特許第6076098号(P6076098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6076098アラインメント装置、及びアラインメント方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6076098
(24)【登録日】2017年1月20日
(45)【発行日】2017年2月8日
(54)【発明の名称】アラインメント装置、及びアラインメント方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20170130BHJP
【FI】
   H01L21/68 F
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-4357(P2013-4357)
(22)【出願日】2013年1月15日
(65)【公開番号】特開2014-138009(P2014-138009A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 裕利
(72)【発明者】
【氏名】柴 智志
(72)【発明者】
【氏名】坂内 雄也
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−008954(JP,A)
【文献】 特開2002−126964(JP,A)
【文献】 特開2011−216788(JP,A)
【文献】 特開2012−009340(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/039310(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工マスクと加工対象物とのいずれか一方又は両方を移動させることで、加工マスクと加工対象物との間の相対的な位置を変える移動装置と、
前記加工マスクのマスクアラインメントマークと前記加工対象物の加工アラインメントマークとを同じ時刻で撮像し、撮像結果を得る撮像装置と、
前記移動装置と前記撮像装置とを制御して動作させる制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、前記撮像結果から求めた前記加工マスクと前記加工対象物との相対的な位置と、位置合わせがされた状態の相対的な位置との間の差である誤差を求め、前記誤差を小さくするように前記相対的な位置を変えるアラインメント装置であって、
前記誤差に含まれる誤差距離と、前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対的な移動の速度である相対速度とが関連づけられた誤差速度関係が設定されており、
前記撮像装置によって前記撮像結果を得る撮像工程と、
前記制御装置によって得られた前記撮像結果から前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対位置の前記誤差距離を求め、求めた前記誤差距離と前記誤差速度関係から、前記相対速度を求める求速度工程と、
前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを、求めた前記相対速度での相対的な移動を開始させて前記誤差を小さくする移動工程と、
が繰り返し行われるように設定され、
前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを近接させる近接工程を有し、
前記誤差速度関係には、異なる前記相対速度が設定されていて、大きい前記相対速度に関連付けられた誤差距離は、小さい前記相対速度に関連付けられた誤差距離よりも大きいようにされた高精度範囲が設けられ
前記誤差距離が、所定の許容距離よりも小さくなった後、前記近接工程によって前記加工マスクと前記加工対象物とが近接され、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われるアラインメント装置。
【請求項2】
前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われる際には、前記移動装置が前記加工マスクと前記加工対象物との間の前記相対的な移動をさせる力の大きさが検出され、
検出された前記力の大きさが所定値を超えると前記相対速度がゼロにされる請求項1記載のアラインメント装置。
【請求項3】
前記誤差速度関係には、前記高精度範囲よりも前記誤差距離が大きい部分に、前記誤差距離が同じ値の前記相対速度に関連づけられた一定速度範囲が設定された請求項1又は請求項2のいずれか1項記載のアラインメント装置。
【請求項4】
前記誤差距離が、少なくとも所定の許容距離よりも小さい範囲では、前記誤差距離にはゼロの値の前記相対速度が関連づけられた請求項記載のアラインメント装置。
【請求項5】
前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われる際に、前記加工マスクと前記加工対象物との間が所定距離よりも小さくなると、前記相対速度がゼロにされる請求項1記載のアラインメント装置。
【請求項6】
撮像装置によって加工マスクのマスクアラインメントマークと加工対象物の加工アラインメントマークとを同じ時刻で撮像して撮像結果を得て、制御装置によって前記加工マスクの位置と前記加工対象物の位置との間の相対的な誤差を求め、
移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物のいずれか一方又は両方を移動させて前記誤差を小さくするアラインメント方法であって、
前記誤差に含まれる誤差距離と、前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対的な移動の速度である相対速度とを、誤差速度関係として予め関連づけておき、
