【文献】
Y. Wang et al.,One-step synthesis and optical properties of blue titanium suboxide nanoparticles,Journal of Crystal Growth,2005年 9月,Vol.282, No.3/4,p.402-406
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属酸化物粉末と、前記金属酸化物粉末を構成する金属元素の金属粉末、酸素以外の元素と前記金属元素の化合物の粉末、および前記金属元素の不定比酸化物の粉末のうち、少なくとも1つの粉末とを用意する工程と、
前記金属酸化物粉末と前記少なくとも1つの粉末とを、熱プラズマ炎中に供給する工程と、前記熱プラズマ炎中に供給された、気相状態の前記金属酸化物粉末と前記少なくとも1つの粉末を冷却ガスで冷却する工程とを有し、
前記金属酸化物粉末の組成と前記少なくとも1つの粉末の組成との組み合わせは、TiO2とTi、水素化チタン、Ti2O3またはTiOであることを特徴とする不定比酸化物粒子の製造方法。
前記熱プラズマ炎は、水素ガス、窒素ガス、ヘリウムガスおよびアルゴンガスのうち、少なくとも1つのガスに由来するものである請求項1または2に記載の不定比酸化物粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の不定比酸化物粒子およびその製造方法を詳細に説明する。
本発明者等が鋭意実験研究した結果、金属酸化物粉末と、この金属酸化物を構成する金属元素の金属粉末とを、熱プラズマ炎中に供給し、熱プラズマを用いて処理することにより、不定比酸化物粒子が生成されることを見出した。
ここで、不定比酸化物とは、一般的には、不定比化合物であるような金属酸化物のことである。不定比化合物とは、定比組成からのずれ(不定比性)を示す化合物のことである。なお、不定比酸化物は、亜酸化物ともいう。
【0014】
本発明では、金属酸化物を構成する金属元素の金属粉末の金属元素が、金属酸化物粉末に対して還元剤として働き、熱プラズマ炎により、金属酸化物粉末が一部還元され、不定比の酸化物となる。金属酸化物粉末の還元により発生した酸素は、金属粉末の金属元素と結合し金属酸化物になるが、外部からの酸素供給がなく、定比の酸化物が生成できる程の十分な酸素が得られないため不定比の酸化物となる。このようにして、金属酸化物粉末および金属粉末のいずれもから、不定比酸化物粒子が生成されると考えられる。
さらには、本発明者等は、金属粉末に代えて、金属酸化物を構成する金属元素と酸素以外の元素との化合物の粉末を用いた場合でも、不定比酸化物粒子が生成されることを確認している。このように、金属酸化物粉末の還元により発生する酸素の量が、酸素と結合する金属元素に対して、結合しても定比の酸化物とはならない量であれば、不定比酸化物粒子が生成されると考えられる。このため、金属粉末に代えて、金属酸化物を構成する金属元素の不定比酸化物を用いた場合でも、不定比酸化物粒子の生成が可能と考えられる。
【0015】
なお、不定比酸化物粒子の生成においては、上述のように、生成過程で発生する酸素量が酸素と結合する金属元素に対して、結合しても定比の酸化物とはならない量であればよい。このため、熱プラズマ炎が酸素を含むものであっても、熱プラズマ炎に起因する酸素の量が加わって、生成過程で発生する酸素量の総量が上記結合しても定比の酸化物とはならない量であれば、熱プラズマ炎は酸素を含むものであってもよい。また、熱プラズマ炎は酸素を含まないものであってもよいことはもちろんである。ここで、熱プラズマ炎が酸素を含むとは、プラズマガスに酸素ガスや空気等の酸素を含むガスを一部または全部に用いた熱プラズマ炎のことであり、一方、熱プラズマ炎が酸素を含まないとは、プラズマガスに酸素ガスや空気等の酸素を含むガスを一部または全部に用いない熱プラズマ炎のことである。
【0016】
本発明では、不定比酸化物粒子として、例えば、酸素が定比組成から少ないTiO
2−x(0<x<2)粒子が挙げられる。この場合、原料としては、例えば、金属酸化物粉末にTiO
2粉末を、金属粉末にTi粉末を用いることができる。
TiO
2は、耐食性に優れ、かつ絶縁性を有する。一方、TiO
