むポリアミック酸又は下記式(2)で表わされる構造単位を含むポリイミドである。
【化8】
[式(1)及び式(2)中、X
1は芳香族基と2つのカルボニル基を有する4価の有機基を表わし、Y
1は芳香族基又は脂肪族基を含む2価の有機基を表わし、nは自然数を表わす。]
【0012】
[ポリアミック酸]
本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物に含まれるポリアミック酸は、酸無水物成分とジアミン成分とを溶剤中で重合させることで得られる。
ポリアミック酸は、公知の方法、例えば、窒素などの不活性ガス雰囲気中において、
下記式(12):
【化9】
(式中、X
1は芳香族基と2つのカルボニル基を有する4価の有機基を表わす。)で表される少なくとも1種の酸二無水物と、
下記式(11):
H
2N−Y
1−NH
2 (11)
(式中、Y
1は2価の芳香族基又は脂肪族基を表わす。)で表される少なくとも1種のジアミンとを溶剤に溶解し、反応させることで得られる。
【0013】
この時の反応温度は、−20乃至100℃であり、好ましくは20乃至60℃である。反応時間は、1乃至72時間である。
【0014】
本発明では、ポリアミック酸の反応溶液をそのまま、又は、希釈して使用することができ、或いは反応溶液から沈殿回収したポリアミック酸を適当な溶剤に再溶解させて使用することができる。希釈及び再溶解に用いる溶剤は、得られたポリアミック酸を溶解させるものであれば特に限定されないが、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
前記式(12)で表わされる酸二無水物としては、X
1が下記式(3)で表わされる構造である酸二無水物が好ましい。
【化10】
[式中、R
1乃至R
10は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、W
1で置換されていてもよいフェニル基、W
1で置換されていてもよいナフチル基、W
1で置換されていてもよいチエニル基又はW
1で置換されていてもよいフリル基を表し、
W
1は、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、下記式(4):
【化11】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基を表わす。なお、○は結合手を表わす。)で表わされる2価の基又は酸素原子を表わす。]
【0016】
前記式(12)で表わされる酸二無水物としては、例えば、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2−メチル−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2,5−ジトリフルオロメチル−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2−クロロ−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、2−フルオロ−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)及び2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、並びにN,N’−(1,4−フェニレン)ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロベンゾフラン−5−カルボキシアミド)及びN,N’−(1,4−フェニレン)ビス(N−メチル−1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロベンゾフラン−5−カルボキシアミド)等が挙げられる。
前記酸二無水物の中でも、本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数を有するものとする観点から、前記式(3)中のR
1乃至R
10が水素原子を表わし、
かつZ
1及びZ
2が酸素原子を表わす化合物である、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)(下記式(13))が好ましい。
【化12】
【0017】
前記式(11)で表わされる芳香族ジアミンは、本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数を有するものとする観点から、剛直で直線的な分子構造を有するジアミンを使用することが好ましい。そのようなジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン、2−メトキシ−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1,4−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン等が挙げられる。
前記芳香族ジアミンの中でも、p−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミンがより好ましい。
【0018】
前記式(11)で表わされる脂肪族ジアミンは、例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’−メチレンビス(3−メチルシクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−シクロヘキサンジアミン、シス−1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。
前記脂肪族ジアミンの中でも、本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数を有するものとする観点から、剛直で直線的な分子構造を有するジアミンを使用することが好ましく、例えばトランス−1,4−シクロヘキサンジアミンが好適に用いられる。
【0019】
ポリアミック酸の生成反応に使用される溶剤としては特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホルアミド、ジメチルスルホオキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,2−ジメトキシエタン−ビス(2−メトキシエチル)エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ピコリン、ピリジン、アセトン、クロロホルム、トルエン、キシレン等の非プロトン性溶剤、及びフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール等のプロトン性溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