前記撮像装置によって前記撮像結果を得る撮像工程と、
前記制御装置によって得られた前記撮像結果から前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対位置の前記誤差距離を求め、求めた前記誤差距離と前記誤差速度関係から、前記相対速度を求める求速度工程と、
前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを、求めた前記相対速度で相対的な移動を開始させて前記誤差を小さくする移動工程と、
前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを近接させる近接工程と、
を有し、
前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われるように設定されおり、
前記誤差速度関係には、異なる前記相対速度が設定されていて、大きい前記相対速度と関連付けられた誤差距離は、小さい前記相対速度に関連付けられた誤差距離よりも大きいようにされた高精度範囲が設けられ
前記誤差距離が、所定の許容距離よりも小さくなった後、前記近接工程によって前記加工マスクと前記加工対象物とを近接させ、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とを繰り返し行うアラインメント方法。
【請求項7】
前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とを繰り返し行う際には、前記移動装置が前記加工マスクと前記加工対象物との間を前記相対的な移動をさせる力の大きさを検出し、検出した前記力の大きさが所定値を超えると前記相対速度をゼロにする請求項記載のアラインメント方法。
【請求項8】
前記誤差速度関係には、前記高精度範囲よりも前記誤差距離が大きい部分に、前記誤差距離を同じ値の前記相対速度に関連づけた一定速度範囲を設定した請求項6又は請求項7のいずれか1項記載のアラインメント方法。
【請求項9】
前記誤差距離が、少なくとも所定の許容距離よりも小さい範囲では、前記誤差距離にはゼロの値の前記相対速度を関連づけた請求項記載のアラインメント方法。
【請求項10】
前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とを繰り返し行う際に、前記加工マスクと前記加工対象物との間が所定距離よりも小さくなると、前記相対速度をゼロにする請求項6記載のアラインメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアラインメント技術に関し、特に、アラインメント時間を短くする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程や液晶表示装置製造工程等の微細加工を必要とする技術分野に於いて、パターニングされた薄膜を形成するために、加工対象物上に一旦薄膜を形成し、その薄膜をレジストとフォトマスクを使用してエッチングしてパターニングするフォトリソグラフ工程が行われている。
【0003】
しかしながら、エッチングのために用いる化学物質や、レジストを剥離するための化学物質は、パターニング対象の有機薄膜や、パターニング対象の薄膜が有機薄膜上に形成されている場合には、有機薄膜にダメージを与えるため、フォトリソグラフ工程を採用することができない。
【0004】
そこで成膜工程の前に、成膜対象物上にパターニングされた貫通孔を有する加工マスクを配置し、貫通孔を通過した薄膜材料の微粒子を成膜対象物の表面に到達させ、成膜対象物表面上に貫通孔のパターンに従った薄膜を形成する技術が用いられている。
【0005】
この貫通孔を有する加工マスクを使用する工程についても、フォトリソグラフ工程の場合と同様に、加工マスクと成膜対象物との位置合わせを行い、予め定められている相対的な位置に加工マスクと成膜対象物とを置いた状態で、成膜材料微粒子に貫通孔を通過させる必要があり、位置合わせを行うためには、加工マスクと成膜対象物とを離間させた状態で、加工マスクのアラインメントマークと成膜対象物のアラインメントマークとを撮像して、加工マスクと成膜対象物との間の位置誤差を検出し、求めた誤差がゼロになる距離と方向に、加工マスクと成膜対象物とを相対移動させていた。
【0006】
しかしながら、位置の誤差がゼロになるはずの距離と方向に相対移動させても、移動後に加工マスクと成膜対象物とのアラインメントマークを撮像すると、誤差がゼロになっておらず、むしろ、再度アラインメントを行わなければならない程の大きな誤差が検出される。
【0007】
これは、加工マスクと成膜対象物とを相対移動させる移動装置が有する機械的誤差に主として起因しており、再度検出された誤差がゼロになる距離と方向に相対移動させて誤差を検出すると、誤差は未だ大きいことが普通であり、誤差検出と相対移動を多数回数行わなければ所望精度の位置合わせを行うことができない。
【0008】
このような相対移動と誤差検出とを多数回数行うと、アラインメントに要する時間が長くなる。求められる位置合わせは、増々高精度が求められているので、そのためには、アラインメントにさらに長い時間が必要になっている。
【0009】
アラインメント工程では、加工マスクと成膜対象物とを離間させているが、離間した加工マスクと成膜対象物とを密着させるための近接移動による誤差が発し、高精度でアラインメントが行われても、高精度でパターニングされないことが問題になっている。
【0010】
本願発明は、上記従来技術の問題点を解決するために創作されたものであり、短時間で高精度の位置合わせを行うことができる技術を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−306761号公報
