特許第6075563号(P6075563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075563光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法及び光学活性イソキサゾリン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075563
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法及び光学活性イソキサゾリン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 261/04 20060101AFI20170130BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20170130BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   C07D261/04CSP
   C07B61/00 300
   B01J31/02 102Z
【請求項の数】5
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2013-543024(P2013-543024)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(86)【国際出願番号】JP2012078992
(87)【国際公開番号】WO2013069731
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2011-244198(P2011-244198)
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】外山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】森山 祐二
(72)【発明者】
【氏名】的場 一隆
(72)【発明者】
【氏名】八尾坂 学
(72)【発明者】
【氏名】池田 栄達
【審査官】 鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/104089(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/063910(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/067272(WO,A1)
【文献】 特開2003−128688(JP,A)
【文献】 特開平07−070040(JP,A)
【文献】 特開平06−336476(JP,A)
【文献】 特開平04−342566(JP,A)
【文献】 DEHMLOW Eckehard Volker et al.,Monodeazacinchona alkaloid derivatives: synthesis and preliminary applications as phase-transfer cat,European Journal of Organic Chemistry,2002年,no.13,pp.2087-2093
【文献】 MATOBA Kazutaka et al.,Enantioselective Synthesis of Trifluoromethyl-Substituted 2-Isoxazolines:Asymmetric Hydroxylamine/En,Angew. Chem. Int. Ed.,2010年,vol.49,pp.5762-5766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 261/04
B01J 31/02
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、R1aは、C1〜C6ハロアルキルを表し、
A1a及びA2aは、C-Yaを表し、
Yaは、水素原子を表すか、又は隣接する2つのYaが-CH=CH-CH=CH-を形成することにより、2つのYaのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成し、
A3aは、CHを表し、
A4aは、CH又はC-CH3を表し、
A5aびA7aは、各々独立してC-Xaを表し、
A6aは、C-Hを表し、
Xa、ハロゲン原子又はC1〜C6ハロアルキルを表し、各々のXa は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R5aは、-C(O)NH2、-C(O)NHR6a又は-C(S)NHR6a表し、
R6aは、C1〜C6アルキル、R9aによって任意に置換されたC1〜C6アルキル、C3〜C6アルケニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル、E-14又はE-15を表し、
R9aは、ハロゲン原子又は-C(O)N(R16a)R15a表し、
E-14及びE-15は、それぞれ下記の構造式で表される複素環を表し、
【化2】
Z1は、水素原子、C1〜C6アルキル又はC1〜C6ハロアルキルを表し
R15aは、C1〜C6アルキル又はC1〜C6ハロアルキルを表し、
R16aは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表し、
R23aは、C1〜C4アルキルを表し、
p3は、0を表し、
q2は、0をす。] で表されるα,β−不飽和カルボニル化合物と、ヒドロキシルアミンを、溶媒中、塩基及び式(9)
【化3】
[式中、X1b-は負の電荷を持つイオンを表す。]で表されるキラル相間移動触媒の存在下で反応させることによる、式(6):
【化4】
[式中、R1a、R5a、Xa、A1a、A2a、A3a、A4a、A5a、A6a及びA7aは、前記と同じ意味を表す。]で表される光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【請求項2】
式(1)において、
R1aは、-CF3を表し、
R5aは、-C(O)NH2又は-C(O)NHR6aを表す、請求項1記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【請求項3】
式(1)において、
R6aは、C1〜C6アルキル、R9aによって任意に置換されたC1〜C6アルキル、C3〜C6アルケ
ニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル又はE-14を表し、
R9aは、-C(O)N(R16a)R15aを表し、
Z1は、C1〜C6アルキルを表す、請求項記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【請求項4】
式(1)において、
R6aは、R9aによって任意に置換されたC1〜C6アルキル又はE-14を表し、
R15aは、C1〜C6ハロアルキルを表し、
R16aは、水素原子を表す請求項3記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【請求項5】
(9)において、
X1b-はハロゲンイオン、水酸化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、アセテート、トリフラート、フェノキシド又はポリスチレンで置換されていてもよいスルホン酸イオンを表す、請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医農薬あるいは電子材料等の機能性材料の製造に有用な光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)アリール化合物の5位光学活性体を製造する方法としては、特許文献1又は非特許文献1が知られている。
また、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の5位光学活性体を製造する方法としては、ジアステレオマー塩法による製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
また、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)−N−チエタン−3−イル−ベンズアミド化合物及びその周辺化合物の5位光学活性体を製造する方法としては、特許文献3が知られている。
また、一般的な方法として、ラセミ体の(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)アリール化合物を光学活性な担体を担持したカラムによる光学分割により光学活性体とする方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/063910号
【特許文献2】特開2011-051977号公報
【特許文献3】国際公開第2011/104089号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Angewandte Chemie International Edition, 2010年、49巻、5762頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、α,β−不飽和カルボニル化合物とヒドロキシルアミンを原料として、キラル相間移動触媒を用いる触媒的不斉環化反応により、(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)アリール化合物の5位光学活性体を製造する方法を提供しているが、実施例における鏡像体過剰率は最大で78%eeであり、エナンチオ選択性において改善の余地があった。
非特許文献1では、エナンチオ選択性は最高で94%eeと高かったが、強い生理活性を持つ置換基パターンにおけるS体エナンチオマーの合成例ではエナンチオ選択性は81%eeと低下し、基質適用範囲が狭く、改善の余地があった。
特許文献2では、4−(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)安息香酸化合物の5位光学活性体を製造する方法として、ジアステレオマー塩法による製造方法を提供しているが、ジアステレオマー塩法のような光学分割法では、例え合成段階において収率が100%であっても、最終的な収率が50%を超えることはなく、経済的観点かつグリーン・サステイナブルケミストリーの観点から改善の余地を残していた。
特許文献3では、エナンチオ選択性は最高で90%eeであったが、90%eeを超える結果の基質とキラル相間移動触媒の組合せが1例のみしか開示されておらず、基質適用範囲が狭く、改善の余地を残していた。
また、光学活性な担体を担持したカラムによる光学分割では、ジアステレオマー塩法より生産性が悪いうえに、ジアステレオマー塩法同様に最終的な収率が50%を超えることはなく、経済的観点かつグリーン・サステイナブルケミストリーの観点から改善の余地を残していた。
このように、既存の方法には、(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)アリール化合物の5位光学活性体を、触媒量の不斉源を用いて、基質適用範囲が広く、高収率且つ高エナンチオ選択的に製造する一般性の高い方法が無く、改善の余地を残している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意検討した結果、α,β−不飽和カルボニル化合物とヒドロキシルアミンを原料として、キラル相間移動触媒を用いる不斉環化反応において、基質のα,β−不飽和カルボニル化合物と触媒のキラル相間移動触媒の組合せを適切に選択すること、且つ反応条件を適切に選択することにより、(4,5−ジヒドロイソキサゾール−3−イル)アリール化合物の側鎖にアミド部位またはメチレンアミノ部位をもつ幅広い化合物群の5位光学活性体を、触媒量の不斉源を用いて、高収率、高エナンチオ選択的に製造できることを見いだし、発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記〔1〕〜〔12〕に関するものである。
〔1〕
式(1):
【化1】