また、上記反応において、酸二無水物成分とジアミン成分との割合は、モル比で酸二無水物成分/ジアミン成分=0.8乃至1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1に近いほど生成する重合体の重合度は大きくなる。重合度が小さすぎるとポリイミド硬化膜の強度が不十分となり、また重合度が大きすぎるとポリイミド硬化膜形成時の作業性が悪くなる場合がある。
【0021】
生成されるポリアミック酸の重量平均分子量は、ポリアミック酸を含むディスプレイ基板用樹脂組成物から得られる硬化膜の強度を維持するために、ポリスチレン換算にて3,000乃至100,000が好ましい。重量平均分子量が3,000未満では、できあがったフィルムが脆くなる可能性があり、一方、重量平均分子量が100,000を超えるとポリアミック酸のワニスの粘度が高くなり過ぎる可能性があり、その結果、取扱いが難しくなるからである。
【0022】
[ポリイミド]
本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物に含まれるポリイミドは、上述のように合成したポリアミック酸を、加熱により脱水閉環(熱イミド化)して得ることができる。なお、この際、ポリアミック酸を溶剤中でイミドに転化させ、溶剤可溶性のポリイミドとして用いることも可能である。また、公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環する方法も採用することができる。加熱による方法は、100乃至300℃であり、好ましくは120乃至250℃の任意の温度で行うことができる。化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどと、無水酢酸などとの存在下で行うことができ、この際の温度は、−20乃至200℃の任意の温度を選択することができる。
【0023】
本発明では、ポリイミドの反応溶液をそのまま、又は、希釈して使用することができ、或いは反応溶液にメタノール、エタノールなどの貧溶媒を加えて沈殿回収したポリイミドを適当な溶剤に再溶解させて使用することができる。希釈及び再溶解に用いる溶剤は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されないが、例えば、m−クレゾール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
生成されるポリイミドの重量平均分子量は、ポリイミドを含むディスプレイ基板用樹脂組成物から得られる硬化膜の強度を維持するために、ポリスチレン換算にて3,000乃至100,000が好ましい。重量平均分子量が3,000未満では、できあがったフィルムが脆くなる可能性があり、一方、重量平均分子量が100,000を超えるとポリイミドのワニスの粘度が高くなり過ぎる可能性があり、その結果、取扱いが難しくなるからである。
【0025】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、(A)成分より低分子量のカルボニル基を有する化合物又はその重合体である。
【0026】
また、(B)成分は、好ましくは下記式(5)乃至(10)で表わされる化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である。
【化13】
[式(5)乃至式(10)中、R
11乃至R
52は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基、W
1で置換されていてもよいフェニル基、W
1で置換されていてもよいナフチル基、W
1で置換されていてもよいチエニル基又はW
1で置換されていてもよいフリル基を表わし、
W
1は、炭素原子数1乃至10のアルキル基、炭素原子数1乃至10のハロアルキル基、炭素原子数1乃至10のアルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基又はカルボキシル基を表わし、
Z
3乃至Z
16は、それぞれ独立して、下記式(4):
【化14】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基を表わす。なお、○は結合手を表わす。)で表わされる2価の基又は酸素原子を表わし、
m、l、k、j、i、h、g、f、e及びdは自然数を表わす。]
【0027】
本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数を有するものとする観点から、前記式(5)乃至(10)で表わされる化合物の重量平均分子量は、上記(A)成分のポリアミック酸又はポリイミドの重量平均分子量より、低いほうが好ましい。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数及び適度な柔軟性を有するものとする観点から、前記式(5)乃至(10)で表わされた化合物において、R
11乃至R
52に置換された芳香族基が少なくとも1つの水素原子を含み、かつZ
3乃至Z
16が、それぞれ独立して、下記式(4):
【化15】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、フェニル基又はナフチル基を表わす。なお、○は結合手を表わす。)で表わされる2価の基を表わす化合物が好ましい。
その中でも、前記Aが水素原子である化合物がより好ましい。
【0029】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、架橋剤(以下、架橋性化合物ともいう。)である。架橋性化合物は、そのポジ型感光性樹脂組成物を用いて得られる塗膜を、硬化膜に転換する工程(以下、最終硬化時という。)で、ポリアミック酸又はポリイミドの少なくとも一方に含有される有機基と、反応し得る基を有する化合物であれば特に限定されない。そのような化合物としては、例えば、2つ以上のエポキシ基を含有する化合物や、アミノ基の水素原子が、メチロール基、アルコキシメチル基又はその両方で置換された基を有する、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体又はグリコールウリル等が挙げられる。このメラミン誘導体及びベンゾグアナミン誘導体は、二量体又は三量体であっても良く、又、単量体、二量体及び三量体から任意に選ばれる混合物であっても良い。これらのメラミン誘導体及びベンゾグアナミン誘導体は、トリアジン環1個当たり、メチロール基又はアルコキシメチル基を平均3個以上6個未満有するものが好ましい。
