特許第6075776号(P6075776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6075776ポリエステル系可塑剤およびセルロース系樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075776
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】ポリエステル系可塑剤およびセルロース系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/82 20060101AFI20170130BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20170130BHJP
   C08K 5/11 20060101ALI20170130BHJP
   C07C 69/40 20060101ALI20170130BHJP
   C07C 69/44 20060101ALN20170130BHJP
【FI】
   C07C69/82 B
   C08L1/02
   C08K5/11
   C07C69/40
   !C07C69/44
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-133260(P2013-133260)
(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公開番号】特開2015-7015(P2015-7015A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2015年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100161458
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 淳郎
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 有司
(72)【発明者】
【氏名】上村 聡
(72)【発明者】
【氏名】田中 友基
【審査官】 吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−155455(JP,A)
【文献】 特開2009−155454(JP,A)
【文献】 特開2009−299014(JP,A)
【文献】 特開平11−209482(JP,A)
【文献】 特開2013−001042(JP,A)
【文献】 特開平03−066727(JP,A)
【文献】 特開平03−140323(JP,A)
【文献】 特開2013−234273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/82
C07C 69/40
C07C 69/44
C08K 5/11
C08K 5/12
C08L 1/00
C08L 67/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表され、かつ、重合度が1である成分が0.7〜1.3質量%であることを特徴とするポリエステル系可塑剤。
(式(1)中、nは平均重合度を表し、1.95<n≦6であり、Aはエチレン基およびフェニレン基を、Gはエチレングリコールおよび1,2−プロピレングリコールから2つのヒドロキシル基を除いた基を、Eはアセチル基またはベンゾイル基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載のポリエステル系可塑剤を製造するにあたり、薄膜蒸留によって、重合度が1である成分を0.7〜1.3質量%とすることを特徴とするポリエステル系可塑剤の製造方法
【請求項3】
セルロース系樹脂100質量部に対して、請求項記載のポリエステル系可塑剤を1〜50質量部含有することを特徴とするセルロース系樹脂組成物。
【請求項4】
前記セルロース系樹脂が、セルロースアシレートである請求項記載のセルロース系樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル系可塑剤および該ポリエステル系可塑剤を含有するセルロース系樹脂組成物に関し、詳しくは、加工時の加工機の汚染、生産性の低下を抑制することが可能なポリエステル系可塑剤およびそれを含むセルロース系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系樹脂は環境負荷の小さい樹脂として近年注目されている。一般に他の合成樹脂に比較して強靭であり、透明性、艶、光沢に優れ、また、表面が滑らかで感触が良いという大きな特徴を有している。この為、セルロース系樹脂の用途は、例えば、シート、フィルム、電線被覆、玩具、医療用機器あるいは食品包装材等非常に多岐にわたっている。
【0003】
しかしながら、セルロース系樹脂は熱可塑性を有せず、加工成形に際しては高温をかけて溶融するか溶剤に溶解させなければならないが、高温をかけて溶融するとき同時に熱分解を起こし、着色するという問題がある。これを避けるために適当な可塑剤を配合してその軟化点を下げる必要がある。
【0004】
上記の目的のため、従来から、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トルエンスルホンアミド、トリアセチン又はペンタエリスリトールテトラアセテート等が使用されてきた。
【0005】
しかしながら、上記の可塑剤は、セルロース系樹脂との相溶性、可塑化効率、非揮発性、熱及び光に対する安定性、非移行性、非抽出性、耐水性等の広範な性能を満足させ得るものはなく、セルロース系樹脂組成物の一層の用途拡大の妨げとなっているのが現状である。
このため、特許文献1〜4には、種々のポリエステル系可塑剤を配合して得られるセルロース系樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−173740号公報
【特許文献2】特開2009−173741号公報
【特許文献3】特開2009−173742号公報