[式中、R1aは、C1〜C6ハロアルキル又はC3〜C8ハロシクロアルキルを表し、
A1a、A2a、A3a及びA4aは、各々独立してN又はC-Yaを表し、
A5a、A6a及びA7aは、各々独立してN又はC-Xaを表し、
Xaは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、-SF5、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C1〜C6ハロアルコキシ(C1〜C6)ハロアルキル、C3〜C8ハロシクロアルキル、-OR2a、-OSO2R2a又は-S(O)rR2aを表し、各々のXa は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R2aは、C1〜C6アルキル、C1〜C4アルコキシ(C1〜C4)アルキル、C1〜C6ハロアルキル又はC1〜C3ハロアルコキシ(C1〜C3)ハロアルキルを表し、
Yaは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4a)R3aを表し、各々のYa は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
さらに2つのYaが隣接する場合には、隣接する2つのYaは-A8a=A9a-A10a=A11a-を形成することにより、2つのYaのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成してもよく、
A8a、A9a、A10a及びA11aは、各々独立してN又はC-Y1aを表し、
Y1aは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4a)R3aを表し、各々のY1aは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R3aは、C1〜C6アルキル、-CHO、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル又はC1〜C6ハロアルキルスルホニルを表し、
R4aは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表し、
R5aは、-C(O)NH2、-C(O)NHR6a、-C(S)NHR6a又は-L-NHR6aを表し、
R6aは、C1〜C6アルキル、R9aによって任意に置換されたC1〜C6アルキル、ベンゼン環によって縮環されていてもよいC3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルケニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル、-N(R11a)R10a、-C(O)OR12a、-C(O)NH2、-C(O)NHR12a、-C(R14a)=NOR13a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-5、D-7、D-10、D-11、D-12、D-14、D-15、D-18、D-31、D-32、D-42、D-43、D-45、D-46、D-48、E-1、E-2、E-3、E-4、E-7 、E-9〜E-20又はE-21を表し、
R9aは、ハロゲン原子、シアノ、アミノ、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6ハロシクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C6ハロアルキルスルフィニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-C(O)R15a、-C(O)OR15a、-C(O)NH2、-C(O)N(R16a)R15a、-C(S)NH2、-C(S)N(R16a)R15a、-C(R18a)=NOR17a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-1〜D-50又はE-1〜E-21を表し、
D-1〜D-50は、それぞれ下記の構造式で表される芳香族複素環を表し、
【化2】

【化3】

Zは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、C1〜C6アルキル、R19aによって任意に置換された(C1〜C6)アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C6ハロアルキルスルフィニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、-C(O)NH2、-C(S)NH2、-S(O)2NH2、-C(O)N(R21a)R20a、-C(S)N(R21a)R20a、C1〜C6アルキルアミノスルホニル又はジ(C1〜C6アルキル)アミノスルホニルを表し、p1, p2, p3又はp4が2以上の整数を表すとき、各々のZは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
E-1〜E-21は、それぞれ下記の構造式で表される複素環を表し、
【化4】

Z1は、水素原子、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、ベンジル、R19aによって任意に置換された(C1〜C6)アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、フェニルカルボニル、(Z)p1によって置換されたフェニルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C6ハロアルキルスルフィニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-C(O)NH2、-C(S)NH2、-S(O)2NH2、-C(O)N(R21a)R20a、-C(S)N(R21a)R20a、C1〜C6アルキルアミノスルホニル、ジ(C1〜C6アルキル)アミノスルホニル、E-17又はE-18を表し、
Z2は、水素原子又はC1〜C6ハロアルキルカルボニルを表し、
R10aは、C1〜C6ハロアルキル、-C(O)R15a、-C(O)OR15a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-3、D-4、D-18、D-42、D-45、D-46、D-48又はD-49を表し、
R11aは、水素原子、C1〜C6アルキル又はC3〜C6アルキニルを表し、
R12aは、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ(C1〜C4)アルキル、C1〜C6アルキルチオ(C1〜C4)アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C3〜C6アルケニル又はC3〜C6アルキニルを表し、
R13aは、水素原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6ハロシクロアルキル、C3〜C6アルケニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル、C3〜C6ハロアルキニル、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-42、D-45〜D-49、E-1〜E-4又はE-7を表し、
R14aは、水素原子、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ(C1〜C6)アルキル、C1〜C6アルキルチオ(C1〜C6)アルキル、C3〜C6シクロアルキル又はフェニルを表し、
R15aは、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C3〜C6シクロアルキル(C1〜C4)アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルコキシ(C1〜C6)アルキル、ヒドロキシ(C1〜C6)アルキル、フェニル、R24aによって置換されたフェニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルケニル又はC3〜C6アルキニルを表し、
R24aは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C6ハロアルキルスルフィニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、-C(O)NH2、-S(O)2NH2、C1〜C6アルキルアミノスルホニル又はジ(C1〜C6アルキル)アミノスルホニルを表し、
R16aは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表し、
R19aは、ヒドロキシ、C1〜C4アルコキシ又はC1〜C4アルキルチオを表し、
R20aは、水素原子、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルケニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル、-C(R17a)=NOR18a、-C(O)OR18a、-C(O)NH2、-C(O)N(R17a)R18a、-C(O)NHC(O)R18a、-C(O)N(R17a)C(O)OR18a、-N(R26a)R25a又はフェニルを表し、
R17aは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表し、
R18aは、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル又はC2〜C6アルケニルを表し、
R21aは、水素原子、C1〜C6アルキル又はC3〜C6アルキニルを表し、
R22aは、C1〜C6アルキル、フェニル又は(Z)p1によって置換されたフェニルを表し、
R23aは、C1〜C4アルキルを表し、q2, q3又はq4が2以上の整数を表すとき、各々のR23aは互いに同一であっても、又は互いに相異なっていてもよく、さらに、2つのR23aが同一の炭素原子上に置換している場合、2つのR23aは一緒になってオキソを形成してもよく、
R25aは、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシカルボニル、フェニル、R27aによって置換されたフェニル、D-42〜D-46又はD-47を表し、
R27aは、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルスルホニルを表し、
R26aは、水素原子、C1〜C6アルキル、C3〜C6アルケニル又はC3〜C6アルキニルを表し、
p1は、1〜5の整数を表し、
p2は、0〜4の整数を表し、
p3は、0〜3の整数を表し、
p4は、0〜2の整数を表し、
p5は、0又は1の整数を表し、
q2は、0〜5の整数を表し、
q3は、0〜7の整数を表し、
q4は、0〜9の整数を表し、
tは、0又は1の整数を表し、
Lは、-C(R7a)(R8a)-、-C(R7a)(R8a)CH2-又は-CH2C(R7a)(R8a)-を表し、
R7aは、水素原子、シアノ、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C6アルコキシカルボニル、-C(O)NH2又は-C(S)NH2を表し、
R8aは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表すか、或いは、R7aとR8aとが一緒になってC2〜C5アルキレン鎖を形成することにより、結合する炭素原子と共に3〜6員環を形成してもよく、このときこのアルキレン鎖は酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を1〜3個含んでもよく、
rは、0〜2の整数を表す。] で表されるα,β−不飽和カルボニル化合物と、ヒドロキシルアミンを、溶媒中、塩基及び式(2)、(3)、(4)又は(5):
【化5】