2−x(0<x<2)は、耐食性に優れ、かつ導電性を有し、しかも可視光を吸収する。このように、金属酸化物とは性質の異なる不定比酸化物が得られる。
【0017】
一方、本発明者等は、Ti粒子を混合することなく、TiO
2粒子単体で、プラズマガスに水素ガスとアルゴンガスを用いた熱プラズマを用いて還元処理することにより、TiO
2−x(0<x<2)粒子の生成を試みた。
しかしながら、
図1に示すように、原料であるTiO
2粒子しか得られず、上述の水素を含む熱プラズマを用いた還元処理では、不定比酸化物が生成されないことを確認している。本発明は、以上の知見に基づいてなされたものである。
【0018】
次に、不定比酸化物粒子の製造方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態の不定比酸化物粒子の製造方法を示すフローチャートである。
本発明では、作成する不定比酸化物の組成に応じて、金属酸化物と、この金属酸化物を構成する金属元素とを選択する。そして、選択した金属酸化物の金属酸化物粉末と、選択した金属酸化物粉末を構成する金属元素の金属粉末、酸素以外の元素とこの金属元素の化合物の粉末(以下、化合物粉末という)、およびこの金属元素の不定比酸化物の粉末(以下、不定比酸化物粉末という)のうち、少なくとも1つの粉末とを用意し、これらを混合し、不定比酸化物粒子の原料となる混合粉末を得る(ステップS10)。なお、不定比酸化物の組成と、原料となる金属酸化物と、金属元素、および酸素以外の元素と金属元素の化合物との組み合わせについては後に詳細に説明する。
【0019】
次に、熱プラズマ炎に、混合粉末を供給し、熱プラズマ処理する(ステップS12)。熱プラズマ処理により、混合粉末は蒸発して気相状態の混合物になる。この混合物において、金属酸化物粉末は部分的に還元され、金属酸化物粉末の還元により発生した酸素は粉末の金属元素と結合する。外部からの酸素供給がないため、金属酸化物粉末は酸素が不足した状態になる。また、粉末の金属元素は金属酸化物になるが、金属酸化物粉末の還元により発生した酸素は定比酸化物となる程十分な量存在しない。そして、気相状態の混合物を冷却ガスで冷却する。これにより、ナノサイズの不定比酸化物粒子が生成される(ステップS14)。なお、熱プラズマ炎から上記混合物を取り出し、不定比酸化物粒子を得ることができれば、冷却は必ずしも必要ない。
【0020】
本発明では、ステップS10で混合粉末を予め作製したが、これに限定されるものではない。予め混合粉末を作製することなく、金属酸化物粉末と、金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末のうち、少なくとも1つの粉末とを、別々に、熱プラズマ炎に供給して、この熱プラズマ炎中にて金属酸化物粉末および上記選択された少なくとも1つの粉末を混合させてもよいことはもちろんである。
【0021】
本発明では、金属酸化物粉末と、上記少なくとも1つの粉末とを用いており、不定比酸化物粒子を構成する以外の金属元素を用いないため、高い純度の不定比酸化物粒子を得ることができる。
熱プラズマ炎を用いた熱プラズマ法では、一般的に、熱プラズマ炎に供給する粉末の粒径が100μm程度であっても、粒径が200nm未満のナノサイズの粒子が得られることが知られている。このため、本発明でも、100μm程度の粒径の金属酸化物粉末ならびに金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末を用いても、粒径が200nm未満の不定比酸化物粒子が得られる。なお、本発明の不定比酸化物粒子は粒径が200nm未満であるが、不定比酸化物粒子の粒径は5〜100nmであることがより好ましい。
このように、本発明では、原料である金属酸化物粉末と金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末について、原料としてナノサイズの粒子を用いることがなくナノサイズの不定比酸化物粒子が得られるため、扱いが難しいナノサイズの粒子を用いて生産性が低下することもない。
【0022】