【特許文献2】特開2011−231384号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アラインメント方法、アラインメント装置の位置合わせに要する時間を短くする、という課題を解決するために創作されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、加工マスクと加工対象物とのいずれか一方又は両方を移動させることで、加工マスクと加工対象物との間の相対的な位置を変える移動装置と、前記加工マスクのマスクアラインメントマークと前記加工対象物の加工アラインメントマークとを同じ時刻で撮像し、撮像結果を得る撮像装置と、前記移動装置と前記撮像装置とを制御して動作させる制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記撮像結果から求めた前記加工マスクと前記加工対象物との相対的な位置と、位置合わせがされた状態の相対的な位置との間の差である誤差を求め、前記誤差を小さくするように前記相対的な位置を変えるアラインメント装置であって、前記誤差に含まれる誤差距離と、前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対的な移動の速度である相対速度とが関連づけられた誤差速度関係が設定されており、前記撮像装置によって前記撮像結果を得る撮像工程と、前記制御装置によって得られた前記撮像結果から前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対位置の前記誤差距離を求め、求めた前記誤差距離と前記誤差速度関係から、前記相対速度を求める求速度工程と、前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを、求めた前記相対速度での相対的な移動を開始させて前記誤差を小さくする移動工程と、が繰り返し行われるように設定され、前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを近接させる近接工程を有し、前記誤差速度関係には、異なる前記相対速度が設定されていて、大きい前記相対速度に関連付けられた誤差距離は、小さい前記相対速度に関連付けられた誤差距離よりも大きいようにされた高精度範囲が設けられ、前記誤差距離が、所定の許容距離よりも小さくなった後、前記近接工程によって前記加工マスクと前記加工対象物とが近接され、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われるアラインメント装置である。
また、本発明は、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われる際には、前記移動装置が前記加工マスクと前記加工対象物との間の前記相対的な移動をさせる力の大きさが検出され、検出された前記力の大きさが所定値を超えると前記相対速度がゼロにされるアラインメント装置である。
また、本発明は、前記誤差速度関係には、前記高精度範囲よりも前記誤差距離が大きい部分に、前記誤差距離が同じ値の前記相対速度に関連づけられた一定速度範囲が設定されたアラインメント装置である
た、本発明は、前記誤差距離が、少なくとも所定の許容距離よりも小さい範囲では、前記誤差距離にはゼロの値の前記相対速度が関連づけられたアラインメント装置である。
また、本発明は、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われる際に、前記加工マスクと前記加工対象物との間が所定距離よりも小さくなると、前記相対速度がゼロにされるアラインメント装置である。
また、本発明は、撮像装置によって加工マスクのマスクアラインメントマークと加工対象物の加工アラインメントマークとを同じ時刻で撮像して撮像結果を得て、制御装置によって前記加工マスクの位置と前記加工対象物の位置との間の相対的な誤差を求め、移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物のいずれか一方又は両方を移動させて前記誤差を小さくするアラインメント方法であって、前記誤差に含まれる誤差距離と、前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対的な移動の速度である相対速度とを、誤差速度関係として予め関連づけておき、前記撮像装置によって前記撮像結果を得る撮像工程と、前記制御装置によって得られた前記撮像結果から前記加工マスクと前記加工対象物との間の相対位置の前記誤差距離を求め、求めた前記誤差距離と前記誤差速度関係から、前記相対速度を求める求速度工程と、前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを、求めた前記相対速度で相対的な移動を開始させて前記誤差を小さくする移動工程と、前記移動装置によって前記加工マスクと前記加工対象物とを近接させる近接工程と、を有し、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とが繰り返し行われるように設定されおり、前記誤差速度関係には、異なる前記相対速度が設定されていて、大きい前記相対速度と関連付けられた誤差距離は、小さい前記相対速度に関連付けられた誤差距離よりも大きいようにされた高精度範囲が設けられ、前記誤差距離が、所定の許容距離よりも小さくなった後、前記近接工程によって前記加工マスクと前記加工対象物とを近接させ、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とを繰り返し行うアラインメント方法である。