【化6】

[式中、X1b−は負の電荷を持つイオンを表し、
R1bは、Ybによって任意に置換されたエチル、Ybによって任意に置換されたエテニル、Ybによって任意に置換されたオキシラン−2−イル又は3位がYbによって任意に置換された4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イルを表し、
R2bは、ヒドロキシ、アミノ、C1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルによって任意に置換されたアミノを表し、
R3bは、水素原子又はC1〜C6アルコキシを表し、
R4bは、水素原子又はハロゲン原子によって任意に置換されたアリールを表し、
Qbは、窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子又は窒素オキサイド(N+-O-)を表し、
A1b、A2b、A3b、A4b、A5b及びA6bは、各々独立してN又はC-Ybを表し、
Ybは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4c)R3cを表し、各々のYb は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
さらに、隣接する2つのYbは-A7b=A8b-A9b=A10b-を形成することにより、2つのYbのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成してもよく、
A7b、A8b、A9b及びA10bは、各々独立してN又はC-Y1bを表し、
Y1bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4c)R3cを表し、各々のY1bは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R3cは、C1〜C6アルキル、-CHO、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル又はC1〜C6ハロアルキルスルホニルを表し、
R4cは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表す。]で表されるキラル相間移動触媒の存在下で反応させることによる、式(6):
【化7】

[式中、R1a、R5a、Xa、A1a、A2a、A3a、A4a、A5a、A6a及びA7aは、前記と同じ意味を表す。]で表される光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0008】
〔2〕
式(1)において、
R6aは、C1〜C6アルキル、R9aによって任意に置換されたC1〜C6アルキル、ベンゼン環によって縮環されていてもよいC3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルケニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル、-N(R11a)R10a、-C(O)OR12a、-C(O)NH2、-C(O)NHR12a、-C(R14a)=NOR13a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-5、D-7、D-10、D-11、D-12、D-14、D-15、D-18、D-31、D-32、D-42、D-43、D-45、D-46、D-48、E-1、E-2、E-3、E-4、E-7 、E-9〜E-16、E-19、E-20又はE-21を表し、
R9aは、ハロゲン原子、シアノ、アミノ、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6ハロシクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C6ハロアルキルスルフィニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-C(O)R15a、-C(O)OR15a、-C(O)NH2、-C(O)N(R16a)R15a、-C(S)NH2、-C(S)N(R16a)R15a、-C(R18a)=NOR17a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-1〜D-50、E-1〜E-16、E-19、E-20又はE-21を表す、上記〔1〕記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0009】
〔3〕
式(1)において、
R1aは、-CF3を表し、
A1a及びA2aは、C-Yaを表し、
Yaは、水素原子を表すか、又は隣接する2つのYaが-CH=CH-CH=CH-を形成することにより、2つのYaのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成し、
A3aは、CHを表し、
A4aは、CH又はC-CH3を表し、
R6aは、C1〜C6アルキル、R9aによって任意に置換されたC1〜C6アルキル、ベンゼン環によって縮環されていてもよいC3〜C6シクロアルキル、C3〜C6アルケニル、C3〜C6ハロアルケニル、C3〜C6アルキニル、-N(R11a)R10a、-C(O)OR12a、-C(O)NH2、-C(O)NHR12a、-C(R14a)=NOR13a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-5、D-7、D-10、D-11、D-12、D-14、D-15、D-18、D-31、D-32、D-42、D-43、D-45、D-46、D-48、E-1、E-2、E-3、E-4、E-7 、E-9〜E-16、E-19、E-20又はE-21を表し、
R9aは、ハロゲン原子、シアノ、アミノ、C3〜C6シクロアルキル、C3〜C6ハロシクロアルキル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C6ハロアルキルスルフィニル、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-C(O)R15a、-C(O)OR15a、-C(O)NH2、-C(O)N(R16a)R15a、-C(S)NH2、-C(S)N(R16a)R15a、-C(R18a)=NOR17a、フェニル、(Z)p1によって置換されたフェニル、D-1〜D-50 、E-1〜E-16、E-19、E-20又はE-21を表す、上記〔1〕記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0010】
〔4〕
式(2)、(3)、(4)及び(5)において、
A1b及びA2bは、C-Ybを表し、かつ隣接する2つのYbが-A7b=A8b-A9b=A10b-を形成することにより、2つのYbのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成し、
A7b、A8b、A9b及びA10bは、各々独立してN又はC-Y1bを表す、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0011】
〔5〕
式(1)において、
R6aは、R9aによって任意に置換されたC1アルキル、E-17又はE-18を表し、
R9aは、E-17又はE-18を表し、
式(2)、(3)、(4)及び(5)において、
A1b及びA2bは、C-Ybを表し、かつ隣接する2つのYbが-A7b=A8b-A9b=A10b-を形成することにより、2つのYbのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成し、
A7b、A8b、A9b及びA10bは、各々独立してN又はC-Y1bを表す、上記〔1〕記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0012】
〔6〕
式(2)、(3)、(4)及び(5)において、
R1bはエチル、エテニル又は3位がYbによって任意に置換された4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イルを表し、
R2bはヒドロキシを表し、
R4bは水素原子を表し、
Qbは窒素原子又は窒素オキサイド(N+-O-)を表す、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0013】
〔7〕
式(2)、(3)、(4)及び(5)において、
X1b−はハロゲンイオン、水酸化物イオン、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、アセテート、トリフラート、フェノキシド又はポリスチレンで置換されていてもよいスルホン酸イオンを表す、上記〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載の光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法。
【0014】
〔8〕
式(6):
【化8】

[式中、R1a、Xa、A1a、A2a、A3a、A4a、A5a、A6a及びA7aは、〔1〕に記載の定義と同じ意味を表し、
R5aは、-C(O)NH2を表す。]で表される光学活性イソキサゾリン化合物。
【0015】
〔9〕
式(6)において、
R1aは、-CF3を表し、
A1a及びA2aは、C-Yaを表し、
Yaは、水素原子を表すか、又は隣接する2つのYaが-CH=CH-CH=CH-を形成することにより、2つのYaのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成し、
A3aはCHを表し、
A4aはCH又はC-CH3を表す、上記〔8〕記載の光学活性イソキサゾリン化合物。
【0016】
〔10〕
式(2)、(3)、(4)又は(5):
【化9】

【化10】

[式中、X1b−は負の電荷を持つイオンを表し、
R1bはYbによって任意に置換されたエチル、Ybによって任意に置換されたエテニル、Ybによって任意に置換されたオキシラン−2−イル又は3位がYbによって任意に置換された4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イルを表し、
R2bはヒドロキシ、アミノ、C1〜C6アルコキシ又はC1〜C6アルキルによって任意に置換されたアミノを表し、
R3bは水素原子又はC1〜C6アルコキシを表し、
R4bは水素原子又はハロゲン原子によって任意に置換されたアリールを表し、
Qbは窒素原子、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子、ビスマス原子又は窒素オキサイド(N+-O-)を表し、
A1b、A2b、A3b、A4b、A5b及びA6bは、各々独立してN又はC-Ybを表し、
Ybは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4c)R3cを表し、各々のYbは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
さらに、隣接する2つのYbは-A7b=A8b-A9b=A10b-を形成することにより、2つのYbのそれぞれが結合する炭素原子と共に6員環を形成してもよく、
A7b、A8b、A9b及びA10bは、それぞれ独立してN又はC-Y1bを表し、
Y1bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4c)R3cを表し、各々のY1bは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
R3cは、C1〜C6アルキル、-CHO、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6ハロアルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、C1〜C6アルキルチオカルボニル、C1〜C6アルコキシチオカルボニル、C1〜C6アルキルジチオカルボニル、C1〜C6アルキルスルホニル又はC1〜C6ハロアルキルスルホニルを表し、
R4cは、水素原子又はC1〜C6アルキルを表す。]で表されるキラル相間移動触媒
{ただし、式(7)乃至(10):
【化11】