金属酸化物粉末の粒径は、1〜100μmであることが好ましく、金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末の粒径は、1〜100μmであることが好ましい。金属酸化物粉末ならびに金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末は、いずれも粒径が1μm未満ではハンドリングが難しくなる。一方、金属酸化物粉末ならびに金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末は、いずれも粒径が100μmを超えると熱プラズマ処理の際に蒸発しない量が多くなる。
ここで、本発明において、粒径とは、比表面積測定から換算して求めた値である。
なお、上述のように、金属酸化物粉末の還元により発生する酸素の量が、酸素と結合する金属元素に対して、結合しても定比の酸化物とはならない量であれば、不定比酸化物粒子が生成されると考えられる。このため、原料である金属酸化物粉末と、金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末のうち、選択された少なくとも1つの粉末との混合比については、例えば、予め実験等により、不定比酸化物粒子が生成される比率を適宜決定することができる。
【0023】
不定比酸化物粒子としては、TiO
2−x(0<x<2)粒子に限定されるものではなく、金属酸化物粉末と金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末との組み合わせることにより、種々の不定比酸化物粒子を作製することができる。例えば、不定比酸化物粒子と、金属酸化物粉末と金属粉末および化合物粉末の組み合わせとしては、下記表1に示すものが挙げられる。なお、TiO
2−x(0<x<2)粒子に関しては、下記表1に示すTiH
2以外の水素化チタンを用いることもでき、更には、不定比酸化物としてTi
2O
3、TiOを用いることができる。また、下記表1のVH
xはバナジウム水素化物を表わす。
【0025】
粒子サイズをナノサイズ化することにより発現する特性として、樹脂またはガラス等に分散させた場合、透過性が向上する。これ以外に、ナノサイズ化で発現する特性としては、熱伝導率の低下、および比表面積の増加等がある。
粒径が200nm未満の不定比酸化物粒子の用途としては、例えば、熱線遮蔽材料、熱電素子、ならびに触媒および担持材が例示される。
【0026】
以下、
図3を基に、本発明の不定比酸化物粒子を製造するために用いる微粒子製造装置10(以下、単に製造装置10という)について詳細に説明する。なお、本発明の不定比酸化物粒子は、
図3に示す製造装置10で製造されることに限定されるものではない。
製造装置10は、熱プラズマ炎24を発生させ、熱プラズマ処理して不定比酸化物粒子を生成させるプラズマトーチ12と、上述の混合粉末をプラズマトーチ12内へ供給する材料供給部14と、生成された不定比酸化物粒子を冷却する冷却槽としての機能を有するチャンバ16とを有する。
さらに、製造装置10は、不定比酸化物粒子30から任意に規定された粒径以上の粒径を有する粗大粒子を除去するサイクロン18と、サイクロン18により分級された所定の粒径の不定比酸化物粒子32を回収する回収部20とを有する。
【0027】
プラズマトーチ12は、石英管12aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル12bとを有する。プラズマトーチ12の上部に供給管14aを介して材料供給部14が設けられている。リング状のプラズマガス供給口12cが、供給管14aの周辺部に形成されている。
【0028】
プラズマガス供給口12cに配管22aを介してプラズマガス供給部22が接続されている。プラズマガスは、プラズマガス供給部22からプラズマガス供給口12cを経てプラズマトーチ12内に供給される。
高周波発振用コイル12bには、高周波電圧を印加するための電源部28が接続されている。この電源部28には、プラズマを発生させるための公知のものを用いることができる。電源部28により、高周波発振用コイル12bに所定の高周波電圧が印加されると、プラズマトーチ12内で熱プラズマ炎24が発生する。
【0029】
プラズマガス供給部22は、プラズマガスに応じた各種のガスが貯蔵される。
本実施形態では、プラズマガスは特に限定されるものではない。例えば、プラズマガスとして、水素ガス、窒素ガス、ヘリウムガスまたはアルゴンガス等を用いることができる。なお、プラズマガスは一種に限定されるものではなく、水素ガスとアルゴンガス、窒素ガスとアルゴンガスのように、これらプラズマガスを組み合わせて使用してもよい。さらに、一部に酸素を含んだガスを使用することもできる。
