特許第6075995号(P6075995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6075995-研削砥石消耗量検出方法 図000002
  • 特許6075995-研削砥石消耗量検出方法 図000003
  • 特許6075995-研削砥石消耗量検出方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6075995
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】研削砥石消耗量検出方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/04 20060101AFI20170130BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170130BHJP
【FI】
   B24B49/04 Z
   H01L21/304 631
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-181533(P2012-181533)
(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公開番号】特開2014-37045(P2014-37045A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087099
【弁理士】
【氏名又は名称】川村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100063174
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 功
(74)【代理人】
【識別番号】100124338
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 健
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 政明
(72)【発明者】
【氏名】三浦 修
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−021997(JP,A)
【文献】 特開2008−062353(JP,A)
【文献】 特開2010−069549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/04
H01L 21/304
B24B 21/04
B24B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを研削する研削装置に使用する研削砥石の消耗量を検出する研削砥石消耗量検出方法であって、
該研削装置は、
板状ワークを保持する保持テーブルと、該保持テーブルに保持された板状ワークを研削する研削砥石が装着された研削手段と、該研削手段を該保持テーブルに対して接近および離反させる研削送り手段と、該保持テーブルの上面高さを測定する第1の高さゲージと、該保持テーブルが保持する板状ワークの上面高さを測定する第2の高さゲージと、板状ワークの研削時に該保持テーブルが該研削手段から受ける荷重を検出する荷重検出手段と、を少なくとも備え、
該保持テーブルが研削荷重を受けていない時の該第1の高さゲージの値を第1の値とし、該保持テーブルが保持する板状ワークに対して該研削送り手段によって該研削手段を研削送りして研削終了時の該第1の高さゲージの値を第2の値とし、該第1の値と該第2の値との差を該保持テーブルの沈み量として第1の記憶部に記憶させ、
該研削手段によって該保持テーブルが保持する板状ワークを所望の厚みに研削し研削を終了した時点における該第1の高さゲージの値と該第2の高さゲージの値との差を研削後の板状ワークの厚みとし、該保持テーブルが保持する板状ワークが研削される前の該第1の高さゲージの値と該第2の高さゲージの値との差を研削前の板状ワークの厚みとし、該研削後の板状ワークの厚みと該研削前の板状ワークの厚みとの差を、該板状ワークが研削された量として第2の記憶部に記憶させ、
該研削手段に装着した研削砥石の先端が該保持テーブルが保持する研削前の板状ワークの上面に接する時の該研削手段の位置を該荷重検出手段が該研削手段からの荷重を検知することにより認識して第1の研削送り位置とし、該研削終了時の該研削手段の位置を第2の研削送り位置とし、該第1の研削送り位置と該第2の研削送り位置との差を該研削手段の移動量として第3の記憶部に記憶させ、
砥石消耗量=第3の記憶部の値−第2の記憶部の値−第1の記憶部の値
から、研削砥石の消耗量を検出する研削砥石消耗量検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持テーブルに保持された板状ワークに研削砥石を接触させて荷重をかけることにより研削を行う研削装置において、研削砥石の消耗量を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状ワークを研削する研削装置は、保持テ-ブルにおいて板状ワークを保持し、研削砥石を回転させながら研削手段を降下させて研削砥石を板状ワークに押圧する構成となっている(例えば特許文献1参照)。また、研削により研削砥石が消耗するため、板状ワークを1枚研削するごとに、研削手段の上下方向の最下位位置に基づき、研削砥石の消耗量を算出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−158768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、研削手段を下方に研削送りして板状ワークを押圧すると、板状ワークを保持する保持テーブルが押し下げられるため、研削手段もその分だけ降下する。したがって、研削手段の位置から求められる研削砥石の消耗量には、保持テーブルの押し下げ量が加算されており、研削装置では、研削砥石が実際の消耗量よりも多く消耗したと認識してしまう。