[式中、X1b−は負の電荷を持つイオンを表す。]で表されるキラル相関移動触媒は除外する。}。
【0017】
〔11〕
R2bはヒドロキシを表し、
R3bは水素原子又はメトキシを表し、
R4bは水素原子を表し、
Qbは窒素原子、又は窒素オキサイド(N+-O-)を表し、
Ybは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4c)R3cを表し、各々のYbは互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよい、上記〔10〕記載のキラル相間移動触媒。
【0018】
〔12〕
式(11)又は(12):
【化12】
[式中、R2bはヒドロキシを表し、
R3bは水素原子又はメトキシを表し、
R4bは水素原子を表し、
Qbは窒素原子又は窒素オキサイド(N+-O-)を表し、
A3b、A4b、A5b及びA6bは、C-Ybを表し、
Ybは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロアルキル、C1〜C4アルコキシ、C1〜C4ハロアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロアルキルチオ、C1〜C6アルキルスルホニル、C1〜C6ハロアルキルスルホニル、-NH2又は-N(R4c)R3cを表し、各々のYb は互いに同一であっても又は互いに相異なっていてもよく、
A7b、A8b、A9b及びA10bは、C-Y1bを表す。]で表される、上記〔10〕記載のキラル相間移動触媒
{ただし、以下の式(7)乃至(10):
【化13】

