(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インテグラルフォトグラフィ方式により立体画像撮影装置で撮影された要素画像群が立体画像表示装置で表示された際の立体像の奥行き範囲と、前記奥行き範囲の変化量である奥行き時間変化とを補正する立体画像補正装置であって、
前記要素画像群が入力され、入力された前記要素画像群を予め設定された遅延時間だけ遅延させて、遅延要素画像群を出力する遅延手段と、
前記要素画像群及び前記遅延要素画像群がそれぞれ前記立体画像表示装置で表示された際の表示奥行き範囲及び遅延表示奥行き範囲を、所定の奥行き範囲算出法により算出する奥行き範囲算出手段と、
前記表示奥行き範囲が予め設定された基準奥行き範囲を超えるか否かを判定する奥行き範囲判定手段と、
前記表示奥行き範囲と前記遅延表示奥行き範囲との変化量である表示奥行き時間変化を算出する奥行き時間変化算出手段と、
前記表示奥行き時間変化が予め設定された基準奥行き時間変化を超えるか否かを判定する奥行き時間変化判定手段と、
前記表示奥行き範囲が前記基準奥行き範囲を超える場合、前記要素画像群に対し、前記立体画像表示装置の要素光学系のピッチ及び焦点距離が同じ仮想要素光学系を2次元状に配列した仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、当該仮想要素光学系群からの距離が異なる予め設定された距離平面毎の画素分布を示す距離平面画像を前記要素画像群から生成し、前記表示奥行き時間変化が前記基準奥行き時間変化を超える場合、前記遅延要素画像群に対し、前記仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、前記遅延要素画像群から前記距離平面画像を生成する距離平面画像生成手段と、
前記距離平面画像生成手段で生成された距離平面毎の距離平面画像を、距離に対応付けて、前記立体像を表示する立体像空間上の体積画素分布として記憶する体積画素分布記憶手段と、
前記表示奥行き範囲が前記基準奥行き範囲を超える場合、前記表示奥行き範囲と前記基準奥行き範囲との比で、前記要素画像群における体積画素分布の座標を奥行き方向に補正し、前記表示奥行き時間変化が前記基準奥行き時間変化を超える場合、前記表示奥行き時間変化と前記基準奥行き時間変化との差分で、前記遅延要素画像群における体積画素分布の座標を奥行き方向に補正する奥行き範囲補正手段と、
前記奥行き範囲補正手段で補正された体積画素分布の距離平面毎に、前記仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、補正後の要素画像群及び遅延要素画像群の少なくとも一方を生成する補正要素画像群生成手段と、
を備えることを特徴とする立体画像補正装置。
インテグラルフォトグラフィ方式により立体画像撮影装置で撮影された要素画像群が立体画像表示装置で表示された際の立体像の奥行き範囲を補正する立体画像補正装置であって、
前記要素画像群が前記立体画像表示装置で表示された際の表示奥行き範囲を、所定の奥行き範囲算出法により算出する奥行き範囲算出手段と、
前記表示奥行き範囲が予め設定された基準奥行き範囲を超えるか否かを判定する奥行き範囲判定手段と、
前記表示奥行き範囲が前記基準奥行き範囲を超える場合、前記要素画像群に対し、前記立体画像表示装置の要素光学系のピッチ及び焦点距離が同じ仮想要素光学系を2次元状に配列した仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、当該仮想要素光学系群からの距離が異なる予め設定された距離平面毎の画素分布を示す距離平面画像を生成する距離平面画像生成手段と、
前記距離平面画像生成手段で生成された距離平面毎の距離平面画像を、距離に対応付けて、前記立体像を表示する立体像空間上の体積画素分布として記憶する体積画素分布記憶手段と、
前記表示奥行き範囲が前記基準奥行き範囲を超える場合、前記表示奥行き範囲と前記基準奥行き範囲との比で、前記要素画像群における体積画素分布の座標を奥行き方向に補正する奥行き範囲補正手段と、
前記奥行き範囲補正手段で補正された体積画素分布の距離平面毎に、前記仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、補正後の要素画像群を生成する補正要素画像群生成手段と、
を備えることを特徴とする立体画像補正装置。
インテグラルフォトグラフィ方式により立体画像撮影装置で撮影された要素画像群が立体画像表示装置で表示された際の立体像の奥行き範囲の変化量である奥行き時間変化を補正する立体画像補正装置であって、
前記要素画像群が入力され、入力された前記要素画像群を予め設定された遅延時間だけ遅延させて、遅延要素画像群を出力する遅延手段と、
前記要素画像群及び前記遅延要素画像群がそれぞれ前記立体画像表示装置で表示された際の表示奥行き範囲及び遅延表示奥行き範囲を、所定の奥行き範囲算出法により算出する奥行き範囲算出手段と、
前記表示奥行き範囲と前記遅延表示奥行き範囲との変化量である表示奥行き時間変化を算出する奥行き時間変化算出手段と、
前記表示奥行き時間変化が予め設定された基準奥行き時間変化を超えるか否かを判定する奥行き時間変化判定手段と、
前記表示奥行き時間変化が前記基準奥行き時間変化を超える場合、前記遅延要素画像群に対し、前記立体画像表示装置の要素光学系のピッチ及び焦点距離が同じ仮想要素光学系を2次元状に配列した仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、当該仮想要素光学系群からの距離が異なる予め設定された距離平面毎の画素分布を示す距離平面画像を生成する距離平面画像生成手段と、
前記距離平面画像生成手段で生成された距離平面毎の距離平面画像を、距離に対応付けて、前記立体像を表示する立体像空間上の体積画素分布として記憶する体積画素分布記憶手段と、
前記表示奥行き時間変化が前記基準奥行き時間変化を超える場合、前記表示奥行き時間変化と前記基準奥行き時間変化との差分で、前記遅延要素画像群における体積画素分布の座標を奥行き方向に補正する奥行き範囲補正手段と、