【0030】
熱プラズマ炎24の温度は、金属酸化物粉末ならびに金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末の沸点を超える温度であることが好ましく、例えば、2000℃〜3000℃程度である。熱プラズマ炎24の温度は、6000℃とすることもでき、理論上は10000℃程度に達するものと考えられる。
また、プラズマトーチ12内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、0.5〜100kPaである。
【0031】
材料供給部14は、不定比酸化物粒子の原料である混合粉末を熱プラズマに供給するものであり、例えば、特開2007−138287号公報に開示されている材料供給装置を用いることができる。
材料供給部14は、例えば、金属酸化物粉末と、金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末のうち、少なくとも1つの粉末とを貯蔵する貯蔵槽(図示せず)と、金属酸化物粉末と金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末のうち、少なくとも1つの粉末とを混合して混合粉末を作製し、この混合粉末を定量搬送するスクリューフィーダ(図示せず)と、スクリューフィーダで搬送された混合粉末が最終的に散布される前に、分散させる分散部(図示せず)と、キャリアガス供給源(図示せず)とを有する。
【0032】
キャリアガス供給源からのキャリアガスにより混合粉末に押出し圧力がかけられ、供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中へ混合粉末が供給される。なお、キャリアガスには、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。
材料供給部14は、上記構成に限定されるものではない。例えば、材料供給部14は、上記混合粉末を作製するスクリューフィーダがなくともよく、この場合、金属酸化物粉末と、金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末のうち、少なくとも1つの粉末とを貯蔵する各貯蔵槽から、キャリアガスにより、金属酸化物粉末と、金属粉末、化合物粉末および不定比酸化物粉末のうち、少なくとも1つの粉末とを別々に、熱プラズマ炎24中に供給する。
【0033】
チャンバ16は、プラズマトーチ12の下方に隣接して設けられており、配管26aを介して冷却ガス供給部26に接続されている。
冷却ガス供給部26は、チャンバ16内に冷却ガスを供給し、生成された不定比酸化物粒子を冷却するものである。これにより、ナノサイズの不定比酸化物粒子30が得られる。
より具体的には、冷却ガス供給部26は、冷却ガスを、熱プラズマ炎24の終端部に向かって、例えば、矢印Qの方向に供給するとともに、更にはチャンバ16の側壁に沿って上方から下方に向かって、すなわち、
図3に示す矢印Rの方向に冷却ガスを供給するものである。矢印Rの方向に供給された冷却ガスにより、不定比酸化物粒子30のチャンバ16の内壁への付着が防止される。
【0034】
冷却ガス供給部26は、冷却ガスに押出し圧力をかけるコンプレッサ、ブロア等の圧力付与手段(図示せず)と、冷却ガスを貯蔵するボンベ(図示せず)、ボンベのガス供給量を制御する圧力制御弁(図示せず)等を有する。
冷却ガスとしては、例えば、アルゴンガスまたはアルゴンガスとヘリウムガスとの混合ガスが用いられる。なお、冷却ガスとしては、不定比酸化物粒子の組成に影響を与えるものでなければ、上記以外の各種ガスを用いることができる。例えば、冷却ガスとして、窒素ガス、水素ガス、およびこれらの混合ガスを用いることができる。
【0035】
製造装置10は、
図3に示すように、チャンバ16の側方下部にサイクロン18が設けられている。このサイクロン18は、不定比酸化物粒子30を所望の粒径で分級するためのものである。サイクロン18は、例えば、特開2007−138287号公報に開示されているものを用いることができる。なお、この製造装置10ではサイクロン18がなくとも、不定比酸化物粒子を作製することができるため、サイクロン18はなくてもよい。この場合、チャンバ16の底部16aに溜った不定比酸化物粒子30を回収する等する。