[式中、X1b−は負の電荷を持つイオンを表す、]によって表されるキラル相関移動触媒は除外する。}。
【発明の効果】
【0019】
本発明は農薬、特に国際公開第05/085216号パンフレット記載の農業害虫、ハダニ類、哺乳動物または鳥類の内部もしくは外部寄生虫に対して優れた殺虫・殺ダニ活性を有する化合物の新規な光学活性製造中間体又は最終物原体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に記載の式(1)で表される化合物は、E-体及びZ-体の幾何異性体が存在するが、本発明はこれらE-体、Z-体又はE-体及びZ-体を任意の割合で含む混合物を包含するものである。また、本明細書に記載の式(4)で表される化合物には、1個又は2個以上の不斉炭素原子の存在に起因する光学活性体が存在するが、本明細書に記載の化合物は全ての光学活性体又はラセミ体を包含する。
【0021】
本明細書に記載の化合物のうちで、常法に従って酸付加塩にすることができるものは、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸等のハロゲン化水素酸の塩、硝酸、硫酸、燐酸、塩素酸、過塩素酸等の無機酸の塩、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸の塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、フマール酸、酒石酸、蓚酸、マレイン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、マンデル酸、アスコルビン酸、乳酸、グルコン酸、クエン酸等のカルボン酸の塩又はグルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸の塩とすることができる。
或いは、本明細書に記載の化合物のうちで、常法に従って金属塩にすることができるものは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属の塩、カルシウム、バリウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属の塩又はアルミニウムの塩とすることができる。
【0022】
次に、本明細書において示した各置換基の具体例を以下に示す。ここで、n-はノルマル、i-はイソ、s-はセカンダリー及びt-はターシャリーを各々意味し、Phはフェニルを意味する。
【0023】
本明細書に記載の化合物におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。尚、本明細書中「ハロ」の表記もこれらのハロゲン原子を表す。
【0024】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0025】
本明細書におけるアリールの表記は、フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が具体例として挙げられる。
【0026】
本明細書におけるヘテロアリール基の表記は、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピラニル基、3−ピラニル基、4−ピラニル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、2−ベンゾチエニル基、3−ベンゾチエニル基、4−ベンゾチエニル基、5−ベンゾチエニル基、6−ベンゾチエニル基、7−ベンゾチエニル基、1−イソベンゾチエニル基、4−イソベンゾチエニル基、5−イソベンゾチエニル基、2−クロメニル基、3−クロメニル基、4−クロメニル基、5−クロメニル基、6−クロメニル基、7−クロメニル基、8−クロメニル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、1−イミダゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジニル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、1−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−インダゾリル基、2−インダゾリル基、3−インダゾリル基、4−インダゾリル基、5−インダゾリル基、6−インダゾリル基、7−インダゾリル基、1−プリニル基、2−プリニル基、3−プリニル基、6−プリニル基、7−プリニル基、8−プリニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、1−フタラジニル基、5−フタラジニル基、6−フタラジニル基、2−ナフチリジニル基、3−ナフチリジニル基、4−ナフチリジニル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、2−キナゾリニル基、4−キナゾリニル基、5−キナゾリニル基、6−キナゾリニル基、7−キナゾリニル基、8−キナゾリニル基、3−シンノリニル基、4−シンノリニル基、5−シンノリニル基、6−シンノリニル基、7−シンノリニル基、8−シンノリニル基、2−プテニジニル基、4−プテニジニル基、6−プテニジニル基、7−プテニジニル基及び3−フラザニル基等が具体例として挙げられる。
【0027】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えばフルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、ヨードメチル基、ジフルオロメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ブロモフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、ブロモクロロフルオロメチル基、ジブロモフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2-クロロ-2-フルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2-ブロモ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジフルオロエチル基、2-ブロモ-2-クロロ-2-フルオロエチル基、2-ブロモ-2,2-ジクロロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、2-クロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、2-フルオロプロピル基、2-クロロプロピル基、2-ブロモプロピル基、2-クロロ-2-フルオロプロピル基、2,3-ジクロロプロピル基、2-ブロモ-3-フルオロプロピル基、3-ブロモ-2-クロロプロピル基、2,3-ジブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-ブロモ-3,3-ジフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基、2,3-ジクロロ-1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2-フルオロ-1-メチルエチル基、2-クロロ-1-メチルエチル基、2-ブロモ-1-メチルエチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2-フルオロブチル基、2-クロロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、4-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブチル基、2-フルオロ-2-メチルプロピル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、2-クロロ-1,1-ジメチルエチル基、2-ブロモ-1,1-ジメチルエチル基、5-クロロ-2,2,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、トリデカフルオロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0028】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよい。例えばシクロプロピル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、2,2-ジメチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2-メチルシクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0029】
本明細書におけるCa〜Cbハロシクロアルキルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの単環又は複合環構造を形成することが出来る。また、各々の環は指定の炭素原子数の範囲でアルキル基によって任意に置換されていてもよく、ハロゲン原子による置換は環構造部分であっても、側鎖部分であっても、或いはそれらの両方であってもよく、さらに、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えば2,2-ジフルオロシクロプロピル基、2,2-ジクロロシクロプロピル基、2,2-ジブロモシクロプロピル基、2,2-ジフルオロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジクロロ-1-メチルシクロプロピル基、2,2-ジブロモ-1-メチルシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、2-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基、3-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキシル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0030】
本明細書におけるCa〜Cbアルケニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、例えばビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、2-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、2-ヘキセニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2,4-ジメチル-2,6-ヘプタジエニル基、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0031】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルケニルの表記は、炭素原子に結合した水素原子が、ハロゲン原子によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の二重結合を有する不飽和炭化水素基を表す。このとき、2個以上のハロゲン原子によって置換されている場合、それらのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。例えば2,2-ジクロロビニル基、2-フルオロ-2-プロペニル基、2-クロロ-2-プロペニル基、3-クロロ-2-プロペニル基、2-ブロモ-2-プロペニル基、3-ブロモ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジクロロ-2-プロペニル基、3,3-ジクロロ-2-プロペニル基、2,3-ジブロモ-2-プロペニル基、2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル基、2,3,3-トリクロロ-2-プロペニル基、1-(トリフルオロメチル)エテニル基、3-クロロ-2-ブテニル基、3-ブロモ-2-ブテニル基、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル基、3,4,4-トリフルオロ-3-ブテニル基、3-クロロ-4,4,4-トリフルオロ-2-ブテニル基、3-ブロモ-2-メチル-2-プロペニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0032】
本明細書におけるCa〜Cbアルキニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状で、且つ分子内に1個又は2個以上の三重結合を有する不飽和炭化水素基を表し、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、2-ペンチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基、2-ヘキシニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0033】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、i-ブチルオキシ基、s-ブチルオキシ基、t-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0034】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルコキシの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-O-基を表し、例えばジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、クロロジフルオロメトキシ基、ブロモジフルオロメトキシ基、2-フルオロエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2,-テトラフルオロエトキシ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリクロロ-1,1-ジフルオロエトキシ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルオキシ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ基、ヘプタフルオロプロピルオキシ基、2-ブロモ-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルオキシ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0035】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-基を表し、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0036】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルチオの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-S-基を表し、例えばジフルオロメチルチオ基、トリフルオロメチルチオ基、クロロジフルオロメチルチオ基、ブロモジフルオロメチルチオ基、2,2,2-トリフルオロエチルチオ基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルチオ基、ペンタフルオロエチルチオ基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルチオ基、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルチオ基、ヘプタフルオロプロピルチオ基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルチオ基、ノナフルオロブチルチオ基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0037】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルスルフィニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S(O)-基を表し、例えばメチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、n-プロピルスルフィニル基、i-プロピルスルフィニル基、n-ブチルスルフィニル基、i-ブチルスルフィニル基、s-ブチルスルフィニル基、t-ブチルスルフィニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0038】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルスルフィニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-S(O)-基を表し、例えばジフルオロメチルスルフィニル基、トリフルオロメチルスルフィニル基、クロロジフルオロメチルスルフィニル基、ブロモジフルオロメチルスルフィニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルフィニル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルフィニル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチルスルフィニル基、ノナフルオロブチルスルフィニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0039】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-SO2-基を表し、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、i-プロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、i-ブチルスルホニル基、s-ブチルスルホニル基、t-ブチルスルホニル基、n-ペンチルスルホニル基、n-ヘキシルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0040】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルスルホニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-SO2-基を表し、例えばジフルオロメチルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、クロロジフルオロメチルスルホニル基、ブロモジフルオロメチルスルホニル基、2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基、2-クロロ-1,1,2-トリフルオロエチルスルホニル基、2-ブロモ-1,1,2,2-テトラフルオロエチルスルホニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0041】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-C(O)-基を表し、例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、2-メチルブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0042】
本明細書におけるCa〜Cbハロアルキルカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるハロアルキル-C(O)-基を表し、例えばフルオロアセチル基、クロロアセチル基、ジフルオロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、クロロジフルオロアセチル基、ブロモジフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、ペンタフルオロプロピオニル基、ヘプタフルオロブタノイル基、3-クロロ-2,2-ジメチルプロパノイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0043】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(O)-基を表し、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、i-プロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、i-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0044】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(O)-基を表し、例えばメチルチオ-C(O)-基、エチルチオ-C(O)-基、n-プロピルチオ-C(O)-基、i-プロピルチオ-C(O)-基、n-ブチルチオ-C(O)-基、i-ブチルチオ-C(O)-基、t-ブチルチオ-C(O)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0045】
本明細書におけるCa〜Cbアルコキシチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-O-C(S)-基を表し、例えばメトキシ-C(S)-基、エトキシ-C(S)-基、n-プロピルオキシ-C(S)-基、i-プロピルオキシ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0046】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルジチオカルボニルの表記は、炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル-S-C(S)-基を表し、例えばメチルチオ-C(S)-基、エチルチオ-C(S)-基、n-プロピルチオ-C(S)-基、i-プロピルチオ-C(S)-基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0047】
本明細書におけるCa〜Cbアルキルアミノスルホニルの表記は、水素原子の一方が炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル基によって置換されたスルファモイル基を表し、例えばメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、n-プロピルスルファモイル基、i-プロピルスルファモイル基、n-ブチルスルファモイル基、i-ブチルスルファモイル基、s-ブチルスルファモイル基、t-ブチルスルファモイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0048】
本明細書におけるジ(Ca〜Cbアルキル)アミノスルホニルの表記は、水素原子が両方とも、それぞれ同一でも又は互いに相異なっていてもよい炭素原子数がa〜b個よりなる前記の意味であるアルキル基によって置換されたスルファモイル基を表し、例えばN,N-ジメチルスルファモイル基、N-エチル-N-メチルスルファモイル基、N,N-ジエチルスルファモイル基、N,N-ジ-n-プロピルスルファモイル基、N,N-ジ-n-ブチルスルファモイル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0049】
本明細書におけるCa〜Cbシクロアルキル(Cd〜Ce)アルキル、Ca〜Cbアルコキシ(Cd〜Ce)アルキル又はCa〜Cbアルキルチオ(Cd〜Ce)アルキル等の表記は、それぞれ前記の意味である任意のCa〜Cbシクロアルキル基、Ca〜Cbアルコキシ基又はCa〜Cbアルキルチオ基によって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換された炭素原子数がd〜e個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0050】
本明細書におけるYbによって任意に置換されたエチルの表記は、任意のYbによって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換されたエチル基を表し、それぞれのエチル基上の置換基Ybが2個以上存在するとき、それぞれのYbは互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
本明細書におけるYbによって任意に置換されたエテニルの表記は、任意のYbによって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換されたエテニル基を表し、それぞれのエテニル基上の置換基Ybが2個以上存在するとき、それぞれのYbは互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
本明細書におけるYbによって任意に置換されたオキシラン−2−イルの表記は、任意のYbによって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換されたオキシラン−2−イル基を表し、それぞれのオキシラン−2−イル基上の置換基Ybが2個以上存在するとき、それぞれのYbは互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
本明細書における3位がYbによって任意に置換された4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イルの表記は、任意のYbによって、3位に結合した水素原子が任意に置換された4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イル基を表し、それぞれの4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イル基上の置換基Ybが2個以上存在するとき、それぞれのYbは互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
【0051】
本明細書におけるハロゲン原子によって任意に置換されたアリールの表記は、ハロゲン原子によって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換された芳香族炭化水素基を表し、それぞれのアリール基上のハロゲン原子が2個以上存在するとき、それぞれのハロゲン原子は互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
【0052】
本明細書におけるポリスチレンで置換されていてもよいスルホン酸イオンの表記は、直鎖状又は分岐鎖状のポリスチレンで置換されている又はポリスチレンの代わりにアルキル基又はアリール基で置換されているスルホン酸イオンを表し、具体例としては、例えば、有機合成化学協会誌、67(10)、1025-1032、2009に開示されているスルホン酸塩型ポリスチレン樹脂イオン、メタンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン又はトリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。
【0053】
本明細書におけるR9aによって任意に置換された(Ca〜Cb)アルキルの表記は、任意のR9aによって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換された炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。このとき、それぞれの(Ca〜Cb)アルキル基上の置換基R9aが2個以上存在するとき、それぞれのR9aは互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
【0054】
本明細書における(Z)p1によって置換されたフェニルの表記は、任意のZによって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換されたフェニル基を表す。このとき、フェニル基上の置換基Zが2個以上存在するとき、それぞれのZは互いに同一でも、又は互いに相異なっていてもよい。
【0055】
本明細書におけるR19aによって任意に置換された(Ca〜Cb)アルキルの表記は、任意のR19aによって、炭素原子に結合した水素原子が任意に置換された炭素原子数がa〜b個よりなる直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基を表し、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。このとき、それぞれの(Ca〜Cb)アルキル基上の置換基R19aが2個以上存在するとき、それぞれのR19aは互いに同一でも、または互いに相異なっていてもよい。
【0056】
本明細書におけるベンゼン環によって縮環されていてもよいCa〜Cbシクロアルキルの表記は、隣接する2つの炭素原子に結合した水素原子が、ベンゼン環によって任意に置換された、炭素原子数がa〜b個よりなる環状の炭化水素基を表し、3員環から6員環までの複合環構造を形成することが出来る。例えば1-インダン基、2-インダン基、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレン基、1,2,3,4-テトラヒドロ-2-ナフタレン基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0057】
本明細書におけるヒドロキシ(Cd〜Ce)ハロアルキル、Ca〜Cbアルコキシ(Cd〜Ce)ハロアルキル又はCa〜Cbハロアルコキシ(Cd〜Ce)ハロアルキルの表記は、それぞれ前記の意味である任意のCa〜Cbアルコキシ基、Ca〜Cbハロアルコキシ基又はヒドロキシ基によって炭素原子に結合した水素原子又はハロゲン原子が任意に置換された炭素原子数がd〜e個よりなる前記の意味であるハロアルキル基を表し、例えば2,2,2-トリフルオロ-1-ヒドロキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ジフルオロ(メトキシ)メチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-メトキシ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ジフルオロ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-1-(トリフルオロメチル)エチル基、3-(1,2-ジクロロ-1,2,2-トリフルオロエトキシ)-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル基等が具体例として挙げられ、各々の指定の炭素原子数の範囲で選択される。
【0058】
本発明の反応に使用できる溶媒としては、反応の進行を阻害しないものであれば特に制限は無いが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン又はメシチレン等のハロゲン原子で置換されてもよい芳香族炭化水素類、若しくはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン又はメチルシクロヘキサン等のハロゲン原子で置換されてもよい脂肪族炭化水素類、若しくはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン又はテトラヒドロピラン等のエーテル溶媒等が挙げられ、好ましくはトルエン、キシレン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル又はt−ブチルエチルエーテルである。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても良い。
【0059】
斯かる溶媒の使用量は特に限定されないが、α,β−不飽和カルボニル化合物1質量部に対して、通常0.1〜100質量部、好ましくは0.5〜50質量部、特に好ましくは1〜15質量部である。
【0060】
本発明の反応に使用できるヒドロキシルアミンは、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩又は酢酸塩のような酸の塩の形で使用しても良いし、フリーのヒドロキシルアミンの水溶液又は斯かる塩の水溶液を使用しても良い。
斯かるヒドロキシルアミンの使用量は、α,β−不飽和カルボニル化合物1モルに対して、通常0.5〜100倍モル、好ましくは1〜10倍モル、特に好ましくは1〜2倍モルである。
【0061】
本発明の反応に使用できるキラル相間移動触媒としては、例えば、第1表に示す化合物が挙げられる。但し、第1表の化合物は例示のためのものであって、本発明はこれらのみに限定されるものではない。尚、第1表中、請求項10の対象としては、式(2)乃至式(5)において、X1b-が負の電荷を持つイオンを表し、R1bがエテニルを表し、R2bがヒドロキシを表し、R3bが水素原子又はメトキシを表し、R4bが水素原子を表し、Qbが窒素原子を表し、A1b、A2bがそれぞれ独立にC-Ybを表し、この隣接する2つのYbが一緒になって、-A7b=A8b-A9b=A10b-を形成し、A7b、A8b、A9bおよびA10bが、それぞれ独立にC-Y1bを表し、Y1bが水素原子を表し、A3b、A4b、A5bおよびA6bがそれぞれ独立にC-Ybを表し、このYbが水素原子を表すもの(すなわちAがA-1を表すもの)は除外する。
【0062】
尚、第1表中、Meと記載される置換基はメチル基を表し、Phと記載される置換基はフェニル基を表し、OAcと記載される置換基はアセトキシ基を表し、OTfと記載される置換基はトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、OPhと記載される置換基はフェノキシ基を表し、PS-SO3と記載される置換基はポリスチレンで置換されたスルホン酸基をそれぞれ表し、
表中、A-1〜A-8で表される芳香族複素環は、それぞれ下記の構造を表し、
【化14】
例えば、A-1の表記は、アクリジン−9−イル基を表す。
【0063】
また、表中、R1b-1で表される置換基は下記の構造を表し、
【化15】