【特許文献4】特開2009−191219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献記載のセルロース系樹脂組成物は、含有成分の加工時の揮散による加工機の汚染、および、それによる製品の歩留まりの低下といった点において未だ改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、加工時の加工機の汚染、およびそれによる生産性の低下を抑えることができるポリエステル系可塑剤及び、当該ポリエステル系可塑剤を添加することにより得られるセルロース系樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のポリエステル系可塑剤が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明のポリエステル系可塑剤は、下記一般式(1)で表され、かつ、重合度が1である成分が0.7〜1.3質量%であることを特徴とするものである。
(式(1)中、nは平均重合度を表し、1.95<n≦6であり、Aはエチレン基およびフェニレン基を、Gはエチレングリコールおよび1,2−プロピレングリコールから2つのヒドロキシル基を除いた基を、Eはアセチル基またはベンゾイル基を表す。)
【0012】
本発明のポリエステル系可塑剤の製造方法は、上記ポリエステル系可塑剤を製造するにあたり、薄膜蒸留によって、重合度が1である成分を0.7〜1.3質量%とすることを特徴とするものである。
【0013】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、前記セルロース系樹脂100質量部に対し、上記いずれかのポリエステル系可塑剤を1〜50質量部含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、前記セルロース系樹脂が、セルロースアシレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、加工時の加工機の汚染、およびそれによる生産性の低下が抑制されたポリエステル系可塑剤及び当該ポリエステル系可塑剤を添加することにより得られるセルロース系樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のポリエステル系可塑剤について詳細に説明する。
本発明のポリエステル系可塑剤は、上記一般式(1)で表され、かつ、重合度が1である成分が5質量%未満であることを特徴とするものである。
重合度が1である成分とは、上記一般式(1)においてnが1である化合物である。これにより、揮散成分による加工時の加工機の汚染、およびそれによる生産性の低下が起こることを抑制することが可能となる。
本発明のポリエステル系可塑剤は、通常、上記一般式(1)で表される化合物の混合物として用いられる。
【0017】
前記一般式(1)中、Aがとりうる直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜18のアルキレン基としては、例えば、下記の炭素数1〜18のアルキル基からいずれか1つの水素原子を除いた基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−アミル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、1,2−ジメチルブチル基、1−イソプロピルプロピル基、1,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、tert−ヘプチル基、2−メチル−1−イソプロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、tert−オクチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−プロピルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、n−テトラデシル基、イソテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基等が挙げられる。中でも、炭素数2〜5のアルキレン基が好ましい。
【0018】
前記一般式(1)中、Aがとりうる炭素数5〜12のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、4−メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基からいずれか一つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0019】
前記一般式(1)中、Aがとりうる炭素数6〜18の芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセン−1−イル基、フェナントレン−1−イル基等が挙げられる。中でもフェニル基、ナフチル基が好ましい。
【0020】
本発明のポリエステル系可塑剤は、一般式(1)においてAが異なる化合物の混合物として用いることもできる。
【0021】
前記一般式(1)中、Gがとりうる直鎖又は分岐鎖の炭素数2〜12のアルキレン基又は直鎖又は分岐鎖の炭素数4〜12のエーテル結合を有するアルキレン基としては、例えば、下記のグリコールから二つのヒドロキシル基を除いた基が挙げられる。グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。この他、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコールから2つのヒドロキシル基を除いた基であってもよい。
【0022】
上記グリコールから2つのヒドロキシル基を除いた基の中でも、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、および、シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上から2つのヒドロキシル基を除いた基が好ましく、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、および1,4−ブタンジオールからなる群より選ばれる1種以上から2つのヒドロキシル基を除いた基がより好ましい。
【0023】
前記一般式(1)中、Gがとりうる炭素数5〜12のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、4−メチルシクロヘキシル基等のいずれか一つの水素原子を除いた基が挙げられる。
【0024】
本発明のポリエステル系可塑剤は、一般式(1)においてGが異なる化合物の混合物として用いることもできる。
【0025】