また、本発明は、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とを繰り返し行う際には、前記移動装置が前記加工マスクと前記加工対象物との間を前記相対的な移動をさせる力の大きさを検出し、検出した前記力の大きさが所定値を超えると前記相対速度をゼロにするアラインメント方法である。
また、本発明は、前記誤差速度関係には、前記高精度範囲よりも前記誤差距離が大きい部分に、前記誤差距離を同じ値の前記相対速度に関連づけた一定速度範囲を設定したアラインメント方法である
た、本発明は、前記誤差距離が、少なくとも所定の許容距離よりも小さい範囲では、前記誤差距離にはゼロの値の前記相対速度を関連づけたアラインメント方法である。
また、本発明は、前記加工マスクと前記加工対象物とが接触した状態で、前記撮像工程と、前記求速度工程と、前記移動工程とを繰り返し行う際に、前記加工マスクと前記加工対象物との間が所定距離よりも小さくなると、前記相対速度をゼロにするアラインメント方法である。
【0014】
本発明の成膜装置は、真空槽と、成膜源と、上記本発明のアラインメント装置とを有し、前記アラインメント装置にはマスク保持装置が設けられ、前記成膜源から放出され、前記マスク保持装置に配置された前記加工マスクに設けられた貫通孔を通過した成膜材料を、前記真空槽内に位置する前記加工対象物に到達させるように構成させることができる。
また、本発明の成膜装置の前記アラインメント装置には、前記加工対象物を保持する基板ホルダを設けることができる。
また、本発明の成膜装置では、前記加工対象物は、前記真空槽内を移動しながら、前記撮像装置による前記撮像結果を得られるようにすることができる。この場合、前記加工対象物がフィルムであり、前記加工対象物は、移動しながら成膜されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、誤差が小さくなると、加工マスクと加工対象物との間の相対速度も小さくなるので、加工マスクと加工対象物とが通り過ぎる距離が小さくなり、アラインメント時間が短くなる。
加工マスクと加工対象物とが接触した後も相対移動させるため、近接移動による誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一例のアラインメント装置と成膜装置
図2】本発明の第二例のアラインメント装置と成膜装置
図3】誤差速度関係を説明するためのグラフ
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<第一例>
図1の符号2aは、本発明の第一例のアラインメント装置を示しており、この第一例のアラインメント装置2aは、本発明の第一例の成膜装置3aに設けられている。
第一例のアラインメント装置2aは、マスク保持装置21と基板ホルダ22とを有している。成膜装置3aは真空槽10を有しており、マスク保持装置21と基板ホルダ22とは真空槽10の内部に配置されている。
【0018】
真空槽10には真空排気装置19が接続されており、真空槽10の内部は真空雰囲気にされている。真空排気装置19は継続して動作しており、真空槽10の内部は継続して真空排気されている。マスク保持装置21には、加工マスク31が交換可能に配置されており、加工マスク31の付着物の量が増加したときには、真空槽10から搬出され、他の加工マスクが真空槽10の内部に配置され、マスク保持装置21に配置されるようになっている。
【0019】
図1は、真空槽10の内部に、加工対象物である基板32aが搬入されており、基板ホルダ22に配置された状態である。ここでは、基板32aは、シリコン等の半導体基板や、ガラス基板であり、ここでは、透明なガラス基板が配置されている。
真空槽10の内部の、マスク保持装置21に配置された加工マスク31と対面する位置には、成膜源11が配置されている。
【0020】
ここでは、成膜源11は、マスク保持装置21よりも下方に位置し、基板ホルダ22に配置された基板32aは、マスク保持装置21に配置された加工マスク31よりも上方に位置するようにされているが、基板32aが加工マスク31の下方に位置し、成膜源11が加工マスク31の上方に位置してもよい。また、加工マスク31が真ん中に位置していれば、成膜源11と、加工マスク31と、基板32aとが、横方向に並んでいてもよい。
【0021】
図1は、基板32aが、加工マスク31とは離間して基板ホルダ22に配置された状態であり、基板32aが基板ホルダ22に配置される際には、機械的なアラインメントがされており、加工マスク31と基板32aとは、所望の相対的な位置関係になるように概略アラインメントが行われた状態である。
【0022】
マスク保持装置21に配置された加工マスク31と、基板ホルダ22に配置された基板32aとは互いに平行な平面内にそれぞれ位置するようにされており、また、マスク保持装置21に配置された加工マスク31と、基板ホルダ22に配置された基板32aとは、互いに対面する位置に配置されている。
【0023】
成膜源11は、この例ではスパッタリングターゲットであり、真空槽10には、スパッタガス源18が接続されている。加工マスク31は金属製の板であり、その板には所定パターンの貫通孔(貫通溝を含む)33が形成されている。
【0024】
アラインメント後に行われる成膜工程では、加工マスク31と基板32aとが正確に位置合わせされた状態で、成膜源11から成膜材料の粒子(蒸気を含む)が放出されると、その粒子は貫通孔33を通過し、基板32aに到達し、基板32aの表面に、貫通孔33と同じパターンの薄膜が形成される。
【0025】
機械的な位置合わせが行われた状態では、加工マスク31と基板32aとの間の相対位置の誤差は大きく、所望位置に薄膜を形成することができないので、第一例のアラインメント装置2aによるアラインメント(位置合わせ)が行われる。