R1b-1の表記は、3−(4−クロロフェニル)−4,5−ジヒドロイソキサゾール−5−イル基を表す。
【0064】
〔第1表〕
【化16】

【化17】

【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0065】
斯かる相間移動触媒はα,β−不飽和カルボニル化合物1モルに対して、通常0.0001〜10倍モル、好ましくは0.0005〜1倍モル、特に好ましくは0.001〜0.5倍モルである。
【0066】
本発明の反応に使用できる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、カリウム-t-ブトキシド、ピリジン、ピペリジン又はトリエチルアミン等が挙げられ、好ましくは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。
【0067】
本発明の反応に通常は水を添加するが、水の添加無しに反応を行うこともできる。
【0068】
本発明に係る反応を実施するには、例えば、反応器に式(1)で表されるα,β−不飽和カルボニル化合物と、キラル相間移動触媒と、塩化メチレンに代表される溶媒とを所定量仕込み、撹拌下、通常−70〜100℃、好ましくは−40〜50℃で別途、塩基、水およびヒドロキシルアミンを混合した溶液を滴下し、通常10分〜120時間、好ましくは1〜48時間程度反応させればよい。
ここで用いられる式(1)で表される化合物の或るものは公知化合物であり、例えばWO2009/063910等に記載の方法及び公知の化合物に関する文献記載の一般的な方法に準じて合成することができる。
【化18】
【0069】
また、本発明に用いられる式(2)乃至(5)で表される化合物の合成法について、以下に説明する。
【化19】