前記奥行き範囲補正手段で補正された体積画素分布の距離平面毎に、前記仮想要素光学系群を介して、光線追跡を行うことで、補正後の要素画像群を生成する補正要素画像群生成手段と、
を備えることを特徴とする立体画像補正装置。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本願発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0038】
(第1実施形態)
[立体画像補正装置の構成]
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る立体画像補正装置1の構成について、説明する。
立体画像補正装置1は、立体画像表示装置200においてIP方式により立体像を表示する際に、立体画像撮影装置100で撮影された要素画像群の奥行き範囲を補正するものである。
【0039】
この立体画像補正装置1は、IP方式を用いた立体画像撮影装置100が撮影した映像信号である要素画像群を入力し、補正した要素画像群(補正要素画像群)を出力する。この補正要素画像群は、IP方式を用いた立体画像表示装置200において、立体像を表示する際の要素画像群として使用される。
【0040】
立体画像撮影装置100は、被写体を要素画像群として撮影する一般的なIP方式を用いた撮影装置であって、例えば、
図17に示した立体画像撮影装置910と同様のものである。また、立体画像表示装置200は、要素画像群を立体像として表示する一般的な表示装置であって、例えば、
図18に示した立体画像表示装置920と同様のものである。
なお、立体画像補正装置1に入力される要素画像群は、実際の被写体を撮影した映像信号である必要はなく、コンピュータグラフィックス等、計算機(不図示)によって、立体画像撮影装置100を模式的に再現して生成されたものであっても構わない。
【0041】
また、立体画像補正装置1は、立体画像撮影装置100から、要素画像群映像信号と共に、要素画像群の補正に必要な情報として、標準奥行き範囲情報と、基準奥行き範囲情報と、要素画像群生成情報と、標準表示装置情報とが入力される。ただし、標準表示装置情報は、立体画像補正装置1に予め設定されてもよい。
【0042】
標準奥行き範囲情報は、予め設定された、標準的な表示装置(不図示)で立体像が表示された際の奥行き範囲(標準奥行き範囲)を示す情報である。
基準奥行き範囲情報は、予め設定された、観察者にとって適切な奥行き範囲(基準奥行き範囲)を示す情報である。本実施形態では、基準奥行き範囲は、全ての観察者に共通する奥行き範囲(共通奥行き範囲)であることとする。
【0043】
要素画像群生成情報は、立体画像撮影装置100が備える光学素子である要素光学系(以下、要素レンズ)の特性及び配置を示す情報である。
具体的には、要素画像群生成情報は、立体画像撮影装置100の要素レンズ群から撮像板の撮影面までの距離(要素レンズの焦点距離)、要素レンズ群を構成する要素レンズの中心間隔(ピッチ)、撮像板で撮影される被写体の要素画像の大きさ、及び、要素レンズの配置位置を含んでいる。
【0044】
また、立体画像補正装置1は、立体画像表示装置200に関連する情報として、表示装置情報が予め設定されている。
この表示装置情報は、立体画像表示装置200が備える要素レンズの特性及び配置を示す情報である。
具体的には、表示装置情報は、立体画像表示装置200の要素レンズ群から表示素子の表示面までの距離(要素レンズの焦点距離)、要素レンズ群を構成する要素レンズの中心間隔(ピッチ)、表示素子で表示される被写体の要素画像の大きさ、及び、要素レンズの配置位置を含んでいる。
【0045】
標準表示装置情報は、標準的な表示装置が備える要素レンズの特性及び配置を示す情報である。
具体的には、標準表示装置情報は、標準的な表示装置の要素レンズ群から表示素子の表示面までの距離(要素レンズの焦点距離)、要素レンズ群を構成する要素レンズの中心間隔(ピッチ)、表示素子で表示される被写体の要素画像の大きさ、及び、要素レンズの配置位置を含んでいる。
【0046】
図1に示すように、立体画像補正装置1は、標準奥行き範囲情報と、基準奥行き範囲情報と、要素画像群生成情報と、表示装置情報と、標準表示装置情報とに基づいて、要素画像群を補正するため、表示状態算出手段10と、立体画像処理手段20とを備える。
【0047】
表示状態算出手段10は、立体画像表示装置200において、要素画像群が表示される状態(奥行き範囲)を算出するものであり、奥行き範囲算出手段11と、奥行き範囲判定手段13とを備える。
【0048】
奥行き範囲算出手段11は、要素画像群が立体画像表示装置200で表示された際の表示奥行き範囲を、所定の奥行き範囲算出法により算出するものである。具体的には、奥行き範囲算出手段11は、以下の式(1)及び式(2)を用いて表示奥行き範囲を算出し、この表示奥行き範囲を示す表示奥行き範囲情報を生成する。
【0051】
具体的には、奥行き範囲算出手段11は、標準奥行き範囲の内、最も観察者に近い点(最近点)の奥行き位置を式(1)のZ
cに代入して、立体画像表示装置200で生成される立体像の最近点を算出する。また、奥行き範囲算出手段11は、標準奥行き範囲の内、最も観察者から遠い点(最遠点)の奥行き位置を式(1)のZ
cに代入して、立体画像表示装置200で生成される立体像の最遠点を算出する。そして、奥行き範囲算出手段11は、立体画像表示装置200で生成される立体像の最近点から最遠点までの範囲を、表示奥行き範囲として算出する。
【0052】
ここで、立体画像表示装置200の要素レンズ群から立体像までの距離がZ
rである。また、標準的な表示装置によって立体像が表示された場合におけるレンズ群から立体像までの距離がZ
cである。
【0053】
また、標準的な表示装置における表示素子の表示面から要素レンズ群までの距離がd
cであり、要素レンズ群のピッチP
cであり、表示素子により表示される要素画像の大きさがK
cである。これらd
c,P
c,k
cは、標準表示装置情報から取得できる。
【0054】
また、立体画像表示装置200における表示素子の表示面から要素レンズ群までの距離がd
rであり、要素レンズ群のピッチがP