第一例のアラインメント装置2aには、モータ等の動力源を有する移動装置14が設けられている。
【0026】
マスク保持装置21と基板ホルダ22のうち、いずれか一方又は両方は、移動装置14に接続されており、移動装置14によって、マスク保持装置21と基板ホルダ22のいずれか一方又は両方が移動されると、マスク保持装置21に配置された加工マスク31と、基板ホルダ22に配置された基板32aとは、相対移動される。
【0027】
この相対移動は、加工マスク31と基板32aとの間の距離(正確には、加工マスク31が位置する平面と、基板32aが位置する平面との間の距離。)は変わらずに、それぞれ同じ平面内で移動するようにされており、相対移動を行うことで、加工マスク31と基板32aとの間の、平面間の距離を除く相対的な位置を変化させることができる。
【0028】
加工マスク31には、マスク用アラインメントマークが一又は二箇所以上設けられており、基板32aにも、加工アラインメントマークが一又は二箇所以上設けられている。
【0029】
第一例のアラインメント装置2aは、撮像装置12を有しており、ここでは、マスク用アラインメントマークと加工アラインメントマークとは、離間した位置にそれぞれ一個ずつ設けられている。撮像装置12には、二台のカメラ121、122が設けられており、機械的なアラインメントがされた状態では、マスク用アラインメントマークと加工アラインメントマークとは近接しており、マスク保持装置21に配置された加工マスク31のマスク用アラインメントマークと、基板ホルダ22に配置された基板32aの加工アラインメントマークとの両方を、各カメラ121、122によって、それぞれ撮像できるようにされている。各カメラ121、122は真空槽10の外部に配置され、透明な窓を介して真空槽10の内部を撮像する。
【0030】
先ず、撮像装置12は、二台のカメラ121、122を用いて、マスクアラインメントマークと加工アラインメントマークとの組を二箇所で同時刻に撮像し、撮像結果を得る撮像工程を行う。
【0031】
撮像装置12は、制御装置13に接続されており、撮像結果は制御装置13に出力され、処理は撮像工程から求速度工程に移行される。
制御装置13には、加工マスク31と基板32aとが位置合わせされたときの、マスクアラインメントマークと加工アラインメントマークの相対位置が、予め記憶されている。制御装置13には、アラインメントを行う手順が記憶されており、記憶された手順に従って、以下のようにアラインメント処理が行われる。
【0032】
加工マスク31と基板32aとは離間しているが、相対位置については、加工マスク31と基板32aとの間の離間した距離の方向の相違は無視されて取り扱われる。
【0033】
例えば、位置合わせされたときの相対位置としてマスクアラインメントマークの位置と加工アラインメントマークの位置とが二箇所でそれぞれ同じ場所に位置する位置関係にあるものとすると、移行された求速度工程では、直近の撮像結果から求めたマスクアラインメントマークと加工アラインメントマークとの間の相対位置と、位置合わせがされた相対位置とが比較され、マスクアラインメントマークと加工アラインメントマークとの間の誤差距離と、誤差角度と、誤差の方向(誤差距離と誤差角度を小さくする方向)とが、誤差として求められる。
【0034】
制御装置13には、誤差距離と、アラインメントの際の加工マスク31と基板32aとの間の相対速度とが関連づけられた誤差速度関係(誤差と速度の関係)が記憶されている。
誤差に関する値の大小の比較は、絶対値で行うものとする。図3は、誤差速度関係の一例を示したグラフであり、横軸は誤差距離、縦軸は相対速度である。
【0035】
誤差速度関係には、所定の値を有する最大誤差距離±Dと、許容距離±Fとが設定されており、誤差距離Eが最大誤差距離±D以上の範囲(E≦−D,D≦E)では、誤差距離Eは、ゼロではない一定の相対速度Sに関連付けられており、誤差距離Eが許容距離±F以下の範囲(−F≦E≦F)では、誤差距離Eは、ゼロの相対速度Sに関連付けられている。相対速度Sがゼロの場合は、加工マスク31と基板32aとは相対的に静止される。
【0036】
誤差距離Eが許容距離±Fよりも大きく、最大誤差距離±Dよりも小さい高精度範囲内では(−D<E<−F,F<E<D)、異なる値の相対速度が設定されていて、大きい相対速度と関連付けられた誤差距離は、小さい相対速度に関連付けられた誤差距離よりも大きいようにされている。
【0037】
この高精度範囲内では、誤差距離が小さくなると、相対速度が小さくなるように設定されており、特に、誤差距離と相対速度は一次関数の関係にされており、高精度範囲内では、誤差距離が小さくなるほど、相対速度はゼロに近づく。
【0038】
なお、シミュレーションによると、一次関数の傾きは、大きい方が誤差許容距離±F以下の範囲になる時間は短かった。
なお、一次関数などの関数に従って、徐々に小さくなる設定に限らず、相対速度は、段階的に小さくなるように設定してもよい。
【0039】
加工マスク31と基板32aとの間の機械的な位置合わせが行われた後、求速度工程では、制御装置13は、撮像結果から求めた誤差距離と設定された誤差速度関係とから相対速度を求める。
【0040】
求速度工程では、制御装置13が、加工マスク31と基板32aとを、誤差角度が無くなる角度だけ加工マスク31と基板32aとを相対的に回転移動させて誤差角度を解消した後の誤差方向と誤差距離とを求めて記憶し、記憶された誤差距離と誤差速度関係とから相対速度を求めるようにしてもよい。
誤差距離の大きさにかかわらず、求速度工程が終了すると、処理は移動工程に移行される。
【0041】
