(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075684
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】配管支持装置
(51)【国際特許分類】
F16L 3/12 20060101AFI20170130BHJP
F16L 3/00 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
F16L3/12 Z
F16L3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-273299(P2012-273299)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-119008(P2014-119008A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 崇明
(72)【発明者】
【氏名】伊林 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】西方 伸広
(72)【発明者】
【氏名】徳 多加志
【審査官】
渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】
スイス国特許発明第00363863(CH,A5)
【文献】
特開2005−147074(JP,A)
【文献】
実開昭64−018691(JP,U)
【文献】
特開2000−104861(JP,A)
【文献】
特開2005−172161(JP,A)
【文献】
特開2008−082463(JP,A)
【文献】
仏国特許出願公開第02572488(FR,A1)
【文献】
特開2004−162787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00− 3/26
F16L37/00−37/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を配管支持対象に固定する配管支持装置であって、
一端に開孔が形成された一対の配管支持片と、前記配管支持片の他端同士を連結する座部とを備え、前記配管支持対象への固定手段を前記座部に備えるコ字状断面形状を有する配管支持本体部材と、
一方の開孔から他方の開孔に橋渡しされ、先端に他方の開孔に掛止する掛止部を有する第1、第2の橋渡し部と、前記第1、第2の橋渡し部を支持する基部と、後端側で一方の開孔で係止する係止部とを備え、耐火性を有する配管脱落防止部材と、を有し、
前記第1、第2の橋渡し部は、互いに弾性的に拡縮可能に設けられ、前記第1、第2の橋渡し部の先端に設けられた前記掛止部は、前記他方の開孔を通過したときに弾性的に前記他方の開孔に掛止するように設けられ、
さらに、前記第1、第2の橋渡し部は、後端同士の間隔が前記一方の開孔の幅よりも大きく設けられ、先端に向かって先細りとなるようにテーパ部が設けられ、その後端には一方の開孔と同寸法の段部が形成されていることを特徴とする配管支持装置。
【請求項2】
前記配管脱落防止部材は、弾性を有する金属製の線材を曲げて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管支持装置。
【請求項3】
前記配管脱落防止部材は、弾性を有する金属板をその肉厚方向に折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ガスなどの流体を流動させる管(例えばガス用フレキシブル管)を壁面などの配管支持対象に固定する配管支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からガスの屋内配管にはガス用のフレキシブル管が使用されている。フレキシブル管は鋼管に比して質量も小さく、また自由に曲げて配管をすることができるので、施工性に優れている。このフレキシブル管を壁面上へ配管して固定する際には、例えば
図9(a)に示されるような配管固定金具6が使用される。この配管固定金具6によれば、配管を固定したい箇所において、配管支持対象Wと配管固定金具6の間にフレキシブル管Pを挟みこんだ状態を保ちつつ配管固定金具6を配管支持対象Wにねじ止めしなければならない。そのため、フレキシブル管Pと配管固定金具6を支持する作業者と、ねじ止めする作業者がそれぞれ必要となり、非効率な作業にならざるを得なかった。