【化20】
【0070】
式(2)乃至(5)で表される化合物は、文献既知の公知の方法、例えばヨーロピアン・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー[European Journal of Organic Chemistry]2002年, 13巻, 2087頁等に記載の方法に準じて合成することができる。式(2)で表される化合物の合成法を例として、以下に詳細に説明する。
つまり、式(14)[式中、R1b, R2b, R3b及びR4bは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物と、式(16)[式中、A1b, A2b, A3b, A4b, A5b, A6b及びQbは前記と同じ意味を表し、X2bは臭素原子又は塩素原子を表す。]で表されるハライド化合物を、塩基存在下で反応させることにより、式(2−1)[式中、R1b, R2b, R3b, R4b,A1b, A2b, A3b, A4b, A5b, A6b,及びQbは前記と同じ意味を表し、X2bは臭素原子又は塩素原子を表す。]で表される化合物を得ることができる。
【0071】
製造法1
【化21】
【0072】
また、式(2−1)で表される化合物を、イオン交換することにより、式(2)[式中、R1b, R2b, R3b, R4b,A1b, A2b, A3b, A4b, A5b, A6b、Qb及びX1bは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物を得ることができる。ここでイオン交換反応は例えば銀塩AgX1bを式(2−1)で表される化合物に作用させることにより行うことができる。
【化22】
【0073】
製造法1で用いられる式(14)で表される化合物の或るものは公知化合物であり、一部は市販品として入手できる。それ以外のものも文献既知の合成方法、例えば合成例1に準じて合成することができる。
【0074】
合成例1
公知のシンコナアルカロイド化合物類(13)、例えばシンコニン、シンコニジン、キニン、キニジン、ヒドロシンコニン、ヒドロシンコニジン、ヒドロキニン、ヒドロキニジン、(8α,9S)-6′-メトキシシンコナン-9-アミン、キニン-9-エピアミン、ジヒドロキニン-9-エピアミンなどを出発原料として、R1bに関しては末端オレフィンの変換法である、1,3−双極子環化付加反応によりイソキサゾリン環を形成する、あるいはエポキシ化反応によりエポキシドを形成する、あるいは溝呂木−ヘック反応によりオレフィンに芳香環を導入するなどが挙げられる。例えばR2bに関してはエステル化、アミド化、エーテル化などが挙げられる。例えばR3bに関してはメトキシ基を他のアルコキシ基に変換することが挙げられる。例えばR4bに関しては芳香環を導入する変換が挙げられる。(例えば、参考文献 シンコナ・アルカロイド・イン・シンセシス・アンド・キャタリシス:リガンド・インモービライゼーション・アンド。オルガノキャタリシス[Cinchona Alkaloids in Synthesis and Catalysis: Ligands, Immobilization and Organocatalysis], 2009年,Wiley-VCH 、又は、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー[Journal of the American Chemical Society], 2010年,132巻,13194頁)
【0075】
合成例1
【化23】

【化24】
【0076】
製造法1で用いられる式(16)で表される化合物の或るものは公知化合物であり、一部は市販品として入手できる。それ以外のものも文献既知の合成方法、例えば合成例2に準じて合成することができる。
【0077】
合成例2
【化25】

公知の式(15)[式中、A1b, A2b, A3b, A4b, A5b, A6b,及びQbは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物をN-ブロモスクシンイミドなどのブロモ化剤あるいはN-クロロスクシンイミドなどのクロロ化剤と反応させることにより、式(16)[式中、A1b, A2b, A3b, A4b, A5b, A6b及びQbは前記と同じ意味を表し、X2bは臭素原子又は塩素原子を表す。]で表される化合物を得ることができる。
【0078】
また、製造法1で用いられる式(16)で表される化合物の或るものは式(16−1)で表される化合物、つまり9−ハロメチル−置換アクリジン化合物であり、例えば合成例3に準じて合成することができる。
【0079】
合成例3
【化26】