rであり、表示素子により表示される要素画像の大きさがK
rである。これらd
r,P
r,k
rは、表示装置情報から取得できる。
【0055】
なお、前記した奥行き範囲算出法は、以下の参考文献に記載されているため、詳細な説明を省略する。
参考文献:J.Arai, M.Okui, M.Kobayashi, and F.Okano:"Geometrical effects of positional errors in integral photography", J. Opt. Soc. Am. A,Vol. 21,pp.951-958,2004
【0056】
奥行き範囲判定手段13は、奥行き範囲算出手段11で算出された表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超えるか否かを判定するものである。
表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超える場合、奥行き範囲判定手段13は、要素画像群を補正する旨の指令信号を生成する。
一方、表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超えない場合、奥行き範囲判定手段13は、要素画像群を補正しない旨の指令信号を生成する。
【0057】
奥行き範囲判定手段13で生成された指令信号は、表示奥行き範囲情報と、標準奥行き範囲情報と、基準奥行き範囲情報と、要素画像群生成情報と、表示装置情報と共に、立体画像処理手段20に出力される。
【0058】
立体画像処理手段20は、指令信号に基づいて、要素画像群の映像信号に対する処理(奥行き範囲の補正)を行うものである。
要素画像群を補正する旨の指令信号が入力された場合、立体画像処理手段20は、要素画像群を補正する。
一方、要素画像群を補正しない旨の指令信号が入力された場合、立体画像処理手段20は、奥行き範囲を補正せず、そのまま立体画像表示装置200に出力する。
【0059】
図2に示すように、立体画像処理手段20は、距離平面画像生成手段30と、体積画素分布記憶手段40と、奥行き範囲補正手段50と、補正要素画像群生成手段60とを備える。
【0060】
距離平面画像生成手段30は、入力された要素画像群の各画素を、光学素子情報で示される立体画像表示装置200の要素レンズのピッチ及び焦点距離が同じ仮想要素レンズ(仮想要素光学系)で構成される仮想要素レンズ群(仮想要素光学系群)を介して、光路追跡を行い、仮想要素レンズ群からの距離が異なる、予め設定された距離平面毎に各画素の画素値を割り当てることで、距離毎の平面画像(距離平面画像)を生成するものである。
【0061】
この距離平面画像生成手段30は、異なる距離毎に距離平面画像を生成し、距離に対応付けて体積画素分布記憶手段40に書き込む。
すなわち、距離平面画像生成手段30は、一平面で構成される要素画像群から、複数の距離によって異なる平面画像を生成することで、要素画像群を立体像として表示した際の画素分布に相当する空間(立体像空間)を再現させる。
この距離平面画像生成手段30は、予め定めた複数距離における距離平面画像を生成し、体積画素分布として、体積画素分布記憶手段40に書き込んだ後、体積画素分布を生成した旨を、奥行き範囲補正手段50に通知する。
【0062】
ここで、
図3を参照して、距離平面画像生成手段30が距離毎に生成する距離平面画像について説明する。
図3に示すように、距離平面画像生成手段30は、要素画像群Gの画像面に対して、立体画像表示装置200における要素レンズ群と表示面までの距離d
rと同じ距離だけ仮想的に離間して配置した仮想要素レンズ群Vを介して、光路追跡を行うことで、要素画像群Gの各画素の画素値を、任意の距離L
1,L
2,…,L
n毎に割り当てて、平面画像t
1,t
2,…,t
nを生成する。
【0063】
ここで、距離L
1,L
2,…,L
nは、予め定めた複数の距離であって、その数及び間隔は任意に定めることができる。なお、距離平面を多く設定すれば、それだけ補正の効果を高めることができるが、演算量は増加する。そこで、距離平面の数及び間隔は、要素画像群Gの画素数等に応じて定めることが好ましい。
【0064】
距離平面画像生成手段30は、
図3に示すように、ある要素画像の画素gから、対応する仮想要素レンズ(仮想的な開口〔仮想ピンホール〕)V
Lの中心を通る直線が任意の距離の平面と交わる座標上の画素に、画素gの画素値を割り当てる。すなわち、距離平面画像生成手段30は、要素画像の画素gの画素値を、平面画像t
1,…,t
nとの交点の画素g
1,…,g
nの画素値とする。
これによって、
図3に示すように、ある要素画像の画像領域k
rの画素の画素値は、対応する仮想要素レンズV
Lを介して拡がり(w
1,…,w
n)を持って距離平面に割り当てられる。例えば、要素画像の画像領域k
rが距離L
1の距離平面において拡がる範囲w
1は、以下の式(3)で表される。
【0066】
また、仮想要素レンズ群Vから最も離れた距離L
nに到達する要素画像の画像領域k
rの範囲w
nについても、式(3)と同様に求めることができる。
すなわち、距離平面画像生成手段30が生成する立体を構成する平面画像(体積画素分布)は、奥行き方向であるz方向においては、仮想要素レンズ群Vに最も近い距離L
1から、仮想要素レンズ群Vから最も遠い距離L
nの範囲に生成され、xy方向においては、仮想要素レンズ群Vから最も遠い距離L
nにおいて要素画像群の画素値が割り当てられる最大の拡がり範囲、すなわち、要素画像群の大きさよりも上下左右にそれぞれw
n/2分だけ大きい範囲に生成される。
【0067】
ここで、
図4を参照して、距離平面画像生成手段30の構成について説明する。
図3で説明した複数の距離平面画像からなる体積画素分布を生成するため、距離平面画像生成手段30は、分割手段31と、要素画像変換手段33と、結合手段35と、を備える。
【0068】
分割手段31は、表示装置情報に基づいて、映像信号として入力される要素画像群を要素画像単位の画像に分割するものである。すなわち、分割手段31は、要素画像群を、光学素子情報のうちの要素レンズの配置位置に対応する要素画像毎に分割する。