【0005】
本発明は、このような問題にかんがみなされたもので、保持テーブルに保持された板状ワークに研削砥石を押圧して研削を行う研削装置において、研削時に保持テーブルが押し下げられても、研削砥石の消耗量を正確に認識できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板状ワークを研削する研削装置に使用する研削砥石の消耗量を検出する研削砥石消耗量検出方法であって、研削装置は、板状ワークを保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された板状ワークを研削する研削砥石が装着された研削手段と、研削手段を保持テーブルに対して接近および離反させる研削送り手段と、保持テーブルの上面高さを測定する第1の高さゲージと、保持テーブルが保持する板状ワークの上面高さを測定する第2の高さゲージと、板状ワークの研削時に該保持テーブルが該研削手段から受ける荷重を検出する荷重検出手段と、を少なくとも備え、保持テーブルが研削荷重を受けていない時の第1の高さゲージの値を第1の値とし、保持テーブルが保持する板状ワークに対して研削送り手段によって研削手段を研削送りして研削終了時の第1の高さゲージの値を第2の値とし、第1の値と第2の値との差を保持テーブルの沈み量として第1の記憶部に記憶させ、研削手段によって保持テーブルが保持する板状ワークを所望の厚みに研削し研削を終了した時点における第1の高さゲージの値と第2の高さゲージの値との差を研削後の板状ワークの厚みとし、保持テーブルが保持する板状ワークが研削される前の第1の高さゲージの値と第2の高さゲージの値との差を研削前の板状ワークの厚みとし、研削後の板状ワークの厚みと研削前の板状ワークの厚みとの差を、板状ワークが研削された量として第2の記憶部に記憶させ、研削手段に装着した研削砥石の先端が保持テーブルが保持する研削前の板状ワークの上面に接する時の研削手段の位置を該荷重検出手段が該研削手段からの荷重を検知することにより認識して第1の研削送り位置とし、研削終了時の研削手段の位置を第2の研削送り位置とし、第1の研削送り位置と第2の研削送り位置との差を研削手段の移動量として第3の記憶部に記憶させ、
砥石消耗量=第3の記憶部の値−第2の記憶部の値−第1の記憶部の値
から、研削砥石の消耗量を検出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、研削手段の移動量及び板状ワークの研削量だけでなく、研削荷重による保持テーブルの沈み量を考慮して研削砥石の消耗量を求めるため、研削砥石の消耗量を正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】研削装置の構成を略示的に示す断面図である。
図2】研削前と研削終了時における保持テーブル、板状ワーク及び研削手段の位置関係を示す正面図である。
図3】研削手段の研削送り位置と保持テーブルの沈み量と板状ワークの厚みとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す研削装置1は、研削対象の板状ワークWを保持する保持テーブル2と、保持テーブル2に保持された板状ワークWを研削する研削砥石34が装着された研削手段3と、研削手段3を保持テーブル2に対して接近および離反させる研削送り手段4と、保持テーブル2の上面高さを測定する第1の高さゲージ5と、保持テーブル2が保持する板状ワークWの上面高さを測定する第2の高さゲージ6とを備えている。
【0010】
保持テーブル2は、多孔質部材により形成される保持部20を有し、保持部20の表面側が板状ワークWを載置する保持面20aとなっている。保持部20は、吸引源21に接続され、被加工物を吸引保持することが可能となっている。また、保持テーブル2は、保持テーブル2の傾きを調整する調整軸22と保持テーブル2を固定して支持するための固定軸23とによって支持されており、調整軸22の調整によって保持テーブル2の傾きを調整することができる。さらに、保持テーブル2には、研削時の押圧荷重を検出する荷重検出手段24を備えている。なお、荷重検出手段24は、研削手段3に備えていてもよい。
【0011】
研削手段3は、鉛直方向の軸心を有する回転軸30と、回転軸30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸30の下端に形成されたホイールマウント32と、ホイールマウント32に装着された研削ホイール33とから構成され、研削ホイール33の下面には複数の研削砥石34が円環状に固着されている。ハウジング31の内部にはモータを備えており、モータに駆動されて回転軸30が回転することにより研削ホイール33も回転する構成となっている。
【0012】
