(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の圧粉磁心ブロックで構成される圧粉磁心部に磁気ギャップを有し、隣り合う圧粉磁心ブロックはアールを有する稜線部分が対向することを特徴とする請求項1に記載の複合磁心。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に普及しはじめたハイブリッド車や電気自動車では、大出力の電気モータを備えており、これを駆動する電源回路には高電圧大電流に耐えるリアクトルが用いられている。リアクトルにおいては、高い飽和磁束密度Bsを有する磁心材料を用いるとともに、磁心材料間にギャップを設けることで実効透磁率を下げて、大電流でも磁気飽和しにくい構成が用いられている。例えば、ハイブリッド車等の用途では、実効透磁率μreはおおよそ10から50程度が実用的な範囲である。
【0003】
電源装置用リアクトルの磁心材料として、一般に20kHz以下の領域では、主に珪素鋼板、非晶質軟磁性薄帯、微結晶質軟磁性薄帯が、20kHzを超える領域では、Mn−Zn系やNi−Zn系などのフェライトが広く用いられている。前者は、飽和磁束密度Bsと透磁率μが高いという長所を持ち、後者のフェライトは、高周波磁心損失が小さく、形状自由度が高く、量産性に優れるという長所を持つ。また、5kHzから100kHzまでの領域においては、圧粉磁心も用いられている。圧粉磁心は、磁性粉末の表面を絶縁処理したのち成形して得られるもので、絶縁処理により電気抵抗が高められ、渦電流損失が抑制されている。
【0004】
上述のように、大電流用のリアクトルには、高い飽和磁束密度Bsを有する磁心材料を用いるとともに、磁心材料間にギャップを設ける。しかし、この場合、磁束がギャップの外側に漏れ出るフリンジング磁束が生じる。ここで、高い飽和磁束密度Bsを有する磁心材料として上述の非晶質軟磁性薄帯等を用いると、ギャップ近傍の磁心側面にはフリンジング磁束による渦電流が生じ、磁心損失が増大してしまう。これに対して特許文献1では、
図7に示すように非晶質軟磁性薄帯等の高透磁率磁心部71、72の間に、電気抵抗の大きい圧粉磁心部73〜78を配置し、ギャップ79〜82をかかる圧粉磁心部間に設けることで、フリンジング磁束によって生じる損失の低減を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の構成によれば、ギャップを圧粉磁心部間に配置することで、非晶質軟磁性薄帯の磁心部間に配置する場合に比べて、損失の低減が可能である。ここで、かかる圧粉磁心部は金型を用いた加圧成形等によって製造される。加圧成形の際には、成形性の観点から、底面が矩形のキャビティの四隅にアールを設けるのが一般的である。一方、非晶質軟磁性薄帯の磁心部の断面は、通常完全な矩形である。したがって、非晶質軟磁性薄帯の磁心部と磁心断面形状を合わせるために、
図7に示すような完全な直方体形状の圧粉磁心部を得る場合には、成形後の圧粉磁心を加工する必要があり、複合磁心の製造工程が複雑なものとなっていた。
【0007】
そこで、上記課題に鑑み、本発明は、大電流用のリアクトルの損失低減に好適であるとともに、簡易な方法で製造可能な複合磁心およびリアクトルの構成を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複合磁心は、平行に対置された一組の圧粉磁心部と、前記圧粉磁心部を介して対置された、磁性金属板の積層体である一組の積層磁心部とを備えた環状の複合磁心であって、
前記圧粉磁心部と前記積層磁心部との
間に磁気ギャップが配置され、前記圧粉磁心部は、それぞれ少なくとも一つの直方体の圧粉磁心ブロックを備え、前記圧粉磁心ブロックは、互いに平行な4つの稜線部分にアールを有し、前記アールを有する稜線部分が
、前記積層磁心部の磁性金属板の積層方向の両側の二辺部分と対向す
ることを特徴とする。かかる構成によれば、圧粉磁心ブロックに形成されたアールは、積層磁心部の端面と対向する面側に配置され、それに垂直な稜線方向には配置されないため、研削等の加工を施さなくても、磁路に垂直な方向の断面形状を積層磁心部の端面形状と合わせることが可能であり、製造工程が簡略化される。
【0009】