【0069】
なお、分割手段31は、要素画像群を立体画像表示装置200が扱う要素画像の大きさで分割する。立体画像撮影装置100と立体画像表示装置200とで、要素画像の大きさ(サイズ、解像度)が異なる場合には、分割手段31は、立体画像表示装置200の要素画像の大きさに合うように、ダウンコンバート、アップコンバート等の画像変換処理を行う。
この分割手段31は、分割した要素画像毎の光波を、要素画像変換手段33に出力する。
【0070】
要素画像変換手段33は、光路追跡を行うことで、分割手段31から入力される要素画像を、予め設定された距離における平面画像に変換するものである。ここでは、要素画像変換手段33は、画素割当手段33aを備える。
【0071】
画素割当手段33aは、要素画像の画素毎に、当該画素から仮想要素レンズの中心を通る直線が、予め設定された距離平面と交わる座標に、当該画素の画素値を割り当てるものである。これによって、要素画像毎の距離平面画像が生成される。
この画素割当手段33aは、要素画像毎に生成した距離平面画像を結合手段35に出力する。
【0072】
結合手段35は、要素画像変換手段33(画素割当手段33a)で生成された予め設定された距離平面における要素画像毎の距離平面画像を当該距離平面において要素画像群の要素画像分だけ結合するものである。すなわち、結合手段35は、予め設定された距離平面において、要素画像毎に生成された距離平面画像の画素値を割り当てることで、要素画像群に対応した距離平面画像を生成する。
なお、結合手段35は、距離平面画像の同一の座標に異なる要素画像の画素値が割り当てられている場合、同一の座標に割り当てられた画素値を加算し平均化することで、当該座標の画素値とする。
【0073】
ここで、
図5を参照して、平面光強度分布tについて説明する。
図5では、x軸を水平方向とし、y軸を垂直方向とし、z軸を奥行き方向とする。そして、円筒体及び三角錐体の2物体を被写体とし、これら円筒体及び三角錐体の底面をz軸に向けて撮影した場合を考える。この場合、距離平面画像tにおいて、画素値がゼロを超える画素分布範囲は、z軸から見た円筒体の立体像α及び三角錐体の立体像βを表すことになる。
【0074】
そして、結合手段35は、要素画像群に対応して生成した距離平面画像を、距離に対応付けて体積画素分布記憶手段40(
図2参照)に書き込む。
以上説明した距離平面画像生成手段30は、仮想要素レンズ群からの距離を順次設定し直して、
図3で説明したように、複数の距離平面に対応する平面画像を生成する。すなわち、距離平面画像生成手段30は、
図3に示すように、仮想要素レンズ群Vからの距離L
1,L
2,…,L
nに対応する平面画像t
1,t
2,…,t
nを生成する。
この距離平面画像生成手段30で生成された平面画像t
1,t
2,…,t
nは、
図6に示すように、距離毎に配列されることで、空間上における体積画素分布として表すことができる。
【0075】
これによって、体積画素分布記憶手段40には、複数の距離平面における平面画像で構成される体積画素分布が記憶される。この体積画素分布は、要素画像群を立体画像表示装置で表示させる際の立体像空間において、画素を分布させた状態に相当する。
図2に戻って、立体画像処理手段20の構成について、説明を続ける。
【0076】
体積画素分布記憶手段40は、距離平面画像生成手段30で生成された距離平面画像を距離に対応付けて、体積画素分布として記憶するもので、ハードディスク等の一般的な記憶装置である。この体積画素分布は、奥行き範囲補正手段50によって補正され、補正要素画像群生成手段60によって参照される。
【0077】
奥行き範囲補正手段50は、表示奥行き範囲情報と、基準奥行き範囲情報とを用いて、体積画素分布記憶手段40に記憶された体積画素分布の座標を奥行き方向に補正するものである。
【0078】
この体積画素分布は、補正前の立体像空間の各座標に割り当てられた光強度の集合である。従って、奥行き範囲が補正された体積画素分布(補正体積画素分布)を算出するには、
図7(a)に示すように、立体像が生成される立体像空間の補正前の座標(X
r,Y
r,Z´
r)を、
図7(b)に示すように、立体像が生成される立体像空間の補正後の座標(X
c,Y
c,Z´
c)に割り当てればよい。
なお、
図7(a)では補正前の立体像空間の座標軸をx
r,y
r,z
rと図示し、
図7(b)では補正後の立体像空間の座標軸をx
c,y
c,z
cと図示した。
【0079】
ここで、表示奥行き範囲βと基準奥行き範囲αとの比率をΩとする(ただし、Ω>1)。この場合、補正前の座標(X
r,Y
r,Z´
r)と、補正後の座標(X
c,Y
c,Z´
c)との関係は、以下の式(4)〜式(6)で表すことができる。つまり、奥行き範囲補正手段50は、式(4)〜式(6)を用いて、表示奥行き範囲βと基準奥行き範囲αとの比率Ωで、体積画素分布を奥行き方向に圧縮する。
【0083】
ここでは、奥行き範囲補正手段50は、体積画素分布の座標位置を補正した補正体積画素分布を体積画素分布記憶手段40に書き込み、補正が完了した旨を補正要素画像群生成手段60に通知する。
【0084】
補正要素画像群生成手段60は、奥行き範囲補正手段50で補正された補正体積画素分布を、表示装置情報で示される立体画像表示装置200の要素レンズのピッチ及び焦点距離が同じ仮想要素レンズ(仮想要素光学系)で構成される仮想要素レンズ群(仮想要素光学系群)を介して、光路追跡を行い、立体画像表示装置200の表示面に相当する位置における要素画像群を生成するものである。
【0085】
すなわち、補正要素画像群生成手段60は、
図8に示すように、補正後の体積画素分布における各画素の画素値(例えば、点〔画素〕aの画素値)を、当該画素から仮想要素レンズ群Vの中心を通る直線と交わる画像上の画素(例えば、点〔画素〕a′)の画素値として割り当てる。なお、
図8では、ある点の画素値のみについて画像上に割り当てているが、補正後の体積画素分布全体に亘って割り当てを行う。これによって、補正された要素画像群(補正要素画像群G′)が生成されることになる。
【0086】
ここで、
図9を参照(適宜
図2参照)して、補正要素画像群生成手段60の構成について説明する。