研削送り手段4は、鉛直方向の軸心を有するボールネジ40と、ボールネジ40と平行に配設されたガイドレール41と、ボールネジ40の一端に連結されたモータ42と、ガイドレール41に摺接するとともに内部のナット構造がボールネジ40に螺合する昇降部43と、ボールネジ40と平行に配設されたリニアスケール44とから構成されている。昇降部43には、リニアスケール44の目盛りを指す指示部43aが形成されている。
【0013】
研削送り手段4を構成するモータ42は、制御手段7と接続されており、研削送り手段4の動作は、制御手段7によって制御される。制御手段7には、CPUと、第1の記憶部71、第2の記憶部72及び第3の記憶部73とを備えている。また、制御手段7は、第1のゲージ5及び第2のゲージ6の測定値を読み取ることができる。
【0014】
このように構成される研削装置1においては、保持テーブル2において板状ワークWを吸引保持して、保持テーブル2を回転させる。そして、研削ホイール33が回転しながら、制御手段7による制御の下で、研削送り手段4が研削手段3を降下させていき、回転する研削砥石34を板状ワークWの上面W1に接触させて研削を行う。そして、板状ワークWが所望の厚さに形成されると、研削手段3を上昇させて研削を終了する。
【0015】
図2に示すように、保持テーブル2が研削荷重を受けていない時の保持テーブル2の保持面20aの高さを第1の高さゲージ5によって測定し、その値をZ1sとする。このZ1sを第1の値とする。一方、保持テーブル2が保持する板状ワークWに対して研削送り手段4によって研削手段3を研削送りし、研削終了時に保持テーブル2が研削荷重を受けた時の保持面20aの高さを第1の高さゲージ5により測定し、その値をZ1eとする。このZ1eを第2の値とする。そして、第1の値と第2の値との差(Z1s−Z1e)は、研削開始から研削終了までの間の保持テーブル2の沈み量であり、この値を第1の記憶部71に記憶させる。
【0016】
また、研削手段3によって保持テーブル2が保持する板状ワークWを所望の厚みに研削して研削を終了した時点における保持面20aの高さの値Z1eと、その時に第2のゲージ6により測定された板状ワークWの表面W1の高さZ2eとの差(Z1e−Z2e)は、研削後の板状ワークWの厚みとなる。
【0017】
さらに、第1の高さゲージ5により測定され、保持テーブル2が保持する板状ワークWが研削される前の保持面20aの高さの値Z1sと、その時に第2の高さゲージ6により測定された板状ワークWの表面W1の高さZ2sとの差(Z1s−Z2s)は、研削前の板状ワークWの厚みとなる。
【0018】
そして、研削後の板状ワークWの厚みと研削前の板状ワークWの厚みとの差{(Z1s−Z2s)−(Z1e−Z2e)}は、板状ワークWが研削された量であり、この計算により求められる値を、板状ワークWの研削量として第2の記憶部72に記憶させる。
【0019】
研削砥石34の先端(下面)が保持テーブル2が保持する研削前の板状ワークWの上面W1に接する時の研削手段3の位置、すなわち、保持テーブル2の保持面20aから板状ワークWの厚さ分だけ加算した位置を、図1に示したリニアスケール44によって読み取り、その位置を第1の研削送り位置Zsとする。なお、板状ワークWの上面W1に研削砥石34が接したことは、図1に示した荷重検出手段24が研削手段3からの荷重を検知したことにより認識することができる。
【0020】
また、研削終了時の研削手段3の位置を、リニアスケール44によって読み取り、その位置を第2の研削送り位置Zeとする。そして、第1の研削送り位置Zsと第2の研削送り位置Zeとの差を、研削手段3の移動量(Zs−Ze)として第3の記憶部73に記憶させる。
【0021】
以上のように、第1の記憶部71には、研削開始から研削終了までの間の保持テーブル2の沈み量(Z1s−Z1e)が記憶され、第2の記憶部72には、板状ワークWの研削量{(Z1s−Z2s)−(Z1e−Z2e)}が記憶され、第3の記憶部73には、研削手段3の移動量(Zs−Ze)が記憶されている。そして、第3の記憶部73に記憶された研削手段3の移動量は、第1の記憶部71に記憶された保持テーブル2の沈み量と、第2の記憶部72に記憶された板状ワークWの研削量と、研削中における研削砥石34の消耗量との総和であるから、研削砥石34の消耗量は、以下の式(1)によって求めることができる。
【0022】
砥石消耗量=第3の記憶部の値−第2の記憶部の値−第1の記憶部の値・・・式(1)
【0023】
かかる計算は、制御手段7に備えたCPUによって行われる。また、第3の記憶部73の値と第2の記憶部72の値と第1の記憶部71の値との関係は、図3に示すグラフのようになる。
【0024】
このように、研削手段3の移動量及び板状ワークWの研削量だけでなく、研削荷重による保持テーブル2の沈み量を考慮して研削砥石34の消耗量を求めるため、研削砥石34の消耗量を正確に算出することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:研削装置
2:保持テーブル 20:保持部 20a:保持面
21:吸引源 22:調整軸 23:固定軸 24:荷重検出手段
3:研削手段
30:回転軸 31:ハウジング 32:ホイールマウント 33:研削ホイール
34:研削砥石
4:研削送り手段
40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:モータ 43:昇降部
44:リニアスケール
5:第1の高さゲージ 6:第2の高さゲージ
7:制御手段 71:第1の記憶部 72:第2の記憶部 73:第3の記憶部
図1
図2
図3