なお、冷却ガス供給部26から供給される冷却ガスは、サイクロン18での不定比酸化物粒子30の分級に寄与する等の付加的作用を有する。
【0036】
サイクロン18は、チャンバ16からT方向に吸引され不定比酸化物粒子30が供給される入口管18aと、この入口管18aと接続され、サイクロン18の上部に位置する円筒形状の外筒18bと、この外筒18b下部から下側に向かって連続し、かつ、径が漸減する円錐台部18cと、この円錐台部18c下側に接続され、上述の所望の粒径以上の粒径を有する粗大粒子を回収する粗大粒子回収チャンバ18dと、後に詳述する回収部20に接続され、外筒18bに突設される内管18eとを備えている。
【0037】
サイクロン18内の内管18eの延長上には、分級されて所定のナノサイズの粒径を有する不定比酸化物粒子32を回収する回収部20が設けられている。この回収部20は、回収室20aと、回収室20a内に設けられたフィルター20bと、回収室20a内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ(図示せず)とを備えている。U方向に吸引されてサイクロン18から送られた不定比酸化物粒子32は、真空ポンプ(図示せず)で吸引されることにより、回収室20a内に引き込まれ、フィルター20bの表面に留まった状態で回収される。
【0038】
次に、製造装置10によるTiO
2−x(0<x<2)粒子の製造方法について説明する。
材料供給部14に、原料として、TiO
2粉末とTi粉末とが貯蔵槽に貯蔵されており、TiO
2粉末とTi粉末とが所定の比率で混合されて混合粉末が作製される。
そして、例えば、水素ガスとアルゴンガスをプラズマガスとしてプラズマトーチ12内に供給し、高周波発振用コイル12bに、所定の高周波電圧を印加して、プラズマトーチ12内に熱プラズマ炎24を発生させる。
そして、キャリアガスを介して材料供給部14から混合粉末を熱プラズマ炎24に供給する。これにより、混合粉末から不定比酸化物として、TiO
2−x(0<x<2)が生成され、冷却ガス供給部26から冷却ガス、例えば、アルゴンガスが供給されて冷却され、不定比酸化物粒子30として、TiO
2−x(0<x<2)粒子が得られる。このように熱プラズマ炎24を用いた場合には、上述のように、ナノサイズのTiO
2−x(0<x<2)粒子が得られる。このため、サイクロン18による分級は必ずしも必要ない。
【0039】
また、製造装置10によるTiO
2−x(0<x<2)粒子の製造方法でも、上述のようにTiO
2粉末とTi粉末の混合粉末を作製したが、これに限定されるものではなく、TiO
2粉末とTi粉末とを別々に熱プラズマ炎24に供給して、熱プラズマ炎24中でTiO
2粉末とTi粉末を混合させてもよいことはもちろんである。
【0040】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の不定比酸化物粒子およびその製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例1】
【0041】
以下、本発明の不定比酸化物粒子についてより具体的に説明する。第1実施例においては、上述の製造装置10を用いて、不定比酸化物粒子として、TiO
2−x(0<x<2)粒子の製造を試みた。
原料粉末には、TiO
2粉末(粒径2μm)とTi粉末(粒径22μm)との混合粉末を用いた。
本実施例では、TiO
2粉末とTi粉末との比率を質量比で、20:80、50:50、60:40、80:20としたものを用いて、TiO
2−x(0<x<2)粒子の製造を試みた。
得られた粒子について、粒径を測定するとともに、X線回折法を用いて結晶構造解析を行った。その結果を
図4(a)、(b)、
図5(a)、(b)に示す。
なお、粒径は、得られた粒子について比表面積を測定し、この比表面積から換算して求めたものである。
【0042】
製造には、プラズマガスに水素ガスとアルゴンガスを用いて、熱プラズマ炎を発生させ、キャリアガスにアルゴンガスを用い、混合粉末を熱プラズマ炎に供給した。
【0043】