図9に示すように、補正要素画像群生成手段60は、要素画像逆変換手段61と、連結手段63と、を備える。
【0087】
要素画像逆変換手段61は、補正後の体積画素分布から、表示装置情報で示される立体画像表示装置200の要素レンズの配置位置に対応する要素画像を生成するものである。
すなわち、要素画像逆変換手段61は、要素画像変換手段33とは逆方向に、
図3で説明した要素画像の画像領域k
rの画素値を求める対象画素から、当該要素画像に対応する仮想要素レンズV
Lの中心を通る直線が交わる平面画像tの画素の値を、要素画像の対象画素の画素値とする。なお、距離平面画像生成手段30においては、距離L
1,L
2,…,L
nは予め定めたものであったが、要素画像逆変換手段61では、補正後の体積画素分布において、画素値が割り当てられた距離(z座標)が、逆変換を行うために対象とする距離平面となる。
ここで、要素画像逆変換手段61は、画素統合手段61aと、補間手段61bと、を備える。
【0088】
画素統合手段61aは、補正後の体積画素分布で示される距離毎の平面画像を、要素画像群の画像面(後側焦平面)において統合するものである。すなわち、画素統合手段61aは、補正後の体積画素分布で示される平面画像毎に、要素画像群の画像面において、要素画像の各画素の画素値を、当該画素から仮想要素レンズV
Lの中心を通る直線が交わる平面画像上の画素の画素値として割り当てることで、要素画像を生成する。
なお、要素画像の各画素に対応する距離平面画像の画素は、複数の距離平面画像で複数存在する場合がある。その場合、画素統合手段61aは、対応する複数の距離平面画像の対応する画素の画素値の平均値を求め、要素画像の対応する画素値とする。
例えば、
図3において、距離毎の平面画像tが、補正後の体積画素分布を構成する画像であるとすると、画素統合手段61aは、要素画像の画素gの画素値を、画素gから仮想要素レンズV
Lの中心を通る直線が交わる複数の平面画像t
1,t
2,…,t
nの画素g
1,g
2,…,g
nの各画素値の平均値として算出する。
この画素統合手段61aは、生成した複数の要素画像を補間手段61bに出力する。
【0089】
補間手段61bは、画素統合手段61aにおいて生成された要素画像において、画素値が割り当てられていない画素の画素値を補間するものである。
この補間手段61bに入力される要素画像は、補正後の体積画素分布である距離平面毎の画素値を、要素画像の画素値に割り当てたものであるが、体積画素分布における画素の座標位置が補正されることで、必ずしも要素画像のすべての画素が割り当てられるとは限らない。
【0090】
そこで、補間手段61bは、画素統合手段61aで生成された要素画像において、画素値が割り当てられなかった画素について、隣接する画素の画素値から補間処理によって、画素値を補間する。なお、この補間処理は、一般的な手法を用いればよく、例えば、補間手段61bは、すでに画素値が割り当てられている画素から、内挿や外挿によって、画素値が割り当てられていない画素の画素値を算出する。
この補間手段61bは、補間によりすべての画素値を求めた要素画像を連結手段62に出力する。
【0091】
連結手段63は、要素画像逆変換手段61で生成された個々の要素画像を連結し、要素画像群として構成するものである。
この連結手段63は、個々の要素画像を、光学素子情報のうちの要素レンズの配置位置に対応する位置に配列することで、補正後の要素画像群(補正要素画像群)を生成する。
【0092】
以上説明したように、立体画像補正装置1は、要素画像群の奥行き範囲を補正するため、過度に眼の近い位置で立体像が表示されることがなく、眼精疲労を抑制することができる。
この立体画像補正装置1は、一般的なコンピュータを前記した各手段として機能させるプログラム(立体画像補正プログラム)により動作させることができる。
【0093】
なお、要素光学系群は、要素レンズが配列されたレンズアレイとして説明したが、微小なピンホールが配列された開口アレイ(空間フィルタ)であってもよい。
また、立体画像補正装置1は、第2実施形態(
図14)で説明するステップS2,S4〜S10を実行する動作を行うため、説明を省略する。
【0094】
(第2実施形態)
[立体画像補正装置の構成]
図10を参照して、本発明の第2実施形態に係る立体画像補正装置1Bについて、第1実施形態と異なる点を説明する(適宜
図2参照)。
立体画像補正装置1Bは、奥行き範囲に加え、奥行き時間変化も補正する点が、第1実施形態と異なる。このため、立体画像補正装置1Bは、表示状態算出手段10Bと、立体画像処理手段20Bと、遅延手段70とを備える。
【0095】
また、立体画像補正装置1Bは、立体画像撮影装置100から、遅延要素画像群の補正に必要な情報として、標準奥行き時間変化情報と、基準奥行き時間変化情報とが入力される。
【0096】
標準奥行き時間変化情報は、予め設定された、標準的な表示装置で立体像が表示された場合の奥行き時間変化(標準奥行き時間変化)を示す情報である。
基準奥行き時間変化情報は、予め設定された、観察者にとって適切な奥行き時間変化(基準奥行き時間変化)を示す情報である。本実施形態では、基準奥行き時間変化情報は、全ての観察者に共通する奥行き時間変化(共通奥行き時間変化)であることとする。
【0097】
ここでは、遅延手段70から先に説明する。
遅延手段70は、立体画像撮影装置100から要素画像群が入力され、入力された要素画像群を遅延時間だけ遅延させて、遅延要素画像群を出力するものである。この遅延手段70は、例えば、要素画像群を記憶するフレームメモリ(不図示)と、このフレームメモリを制御する制御手段(不図示)とで構成される。
【0098】
以下の説明では、立体画像撮影装置100から要素画像群が入力された時刻をT
1とし、遅延手段70での遅延処理後の時刻をT
2とする。つまり、遅延時間Δ=T
2−T
1となり、遅延時間Δだけ遅延させた要素画像群を遅延要素画像群と呼ぶ。
なお、遅延時間Δは、例えば、微少時間を示すような、任意の値で予め設定される。
【0099】