前記複合磁心において、前記積層磁心部の端面と、それに対向する前記圧粉磁心ブロックとの間に、磁気ギャップが設けられてい
る構成に
おいて、前記圧粉磁心ブロックのアールを有する稜線部分を、前記積層磁心部の磁性金属板の積層方向の両側の二辺部分と対向させることで、積層磁心部と圧粉磁心部との界面におけるフリンジング磁束による損失を低減することができる。
また、 複数の圧粉磁心ブロックで構成される圧粉磁心部に磁気ギャップを設けて、隣り合う圧粉磁心ブロックはアールを有する稜線部分を対向させるのが好ましい。
【0010】
さらに、前記複合磁心において、前記積層磁心部は、コーナー部と、該コーナー部の両端に前記コーナー部と一体の直線部とを備えることが好ましい。積層磁心部に直線部が設けられているため、かかる直線部と圧粉磁心部とに渡ってコイルを配置することができる。そのため、磁束の漏洩抑制に好適なリアクトルを構成することができる。
【0011】
さらに、前記複合磁心において、前記積層磁心部の端面は、前記
圧粉磁心ブロックのアールを有する稜線部分と対向する部分に面取り部を有することが好ましい。かかる構成は、フリンジング磁束による損失を低減するために、よりいっそう効果的である。
【0012】
本発明のリアクトルは、上記いずれかの複合磁心と、少なくとも前記圧粉磁心部を周回するコイルとを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の電源装置は、前記リアクトルを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大電流用のリアクトルの損失低減に好適であるとともに、簡易な方法で製造可能な複合コアおよびリアクトルの構成を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る複合磁心等の実施形態を、図を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施形態において説明する構成は、他の実施形態の趣旨を損なわない限りにおいて他の実施形態においても適用することが可能であり、その場合、重複する説明は適宜省略する。
【0017】
(複合磁心の第1、第2の実施形態)
図1(a)は本発明の複合磁心の実施形態を示す斜視図、(b)はその平面図、(c)はその正面図である。
図1に示す複合磁心11は、平行に対置された一組の圧粉磁心部1、2と、圧粉磁心部1、2を介して対置された、一組の積層磁心部3、4とを備えた環状の複合磁心である。複合磁心11は、略矩形をなしている。略矩形とは、四隅のアール部分を除き全体として矩形と認められるという趣旨であり、矩形には正方形も含む。圧粉磁心部1、2は直方体であり、磁性粉末と絶縁材、結合材等を混合、成形して構成されるI字状の磁心である。積層磁心部3、4は、磁性金属板の積層体であり、その積層方向は、環状の複合磁心の径方向である。積層磁心部3、4は、それぞれコーナー部3a、4aと、該コーナー部3a、4aの両端にコーナー部3a、4aと一体の直線部3b、4bとを備える、U字状の磁心である。かかるU字状の磁心は、例えば軟磁性合金薄帯を略矩形に巻回し、得られた巻回体をその直線部分で分割することによって得られる、いわゆるカットコアである。以下、特に言及しない限り、積層磁心部は、かかるカットコアとして説明する。
【0018】
圧粉磁心部1,2は、それぞれ少なくとも一つの直方体の圧粉磁心ブロックを備えればよいが、
図1に示す実施形態では、各圧粉磁心部とも一つの圧粉磁心ブロック1a、2aで構成されている。圧粉磁心ブロック1a、2aは、互いに平行な4つの稜線部分にアールCbを有している。稜線部分とは、隣接する二つの面が垂直に交わる辺の部分のことである。かかるアールCbは、加工等で設けることもできるが、典型的には金型を用いた加圧成形によって得られる。金型を用いた加圧成形の場合、成形性や抜き性等の観点から、断面が矩形のキャビティの四隅にアールを設ける。互いに平行な4つの稜線部分にアールCbを有する圧粉磁心ブロック1a、2aは、アールCbを有する稜線部分が積層磁心部3、4の端面と対向するように配置されているので、磁路に垂直な方向(zx面方向)の、圧粉磁心ブロックの断面形状はアールCbが現れない矩形となる。