また、本発明に用いられる架橋剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
以下に、架橋性化合物の具体例を挙げるが、これに限定されない。
2つ以上のエポキシ基を含有する化合物としては、エポリードGT−401、エポリードGT−403、エポリードGT−301、エポリードGT−302、セロキサイド2021、セロキサイド3000(以上、ダイセル化学工業(株)製)等のシクロヘキセン構造を有するエポキシ化合物;エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009、エピコート1010、エピコート828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ化合物;エピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールF型エポキシ化合物;エピコート152、エピコート154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、EPPN202(以上、日本化薬(株)製)等のフェノールノボラック型エポキシ化合物;ECON−102、ECON−103S、ECON−104S、ECON−1020、ECON−1025、ECON−1027(以上、日本化薬(株)製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のクレゾールノボラック型エポキシ化合物;V8000−C7(DIC(株)製)等のナフタレン型エポキシ化合物;デナコールEX−252(ナガセケムテックス(株)製)、CY175、CY177、CY179、アラルダイトCY−182、アラルダイトCY−192、アラルダイトCY−184(以上、BASF社製)、エピクロン200、エピクロン400(以上、DIC(株)製)、エピコート871、エピコート872(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、ED−5662(以上、セラニーズコーティング(株)製)等の脂環式エポキシ化合物;デナコールEX−611、デナコールEX−612、デナコールEX−614、デナコールEX−622、デナコールEX−411、デナコールEX−512、デナコールEX−522、デナコールEX−421、デナコールEX−313、デナコールEX−314、デナコールEX−312(以上
、ナガセケムテックス(株)製)等の脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
【0031】
アミノ基の水素原子がメチロール基、アルコキシメチル基又はその両方で置換された基を有する、メラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体又はグリコールウリルとしては、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30(以上、(株)三和ケミカル製);サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350、サイメル370、サイメル771、サイメル325、サイメル327、サイメル703、サイメル712等のメトキシメチル化メラミン;サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル212、サイメル253、サイメル254等のメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン;サイメル506、サイメル508等のブトキシメチル化メラミン;サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン;サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1123−10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン;サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル;サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル(以上、三井サイアナミッド(株)製)等が挙げられる。
【0032】
前記架橋剤の中でも、本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数及び適度な柔軟性を有するものとする観点から、架橋剤は2つ以上のエポキシ基と芳香族基とを有する化合物が好ましく、特に6つ以下のエポキシ基を有する化合物であって、かつ該化合物はエポキシ基と芳香族基とを結合する炭素原子数1乃至10のアルキル基を有するものがより好ましい。具体的にはV8000−C7(DIC(株)製)のナフタレン型エポキシ化合物が好ましい。
【0033】
また、本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物における上記(B)成分と(C)成分との合計含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂組成物の保存安定性をより向上させる観点から、上記(A)成分100質量部に対して、上記(B)成分と(C)成分との合計質量部は20質量部以下が好ましく、本発明の樹脂組成物から得られる硬化膜が十分に低い線膨張係数を有するものとする観点から、15質量部以下がより好ましい。
【0034】
<(D)成分>
本発明の(D)成分は、溶剤である。
(D)成分である溶剤は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶解させるものであれば特に限定されないが、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。
【0035】
本発明の樹脂組成物における(D)成分である溶剤の含有量としては、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計質量部に対して、0.1質量部以上である。
【0036】
[ワニス及び硬化膜の製造方法]
本発明のディスプレイ基板用樹脂組成物からなる硬化膜を形成する具体的な方法としては、まず、樹脂組成物を溶剤に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材料)とし、該ワニスを基板上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等によって塗布して塗膜を得る。そして得られた塗膜を
、ホットプレート、オーブン等で焼成することにより硬化膜が形成される。焼成温度としては、通常100乃至400℃、好ましくは100乃至350℃である。