図4(a)に示すように、TiO
2粉末の割合が20質量%では、TiO、Ti
2O
3の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は60nmである。
図4(b)に示すように、TiO
2粉末の割合が50質量%では、TiO、Ti
2O
3、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は57nmである。
図5(a)に示すように、TiO
2粉末の割合が60質量%では、Ti
2O
3、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は41nmである。
また、
図5(b)に示すように、TiO
2粉末の割合が80質量%では、TiO
2が僅かに残存するものの、略Ti
2O
3、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は55nmである。このように高い純度の不定比酸化物粒子が得られた。
【実施例2】
【0044】
次に、第2実施例について説明する。
本実施例は、第1実施例と同じく、不定比酸化物粒子として、TiO
2−x(0<x<2)粒子の製造を試みた。
本実施例では、第1実施例に比して、混合粉末においてTi粉末に代えてTiH
2粉末(粒径10μm)を用い、TiO
2粉末は、第1実施例と同じものを用いた。
本実施例では、TiO
2粉末とTiH
2粉末との比率を質量比で、50:50、60:40、70:30、90:10としたものを用いてTiO
2−x(0<x<2)粒子の製造を試みた。
本実施例では、第1実施例と同じく得られた粒子について、粒径を測定するとともに、X線回折法を用いて結晶構造解析を行った。その結果を
図6(a)、(b)、
図7(a)、(b)に示す。粒径の測定および結晶構造解析は、第1実施例と同様にして行った。
なお、製造条件は、第1実施例と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図6(a)に示すように、TiO
2粉末の割合が50質量%では、TiO、Ti
2O
3、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は42nmである。
図6(b)に示すように、TiO
2粉末の割合が60質量%では、TiO、Ti
2O
3、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は35nmである。
図7(a)に示すように、TiO
2粉末の割合が70質量%では、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は40nmである。
また、
図7(b)に示すように、TiO
2粉末の割合が90質量%では、TiO
2が僅かに残存するものの、略Ti
2O
3、TiO
2−x(0<x<2)の不定比酸化物粒子が得られた。得られた不定比酸化物粒子の粒径は41nmである。このように高い純度の不定比酸化物粒子が得られた。
【実施例3】
【0046】
次に、第3実施例について説明する。
本実施例は、不定比酸化物粒子として、SiO粒子の製造を試みた。
原料粉末には、SiO
2粉末(粒径4μm)とSi粉末(粒径5μm)との混合粉末を用いた。なお、混合粉末のSiO
2粉末とSi粉末との比率は質量比で20:80とした。
本実施例では、第1実施例と同じく得られた粒子について、粒径を測定するとともに、X線回折法を用いて結晶構造解析を行った。その結果を
図8に示す。粒径の測定および結晶構造解析は、第1実施例と同様にして行った。
なお、製造条件は、第1実施例と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0047】
図8に示すように、X線回折法では明確なピークが得られず、酸素量を測定した。酸素量は36.7質量%であった。酸素量の測定には、堀場製作所製、酸素・窒素分析装置EMGA−920を用いた。
ここで、SiO
2の理論酸素量は53質量%であり、SiOの理論酸素量は36質量%である。酸素量の測定結果から、本実施例では、SiO粒子が作製できたことは明らかである。なお、粒径は11.2nmであった。このように、不定比酸化物粒子として、SiO粒子を作製することができた。