なお、ここでいう対向とは間に他の部材を介する場合も含む趣旨である。一方、積層磁心部3、4は、軟磁性合金薄帯の巻回体を分割して形成されるので、その端面は、通常、アールのない矩形となる。ここで、アールCbの延びる方向を積層磁心部の端面に垂直な方向(y方向)、すなわち磁路に平行な方向になるようにして圧粉磁心ブロックを配置してしまうと、アールの部分だけ、圧粉磁心ブロックの断面積を失い、磁気飽和しやすくなってしまう。これに対して、アールCbを有する稜線部分が積層磁心部3、4の端面と対向するように配置することで、圧粉磁心ブロックのアールを削除するための加工等を必要とせずに、これら圧粉磁心ブロックの断面形状と積層磁心部の端面形状を同じにすることが可能である。したがって、かかる構成は磁気飽和の抑制に寄与するとともに、製造工程が簡略化される。
【0019】
複合磁心11
の圧粉磁心部1、2と積層磁心部3、4との
間に磁気ギャップが配置される。
また圧粉磁心部では、磁性粉末表面が絶縁処理されているため、積層磁心部に比べて電気抵抗が大きく
、圧粉磁心部に磁気ギャップを設けても良い。磁気ギャップ周辺のフリンジング磁束が通っても渦電流損失を抑えることができる。したがって、大電流用に磁気ギャップを形成する場合であっても、磁気ギャップの両側の磁性体の少なくとも一方に圧粉磁心部を配置することで、リアクトルの損失を抑えることができる。
【0020】
図1に示す実施形態のように、積層磁心部3、4の端面と、それに対向する圧粉磁心ブロック1a、2aとの間に、磁気ギャップGcdを設けること
が好ましい。これは以下の理由による。上述のような軟磁性合金薄帯を用いて構成された積層磁心部に比べて、圧粉磁心部の透磁率が低い。そのため、
図7に示すように、磁気ギャップを介さずにこれらを接触させた場合でも、積層磁心部の透磁率と圧粉磁心部の透磁率の差が大きい場合には、磁束が磁心から漏れてしまう。磁気ギャップを形成していない場合、漏れた磁束は、必然的に、積層磁心部を構成する軟磁性金属薄帯の平面に垂直な成分を持って軟磁性金属薄帯を通ることになり、渦電流を発生させ、損失が生じる。これに対して、
図1に示す実施形態のように、圧粉磁心部1、2とそれに向かい合う直線部3b、4bとの間に磁気ギャップGcdを設けることによって、フリンジング磁束の、軟磁性金属薄帯の平面に垂直な成分の割合を低下させることができる。
【0021】
磁気ギャップGcdは、圧粉磁心部1、2の両側で異なるものとすることもできるが、図に示す実施形態では、一ヶ所の磁気ギャップでのフリンジング磁束が大きくなりすぎないようにするため、圧粉磁心部1、2の両側で磁気ギャップGcdは同じになるようにしてある。磁気ギャップGcdは、エアギャップでもよいし、樹脂プレート、接着剤、セラミックスなどの非磁性体を配置してもよい。ギャップ寸法精度や強度の観点からはセラミックスを用いることがより好ましい。
【0022】
また、
図1(a)〜(c)に示す実施形態では、
図1(d)に示すように、アールを有する稜線部分が延びる方向を、対向する積層磁心部の積層方向と平行な方向(x方向)にするのでは無く、アールを有する稜線部分が延びる方向は、対向する積層磁心部の積層方向と垂直な方向(z方向)になっている
。
【0023】
フリンジング磁束の膨らみの緩和の観点からは、アールCbは、丸みを帯びた曲面であってもよいし、平面で面取りしたものでもよい。但し、金型による成形における成形性等の観点からは、アールCbは曲面であることがより好ましい。また、アールの大きさは成形性の観点からは大きくとることが好ましいが、これが大きくなりすぎると磁気ギャップを形成する部分が大きくなってしまうので、これらの点を考慮して決めればよい。例えば、アールを形成していない状態での一辺の長さに対して、両端のアールによって欠損している部分の長さ合計を1〜50%とするとよい。
【0024】
圧粉磁心ブロック同様に、積層磁心部の端面にも面取り部を有することが好ましい。上述のように、積層磁心部では積層方向、すなわち軟磁性合金薄帯の主面に垂直な方向の成分を持つフリンジング磁束による損失が大きくなる。したがって、積層磁心部の端面の四辺のうち、積層方向の両側の二辺部分に面取り部を設けることで、フリンジング磁束の膨らみが緩和され、軟磁性合金薄帯の主面に垂直な方向のフリンジング磁束の成分が抑制される。なお、積層磁心部側は上記二辺に限らず、四辺すべてに面取り部を設けてもよい。また、積層磁心部の面取りの形状もこれを特に限定するものではないが、平面の面取りが簡易な構成でより好ましい。