【0003】
そこで、一人の作業者であっても容易に壁面への配管固定可能な配管固定金具として、
図9(b)に示されるような配管固定金具7が提案され実用に供されている。この配管固定金具7は、配管Pを弾性的に狭着保持する対をなす支持片71と、支持片71の一方の端部同士を連結する座部72とからなる断面が略コ字状に形成された部材である。この配管固定金具7によれば、配管支持対象Wの配管Pを固定したい箇所にあらかじめ配管固定金具7を固定しておき、最後に配管Pを配管固定金具7に押し込むだけの作業で固定することができるので、少ない作業者で効率的に配管の固定作業を行うことができる。しかし、
図9(b)の配管固定金具であっても、配管Pに外れる方向の外力が作用した場合には配管の保持が十分ではなく外れる場合があり、その問題を解決するために引用文献1には
図9(c)に示される管固定具8が提案されている。この管固定具8は、円周方向に可動で弓形状の保持片81と、保持片の円周方向の移動を係止する係止部82と、これらと連結される固定座83とを備え、容易かつ強固に配管を支持固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−145878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、
図9(b)の配管固定金具では、支持片の弾性のみで配管を支持固定しているので、何かの拍子に配管が外れる方向に外力が作用した場合に配管が外れるおそれがある。また、火災などの高温に配管固定金具がさらされた場合には、配管固定金具が軟化して配管が支持できなくなる場合がある。また、
図9(c)の管固定具では、可動保持片と係止部を備えた管固定具は保持片に可動性を持たせるために合成樹脂で形成され火災時には焼失して配管を保持できないという問題がある。
【0006】
したがって、本発明は以上の従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、配管支持対象に容易に配管を固定することができて、かつ、配管が外れる方向に外力が作用したり火災時などの高温の環境下おかれた場合であっても配管を支持固定することができる配管支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の配管支持装置は、
配管を配管支持対象に固定する配管支持装置であって、
一端に開孔が形成された一対の配管支持片と、前記配管支持片の他端同士を連結する座部とを備え、前記配管支持対象への固定手段を前記座部に備えるコ字状断面形状を有する配管支持本体部材と、
一方の開孔から他方の開孔に橋渡しされ、先端に他方の開孔に掛止する掛止部を有する第1、第2の橋渡し部と、前記第1、第2の橋渡し部を支持する基部と、後端側で一方の開孔で係止する係止部とを
備え、耐火性を有する配管脱落防止部材と、を有し、
前記第1、第2の橋渡し部は、互いに弾性的に拡縮可能に設けられ、前記第1、第2の橋渡し部の先端に設けられた前記掛止部は、前記他方の開孔を通過したときに弾性的に前記他方の開孔に掛止するように設けられ、
さらに、前記第1、第2の橋渡し部は、後端同士の間隔が前記一方の開孔の幅よりも大きく設けられ、先端に向かって先細りとなるようにテーパ部が設けられ、その後端には一方の開孔と同寸法の段部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の配管支持装置において、前記第1、第2の橋渡し部は、先端に向かって先細りとなるようにテーパ部が設けられ、その後端には一方の開孔と同寸法の段部が形成されて
いるので、前記第1、第2の橋渡し部は、前記一方の開孔から前記他方の開孔に向かって挿入されるにつれて前記テーパ部が相対的に前記一方の開孔によって弾性的に縮められ、前記テーパ部が前記一方の開孔を通過したとき、前記第1、第2の橋渡し部はその弾性によって拡がって前記段部が前記一方の開孔に係止するともに、先端の前記掛止部が前記他方の開孔に掛止することができる。
【0010】
また、本発明の配管支持装置において、前記配管脱落防止部材は、弾性を有する金属製の線材を曲げて形成されてもよい。
【0011】
また、本発明の配管支持蔵置において、前記配管脱落防止部材は、弾性を有する金属板をその肉厚方向に折り曲げて形成されてもよい。
【0012】
また、本発明