前記一般式(1)中、Eがとりうる炭素数2〜10の脂肪族アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基が挙げられる。
【0026】
前記一般式(1)中、Eがとりうる炭素数7〜13の芳香族アシル基としては、置換基を有していてもよいベンゾイル基、置換基を有していてもよいシンナモイル基等が挙げられる。
【0027】
本発明のポリエステル系可塑剤は、一般式(1)においてEが異なる化合物の混合物として用いることもできる。
【0028】
本発明のポリエステル系可塑剤の酸価(A.V)は1以下であることが好ましい。
【0029】
本発明のポリエステル系可塑剤は、公知の方法により重縮合を行なった後、公知の方法にて重合度が1である成分を5質量%未満まで除去することにより製造することができる。
例えば、多価アルコールと多価カルボン酸を酸触媒やチタン化合物、スズ化合物などのエステル化触媒でエステル化させてもよく、多価カルボン酸に対応する酸クロライドと多価アルコールを反応させてエステル化させてもよく、多価カルボン酸エステルと多価アルコールをエステル交換触媒の存在下にエステル交換反応させたものでもよく、原料及び製造方法は特に限定されない。また、必要に応じて種々の方法により精製処理することが好ましい。
【0030】
一般式(1)においてnが6より大きい化合物は、粘度が高く、樹脂への相溶性が悪く、成形品のブリードや、透明製品を成形した場合に製品が白濁するといった問題が発生することがある。
よって、重合度が1である成分が5質量%未満であることに加えて、一般式(1)において1.95<n≦6とすることで、加工機の汚染が少なく、耐揮散性及び相溶性にも優れるポリエステル系可塑剤とすることができる。なお、n=1.95は、重合度が1である成分の割合が5質量%であり、重合度が2である成分が95質量%の場合である。
【0031】
重合度が1である成分を除去する方法として、蒸留(単蒸留、薄膜蒸留、フラッシュ蒸留など)、抽出、カラム、ろ過、膜透過などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。中でも、重合度が1である成分を効果的に除去できることから薄膜蒸留が好ましい。即ち、本発明のポリエステル系可塑剤は、薄膜蒸留により、重合度が1である成分を5質量%未満にしたものであることが好ましい。薄膜蒸留は、真空度が70Pa以下であることが好ましく、50Pa以下であることがより好ましく、1〜50Paであることがさらに好ましい。外蓑温度は、300℃以下が好ましく、270℃以下がより好ましく、180〜270℃がさらに好ましい。単蒸留などでは、製造中に熱履歴がかかり、着色や熱分解による酸価(A.V)の上昇などの懸念がある。
ここで、重合度が1である成分の含有量は、ガスクロマトグラフ分析(GC)を用いることによって容易に測定する事が可能である。また、1.95<n≦6である組成についての分析方法は、例えば、合成したポリエステル系可塑剤を加水分解し、JIS K 0070:1992の化学製品の酸価(A.V)及び水酸基価(OH.V)の試験方法に則りモル比を算出した値から求め、もしくは、GPCカラムを用いた高速液体クロマトグラフ分析(HPLC)を用いることによって容易に測定する事が可能である。
【0032】
平均重合度nについての分析方法は上記の方法に限定されず、カラムや温度、流速等に関し、適宜最適な方法を使用することができる。
【0033】
本発明における上記ポリエステル系可塑剤の添加量は、セルロース系樹脂100質量部に対して1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部である。
上記添加量が1質量部未満では可塑性及び柔軟性付与効果が得られないおそれがあり、50質量部を超えて使用した場合にはブリードを生じるおそれがあるため好ましくない。
【0034】
以下、本発明のセルロース系樹脂組成物について詳細に説明する。
セルロース系樹脂は、特に制限されず、公知の種々のセルロース誘導体を用いることができる。例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類等、セルロースフェニルカーバメート等のセルロースカーバメート類等、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロースなどのセルロースエーテル類等が挙げられるが、好ましくはセルロースエステル類である。
【0035】
セルロースエステル類としては、例えば、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独であるいは混合して用いることができる。特に綿花リンター(以下、単にリンターということがある)から合成されたセルロースエステルを単独あるいは混合して用いることが好ましい。
上記セルロース系樹脂中に存在する無置換の水酸基の数も特に限定されない。
【0036】
セルロースエステルの中でも、セルロースの低級脂肪酸エステル(セルロースアシレート)であることが好ましい。セルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。セルロースの低級脂肪酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号公報、特開平8−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを挙げることができる。上記記載のセルロースの低級脂肪酸エステルの中でも、特に好ましく用いられるセルロースの低級脂肪酸エステルは、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。
【0037】
セルロース系樹脂としてセルローストリアセテートを用いる場合は、製品強度の観点から、重合度250〜400、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5モル%のものが好ましく、平均酢化度58.0〜62.5モル%のものが更に好ましい。
【0038】
特に好ましいセルロースの低級脂肪酸エステルは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基またはブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
式(I) 2.6≦X+Y≦3.0
式(II) 0≦X≦2.5
【0039】