【0025】
上述のように
図1に示す実施形態では、積層磁心部3、4は、コーナー部3a、4aと、該コーナー部3a、4aの両端にコーナー部3a、4aと一体の直線部3b、4bとを備える。一対の直線部3bは、コーナー部3aから互いに平行に突出し、同じ長さを有し、その端面は同一平面上に位置している。圧粉磁心部1、2とそれに向かい合う直線部3b、4bとの間には、磁気ギャップGcdが設けられている。
図2に示す複合磁心21のように、直線部分を設けずにコーナー部のみで積層磁心部5、6を構成することも可能である(第2の実施形態)。但し、直線部を有する
図1に示した実施形態によれば、圧粉磁心部1、2と該圧粉磁心部の両端側の直線部3b、4bとで構成された磁脚部を周回するコイルを配置してリアクトルを構成する場合、直線部3b、4bと圧粉磁心部1、2とに渡ってコイルを配置することができるため、磁気ギャップGcdをコイルで覆うことも可能となる。磁気ギャップGcdをコイルで覆うことにより、磁気ギャップ部分で漏洩した磁束がコイル外に漏れることを防ぐことができる。
【0026】
(複合磁心の第3の実施形態)
図3(a)は本発明の複合磁心の他の実施形態を示す斜視図、(b)はその平面図、(c)はその正面図である。
図3に示す複合磁心31では、磁性金属板の積層体である一組の積層磁心部7、8の積層方向およびアールを有する圧粉磁心ブロック1a、2aの配置方向が
図1に示す実施形態と異なる。すなわち、積層磁心部7、8の磁性金属板の積層方向は環状の複合磁心の軸方向(z方向)である。かかる積層磁心部は、例えば珪素鋼板をU字状に打ち抜いて積層し、溶接、接着等の手段によって一体化することで得られる。
図1に示す実施形態と同様に、圧粉磁心ブロック1a、2aのアールCbを有する稜線部分が積層磁心部3、4の端面と対向するように配置されている。
図3に示す実施形態では、
図1(a)に示す実施形態から、圧粉磁心ブロック1a、2aを90度回転させて、アールCbを有する稜線部分が、環状の複合磁心31の軸方向の上下面側に配置されている。アールCbを有する稜線部分が延びる方向が、対向する積層磁心部3、4の積層方向(z方向)と垂直であるが、該方向と平行な方向(z方向)であってもよい点は、
図1に示す実施形態と同様である。
【0027】
図1〜
図3に示す実施形態は、平行に対置された一組の圧粉磁心部と、圧粉磁心部を介して対置された、一組の積層磁心部とを備えた環状の複合磁心の例であるが、平行に対置される圧粉磁心部の数と、積層磁心部の数を増やして、構成してもよい。例えば、
図1に示す複合磁心を二つ並置するとともに、これらの周囲にさらに別の環状複合磁心を配置して三相の複合磁心を構成することもできる。
【0028】
(複合磁心の第4の実施形態)
図1〜
図3に示す実施形態では、各圧粉磁心部の圧粉磁心ブロックの数は1つであるが、圧粉磁心ブロックの数は2つ以上であってもよい。圧粉磁心部の構成が
図1に示す実施形態と異なる他の実施形態(第4の実施形態)を
図4に示す。圧粉磁心部以外の部分は
図1に示す実施形態と同じであるので説明を省略する。
図4に示す複合磁心41では、圧粉磁心部1、2が、それぞれ磁気ギャップGddを介して配置された複数の圧粉磁心ブロック1a/1b/1c、2a/2b/2cを有する。必要な総ギャップ量を確保する場合、圧粉磁心部1、2にギャップを設けることで、圧粉磁心部1、2と、積層磁心部3、4の直線部との間の磁気ギャップを小さくすることができるため、かかる部分でのフリンジング磁束による損失を低減することができる。また、圧粉磁心部では、磁性粉末表面が絶縁処理されているため、電気抵抗が大きく、渦電流損失が小さい。したがって、磁気ギャップを圧粉磁心部に設けることで磁心損失の増加を抑えることができるため、かかる構成は、実効透磁率μeを低くするためにギャップを設ける、20A以上の電源回路に用いる大電流リアクトル用として好適である。