移動装置14は制御装置13によって制御されており、加工マスク31と基板32aとの間の相対移動は、制御装置13によって制御される。
制御装置13は、加工マスク31と基板32aとを誤差が小さくなる方向に相対移動させるように設定されており、アラインメントの際の移動工程では、移動装置14は、加工マスク31と基板32aとを、相対移動前の平面と同じ平面内に位置させて、加工マスク31と基板32aとを、直前の求速度工程で求めた相対速度で、誤差が小さくなる方向に、加工マスク31と基板32aとを相対移動させる。この相対移動は、誤差角度が小さくなる方向に相対的な回転移動と、誤差距離が小さくなる方向への直線移動とが含まれる。
【0042】
加工マスク31と基板32aとの間の相対的な移動の速度が、直前の求速度工程で求めた相対速度になると、移動工程は終了するが、移動工程が終了しても加工マスク31と基板32aとの間の移動は、直前の求速度工程で求めた相対速度に維持される。
移動工程が終了すると、処理は撮像工程に移行される。
【0043】
撮像工程では、上述したように、撮像装置12は、二台のカメラ121、122を用いて、マスクアラインメントマークと加工アラインメントマークとの組を二箇所で同時刻に撮像し、撮像結果を得るが、加工マスク31と基板32aとの間は、直前の求速度工程で求めた相対速度で移動しており、その状態で、撮像して撮像結果が求められ、撮像結果は、制御装置13に出力され、撮像工程が終了する。
【0044】
撮像工程が終了すると、処理は求速度工程に移行され、上述した求速度工程での手順によって、誤差距離と相対速度とが求められ、処理は移動工程に移行され、加工マスク31と基板32aと直前の求速度工程で求めた相対速度で移動される。
撮像工程と、求速度工程と、移動工程とが繰り返し行われると誤差は小さくなる。
【0045】
なお、撮像工程によって撮像結果が得られた後、次の撮像工程が行われるまでの間に移動工程が行われると、次の撮像工程が行われる時までには、加工マスク31と基板32aとが相対移動されるので、一旦誤差が許容距離よりも小さくなったとしても、次の撮像工程が行われるまでに、一旦小さくなった誤差が増大してしまうことがある。
つまり、加工マスク31と基板32aとが近づいても、通り過ぎてしまう場合があり、通り過ぎる距離が大きいと、誤差を小さくすることができなくなる。
【0046】
本発明では、誤差距離が小さくなると、相対速度が小さくなるので、通り過ぎたとしても、その距離は相対速度が大きい場合よりも短くなっており、短時間で誤差距離を許容距離以下にすることができる。
【0047】
求速度工程で求めた誤差距離が、許容距離以下になったときには、相対速度をゼロにして移動工程に移行し、移動工程の処理を開始すると共に、加工マスク31と基板32aとの間のアラインメントが完了したとして、移動工程、撮像工程、求速度工程での処理を行いながら、近接工程の処理を開始する。
【0048】
基板32aが基板ホルダ22に配置された後、アラインメントが完了したと判断されるまでの間は、加工マスク31と基板32aとは離間した状態にされている。
【0049】
近接工程では、加工マスク31と基板32aとを密着した状態にするために、制御装置13は移動装置14を動作させ、加工マスク31と基板32aとのいずれか一方、又は両方を、近接する方向への近接移動を開始させる。
【0050】
この近接移動が開始されることにより、加工マスク31と基板32aとの間の距離が縮められる。加工マスク31と基板32aとが近接するように相対的な移動を開始すればよい。
【0051】
加工マスク31と基板32aとを近接させる近接移動では、加工マスク31と基板32aとの間の距離以外は、加工マスク31と基板32aとの間の相対位置が変化しないようにされている。
【0052】
従って、この近接工程によって移動が開始されても、誤差距離は一定であり、許容距離よりも小さいものと考えられるから、加工マスク31と基板32aとが近接移動されて密着すると、加工マスク31と基板32aとの間の誤差距離は、許容距離よりも小さいと考えられる。
【0053】
しかしながら移動装置14の動作には、機械精度、振動、摩耗などに起因する誤差が含まれており、近接移動に伴って、加工マスク31と基板32aとの間の誤差が大きくなることがある。
高精度の位置合わせが必要であり、近接移動に伴って生じる誤差が無視できない場合がある。
【0054】
本発明は、近接工程によって、近接移動を開始した後、撮像工程、求速度工程、移動工程の処理は近接移動しながら繰り返し行われており、上述したのと同じ処理で、撮像結果、相対速度を求め、加工マスク31と基板32aとを相対移動させて誤差を小さくしている。
【0055】
従って、相対速度がゼロに設定されている場合、移動工程では、加工マスク31と基板32aとの間の相対移動は開始されないが、撮像工程、求速度工程、移動工程の処理が繰り返し行われる間に、直近の撮像結果から求めた誤差距離が許容距離よりも大きくなったと判断されると、相対速度はゼロではなくなり、移動工程での相対移動が開始される。
【0056】
誤差速度関係の、最大誤差距離の値と、許容距離の値は、近接工程の前の値を用いてもよく、異なる値を用いても良い。例えば、許容距離の値は、近接工程の前の値よりも大きくすることもできる。
【0057】
誤差距離が、許容距離よりも小さい場合は、相対速度はゼロになるが、撮像工程と、求速度工程と、移動工程とは繰り返し行われているので、誤差距離が許容距離よりも大きくなると、相対速度はゼロでは無い値にされ、移動工程で、誤差距離が小さくなるように、加工マスク31と基板32aとが移動される。
【0058】
近接移動する際に、加工マスク31と基板32aとが、一方が上方、他方が下方に配置されている場合は、撓みが生じるので、近接移動によって加工マスク31と基板32aとが近づき、接触する場合には、先ず、互いに小面積で接触し、更に近接移動するに連れて接触面積が徐々に大きくなる。