に関連する配管支持蔵置において、前記配管脱落防止部材は、金属板を打ち抜き加工により形成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配管支持装置によれば、簡単な形状の配管支持本体部材を配管支持対象の必要な箇所に予め固定しておき、固定された配管支持本体部材に配管を支持させ、配管支持本体部材に形成された開孔間に配管脱落防止部材を橋渡して配管の脱落を防止するので、配管支持対象に容易に配管を固定することができる。さらに、配管脱落防止部材は耐火性を有しているので、配管支持装置が高温にさらされた際にも配管の支持を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る配管支持装置の使用状態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る配管支持装置の使用状態を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る配管支持装置における配管支持本体部材を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る配管支持装置における配管脱落防止部材を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る配管支持装置による配管の支持手順を示す側面図である。
【
図6】配管脱落防止部材の挿入動作を示す平面図である。
【
図7】配管脱落防止部材の他の形態を示す平面図である。
【
図8】配管脱落防止部材の他の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一つの実施の形態に係る配管支持装置について説明する。
本発明の一実施の形態に係る配管支持装置1は、
図1、
図2に示されるように、配管支持対象W(ここでは壁面)に固定され配管Pを支持する配管支持本体部材2と、配管支持本体部材2の開放側の端部に装着され配管支持部材からの配管Pの脱落を防止する配管脱落防止部材3と、配管支持対象Wに配管支持本体部材を固定する固定部材4とで構成されている。以下、各部材の詳細についてそれぞれ説明する。
【0016】
図3に示されるように、配管支持本体部材2は、一端に開孔21,21が形成された一対の配管支持片22,22と、配管支持片の他端同士を連結する座部23とを備えるコ字状断面形状を有している。配管支持片22は、配管を弾性的に挟みこんで保持する円弧状の保持部24と、保持部24から外側に向かって拡開するテーパ面25が形成されている。保持部24は、配管Pの外面と同じか若干大きな曲率半径に設けられており、配管Pに外面をしっかり保持することができる。また、テーパ面25は、配管Pを保持部24に向かって押し込む際の挿入ガイドとして作用し、配管Pはテーパ面25に沿って配管支持片22を弾性的に押し拡げて保持部24まで容易に挿入される。また座部23の中央には、配管固定対象に固定するための固定手段として、固定部材4を通すための貫通孔26が形成されている。
配管支持本体部材2は、配管支持片22が保持部24の付け根部から弾性的に変形し配管を弾性的に挟みこんで保持するために弾性を有する金属材料(例えば、ばね用冷間圧延鋼、ばね用ステンレス鋼、ばね用りん青銅)で形成されている。また、配管支持本体部材2は、支持される配管の保護、配管支持本体部材2の防食、および絶縁のために被覆が施されている。被覆としては、例えばエポキシ塗装やポリアミド樹脂被覆を用い得る。
【0017】
図4に示されるように、配管脱落防止部材3は、対をなす第1の橋渡し部31と第2の橋渡し部32と、第1、第2の橋渡し部31,32の後端部同士を連結する基部33とを有する。第1、第2の橋渡し部31,32は先端に向かって先細りとなるよう設けられ、それぞれの先端は外側に向かって鍵状に折り曲げられた掛止部34が形成されている。また、第1、第2の橋渡し部は後端部付近で折り曲げられて段部36が設けられている。
配管脱落防止部材3は、配管支持本体部材2に形成された開孔21,21の間に弾性的に橋渡すために、弾性を有する金属製の線材で形成され、対をなす第1、第2の橋渡し部は弾性的に拡縮可能に設けられている。また、配管脱落防止部材3も配管支持本体部材2と同様に、配管の保護、配管脱落防止部材3の防食、および絶縁のために被覆が施されている。被覆としては、例えばエポキシ塗装やポリアミド樹脂被覆を用い得る。
【0018】