表示状態算出手段10Bは、立体画像表示装置200において、要素画像群及び遅延要素画像群が表示される状態を算出するものであり、奥行き範囲算出手段11Bと、奥行き範囲判定手段13と、奥行き時間変化算出手段15と、奥行き時間変化判定手段17とを備える。
【0100】
奥行き範囲算出手段11Bは、表示奥行き範囲に加え、遅延要素画像群が立体画像表示装置200で表示された際の遅延表示奥行き範囲を、
図1の奥行き範囲算出手段11と同様に算出するものである。
【0101】
奥行き時間変化算出手段15は、表示状態算出手段10Bで算出された表示奥行き範囲と遅延表示奥行き範囲との変化量である表示奥行き時間変化を算出するものである。つまり、奥行き時間変化算出手段15は、表示奥行き範囲と遅延表示奥行き範囲との差分を、表示奥行き時間変化として算出する。
この表示奥行き時間変化は、遅延時間Δ(微小時間)における奥行きの変化を示す情報である。
【0102】
奥行き時間変化判定手段17は、奥行き時間変化算出手段15で算出された表示奥行き時間変化が基準奥行き時間変化を超えるか否かを判定するものである。
表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超える場合、奥行き時間変化判定手段17は、遅延要素画像群を補正する旨の指令信号を生成する。
一方、表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超えない場合、奥行き時間変化判定手段17は、遅延要素画像群を補正しない旨の指令信号を生成する。
奥行き時間変化判定手段17で生成された指令信号は、標準奥行き時間変化情報と、基準奥行き時間変化情報と共に、立体画像処理手段20Bに出力される。
【0103】
図11に示すように、表示奥行き時間変化ηは、時刻T
1の要素画像群における立体像空間と、時刻T
2の要素画像群における立体像空間との奥行き範囲の変化量を示す。そして、この例では、奥行き時間変化判定手段17は、表示奥行き時間変化ηが基準奥行き時間変化γを超えるので、遅延要素画像群を補正する旨の指令信号を生成する。
なお、
図11では、時刻T
1の要素画像群における立体像空間を2点鎖線で図示した。また、
図11の符号εについては、説明を後記する。
【0104】
図10に戻り、立体画像補正装置1Bの構成について、説明を続ける。
立体画像処理手段20Bは、
図2の立体画像処理手段20と同様の構成であり、指令信号に基づいて、要素画像群に加え、遅延要素画像群を補正するものである。
遅延要素画像群を補正する旨の指令信号が入力された場合、立体画像処理手段20Bは、遅延要素画像群を補正する。
一方、遅延要素画像群を補正しない旨の指令信号が入力された場合、立体画像処理手段20Bは、遅延要素画像群を補正せず、そのまま立体画像表示装置200に出力する。
【0105】
距離平面画像生成手段30(
図2)は、要素画像群と同様の手法により、遅延要素画像群から、距離平面毎に距離平面画像を生成し、距離に対応付けて体積画素分布記憶手段40に書き込むものである。
これによって、体積画素分布記憶手段40(
図2)には、要素画像群における体積画素分布に加え、遅延要素画像群における体積画素分布が記憶される。
【0106】
奥行き範囲補正手段50(
図2)は、表示奥行き時間変化情報と、基準奥行き時間変化情報とを用いて、遅延要素画像群における体積画素分布の座標を奥行き方向に補正するものである。つまり、奥行き範囲補正手段50は、要素画像群における体積画素分布と同様、表示奥行き時間変化と基準奥行き時間変化との差分で、遅延要素画像群における体積画素分布を補正する。
【0107】
補正要素画像群生成手段60(
図2)は、補正要素画像群と同様の手法により、遅延要素画像群における補正体積画素分布から、補正遅延要素画像群を生成するものである。
【0108】
ここで、補正要素画像群生成手段60は、表示装置情報に基づいて、遅延要素画像群における補正体積光強度から仮想要素レンズ群までの距離が予め設定される。この仮想要素レンズ群の位置を、「基準光学素子アレイ位置」と呼ぶ。そして、補正要素画像群生成手段60は、
図12に示すように、基準光学素子アレイ位置Sから距離補正値εだけずらした位置に仮想要素レンズ群Vを配置した状態で、補正遅延要素画像群G´´を生成する。
この距離補正値εは、
図11に示すように、表示奥行き時間変化ηと基準奥行き時間変化γとの差を示す。
【0109】
これによって、補正要素画像群生成手段60は、
図13(a)の表示奥行き時間変化ηが
図13(b)の基準奥行き時間変化γを超えないようにして、補正遅延要素画像群を生成することができる。
なお、
図13では、時刻T
1の要素画像群における立体像空間を2点鎖線で図示し、時刻T
2の遅延要素画像群における立体像空間を実線で図示した。
【0110】
[立体画像補正装置の動作]
図14,15を参照して、立体画像補正装置1Bの動作について、説明する。
立体画像補正装置1Bは、遅延手段70によって、要素画像群を遅延時間だけ遅延させた遅延要素画像群を出力する(ステップS1)。
【0111】
立体画像補正装置1Bは、奥行き範囲算出手段11Bによって、要素画像群から表示奥行き範囲を算出し、遅延要素画像群から遅延表示奥行き範囲を算出する(ステップS2)。
立体画像補正装置1Bは、奥行き時間変化算出手段15によって、表示奥行き範囲と遅延表示奥行き範囲との変化量である表示奥行き時間変化を算出する(ステップS3)。
【0112】
立体画像補正装置1Bは、奥行き範囲判定手段13によって、表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超えるか否かを判定する(ステップS4)。
表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超える場合(ステップS4でYes)、立体画像補正装置1Bは、ステップS5の処理に進む。
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30によって、要素画像群に対し、仮想要素レンズ群からの距離が異なる距離平面を設定する(ステップS5)。
【0113】