【0059】
従って、小面積で接触する前に、移動工程による移動を停止させても良いが、接触が開始された後も密着するまでは近接移動が継続されるから、加工マスク31と基板32aとが接触した状態で、撮像工程と、求速度工程と、移動工程とを繰り返し行って誤差を小さくすることもできる。
【0060】
但し、加工マスク31と基板32aとの接触面積が大きくなると、移動工程での相対移動に、大きな力(トルク)が必要になるため、移動装置14の負担が大きくなる。
そのため、加工マスク31と基板32aとが接触した状態でも撮像工程と、求速度工程と、移動工程とを繰り返し行う場合は、移動装置14が加工マスク31と基板32aとを相対移動させるときに出力する力の大きさを検出して、その大きさが所定値を超えたときに、接触面積が大きくなったものと判断して相対速度をゼロの値に固定し、相対移動を終了させるようにしてもよい。
【0061】
また、マスク保持装置21と基板ホルダ22とが近接移動によって、所定距離よりも短くなるに従って、加工マスク31と基板32aとの間の接触面積が大きくなるので、マスク保持装置21と基板ホルダ22との間の距離が所定値よりも小さくなると、接触面積が大きくなったものとして、相対速度をゼロにして、相対移動を終了させるようにしてもよい。
【0062】
本発明によれば、加工マスク31と基板32aとが接触していても、誤差距離が小さいときには相対速度が小さくなるため、近接移動に伴って生じた誤差距離が小さくても、相対移動で誤差が大きくなることはなく、誤差を修正してアラインメントの精度を向上させることができる。
【0063】
移動装置14が出力する力の大きさを所定値と比較するのではなく、加工マスク31と基板32aとの間の距離を測定し、予め設定された所定の最小距離と比較し、比較結果が、測定した距離が最小距離よりも小さくなったことを示したときに、移動工程を終了させるようにしてもよい。
【0064】
いずれにしろ、移動工程の相対移動が終了され、加工マスク31と基板32aとが全面的に接触して密着されると、加工マスク31と基板32aとはアラインメントがされた状態で密着されたことになる。
【0065】
その状態で成膜源11から成膜材料の粒子を放出させ、加工マスク31の貫通孔33を通過した成膜材料によって、基板32aの表面に、貫通孔33と同じパターンの薄膜を成長させると、基板32aの表面に高精度にパターニングされた薄膜を得ることができる。
【0066】
薄膜が所定膜厚に成長したところで、成膜源11からの成膜材料の粒子の放出を停止し、加工マスク31と基板32aとの間を離間させ、基板32aを基板ホルダ22から取り外し、真空槽10の外部に搬出すると共に、未成膜の基板を基板ホルダ22に配置し、上記と同じ手順でアラインメントを行い、基板表面に成膜する。
【0067】
<第二例>
以上は、柔軟性を有さない基板32aと加工マスク31とをアラインメントする例を説明したが、本発明に用いる加工対象物は、柔軟性を有する有機化合物のフィルムであってもよい。
【0068】
図2の符号2bは、加工対象物がフィルム32bである第二例のアラインメント装置を示している。このアラインメント装置2bは、本発明の第二例の成膜装置3bに設けられている。
【0069】
第二例のアラインメント装置2bについては、第一例のアラインメント装置2aと同じ部材には同じ符号を付して説明を省略し、同様に、第二例の成膜装置3bについては、第一例の成膜装置3aと同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。図2に示した第二例の成膜装置3bでは、フィルム32bは、マスク保持装置21に配置された加工マスク31と対面されている。
【0070】
真空槽10内には、巻取装置35と、巻出装置36とが配置されている。
巻出装置36には、巻き取られたフィルム32bから成る巻出ロール34が装着されており、フィルム32bの加工マスク31と対面する部分は、巻出ロール34から巻き出され、加工マスク31と対面する位置を通る部分であり、巻取装置35に装着されたフィルム32bの一部となる。
【0071】
巻取装置35には、駆動装置37が接続されている。巻取装置35と巻出装置36とは棒状であり、フィルム32bの一端が固定された状態で駆動装置37によって回転されると、フィルム32bを牽引して巻出ロール34と巻出装置36とを回転させ、巻出ロール34からフィルム32bが巻き出されて巻取装置35によって巻き取られる。
【0072】
巻出ロール34から巻き出されたフィルム32bは真空槽10内を走行し、撮像装置12が撮像する位置を通過する。
加工マスク31には、マスクアラインメントマークが形成されており、フィルム32bには加工アラインメントマークが形成されている。
【0073】
ここで、フィルム32bに設けられた加工アラインメントマークは、フィルム32bが走行した際も、間断なく撮像され、撮像結果から誤差を求めることができるようにされており、例えば、加工アラインメントマークはフィルム32bの長手方向に沿って切れ目無く設けられていたり、又は、長手方向に沿って列設されている。
【0074】
いずれにしろ、フィルム32bが停止しているときでも、走行しているときでも、撮像工程では、撮像装置12で同時刻に撮像したマスクアラインメントマークと加工アラインメントマークの撮像結果が求められ、求速度工程では、直近の撮像結果と、設定された誤差速度関係とから、加工マスク31とフィルム32bとの間の誤差角度と、誤差距離と、誤差方向とが検出される。
【0075】