上記セルロースエステルとして、セルロースアセテートプロピオネートを用いる場合、上記式(I)、(II)において1.9≦X≦2.5であり、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これ等は公知の方法で合成することができる。
但し、上記セルロース系樹脂に限定されるわけではなく、他のセルロース系樹脂を使用することも可能である。
【0040】
セルロース系樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。セルロース系樹脂の分子量や分子量分布については、用途や成形方法に応じて適宜選択できる。
【0041】
また、本発明のセルロース系樹脂組成物には、さらに各種の添加剤、例えば、リン系、フェノール系または硫黄系抗酸化剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤などを配合することもできる。
【0042】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2−第三ブチル−4,6−ジメチルフェニル)・エチルホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2’−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス[4,4’−n―ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)]・1,6−ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニルホスホナイトなどが挙げられる。
【0043】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−{3−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパノイルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]などが挙げられる。
【0044】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステルなどのジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)などのポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。
【0045】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−第三ブチル−4’−(2−メタクリロイルオキシエトキシエトキシ)ベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−ドデシル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−C7〜9混合アルコキシカルボニルエチルフェニル)トリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3、5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステルなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどの2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類、2−(2−ヒドロキシ−4−(2−(2−エチルヘキサノイルオキシ)エチルオキシ)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−(2−オクタノイルオキシエチル)フェニル)−1,3,5−トリアジン、テトラキス(α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリロイルオキシメチル)メタンなどが挙げられる。
【0046】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1
,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−
(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(1−ウンデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネートなどが挙げられる。
【0047】
その他、本発明の組成物には、必要に応じて、その他添加剤、例えば、充填剤、着色剤、架橋剤、帯電防止剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、滑剤、難燃剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性化剤、離型剤、顔料、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤等を配合することができる。
【0048】
本発明のセルロース系樹脂組成物は、公知の加工法により加工し、種々用途に用いることができる。
【0049】
本発明のポリエステル系可塑剤を添加して得られるセルロース系樹脂組成物は、加工方法には限定されずに使用することが可能であり、例えば、ロール加工、押出し成形加工、溶融圧延法、溶融流延法、溶液流延法、射出成形加工、加圧成形加工、粉体成型加工等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下製造例及び実施例を示して本発明のセルロース系樹脂組成物を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に示した配合にてポリエステル系可塑剤(化合物No.1〜No.8)を製造した。混合物の( )内はモル比を示す。
【0051】
≪実施例化合物≫
化合物No.1:多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)及びテレフタル酸(50)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)及び1,2−プロピレングリコール(50)と、末端Eがアセチル基からなるn=2のポリエステル化合物。