また前記基板としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。
【0037】
前記ワニスの形態において使用する溶剤としては、ディスプレイ基板用樹脂組成物を溶解させるものであれば特に限定されないが、例えば、上記ポリアミック酸の生成反応において使用される溶剤等が挙げられる。これら溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また上記溶剤に樹脂組成物を溶解又は分散させる濃度は任意であるが、ディスプレイ基板用樹脂組成物と溶剤の総質量(合計質量)に対して、ディスプレイ基板用樹脂組成物の濃度は5乃至40質量%であり、樹脂組成物の保存安定性をより向上させる観点から好ましくは10乃至20質量%であり、樹脂組成物をより均一に塗布させる観点からより好ましくは10乃至15質量%である。
ディスプレイ基板用樹脂組成物から形成される硬化膜の厚さは特に限定されないが、通常1乃至50μm、好ましくは5乃至40μmである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例で用いる略語の説明]
以下の実施例で用いる略語の意味は次の通りである。
<酸二無水物>
TAHQ:p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(下記式(13))
【化16】
<酸塩化物>
TBCCCl:1,3,5−ベンゼントリカルボニルトリクロリド
<アミン類>
p−PDA:p−フェニレンジアミン
m−PDA:m−フェニレンジアミン
<架橋剤>
V8000−C7:DIC(株)製ナフタレン型エポキシ化合物
<溶媒類>
NMP:N−メチルピロリドン
【0039】
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
ポリマーの重量平均分子量(以下、Mwと略す。)と分子量分布は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex[登録商標]カラムKF803L及びKF805L)を用い、溶出溶媒としてジメチルホルムアミドを流量1mL/分、カラム温度50℃の条件で測定した。なお、Mwはポリスチレン換算値とした。
【0040】
<合成例1:ポリアミック酸(P1)の合成>
p−PDA 25.2g(0.233モル)をNMP 850gに溶解し、TAHQ 105g(0.229モル)と、再度NMP 20gを添加し、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。得られたポリマーのMwは67,700、分子量分布は2.19であった。
【0041】
<合成例2:ポリアミド(PA1)の合成>
m−PDA 4.48g(0.041モル)をNMP 80gに溶解し、イソフタル酸クロリド10.5g(0.051モル)を添加した後、再度NMP 5gを添加し、窒素雰囲気下、23℃で24時間反応させた。その後、この反応生成物を純水2000gに投入し、沈殿物を濾過後、減圧乾燥し、目的のポリアミドを得た。得られたポリマーの収量は4.96gであり、収率は33.1%であった。また得られたポリマーのMwは2,600、分子量分布は40であった。
【0042】
<合成例3:ポリアミド(PA2)の合成>
合成例2と同様の方法で、目的のポリアミドを合成した。使用したm−PDA、イソフタル酸クロリド、ポリマーの収量、収率、Mw及び分子量分布を表1に示す。
【0043】
【表1】
<合成例4 高分岐ポリアミド(PA3)の合成>
窒素下、100mL四口フラスコに、TBCCCl 5g(18.8mmol)とNMP 22.2gとを仕込み、PDA 1.53g、(14.1mmol)およびアニリン1.32g(14.1mmol)をNMP 22.2gに溶解した溶液を、内温20℃で30分かけて滴下して重合した。滴下後、室温下で30分撹拌し、純水5gを滴下してからさらに30分撹拌した後、反応液を純水(750g)へ加えて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、再度、THF 40gと純水3gの混合溶媒に溶解させ、これを純水750gへ加えて再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、減圧乾燥機で150℃、3時間乾燥し、高分岐ポリアミド5.48g(収率37%)を得た。PA3のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは12900、多分散度Mw/Mnは3.91であった
。【0044】
<サンプル作製:ワニスの調製>
表2に示す組成に従い、ポリマー溶液、ポリアミド、架橋剤(V80000−C7)及び溶剤を混合し、室温(およそ25℃)で10時間以上攪拌して均一な溶液とすることにより、ディスプレイ基板用樹脂組成物(ワニス)を調製した。
【0045】
【表2】
【0046】
<塗布膜、及び線膨張係数の評価>
上記で調製したディスプレイ基板用樹脂組成物(ワニス)を次の手法で評価した。評価手法と評価結果(表3)を下記に示す。
[キュア前膜厚・薄離方法]
表2のディスプレイ基板用樹脂組成物(ワニス)をそれぞれ、100mm×100mmのガラス基板上にバーコーター(段差250μm)を用いて塗布し、温度110度10分間オーブンで焼成した。その後、表3に記載した焼成条件にて再度焼成を行った。得られた塗布膜の膜厚は接触式膜厚測定器((株)ULVAC製Dektak 3ST)を使用し、測定した。その後、ガラス基板ごとに1Lビーカー内の70度の純水中に静置し、フィルムの剥離を行った。
【0047】
[線膨張係数]
上記で得られたフィルムから20mm×5mm状の短冊を作製し、TMA−4000SA(ブルカー・エイエックスエス(株)製)を用いて、50度から400度まで5度/分の条件で昇温させ、その後、100度から200度の線膨張係数を測定した。
【0048】
【表3】
【0049】
[成分(B)の合成における酸及びアミンの割合と線膨張係数との関係]
成分(A):ポリアミック酸(TAHQ:p−PDA=100:100)、成分(C):V8000−C7(ナフタレン型エポキシ化合物)及び成分(D):NMPを用いて、成分(B)であるポリアミドの合成における酸とアミンとの割合と線膨張係数の関係を検討した。
なお、上記<塗布膜、及び線膨張係数の評価>で記載した手法と同様の手法で線膨張係数を測定した。その結果を表4に示す。
【0050】
【表4】
【0051】
表4の結果より、成分(B)であるポリアミドの合成において、酸/アミンが100/80又は60/100の場合、適度な線膨張係数及び適度な柔軟性を有するポリイミドフィルムを形成することができた。