加工マスク31と対面する部分のフィルム32bは、加工マスク31に対して平行になるように走行されており、この第二例のアラインメント装置2bの移動工程では、移動装置14が、加工マスク31が位置する平面とフィルム32bが位置する平面との間の距離を変えず、同じ平面内に位置させながら、加工マスク31が、静止している真空槽10などに対して回転移動と直線移動するようにマスク保持装置21を回転移動と直線移動させことで、加工マスク31とフィルム32bとを相対移動させる。この相対移動は、直近の求速度工程で求めた相対速度にされる。
【0076】
フィルム32bの幅方向の中央位置を結び、長手方向に伸びる直線、又はフィルム32の走行方向に伸びる直線を中心軸線と呼ぶと、求速度工程では、撮像工程の撮像結果から、フィルム32bの中心軸線が伸びる方向の誤差は求めず、誤差角度と、中心軸線と垂直な方向の誤差距離と、誤差方向とから成る誤差を求めるようにされている。
【0077】
なお、求速度工程では、第一例と同様に、制御装置13が、誤差角度がゼロになるように加工マスク31を回転移動させたときの修正誤差方向と修正誤差距離とを求め、修正誤差方向を誤差方向にし、修正誤差距離を誤差距離にして、誤差距離と誤差速度関係から相対速度を求めるようにしてもよい。
移動工程では、誤差を少なくするようにマスク保持装置21が回転移動と直線移動される。
【0078】
第二例の成膜装置3bでフィルム32b上に薄膜を形成する際には、先ず、フィルム32bを走行させる前又は直後に、撮像工程を行って、加工アラインメントマークとマスクアラインメントマークとを撮像装置12で撮像し、撮像結果を得た後、求速度工程に移行され、誤差距離と誤差速度関係とから相対速度を求めた後、移動工程に移行され、求速度工程で求められた相対速度で、求められた誤差方向への加工マスク31の相対移動を開始する。
【0079】
このような、撮像工程と、求速度工程と、移動工程とを繰り返し行うようにされており、フィルム32bが走行している間に、走行に伴い誤差が大きくなっても、誤差を小さくすることができる。
【0080】
誤差距離が許容距離以下のときには、相対速度はゼロにされ、成膜源11から成膜材料の粒子の放出が開始される。放出された成膜材料の粒子のうち、加工マスク31に形成された貫通孔33(貫通溝を含む)を通過した成膜材料の粒子によって、走行中のフィルム32bの表面にパターニングされた薄膜が形成される。成膜材料の粒子の放出開始後、許容距離の値を変更してもよい。
【0081】
成膜源11から成膜材料の粒子の放出が開始された後、即ち薄膜形成中も、撮像工程と、求速度工程と、移動工程とを繰り返し行って誤差が小さくなるようにされている。
形成される薄膜は、走行方向に沿った細長の形状であり、フィルム32b上には、複数本の細長の形状の薄膜が互いに平行に配置される。
【0082】
フィルム32bが走行を開始すると、加工マスク31とフィルム32bとの間に生じる距離は変動するが、発生した誤差は移動工程で小さくされており、高精度のパターンの薄膜を得ることができる。
【0083】
<他の例>
上記誤差速度関係では、高精度範囲よりも誤差距離が大きい範囲に、初期範囲が設定されており、初期範囲の誤差距離は、その大きさによらず、一定値の相対速度に関連づけられている。
【0084】
この一定値の相対速度は、高精度範囲に設定された最大の相対速度と等しいか、又は、それよりも大きな値にされており、移動工程を行った後、又は移動工程中に撮像された撮像結果から求めた誤差距離が小さくなった場合でも、求められた誤差距離が初期範囲に含まれる場合は、同じ大きさの相対速度が関連づけられている。
【0085】
上記第一、第二例のアラインメント装置2a、2bでも、撮像結果から求められた誤差距離が初期範囲に含まれている間は、一定の相対速度で直線移動することになる。
【0086】
なお、本発明の撮像結果には、加工マスクのマスクアラインメントマークと、加工対象物の加工アラインメントマークとの両方を含む視野内の画像であり、撮像結果は、動画であっても、静止画であってもよい。また、動画から抽出された静止画でも撮像結果に含まれる。
【0087】
また、本発明には、加工マスク31と加工対象物とが回転移動した後、相対移動として直線移動する場合と、回転移動しながら直線移動することで相対移動する場合とが含まれる。また、相対移動が直線移動に限定されるものでもない。
【0088】
上記成膜源11は、スパッタリングターゲットであり、真空雰囲気にされた真空槽10中に、スパッタガス源18からスパッタリングガスを導入し、成膜源11にスパッタ電圧を印加してスパッタリングガスのプラズマを発生させ、成膜源11の表面からスパッタリング粒子である成膜材料の粒子を放出させ、パターニングされた薄膜を形成したが、成膜源11はスパッタリングターゲットに限定されるものではなく、例えば、成膜源は蒸着源であって、蒸着源のるつぼ内に配置された成膜材料を加熱して、成膜材料の蒸気である成膜材料の粒子を放出させるようにしてもよい。
【0089】
更に、本発明のアラインメント方法は、加工対象物と加工マスクとを位置合わせして成膜する場合に限定されるものではなく、加工対象物と加工マスクとを位置合わせし、加工対象物の表面を、加工マスクの貫通孔33の形状に従って加工する工程に用いることができ、例えば、貫通孔33の形状に従ってエッチングする工程なども含まれる。
【0090】
なお、上記誤差速度関係や許容距離などの用いられる数値は、制御装置13に接続された外部記憶回路に記憶させておいてもよく、また、記録媒体に記録しておいて、制御装置13によって内部記憶回路に読み込むものであってもよく、要するに、第一例、第二例のアラインメント装置2a、2bに誤差速度関係が設定されていればよい。
【符号の説明】
【0091】
3a、3b……成膜装置
10……真空槽
11……成膜源
12……撮像装置
13……制御装置
14……移動装置
21……マスク保持装置
22……基板ホルダ
31……加工マスク
32a、32b……加工対象物
図1
図2
図3