図4に示す実施形態では、圧粉磁心ブロック1a〜1c(2a〜2c)はそれぞれ同じ形状・寸法にしてあるが、磁路方向の長さを異なるものとすることも可能である。
図4に示す実施形態では、アールを有する稜線部分が延びる方向は全ての圧粉磁心ブロックで同方向であり、対向する積層磁心部3、4の積層方向と垂直な方向である。但し、積層磁心部に隣接する両端の圧粉磁心ブロックを除いた、それらの間に配置される圧粉磁心ブロックに関しては、アールを有する稜線部分が延びる方向は、積層磁心部3、4の積層方向と同じ方向でもよい。また、
図4に示す実施形態では、各圧粉磁心部をそれぞれ3個の圧粉磁心ブロックで構成しているが、その数はこれに限定するものではない。必要な総ギャップ量を確保する場合、圧粉磁心部の磁気ギャップ数を増やすことによって、個々の磁気ギャップにおける漏洩磁束を少なくして損失低減を図ることができる。また、各圧粉磁心部に形成された複数の磁気ギャップGddの大きさを互いに異なるものにすることも可能であるが、
図4に示す実施形態では一ヶ所あたりの漏洩磁束が少なくなるように、複数の磁気ギャップGddの大きさを同じにしてある。磁気ギャップを形成することの実効性の観点からは、平均磁路長全体に対する総磁気ギャップ量の比率は、1〜8%にするとよい。また、各磁気ギャップの大きさは、2.5mm以下にするとよい。
【0029】
(リアクトルの第1の実施形態)
図5は、上述の複合磁心と、少なくとも圧粉磁心部を周回するコイルとを備える、本発明のリアクトルの実施形態を示す、複合磁心の厚さ方向の中間の位置における断面図である。
図5に示すリアクトル51は、複合磁心41と、圧粉磁心部1、2と圧粉磁心部1、2の両端側の直線部3b、4bとで構成された直線状の磁脚部を周回するコイル9、10とを備える。
図5に示すリアクトル51では、複合磁心として
図4に示す実施形態のものを用いているが、他の実施形態のものを用いてもよい。コイル9、10は、その巻回軸方向の長さが、圧粉磁心部1,2とその両端の磁気ギャップGcdとの和よりも長いものを用いることで、圧粉磁心部1、2と該圧粉磁心部1、2の両端側の積層磁心部の直線部3b、4bとの間の磁気ギャップGcdがコイル9、10の内側になるように配置されている。積層磁心部3、4が直線部3b、4bを備えているため、かかるコイルを用いて磁気ギャップGcdをコイルで覆うことが可能になっている。なお、コイル9、10の長さはボビンを用いる場合であっても、巻線部分での長さを指すこととする。圧粉磁心部1、2と該圧粉磁心部1、2の積層磁心部の両端側の直線部3b、4bとの間の磁気ギャップGcdがコイル9、10の内側になるように配置されていることで、コイル外側への磁束の漏洩を低減することができる。
【0030】
コイル9、10の巻回軸方向の長さを、圧粉磁心部3、4の長さ、圧粉磁心部3、4の両側の二つの磁気ギャップGcdの長さおよび圧粉磁心部3、4の両側の積層磁心部の直線部のうちの一方の直線部3b(または4b)の長さの合計よりも大きくしておくことで、コイルの位置ずれが生じても、磁気ギャップGcdがコイルの外側に位置することを防ぐことができる。また、圧粉磁心部と該圧粉磁心部の両端側の積層磁心部の前記直線部との間の磁気ギャップGcdの位置がコイルの内側にあることで磁束漏洩の低減効果は得られるが、かかる効果をより確実にするには、磁気ギャップGcdの位置はコイルの端部から3mm以上内側であることがより好ましい。磁気ギャップGcdの位置とは、
図5に示すようにコイル9、10の端部から磁気ギャップの端部、すなわち積層磁心部3、4の直線部3b、4bの末端までの距離dで表す。各磁脚において、両側の磁気ギャップGcdとコイルの端部との距離dが均等になるように、スペーサを用いるなどして、コイルを配置することがより好ましい。
【0031】
コイルに使用する導体は、断面形状が長方形の平角線、円形の丸線など種々の形態のものを用いることができる。丸線は、柔軟性に優れ、巻回が容易である。一方、平角線を用いたエッジワイズコイルでは、丸線に比べて線間に不要な空間が生じないため、占積率が高いコイルが得られ、リアクトルの小型化に寄与する。また、同一断面積において、丸線を使用する場合に線径を大きくしたのと同様の効果が得られ、発熱量を低く抑えることができる。例えば、厚さは1〜2mm、幅は4〜8mm程度の平角線を用いればよい。