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30によって、要素画像群の各画素の画素値を、光路追跡により、ステップS5で設定した距離に対応する距離平面に割り当てて距離毎の平面座標(距離平面画像)を生成する。
【0114】
すなわち、立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30の分割手段31によって、要素画像群を、表示装置情報で特定される要素画像毎に分割する。
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30の要素画像変換手段32によって、要素画像の各画素の画素値を、当該画素と、対応する仮想要素レンズの中心とを通る直線が、設定した距離の平面と交わる平面画像上の画素に当該画素値を割り当てる。
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30の結合手段35によって、要素画像変換手段32(画素割当手段32a)で生成された距離平面における要素画像毎の距離平面画像を当該距離平面において要素画像群の要素画像分だけ結合する(ステップS6)。
【0115】
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30(結合手段35)によって、ステップS6で生成された距離毎の平面画像を、体積画素分布記憶手段40に書き込む(ステップS7)。この平面画像が、異なる距離平面毎に生成されることで、体積画素分布となる。
【0116】
立体画像補正装置1Bは、奥行き範囲補正手段50によって、表示奥行き範囲情報と、基準奥行き範囲情報とを用いて、体積画素分布記憶手段40に記憶された体積画素分布の座標を奥行き方向に補正する。すなわち、奥行き範囲補正手段50は、表示奥行き範囲と基準奥行き範囲との比率で、要素画像群における体積画素分布を奥行き方向に圧縮する(ステップS8)。
【0117】
立体画像補正装置1Bは、要素画像逆変換手段61の要素画像逆変換手段61によって、光路追跡により、ステップS8で補正された体積画素分布から、要素画像群の画像面の画素値を算出する。
【0118】
すなわち、立体画像補正装置1Bは、要素画像逆変換手段61の画素統合手段61aによって、画素値を求める対象となる要素画像の画素毎に、当該画素から仮想要素レンズの中心を通る直線上に存在する補正後の体積画素分布の画素の画素値を割り当てる。なお、このとき、直線上に画素値が割り当てられた複数の画素が存在する場合、画素統合手段61aは、それらの平均値を要素画像の画素値とする。
立体画像補正装置1Bは、要素画像逆変換手段61の補間手段61bによって、画素統合手段61aにおいて生成された要素画像において、画素値が割り当てられていない画素の画素値を内挿等により補間する(ステップS9)。
【0119】
立体画像補正装置1Bは、連結手段63によって、要素画像逆変換手段61で生成された個々の要素画像を連結し、補正後の要素画像群を生成する(ステップS10)。
【0120】
表示奥行き範囲が基準奥行き範囲を超えない場合(ステップS4でNo)、又は、ステップS10の処理に続いて、立体画像補正装置1Bは、ステップS11の処理に進む。
立体画像補正装置1Bは、奥行き時間変化判定手段17によって、表示奥行き時間変化が基準奥行き時間変化を超えるか否かを判定する(ステップS11)。
【0121】
表示奥行き時間変化が基準奥行き時間変化を超える場合(ステップS11でYes)、立体画像補正装置1Bは、ステップS12の処理に進む。
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30によって、遅延要素画像群に対し、仮想要素レンズ群からの距離が異なる距離平面を設定する(ステップS12)。
【0122】
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30によって、遅延要素画像群の各画素の画素値を、光路追跡により、ステップS12で設定した距離に対応する距離平面に割り当てて距離毎の平面座標(距離平面画像)を生成する。
【0123】
すなわち、立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30の分割手段31によって、遅延要素画像群を、表示装置情報で特定される要素画像毎に分割する。
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30の要素画像変換手段32によって、要素画像の各画素の画素値を、当該画素と、対応する仮想要素レンズの中心とを通る直線が、設定した距離の平面と交わる平面画像上の画素に当該画素値を割り当てる。
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30の結合手段35によって、要素画像変換手段32(画素割当手段32a)で生成された距離平面における要素画像毎の距離平面画像を当該距離平面において遅延要素画像群の要素画像分だけ結合する(ステップS13)。
【0124】
立体画像補正装置1Bは、距離平面画像生成手段30(結合手段35)によって、ステップS13で生成された距離毎の平面画像を、体積画素分布記憶手段40に書き込む(ステップS14)。
【0125】
立体画像補正装置1Bは、奥行き範囲補正手段50によって、表示奥行き時間変化情報と、基準奥行き時間変化情報とを用いて、体積画素分布記憶手段40に記憶された体積画素分布の座標を奥行き方向に補正する。すなわち、奥行き範囲補正手段50は、表示奥行き時間変化と基準奥行き時間変化との差分で、遅延要素画像群における体積画素分布を奥行き方向に圧縮する(ステップS15)。
【0126】
立体画像補正装置1Bは、要素画像逆変換手段61の要素画像逆変換手段61によって、光路追跡により、ステップS15で補正された体積画素分布から、遅延要素画像群の画像面の画素値を算出する。
【0127】
すなわち、立体画像補正装置1Bは、要素画像逆変換手段61の画素統合手段61aによって、画素値を求める対象となる要素画像の画素毎に、当該画素から仮想要素レンズの中心を通る直線上に存在する補正後の体積画素分布の画素の画素値を割り当てる。