図2に示されるように、配管支持本体部材2は固定部材4によって配管支持対象Wに固定されている。本実施の形態における固定部材4は、配管固定対象への固定手段として座部23に形成された貫通孔26から配管支持対象Wにねじ込まれるネジ部材である。
【0019】
次に、
図5、
図6を使って、この配管支持装置1を使用した配管Pの配管支持対象Wへの固定手順を説明する。なお、ここでは配管Pとして外面を樹脂被覆されたフレキシブル管を使用する場合について説明する。
1.まず、配管支持対象Wの配管を固定する箇所を決定し、必要な数量の配管支持装置1と必要な長さのフレキシブル管Pを準備する。
2.次いで、
図5(a)に示すように、配管支持対象Wの固定箇所に配管支持本体部材2を固定部材4で固定する。このとき配管支持本体部材2は所定の長さ(例えば1.0m)毎に固定される。
3.次いで、
図5(b)に示すように、配管支持対象Wに固定された配管支持本体部材2の開放端部側からフレキシブル管Pを押し込んで、フレキシブル管Pを配管支持本体部材2に装着する。このとき、フレキシブル管Pは、配管支持片22のテーパ面25に沿って配管支持片22を矢印方向に弾性的に押し拡げつつ挿入され、
図5(c)に示すようにテーパ面25を通過後は保持部24に保持される。この状態でフレキシブル管Pは配管支持片22は弾性保持部24によって弾性的に狭着保持されているので容易に脱落することはない。
4.次いで、
図5(d)に示すように、配管脱落防止部材3を、配管支持片22の端部に形成された一方の開孔21から他方の開孔21に向かって橋渡して装着する。配管脱落防止部材3は次のようにして開孔21,21の間に橋渡しされる。
図6(a)に示すように配管支持本体部材2にフレキシブル管Pが装着された状態で、配管脱落防止部材3を準備する。次いで、
図6(b)に示すように、一方の開孔21(図中下側の開孔)から他方の開孔21に向かって第1、第2の橋渡し部31,32が挿入される。配管脱落防止部材3は、第1、第2の橋渡し部31,32が後端同士の間隔が開孔21の幅よりも若干大きくなるように、かつ先端に向かって先細りとなるように設けられており、一方の開孔21から他方の開孔21に向かって押し込むにつれて、第1、第2の橋渡し部31,32は一方の開孔21に押されて間隔が狭まるように弾性的に縮められるので、先端が他方の開孔21に到達した際に先端の掛止部34が他方の開孔21を容易に通過することができる。さらに押し込まれ、
図6(c)に示すように段部36が一方の開孔21まで到達すると、第1、第2の橋渡し部31,32が弾性的に拡がって先端の掛止部34,34が他方の開孔21に掛止する。同時に、配管脱落防止部材3の後端側も係止部35が一方の開孔21に係止する。このように配管脱落防止部材3が配管支持本体部材2の開放端部を塞ぐように装着される。
【0020】
なお、本実施の形態においては、
図4に示されるように、配管脱落防止部材3は断面形状が円形の金属製の線材で形成されているが、
図7に示されるようにAA断面の形状が厚さtで所定幅bを有する金属板を肉厚方向に折り曲げて形成することもできる。
【0021】
また、配管脱落防止部材の他の形態として、
図8に示される構造とすることもできる。
図8の配管脱落防止部材5は、先端に掛止部53が形成された対をなす第1、第2の橋渡し部51,52と、第1、第2の橋渡し部51,52とを支持する基部54と、基部の後端部に設けられた段差からなる係止部55とを有する金属板で形成されている。この配管脱落防止部材5も、
図4の脱落防止部材3と同様に、配管支持本体部材2に形成された開孔21,21の間に橋渡しされて、配管支持本体部材2からの配管の脱落を防止する。配管脱落防止部材5は、金属板で設けられるので、
図4の配管脱落防止部材3に比して第1の橋渡し部と第2の橋渡し部のねじれが生じにくく、配管支持本体部材の開孔21に管脱落防止部材を確実に挿入し装着することが可能である。また、配管の脱落を面で受け止めることができるので、配管が外れる方向に外力が作用した場合に配管を優しく保持することができる。また、配管防止部材5は金属板で形成されるので、プレスによる打ち抜き加工により形成することが可能で、生産性に優れている。
【符号の説明】
【0022】
P:配管(フレキシブル管)
W:配管支持対象
1:配管支持装置
2:配管支持本体部材、21:開孔、22:配管支持片、23:座部、24:保持部
25:テーパ面、26:貫通孔
3,5:配管脱落防止部材、31,51:第1の橋渡し部、32,52:第2の橋渡し部
34,54:掛止部、35,55:係止部、36:段部
4:固定部材
6,7:配管固定金具
8:管固定具