【0032】
積層磁心部に用いる軟磁性合金薄帯としては、例えば、Fe−Si−B系、Fe−Si−B−C系等の非晶質軟磁性合金薄帯を用いることができる。商用に供されているものとしては、例えば米国Metglas社製の鉄系非晶質軟磁性材2605SA1などである。また、軟磁性合金薄帯として、例えばFe−Si−B−Cu系、Fe−Si−B−Cu−Nb系等の組成を有し、1000Å以下の微結晶が晶出したナノ結晶軟磁性合金薄帯を用いることができる。例えば、日立金属製のファインメット(登録商標)を用いることができる。積層磁心部の作製には、従来からのカットコアの製造方法を適用すればよい。その例を以下に示す。まず矩形状等の巻芯に、軟磁性合金薄帯を所定の形状まで巻回した後、熱処理を行う。熱処理後の磁心は熱硬化樹脂を用いた樹脂含浸に供され、樹脂硬化後、切断されU型等の形状のカットコアを得る。切断後の磁心の切断面は機械的研磨、化学的研磨等を行う。
【0033】
一方、圧粉磁心部用の磁性粉末としては、例えば純鉄の粉、Fe−6.5%Siで代表されるSiを6〜7%含むFe−Si合金粉、Fe−Al合金粉、Fe−Si−Al合金粉、Fe−Ni合金粉、Fe−Co合金粉、非晶質軟磁性合金粉、微結晶質軟磁性合金粉などが挙げられ。これらは各々単独で用いてもよいし、適宜、組合せて用いても良い。特にSiを6〜7%含むFe−Si合金粉は、磁歪、磁心損失、飽和磁束密度Bsの各特性に優れており、圧粉磁心部に好適な磁性粉末である。圧粉磁心部は通常の製造プロセスによって作製することができる。例えば、絶縁性を付与するとともに、粉末を結着するバインダーとしても機能する樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂などを用いればよい。圧粉磁心部の成型方法としては、磁性粉末と樹脂の混合物をいったん液状化した後に注型して硬化させる注型法、金型中に射出成型することにより成型する射出成型法、金型中に磁性粉末と有機物又は無機物からなる結合材の混合物を充填し加圧して圧粉磁心 を成型するプレス成型法などがある。
【0034】
複合磁心の典型的な製造方法は、平行に対置された一組の圧粉磁心部と、前記圧粉磁心部を介して対置された、一組の積層磁心部とを備えた環状の複合磁心の製造方法であって、前記各圧粉磁心部として、一軸性のプレス成型によって得られた、互いに平行な4つの稜線部分にアールを有する少なくとも一つの圧粉磁心ブロックを用い、前記積層磁心部として磁性金属板の積層体を用い、これらを前記圧粉磁心部内、前記圧粉磁心部と前記積層磁心部との間の少なくとも一方に磁気ギャップを形成するように配置するとともに、前記アールを有する稜線部分が前記積層磁心部の端面と対向するように前記圧粉磁心ブロックを配置する製造方法である。また、リアクトルの典型的な製造方法は、さらに上記複合磁心の製造方法に加えて、少なくとも前記圧粉磁心部を周回するコイルを配置する工程を含む。コイルは環状の複合磁心を構成した後に配置してもよいし、形状を保持したコイルやボビンに巻回されたコイルを用いて環状の複合磁心を構成する際に、かかるコイルに圧粉磁心部、積層磁心部の少なくとも一方を挿入してリアクトルを構成してもよい。さらに上記製造方法によって複合磁心やリアクトルを構成する際に、上述の各実施形態になるように圧粉磁心部および積層磁心部を配置すればよい。
【0035】
通常、圧粉磁心部と積層磁心部の対向する端面形状(断面形状)は同じに設定されるので、圧粉磁心部の飽和磁束密度と積層磁心部の飽和磁束密度の差が小さいことが好ましい。例えば、圧粉磁心部の飽和磁束密度と積層磁心部の飽和磁束密度の平均値に対する圧粉磁心部の飽和磁束密度及び積層磁心部の飽和磁束密度の偏差を20%以内にすることが好ましく、10%以内がより好ましい。
【0036】
次に、本発明のリアクトル用いて構成する電源装置としてDC−DCコンバータの例を示す。
図6は、駆動周波数10kHzのブースト型DC−DCコンバータの回路構成を示している。図中のインダクタL1に上述のリアクトルを搭載する。なお、本発明のリアクトルを適用する電源装置は、
図6に示すようなDC−DCコンバータに限らず、インバータ等、車両用、太陽光発電用等の各種の大電流電源装置に適用することができる。