化合物No.2:多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)及びテレフタル酸(50)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)及び1,2−プロピレングリコール(50)と、末端Eがアセチル基からなるn=3.1のポリエステル化合物。
化合物No.3:多価カルボン酸成分Aとして、アジピン酸(100)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(100)と、末端Eがアセチル基からなるn=2.3のポリエステル化合物。
化合物No.4:多価カルボン酸成分Aとして、アジピン酸(100)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(100)と、末端Eがアセチル基からなるn=5.6のポリエステル化合物。
化合物No.5:多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)及びテレフタル酸(50)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)及び1,2−プロピレングリコール(50)と、末端Eがベンゾイル基からなるn=4.1のポリエステル化合物。
【0052】
≪比較例化合物≫
化合物No.6:多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)及びテレフタル酸(50)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)及び1,2−プロピレングリコール(50)と、末端Eがアセチル基からなるn=0.5のポリエステル化合物。
化合物No.7:多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)及びテレフタル酸(50)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)及び1,2−プロピレングリコール(50)と、末端Eがアセチル基からなるn=8.3のポリエステル化合物。
化合物No.8:多価カルボン酸成分Aとして、コハク酸(50)及びテレフタル酸(50)、多価アルコール成分Gとして、エチレングリコール(50)及び1,2−プロピレングリコール(50)と、末端Eがアセチル基からなるn=3.1のポリエステル化合物。
【0053】
製造方法は、多価カルボン酸と多価アルコール、ストッパーを反応容器に仕込み、触媒としてテトライソプロピルチタネートを加え、必要な場合は溶剤を添加し、攪拌しながら昇温した。副生する水は常圧及び減圧で除去し、最終的に220〜230℃まで温度を上げ脱水縮合反応を完結させた。なお一括合成が難しい場合は、多価カルボン酸・多価アルコールの反応とストッパーとの反応を別々とした。
得られたポリエステル系可塑剤について、薄膜蒸留装置を用い、化合物No.1〜5およびNo.7については、圧力4Pa/外套温度250℃で、化合物No.6については圧力80Pa/外蓑温度250℃で薄膜蒸留を行い、化合物No.8については薄膜蒸留を行わなかった。
【0054】
<重合度が1である成分の測定>
ガスクロマトグラフ分析(GC)を、カラムはジーエルサイエンス社製PEG−HTを使用し、キャリアとして窒素(50ml/min)、温度はインジェクタ、ディテクタ共に300℃、温度プログラムは150℃〜300℃、5℃/minとし、300℃で15分間保持して行った。内部標準としてテレフタル酸ジメチルを用いて、予め合成したn=1の化合物(単一のグリコールと単一の二塩基酸からなる)の検量線から、重合度が1である成分の含有量を測定した(質量%)。
【0055】
混合物となる、化合物No.1、No.2、No.5、No.6、No.7、No.8については、単一のグリコールと単一の二塩基酸からなる化合物のピークと、単一の酸に対してエチレングリコール及びプロピレングリコールが反応した化合物の各々のリテンションタイムが異なることから、それらの各々の面積比を基準として作成した検量線から、各成分の含有量を算出した。
【0056】
<平均重合度の測定>
ポリエステル系可塑剤の平均重合度n及び分子量(M.w)は、合成したポリエステル系可塑剤を加水分解し、JIS K 0070:1992の化学製品の酸価(A.V)及び水酸基価(OH.V)の試験方法に則りモル比を算出した値から求め、測定結果を表1に記した
【0057】
【表1】
【0058】
<裁断性>
フィルム用途の場合は加工時に裁断工程を必要とするため、裁断性の評価を行なった。
アセチルセルロース(酢化度61.5モル%、重合度260)をメチレンクロライド90質量部とメチルアルコール10質量部とからなる混合溶剤に攪拌しながら溶解し、濃度15質量%の溶液とした。これに表1に示す可塑剤をそれぞれアセチルセルロースに対して表2〜表6に示す添加量(質量部)を混合し、溶液をシャーレ上に流延し約0.1mmの厚さに製膜しフィルムを作成した。フィルムをハサミを用いて裁断した場合の裁断箇所を目視により判定し、以下の評価とした。
○:裁断性が良好
×:裁断箇所から割れが生じる
【0059】
<相溶性>
上記の方法でフィルムを作成し、フィルムの白濁の有無により相溶性を判定し、以下の評価とした。
○:白濁なし
×:白濁あり
【0060】
<加工機汚染>
アセチルセルロース(酢化度61.5モル%、重合度260)をメチレンクロライド90質量部とメチルアルコール10質量部とからなる混合溶剤に攪拌しながら溶解し、濃度15質量%の溶液とした。これに表1に示す可塑剤をそれぞれアセチルセルロースに対して表2〜表6に示す添加量(質量部)を混合し、溶液を金属支持体上に流延し約0.1mmの厚さに製膜しフィルムを作成した。フィルムを金属支持体から剥離後、金属支持体の汚れを目視により判定し、以下の評価とした。
◎:汚れなし
○:ほとんど汚れなし
△:汚れあり
×:汚れ激しい
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
上記、表2〜6より比較例11〜13では加工機汚染及び相溶性が悪いことが明らかである。一方、実施例1〜9および参考例1〜6では、加工機汚染がほとんどみられないことから、生産効率を落とすことなく、広範な加工に使用可能なポリエステル可塑剤化を提供することができた。また、フィルム用途として使用した場合にも裁断性および相溶性が優れることが明らかである。よって、本発明における特定のポリエステル系可塑剤は、加工機汚染低減、裁断性、相溶性に優れることが明らかであり、所定量配合することにより、その性能を有する樹脂組成物を提供することが可能となった。