公知の式(17)[式中、A3b, A4b, A5b, 及びA6bは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物と式(18)[式中、A7b, A8b, A9b及びA10bは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物を、適切なPd触媒存在下で反応させることにより、式(19)[式中、A3b, A4b, A5b, A6b, A7b, A8b, A9b及びA10bは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物を合成し、次いで、別の適切なPd触媒を選択することにより式(15−1)[式中、A3b, A4b, A5b, A6b, A7b, A8b, A9b及びA10bは前記と同じ意味を表す。]で表される化合物を合成し、それをN-ブロモスクシンイミドなどのブロモ化剤あるいはN-クロロスクシンイミドなどのクロロ化剤と反応させることにより、式(16−1)[式中、A3b, A4b, A5b, A6b, A7b, A8b, A9b及びA10bは前記と同じ意味を表し、X2bは臭素原子又は塩素原子を表す。]で表される化合物を合成することができ、それらから上記の方法に準じて置換アクリジンをもつキラル相間移動触媒を合成することができる。(例えば、参考文献 ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー[Journal of the American Chemical Society], 2010年、132巻、14048頁)
【実施例】
【0080】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらのみによって限定されるものではない。
【0081】
〔実施例1〕
(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミド
4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−メチルベンズアミド(E体/Z体=99.9/0.1)101mg(0.25mmol)を塩化メチレン3mLに溶解させ、N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド30mg(0.05mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.055mL(0.55mmol)、精製水0.0425mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.0275mL(0.50mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドの面積百分率は96.9%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間5.70分/7.06分=96.8/3.2であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0082】
〔比較例1〕
4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−メチルベンズアミド(E体/Z体=99.9/0.1)101mg(0.25mmol)を塩化メチレン3mLに溶解させ、N-(アントラセニルメチル)キニニウム ブロマイド27.5mg(0.05mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.055mL(0.55mmol)、精製水0.0425mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.0275mL(0.50mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドの面積百分率は96.0%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間5.70分/7.06分=77.7/22.3であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0083】
〔実施例2〕
(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチル−N−(2−オキソ−2−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)エチル)ベンズアミド
4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−メチル−N−(2−オキソ−2−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)エチル)ベンズアミド100mg(0.18mmol)を塩化メチレン2.2mLに溶解させ、N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド22mg(0.037mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.041mL(0.41mmol)、精製水0.031mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.021mL(0.37mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチル−N−(2−オキソ−2−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)エチル)ベンズアミドの面積百分率は94.3%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間8.85分/23.65分=96.3/3.7であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0084】
〔比較例2〕
4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−メチル−N−(2−オキソ−2−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)エチル)ベンズアミド133mg(0.25mmol)を1,2-ジクロロエタン3.1mLに溶解させ、N-(アントラセニルメチル)シンコニジニウム クロライド39.1mg(0.075mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.055mL(0.55mmol)、精製水0.060mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.0275mL(0.50mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチル−N−(2−オキソ−2−(2,2,2−トリフルオロエチルアミノ)エチル)ベンズアミドの面積百分率は92.1%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間8.85分/23.65分=56.5/43.5であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0085】
〔実施例3〕
(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチル−N−(2−エチル−3−オキソ−イソキサゾリジン−4−イル)ベンズアミド
4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−N−(2−エチル−3−オキソ−イソキサゾリジン−4−イル)−2−メチルベンズアミド83mg(0.16mmol)を塩化メチレン2mLに溶解させ、N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド19mg(0.03mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.035mL(0.35mmol)、精製水0.027mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.018mL(0.32mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドの面積百分率は93.4%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、各ジアステレオマーが保持時間17.98分/26.38分/32.25分/49.70分=6.41/89.61/0.34/3.64であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0086】
〔比較例3〕
WO2011/067272に記載の、実施例37工程Bを比較例3として挙げる。
【0087】
参考例4〕
(S)−N−(4−(5−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−クロロベンジル)ブチルアミド
N−(4−(3−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−クロロベンジル)ブチルアミド112mg(0.20mmol)を塩化メチレン2.4mLに溶解させ、N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド24mg(0.04mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.044mL(0.44mmol)、精製水0.034mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.022mL(0.40mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおけるN−(4−(5−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−クロロベンジル)ブチルアミドの面積百分率は100%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間2.44分/4.63分=84.0/16.0であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0088】
〔比較例4〕
N−(4−(3−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−クロロベンジル)ブチルアミド112mg(0.20mmol)を塩化メチレン2.4mLに溶解させ、N-(アントラセニルメチル)キニニウム ブロマイド22mg(0.04mmol)を添加し、-20℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.044mL(0.44mmol)、精製水0.034mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.022mL(0.40mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおけるN−(4−(5−(3−ブロモ−5−トリフルオロメチルフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−クロロベンジル)ブチルアミドの面積百分率は90.7%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間2.44分/4.63分=68.9/31.1であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0089】
実施例1乃至3、参考例4及び比較例1乃至4の反応条件及びその結果を纏めた表を、以下の第2表に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
(注釈1)キラルPTC*(PTC=相間移動触媒の略。以下、同様。)
A:N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド
B-1:N-(アントラセニルメチル)キニニウム ブロマイド
B-2:N-(アントラセニルメチル)シンコニジニウム クロライド(注釈2)
絶対配置の決定方法について以下に説明する。
実施例1〜3については、(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチル安息香酸の絶対配置がX線結晶構造解析により決定されたことが日本公開特許2011-051977号公報に記載されており、それから各々の化合物IIへ誘導し、絶対配置を確定した。
参考例4については、化合物II自体の単結晶X線構造解析により、その絶対配置を決定した。
【0092】
〔実施例5〕
反応容器内に、塩化メチレン12mL、N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド119mg(0.2mmol)、10N水酸化ナトリウム水溶液0.22mL(2.2mmol)、精製水0.17mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.11mL(2.0mmol)を混合し、-20℃にて撹拌した。そこに、4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−メチルベンズアミド(E体/Z体=99.9/0.1)402mg(1.0mmol)を5時間かけて分割投入(20〜30mg/1回)した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。20時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドの面積百分率は94.1%であった。
転化率確認後の反応液を、固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間5.70分/7.06分=97.3/2.7であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
この固体に、ジイソプロピルエーテル2mL及びヘキサン4mLを加え、撹拌した後に、ろ過により溶媒を除き、減圧乾燥することで、304mgの固体を得た。これを上記のキラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、R体のピークは無く、S体のエナンチオマー過剰率は99%ee以上であった。得られた固体は1H-NMRから(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドとジイソプロピルエーテルとの2:1溶媒和物と推測された。
1H NMR (CDCl3, Me4Si, 300 MHz) δ7.45-7.60 (m, 5H), 7.43 (s, 1H), 6.02 (brs, 1H), 5.86 (brs, 1H), 4.09 (d, J = 17.4 Hz, 1H), 3.70 (d, J = 17.4 Hz, 1H), 3.55-3.75 (m, 1H), 2.51 (s, 3H), 1.13 (d, J = 6.0 Hz, 6H)。
融点 148-151 ℃
【0093】
〔実施例6〕
4−(3−(3,5−ジクロロフェニル)−4,4,4−トリフルオロ−2−ブテノイル)−2−メチルベンズアミド(E体/Z体=99.9/0.1)101mg(0.25mmol)を塩化メチレン3mLに溶解させ、N-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイド30mg(0.05mmol)を加え、0℃にて撹拌した。そこに、別途、10N水酸化ナトリウム水溶液0.055mL(0.55mmol)、精製水0.0425mL及び50%ヒドロキシルアミン水溶液0.0275mL(0.50mmol)を混合して調製した溶液を滴下した。
精製水0.5mLに反応液を数滴とり、アセトニトリルで1.5mLに希釈し、高速液体クロマトグラフィーにて分析した(分析条件は、カラム:Zorbax eclipse XDB-C8、5μm、4.6×150mm、溶離液:アセトニトリル/0.1%ギ酸水溶液=3/1、流速:1.0mL/分、オーブン温度:45℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。3時間後の高速液体クロマトグラフィーにおける4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドの面積百分率は100%であった。
転化率確認後の反応液を固相抽出カラム メガボンドエルートSI 2g/12mL(バリアン社製)にチャージし、ヘキサン/酢酸エチル=1/1(v/v)30mLで流し、抽出物から溶媒留去して、これを、キラルHPLCカラムを付けた高速液体クロマトグラフィーで分析し、両エナンチオマーが保持時間5.70分/7.06分=95.2/4.8であることを確認した(分析条件は、キラルHPLCカラム:Chiralpak AD-3、3μm、2.1×250mm、溶離液:ヘキサン/エタノール=9/1、流速:0.6mL/分、オーブン温度:30℃、検出:254nmの波長によるUV検出器)。
【0094】
〔実施例7〕
PTCの調製:2−メトキシ−4−メチルキノリンキニニウム ブロマイド
工程1
2−クロロ−4−メチルキノリン 1.0g (5.63mmol)及びナトリウムメトキサイド 1.77g (32.7mmol)をメタノール 12mLに溶解させ、加熱還流下16時間反応させた。常温にした後に、水 30mLを添加し、酢酸エチル(40mL×1回)にて抽出した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下にて溶媒を留去し、目的物である2−メトキシ−4−メチルキノリン 0.95gを無色油状物として得た。
工程2
2−メトキシ−4−メチルキノリン 0.95g (5.48mmol)を1,2−ジクロロエタン 10mLに溶解し、N-ブロモスクシンイミド1.17g (6.58mmol)及び2,2´−アゾビスイソブチロニトリル44mg (0.27mmol)を添加し、90℃で2時間加熱撹拌した。撹拌終了後、常温にした後に、減圧下にて溶媒を留去し、4−(ブロモメチル)−2−メトキシキノリンを得た。特に単離精製せずに次工程に使用した。
工程3
工程2で得られた4−(ブロモメチル)−2−メトキシキノリンをアセトニトリル7mLに溶解させ、キニン 0.5g (1.54mmol)を加え、70℃で2時間加熱撹拌した。撹拌終了後、室温にした後に、ジイソプロピルエーテル20mLを添加し、反応液中に析出した固体を減圧下にてろ別した。得られた残留固体物をクロロホルム5mL及びジイソプロピルエーテル 15mLの混合溶媒で洗浄した。洗浄後、減圧下にて乾燥後、目的物である2−メトキシ−4−メチルキノリンキニニウム ブロマイド 0.82gが得られた。融点は181-191℃(分解)だった。LCMSにてM+496を確認した。
【0095】
反応例:
2−メトキシ−4−メチルキノリンキニニウム ブロマイドをN-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイドの代わりに用いて、実施例1と同様に反応を実施し、エナンチオマー過剰率79.5%eeで(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドを得た。
【0096】
〔実施例8〕
PTCの調製:2−クロロ−4−メチルキノリンキニニウム ブロマイド
2−クロロ−4−メチルキノリンを出発原料として実施例7の工程2,3と同様に反応を実施し、2−クロロ−4−メチルキノリンキニニウム ブロマイドを得た。融点は181-191℃(分解)だった。LCMSにてM+ 500を確認した。
【0097】
反応例:
2−クロロ−4−メチルキノリンキニニウム ブロマイドをN-(アクリジン−9−イルメチル)キニニウム ブロマイドの代わりに用いて、実施例1と同様に反応を実施し、エナンチオマー過剰率74.0%eeで(S)−4−(5−(3,5−ジクロロフェニル)−5−トリフルオロメチル−4,5−ジヒドロイソオキサゾール−3−イル)−2−メチルベンズアミドを得た。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の製造方法は、農薬、医薬、機能材料の製造中間体又は最終物原体として有用な化合物である光学活性イソキサゾリン化合物の触媒的不斉合成方法として有用である。