立体画像補正装置1Bは、要素画像逆変換手段61の補間手段61bによって、画素統合手段61aにおいて生成された要素画像において、画素値が割り当てられていない画素の画素値を内挿等により補間する(ステップS16)。
【0128】
立体画像補正装置1Bは、連結手段63によって、要素画像逆変換手段61で生成された個々の要素画像を連結し、補正後の遅延要素画像群を生成する(ステップS17)。
表示奥行き時間変化が基準奥行き時間変化を超えない場合(ステップS11でNo)、又は、ステップS17の後、立体画像補正装置1Bは、処理を終了する。
【0129】
以上説明したように、立体画像補正装置1Bは、要素画像群の奥行き範囲と遅延要素画像群の奥行き時間変化とを補正するため、過度に眼の近い位置で立体像が表示されることや、奥行き方向で立体像の位置が頻繁に変化することがないため、眼精疲労を抑制することができる。
【0130】
なお、第2実施形態では、立体画像補正装置1Bが奥行き範囲及び奥行き時間変化の両方を補正することとして説明したが、奥行き時間変化のみを補正してもよい。この場合、立体画像補正装置1Bは、奥行き範囲判定手段13を備える必要がない。
【0131】
(第3実施形態)
[立体画像補正装置の構成]
図16を参照して、本発明の第3実施形態に係る立体画像補正装置1Cについて、第2実施形態と異なる点を説明する。
立体画像補正装置1Cは、所定の条件により警告を行う点が、第2実施形態と異なる。このため、立体画像補正装置1Cは、表示状態算出手段10Cと、立体画像処理手段20Bと、遅延手段70と、パラメータ設定手段80と、警告手段90とを備える。
【0132】
ここでは、パラメータ設定手段80から先に説明する。
パラメータ設定手段80は、観察者が各種パラメータ(個別奥行き範囲情報、個別奥行き時間変化情報、動作モード情報)を設定するものである。
このパラメータ設定手段80に設定されたパラメータは、表示状態算出手段10Cと、立体画像処理手段20Bと、警告手段90とで参照される。
【0133】
個別奥行き範囲情報は、予め設定された、観察者毎に固有の奥行き範囲(個別奥行き範囲)を示す情報である。
個別奥行き時間変化情報は、予め設定された、観察者毎に固有の奥行き時間変化(個別奥行き時間変化)を示す情報である。
動作モード情報は、基準設定モード又は視聴者設定モードの何れで立体画像補正装置1Cが動作するかを示す情報である。
【0134】
基準設定モードとは、基準奥行き範囲情報及び基準奥行き時間変化情報を用いて、立体画像補正装置1Cが動作することである。つまり、基準設定モードの場合、立体画像補正装置1Cは、全ての観察者に共通する共通奥行き範囲及び共通奥行き時間変化を用いることになる。
【0135】
視聴者設定モードとは、個別奥行き範囲情報及び個別奥行き時間変化情報を用いて、立体画像補正装置1Cが動作することである。つまり、視聴者設定モードの場合、立体画像補正装置1Cは、観察者毎に固有の個別奥行き範囲及び個別奥行き時間変化を用いることになる。さらに、立体画像補正装置1Cは、補正要素画像群及び補正遅延要素画像群が眼精疲労を引き起こす可能性がある場合、警告を行う。
【0136】
表示状態算出手段10Cは、奥行き範囲算出手段11Cと、奥行き範囲判定手段13Cと、奥行き時間変化算出手段15Cと、奥行き時間変化判定手段17Cとを備える。
また、表示状態算出手段10Cは、立体画像処理手段20Bから補正要素画像群及び補正遅延要素画像群が入力される。
【0137】
奥行き範囲算出手段11Cは、視聴者設定モードの場合、補正要素画像群の奥行き範囲(補正奥行き範囲)と、補正遅延要素画像群の奥行き範囲とを、
図10の奥行き範囲算出手段11Bと同様に算出するものである。
この奥行き範囲算出手段11Cで算出された補正奥行き範囲は、警告手段90に出力される。
【0138】
奥行き範囲判定手段13Cは、動作モード情報に基づいて、個別奥行き範囲情報又は基準奥行き範囲情報の何れか一方を選択して、
図10の奥行き範囲判定手段13と同様に判定するものである。
【0139】
奥行き時間変化算出手段15Cは、視聴者設定モードの場合、補正要素画像群と補正遅延要素画像群との奥行き時間変化(補正奥行き時間変化)を、
図10の奥行き時間変化算出手段15と同様に算出するものである。
この奥行き時間変化算出手段15Cで算出された補正奥行き時間変化は、警告手段90に出力される。
【0140】
奥行き時間変化判定手段17Cは、動作モード情報に基づいて、個別奥行き時間変化情報又は基準奥行き時間変化情報の何れか一方を選択して、
図10の奥行き時間変化判定手段17と同様に判定するものである。
【0141】
警告手段90は、視聴者設定モードの場合、所定の条件により警告を行うものであり、奥行き範囲警告手段91と、奥行き時間変化警告手段93とを備えるものである。
【0142】
奥行き範囲警告手段91は、奥行き範囲算出手段11Cから入力された補正奥行き範囲が共通奥行き範囲を超えるか否かを判定し、補正奥行き範囲が共通奥行き範囲を超える場合に警告するものである。
ここで、奥行き範囲警告手段91は、警告方法が特に制限されず、奥行き範囲の警告メッセージを映像信号に付加してもよい。また、奥行き範囲警告手段91は、この警告メッセージを予め設定されたメールアドレスに送信してもよく、所定の警告音を鳴らしてもよい。
【0143】
奥行き時間変化警告手段93は、奥行き時間変化算出手段15Cから入力された補正奥行き時間変化が共通奥行き時間変化を超えるか否かを判定し、補正奥行き時間変化が共通奥行き時間変化を超える場合に警告するものである。
ここで、奥行き時間変化警告手段93は、奥行き範囲警告手段91と同様の手法で警告することができる。
【0144】
以上説明したように、立体画像補正装置1Cは、個々の観察者にとって最適な奥行き範囲及び奥行き時間変化に収まるように立体映像を再生できると共に、この立体映像の再生時に眼精疲労を引き起こす可能性がある場合、観察者に警告することができる。
【0145】
なお、立体画像補正装置1Cは、警告手段90を備えずに、個別奥行き範囲情報及び個別奥行き時間変化情報、又は、基準奥行き範囲情報及び基準奥行き時間変化情報の何れか一方のみを用いる構成としてもよい。